平成15年10月


10月31日(金)

●環境省が「エコツアー」の推進方針を打ち出した。素晴らしい環境の中に身を置くことで、自然の良さを体感、大切さを学びとってほしい、という趣旨。具体的にどうするか、その検討組織を近く発足させる考えといい、地域振興の視点からも注目されている▼“旅行ブーム”は健在。厳しい状況と言いながら函館・道南も救われているが、改めてそれを感じるのが大都市の旅行代理店先のパンフの量。近隣から海外まで、企画されている数はあまりに多くて、数える術もないほど。広告もパック旅行の企画が本当に多い▼かつての旅行には定番があった。頭につく「観光」に象徴されるように、幾つかの観光地を駆け足でつなぐパターン。確かに今なお根強いが、そのニーズが近年、様変わりしつつあるのも現実。新たな視点は、ゆっくり体を休める、何かを体験する、山や海を楽しむ…▼エコツアーとしては、屋久島(鹿児島)の縄文杉探索や白神(青森)のブナ林散策などが知られる。確かに「自然を守る」という視点から、人を呼び込むことに議論があるのも事実。だが、その一方で直に触れさせることが意識の醸成につながるという説も▼わが国は環境教育の遅れが指摘されて久しい。知識がない、だからマナーも悪い。教育が必要だ。その場として受け入れる体制、ルールづくりが整っている所ならば…。環境省が検討を打ち出したのは一つの問題提起。一歩踏み込んだ環境施策として検討結果を注目していたい。(N)


10月30日(木)

●「雇用」という言葉を聞くと、反射的に「厳しい」という言葉が浮かんでくるが、「就職」となると、その度合いはさらに。それもそのはず、大卒予定者もさることながら高卒予定者の就職戦線は冷え込んだまま。9月末現在、全道平均の内定率は13・4%▼冷え切った経済環境は悪循環をもたらし、最終的な付けは雇用環境に。結果として生活不安が生まれて、買い控え。企業は生産を縮小せざるを得なくなって、加速されたのが給与の削減・リストラといった企業の人的合理化…。流れは失業の増加や新規採用の手控えへ▼そのしわ寄せを最も受けているのは、家族を抱える中高年と学卒の新規就職者。とりわけ学卒者は夢を持って社会に踏み出す第一歩なのに、現実は…。地元での就職希望が多い高卒予定者にとっては、過酷とも言える環境。地元で、志望の企業で、は容易なことでない▼函館公共職業安定所の9月末統計をみても、求職者1427人に対し求人数は668人(うち管内は328人)で、内定者は199人。かすかな明かりは、全道的に求人数の減少傾向が続く中、函館地域では増加していること。昨年同期を17・6%上回っている▼確かに就職は本人の問題。無理に説得したところで、長続きしなければ、先々、不幸なことになりかねない。かと言って…。生徒はもちろん親も、そして学校も、悩みだけが増幅している。「こんな姿がいつまで続くのか」。衆院選は真っ只中。答えが返ってこないと分かっていても、問いかけてみたくなる。(A)


10月29日(水)

●第43回衆院選挙が公示され、12日間の選挙戦に入った。少数激戦の選挙区が多く、名前を書いてもらう小選挙区の立候補者は1026人。道内に目を移すと、12小選挙区に40人が立候補、渡島・桧山の北海道8区でも予想された4人が第一声を上げた▼いわゆる自社激突の55年体制が崩れ、8党会派による非自民の細川連立内閣が誕生したのは1993年。それ以降は政界再編という言葉が象徴する10年だった。政党の離合集散が繰り返され、数年で消えた政党も幾つか。一時期を除き、連立の時代が続いている▼政治の世界が流動する中、経済はマイナス成長に転じ、追い討ちをかけた金融不安…。それが政治の無策と映って政治、政党に対する不信は、支持率、さらには投票率などに表われている。その流れが変わるのか、「政治への信頼回復を占う選挙」とも位置づけられるのもそれ故▼解散権を行使したのだから、自民・公明・保守新の連立与党、言葉を変えれば小泉連立内閣にとっては、信任を問う選挙。対する野党第一党の民主は政権交代を訴え、他の政党も黙ってはいない。これまでの選挙に増して具体的な公約を打ち出している▼投げられたのは判断を求めるボール、それを誰に、どの政党に打ち返すか、我々が託されているのは北海道8区。各党こぞって混沌とした情勢と踏む選挙区でもある。立候補者は前回と全員入れ替わって、比例から回った前職1人と新人3人の4人。託す先を見極める時間は十分にある。(H)


10月28日(火)

●読書の秋。何か本を読みましたか。活字は考えながら理解しなければならないため、深く心に刻まれのが特徴で、生きる支えにもなる。文化審議会の国語分科会が高校生に読んでもらいたい本に挙げたドストエフスキーの「罪と罰」を40数年ぶりに読み返してみた▼活字離れが進んでいると言われて久しいが、何と図書館の貸出冊数が急増している。01年度に全国の図書館で5億2083万冊が貸し出され、55年に調査を開始して以来、過去最高を記録。前回より4041万冊も増え、国民1人当たり4・1冊借り、小学生は実に17・1冊と最高だった▼景気の低迷で書籍を購入せず、無料で借りられる図書館の利用者が増えたようだ。また、学校での「朝の10分間読書活動」や「読書の時間」「読書科目」などの効果が出ている。ある町教委は30冊ごとに500円分の図書券を進呈する事業「チャレンジ読書」を展開▼30冊分記入した読書カードを提出すると「はげみ賞」、60冊に達すれば「読書の達人」に認定。子供たちは「いっぱい読んでカードをいっぱいにしたい」、普段、あまり読まない大人も「これを機会に読書に親しみたい」。街には「読書喫茶」などもお目見え▼函館では読書や空間が楽しめる「ブックス・オブ・ライフ」が好評だ。皇后さまが幼少の頃の体験を通して読書の大切さを呼びかけた著書「橋をかける」が韓国でも出版された。本は子供たちに活字の魅力を伝えるのみならず、大人になっても再読することは素晴らしい。今年も読書週間(27日から)が始まっている。(M)


