平成15年11月


11月30日(日)

●函館に「光」輝く季節到来―。一足早く21日から電飾電車が走り始めたが、あす1日にはクリスマスファンタジーが幕を開け、二十間坂ではイルミネーションが点灯する。さらに年が開けて2月には基坂も彩られるなど、「光」は今や函館冬観光のキーワード▼他都市から羨まれ、函館の自慢で、観光を支えている夜景。「光」はその夜景と切っても切れない関係にあり、紛れもない魅力アップの鍵。函館市が掲げる「光彩の国際都市」のメーンコンセプトの一つに「函館ひかりのおくりもの」を打ち出しているのもそれ故…▼「さらに厚みを」と具現化した代表格がクリスマスファンタジー。函館青年会議所の行動力が道筋をつけて6年目。函館らしい、函館ならではのイベントとして脚光を浴び、経済効果も既に立証済み。今年も25日までベイエリアに“メルヘンの世界”を演出する▼工事中の八幡坂に代わった二十間坂のイルミネーション、街を走る電飾電車がフォロー役を務める。さらに、新たなきっかけづくりとして西部地域振興協議会が十字街と駅前の電停を「光」で彩った。今後の広がりが期待されるが、こうした話を聞くにつけ思うのは…▼心底から函館のことを思い、少しでも函館のために、と努力している人たちがいるということ。その人たちは共通して「まず市民が楽しんでほしい」と願っている。発信する情報の中で何にも増して説得力を持つのは、楽しむ市民の姿だから。確かに。今、それを考える季節を迎えている。(H)


11月29日(土)

●経営に失敗し東尋坊で飛び込み自殺しようとした高齢者カップルが警察に説得され、生活保護を受けようと相談したが、「他県のものはもってのほか」と断られた。「死ぬならどうぞ」ともいわれ、希望を目指す心が砕かれ、首つり自殺していた…▼生活保護の適用には住居者の生活実態に細心の注意を払っていると言うが、受給申請の理由には「親子とも病気。早く治したい」など健康に関することが多い。最近は「仕事が見つからず、困っている」の訴えが増えてきた。2人の年金を足しても生活できない世帯も▼不況でパート収入を切られた年金暮らしの高齢者の申請が急増。函館市の生活保護世帯は1万387人(10月現在)で、今年度当初の見込みを814人も上回った。来月3日の市議会に10億8754万円の生活保護費を追加提案する。人口割合に占める世帯数は道内の10万都市で函館がトップ▼今後も増加は必至で、市の財政を圧迫する。そんななか、厚労省は生活保護費の補助金の削減を打ち出した。国庫負担率を4分の3から3分の2に引き下げ、削減分は地方負担にするという。それでなくても、生活保護の「年末一時金」は前年から0・9%減らされている▼「日頃、食べないものを食べたい」「年末年始を人並みに過ごしたい」「孫にお年玉もあげたい」。たとえ、1万円、2万円の一時金でも助かるという。また、政府税調は答申に年金の課税強化を明記した。「痛み」を分け合うのはよいことだが、生活保護世帯など弱者の暮らしは苦しくなるばかり。(M)


11月28日(金)

●「家族」。ほのぼのとした温かい響きが伝ってくる言葉。本来、誰にとっても最も身近で、頼りになる存在だが、今、その「家族」が問われている。親の子供に対する虐待は後を絶たず、子の親に対する家庭内暴力も相変わらず。このままでは…▼「家族って本当にいいな」。そんな思いを語り合う場としてシンポジウムなど様々な取り組みが行われているが、「家庭の風景〜三行詩と写真」の募集もその一つ。日本PTA全国協議会が2000年から始めて、今年が4回目。その入賞作品が決まり、発表された▼三行詩に寄せられた作品は1762点。「ママのてまくら ふうわふわ パパのひざまくらふっかふか ぼくの心は ぽっかぽか」「『おかえり。』 の声が聞きたくて ランドセルと一緒に走って帰る 『ただいまっ。』」は小学生の作品。さらに中学生の作品をみると…▼「お母さん 家族みんなの 相談室」「許してくれると知っているから 最近少し反抗期」もさることながら、光ったのはこの作品。「私とお兄ちゃんが宝物で お母さんはそれをつつむふろしき お父さんはそれを守って運ぶ人 どれが欠けてもだめだって」▼そして親の年代では「小さかった宝物こんなに大きくなった宝物 私、四つも 持ってます」などが。いずれの作品からも“ぬくもり”が伝わってくるが、その裏ににじむのは、悲しい現実がなくなってほしい、という思い。わずか三行の詩が大きな問題を考えさせてくれる。(H)


11月27日(木)

●「団塊の世代が定年を迎えると(それだけで)企業収益が改善される」。こんな結論を導き出した試算が11月中旬、野村総合研究所から発表された。この年代の当事者としては複雑な気持ちになる一方、現実を冷静に見つめれば、十分予測できる、当然な話▼団塊の世代とは、昭和22年から24年までの、いわゆるベビーブーム時代に生まれた世代。人口ピラミッドでこの年代だけ塊のように膨らんでいることから名づけられた、とされる。現在の年齢は54歳から56歳あたり。60歳定年として残り数年となっている▼人数も多ければ、給与の高い管理職者も多い。当然のことながら企業の人件費に占める割合も高い。素人でも分かる構図だが、金額で示されると、響きが違ってくる。なにせ、この世代が60歳となる2007年度から4年間の人件費節減額は4兆499億円というのだから▼さらに、企業の経常利益を3兆6000億円増やす効果があるとも。経済再建の鍵は団塊の世代が握っているのか、そうも思えてくるが、試算ではこの世代の退職が始まると、労働力人口は188万人も減少し、雇用削減がスムーズに進むとまで予測している▼人数が多いから、何をするにせよ競争が激しい。どう生き残っていくか、子供の時から常に競争。高校、大学の受験も、就職もそうだった。そして今、社会人としての1幕を閉じようとする時期に…。「間もなく譲るから急きたてないで」。団塊の世代からはこんなメッセージが伝わってくる。(A)


