平成16年11月


11月30日(火)

●「平成の大合併」という言葉があるが、道内の先陣を切って函館市と戸井、恵山、南茅部、椴法華の4町村が、あす正式に合併する。町村の人たちには様々な思いが去来しようが、将来に可能性を求めての判断であり、今後、試されるのは地域の力…▼函館市は幾つかの合併を経験している。市制が施行されたのは1922(大正11)年。その後、1939(昭和14)年には湯川町、1966(昭和41)年には銭亀沢村と、さらに1973(昭和48)年には亀田市と合併し、押しも押されぬ中核都市となって30年余▼青函連絡船の廃止や北洋漁業の衰退など数々の難題を背負ったが、それらを克服して今日に。函館には観光という都市財産があり、そして今、新幹線への期待とともに国際水産海洋都市構想が動き始めている。この新たな発展への過度期に訪れたさらなる力をつける機会…▼この合併はそう語りかけている。道南でも破綻の事例があったように、合併はそう簡単でない。それぞれに培ってきた歴史があり、感情もある。それを乗り越えて実現した合併だけに、「合併してよかった」と実感できなければ。そのために大事なことは互いの配慮▼鍵を握るのは新しい函館市づくりへの協調と融和の精神である。難しい問題も出てこようが、決して焦らず、性急に答えを求めず、一つひとつ解決していこう。きょうは5市町村がそろって、これまでの歴史に一区切りつける日。あと十数時間で“新函館市”は、新時代への時を刻み始める。(A)


11月29日(月)

●髪を振り乱して語りかけた。「もしこの命が入り用ならば、どうぞ遠慮なく取られるがよろしい。だが、過ちは誰にでもある。そう、神にさえ。我等ユダヤをロシアに住まわせ、地獄のような苦しみを味わわせたことは神の過ちではないでしょうか…」(バーベリ著「オデッサ物語」)▼13年前、旧ソ連崩壊の後に独立したウクライナの国旗の上半分の青色は澄み渡った空を、下半分の黄色は大地の小麦畑を象徴しており、ヨーロッパの穀倉地帯といわれる。首都キエフなどは1000年にわたってロシア、モンゴル、リトアニア、ポーランドなどに支配されてきた▼そのウクライナが大統領選挙をめぐって国家分裂の危機に直面している。不在者投票許可書が職場などで大量に集められ、不正に利用されたという。決選投票で中央選管が3%の得票差でロシア寄りの候補の勝利宣言を出し、米国や欧州連合寄りの候補が「やり直し選挙」を求めて対抗▼東部と西部の州で自治確立の動きが相次ぎ、ロシアと西側の後押しもあって「旧ソ連型」と「西欧型」の分裂が加速している。選挙には不正が付きもの。先の米大統領選でもオハイオ州で電子投票機に不正疑惑がもたれた。対立候補の敗北宣言で表面化しなかったが…▼ウクライナ最高会議が決選投票の「無効」を認めたため、流血の事態は避けられそうだが、冒頭の主人公の言葉にある通り「神にさえ過ちはある」。組織的な過ち(不正)があるのなら、まずそれを認めて早急に「出直し選挙」をやるべきだ。一糸乱れぬ世界最高峰のキエフ・バレエが見たい。(M)


11月28日(日)

●携帯電話が機能進化を続けている。最近、函館・道南の観光ガイドで登場したNTTドコモのケータイ・バーコードもその一つ。カメラ付きの携帯でなければならないが、かざして読み取らせるだけで求める情報を速やかに提供するシステム▼カメラ付きであろうがなかろうが、手順を踏めば必要な情報は探し当てられる。ただ、もっと簡単に、の答えが2次元バーコードと言われるQRコード(数センチ角のモザイク模様の組み合わせでデータを表示するバーコード)の使用。瞬時に情報の入手が可能になる▼こう説明してきても、いったい何ぞや、と受け止める人がいるかもしれないが、嘘(うそ)でもなくQRコードが刷り込まれた印刷物を手に入れさえすれば、あとは携帯電話をそこにかざすだけ。全国的にもまだ始まったばかりだが、その道内第一号として採用されたのが…▼ほかならぬ函館・道南の観光スポットガイド。定番の元町界隈(かいわい)の歴史的建造物はもちろん漁火、チャチャ登りなど、紹介されているのは、函館市内から25カ所、ほかの道南関係で15カ所。PRということもあって、特別に観光マップが作られ、札幌でも配布されている▼ちなみに函館では、冬の函館観光キャンペーン推進委員会の「冬の函館実践的街歩きガイド」にも。確かに利便性の追求というか、備える機能もさることながら、常に要求されるのは速さを含めた使い勝手。このQRコードも然(しか)りで、一般化されるのも時間の問題に違いない。(N)