10月27日(月)

●解散に伴う総選挙があす28日、公示される。小選挙区比例代表並立制になって3回目。国政を委ねる人を選ぶのだから毎回、重要な選挙と言われて当然だが、今回はとりわけ持つ意味が大。今後の政治の行方を占う選挙と位置づけるに値するから▼わが国は内政、外交ともに多くの懸案、課題を抱えている。瀕死状態の国の財政事情が最たる問題だが、経済環境をみても消費は伸びない、雇用は厳しい、金融問題も引きずったまま、と未だ明るさが灯ってこない。その一方で年金問題に象徴される生活不安の拡大…▼地域に目を向けても、政治に求めることは多々。こうした現実をどう認識し、どう考えていこうとしているのか。各政党、候補者はその問いかけを求められ、有権者は判断を問われている。自民、民主、共産公認に無所属の4人が立候補を予定している北海道8区も然り▼各政党はかつてないほど充実した“公約”を発表している。だが、大事なのは実行であり確約。もっと言えば実現できなった時の責任のとり方である。政治、政党不信が言われて久しい。無党派層の増加や投票率の低迷が物語っているが、それを払拭できるか否か▼答えは投票率から読み取れる。全国的に低迷している。函館市と周辺地域とて例外でない。ちなみに函館市では前回(平成12年)が59・78%、前々回(同8年)が53・40%。過去3回続けて60%を割っている。今回は…。政党、候補者が投げるボールは11月9日(投票日)にはじき返される。(H)


10月26日(日)

●最低気温が10度を切るようになり、紅葉前線も訪れて、道南地域は秋というより晩秋の気配。暑くもなく、寒くもなく、の体感時期は少し過ぎた感があるが、その秋は四季の中で最も多様に表現される。「食欲の秋」「体育の秋」「読書の秋」など▼こうした表現も納得すべく、10月には体育の日があり、読書週間もある。そして11月3日は文化の日。こう考えてくると、秋を代表する表現として「芸術の秋」にたどり着く。よく知られる秋の芸術祭が象徴的な存在だが、実際、絵画展やステージが目白押しとなる▼もちろん道南の各市町村でも。住民参加の文化祭も多彩に開かれる。加えて函館では今年も評価の高い市民オペラが上演される。11月22日、23日で、13回目の上演作品はドニゼッティ作曲の「愛の妙薬」。さらに道立美術館では、1日から「芸術週間」事業が展開される▼そこで気になるのが、どれだけ身近に芸術の香りを感じ、接しているか、ということ。ある企業が若者を対象に行った調査の結果からは、意外と距離のある姿が浮かび上がってくる。半数以上の人が年間一度も音楽会や美術展、舞台などに接していないというのだから▼函館・道南ではどうだろうか。中高年ではもっと高い率になるに違いないが、せめて年に一度ぐらいは…。東京や札幌など大都市には及ばないまでも、函館・道南でも“場”は用意されている。図書館で本を手にするのも、ステージを楽しむのも、絵画に触れるのもいい。今、まさにその季節にある。(H)


10月25日(土)

●「五十にして天命を知る」(論語)。「天命」は体制に従う者が使う言葉、利己主義をつらぬき、他人への恵愛を考えたことのない者が口にすべきではないと、教わってきた。相応の年齢になったら「引き際」の天命を知ることが肝心▼自民党の議員定年制(73歳)で衆院選を目前に混迷劇。党の元老格の中曽根元首相(85歳)は「かつて比例区の終身第1位指名という経緯がある。信義を重んじろ。年寄りを大事にしないで、お年寄りが票を入れるか」と抵抗。憲法改正や教育改革に最後の執念を燃やしている▼もう1人の宮沢元首相(84歳)は「いつまでもお役に立ちたいが、限度がある。願わくば遅すぎたといわれたくない」と引退を決めた。「戦争はいけない」と、護憲・ハト派のパイオニアとして50年間、まい進してきた政治家。まるで老壮青の秩序ある年齢構成の政治活動を悟ったよう▼もう1人、しがみついている人がいる。「国有地払い下げに疑惑がある。名を言うと死人が出る」とすごんだ道路公団の藤井総裁。私利私欲に走る道路族と癒着した公団の腐敗ぶりを身をもって暴露した。「地位に恋々としない」と言いながら、解任されたら訴訟も辞さないと抵抗する▼人を癒してくれた紅葉もやがて小枝を離れる。人生わずか50年の昔は、五十にして天命を知ったが、少子高齢化の現在は「七十三歳にして天命を知る」時代なのだ。地位にこだわらず、老練、老巧に生きている人は沢山いる。議員バッジを外しても「老益」のお手本になれる。(M)


10月24日(金)