11月26日(水)

●「勉強しろ。高校ぐらいきちんと行け」「何度も同じこと言うな」。進学をめぐり69歳の祖父が15歳の孫を猟銃で射殺する事件が起きた(宮城県)。中教審が教育基本法の見直しで「家庭で果たすべき役割」も求めているなか、「ゆとり教育」の痛ましい結果か…▼ある中学生は新聞の投書欄で「学習量を減らすゆとり教育は反対です。休日が増え密度の濃い授業が受けられません。私たちに必要なのは、自分の好奇心を伸ばし、充実した学習が得られる学校なのです」と訴えている。大半が塾などでカバーしているという▼学校5日制の土曜対策で半年間、児童と地域交流の一環として小学校の囲碁教室で指導した。確かに今の子供たちには集中力が足りない。20分もすると、あきて遊び出す。普段、先生があまり怒らないせいか、あげくの果てはプロレスまがいのけんか。つい「碁を習いにきているんだろう」と怒鳴ってしまった▼土曜を有効に使おうと先生たちは工夫しているが、不安や問題点が指摘されていた新学習指導要領を1年半で改定する答申が出された。ガキ大将がいて、自然の本能「仲間と群れで遊ぶ」ことが教育の基本であることに、やっと気づいたのか。少しぐらいの脱線には地域住民が見守って▼「ゆとり教育の実態は、ゆるみ教育」だった。地域ぐるみで長所を見つけて育てる「子ほめ条例」を展開中の自治体もある。進学を巡っての射殺事件は言語に絶する。学習内容のレベルを低下させないで、バランスのとれた「知・徳・体」教育の実践が待たれる。(M)


11月25日(火)

●乗り物の中、講演や公演などの最中…。いくら注意されても後を絶たない携帯電話の使用モラル。それが事故に直結するとなると黙っていられない。運転中の携帯使用だが、警察庁は「看過できない事態」として抜本的な法規制強化の検討に入った▼現行の道交法は通話しない、画像を注視しないことを義務付けている。もちろん罰則規定もある。だが、その適用には制約があり、抑止力の面で疑問視されてきたのも事実。実際に運転中に携帯を使用していて起きた事故は、一時の減少がうそのように逆に増える傾向▼同庁の統計によると、1998年は2648件、99年は2583件。それが道交法の改正で使用禁止が義務づけられた00年は1453件まで減り、一応の法効果が確認されたが、長続きすることなく01年は3080件、昨年も2895件と改正前の水準に…▼運転中の携帯電話使用がいかに危険か、イギリスの保険会社(DirectLine)が明らかにした調査結果は衝撃的。バーチャル空間での実体験データだが、「通話しながらの運転は、飲酒運転の場合と比較しても反応速度が大きく落ち、事故を起こす確率はむしろ高い」▼ハンズフリーとて安心できないとも指摘している。それにしても1日平均8件。年間3000件水準はあまりに多い。放置しておけない。モラルに勝る解決策はないのだが、この現実では…。発見即反則金まで踏み込んだ規制強化の検討は当然。というのも、加害者になる確率が高い行為なのだから。(A)


11月24日(月)

●就職浪人だからといって、怪しげな「会社」に走るな。息子や孫を装う「おれおれ詐欺」で、だまし取った金を月給制で報酬を払っている「会社」が摘発された。経営者(主犯)は月50万〜70万円。会社員の基本給は20万〜25万円。5人のうち、3人が少年だった▼少年が振り込みを成功させると額に応じて「成功報酬」を支給していた。交通事故の修理代ほかに、最近は「消費者金融の取立てに追われている」「ヤクザに監禁されており、金を用意しなければ放してくれない」など“詐欺言葉”も多角化?し、1人3役と巧妙化している▼また、高給、寮有、三食付の厚遇をうたった「3行広告」も目立ってきた。長引く不況で資金難に陥って組員が減った暴力団の若手組員の獲得の新しい手段。「ボディーガード募集」とうたって、給料は初めは見習として15万円、寮はマンションでの共同生活としているが…▼おれおれ詐欺は家族崩壊をエサに、家族をめぐる情報不足の「核家族」につけ込んだ犯罪だ。9割の高齢者は「おれおれ詐欺を知っている」と答えているものの「状況によってはだまされるかも…」と頼りない。1月から3807件、被害総額22億6000万円というから驚く▼郵便局などで未然防止に努めているが、「孫の名前を言ってみろ」と撃退しよう。ボディーガード募集など厚遇の裏には必ず“落とし穴”がある。もちろん、こんな「会社」を選ぶ新卒者はいないが、2浪、3浪になると誘惑に負ける危険性が潜む。何事にも実態を見抜く「分別」を養おう。(M)


11月23日(日)

●経済効果は1165億円。北海道にサマータイムを導入した場合の試算である。「議論するきっかけになれば」。そんな思いから札幌商工会議所が北洋銀行の協力を得てはじき出したもので、11月中旬に報じられたが、なるほどとも、そうかな、とも…▼サマータイムは日が長い夏の期間、時計を1時間進めて、いわゆる昼の時間を長くする制度。欧米を中心に約80カ国で採用されていると言われる。メリットは余暇を楽しむ時間ができるほか、近年は暖房や照明などの省エネルギー対策としての意義も▼実はわが国でも導入されていた時代がある。戦後の1948年から4年間。確か公務員だった親の出勤時間が夏は午前8時、秋から春にかけては午前9時だった記憶がある。わが国では日の出、日の入り時間に地域差があり、姿を消したのは一律の適用に反対があったから▼だが、ここ数年、環境問題などの視点に立った議論として浮上。導入論の一方で、反対論も渦巻いている。その中で同会議所が敢えて提起したのは、北海道は緯度が高く、夏季の日照時間が長いという特性があるから。その結果が、経済効果が期待できる、という答えに▼もちろん、プラス面ばかりでない。実際にこの試算でも、労働強化につながる可能性、交通ダイヤの調整など、多くの課題があることを否定していない。当然ながら個々人でも賛否が分かれる大変なテーマ。同会議所が敢えて問いかけた意味はないがしろにしたくない。(Y)


