平成16年1月


1月31日(土)

●「公共の場で人様に迷惑をかける行為をしない」。改めて言われる話ではないが、罰則を設けないことには後を絶たないというのだから法改正も仕方ない。新たに航空機内での迷惑行為が処罰の対象になった。この15日から、とりあえず八つの行為が…▼航空機内で守るべき行為として、誰しも頭に浮かんでくるのは、携帯電話などの電子機器の使用であり、トイレでの喫煙、乗務員の業務妨害など。それは安全運航に支障を及ぼす行為だが、そのほかにも秩序を乱す行為とか、性的嫌がらせなども許されない▼航空会社でつくる定期航空協会のデータによると、年間に届けが出された迷惑行為は2002年で278件を数え、昨年も9月までで218件。このうち警察に待機を要請したり、目的地の変更を余儀なくされる事例が、毎年30件ほど起きているというから事態は深刻▼電車やバスなどと同様に、航空機内は極めて狭い空間。しかも見ず知らずの多数の人が乗り合わせる“公共の場”であり、そこには自ずと求められるルールがある。ましてや航空機である、不届きな行為は重大事故を誘発しかねない。としたら厳しくあって当然…▼情けない話だが、これも現実。困り果てた同協会は数年前から罰則を盛り込んだ法整備を要望していた。その結果…。客室乗務員の口頭注意に、機長の禁止命令にも従わずに迷惑行為を続ける、こんな乗客に「50万円以下の罰金を科すことができる」。航空法はこう改正された。(A)


1月30日(金)

●森の「いかめし」、長万部の「かにめし」…。道南の駅弁が引き続き道外でブレークしている。わが国では“旅のおとも”として駅弁の歴史は古い。最近は空港での空弁も人気を集めているが、東京などでは昼食としても持てはやされている▼函館でも京都、沖縄、高山などが思い浮かぶが、百貨店で日常的に企画される物産展のキーワードは、全国に共通して「うまい物」。その代表格として業界で広く知られるのが、東京・新宿にある京王百貨店の「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」▼始まったのが1966(昭和41)年というから、間もなく40年。今日まで支えてきた原動力が駅弁と言われるほどで、この21日に終了した39回目の今年も200種類が顔をそろえた。自ずと売れ行きに注目が集まるが、全国に名だたる駅弁を退けて道南勢二つが存在感を見せつけた▼売り上げ個数で、森の「いかめし」が他を圧倒。味と安さが魅きつけて34年連続の王座を保持した。さらに道南からもう一つ。特急車内で根強い人気を持続している長万部の「かにめし」で、単価1000円ながら堂々の5位にランクされた▼さすが北海道。釧路の「たらば寿し」が3位、名寄の「鰊・数の子弁当」が9位に入っている。改めて紹介するまでもないが、函館駅で販売されている駅弁も引けはとらない。それにしても…。食が“売り”の道南に、東京で支持された駅弁がある、この事実は地域として率直に喜んでいい。(H)


1月29日(木)

●女性問題で決着をつけようと、無職の息子が母親の運転する車で空き地に行き、自衛官の父親と殴り合いのけんかをし、腕力に勝る息子が父親に1週間のけがを負わせた(久留米市)。岸和田市の中3の長男は父母と対決する体力はなかった▼「自分になつかず、しつけのつもりで暴力をふるった」(継母)。虐待が始まったのは1年半ほど前から。食事は3カ月前から1週間に1食に。部屋には毛布代わりのブルーシートが敷かれ、激しい床ずれの跡。体液が流れ出す状態だったという。なんと惨い残虐行為か▼父親と継母と、継母の実子の3人が食事に出かける際、長男が「一緒に連れて行って」と頼んでも暴行を受けるだけ。長期間の飢餓状態で体重はわずか24キロ、保護された時は脳に重い障害が。久留米市の息子のように父母にかかっていく体力も気力もなかった▼近所の人も虐待に気づいており、たまに登校しても、やせて顔色が悪く「SOS」の兆候があったという。学校では継母を問いただしたが、拒否された。児童相談所にも通報があったが、家に踏み込んでまでの調査はしなかった。児童虐待防止法では立ち入り検査の権限を与えているのに…▼27日も富士市で虐待が起き、母親にけり倒された6歳の女児の体中に打撲の跡。虐待防止法から1年半で虐待で死亡した児童は108人。虐待の疑いが濃ければ、プライバシー尊重なんて言っていられない。地域住民と学校と児童相談所が連携を密にして子供を守るしかない。(M)


1月28日(水)

●政治家に求められるのは潔さであり、勘弁してほしいのは言い訳。学歴詐称疑惑の渦中に置かれている民主党・古賀潤一郎議員の行動は、そんな思いを抱かせる。同時にその判断を可とする政党の認識の甘さ。自民党のことを批判する立場を放棄したに等しい▼卒業したかどうかは本人が一番知っていること。大学側に確認するまでもなければ、勘違いや思い違いはあり得ない。なのに、調査しなければ分からない、という。ただただ呆れるばかりだが、選挙の際に公にした学歴が虚偽だったという事実の結果責任は重い▼政治家は「自らの行動に責任を持つ」ことを厳しいまでに求められる。たとえ意図的でなかったと釈明したところで、その真意は第三者が確認のしようのないこと。とすると、とるべき道は一つしかなかったはずだが、爽やかイメージとは裏腹に、出した答えは議席への執着▼過去に事例があるように、離党は疑惑議員が真っ先にとる行為。だが、それは所属政党に対し責任をとったに過ぎず、国民に責任を示したことにはならない。でも、永田町という世界は、離党が禊(みそぎ)としてまかり通るようで、民主党の認識も然り▼「離党は重い決断」という説明が、すべてを語っている。「通った事実があるから詐称という類のことではない」という幹部の発言は論外だが、「本人の判断を待って」に終始し、主体的な姿勢は未だ伝わってきていない。ここで大事なのは党としての毅然とした姿勢。本人はもとより、野党第一党の見識も厳しく問われている。(N)