●イカのゴロやホタテの殻など魚介類の残渣(さ)物の処理が産業課題となって久しい。イカにせよ、ホタテにせよ半端な量でない。長期的な対策の確立が求められるのもそれ故だが、現実に目を移すと、イカのゴロは自前の処理を求められ、ホタテの殻もなかなか…▼函館で年間1万トンと言われるイカのゴロ処理は、概ね1社が担ってきた。その生まれ変わりは粉末状の飼料(エビの養殖用など)だが、この1社が新たな事業展開をするのに伴い処理業務から撤退することになったから、さぁ大変。緊急に対策を講じる必要が…▼毎日、毎日出るものだけに放っておけない。確かに道立工業技術センターが、それを原料に魚醤を作る研究を重ねているが、実用化への道はまだ。そう時間はないが、当面の対策として関係者・団体が協議会を設け、共同で処理する道を模索している▼それでもイカのゴロは飼料化のノウハウがあるからまだ救い。ホタテの殻は…。道内で年間20万トンが排出されるが、利用方途は難しく、なお試行が続いている状態。数年前には八雲で林道整備に、青森では舗装素材として試みられたが、残念ながらその後、明るい情報が届いてこない▼「他に考えられないか」。道立工業試験場が研究を重ね、開発したのが舗装道路の白線素材としての利用。七飯町の道道で施工試験が行われている。本紙も報じていたが、こうした残渣物処理法や体制の確立は、水産加工の将来に不可欠の取り組み。地域としても無関心ではいられない。(A)


10月23日(木)

●「60歳になったら気ままで自適な生活を」。長いサラリーマン生活、その間、一度や二度、辞めようと思ったこともあったが、でも描いた退職後の人生図を夢に頑張ってきた。あと10年、あと5年、そんな思いで働いてきた人が多いはずだが、まさかの大誤算▼その前提だった年金が今のありさまでは、人生図も描き替えをせざるを得ない。5年ほどもすれば受給開始は65歳からになる。60歳から一部受給は出来るにしても「長い目でみれば損になる」と言われれば…。そこで「あと5年仕方ないか」と気持ちを切り替えても、肝心の働く環境はそうそう整っていない▼今の60歳は若い。まだまだ働ける年代だが、それも働く場所があればの話。現実に目を向けると、60歳以上の雇用を促す環境整備は遅れたまま。従業員30人以上の企業を対象にした厚生労働省の調査からも、その姿がはっきりとうかがえる▼確かに、何らかの形で65歳まで働ける制度を設けた企業は増えている。ただし…。多くは制約付きで、希望者全員に適用している企業は、なお3割に満たないレベル。あと数年あるから制度の整備が広がるにしても、今の経済情勢などが重くのしかかってくる▼その一方で、年金に対する不安は募る。その心理は全国紙の世論調査などでも顕著に表われ、6割の人が「非常に不安」と。さらに受給開始が繰り下がるのではないか、当然ながら不安の率が高いのは30、40歳代の人たち。第二の人生図がますます描きづらい時代になっている。(A)


10月22日(水)

●1年を振り返るには早いが、今年ほど「高速道路」に焦点が当たった年はない。経営システムから整備の考え方まで提起した道路関係四公団民営化推進委員会の議論、その中で浮き彫りにされた日本道路公団の甘い体質と実態、そして民主党の無料化提案…▼道路は最も身近な社会インフラ。国土の均衡ある発展に整備・維持は欠かせない。その象徴的な存在が高速道路。民営化推進委の採算重視は一つの考え方だが、まだまだ整備の手を待っている地域が多い。だが、政治の場でも、この肝心なところが定かになっていない▼確かに道路公団の今は、問題があり過ぎ。表に出た問題だけでも“お役所的体質”と指摘されて当然。何を勘違いしているのか、混乱の責任をとる神経すら持ち合わせず、解任に至った総裁問題は論外だが、民営化へ踏み出す環境はなかなか整わない▼様々な議論の中で不満が残るのは、整備方針が表舞台から消えて裏に回っていること。例えば道央と結ぶルート。大動脈の国道5号は、片側1車線の区間が長く、代替道路すらない。高速道路にはその切り札としての期待も寄せられるが、まだ国縫まで延びてきたばかり▼この先、どうなるのか。長年の地域課題であり、今、提示してほしいのは整備の方針。地方はさんざん後回しにされてきた。それは百歩譲るとして、全区間が整備されてはじめて目的を達するのが道路。まさかと思うが、中途半端なまま採算を尺度に整備を考えられては叶わない。(A)


10月21日(火)

●江差椴川の奥深い山。寺院の柱など建造物に使われ、高い評価を受けているヒノキ。そのヒノキに憧れるアスナロは「あすはヒノキになろう、大きなヒノキになろう」と唱えている。真っ直ぐで堅い木。ニシンとともに江差に繁栄をもたらした木▼ヒノキは1000年生えていると伐採して使っても1000年はもつ(ヒノキ造りの法隆寺は1000年前の建物で有名)。325年前(延宝6年)に厚沢部ヒノキ山が開かれ、江差はヒノキ伐採の中心地として桧山番所(後の江差奉行所)が置かれ、人口が急増し交易港となった▼松前藩が一部伐採して関西などに販売した。国の天然記念物に指定される前にも伐採されたが、まだ樹齢160〜300年のヒノキが自生している。豊かな山が育てば豊かな海も育つ。山の栄養分が川によって運ばれ、鴎島にニシンが群来。「江差の五月は江戸にもない」と▼江差には北海道フロンティアの歴史や文化がある。箱館戦争の明暗をわけた開陽丸や、網元を含む「いにしえ街道」が復元され、ニンン漁でにぎわった往時を再現。椴川のヒノキアスナロ自生地の管理歩道も開通。人跡未踏のヒノキ原生林を観察できるようになった▼本紙は今月から江差支局を開設した。「函館新聞の迅速な取材や報道など地域からの情報発信は町を元気にする源です」(濱谷一治江差町長)。「広げれば時代にアクセス暮らしにプラス」(新聞週間の代表標語)を信念に、桧山地域の発展のため応援を惜しまない。(M)


10月20日(月)