11月22日(土)

●高齢化社会に入った今の時代、それに見合った対策を求められることが多々あるが、“地域の足”をどう確保するかもその一つ。最も身近な足はバスだが、幹線道路に集中しがちな既存バス会社の路線をどう補完していくか、各地で様々な模索が進んでいる▼車を運転しないお年寄りにとって、外出する際の頼りは路線バス。函館には電車もあるが、いずれの都市にも共通して提起されている問題が、停留所まで歩く距離であり料金など。「考えてほしい」。そんな声が新たな動きを後押しして、幾つか試行事例が生まれている▼道外では、自治組織が地区内のスーパーなどから補助を集めて地区内の循環無料バスを走らせている例、自治体が幾分助成して自動車学校の送迎バスに乗せてもらえるようにした例など。さらに道内の帯広では…。病院が患者送迎バスを利用開放し、注目を集めている▼踏み切ったのは帯広市内の郊外、住宅地が多い地域に位置する病院。既存のバス路線とは競合しない二つのルートで送迎バスを走らせている。このエリア内には大型店などがあり、小回りの効いた走り方をする送迎バスが羨ましい存在に映っていたのかもしれない▼病院が察知した。ただ、無理をしては長続きしない、あくまで「利用したければどうぞ」という姿勢での取り組み。その代わりに無料、利用できる人も制限しない、日・祝日は運休する。でも地域にとって足の選択肢が増えたのは事実。同時に、新しい時代の地域コミュニティーのあり方も示唆している。(N)


11月21日(金)

●総選挙が終わって10日余り、余震はなお続いている。保守新は自民に合流せざるを得ない状況に追い込まれて解党、同じく大幅に議席を減らした社民は党首辞任という事態に。自民、民主だって火種を抱えており、無難に維持していけるかどうか…▼今回の選挙結果を踏まえて、気の早い人は2大政党時代の到来と叫んでいるが、実態はせいぜいその端緒についたレベル。成熟度を推し量るには、このあと何回かの選挙を見極める必要がある、という見方に説得力がある。実際、政党の離合集散が続いてきた▼戦後のわが国は自民、社会、民主、公明、共産の5党体制が長かった。それが金権腐敗という言葉に象徴される政治と金の問題から政党助成金が生まれ、政党が結成しやすい環境に。となれば、我慢することはない。多党化の道が加速され、細川連立政権に結集したのは8党会派▼その政党、会派名を覚えている人は、よほどの政治通だが、その後も政党の離合集散劇は幾つか。強引な印象を与えながらも今選挙直前、民主に合流した自由にしても新進、新生という流れがあり、自由時代には保守と分裂、その保守は保守新になり、解党ということに▼小選挙区比例代表並立制下において、300ある小選挙区で小政党が議席をとるのが難しいのは明らか。3回目にして「より鮮明になった」という印象を受けるが、このままでいいのか、国民が求める選挙制度なのか、今回の結果は改めて根本的な問題を提起している。(A)


11月20日(木)

●遅ればせながら「景観」にスポットが当たっている。函館の西部地区もそうだが、街は街で、郊外は郊外で…。それだけで訪れる人に感動を与えるからだが、わが国は欧米に比べ、その視点が大きく欠けていた。道の景観一つとっても然り▼ドイツのロマンチック街道(ビュルツブルグとフュッセンを結ぶ350キロ)。車窓に広がるその景観は、賞賛の声に反しない。他にも名だたる所がたくさんあるが、非日常の世界だから覚える感動も大きい、確かにそうだが、裏を返すと、そこに「何が人を魅きつけるか」のヒントが…▼国内外を問わず、列車や車から望む素晴らしい景観は印象に残る。七飯町の国道5号・赤松街道も例外でないが、まばゆい海岸線、美しい山並み…。かけがえのない地域財産である。しかし…。現実に目を移すと、看板など景観を無視した姿は少なくない▼「目に余る。このまま将来に渡すのは忍びない」。国土交通省が行った調査結果からも、その思いが読み取れる。子供たちに残したくない道の景観を聞いたものだが、答えは多い方から「電線・電柱」「看板」「周りとマッチしていない建物」の順。率直で、正直な思いだろう▼各地で気付き始めた。並木づくりなどは分かりやすい取り組み事例だが、今年の秋、ニセコで関係者が観光客の立場になって、バスから問題点を探る行動をとったのも、その第一歩。「地域の財産をどう守り、どう築いていくか」。道の景観は地域にあらためてそう問いかけている。(A)


11月19日(水)