1月27日(火)

●後世に残すべき財産、それは自然に始まって有形、無形など数多い。もちろん「北海道も」だが、どう位置づけていくか、21世紀を待つかのように道が打ち出したのが北海道遺産構想。財産価値に加え、地域の振興策という視点を持たせているのが特徴だ▼“遺産”の判断基準は難しい。客観的な物差しがあるようでないからだが、北海道遺産も前段で議論があった。その結果、学術的、美的がすべてとせず、残したいもの、大事にしたいもの、今後の取り組みが期待できるもの、という視点をむしろ尊重するという位置づけに▼「選定をバネに新たな活性策を」。その趣旨がすべてを伝えているが、肩肘を張ることはない。意識の喚起、地域の振興の役に立つなら…。だから道民も参加する。2001年の第1回、そして昨年の第2回の応募数、推薦された“遺産”の数が、それを裏付けている▼締め切られたばかりの第2回も、9107通が推薦したのは1294件。このうち函館・道南関係は、ほぼ1割の126件。「五稜郭」「立待岬」(函館)「鴎(かもめ)島」(江差)のほか「道南弁」なども。このあと専門委で候補を絞って10月にも25件程度が決まる▼「函館山と砲台跡」「路面電車」「姥神大神宮渡御祭」「上ノ国の中世の館」「福山城(松前城)と寺町」「南茅部などの縄文文化遺跡群」。覚えていただろうか、ちなみに第1回で函館・道南から選定されたのはこの6件。「改めて脚光を浴びるきっかけになった」。北海道遺産効果は関係者のこの言葉に凝縮されている。(A)


1月26日(月)

●官のつけが民に、そうした事例は少なくないが、またまた企業に酷な押し付けが行われようとしている。いとも簡単に、伝家の宝刀ともいうべき法改正によって。ここまで触れると何のことか推察できるかと思うが、65歳までの継続雇用の義務化▼説明するまでもあるまい。年金財政の悪化という政治のつけを。年金の受給開始年齢を60歳から順次65歳まで繰り下げざるを得ない事態を誘因、60歳の定年年齢との間に空白期間を生み出した。既に現実の話だが、政府が考えた対策は実に気楽というしかない▼企業に「お願いします」というだけだから。この年金問題、受給開始年齢の引き下げばかりでない。保険料の増額も強いている。大企業はともかく、大勢を占める中小・零細企業にとっては、その負担だけでも重くのしかかろうとしているのに、空白期間も抱えろ、とは…▼「せめて年金をもらえるまでは」。労働者の思いは切実。生活のためであり、法によって保護されるのは願ってもないこと。それに応える、は一見、政治が見放していないことを印象づけるが、つけを回している姿は消しようがない。しかも労働者がホッと一息つくにはまだ早い▼大企業で3年間、中小企業で5年間の猶予が認められる見通しだから。結局、ここ数年の間に当面している人たちに、法の恩恵は望み薄。その一方で、これが新規採用に影響しなければいいが、という懸念もわいてくる。国会の諸経費も含め、こうした財源こそ行財政改革によって捻出すべきだ。それが政治の責任のとり方だと思うのだが、その声はなかなか届かない。(N)


1月25日(日)

●どうも学生は理数系が苦手。文部科学省によると、高校3年生を対象にした学力テストで、理数科の正答率が想定を大きく下回り、理数の学力低下が裏付けられた。高校3年の時、化学の単位が足りず追試で、ようやく卒業証書をもらったことを思い出す▼まして大学の卒業証書は筒に入れて大事にしまってある。民主党の古賀潤一郎代議士が選挙用のプロフィールに記入した「米カリフォニア州ペーダイン大学卒業」を巡って疑惑がもたれている。本人が大学を訪れ確認したが、大学側は「単位は卒業資格に足りなかった」という▼学歴や留学歴、ボランティア活動などの経歴詐称は公選法違反で「2年以下の禁固に処する」とある。もちろん、議員辞職は免れない。8年前、参院選で当選した議員が「明治大学を中退」と「スイスでボランティア」の2つのウソをつき、禁固6か月(猶予4年)の有罪判決を受けた▼野村沙知代さんが総選挙に出馬した時も「米国の大学に留学したように経歴を詐称した」と告発され、裁判ざたになった。古賀代議士は「卒業を確信していたので、未卒業とは驚いている。今後も調査する」と強気だが…▼米国の大学卒業や、外国留学がハクがつくような時代だろうか。自転車に乗って選挙戦を繰り広げた代議士、ウソをつかない誠実な政治家…。米国の大学を卒業したか否かは本人が一番知っている。卒業を忘却して、新しい国づくりを志した代議士の「経歴詐称」はいただけない。(M)


1月24日(土)

●道南を象徴する樹木の一つが「ヒノキアスナロ」。一般的には「ヒバ」の方が通りいいが、自然林の多くは姿を消して、かろうじて残っている程度の存在。このままでは…。官民の危機意識は「ヒバ」を大規模に育成、管理する行動へと誘っている▼「ヒバ」は主に青森県から栃木県日光付近までに分布。道内では江差、松前など渡島半島にみられ、建築資材としての価値は歴史的建造物からもうかがえる。「北方植物園」によると、このヒバ山が松前藩の財政を支えてきた、と記述され、大事に育てられてきた歴史がある▼ところが…。「元禄時代に12日間も燃え続けた山火事で大部分を失い、その後は乱伐などもあって美林の名が揺らぐ」ことに。今では極端に減って大径木ともなると、探すのも大変とさえ言われる。放っておけない、とする手始めが、昨年11月の江差での取り組みだった▼「桧山古事の森づくり」。同町椴川の国有林約5ヘクタールに計画し、行動の第一弾として住民が600本の苗木を植えた。さらに幅広く…。この取り組みに連動させる形で道森林管理局が打ち出したのが「北の木の文化貢献の森」の創設構想。ネーミングも趣を感じさせる▼計画地は渡島・桧山管内の国有林6カ所。巨木まで育てて将来の需要につなげる、壮大な思いが凝縮されている。大事なのは手をつけること。「ヒバ」は道内的に貴重で、道南にとってはかけがえのない樹種。頓挫することのないように…。この森づくりは「地域に贈る宝物づくり」にほかならないのだから。(A)


