平成16年10月


10月31日(日)

●「急速に進む禁煙の包囲網」。そう言っていいほど、喫煙者の肩身は狭まるばかりだが、その現実はさらに…。最近も、沖縄でホテルのロビーやレストランが全面禁煙になるほか、JR北海道は2、3年後をめどに特急の全面禁煙化の方針、などの情報が▼分煙から禁煙へ、嫌煙が市民権を得るようになって何年経つだろうか。東京に禁煙タクシーが登場したのが1988(昭和63)年。時期を同じくして新幹線に禁煙車両が設けられたという記録が残っている。まだ15年あまりだが、この10年の進み方は速かった▼今や公共的な場は禁煙の方が多く、「喫煙場所以外では吸わない」は、社会的に重視される完全なマナー。ちょうど2年前、東京都千代田区では通行量の多い地区限定ながら路上喫煙(歩きたばこ)を禁止する条例を施行して注目されたが、その輪は徐々に広がる流れ▼函館でも11月1日から市民体育館など市教委が所管する10施設が全面禁煙となる。時代の要請はとどまらない。禁煙の先進地とも言われる沖縄から伝わってきたのが、ホテル旅館組合(280社加盟)のロビーやレストランでの禁煙規制。さらに進めて全館的な禁煙を検討中の大規模ホテルもあるという▼こうも環境が変ってきては…。実際に喫煙者は減る傾向を辿(たど)っているが、先日、日本たばこ産業が発表した調査結果によると、今年6月時点での喫煙者率は29・4%。3割を切っては喫煙に関する社会的な答えは出たと言っていい。価値観は時代によって変わる、その一つの例を“たばこ”からうかがい知ることが出来る。(A)


10月30日(土)

●新潟県中越地震が発生して1週間。いつ来るとも分からない余震におびえ、寒さは増すばかり。建物被害に加え、道路をはじめ寸断されたライフラインの復旧作業もままならない。高まる不安の中で9万人ほどの人が避難生活を余儀なくされている直下型地震。あの阪神淡路大震災で知られる言葉となったが、震源が浅く、突き上げる揺れなどが特徴で、道路の決壊、建物の損壊や傾斜地の地滑りを招きやすい。今回の中越地震ほどでないまでも、11年前の北海道南西沖地震も34キロと比較的浅い所で起きた地震だったそれにしても多い。改めてその脅威と人間の無力さを思い知らされるが、北海道は「内陸型地震がどこで起きて不思議でない」とされる地域。研究機関などが出しているデータなどによると、確認されているだけでも60ほどの活断層があるのだという道南も例外でなく函館平野西縁断層帯、江差断層、八雲断層などが。「今後30年の間に地震が発生する可能性が、わが国の主な活断層の中ではやや高いグループに属する」。8年ほど前に調査が実施された函館平野西縁断層帯の報告だが、いわば要注意の判断と受け止められるいわば「日ごろから注意と備えが必要」と言われる地域。こうした現実を目の当たりにすると、注意と備えの術を何ら持ち合わせていないことに気づくが、はっきり言えるのは、中越地震は他人事でない、ということ。今は被災した人たちの生活を考えることが最優先。どう注意し、どう備えるか、それはもう少しあとに考えることとしたい。(N)


10月29日(金)

●冬の足音が刻々と近づいてきている。27日には札幌をはじめ道内各地から積雪情報が飛び込んできたが、道南も朝晩の冷え込みがめっきり厳しくなり、最低気温が氷点下になるのは時間の問題。それは早めの冬支度をうながすシグナルでもある▼「早めに…」という言葉とともに求められる一つが車のタイヤ交換。雪を見ないうちは実感がわかないのも確か。「まだ大丈夫」。そんな気持ちが働き、ともすると先送りしがちだが、遅かれ早かれしなければならないこと。だとしたら、換えるに越したことはない▼「これで何時、雪がきても…」。何より安心できる。備えによる安心こそ、安全運転の視点から最も大事なこと。常識の範ちゅうだが、この時期、雪がないから安心というわけではない。例えば、雨が降った後などだが、濡れた路面は凍結状態になって不思議でない▼その時、夏タイヤと冬タイヤでは…。ドライバーなら容易に分かることで、強いて説明の必要はあるまい。減速運転で気をつければ、とか、夜間はあまり運転しないから、はどこまで通用するか。そこには「運転する際の気持ちの余裕」がない。「…余裕」の前提は、今の時期で言うとタイヤ▼峠など山間部を走る場合はなおさらで、モラルとして当然のこと。夏タイヤはまさに事故と背中合わせであり、起こしてから悔やんでも遅い。「路面状況はもはや冬」。それぐらいの思いが必要と言われるが、あながち大げさでない。毎日の気象情報もそう語りかけている。(N)


10月28日(木)

●“食糧基地・北海道”の看板を維持していけるのか。そんな思いが込み上げてくるほど、農業、漁業など第1次産業従事者の減り方は激しい。若い人が着実に就業しているならまだしも、流れはまったく逆で、高齢化が強まっているというのだから昨年末の本欄で、渡島の農業人口について触れた際、「1965(昭和40)年に1万8000戸あったのが、現在は4350戸台でしかない」「このままいくと2015年には、さらに半減する」「65歳以上の就農者が39%を占める」など、幾つかのデータを紹介したどんな産業でもそうだが、担う主役は機械や物でなく人。知識に加え経験が求められる第1次産業はなおさら。なのに農業ばかりか漁業も同じ悩みに陥っている。「道南の漁業離れ一段と進む」。先日の本紙に掲載された記事の見出し。昨年11月に行われた国の調査結果だったそれによると、1963(昭和38)年の同じ調査で2万7000人ほどいた海面漁業就業者(海上での漁業に年間30日以上従事)は、今や3分の1ほどの9331人に。さらに、この5年間だけを見ても14%の減少とともに、高齢化の流れを強めている姿がはっきりと実際に新規の就漁者は少ない。従事者減、高齢化の現実は、すべてそこに起因するが、この調査でも65歳以上の漁業者率は30%。農業の39%よりいいとはいえ「後継者がいる」と答えた漁業者が22%という実態を踏まえると、増える展望は抱けない。北海道は大変な地域課題を背負っている。(A)