●スーパーなどで買い物をした時、当然という気持ちで受け取る“レジ袋”。手ぶらで行ける、ありがたいサービスという認識が定着、すっかり慣れ切った感がある。その“レジ袋”が環境問題の視点から見直しを提起されて久しいが、ここまで普及すると…▼かつての時代、食料品など日常的な買い物に行く時には竹製のカゴや布製の袋を持参するのが常だった。それに代わって“レジ袋”が登場し始めたのは何時か、ほとんどの人は覚えていまいが、スーパーの台頭などと時期をあわせて徐々に。そして今や当然という意識▼函館消費者協会の調査結果を先日、本紙で報じたが、買い物袋を持参していく人は25%、ただその人たちを含め9割が“レジ袋”を求めている実態も浮かび上がった。店側の使用減に向けた取り組みも生まれているが、この結果をみる限り、どうやら問題は客側に▼このプラスチック製の“レジ袋”を1枚作るのに、どれだけの石油資源が使われているか。知っている人はごく一部、答えは20・6ミリリットル「だそう。その数たるや年間、全国で280億枚。それが可燃ごみと一緒に燃やされるとしたら、発生する二酸化炭素の量は…▼現実的な対応としてノーレジ袋デーが叫ばれ、杉並区(東京都)のレジ袋税が注目を集めたのは記憶に新しいところ。道南では同協会がマイバッグ運動を提唱している。確かに買い物袋持参を知らない世代が増え、難しさを背負っているが、このままでは…。運動の輪を広げたい。(H)


11月18日(火)

●なかなか就職出来なければ「社会に必要とされていないのでは…」と不安になる。来春卒業予定の高校生の就職内定率は全国で34・5%、道内は過去最低だった前年を0・6ポイント上回ったものの13・4%どまり(厚生労働省調べ)。今年も氷河期は続く▼まず面接を受ける時の姿勢が気になる。ある製造業の人事担当者は、面接すると最初に自分の希望を並べ立てる高校生が増えているという。それに「休日出勤はちょっと…」「残業は困ります…」と続く。逆に「平日は山も海もすいているので、土・日曜は出勤します…」という者も▼道内は1万1400人の求職者に対して内定者は1500人余り、全国平均の半分以下。インターンシップ(就業体験)やトライアル(試用雇用)などで企業を勉強しているはずなのに「本気で仕事をする気があるのか疑わしく、しかもすぐ辞めてしまう」と嘆く▼1期生が巣立つ公立はこだて未来大の内定率は約80%(10月末)で、全国の60・2%(9月末)を上回るペース。学生が学んだことが生かせる情報関連の職種やメーカーが多い首都圏が大半。地元の函館(9・8%)に受け皿の企業の少ないのが残念。高校生も技術関連の内定が早く決まる▼今年は時間をかけて求職者を厳選する傾向が強いという。先ほどの「人財戦略セミナー」でも人財採用に必要な適正チェック、会社を活性化させる人財の採用などについて意見が交わされた。面接で職業観に疑問を持たれないように、真剣に自分と企業の将来を考えている姿勢を示そう。(M)


11月17日(月)

●調査や統計は様々に分析できるが、道警が試みた星座別交通死亡事故分析は、関心を導き出すという点で特筆に価する。交通事故は大きな社会問題。道路の整備や取り締まりなど多額を投じ、対策が講じられているが、その努力も虚しく依然として高水準▼なのに現実は…。自分は大丈夫、と勝手に解釈している人が意外と多い。「そうじゃない」。啓蒙すべき原点はこの言葉にあるが、能書きを繰り返してもなかなか実感してもらえない。目先を変えて違った視点から問いかけてはどうか、この分析にはそんな思いが読み取れる▼それにしても星座に目をつけるとは、何とも柔らかい発想。「自分の星座はいい方、悪い方…」。若者ならずとも魅きつけられる。お堅い警察にしては久々の“啓蒙ヒット作”。ちなみに分析の対象になったのは、昨年までの3年間に道内で死亡事故を起こした1433人▼分析の仕方もうまい。ちなみに最多だったのは「うお座」。「やぎ座」「かに座」が続き、逆に最も少なかったのは「さそり座」。その「うお座」の場合だが、9月と10月の午後2時―4時、同8時―10時、そして月曜日が危ない…。さらに居眠りやわき見運転に要注意とまで▼ともかく北海道は事故が多い。交通事故死者数も函館方面本部管内こそ前年比減の動きだが、全道的には今年も全国トップ。既に330人を超えている。そんな現実の中で、大事なのは交通事故に関心を持ってもらうこと。狙い通りに反響は大。家庭や職場、友だちなどの間で話題になっただけでも、道警が試みた目的は達している。(A)


11月16日(日)

●世間の常識が必ずしも法律の世界で通用するとは限らない。今月初めに東京高裁であった住民訴訟はそんな思いを抱かせた一例。記憶に残っていようか、「都市基盤整備公団が分譲マンションを大幅に値下げして売ったのは不当」として住民が訴えた裁判である▼一審に続いて住民側の敗訴だった。住宅は安い買い物ではない。いくら売れ残ったとはいえ、わずか4年の間に1500万円(平均)も下げられては、それ以前に高値で購入した住民は…。資産価値にも影響するのだから、まさに踏んだり蹴ったり。納得できない▼当然の心理。話し合ってもすれ違い。これでは感情的にもなってこよう。訴えを起こすに至った住民の気持ちは理解できる。実際に値下げ幅も大き過ぎる。認められる主張、それが市民感覚だが、判決は公団に疑問を呈しながらも、住民の訴えを退ける内容▼「合意で契約している以上、責任は買った方にある」(地裁)、「公団の法的責任は見いだせない」(高裁)と。確かに裁判は法律の枠内での判断しか許されない。それは分かる。だが、その法律は柔軟性に欠けている。しかも裁量に限界があるとすれば、ズレは広がるばかり▼本紙も経験していることだが、それに加え、新しい判断を示せよ、と言いたくなるほど判例の引用が多い。社会の価値観は時代とともに変わっているのに…。特に民事だが、なかなか新しい判断を示してはくれない。この公団値下げ訴訟の住民もそんな思いに違いない。(A)


11月15日(土)