1月23日(金)

●書店は「あらすじ本」と「新選組」のコーナーがにぎわっている。文学は原本を読破するところに意義があるのだが、「あらすじ本」は忙しい現代人のニーズに応えた形。埼玉県の高校の校長が「マンガ世代の生徒に文学に出会う機会を」と企画したのがきっかけ▼「志半ばで女神が死ぬ。男神は黄泉国まで追いかけるが、結局は離別…」(古事記)「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の…」(平家物語)「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは…」(方丈記)▼米国で900ページにのぼる長編「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を長時間読み続けた子供が頭痛を起こした。さらにページ数が増える次巻では頭痛患者が続出すると医師は警告。だから「あらすじ本」を読めばいいとは思わぬが、読書にもT(時)P(所)O(場合)がある…▼わずか2〜5ページで原本の魅力は伝えられないが、新しい読書法の一つだ。「竜馬がゆく」も「千夜一夜物語」も「風と共に去りぬ」も通勤電車の中でも読める。「昔読んだ本が懐かしい」(シニア)「教養としてあらずじだけでも…」(ビジネスマン)▼19歳と20歳の女性が受賞した芥川賞の作品も「仮想的な人間関係、入れ墨やピアスによる身体改造…」と数ページで読めるかも。大学の授業で携帯電話で撮った写真を題材に川柳、俳句、短歌をつくる時代。文学の形体は変わる。「あらすじ本」が、ヤングが原本を読むイントロになることを願う。(M)


1月22日(木)

●「チャイルドライン」。まだ馴染みが薄いが、子どもの思いに耳を傾ける、いわば子どものためのホットライン。多くの悩み、声が寄せられるなど、全国的に実績を積み重ね、そして函館でも…。本格的な活動に向けボランティアの取り組みが進んでいる▼人間関係が希薄で、複雑な社会と言われる今の時代、悩める子が少なくない。親にも、先生にも、友だちにも言えず、どこかに救いを求める。聞いてもらうことで気持ちが楽になる、そんな存在として評価されているのが、この電話によるチャイルドライン▼函館では2002年の11月に組織化への動きが始まり、昨年4月に「チャイルドラインはこだて」が発足。以来、大事なのは、かかわる人の力、と徹底して講座を重ねてきた。そうした努力によって、いよいよ5月の全国一斉チャイルドラインに参加することに▼先日の本紙に小林恵美子代表のインタビュー記事が掲載されていたが、その中で小林代表はこう語っている。「本当は子どもの周りにいる大人が話を聞いてあげればいいんです」。確かにそうだ。だが、「そうはいかない現実がある」。昨年の全国一斉では7万件ものアクセスがあったという事実がそれを裏付けている▼「――はこだて」の活動はこれから。常設を模索しているが、場所の確保に始まって、電話をフリーダイヤルにするだけでも経費はかかる。求められるのは、行政を含めた地域の後押し。理解の輪の広がりを期待したい。(A)


1月21日(水)

●若者に社会への不満を増幅させている最大の要因は就職難であり、わが国ではその不満が渦巻いている。内閣府が先日、そんな調査結果を発表した。確かに頷ける。新卒も、中途も、今のわが国の雇用情勢は、それほどまでに不満を抱かせておかしくないほど悪いのだから▼近年は必ずしも一律でない、とも言われるが、社会で自活をしていく上での前提条件は定職に就くこと。将来の安定を感じる基本部分であり、そこが揺らいでいるとなると、穏やかでいられない。行き着く思いは不満となって表れる、当然といえば当然…▼この調査が行われたのは、昨年2月から6月までの間。日本、韓国、ドイツ、アメリカ、スウェーデンの18歳から24歳の若者を対象に、社会に対する満足度などを聞いたものだが、結果は予想通り。わが国はドイツとともに際立って不満度が高かった。その割合は65%▼ちなみにドイツは67%で、概ね3人に2人。さらにその理由として就職難・失業を挙げた率は、日本で65%、ドイツで70%。5年前の同じ調査では、就職難・失業を不満の要因として挙げた日本の若者は40%、前々回が12%だったことを考えると、現実がいかに厳しいか、を教えられる▼この若者の意識変化の底流にあるのは、紛れもなく長引く経済情勢の低迷。そろそろ何とかしなければ…。わが国を代表する経済人が年頭に示した景気見通しは、明るさを期待させるが、この調査結果は不安が不満となって気持ちを疲弊させている若者の姿を浮き彫りにしている。(N)


1月20日(火)