10月27日(水)

●ほとんどの人が分かっているだろう、11月1日から1万円札などの紙幣が新しくなる。刷り込まれる人物は意外と頭に入っていないものだが、ちなみに新札の千円札は野口英世、5千円札は初の女性として樋口一葉、そして1万円札は現在と同じ福沢諭吉振り返ってみると、5千円札が最初に登場したのは1957(昭和32)年で、1万円札はその翌年。2千円札を除いて現在使われている紙幣の誕生は1984(昭和59)年というから、20年ぶりの切り替え。金融機関ではATMなどの準備が最終段階に入っている新札に切り替える理由は幾つかある。経済効果もその一つだが、それよりも最大の理由は偽造の防止。確かに、わが国の紙幣の精密度は世界でも有数だが、それでも年間1万枚ほどの偽札が見つかるといった現実があり、信頼性の問題などが問われかねない状況に偽造が難しいとされる女性を肖像に使うのが一つの注目点だが、それを可能にしたのが進歩を続ける印刷技術。実際に新しい紙幣にはこれまでになかった偽造防止技術が施されている。それ故の話題か、今月初め、試し刷り段階のテスト券が外部に流出し、インターネットのオークションに出された、といった話もあったそのテスト券が1800万枚も刷られていたことに驚きが広がったが、念には念を入れて、それだけ刷った上で点検するということ。その結果として合格点が出された新札が出回る日まで、あと数日。単純に「早く手にしてみたい」という思いが込み上げてくるが、かざしてみたり、その時にとる行動は恐らく皆、一緒に違いない。(H)


10月26日(火)

●新潟中越地震から3日。25人が死亡、3493人が重軽傷、36市町村で約9万7700人が避難。家が倒壊、道路が寸断し、孤立した集落が続出。おにぎり1つと井戸水で2晩過ごした200人が3時間も歩いて山里から降りてきた。「やっと助かりました」▼余震のたびに、道路の裂け目が広がり、傾いた家が倒壊し、映像にみる被害の悲惨さが増す。政府の地震調査委が今回地震が起きた中越の長岡平野西縁断層帯でM8程度の地震が発生する確率は30年内に2%以下と発表したばかり。地元の震度計はM7を記録していたという▼「元暦の大地震」を経験した鎌倉時代の鴨長明は「余震」のことを方丈記で「そのなごりしばしばはたえず」と書いている。日に20度は起きて、20日ほど後に少し間遠になり、3カ月ほども続いたという。中越地震の余震もM6の確率は3日以内が30%、1週間以内が40%(25日現在、気象庁)▼地球に蓄えられている巨大なエネルギーの約1割は「地震列島」の日本に放出されている。温暖化が進めば、海水温が上がって、台風が発生し、豪雨が山肌を削り、河川をはん濫させ、地震が追い打ちをかける。100年単位の自然の摂理の変動が人間社会を直撃しているのか▼自分が住む地域で大地震が起きると思う人は34・6%だが、4人に1人は「避難場所を知らない」という。ゆすれど動かず、叫べど答えぬ犠牲者。最後の声は「ほころびかけた防災の綱を締め直して」だったのか。天災は無差別だ。札幌からも給水車が駆けつけた。救援に全力を尽くそう。(M)


10月25日(月)

●中高年の雇用環境も厳しいと言われるが、さらに辛い思いを抱くのが学卒者の新規就職。「厳しい」という言葉がついて回るようになって何年たつだろうか。夢を抱いて社会に踏み出そうとしているのに、現実はその気持ちを萎えさせんばかりに…▼今年あたりは何とか、という期待感も裏切られつつあるようで、高卒者は依然として大変な実態。道労働局が21日発表した9月末現在の内定率がそれを物語っている。全道平均で14・7%。昨年同期に比べ1・3ポイント上回っているとはいえ、それでも7人に1人のレベル▼道南もせめて全道水準ぐらいは確保していてほしい、そう願いつつフタを開けてみると、残念ながら…。渡島・桧山の内定率は13・4%で、過去最低だった2002年の13・6%をさらに下回っている状況。確かに毎年この時期からが“勝負”だが、だとしても低い▼理由は大きく三つあると言われる。一つは絶対的な求人数の減で、二つ目が求人の遅さ、そしてもう一つが生徒の希望との壁。生徒の8割が志望する地元企業からの求人数がそれを満たす数になく、今年も道南ばかりか道内からの求人は未だ昨年同期比2けた台の減…▼求人要請や面接会の開催など、道労働局など関係機関・団体は努力を続けている。だが、早めに、多く、と求められたところで、企業にはそれぞれ事情があり、おのずと限界があるのも現実。中高年もさることながら、しわ寄せは新規の人たちに。内定状況が公になるたび、そんな思いが込み上げてくる。(N)


10月24日(日)