●合併に苦悩する町村にさらなる追い討ち…。地方制度調査会が13日に行った「今後の自治制度のあり方に関する答申」は、そんな思いを抱かせる。あくまで法律を盾に、優遇措置の期限切れを改めて明記し、さらには都道府県に強い指導を要求して…▼この欄でも何度か触れてきたが、市町村にはそれぞれ今に至った歴史、文化的な事情、背景がある。確かに財政事情や行政の効率化などの面で無駄は少なくない。ますます色濃くなる少子高齢化の時代を考えると、このままでいいか、といった問いかけも分かる▼だからと言って、今の強権的とも映る手法に疑問は多々。でも、現実問題として抗し切れない。財政優遇措置を受けられる期限は来年3月末。もう半年を切っている。道南でも幾つか形が浮上しているが、この道南、北海道を含めて全国的に進むテンポは鈍いまま▼同調査会の議論にはこうした背景があった。「急がせなければ」。答申内容にはその思いが表れている。「小規模市町村の構想は都道府県が策定すべきで、その規模は1万人未満」と明記したこと、「現行法失効後は優遇のない新法を制定して、合併を継続させる」などとした点で▼「優遇措置を得て合併した方が得だから。考えた方がいいですよ」。それがこれまでとしたら、この答申から伝わってくるのは「もたもたしていると優遇措置が受けられないばかりか、都道府県に考えさせますよ」という響き。国の考えと住民の思いは、さらにかけ離れていこうとしている。(H)


11月14日(金)

●「生活レベルは上がったけれど精神的な豊かさを失いつつある時代」。現代をそう言い表した人の話を聞いたことがあるが、それを象徴する表現の一つが“総ストレス時代”。子供までがストレスを抱え、それが様々な社会問題となって噴出している▼そのストレスという言葉が、まず連想させるのはサラリーマン。大なり小なりほとんどの人が抱えている、と言われる。確かに週休2日制度が定着し、労基法上の働く条件も整えられてきたが、それは表向き。現実は仕事に追われ、精神的に辛い思いが広がっている▼消費は伸びないから生産は落ち込み、合理化、リストラの波が押し寄せる。実際、忙しいのに業績は上がらない、給与は抑えられ、渦巻くのは不満と不安ばかり。人間関係が保たれているならまだしも、それも希薄になりがち。うっ積する気持ちを発散できずにいる人が▼うつ病になる人が多いという。「こうなったのも…」。重度まで進んだ、自殺したのは過労や配転などが原因だとして本人、遺族が労災を請求する数が増えている。先日も報じられていたが、厚生労働省のまとめによると、今年度上半期の統計で請求は203件▼昨年度同期に比べて1・4倍。昨年度は341件で過去最多だったが、今年度は上半期でその6割に。年間で昨年度を上回るのは確実と推測される。あまりに悲しい話だが、これも社会に問題を提起する動き。大事なのは認識、こうした現実があることだけは覚えておきたい。(A)


11月13日(木)

●太り過ぎた女が両脇から身体を支えられ、あえぎながらやっと歩を運ぶ。門前で子供に乳をやる母親や女の肥満ぶりに口をあけて驚く男が描かれている。鎌倉初期に制作された絵巻物・病草紙の一幅…▼詞書には「京の借上(高利貸し)の女は美食、大食いを続けたために太ってしまい、その苦しみは大変なもの」とある。昔も過食症という摂食障害があった。今、その過食障害に悩む中学生や高校生が増えているという▼過食症と拒食症。きっかけは「デブってる…」など学校や職場の一言が多い。両方とも、肥満、やせ、低体温・低血圧、不整脈、味覚障害、脱毛、脳の萎縮、肝機能障害、骨粗しょう症などの症状が出てくる。拒食症の死亡率は6%で、とくに「むちゃ食い」は15%に上っており、危険な病気▼摂食障害の患者は、1993年には人口10万人あたり4・9人だったが、99年には約4倍の18・5人と増え、その9割以上が中高校生を中心にした女性(厚生労働省調べ)。ストレスなどからくる食べ過ぎ、朝食抜き、ダイエットなど、中学生は62%、高校生は87%までが経験している▼驚くべき実態。食べ過ぎは良くない、食べないのも良くない。小泉首相は教育改革に「知育、徳育、体育、食育」を挙げている。函館の東小学校のように「親子食育講座」や「食の研修会」を開く学校も増えてきた。つくづく食べる教育の重要性を思う。健康の源は食生活にあり、正しい食べ方を教えなければならない。(M)


11月12日(水)

●企業は激しい競争の中に置かれている。それは昔も今も同じ、と言う指摘は間違っていないが、大きく様変わりした違いの一つ。それは「速さ」が加わったこと。それに対応できず、乗り遅れたら…。実際、企業にとって時代への対応は急務の課題▼業種に関係なく、大企業も中小、零細企業も環境は同じ。システムや組織の近代化は最も象徴的な事例だが、そこに求められ、難しいと言われるのが発想の転換。社内ばかりか社会への貢献などを含めてだが、広い日本、驚くほど柔軟に対応できている企業がある▼新聞などでも結構取り上げられているが、青森県に拠点を持ち、函館にも支店を置くみちのく銀行もそう。ロシアに支店を開設した金融機関としての知名度に加え、きめ細かな対応、積極的な姿勢など金融界では知られる存在。最近も新たな対応が経済紙で報じられていた▼それは融資決済の迅速化。融資業務というのは、大口になるほど決済に回る数が増え、時間もかかる宿命にある。だからと言って、銀行の論理で待たすのはサービスに反する、という発想。そこから生み出したのが本店の役員や部長が出向いて決済する仕組み▼決済期間がかなり短縮されるのは誰の目にも明らか。当然ながら融資を求めた顧客も歓迎する。そこに浮かび上がるのは「自分たちの都合でなく、顧客の側に立った姿勢」。今の時代をどう生き抜くか、実はこの問いの答えを解く鍵はここに隠されている、違うだろうか。(H)