●証券投資はどうですか、そう聞かれたら、考えさせてください、と答える人が多いに違いない。調査データで確認するまでもなく、そんな姿が容易に想像出来る。庶民には関係のない世界という思いを抱かせてきた結果とも言えるが、遅ればせながら見直す動きが生まれている▼わが国は言わずと知れた“預貯金大国”。個人の金融資産は推定1378兆円あるそうだが、日銀のデータによると、そのうち預貯金が56%というから約772兆円。それに対して証券投資などに回っているのは10%ほど。超低金利の今の時代でも同じ構図が続いている▼こうなった最たる理由として挙げられるのが、一方的に預貯金を奨励し、預貯金こそ善と教え続けてきた教育。親ばかりか、国も。証券投資などは、それと対極するものとして位置付けられ、完全に教育の範囲外に。その“つけ”が今、回ってきたということだろう▼預貯金の金利がいかに低くなろうが、その分を証券投資などに、とはならない。その根底にあるのはかたくなまでの抵抗感。内閣府の調査でも77%が「しない」と答えている。だが、市場経済の活性化を考えていく上で、この意識改革こそ大きな課題…▼将来を見据えるまでもなく対策を講じなければ。ようやくというか、国も証券市場の構造改革に乗り出した。幾つかの法改正に続いて、優遇税制の適用、情報の公表、教育・啓蒙策などの検討を行っている。時間はかかろうが、正しい認識を持ってもらう努力を怠ってはならない。(H)


1月19日(月)

●「同じ北海道なのに」。改めてそんな思いを抱かせた道東や道北の豪雪。北見市などの積雪量は軒並み170センチ以上というから半端な雪でない。これだけ降られたら道路も鉄路もマヒ状態になって当たり前。気象の脅威をまざまざと見せつけられた▼函館もそうだが、帯広や北見などは、道内で比較的雪のない地域。この時期にほとんどないのも珍しいが、100センチを超えるドカ雪もまずない。だから備えもしていないが、例え備えていたにしても、この積雪量はお手上げ。函館だったら、なお大変だったに違いない▼地球温暖化という言葉に象徴されるが、近年、気象論議が活発。それは「おかしい」と悟らせるデータが歴然としているから。「7月に夏日ゼロ、12月は暖冬傾向」は昨年の函館。昔、冬はもっと寒かった、実際に肌で感じる気候も微妙に異なってきている▼北海道の素晴らしさは四季にメリハリがあること。観光面から考えるとなおさらだが、冬も適度な雪があってこそ北海道。確かにドカ雪は困る。かと言って無くても…。各地で目白押しのイベントには雪が欠かせないし、函館の元町もメルヘンの世界に誘う雰囲気が生まれてこない▼はこだて冬フェスティバル、スノーランドかみいそ、大沼函館雪と氷の祭典、江差たば風の祭典など、函館・道南の冬のイベントも今月末からが本番。「もう少しあっても…」といった雪を待つ声も聞こえてきそうだが、気象のメカニズムばかりは如何ともし難し。「適度に…」と願うしかない。(Y)


1月18日(日)

●市民創作「函館野外劇」に明るい話題―。新年早々そんな記事が本紙に掲載された。覚えている人が多かろうが、「今夏公演1回分 大手旅行会社が買い取りへ」の見出しがついた記事。最終的な決定はまだながら、こうした動きがあること自体、特筆されていい▼この欄でも再三、強調してきたが、「函館野外劇」は夏の函館を彩るビッグイベント。というより、歴史とロマンの街・函館にとってかけがえのない文化財産。昨年はリニューアルに成功し、手作りの歴史は既に15年。国内の野外劇に多大な影響力を及ぼしている▼市民の理解、公演の維持、財政的な問題など、この間の関係者の努力は並大抵のものではなかった。だが、継続は力なり。この1、2年、これまで蒔いてきた種が確実に実をつけ始めている。対外的に高まっている評価から推し量れるが、この話題はその具体例▼実際に首都圏などでは知名度が高く、ツアーの反響も大きい、と聞いてはいたが、公演1回の買い取りとは、話だけでもうれしい限り。加えて今年は…。修学旅行生に観てもらいたいと公演時期を繰り上げる計画もあり、大きく飛躍する年といった予感を抱かせる▼地域としてこの旅行代理店に感謝しなければならないが、それと対比して、今一つなのが行政をはじめとした地元の機運。せめて金の心配なく将来的に公演が持続できる環境を整えてあげたい。函館子ども歌舞伎とともに、他の都市から羨ましがられる文化財産なのだから。(A)


1月17日(土)

●「国家公務員」。好不況などに左右されない安定職業。“親方日の丸”とも揶揄されるが、実際のところ、業績悪化や倒産など民間で起こり得る現実の心配もない。最近は抑えられてきたとはいえ給与は中小企業より上。休暇など福利厚生も充実している▼「恵まれている」。抱かれているイメージは昔も今も同じ。そう思われるが故かもしれないが、それにしても…。人事院が年始めに発表したアンケートの調査結果は厳しい限り。例えば「国家公務員の仕事ぶりに不満を感じた経験は」に対して「ない」は僅か18・4%▼この数字をどう受け止めるかは人それぞれだが、ほぼ5人に1人しか満足していないのは、どう割り引いても低い。「対応が悪い」「たらい回しをする」「つまらないことで形式や前例にこだわる」など理由は多々。さらに63%が「特権意識の排除」を求めている▼確かに言われて当然、錯覚していると疑われる職員もいる。だからと言って、国家公務員を一緒くたに語っては片手落ち。像として印象の強い“霞ヶ関族”ばかりでない。現場で使命に燃えている職員はけっして少なくない。14日に黄金道路で亡くなった道開発局の職員も然り。あの気象条件の中で、夜を徹して監視に当たっていた▼ただ全体に目を向けると、行政改革、組織改革が叫ばれながら、実効はまだまだ。雇用は悪い、経営努力も民間では行き着くところまできている、市町村も厳しい…。そんな現実と対比して、変わった姿が伝わってこないから不満も増幅する。そう考えると、この調査結果は頷ける。(N)


1月16日(金)