●生鮮食料品の原産地表示が義務づけられて4年あまり。ほぼ徹底されてきた印象を受けるが、それは道が9月に行った水産物に関する消費生活モニター調査の結果でも明らかに。調べた全道356店舗・売場のうち、74%が商品すべてに表示していたという▼生鮮食品の原産地、加工食品の原材料等表示が規定されているのは、生鮮食品品質表示基準。消費者の品質、安全性や健康に対する関心の高まりを受けて設けられ、原産地表示の義務化は2000(平成12)年7月、原材料等は2001(平成13)年4月から▼食品に関する消費者への正しい情報公開で、わが国は後進国。「せめて原産地や原材料ぐらいは明らかにすべきだ」という機運が高まったのは、当然ともいうべき時代の流れだが、そうなって、まだ3、4年。1年前の同じ調査では、ようやく半数に達した域だったが…▼今年は「すべて」に「ほとんど」を加えると、その店舗・売場率は91%。百貨店で最も進み、スーパーもまずまず。対面販売の多い専門店が低いという実態はあるが、表示ゼロはないなど、義務づけの精神が浸透している姿はうかがえる。残る問題は、表示の信頼性▼「この魚は○○産です」「この商品の原料は○○です」。内容は増え、細かく表示されてはいるが、それが正しいかどうか、消費者は購入の際、確認する術(すべ)を持っていない。信じる以外にないということであり、鍵を握るのはあくまで商業モラル。「正しい表示が築く消費者との信頼の絆(きずな)」。この調査結果も暗にそう語りかけている。(H)


10月23日(土)

●子どもの運動能力が落ちているという話を聞くようになって、どのぐらいたつだろうか。各種のテストから浮き彫りにされ、裏づけられている実態だが、テストを待つまでもなく、現実の生活スタイルから容易に納得できる▼一時代昔に比べると分かりいいが、ともかく体を動かす機会が減っている。というより、その機会を奪っていると言った方が的確かもしれない。問題の一つは外で遊ぶ環境の悪化。子どもの運動機会を減らす社会となった“つけ”が回ってきたとも言える▼テレビゲームなどなかったから、昔の子どもはおのずと外で走り回ったり、日常生活の中で体を動かしていた。「特に運動を」と意識することなどなかったが、それでも1日に歩く距離一つとっても今とは比較にならない。運動能力というより、体力が落ちていると言われるのもそれゆえ▼今年の体育の日に合わせて、文部科学省は2003年度の体力・運動能力調査結果を発表した。「日常の運動量が多い子が、そうでない子より記録が上回っている」というのは当たり前過ぎるが、それにしても運動をするのが週1日未満という層があるとは驚くばかり▼「週3回程度は子どもたちを積極的に運動させるべき」。調査結果を監修した専門家は、こう指摘している。それは誰でも分かる、必要なのは今後、どうしていくかの具体論。調査やテストの結果を踏まえて、低下の実態から抜け出すために「じゃこうしようか」といった策が講じられたという話は、あまり耳にしたことがない。(N)


10月22日(金)

●函館の組織率は24%。「そんなに低いのか」という思いを抱くその組織とは、災害に遭った時に助け合う自主防災組織。先日の市議会で報告された内容を本紙が伝えていたが、それにしても4分の1とは、役所流に言うなら憂慮される実態▼自主防災の組織化が始まったのは、阪神・淡路大震災の後。資機材の購入や運営費など現実に行政面からの補助も制度化して、全国的に進められてきた。都道府県、市町村も力を入れ、昨年4月現在、全国で2536市町村での取り組みが確認され、その数10万9016組織▼組織率(総世帯数に対する組織されている地域の世帯数)は61・3%。着実に広がっている印象を受けるが、市町村によって差があって、北海道をみても、札幌市は50%を超しているものの、平均で35・7%。道南地域はそれよりもさらに低く、渡島の平均は30・5%▼函館は…。提唱されて今日までの間、町会に働きかけ、研修会を開くなどしたほか、機材の貸与なども始めて、昨年度は連絡協議会を立ち上げてもいる。そんなこともあって函館は組織率が高い所と思っていたが。防災意識が低いとは思いたくないが、どう考えても低い▼函館は町会に代表される住民活動が活発と言われてきた地域。役員の高齢化などから陰りが見えてきたとも聞くが、どうあれ自主防災はその地域活動の原点とも言える取り組み。自主防災組織は「いざという時に対処できる協力体制」であり、函館も大災害の心配がない所ではないのだから。(A)


10月21日(木)

●「国民の意識を知る」。それは政治にとって最重要な、いわば政治の原点であり、その一つの手段として用いられるのが世論調査。「結果は今後の施策に」という大義名分のもと、定期、不定期を含め、国はお金をかけて毎年、数多くの調査を行っている▼その中には意義ある調査もあれば、こんな分かり切ったことをあらためて聞く必要があるのか、というものも。最近、結果が公表された調査で後者の範ちゅうと思われたのが、内閣府が9月に実施した少子化対策に関する特別世論調査。誰もが予想出来る答えだったから▼それでなくても少子化は進み、社会を支える人口が少なくなることが目に見えている時。年金に代表される社会保障は、現実問題として黄信号から赤信号が点滅している。としたら、低出生率が続くことに危機感を覚える人が少ないわけがない。案の定、そうだった▼危機意識を抱いている人は、ほぼ4人に3人の77%。その理由の上位も「年金や医療費の負担など社会保障への影響」(72%)、「経済活力への影響」(51%)などで、容易に想像がつく。増してくる不安が将来の危機意識に。要は、再三言われていることを確認しただけ…▼ただ、この調査で唯一の意義は「77%の人が、政府の少子化政策や社会保障政策に満足していない」という答え。内閣府だけでも、この認識に立つなら調査の評価もしようが、そこまでの期待はどうか。意識を知る段階を過ぎている問題を金と時間をかけあえて聞いた、この調査にはそんな思いしか残らない。(N)


10月20日(水)