●景況感はなお不透明。日銀の9月短観(企業短期経済観測)をみても、判断が難しい。予測がしやすい大企業の認識も「製造業に明るさが覗いたものの、非製造業は未だその兆しが見えず」といったニュアンス。最近の円高動向も懸念される▼大企業でもこうだから中小企業では…。「なお気を緩められない」と実感する環境下に変わりない。各種の統計や調査結果もそう教えているが、実際に消費は低迷から脱していないし、企業倒産も相変わらず、運転資金に対する需要も多い。それは函館・道南も一緒▼というより超がついておかしくない厳しい地域。今年に入って9月までに倒産した企業は、民間信用調査機関などの調査で約40社。負債額に線を引かなければ、さらに多い数になる。四苦八苦している現実が浮かび上がってくるが、担保がなければ頼りの金融も甘くない▼支払いの先延ばしも一時しのぎ。結局は当座の運転資金が必要となる。函館市の「緊急小口運転資金」の実績は、そんな姿を伝えてくる。従業員10人以下の企業を対象に8月から設けられた無担保・無保証人の融資制度だが、どうやら“駆け込み寺”のような存在に…▼用意した7200万円を、わずか2カ月で使い切ったというのだから。早速、補正で2億7800万円を計上したが、市の読み違いというより、現実がそれを超えていたと判断して、むしろ正解。これから資金需要期の年末を迎える。この補正分で足りればいいのだが…。そんな思いがこみ上げてくる。(H)


10月19日(日)

●「合併」が市町村に重くのしかかっている。本来なら今に至った歴史的経緯や住民感情などを考慮して、ということになるのだが、財政など行政面の事情を最優先に法律(合併特例法)で強いているのが今の平成合併劇。道内でも動きは急▼遅れ気味、急がなければ、時間がない、早く、早く…。道南でも単独存続を模索しているところがある一方、七飯と鹿部に続き、函館と東部4町村は法定協議会の設置へと至り、さらに幾つか任意協議会、協議準備会を設ける段階に。手順からすると、まだまだ総論の域…▼問題が生じるのは、むしろ各論に入ってから。新たな行政理念や組織、制度・条例の整備など、調整を待つ懸案は雑多。妥協もあれば、合併の精神に反するような驚くべき対応も出てくる。先日、全国紙で取り上げられていた秋田県の本庄市と周辺7町の議員数もその類▼対等合併の場合、議員は合併時に失職し、50日以内の選挙となるが、合併特例法はその点、大甘。最長2年までの在任特例を認めている。この法を逆手にとったか、打ち出した方針は8市町村の全議員の救済。本来なら30人未満の都市規模なのに、132人ということに▼東京都議(127人)さえ上回る人数であり、これでは行政の効率化に逆行すると指摘されて当然。報酬はどうする、議場はどうする、2年間もやられたら…。他地域の特殊な話ではない、道南でも直面する問題である。「くれぐれも参考にしないように」と願いたい。(H)


10月18日(土)

●牛肉の偽装事件などが記憶に新しいが、またまた商道徳が批判される現実が表に出始めている。もちろん極く一部の所業であり、全体を推し量っては行き過ぎだが、にわかに問題視されてきた商品は米。価格が急に上昇に転じ、表示問題が取りざたされている▼確かに今年の稲作は10年ぶりの不作。北海道・東北は極端に収量が低く、渡島の作況指数は「五一」のいわば「著しい不良」で、全国平均でも「九一」というから品質、収量とも平年を下回る。ただ、不足かというと、140万トンの政府備蓄米があるから心配はない▼ところが、店頭では今月に入って値上がりの動き。特に食味がいい、と評判のブランド品に顕著だが、それでも看板に偽りがないなら百歩譲っていい。ブレンドした安い価格帯の品も数多く出回っており、どれを買うかは消費者の選択だから。しかし、ごまかしは許されない▼ブランド100%の表示に反し、中味はブレンド米。そんなニュースが既に何度か報じられている。米どころ新潟県で行われた民間の調査でも…。「コシヒカリ100%」と表示された品の3割が実は他銘柄混入米だった、という。これは紛れもない詐欺行為▼購入時の判断基準は表示。製造年月日、賞味期限にしても、消費者には店頭で検証する術もない。そこにあるのは「偽りがない」という表示内容に対する信頼。なのに、大前提が崩されては叶わない。消費者の保護、正直な業者を守る立場から、監督官庁には厳しい行政対応が求められている。(H)


10月17日(金)

●「知っていれば…」。知らなかったがために損をしたり、慌てたりした経験があるはずだが、考えてみると、人間誰しも知らないことの方が多い。日々新しい発見があると言っても過言でないほど。個人的だが、経済紙で目についた“弁護士保険”も知らなかった▼よくよく考えてみると、今やそんな保険があって不思議でない時代。いつ何時、訴訟を抱えるか分からない。意に反して提訴されることだってないわけでない。現実に民事訴訟は増える一途。推定ながら全国で提起される民事は驚くなかれ50万件を超えるのだから▼東京地方裁判所に足を踏み込むと、公判の数と人の多さに圧倒される。一つの法廷で、30分の間に5つほどの日程が組まれることも珍しくない。傍聴席はそれぞれの裁判の関係者でびっしり。裁判官は席についたまま、傍聴席から人が移動して次々と進められていく▼まさに流れ作業。それだけ多いということだが、訴訟は訴えても、訴えられても金がかかる。自分の力で戦うことも不可能ではないが、法の世界は難しく、弁護士の手が必要になることが多々。「保険があれば」。極く一部の保険会社には、その声が聞こえたのかもしれない▼この“弁護士保険”、実は災害保険の特約条項としての存在で、登場したのが3年前。掛け金に幾らか上乗せすることで済むのだから負担感もない。実際に契約者が増えているという現実は需要がある紛れもない証。何事にも通じることだが、知っていて損はない。(A)


10月16日(木)