●青森県は新しい農業観光構想を打ち出した。いわゆるグリーンツーリズムだが、注目すべきは県が主体的にかかわる点。早ければ今年秋にもスタートするのは、名づけて「達者村」。八戸から車で20分ほどの所に位置する名川町で試みられる▼道南でも農業と観光を結びつけた取り組みが芽生えつつあるが、近年、観光のニーズは変わり、体験滞在型への需要が高まっている。実際、首都圏では群馬や福島県に田や畑を借り、休日には農作業という人が。農業の需要は多い、青森県が目をつけたのもそこ▼確かに1年ほど前までなら青森は遠すぎた。だが、上野と八戸の間が約3時間、東北新幹線の延伸によってネックが解消された。それでなくても青森県を訪れる観光客の半数は首都圏からであり、その6割が中高年齢者。金も時間もある、この年齢層こそターゲット…▼さらにガーデニングなどへの関心も高い。さてどこの町に、となって県が選んだのが名川町。サクランボやモモ、リンゴなど1年を通して果物が生育するという所で、近くにはハイキングが出来る名久井岳なども。県いわく「中高年が満足できる条件の整っている」と▼言うまでもなく、最初は短期でも、将来的には長期滞在需要への対応まで考えての計画。「一度が二度となって、第二のふるさとに」。早ければ夏にも本格的な“村民募集”を始める動きだが、そこに浮かび上がるのは新幹線効果。あらためて新幹線の“力”を思い知らされる。(A)


1月15日(木)

●経済の低迷、国をはじめ地方自治体の財政悪化…。いわゆる“官依存”に、はっきりとした限界が見え、北海道経済の自立が叫ばれて久しい。分かりやすく言うなら、官から民へのシフトだが、頭では理解しても、現実にどうするか、となると…▼最もその渦中に置かれているのが建設業界。戦後の北海道は、道路・橋梁、河川、港湾にしても、公的に整備すべき所ばかり。その開発の遅れを取り戻す役割を担ったのが公共事業であり、その規模の膨らみは何時しか、建設業を北海道経済の基幹業種へと押し上げた▼既に知られるように、北海道の建設工事における公共事業の割合は、全国と比べて15%も高い。実際に国の直轄と補助事業を合わせて1995年から3カ年は6000億円台。数十年間、大きな減額もなく堅調に事業が回ってきたから、この間、企業数も増加した▼その堅調さに陰りが見え始めて6年ほど。残している事業も少なくなった。国の財政もままならない。どう考えても、もはや公共事業への依存では生き残れない時代。「先行きは厳しくなるばかり」。ここへきて、経営の多角化や他業種への転換など、新たな模索が生まれつつある▼もちろん、道南でも。昨年の12月初旬、本紙が連載したのが、その事例の幾つか。全道的にはリサイクルや福祉関連事業、飲食業などを手がけた例もあるが、求められるのは誘導策。道も来年度、独自の支援策を講じようとしているが、こうした動きを見るにつけ、官から民へ、改めて転換期を迎えたことを実感する。(N)


1月14日(水)

●ニワトリよ、おまえもか。長寿の魚としてたたえられるコイの奇病、コイヘルペス(霞ヶ浦の養殖場)による大量死。原因は新発見のウイルスだった。国内では下火となったBSE(牛海綿状脳症)が米国で初発生した矢先。今度はニワトリが悪質なウイルスにやられた▼病原性の強い鳥インフルエンザが発生したのは山口県の採卵鶏農場。致死率の高い病原性のもので、渡り鳥(糞など)を通じた感染の可能性も高く、約6000羽が死んだ。毒性の鳥ウイルスが人に感染すると、肺炎や多臓器不全などを起こすいう。7年前に香港で6人が死亡している▼一昨年、4000人近くが感染し、200人以上が死亡した西ナイル熱も鳥類が媒介。西ナイルウイルスはカラスなどの体内で増殖し蚊を通して人に感染、悪化すると脳炎を発症し最悪の場合は死亡する。鳥ウイルスも西ナイルウイルスも治療法がないというから厄介だ▼また、京都で昨年6月に採れた約5万個の卵が「12月2日採卵、11日賞味期限」のラベルを貼って出荷された。卵は冷凍状態で5、6カ月は保存できるというが、採卵した日に出荷するのが鉄則。20数人が腹痛などを訴えた。この場合、商法モラルを欠いた業者が“ウイルス”▼母親がつくってくれた卵焼きを食べるのが遠足の楽しみだった。スーパーで売る格安の卵は集客用の目玉…。今度の鳥ウイルス卵の出荷は山口県内だけで、北海道には影響は少ないようだが、渡り鳥は北にもやってくる。“人畜共通感染症”に警戒を強めよう。(M)


1月13日(火)

●あと10数年後には渡島の農家戸数が半減? こんなショッキングな予測がある。まさか、という思いを抱くが、根拠のない話でもなさそう。というのも、道が行った離農に伴う農地流動化状況調査から推測されるというのだから▼農業は道南の基幹産業の一つ。稲作から果樹・野菜まで幅広い営農形態で今日に至っているが、全道的な例にもれず農家戸数は減少の一途。1965(昭和40)年に1万8000戸だったのが、その10数年後には1万戸を割って、その後さらに減り続けて現在は4350戸▼昔から言われていることだが、背景にあるのは、労働の厳しさと農業を取り巻く経済環境。国の農政に振り回された側面もあるが、若い人の農業離れが進んで、後継者が後継者でなくなる現実が生まれ、減少傾向に歯止めがかからずじまい。それにしても、この予測は…▼渡島の昨年の実態として、例えば労働力不足・後継者問題での離農は15戸、65歳以上の割合はほぼ5人に2人の39%、その逆に新規就農はゼロ、などが浮き彫りに。深刻な事態であることぐらいの察しがつくが、そこから2015年を予測した結果として半減するという予測が▼農家戸数は2120戸になるのだと。当然、空く耕地面積が出る事態も想像できる。どうするか。程度の差こそあれ渡島だけが背負っている現実ではない。日本の、北海道の農業を、食糧政策に連動する話。少なくとも現在の担い手対策では不十分。このデータは「経済面で就農しやすい環境づくりこそ急務」と問いかけている。(A)