●下見坂の外壁がサーモンピンク、窓枠や円柱が白色に統一され、正面中央にトスカナオーダーの円柱や凱旋門スタイルの玄関ホール、欄間付きの上げ下げガラス窓、四半円形の隅角部など、変化に富んだデザインの造形。遺愛学院の本館(16日付本紙)▼旧宣教師館(ホワイトハウス)に追加される形で国の重要文化財に指定される。122年前、来函した宣教師夫人のハリスさんが元町の高台にメモリアル・スクール(今の遺愛幼稚園)を開校したのが始まり。旧遺愛女学校本館は96年前に建築家、J・M・ガーディナーが設計▼建設関係文書とともに明治後期の学校建築の指標になるとして高く評価された。ホワイトハウスは01年に重文に指定され、02年には講堂も国の有形文化財に登録されている。遺愛幼稚園や女子高宿舎もガーディナーの設計による可能性が高いという。校章は清楚なスズラン▼昭和初期に人気を呼んだ石坂洋次郎の学園青春小説「若い人」の舞台になり、昨年ヒットした映画「星に願いを」の舞台にも。前庭に咲くクロッカスの花が監督の目にとまり、急きょ、本館とともにドラマの「病院」に使われた。石川啄木の娘の京子も同校の生徒だった▼立教大の創設者でもあるガーディナーは娘にハスノハナと名付けるほどの日本びいき。手掛けた多くの教会や校舎などが文化財に指定されている。これで函館の重文は7件目。47年前に卒業した女性は「毎日、感謝と賛美のお祈りをしました。板張りの廊下など懐かしい」と、末永い保存を願っている。(M)


10月19日(火)

●今年の夏観光は振るわず…。観光関係者から聞こえてくるのはため息。北海道全体でも芳しくなかったと言われるが、函館・道南も例外でなく、入り込みは前年に比べて1割減が共通した認識。改めて観光の難しさを突きつけられた夏だったという▼函館が今夏に寄せた期待は大きい。その理由の一つがNHKの大河ドラマ「新選組!」の放映。土方歳三らのゆかり地であり、紛れもないプラス要素と考えられていたが、そのブームもいま一歩。すっかり盛り返した海外人気に加え、東京線の航空便減などもあって…▼「そればかりではないのではないか」。そう提起する関係者がいる。湯の川観光ホテルの刈田眞司社長。先月末、ある会合で短い時間ながら話を聞く機会があったが、そこで指摘したのは客の嗜好の変化。言われてみれば確かに…。今の時代、客は情報を持って訪れてくる▼その変化への対応が遅れてはいないか、というのが趣旨だったように思うが、具体的には、食事など宿泊のシステムを多様化することや、観光資源の掘り起こしなど。函館山にしても夜景だけでなく、観光的には手付かずの状態の砲台跡などにもっと目を向けるべき、と▼観光的にも大変な価値があるものだから、と強調されていたが、ここにヒントが…。それは「常に訪れる人の立場に立って考える」という姿勢。函館は小樽と並んで個人客が多く、リピーターも多いが、ニーズを汲み取る姿勢はどうだろうか、刈田社長の短い話の中から伝わってきたのは熱いそんなメッセージ。同感という言葉しかない。(H)


10月18日(月)

●簡単に出来ることなのに簡単でない。禅問答みたいだが、国の行政事務改革。姿勢さえ変えればすぐ出来ることでも、ともかく時間がかかる。各省庁で未だばらばらな給与の支給はその一つ。賛否の議論はあれど、今や口座振り込みの時代なのに▼民間ではとっくの昔に切り替えを終えている。誰でも分かるが、人数が多ければ多いほど振り込みによる事務量の軽減幅は大きく、事務効率化の第一歩。としたら、国は真っ先に取り組まなければならないはずなのだが、現実は、というと、最も遅れている▼これでは行革で掲げる事務の簡素化も説得力がない。1年ほど前に明らかにされた実態では、未だ約4割が現金支給。さすがにつたないと思ったか、口座振込みを勧め8割レベルまでになったそうだが、いかにも中途半端。完全に切り替えないことには、効率化にはならない▼実際、現金支給の事務作業などのために年間1億4000万円かかっているというのだから。冗談でない、と言いたくもなるが、さらなる批判を恐れたか、最近になって口座振り込みに統一する方針を。「06年3月までに全額振り込みに」。今月初めの日本経済新聞でこう報じられていた▼「までに…」であり、その期限はまだ1年半も先。何故、こうも時間がかかるのか。理解に苦しむが、給与法が足かせになっているなら改正すればいいだけのこと。週休2日制などでは民間誘導を大義名分に率先し速やかに実施するのに、効率化の取り組みとなると…。そう思われても仕方ない。(N)


10月17日(日)

●牛乳・乳製品を利用した料理コンクールの北海道大会で、大野農高生の料理が最優秀賞に輝いた。3年生の渋谷恵太君で、編み出した料理は「new 乳 イカ飯」。全道から寄せられた約400点の中から選ばれたというのだから賞賛に値する▼さらに素晴らしいのは、地元の食材にこだわって考えたこと。使ったのは函館というか道南を代表する魚であるイカと、実習で作るベーコン、カマンベールチーズで、試作を繰り返し完成させた現代風イカ飯。審査のポイントでもある乳製品の生かし方でも合格点だった▼大野農高は農業クラブの発表大会でも、幾多の活躍歴がある。その背景にあるのが農業に対する意識と日常活動の積み重ね。本紙の取材によると、この料理を考えた理由を、渋谷君は「チーズを使った料理を出したくて…」と答えているが、そこにもこの意識が…▼料理でも、商品でも同じだが、名物、名産を産み出すのは容易なことでない。というのも評価するのは消費者であり、自分ではないから。成功例はほんのわずか。すでに10年になろうか、華々しく全国的に広がったものの、下火になるのも速かった、かつての一村一品がいい例▼そりゃ、そうだ。日夜、開発に努力している企業でも実際に“もの”になるのはごく一部。でも、この「new 乳 イカ飯」は、商品化の面からも注目に値する一品かも。確かに料理だが、これだけ食材に地域性があると商品化の可能性は無きにしもあらず。地域として、ともあれ渋谷君に改めての拍手を送りたい。(A)


10月16日(土)