●大雪山系や羊諦山などに限らず各地から雪の便りが届き、紅葉前線は山間部から平野部へ。最低気温も10度を切るようになり、農作業が大詰めの段階を迎えているなど、外は早くも晩秋の雰囲気。それが冬の足音とも重なって、どことなく気が急いてくる▼あいさつにも「寒くなってきたね」「今朝はストーブをつけましたよ」「また冬だね」といった一言が加わり、服装も長袖の重ね着が主流に。夏物と冬物の入れ替え、暖房器具の修理点検、漬物支度など、毎年のこと故、格別に意識していないだけで、冬支度は既に…▼その中で先送りしがちなのが車のタイヤ交換。北海道は今年も交通事故死者が多い。この現実を踏まえて、高橋はるみ知事と芦刈勝治道警本部長は9月末、道民に向けて緊急メッセージを発表した。その内容は言われ尽くしている基本原則ばかりだが、このタイヤ交換も然り▼毎年この時期になると、早めの交換を指導される。それは夜間や早朝に雨が降った後などには、路面が滑りやすくなるから。雪でなければ安心、と思っている人は少ないはずだが、峠などは異論の余地ない要注意ポイント。長距離を走るとなれば夏タイヤは危険行為に等しい▼「滑るかもしれない」。そんな思いが頭を過ぎれば運転に余裕は生まれない。安全運転に大事なのは気持ちのゆとり。それを支えるのは万全な備えであり、タイヤもその一つ。遅かれ早かれ、交換は避けて通れない。だったら早めに。車の冬支度時期はとっくにきている。(A)


10月15日(水)

●青く澄みきった秋空/この空をずっと行くと愛する家族の元へ/私に翼があったら/私が鳥だったら/すぐに行って連れてくる事が出来るのに…/それが出来ないもどかしさ/私は鳥ではなく人間だ/いつまで待てばいいのだろうか…▼夫と2人の子供を北朝鮮に残して帰国し、15日で丸1年。拉致被害者の曽我ひとみさんが毎日新聞に寄せた詩。「24年間、もし私が鳥になれたら、日本にまで飛んでいきたい」と思い続け、絶対忘れてほしくないことは「家族の大切さ、いつまでも信じ合える心」と訴える▼蓮池、地村さん夫妻も同じ心情だろう。蓮池さんは「お母さんは旅行に、お父さんは出張に」と言って出てきた。日本語を忘れた人はいなかったが、拉致からの歳月は本当に長かった。子供たちも帰ってこそ「原状回復」と、政府は家族も一緒に永住帰国させると約束していたが…▼「拉致問題で日本は約束を破った」「交渉はこれからだ」―国連でも取り上げられ、日朝はバトルを繰り広げた。つい先日も北朝鮮外務省は「日本が拉致問題の早期解決を求めるなら、帰国した拉致被害者5人を北朝鮮に帰すべきだ」と主張。いっこうに解決の糸口は見えてこない▼今回の総選挙は、高速道路建設や年金改革、イラクへの自衛隊派遣などが焦点といわれるが、最優先で取り組まなければならないのは北朝鮮の拉致問題だ。超党派で引き裂かれた拉致家族にあたたかい「里の秋」を実現させてほしい。(M)


10月14日(火)

●休 刊 日


10月13日(月)

●新聞、テレビ、ラジオの時代は遠く去って、情報ツールは多様化、メディアを取り巻く環境が一変した。その結果、情報は受動的入手の時代から、能動的入手の時代になった、と。「新聞が置かれた環境は厳しい」。そう言われた根拠もそこにある▼読者からすると、配達されるのを待つのだから、新聞は受動的な媒体。危惧が広がって当然だったが、今のところは…。わが国に新聞が登場してほぼ130年。活字の威力を改めて認識する一方で、変革期に差し掛かっている現実も否定できない。その証拠に無読者も増えている▼その多くが若い人たちと言われるだけに、将来的にわたって安定媒体と考えるのは甘過ぎる。そうした環境の中、15日から新聞週間が始まる。今年の週間代表標語は「広げれば 時代にアクセス 暮らしにプラス」。ちなみに昨年は「知りたい 本当のこと だから新聞」だった▼さらに遡ると、2001年度は「改革の時代を見つめる 確かな目」、2000年は「激動の ネット社会に変わらぬ使命」、1999年は「混迷の世に 新聞があり 世界がある」。こうした作品から伝わってくるのは、そうあってほしい、という期待感▼言葉を換えると新聞に対するメッセージ。うれしいことに、各種調査でも新聞は数あるメディアの中で、圧倒的な信頼を得ている。この評価こそ新聞を支えてくれる力であり、大事にしていかなければならない。「新聞は情報・感動 交差点」(今年の佳作)も肝に銘じて。(A)


10月12日(日)

●アレクサンドロスはバビロンに凱旋する時、民衆に「私はあなた方の家に侵入(占領)しない」と宣言、戦うことなく入城した。そして、ペルシャの軍長官を留任させ、治安の維持に当たらせたという。米国主導によるイラク占領政策が始まって半年▼スペードのA(エース)が出て来ない…。トランプの語源は「勝利」。切り札を手に入れないと完全に勝利するのは難しい。その切り札の大量破壊兵器も出て来ない…。それどころか、問答無用の占領政策に「米国は我々の国を破壊し、石油などを盗むアリババだ」と米兵襲撃が続発▼米軍の週平均の死亡者は4―5人、負傷者は約40人。ある武装組織は「国連や外国メディアを占領の協力者とみなし、米兵同様に攻撃する」と話し、外国人テロリストも潜入しているという。住民の巻き添えもいとわない攻撃の無差別化が目立ち、民間人の犠牲者は6割超▼治安が回復しなければ復興のロードマップが見えてこない。そんな中、年末にも自衛隊員が派遣される。政府は自衛隊活動の柱に大型プラント建設など産業振興を加える方針。工場整備などを支援し雇用対策にもつながれば歓迎されるだろうが、現地では「軍隊派遣」に変わりはない▼イラク復興への資金拠出は「3年以内に新政権が樹立される」ことを前提に、4年間で総額50億ドル(約5500億円)以上が検討されているが、復興費拠出も自衛隊派遣も国連主導でやるべきだ。勇気をもって「あなた方の家に侵入しない」と言えなかった戦争の代償は高くつく。(M)