1月12日(月)

●今年は申(猿)年。主にバグダッドやカイロを舞台に語られるアラビアン・ナイト「千夜一夜物語」に「猿の国(島)」がある。漂流した王子の一行は猿の国に上陸。食人鬼に抑圧されている猿の大群。王子は食人鬼との激戦に苦しむ猿軍に加担▼食人鬼を追い払ったが、故郷に帰りたくなって、ユダヤ人の都に近い「蟻の谷間」にたどり着いた。追跡してきた猿の一隊は犬ほどある蟻の大群に襲撃された。王子の一行も次々と殺されたが、王子だけが天女の羽衣に乗って故郷に着いた(501夜〜514夜)▼身柄を拘束された食人鬼のフセイン元大統領はバグダッド郊外の独房で1日12時間の尋問を受けている。猿の大群や王子の一行を苦しめた。壁には殺害された息子2人やブッシュ大統領の写真。「もはや大統領ではないことを悟らせるため」にと、独房の小さなトイレ掃除などのが日課という▼猿の一部が王子を追跡したように、米英の占領軍や復興にあたっている各国の派遣部隊に攻撃をかけている。他国からも悪い猿が入り込み、「イラクでの対米攻撃は100%成功」(ビンラーディン)とテロ攻撃は続く。南部のサマワ地区に派遣される自衛隊。北海道駐屯部隊が中心▼仕事はあくまでも水道復旧などインフラ整備。壮麗な古代都市「バビロンの空中都市」を再現して欲しい。サマワの市民の協力は期待できそうだが、他のテロ攻撃の確率は低くない。先遣隊が安全を十分確認してから本隊を派遣しよう。北海道護国神社の絵馬「全員無事の帰国」を祈りたい。(M)


1月11日(日)

●あす12日は「成人の日」。渡島教育局のまとめで、管内の新成人該当者(1月1日現在で20歳)は男女合わせて5091人。昨年より4%減少し、少子化現象がくっきりと…。一時的に増えている町村もあるが、函館市は3103人で減少の傾向▼国民の祝日として「成人の日」が設けられたのは、戦後の復興期に入った1948(昭和23)年。20歳。当人にとって、それは大人のお墨付きを受ける新たな自覚の年齢であり、祝日の制定は社会として祝い、励まそうという趣旨から。その思いは50年余り経った今も変わっていない▼その「成人の日」は、長いこと1月15日だった。成人祭とも呼ぶところもあるが、市町村ではこの日一斉に成人式が行われてきた。それが祝日3連休化によって2000(平成12)年からは1月の第2月曜に。さらに地域の事情などから近年、催しはこの日に限らない。道南でもお盆や正月という町村も▼その成人式、かつては厳粛な気持ちに包まれる場だった。祝ってもらう側にとっても、祝う側にも。それが時代の変化というか、価値観の変化というか、形骸化していると指摘されて久しい。実際に都市部などでは大声で会話をし続け、話は聞かないとか…▼それを持って成人式を否定するものではないが、問題は祝う側と祝ってもらう側の思いがかみ合っていないところに。祝ってもらう側にとっては同窓会、同期会の感覚…。それも分かる。だとしたら、もっと見直していいのかも…。渡島管内では函館など7市町で12日に行われる。(N)


1月10日(土)

●今年のNHK大河ドラマ「新選組!」。前評判は上々のようで、それを裏付ける現象は昨年から。東京の有名書店に設けられた「新選組」のコーナーもその一例。かなりの数の関連書物が並んで、その光景はブームを予感させるに十分▼大河ドラマは言わずと知れたテレビの看板番組。1963(昭和38)年の「花の生涯」を皮切りに、昨年の「武蔵」まで42作。そうそうたる役者にも支えられ、揺るぎない地位を得ている。波及効果も大きく、舞台になった地やロケ地が観光地化することも珍しくない▼そして43作目として登場するのが「新選組!」。函館・道南はドラマの直接的な舞台でないにしても、箱館は新選組ゆかりの地。新選組ファンを呼び込むことも含めて期待が膨らむ。考えようだが、例えばの話、“土方ゆかりの場所めぐりツアー”だって組めるかもしれない▼五稜郭跡はもちろん、土方歳三最期之地碑があり、大森浜には記念館が。新しいスポットとして立像が五稜郭タワーの敷地内に建立されたし、旧幕府群の上陸の地が森町の鷲ノ木に。ドラマで土方を演じる山本耕史さんがその像を訪れたとか、本紙でも昨年末、関連記事が幾つか…▼箱館戦争などの研究で知られる近江幸雄さん(白鳥町)の原稿が、成美堂出版(東京)の「幕末激闘録・新選組」に収録された話もあった。人気の脚本家・三谷幸喜さんがどう描き、山本さんらがどう演じるか。これまでの作品を超えるドラマに…。そんな期待が膨らむ中、あす11日から始まる。(H)


1月9日(金)

●「日本人は健康で長寿」。世界保健機関(WHO)が、わが国に改めて長寿国のお墨付きを与えている。2003年世界保健報告で示したもので、平均寿命、平均健康寿命とも世界一。高齢化率を見るまでもなく、長生きできる国であることを実感するが…▼その平均寿命は男性で78・4歳、女性で85・3歳。男性は80歳、女性は85歳と覚えていていいかと思うが、振り返ると戦後間もなくの時代は男女とも60歳台だった。食べ物が豊富になり、医療技術の進歩充実によって、50年余の間に男女とも20歳ほど延びたことになる▼賞賛に値するが、それもさることながら、もっと目を向けて然るべきが平均健康寿命の延び。字の解釈通り「心身ともに健康に過ごせる期間」であり、もっと分りやすく表現すると、平均寿命から日常生活に支障のある病気やけがなどの期間を差し引いた年月▼WHOが2000年6月に初めて示したのが最初。ちなみに、わが国は最初の報告時から世界一で、4年目の今年の平均健康寿命は男性で72・3年、女性で77・7年。逆に言うと、男性では6年ほど、女性では7年余り、病気などの期間があるということになる▼「人生楽しく」の原点は、健康であること。幾ら金を持とうが、幾ら名をはせようが、健康でなければ…。若い時はともかく、中高年になると、年を重ねるごとに健康の重みを実感する。最高なのは「健康で長生き」。努力が必要だが、まずは神頼みで。今年の初詣でに健康を祈願した人が多かったに違いない。(H)