11月11日(火)

●厳粛な審判が下った。受け止め方は様々だろうが、緊張感ある政治を求める国民の見事な選択だった、と総括できる。というのは「自民中心の連立3党を圧勝させてはまずいし、かと言って民主党に政権を委ねるのも…」という思いが微妙に読み取れるから▼国の財政は危機的な情勢なのに行財政改革は一向に進まない、その一方で経済情勢は未だ明るい兆しが見えない、年金も将来への不安が広がるなど国内政治は問題だらけ。さらにイラク復興への関与、拉致問題の解決など国際的にも多くの課題を背負っている▼その中で迎えた解散総選挙。政権政党側が守り、野党が攻めるというのが一般的な構図だが、今回は政治背景に加え、民主と自由が合併し二大政党色が強まった情勢下で行われたという特徴がある。そして、もう一つ違ったのが「マニフェスト」が鍵を握る展開になったこと▼民主の議席増は、それを仕掛け、主導権を握った勢いを最後まで持続できた結果。「政権選択を問う選挙」に恥じない選挙を現出させ、今後の政治に緊張関係を生み出した功績は大きい。この民主の勢いは北海道でも際立ち、2、3、4区などで自民との混戦を制した▼函館・道南の北海道8区も然り。保守が候補を絞り切れなかった失点にも救われたが、小選挙区比例代表並立制になって3回連続の議席。自民をはじめ各政党がこの結果をどう次につなげるか。総選挙は終わった。今度は選ばれた議員が約束を実行する番。有権者として厳しい監視の目を向けていきたい。(H)


11月10日(月)

●厳粛な審判が下った。受け止め方は様々だろうが、緊張感ある政治を求める国民の見事な選択だった、と総括できる。というのは「自民中心の連立3党を圧勝させてはまずいし、かと言って民主党に政権を委ねるのも…」という思いが微妙に読み取れるから▼国の財政は危機的な情勢なのに行財政改革は一向に進まない、その一方で経済情勢は未だ明るい兆しが見えない、年金も将来への不安が広がるなど国内政治は問題だらけ。さらにイラク復興への関与、拉致問題の解決など国際的にも多くの課題を背負っている▼その中で迎えた解散総選挙。政権政党側が守り、野党が攻めるというのが一般的な構図だが、今回は政治背景に加え、民主と自由が合併し二大政党色が強まった情勢下で行われたという特徴がある。そして、もう一つ違ったのが「マニフェスト」が鍵を握る展開になったこと▼民主の議席増は、それを仕掛け、主導権を握った勢いを最後まで持続できた結果。「政権選択を問う選挙」に恥じない選挙を現出させ、今後の政治に緊張関係を生み出した功績は大きい。この民主の勢いは北海道でも際立ち、2、3、4区などで自民との混戦を制した▼函館・道南の北海道8区も然り。保守が候補を絞り切れなかった失点にも救われたが、小選挙区比例代表並立制になって3回連続の議席。自民をはじめ各政党がこの結果をどう次につなげるか。総選挙は終わった。今度は選ばれた議員が約束を実行する番。有権者として厳しい監視の目を向けていきたい。(H)


11月9日(日)

●「江差追分」を抜きに江差は語れない。わが国を代表する民謡として確固たる地位を築き、民謡界では別格的な存在。毎年、全国大会が開かれる時期は、町が「江差追分」一色に染められる。会場となる追分会館はその殿堂であり、休日には生を聴くことも出来る▼その会館で訪れた人に「江差追分」を即席伝授している人がいる。71歳の青坂満さん。昨年の5月ごろと記憶しているが、実は臥牛子も30分ほどの手ほどきを受けたことがある。そこで悟ったのは、本当に難しい、ということ。以来、唄える人を羨ましく思い続けている▼その青坂さんが、今年の北海道文化財保護功労賞に輝いた。本業は漁師で、少年時代から「江差追分」を聴きながら育ったという。努力して極め、1968年の第6回全国大会で日本一に。その後は本業の傍ら、追分の伝承や指導に尽力し、88年からは会館の専任指導員も…▼「江差追分」の魅力は、唄う側からすると、極め尽くせない奥の深さ、聴く側からすると、浪々とした節回しから伝わってくる情感、と言われる。確かに…。理屈なしに素晴らしい文化財産であり、同時に地域の人たちが立派に受け継いでいることにも感動を覚える▼「時代は変わっても、人の魂や良心を揺さぶるのが本当の追分の姿…。昔ながらの追分をいつまでも唄い続けたい」。青坂さんは本紙の取材にこう答えている。「江差追分」の雰囲気を肌で感じ帰ってもらいたい、青坂さんの指導には、そんな思いが込められている。さらなる活躍を期待したい。(A)


11月8日(土)

●きょう一日、全国的に響き渡る“最後のお願い”。遊説車から体を乗り出し、かすれた声を振り絞って…。いつもながらの街頭運動最終日の光景が広がる。前回と顔ぶれが変わって4人が立候補し、激戦模様で終盤に入った函館・道南の北海道8区でも▼解散権の行使によって執行された今回の衆院選挙は、一言で言うなら、自民・公明・保守新による連立政権の継続か否かを問う選挙。実際に、公示直前、自由と合併した民主は政権交代を訴え、小泉首相は連立3党で過半数を割れば下野する考えを明らかにしている▼いわゆる55年体制が崩れた後のこの10年、政治の世界は混迷続き。その中で経済は疲弊し、国民の間に生活不安、将来を広げている。それが政治不信となり、近年の投票率の低下はその延長線上の動き。全国的に落ちてきて、前回(2000年)は平均で62・49%…▼何を隠そう、函館もこの低投票率だけは全国区。残念ながら道内のワースト市町村の上位ランクを続けている。現実の姿として、最新の3回は連続して60%割れ。ちなみに前々回(1996年)は過去最低の53・40%、前回(2000年)はそれを上回ったものの59・78%▼5人に2人が棄権している。どう考えても多い。政治は声を上げなければ、行動しなければ、変わらない。そのために与えられた手段が選挙での投票。誰に託すか、どの政党に委ねるか、一票は紛れもない意思表示。投票日はあす9日。考える時間はまだ十分にある。(A)