10月11日(土)

●予定通りというか、流れに沿ったというか、衆議院が解散した。綿貫議長いわく「なれあい解散」だそうだが、確かに。小泉首相と菅代表の張り上げた声こそ聞こえたものの、こうも筋書き通りに運ばれては…。臨時国会が解散の舞台役を果たしたに過ぎない▼衆議院の解散は、内閣の不信任案が可決されたり、信任決議が否決された際に行われるのが本来の精神(憲法69条)。ところが、最近は異論もある憲法7条(天皇の国事行為)によって解散することが多い。今回も然り。そこに解散名が揶揄される背景がある▼事前に幾つか挙げられていたが、最も馴染むのが「なれあい解散」かもしれない。小泉総裁再選による弾みで解散風を提起した自民、自由との合併機運が熱いうちに受けて立ちたかった民主…。仕掛けがどちらであれ「自民・民主の思惑解散」も外れていない▼今のわが国は懸案だらけ。財政は逼迫、経済環境も厳しいまま、年金にも赤信号が灯っている。政策論議が必要だ。にわかにマニフェスト(政権公約)が脚光を浴びているが、意義を持つのは政治に信頼がある時。そこが崩れている今の時代、空手形と映らなくもない▼思いは複雑。だが、投票権の行使なくして信頼にたる政治は生まれないのも現実。自民・公明・保守新連立政権を引き続き選択するのか否か、その総選挙の公示は28日、投票は11月9日。補欠選挙が消えた函館・道南の北海道8区は、4人が既にしのぎを削っている。(H)


10月10日(金)

●東京オリンピックを記念し、健康・体育振興などを目的に2年後の1966年に制定された「体育の日」。その日として選ばれたのは開会式が行われた10月10日。以来、函館・道南はもちろん全国各地で、この「体育の日」のイベントが定着している▼「成人の日」などもそうだが、今なお「体育の日」は10月10日といった固定概念がある。とっさに質問されると、思わず10月10日と口について出る人が少なくないはず。それだけ国民の間に根を張っていたという証しだが、実は不正解。今年は10月13日である▼3連休を設けるハッピーマンデー化策によって「体育の日」は、2000年から10月の第二月曜日に。もちろん、日が変わろうと制定の精神は生き続けている。実際に最近は運動に対する認識が向上、とりわけ中高年齢層に顕著。厚生労働省の調査などが、それを裏付けている▼60歳代で定期的に運動している人は実に41%。また、社会生活基本調査によると、スポーツ行動者率は10歳代―30歳代で落ちている反面、60歳代以上は上向きの動き。その理由で圧倒的なのは「健康のため」だが、競技よりもジョギング・マラソンなどが広がりを見せている▼現代の生活は、裏返すなら運動不足生活。食は向上し、すべてが便利になって、逆に歩かなくなっている。よく言われるのは、年齢に応じた適度な運動の必要性。大事なのは無理をせず、自分のペースで、楽しくの精神。「体育の日」はそれを実践する日としたい。(A)


10月9日(木)

●江差町で再開発ともいうべき市街地の改造が進んでいる。その名も「いにしえ街道」。完成した店舗もあるなど、歴史風家屋で通りを彩る計画はすっかり形となって、十分に雰囲気を感じることが出来る段階。江差市街の名所へと期待も膨らむ▼市街地の再開発は道内でも多くが抱える課題。既に日高管内の浦河町など幾つかの町に終えた実例がある。統一感を重んじるという点では共通しているが、実施に向けて各地で議論となるのがコンセプト。江差町は採用したのが“歴史”ということで注目されている▼衣替えが進むその場所は、国道から丘側に1本上がったよく知られる通り。かもめ島方向からみると、旧江差港湾防波堤跡、姥神大神宮、横山家、旧桧山爾志群役所、旧中村家などへと至る道だが、寄り道をしながらのんびり1時間ほどを楽むには、もってこいの散策路▼江差町は桧山の支庁所在地。人口こそ減少気味で1万人を超えるほどとなったが、歴史的建造物に加え、「江差追分」が栄華の時代を今に伝え、観光面では姥神大神宮祭が“全道区”。夏・冬の観光まつりも定着、町村としては訪れる観光客が際立って多い町に数えられる▼だが、町内に感じられるのは危機感。ともすると気持ちが沈みがちな時代だが、手をこまねいていられない。その表われが「いにしえ街道」の具体化であり、様々なイベントの仕掛け…。その力となっているのが自分の町に対する愛着心。そこにまちづくりの原点をみる思いがする。(H)


10月8日(水)

●「引き際の美学」。いざ直面すると、長年、言い聞かせてきたこの言葉も頭から消えてしまう。悲しいかな、日本道路公団の藤井治芳総裁からは、そんな姿が伝わってくる。「地位に恋々とするつもりはない」と言いながら、映るのは恋々としている姿▼それは権勢をほしいままにしてきた人が陥りやすいパターン。オーナー経営者にも通じるが、いつの間にか側近はイエスマンで固まり、届くのは脚色した耳障りのいい話ばかり。端からみると、危険に映るが、疑問を抱く情報もない。藤井総裁が陥ったのも、その世界…▼旧建設省の道路局長、事務次官、そして最高の天下り先と言われる道路公団の総裁。官僚の世界では絵に描いた出世コースを歩んだ。へたな国会議員より力は上、そう思ったにしても不思議でない。その環境で芽生えた勘違い、一連の発言にも、それがのぞく▼「道路を一番知っている」などは最たる錯覚だが、糾弾されて然るべきは、混乱を招き、社会的信頼を損ねたトップの責任をまったく自覚していないこと。公的使命を担う立場から求められて当然の説明責任も不十分、挙げ句に勝手な理屈をつけて「それは誤解」と言い逃げ▼せめて引き際だけでも、と思いきや、自ら胸を張った薩摩人の美学も一夜にして撤回。独りよがりの理由をつけて、了解したはずの辞表提出を拒む行動に。そこにエリートの面子というかプライドが見え隠れするが、ここまでくると「見苦しい」の言葉しか見当たらない。(H)