1月8日(木)

●函館にとって悲願の一つが北海道新幹線の開業。東北新幹線が八戸まで延び、青森までが実現の段階を迎えているだけに、青函同時開業への思いは高まるばかり。詰めは残されているものの、そこに灯りが差し込んだのだから、朗報であり吉報…▼2000年の政府・与党の申し合わせで、着工しない、とされてきて3年。この間、気持ちの上で閉塞感が生まれがちだったが、流れを変えたのはたゆまぬ運動の力。昨年末、与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームから、着工させる、とする答えを引き出した▼確かに、このご時世、予断は許されない。財源や採算性、投資効果の問題などの壁が消えたわけでない。だからこそ地域として熱意を示す行動が求められるのだが、いち早く腰を上げたのはJR北海道。八戸から東北新幹線を使った盛岡、花巻日帰り格安パックなどを展開中▼3月には将来、新幹線も走ることになる青函トンネル(1000段以上ある階段を別に23・5キロ)を歩くユニークなウォークツアーを計画している。「大事なのは(新幹線を)利用して、その素晴らしさに触れてもらうことであり、こうした企画はその一環」…▼菅原重光取締役函館支社長はこう語る。その裏にうかがえるのは「地域が熱意を示さないことには…」というメッセージ。確かにこれから問われるのは、地元がどれだけ熱心になるかということ。「熱意で実現させよう新幹線」。このスローガンの意味が改めて問われている。(H)


1月7日(水)

●「道州制」という言葉が行政用語として際立って登場する。「道」を北海道から採ったと錯覚し、北海道は今だって「州」のようなものではないか。そんなたわ言も聞いたことがあるが、それは単に北海道のことを指す言葉でもなければ、考え方でもない▼発想の原点は地方分権であり、「道州制」はそれをさらに進めた考え方。全国を7ないし9のブロックに分け、それぞれの政治行政に主体性を持たせる制度。いわゆる連邦制と言った方が分かりいい。もちろん権限の委譲にとどまらず、首長の公選などまで含まれる▼その発想自体は結構古くから。首長を首相が任命するという内容に反対が強く埋没したが、1957(昭和32)年の第4次地方制度調査会で議論された経緯がある。それからほぼ50年。地方の時代と言われて久しいが、今、あらためて現実論議に。そのモデル地域として…▼北海道が最適と考えられている。本紙との新年対談でも語っていたが、高橋知事も前向き。前段のアプローチとして昨年8月には「道州制」を展望した分権型社会のモデル構想を策定、それをもとに議論を進める道州制推進会議を10月に発足させている▼新年度予算の政府原案にモデル事業予算(100億円)が盛り込まれたが、前向きなのは北海道ばかりでない。年末には青森・秋田・岩手の北東北3県が「道州制」を目指すことで合意している。地域を活性化させるために地方がいかに力をつけるか。「道州制」の問い掛けはそこにある。(A)


1月6日(火)

●「運転中 メールひと文字 事故一生」。今年の運転者向け交通安全スローガンで、1年間、さまざまな啓発に登場する。「交通事故を減らさなければ」。その思いが社会の共通認識になってかなりの時間が経つが、現実に目を向けると事態は大変なまま▼道路の改良や安全対策は進み、取り締まりなども強化されているのに。残る決め手はモラルだが、そのモラルに訴えるのが難題。だから解決しないのだが、飲酒、速度超過、無理な追い越しなどの違反が多い現実が、それを物語っている。だが、諦めてはならない▼その取り組みの一つが、全日本交通安全協会などが主催するこの交通安全スローガン。1965(昭和40)年に募集し、翌年春の全国交通安全運動で使われたのが始まり。以来、寄せられた数多くの作品が啓発の役割を担うとともに、募集自体が考える機会を生み出している▼第一号は「世界の願い 交通安全」だったが、中には未だ記憶に新しいスローガンも幾つか。例えば、その翌年の「とび出すな 車は急に止まれない」や、73年の「せまい日本 そんなに急いで どこへ行く」。これらに比べ、今年のスローガンには時代背景が覗く▼携帯時代を象徴し、一向に減らない危険行為。実際によく見かけるし、それが原因となった事故も減っていない。耳を傾けよう、事故を起してからでは手遅れなのだから。もう一つ、「教訓は あの日のドッキリ あのヒヤリ」も覚えておきたい。(H)


1月5日(月)

●ダイバーにさらわれたニモ、息子を捜す父親。クジラに飲み込まれたり、クラゲの大群に襲われたり…。不審者が学校に乱入したり、児童を連れ去ったり…最近の社会現象と重なる。孫3人を連れてCG技術を駆使した「ファインディング・ニモ」を観てきた▼主人公はイソギンチャクに住む小さなカクレクマノミ。人間にさらわれた息子を助けるため大海に乗り出す。ナンヨウハギやサメ、ウミガメが共演。大きな目と口、ヒレで感情をだし表情豊か。好奇心が強く、登校の初日に安全なサンゴ礁の外に出て人間のボートに近づいた…▼3年ほど前から高齢者たちにも授業参観に出てもらい、地域と交流を深めようと「開かれた学校」が増えた。ニモにとってサンゴ礁は学校・地域。そのサンゴ礁も安全ではなく、熱帯魚ブームで危険がいっぱい。間一髪でサンゴ礁に帰ったが、ダイバーが乱入▼校門にカギをかけ、センサーで不審者をチェックするようになった(京都の小学校はカギを掛けず、センサーの電源も切っていたが…)。校外はやはり危険がいっぱい。父親のマリーンやドリーのような脇キャラの協力が必要だ。両親や地域住民が守ってやるしかない。ニモが教えてくれた▼親子の絆を軸にした単純な物語だが、水槽の管から懸命に脱出するヒレに障害を持つニモの大きな勇気。児童たちも危険が迫ったらまず自分の力で脱出しなければ。新年は教育施設を舞台にした事件はご免だ。7、5歳の孫は冬休みの日記にニモを書いていた。大人も目が離せない。(M)