●うつむくと、彼女の結婚指輪が目についた。あなたがピストルを渡した。…母上、許してください。みんなに神の祝福がありますように。冷たい恐ろしい杯を手にして、死の陶酔を飲みほします。弾はこめてあります。さようなら(ゲーテ「若きウェルテルの悩み」)▼文豪ゲーテも多くのヤングを死に走らせた。ピストル自殺のラストシーンは深い感動を与え、同じ方法で命を絶つ若者が相次いだ。小説を発禁処分にする国も出て、連鎖的な自殺を「ウェルテル現象」と呼んだ学者もいる。かつて日本のアイドル歌手が自殺した時には30人ほどが後追い自殺したということも…▼先日、埼玉県でインターネットで知り合った男女7人、神奈川県で女性2人が集団自殺した。車内に練炭入りの七輪を持ち込み、窓ガラスは目張りして。「お母さんは死んでしまうけど、あなたたちを産んで幸せだった」「2人で望んで計画しました」などの遺書があった▼最近は「中年のための自殺掲示板」もあって「命を大切にしたい。でも限界がある」など、サイトには相変わらず「募集」が目立つ。遺書を書いた30代の女性は「私が死んだら子供たちはどうなるの」と自殺をほのめかしていたというが、死んだつもりで育児に専念して欲しかった▼ネットで知り合うだけで一緒に死ねるとは…。ウェルテルの悩みのように、自殺は感染する。生きる意欲と心の健康を取り戻す自殺予防系サイトも出てきたが、残念ながら文字による会話(説得)の難しさは否め得ない。(M)


10月15日(金)

●何かと苦情が多い訪問販売や電話勧誘。受ける消費者側は、ある程度の知識を持ち、それぞれ対応しているものの、法規制の内容を含めて細部までの認識となると、いまひとつ。そんな姿が消費生活モニターを対象に道が行った調査からも浮かび上がっている▼道消費生活センターが昨年度受けた消費苦情は、全道で前の年度に比べ40%増の1万5408件。その中で最も多いのが、いわゆる契約や解除にかかわるものだが、次に多いのが訪問なども含めた販売方法に関する苦情。「その実態はどうか」と行われたのが、この調査▼それによると、訪問販売を受けた経験のある人はほとんどの94%。その中で30%余りの人が月に1、2回はある、と。ほぼ半数がドアを開けない、などの自衛策をとっているが、一方で37%が「断ってもしつこく勧誘されたことがある」と答えている▼対策として最も有効なのは、言うまでもなく契約などに関する知識を持つこと。確かに、大筋で分かっている人は多いが、例えばクーリング・オフにしても細かい事項までとなると、なかなか。「被害事例の情報をもっと」などの要望が出される理由もそこに▼この結果がもう一つ明らかにしているのは、防止対策がまだ十分でないということ。必要な施策や取り組みとして「問題事業者名の公表」「罰則の強化」を求める声が多いことが物語っている。7割の人が、訪問販売や電話勧誘で不快な思いを経験したことがある、という現実をどう考えるか。この調査結果は改めて問題を提起している。(A)


10月14日(木)

●函館にも「屋台村」―。駅前・大門地区再生のけん引役を担う(株)はこだてティーエムオーが温めてきた構想。新たな集客拠点づくりの切り札として、計画はすでに具体的段階。「ひかりの屋台」は来年11月のオープンが予定されている▼博多などで知られる現在の屋台の起源は戦後の闇市。簡単に店を開けて、客も気軽に寄れる、いわば庶民の息抜きの場といった存在だが、近年、街おこしの一環として注目の的に。北海道・東北でも、ここ数年の間に帯広、八戸、小樽などで誕生し、それぞれ健闘している▼北国では冬の寒さをどう克服するかが課題だった。先行した帯広(北の屋台)では2度の実証実験を行って「いける」と判断、2001(平成13)年7月にオープンして3年。新幹線の開業を受けた八戸(みろく横丁)は、その翌年の11月に産声を上げている▼函館の開設場所は、松風町7番街区の高砂通りと大門仲通りに挟まれた所。屋台が連なる1店8席の「かた(語)らい小路」と、お洒落な「ハイカラ通り」(1店14席)で構成され、計画は28店舗。出店の応募結果を踏まえ、これから店舗構成の調整など準備が本格化する▼かつて“賑わいの街”だった駅前・大門地区。ここ1、2年、娯楽ビルやビジネスホテルが登場、駅前の整備も大詰めを迎えている。残されたコンセプトは魅力づくり。その一翼として熱い視線が注がれる「屋台村」。食材に恵まれ、観光客も多い。条件はそろっているが、鍵を握るのは地域の後押しにほかならない。(A)


10月13日(水)

●江差の鴎島にある源義経の白い馬岩。今なお帰らぬ主を待って、いなないているかのように首を上げている。乙部まで義経を追ってきたが、逢えなかった静御前の身代わりのようにも見える。来年のNHK大河ドラマは「義経」▼義経は石狩から樺太を経て満州に渡ったとか、寿都の弁慶岬から高麗に渡ったとか、日高・千島からカムチャツカに渡ったとか、平取でアイヌと2年間住んだとか、はてはジンギスカン説まで、江戸初期から延命伝説が言われ出した。江差や乙部は「義経北行ルート」の道半ば▼義経は津軽の白髪の翁からもらった「竜馬」に乗って津軽海峡を渡り、江差にたどり着いた。一行は愛馬を鴎島に残して北に向かった時、義経との惜別を嘆いて「白い岩」になったという。千畳敷の近くには「弁慶の足跡」もある。静御前は乙部の峠で待ったが、義経は現れず、ついに川に身を投げた▼臥牛子が江差高校を卒業して半世紀。先日の卒業50周年同期会で「江差の義経伝説」を知っていたのは約半数。漢文を研究している大学教授は「義経は日本の歴史を塗り替えた。史実は別にして、その悲運の大将が北行で江差に寄ったことは、謎を秘めたロマンがある」と胸を張る▼荒天の海峡を渡る時、船魂明神(函館)にも一心に祈った。境内には義経が弓で湧出させたという湧き水がある。「大河ドラマを契機に、白い馬岩と弁慶の足跡の義経伝説を広く知ってもらって、江差観光を売り出そう」というのが、同期生の提案だった。小樽の手宮では「義経号」と「静号」が一緒になっている。(M)