10月7日(火)

●座頭市は実在の人物。子母沢寛の原作「座頭市物語」などによると、安積山麓猪苗代の近くの小高い丘あたりで女房と余生を送った。座頭市が湖岸の間道で何者かに突き落とされ重傷を負った山道は「ざとう転(ころ)ばし七曲(ななま)がり」と呼ばれている▼ベネチア国際映画祭で監督賞をとった北野武の「座頭市」を観た。勝新太郎の代表作と違うのは本人が言うように「人間味みたいなのは一切無視して、強いか弱いかしか考えていないって感じでやっている。(市は)エイリアンだと思っている」という座頭市観と、金髪にしたこと▼いつの世も庶民は不正義を成敗してくれるスーパーマンを望んでいる。悪党どもをやっつける座頭市の達人剣の映像は迫力いっぱいで、少々へきへきさえする血しぶきの飛び散る抜刀術シーンを忘れさせてくれる。やはり悪人が倒されると、庶民は胸がせいせいして生きる力がわいてくる▼北野監督は昨今の経済沈下の時代ですら、私利私欲に走る政治家や企業者たちを成敗してやりたいという信念で作製したのかもしれない。イラク戦争の復興、北朝鮮の核開発・拉致事件…その解決にも、目が見えずとも洞察力の鋭い座頭市の抜刀術居合の出番かも▼会津若松の寺の墓で眠っている座頭市は、明治になって少しばかりの田畑を借り農作業にいそしみ、食料難に耐えた。もちろん、ばくちは一切やめて…。みんなが観てほしい作品。ただ、鑑賞者の首根っこが切り落とされる錯覚を覚えるシーンが、青少年にどんな影響を与えるかがちょっと心配だが。(M)


10月6日(月)

●株価が1万円台を回復し、多少上向き感がささやかれるものの景況感は相変わらず。せめて兆しでも感じたいところだが、函館など地方ではなかなか。道財務局の景気予測調査でも、10月以降を見通した企業の景況判断は、引き続き「下降」という見方が多い▼経費の節減など企業努力は既に限界といわれる。今後の鍵を握るのは、社内的には増収対策、対外的には金融…。中でも金融だが、企業の間には不満が多い一方、期待感も抱かれている。その辺りの企業認識は日銀函館支店が9月に行った調査結果からも垣間見ることができる▼金融機関に対する不満の有無はほぼ半数。不満の理由としては手数料や貸し出し金利の引き上げが多いが、いわゆる貸し渋り・貸し剥がしも20%。だからと言って、取引の見直しを考えている企業は少なく、期待感を抱いている企業も44%とほぼ半数▼この数字をどう見るか、意見の分かれるところだが、銀行にとって参考になるのが期待の内容。企業が発する本音のメッセージだからだが、融資条件の緩和などが圧倒的かと思いきや、求められているのは「情報提供機能の充実強化」など、むしろコンサルティング機能▼「これからは単に融資の付き合いだけでは」。金融機関からも最近、よく聞く話であり、思いがかみ合っていないわけでない。ただ、そこで企業に必要なのは…。「経営の透明性と金融機関との胸襟を開いたコミュニケーション」。最近の講演で日銀の市原好二函館支店長はこう提言している。(A)


10月5日(日)

●「駐車違反が目にあまる」。かねて言われている現実だが、警察庁の違法駐車問題検討懇話会が提言した改革案が注目を集めている。骨子は大きく2点で、取り締まりの一部をNPO法人など民間に委託することと、違反の責任を車の所有者にも求めるということ▼確かに抜本的な考え方であり、支持されていい。道路交通法によると、駐車違反には駐停車禁止場所なら2点、駐車禁止場所なら1点の違反点数が科せられる。もちろん反則金も伴うが、軽く感じとられているのか、函館も含めて全国的に減る気配がない▼というより、函館はむしろ多い部類に入る都市。本紙でも何度か取り上げてきたが、例えば市内の本町地区や西部地区など。住宅地の狭い道路でも挙げればきりがないし、交差する道の角に平然と止める光景も。取り締まりの強化を叫んだところで、警察にもおのずと限界が…▼さらに重くのしかかるのは、運転者を特定しなければ摘発できないこと。このため「自分でない」といった逃げ得を許し、違反ステッカーを張られた運転者の2割が出頭してこない現実がある。放置しておくべきでない、かねて法改正を含め対策が求められていた▼その答えとして懇話会が打ち出したのが、取り締まりの体制充実とこの所有者責任の採用。確かにどこまで民間に権限を委ねるかなど、なお議論の余地があるが、そこまで踏み込まざるを得ないのも駐車違反が後を絶たない現実があるから。反論のしようがない。(A)


10月4日(土)