11月7日(金)

●今の時代、思いがけず急に脚光を浴びることがある。それは人だったり、ものだったりするが、先日、本紙が取り上げた「にがり」のブームも然り。テレビ番組や雑誌などが火付け役になったようだが、人気は函館地域にも押し寄せ、売る方が驚くほどの動きに▼食生活などとも絡むが、ここ数年、健康志向が顕著。それを裏付けるかのように健康食品やサプリメント(栄養補助食品)の売上業績は続伸中。老いも若きもだから、そこに目をつけない手はない。健康などを扱うテレビ番組が生まれ、専門雑誌も増えている▼「にがり」もそうだが、現実に「これはいい」といった健康情報は伝わり方が早い。豆腐を作る過程の凝固剤として欠かせないこと、体にいいこと程度の知識はある。だが、健康のために摂取するという位置付けまではどうだったか。その証拠にこれほど極端な脚光を浴びることもなかった▼「今になって何で」。そんな疑問がぬぐえないが、この「にがり」のブームは、とりあえず右倣えとばかりに伝播した一つの事例。函館市内でも売り場を拡張した店があるという。恐れ入るが、本紙によると、困惑気味の表情があちこちに▼販売業者、扱い店もさることながら、栄養学の専門家からも。「にがり」の主成分は塩化マグネシウムであり、「過剰に摂取するとカルシウムの吸収に支障を来たしかねない」のだそう。体質的な個人差もある、大事なのは「自分に合わせて」の視点。それは「にがり」に限ったことではないが。(N)


11月6日(木)

●「毛無山」。道南の、しかも函館から近い所にありながら知名度は低く、実際、道案内人がいなければ容易に足を運ぶことのできない山だった。だが、途中の道は変化に富んで、標高751メートルの山頂からは駒ケ岳やきじひき高原などが眼下に。「何とか」。整備が望まれていた▼その願いが叶った。大野町の理解と、9月から整備に当たっていた住民団体の大野町自然に親しむ会(丸岡進一会長)の手によって。草木を刈り取って幅2メートルの道が切り拓かれ、しかも多くの人が楽しめるように、比較的こう配の緩やかなルートがとられている▼入山する場所は、大野町から江差町方面に向かう国道227号の「檜沢の滝」入り口。この滝を越えて大石の沼までのルートが設けられたのは数年前。滝まではハイキング、その先の急な上りを越えると、なだらかに大石の沼へ。新しく設けられたのはそこから先の道▼山頂までは距離にして約5キロ。早ければ2時間、ゆっくりでも3時間あればたどりつく。近間ながら手付かずの自然が残っている山でもある。時期によってクマに要注意として関係者は複数での入山を薦めているが、気の合った仲間で自然と触れ合うにはもってこい▼健康、体力づくりに対する意識の広がりに伴って、函館・道南でも近年、山の愛好家が増えている。春の花の季節、秋の紅葉の季節などは特にだが、新たに挑戦できる山として「毛無山」が加わった。11月も半ばを迎える今季はともかく、来年の初夏にまた一つ楽しみが広がる。(A)


11月5日(水)

●「天の原ふりさけみれば春日なる…」。8世紀の奈良時代、中国に留学するのが文化エリート。阿倍仲麻呂もその1人。望郷の歌を詠んだが、中国・西安に骨を埋めた。玄宗皇帝と会った興慶宮跡に記念碑がある。その西安で日本人留学生による「わいせつ寸劇」騒動が起きた▼大学の「文芸の夕べ」に出演した日本人留学生3人のテーマは「日中友好」。Tシャツの上に赤いブラジャーを着け、性器の位置に紙コップ。背中には「日本」「ハート」「中国」が書かれ、手をつなぎ「ナ、ナ、ナ…」と叫びながら踊った。「これが中国人のイメージ」とも言ったという▼とても日中友好を訴える寸劇とはいえない。ブーイングが上がり、3人はステージから下ろされ、「著しく下品。中国人を見下している」と大規模な抗議デモに発展。3人は「中国の思想、民族性、風習に対する認識の欠如からきたもの」と謝罪、帰国した▼学生は時には“暴走”するもの。中国人留学生がススキノで風俗店を営業、荒稼ぎしていた。「中国なんかから就学だとか学生だとかいって入ってくるけれど、実際はみんなこそ泥。みんな悪いことをして帰るんです」(2日、神奈川県の松沢成文知事)という発言も飛び出す▼「演劇は観客に心から笑ってもらうものでした」というが、目に余る軽率な出し物。李白とも交遊があった阿倍仲麻呂や、都の大学の明経科(今の政経学部)から唐に留学した空海は「留学生も地に墜ちた」と嘆いている。日本人教師も1枚加わっていたというから情けない。(M)


11月4日(火)