10月11日(月)

●「最近、ゲートボールをしている光景を見なくなったね」。先日のある会合で、こう話す人がいた。気づかなかったが、言われて考えたら、確かにそうかも。その後、注意して見ると、公園の一角などに設けられたコートも空いていることが多い▼理由は定かではないが、会合の場では、パークゴルフの影響では、というのが結論だった。同じ軽スポーツながら、ゲートボールには団体競技ならではの駆け引きというかゲームの妙味があるのだが、緑の中で爽快感を味わえるパークゴルフにかなわない、ということか▼本格スポーツは別にして、最近は団体競技が敬遠される風潮。人数をそろえる苦労、2つ以上のチームが必要、ということなどだが、その点、個人競技は気が向いた時に「一人でも」という気軽さが。煩わしさを嫌う現代らしい、そんな一面が容易に読み取れる▼誤解されている向きもあるが、いずれも子どもから大人までを対象に考えられた軽スポーツ。ゲートボールも戦後、子どもたちの遊びに、と進駐軍が行っていた「クロッケー」を参考に考えられたゲーム。一方のパークゴルフは、説明するまでもなく年代に関係なく楽しめる▼無理に比較したかもしれないが、ゲートボールも、パークゴルフも、それぞれに楽しさが。しかも新鮮な空気を吸って体を動かすことが出来る軽スポーツ、そんな共通点もある。秋一色になって、今年も笑顔と歓声が広がる時期は、残りわずかに。きょう11日は「体育の日」―。(Y)


10月10日(日)

●「自分の葬儀について考えている人が増えている」。そんな話を聞いたことがあるが、あと数年で還暦を迎える団塊の世代でも、すでに話し合っている人が14%いるという。「くらしの友」(東京)が7月に首都圏で行った調査結果が、そう教えている▼「縁起でもない」。わが国では長年、生前に葬儀の話をすることは、よしとされてこなかった。ところが、最近はそのタブー意識も薄らいで、備えあれば憂いなし、というのか、自分の葬儀のこともさることながら、お墓を買っておく人が少なくない時代と言われる▼そうした思いの変化を探ったのがこの調査。まず、自分の葬儀について「話し合っている」「今後話し合いたい」という人が54%と半数を超えている現実を浮き彫りに。そうだろうな、と見る人もいれば、そんなにも、と受け止める人もいようが、この姿は紛れもない現実▼自分の葬儀に望む形式も然り。今多いのは葬儀場で執り行い、近所や会社関係の人も参列する形だが、それを望んでいる人は33%。最も多かったのが親類・友人までが参列するいわゆる身内葬の39%で、ほかには28%が妻や子どもだけでいいという家族葬を望んでいる▼ここからも読み取れるが、調査を通して特徴的にうかがえるのが、義理での参列はいらないよ、という思い。会社関係の人の参列を望む人がわずか9%だったことが決定的だが、こうした結果から同社は「葬儀も“個”を尊重する時代へ…」と結論づけている。さて、どう考えようか。(Y)


10月9日(土)

●時代は遂(つい)にここまで来てしまったか。先日のこと、そんな思いがこみ上げてくる全国紙の記事に目が止まった。それは「子どもたちに登下校時の所在を確認できる無線ICタグを持たせる試みがスタート」という記事。そうせざるを得ない背景が悲し過ぎる▼政府も認めているように、国民の安心・安全に対する意識は大幅に低下している。それだけ治安が悪化しているということだが、子どもが犠牲になる犯罪も増加の一途。ある調査でも小学1年の子を持つ親の95%までが、犯罪や事故が心配、と答えている▼「何という時代になったんだ」と言ったところで、解決にはならない。自衛策が求められる。集団の登下校のほか、防犯ブザーの携帯も珍しくないが、いよいよ先端の科学技術の登場ということである。幾つか報告されている中で、東京の私立小学校が試行した事例は…▼かばんに入れた6センチ×3センチの大きさのICタグを、校門に設置された受信アンテナが読み取って確認する仕組み。つまり居場所の追跡システムだが、学校側が時間などを確認できるほか、親もメールで知ることが可能なことから、かなりの注目を集めているという▼まさにハイテク時代の“味方”だが、それは嘆かわしい現実の裏返し。それでなくても街中のカメラに代表されるように、監視社会の色合いは濃さを増すばかり。さらにもって居場所も追跡されるときては堪(たま)らない。だが、「じゃ、どう守るんだ」と聞かれたら、悲しいかな、反論できる何ものも持ち合わせていない。(A)


10月8日(金)

●自然のメカニズムというのは正直というか、摩訶不思議というか、凡人を驚嘆させる。10月だというのに、函館市内などで「サクラやツツジが咲いている」というのだから。「何で!」。もちろん極く一部ではあるが、そんな疑問が込み上げてくる▼専門家が口をそろえる原因は、道南に大被害をもたらした1カ月前の台風18号による“塩害”。まだ緑濃かった街路樹の葉も一挙に色を変えるなど、直後から異変はみられた。その明らかで分かりやすい現象が、春に開花する生理を持つサクラやツツジなどの“狂い咲き”▼本紙はいち早く函館八幡宮の倒木したオオヤマザクラが花をつけた話を報じたが、その後も同様の情報が次々と。この6日には、道教育大函館校のツツジ、桜ケ丘通りのサクラの話を紹介したが、そのほか函館八幡宮の境内ではモミジやイチョウの木に芽がついたとも…▼「台風18号で急激に葉が脱落、何らかの刺激を受けて、樹木のホルモンバランスに影響を与えたのではないか」。本紙の取材に、樹木医の斎藤晶さんはこう答えている。としたら、影響はサクラやツツジばかりではない、ということに。現実にその懸念があるという▼サクラ博士の名を持つ浅利政俊さんも、そうみる一人。「これから11月にかけて市内や近郊で、バラ科のスモモ、ウメ、ナシ、ハマナス、モクセイ科のライラック、レンギョウなどにも“狂い咲き”が起きる可能性がある」。来年への影響が心配になってくるが、人間の手にはなんとも無力。これも一つの自然の姿と受け止めるしかない。(H)