●国会は論戦ポーズをとりながら、解散へと向かっている。自民、民主の攻防もテレビ中継を意識した上滑りの感を免れず、声の大きさの割に中味は今一つ。この臨時国会で焦点とされていたテロ対策特別措置法の改正案も3日、すんなりと衆院を通過…▼その他の議案も淡々と日程が決まって、ここまでくると、いくら否定されようが、実質的には“話し合い解散”の流れ。この数カ月、自民、民主から伝わってきたのは選挙を意識した動き。自民の党人事もさることながら、民主と自由の合併にしても、それが色濃くにじむ▼自民は支持率が高い今、民主は合併の余韻が残っている今…。その思惑がかみ合ったのが今回の解散であり、大義名分を探すのも難しい。永田町では十分に通用する理由なのだろうが、「(前回選挙から)もう3年経ったから」というのでは、あまりに説得力に乏しい▼過去の解散には、政局を反映した名が付けられている。「バカヤロー解散」(1953年)「黒い霧解散」(1966年)「ハプニング解散」(1980年)などはよく知られるが、さしずめ今回は…。取り繕って体裁を整えるなら「新世紀解散」「マニフェスト解散」などか▼だが、しっくりこない。内実はそんなきれいごとではないから。まさか小泉首相の国会答弁をとって「あ・うん(の呼吸)解散」でもあるまい。語呂は悪いが、むしろ本音を皮肉って「自民・民主の打算解散」はどうだろう。「(選挙に)動き出した解散」もそう外れていない。(H)


10月3日(金)

●窓は広く、明るい雰囲気に包まれ、壁には絵画…。ゆったりとしたソファーが並び、まさにホテルのロビー風。新聞や雑誌も数多く揃えられていて、お茶のもてなしも。競争が激しい時代における差別化とはいえ、一瞬、目を疑う光景だった▼何所の話かと言うと、実は「病院の待合室」。見舞いに訪れた道内のある都市の医院だったが、病室に入ると驚きはさらに。すべてが個室。2人がけのソファーが置かれ、造りはちょっとしたビジネスホテル仕様。広さは二人部屋ほどあって、ユニットのバス・トイレ付き▼差額もわずかと聞き、不謹慎にも「ちょっとお世話になりたいな」と思ってしまったほど。これまで病院や医院と言えば、待合室には長いすが並び、複数部屋が圧倒的に多く、病室の壁は白く、いかにも患者の部屋という雰囲気。そして見舞いの人に用意されているのは丸イス…▼それが一般的なイメージであり、現実の姿でもあるが、そういうものだ、と思い込み、疑問を感じなかったのも事実。時代はこうした既成概念を変化させる力を持つが、医療の現場も例外でないということだろう。都市部では今や総合病院に加え個人の開業も多い▼患者が病院・医院を選ぶ時代になったと言われるのはそれ故。その最大の決め手は「医師に対する評価」だが、「患者の気持ちに立っているか否か」も大事な視点。この医院も時代を読み取った一例だが、そこに変わりつつある時代の流れを垣間見ることができる。(H)


10月2日(木)

●小泉改造内閣が発足して10日が経った。全国紙各紙が相次いで発表した世論調査の結果をみると、支持率は2社が65%など軒並み60%台。どう判断するかは意見の分かれるところだが、積極的であろうが消極的であろうが、数字の裏にあるのは期待感▼言葉を代えると、託す思い、とも言えるが、政治がそれ以上でないのは何かが欠けているから。そのもやもや感を解くヒントが先日、ある会合で聞いた東原俊郎太陽グループ社長の話にあった。キーワードとなる言葉は「ともに生きる」「ともに喜ぶ」▼太陽グループは企業活動を通して「にぎわいこそ大切」を実践。函館でも大門ビルを経営するなど道内各地で活性化に寄与している。さらに福祉活動や少年野球の支援といった社会貢献事業を数多く手がけている。道内を見渡してもここまで幅広く取り組んでいる企業は多くない▼東原社長の経営哲学がさせる取り組みだが、それも「ともに生きる」「ともに喜ぶ」を実感させる何かが誘うからに違いない。共感する、共感させる、それがかみ合って前に進む。確かにその通りだが、今の政治は、この「ともに…」の思いを国民に伝え切れているだろうか▼小泉内閣の支持率が高いと映るのは、あくまで歴代と比べてのことで、無条件で評価するのは早計。寄せられる期待感は「そうありたい」という思いが凝縮されたものであり、そこに今の政治が求められているのは何かを解く鍵が隠されている。違うだろうか。(H)


10月1日(水)

●新聞の4コマまんがに「いままでのカカシは」「雀だけを見張っていればよかったが」「各地でコメどろぼう」「カカシさんも忙しくなった」と嘆き、カカシの後頭部に監視カメラが付いていた。末世を感じさせるような農作物の盗難が続いている▼動機は「東京に住んでいる大学生の息子にナシを食べさせてやりたかった」「盗んでブドウを売るつもりだった」など。農作物はサクランボ、スイカ、メロン…。生き物はカブトムシ、外国ガメ、クワガタ…。罪の意識は薄いようだが、大量に売りさばく闇ルートも地下に根を下ろしている▼今年1月から8月までの被害は昨年の5割増の480件、被害総額は8割増の5600万円(警察庁調べ)。山形県のサクランボは来年また実をつけるように枝の根元の芽を残しており、追分町のホワイトアスパラ135キロは収穫に使う専用のノミで手際よく刈り取っていた。しかも同じ畑のグリーンアスパラは3キロだけ▼高級料理に人気のホワイトに集中、プロの仕業としか思えない。最近は冷夏の影響で不足している銘柄米や金時豆が狙われている。しかもコメ不足が心配される中、安価な米国産を混入したコメをブランド米のコシヒカリと偽造して販売する事件も発生。農水省がGメンを出動させた▼山梨県では相次ぐブドウ泥棒に警察犬まで出動。先日は青森リンゴが2500個盗まれた。七飯リンゴもたわわに色づき始めた。高校生の頃、校舎近くのブドウ畑から失敬したことはあるが、農作物に注いだ農家の愛情を踏みにじる行為は許されない。(M)


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