●「夫から妻へ、妻から夫へ60歳のラブレター〈3〉」。既に2冊出されているが、〈3〉が示すように3冊目が出版された。収められた“ラブレター”は158編。それぞれに長く人生を共にした夫婦の通い合う気持ちがにじみ、言い知れぬ感動が伝わってくる1冊だ▼夫婦にはあうんの呼吸と言うか、言葉がなくても分かり合える、という思いがある。だから、感謝の気持ちなどは、なかなか口にしない。照れもある。だったら短い文章に託したら。「60歳のラブレター」は2000年に住友信託銀行が企画して、熱い視線を浴びている▼昨年から今年にかけての募集に寄せられた作品は実に7777編。収録されたのは極く一部だが、一つひとつが感動物語。亡くなった、病気の、夫や妻に対する思いに始まり、定年後の生き方など、そこに浮かび上がるのは人生ドラマ。それも現実のドラマである▼「会社を潰し、自宅を処分した時、落ち込んで立ち上がれぬ私に、君は込み上げる涙を堪え、『もう社長と呼ばれる身分ではなくなりましたが、あなた、これからも胸張って生きて』。(略)。君も私以上に辛いだろうに。(略)。甲斐性無し亭主を見捨てもせずに有難い」▼すべての作品を紹介できないのは残念だが、この短い文面からでさえ伝わってくるものがある。「どんな小説よりも強く心に訴える真実の叫びがあるから」。巻頭で作詞家の秋元康氏はこう説いているが、実際、読む人に強烈なメッセージを送り込む作品ばかり。一読をお勧めしたい。発刊元はNHK出版。(A)


11月3日(月)

●高速道建設、年金、消費税、教育、自衛隊のイラク派遣…。文化の秋はマニフェストを巡る「選挙の秋」ともなった。「文化の日」をはさんだ選挙戦は初めて。11月中の衆院選の投票は1960年と63年の2回だけ。文化行事華やかな最中に選挙カーが街に繰り出している▼マニフェストが従来の選挙公約と違うのは、政党が政権を担当したら行う政策の数値目標、実行期限、財源をはっきり示す点。例えば消費税に関して、自民党の「3年間は上げない」に対し、民主党は「年金の維持には新たな財源が必要」と打ち出した。さらに「北朝鮮への送金停止」などを追加した▼マニフェストの裏にはどうしても党の思惑や戦略が絡む。向こうが反対なら、こちらは賛成。相手の出方次第で手直しするため、総花的な公約になってしまう。個々の候補者は党のマニフェストの精神を地域の問題にいかに応用していくか、その能力が問われている▼とにかく投票しなければ政治家(国)に文句は言えぬ。20代を対象にした本紙の調査によると、投票には「興味がない」「信用できる人がいない」「仕事でいけない」と答えている人は少なくない。「選挙があること自体知らなかった」という人もいた。函館の投票率はいつも道内で最低のレベル▼マニフェストは政党が国民と交わす一種の契約。政党や候補者が契約違反をしないように、美辞麗句でくるんだ“本音”を見抜こう。「自分の1票で日本が変わる」ことを信じて、灯下親しみつつ、文化の秋にふさわしい衆院選にしたいものだ。(M)


11月2日(日)

●「数百年をかけてヒノキアスナロ(ヒバ)を育てよう」。江差町でこんな壮大な森づくりが始まろうとしている。そのプロジェクトは官民が手を握って進める「桧山古事の森づくり」。あす3日に記念植樹などを行って、息の長い取り組みの第一歩を踏み出す▼人間の営みは、自然界のさまざまな恩恵を受けて成り立っている。木や森もその一つ。空気の浄化、保水の機能、土砂の保全に貢献していることぐらいは誰もが分かる。だから大切。渡島・桧山地域でも森づくりの機運が高まり、植樹や育樹活動が活発になっている▼そんな中でも、このプロジェクトが注目されるのは「江差ならでは」があるから。それはヒバ。現在も残る歴史的建造物、旧中村家住宅などもそうだが、その多くに道南産ヒバが使用されている。ところが…。修復に求められる樹齢の大径木の確保が年々大変に▼将来の修復に備えた取り組みが必要、遅ればせながら手を打たなければ…。道森林管理局(函館分局)と南北海道林業総合事業協同組合など地域の考えが一致。その推進母体として住民参加の桧山古事の森育成協議会が組織され、いよいよ具体的な行動段階を迎えた▼「数百年後の住民に贈る宝物」。テーマも素晴らしいこの“古事の森”が築かれるのは、江差町椴川の国有林約5ヘクタール。3日は参加者を募って600本ほどの苗木を植樹する。まさに将来への第一歩。見事なヒバが整然と林立する数十年後、数百年後の光景が、頭に浮かんでくる。(A)


11月1日(土)

●「待つ」というのは忍耐。楽しみの代価としての「待つ」ならともかく、果てしもなくじっと「待つ」のは楽じゃない。だが、人間にとって、それも慣れらしい。確かに大都市の人たちは「待つ」を苦にする様子がない。対して地方に住む我々は…▼現実にそれほどの経験がないが、恐らく5分、10分と待たされると怒りが込み上げ、イライラ度は100%になるに違いない。開かずの踏切として今、問題になっている東京のJR中央線・小金井街道踏切などは、まさにその世界。だが、あれだけの人が待ち続けている▼この三鷹―国分寺間には13カ所の踏切があるそうだが、この問題踏切は遮断機が上がるのはせいぜい1時間に3、4回とか。それもすぐに次の警報が鳴って危険この上ない状況。立体交差事業に伴う暫定とはいえ、我慢せよ、という方が無理なのに、やはり慣れなのか…▼他の同様の踏切を含めて、これまで怒りの声が噴出しなかったのが不思議なぐらい。「これも現実。仕方ない」。待つことに慣れ、待つことを苦にしなくなった、そんな姿の表れと受け止めれば分かりいい。確かに大都市生活は「待つ」で気をもんではやっていけない▼サラリーマンの昼食一つとってもそう。上京するたびに出くわすが、正午を過ぎるや順番待ちの列があちこちに。我々なら「並ぶより他の店に」となるが、みな当たり前といった様子。こうも違うのか、「待つ」の事例から、地方で生活する我々が“せっかち”なことを教えられる。(A)


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