10月7日(木)

●「網走に新たな地元日刊紙」。そんな情報が飛び込んできたのは9月の末だった。創刊に向けてはやるべきことが多く、まさに時間との勝負。来月からの発行というから、慌ただしく準備が進められているに違いない。9年前の経験がにわかに蘇ってくる▼「新聞は地域に複数あった方がいいし、それが健全な姿」。昔から言われてきたことだが、本紙が創刊した背景もそこに。「1紙では独善的になる」というのが理由だが、本紙が創刊した直後から聞いた函館新聞効果なる言葉が、この理由を象徴的に裏付けている▼さらに、こう言う識者もいる。「一定規模の都市なら地域紙があって当然」。道内には大小20紙ほどの地域紙がある。網走もそうだったが、今年7月、経営者夫婦が焼死するという不幸に直面、その灯が消えてしまった。それから2カ月、網走市民にとっては何とも明るい話…▼というのも地元に“復刊”を願う動きがあったと聞くから。56年の歳月が地域に根付かせたということだが、新たな期待を担って創刊されるのは「網走タイムズ」。計画によると、通常紙面の半分大のタブロイド版8ページで、週6日発行、3000部を目指すという▼地域紙は横の連絡が希薄な時代が長かった。それが様変わりしつつあり、5年前に全国組織として誕生した地域紙協議会が先月、日本ローカルプレスセンター(東京)を発足させたのは象徴的な動き。こうした流れがある時だけに、同じ地域紙として陰ながら「網走タイムズ」にエールを送らずにいられない。(A)


10月6日(水)

●「観劇者が大幅に増えれども黒字は遠く…」。函館野外劇の今年の収支が明らかになったが、会場設営費などハード面の負担が重くのしかかり、依然として苦しい運営実態。念願の1万人観劇を果たした今年も赤字から脱却できず、関係者の苦悩は大きい▼函館野外劇が誕生したのは1988(昭和62)年で、今夏、17回目を終えた。その知名度は年々、全国的に上がり、今や函館の夏を、北海道の夏を代表する存在に。その証明が例年より2000人は多かった今年の観劇者数で、大手旅行代理店の買い取り公演も実現した▼ところが、表の華やかさとは裏腹に、収支の現実は当初から厳しい状況続き。期待された今年も…。累積赤字は1000万円超のレベルに。その最大の理由は、経費の約3分の1がとられる観客席や舞台の設営費。国の特別史跡ということで、常設が認められないが故…▼完全に収支を圧迫している。この問題を何とかしなければ、ボランティアで支え続けるのにも自ずと限界が。「せめて行政や観光団体で(設営費について)一定の面倒をみてくれれば…」。それは関係者の率直な思いであり、函館に必要なのか否かの問いかけでもある▼誰もが認めるように、函館野外劇は新たなに生み出された素晴らしい文化財産。観光面に寄与する今日のレベルまできたら、地域として傍観してはいられまい。「さて、どう考えていくか」。少しも難しい話でない。「函館にとって野外劇はかけがえのない財産」。答えはその一つしかないのだから。(H)


10月5日(火)

●ついに安打王「262本、世界のイチロー」が誕生した。イチロー選手のメークドラマは、ジョージ・シスラーが年間最多安打257本を記録した1920年代に、ヤンキースを勝利に導いた投手の初の野球映画「野球王」より、大きな感動を与えた▼日本では「そんな打ち方ではダメだ」と言われながら振り子打法でデビューしたイチロー。原点に戻ることをモットーに、研究に励んだ。今シーズンは「上体をあまりひねらず、視線のぶれを抑え、確実に球を見極めた。バットを握るグリップも約10センチ高くし、内外角の厳しい球も安打にした」(中京大の湯浅景元教授)▼シスラーの時代に比べ、投手のレベルが飛躍的に向上している中で、球を自在にあらゆる方向へ飛ばすプレーを大リーグで連日、見せてくれた。「野球人生で最高の瞬間。いろんな怖さを知って、それを乗り越え、技術を確立した上で達成した」。歴史的な快挙に笑顔で話した▼道徳の副読本には、夢に向かって人並み外れた努力を続けているイチローが載っており、子供の頃、野球の練習の一方で習字や珠算を習っていたという。ある父親が「勉強も頑張らんと野球も上手になれんな」と言うと、息子がテレビ観戦をやめ、苦手な漢字の練習を始めたという▼84年ぶりの史上最多のシーズン安打王になったイチローの偉業は、すっかり子供たちの手本。北海道のアオダモがバットに生まれ変わるには70―80年という年輪がかかる。イチロー打法は、そのバットで世界規模の大リーグに一石を投じた。来季の最多安打の更新が楽しみだ。(M)


10月4日(月)