1月4日(日)

●観光都市・函館。誰もがそう思っている。伝統的建造物が異国情緒を醸し出す元町、そしてベイエリアに函館山。さらには湯の川温泉、トラピスト修道院…。観光スポットに事欠かない。映画、ドラマの舞台として、旅番組などでもよく取り上げられる▼そこに求められるのは、いわゆる“足”。JRは新幹線が八戸まで延びて東北が近くなり、さらに駅舎も生まれ変わった。一方の函館空港は改築の1期工事が終わり、観光客を迎える新たな環境づくりが進行中。ところが、そこから市内を巡るアクセスとなると▼観光都市としては…。確かにバス、電車は走っているが、訪れる人に優しくないし、情緒面も劣る。「何か方策を考えるべき」。その思いを払拭する話を、あるホテル経営者が語ってくれた。それは夢あふれる話。長年、住んでいると考えもしないことで…▼それは現在、元町方面と湯川を結んでいる路面電車を、湯川から空港まで延伸させようという話。レトロ電車が観光客を出迎えて、市内へと誘う。空港に降り立った途端、感激の声が上がるに違いない。何せ、空港から“函館”に触れることが出来るのだから▼財源一つとっても確かに課題は多い。だが、よく考えてみると、新設区間の距離は長くなく、道路の幅員もある。電車は中古を改造すればいいし、5年内にはバッテリーで走る電車が実用化されるという情報も。だとすると、聞く耳を持たずに否定する話ではない。街づくりに大事なのは夢を描き続けること。地域としてこうした提案を大事にしていきたい。(A)


1月3日(土)

●「志れば迷い 志なば迷わぬ 恋の道」―新選組副長の土方歳三が許婚に宛てた恋文。長刀を腰にさし乗馬鞭を右手に未来を見つめる五稜郭のブロンズ像。記念館の彫刻は左手に「誠」の旗を掲げ、決戦に行く直前の姿。「誠の世界」は正夢になってほしい初夢だ▼「一富士二鷹三茄子」に対応した「四扇五煙草六座頭」などが初夢に現われれば縁起がいいと言われる。人は太古から、いい夢を見る方法を探し求めてきた。古代ギリシャでは「いい夢を孵化させる術」があったという。見た夢をノーカットで録音録画しておくマシンができないかな…▼そんなことを考えている中で見たのが、赤地に白く「誠」の文字、すそにはダンダラ模様を染め抜いた縦120センチ、横90センチの新選組隊旗。「誠忠」と抜いた旗もあったという。一にも二にも「まこと」を重視する「誠」を唱える幕末。近藤勇や土方らが「誠」を選んだ理由は何なのか▼「まこと」「まごころ」があれば家庭、社会、国家に争いなど起こらず、平和な世界が実現する。ブロンズ像を制作した小寺真知子さんは「土方の魅力は一つの忠誠というか、損得抜きに命を傾けて自分の信念を貫いたことなのでしょう」と「誠」の儒学を分析▼今年の大河ドラマは「新選組!」。近藤、土方、沖田らの強さと格好よさもあるが、その底に「誠」が、その奥には「命懸けの誠」が流れており、今の若者も惹きつける。松前藩出身の永倉新八も雄姿を見せる。ノンレム睡眠で「誠ブーム」の夢をみて、先人の足跡に感謝したい。(M)


1月2日(金)

●休 刊 日


1月1日(木)

●新しい年を迎える気持ちはいつも新鮮。「今年はこうするぞ」と決意を新たにする一方で「今年はどんな年になるのか」などと思いを巡らせたり。程度の差こそあれ誰もが考える。「一年の計は元旦にあり」の格言が物語っているが、それにしても…▼国内外ともに課題山積の激動の時代。イラク情勢も落ち着いてほしい、経済もトンネルから抜け出してほしい、凶悪犯罪も減ってほしい。その「――ほしい」ことは数え切れないほどあるが、自分たちが生活する地域に目を移すと、2004年は将来に大事な意味を持つ年である▼そのキーワードは「市町村の合併」。道南でも函館市等5市町村など大きく進もうとしている。そこに求められるのは、新しいまちづくりへの発想の転換。例えば、発展策にしても企業誘致など産業面から“人の誘致”に重きを移すとか▼確かに企業の立地が地域にもたらす効果は大きいが、この経済情勢下では…。でも函館・道南には温暖な気候風土、魚が主の新鮮な食べ物、安い物価など、生活がし易い環境が。首都圏で持つ家を売ったり、貸したりすれば、移り住んで楽に生活できる▼既にそういう人たちがいる。迎え入れる体制を整えることで可能性は広がるのでは。行政面で難しさも指摘されるが、全国には定年退職し、悠々自適な生活をしている人たちは多い。人口が増えれば、消費も増える。何より“人の誘致都市”はないから注目も浴び、それがさらなる宣伝にもなる▼「人に優しく、あなたを待っているまち」。函館・道南の新たな“売り”としてどうか。新しい年へ贈るメッセージとしたい。(A)


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