●「景況感12年ぶり高水準」。この1日、発表された日銀の短観(企業短期経済観測)は日本経済をこう総評した。実際、全国的には中国需要のほか輸出が引き続き好調で、設備投資も15年ほどぶりのレベルというから「回復基調を持続」も頷ける▼首都圏のほか名古屋を中心とした中部圏は勢いがあるという。だが、北海道は、と言うとそれを実感できる状況にはなく、依然として厳しい環境下。この短観でも全国とはかなりの開きがあり、道南はその道内に比べても今一つ。翌日の本紙の見出しが端的に教えている▼冒頭の全国表現に対し、道内は「回復の遅れ目立つ」、そして道南は「足踏み状態」。景況感というか景況というか、地域格差は数字からもうかがえるが、景気が「いい」から「悪い」を引いた業況判断指数によると、全国は1991(平成3)年以来となるプラス26▼これが揺るぎない回復の証明か、と言うと、必ずしもそうとは…。3カ月先の見通しに慎重論が根強いことがその理由だが、そうは言ってもこの指数が現状判断で「明るさを増している」ことの大きな目安であるのは確か。それに対して、道内、道南は、と言うと、マイナス域のまま▼道内は6月調査より2ポイント改善されたもののマイナス16。非製造業の不振が言われる道南は同じマイナス16ながら6月との比較では逆に6ポイント悪化ということに。その中での救いは製造業がプラス判断を示していること。もう少し…。企業にとって我慢のしどころ、踏ん張りどころを迎えている。(N)


10月3日(日)

●北海道の秋は「健康づくりの季節」と呼ぶにぴったり。運動に最適な気候で、気温は15度から20度ほど、青空も清々しく、体を動かし健康づくりをするには格好だから。誘われるように野山へと足を運ぶ人も多ければ、スポーツの大会も集中して…▼健康に関する行事も多く、その代表格が以前から各市町村が行ってきた健康まつり。「その輪をさらに」。一層の啓蒙強化を目指して道は1996(平成8)年、10月3日を「道民健康づくりの日」に制定、3日から1週間を「道民健康づくり推進週間」としている▼「自らの健康は自らの手で」。その願いは自覚と意識を高めてもらうこと。10月3日が選ばれたのは、この季節的な要素に加え、覚えてもらいやすさの視点。「道産子(どさんこ)」の語呂合わせと言えば、そうか、とうなずける。道産子の日は健康を考える日、というわけだ▼今年も函館市をはじめ道南地域で健康イベントが企画されている。ちなみに函館市では、市民健康まつりが9、10日、総合保健センターで。体力づくり体験など内容も多彩だが、サブテーマの「健康いきいき・みんなが主役〜めざせ!自分の適正体重〜」は説得力十分▼一般に言われる健康づくりの三要素は、栄養(バランスのとれた食事)と適度な運動、十分な休養。秋はそれらが最もなじむ季節である。食べ物はおいしく、運動するに気候もいい、寝苦しいこともない。秋の夜長に、自分の体について考えよう。きょうはその「道民健康づくりの日」―。(A)


10月2日(土)

●新幹線が登場して40年―。「夢の超特急」と呼ばれたが、まさに鉄路の大動脈としての地位を確固たるものにし、今や夢でなく現実の足に。ミニ新幹線も含め東海道のほか山陽、東北、山形、秋田、上越、長野、そして今年は九州で一部開業している▼「東京オリンピックに間に合わせて東京―大阪間を走らす」。わが国で新幹線プロジェクトがスタートしたのは1959(昭和34)年だった。それから5年。1964(昭和39)年、「ひかり」「こだま」がデビューを飾った。時速210キロ。4時間で2大都市を結んだ▼その後、所要時間は徐々に短縮され、3時間を切って、2時間半の時代に。乗客数も年間1億3000万人というから、新幹線と言えば「東海道」は代名詞的存在。個人的に初めて乗ったのは高校の修学旅行で、開業の翌年。車窓の景色より、まず目が引き付けられたのは車内の速度計…▼200キロを超えた時、みんなで歓声を上げたことを覚えている。感動の瞬間だった。さらに大阪―博多の山陽が全面的に、続いて部分開業の形で東北、上越、山形、秋田などが。東北は一昨年12月、八戸まで延伸され、函館にも槌音が聞こえてきた▼時間的な速さや料金など、新幹線と飛行機は完全な競争関係。東京―大阪をはじめ大都市間で激しくしのぎを削っている。「利便性の向上は地域を活性化させる」と言われるが、新幹線はその一翼を担うに余りある存在。函館と東京が3時間半ほどで結ばれる日が待たれる。(N)


10月1日(金)

●日暮れが早くなり、街路樹の葉が緑を失い始めるなど、秋の気配は野山ばかりか市街地にも。10月は秋そのものであり、冬を前に世の中の動きが活発な月。中でも初日の1日は、衣替えの日として位置付けられてもきたが、行事に加え、記念日も多い▼公的な記念日として「法の日」「土地の日」などがある。「法の日」は陪審法が施行された日がこの日ということで法務省が1960(昭和35)年に制定。「土地の日」は「十」「一」を組み合わせると「土」になることから、1997(平成9)年に国土庁が定めた▼このほか「国際高齢者の日」「デザインの日」や「国際音楽の日」「赤い羽根の日」「福祉用具の日」などがあり、さらに業界の記念日となると、まさに目白押しの感。「印章の日」「コーヒーの日」「日本酒の日」「ネクタイの日」「メガネの日」「香水の日」「浄化槽の日」▼それぞれ10月1日にした理由があって、例えば「ネクタイの日」は1884(明治18)年のこの日、日本で初めてネクタイ製造が始まったということで。「コーヒーの日」「日本酒の日」は、コーヒー年度、酒造年度の始まりの日などからだが、その狙いはいずれもPR…▼こうした10月の記念日で、忘れてならない一つが国際デーの「国際高齢者の日」。10月は高齢者雇用促進月間でもある。さらに体育の日(11日)、鉄道の日(14日)、貯蓄の日(17日)、電信電話記念日(23日)、原子力の日(26日)なども。15日からは新聞週間、27日からは読書週間が始まる。(H)


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