11月27日(土)

●日本経団連は先日、国に対してシビアな調査結果を発表した。新聞報道も地味な扱いで、気づかなかった人が多かったと思うが、浮き彫りにされた実態とは…。「中央省庁などが発表する景気関連の統計の多くは、企業にあまり利用されていない」▼関連機関を含め中央省庁が行っている調査は、世論調査の類を筆頭に定期、不定期をあわせると、年間では数え切れないほど。10月の本欄でも、分かり切ったことを聞く無意味な世論調査があることに触れたが、どうやらこの景気関連にも一部通じるものがあるらしい▼経団連が把握している中央省庁や日銀などによる景気関連調査は72。この数にまず驚かされるが、一般に知られているのは、せいぜい日銀の短観(短期経済観測)や消費者物価指数ぐらい。企業経営者といえども覚えているのは幾つか。だから利用度も鈍くなる▼それぞれに利用指数をはじいた結果、利用度が10%未満という調査も少なくない。理由として挙げられるのが、発表までに時間がかかり過ぎる、分析が十分でなく手引きもない、など。確かにデータとして残しておくことにも意義はあるが、あてにされていない、というのも…▼それぞれの調査には、確かに始めた際のいきさつ、背景があろう。それは理解するにしても、時代を読み取って見直すとか、似通った調査なら整理統合するとか、そんな動きがあって当然。求められるのは「今も必要か」という視点であり、経団連があえて公表したのも、こうした思いからに違いない。(A)


11月26日(金)

●私たちはだれも ひとりじゃない 深い胸の奥でつながっている 果てしない時を越えて 輝く星が出逢える奇跡 教えてくれる…。平原綾香のCD「Jupiter」を買って来た。英国の作曲家、ホルストの組曲「惑星」の木星をモチーフに詞が付けられている▼新潟中越地震から1カ月。6分1秒のこの曲は被災地の「癒しのメロディー」になっており、ささやくような低音から聴き手の心をつかむ。ラジオ局には「苦しんでいるのは、1人じゃない。生きる勇気が出てくる」とリクエストが殺到し、避難場所の体育館などに流れている▼被災地ではランドセルを背負って学校が再開され、ニシキゴイの競りも開かれた。ランドセルといえば、GPS(全地球測位システム)付きのものが今月発売された。子どもの位置を把握、携帯電話やパソコンに接続すると、地図で表示され「登下校時の不安」が解消される▼台風や地震などによる災害時には、今やIT機器の活用が不可欠。携帯電話や車にGPSの設置を義務づけたらどうか。車ごと崩壊岩盤の下敷きになった母子3人も、もっと早い時間に居場所が分かったのではないか。それに広域災害・救急医療情報システムが十分に機能すれば「鬼に金棒」▼新潟中越では、まだ約6500人が避難生活。5メートルも雪が積もる、これからが大変。緊張が緩み、世の中の関心も薄れていく…。が、平原綾香の「よんだら何処へでも行くね」のように、支援を惜しまない「胸の奥でつながっている」人は沢山いる。頑張ってほしい。(M)


11月25日(木)

●12月。1年の締めくくりの月であり、最も慌ただしい月。その年末の足音が近づいてきている。企業も、家計も経済環境は厳しいまま、国内外とも暗いニュースが多かった。その中で庶民が「せめて夢だけは…」と託すのが年末ジャンボ宝くじ▼今年も発売が始まった。1枚300円。74本ある1等は2億円、148本という2等が1億円、1等とその前後賞を合わせると3億円。この夢をつかむのは奇跡に近いこと、と分かっていても、誰かが当たるのは確かだから「もしかしたら」の思いが発売窓口へと走らせる▼購入した人なら当選(抽選)番号の発表、つまり大晦日(みそか)を楽しみにして当然。その日を忘れるはずはない、しっかり確認すると思いきや、そうでもないのか、昨年の年末ジャンボ当選券の未換金がかなりあるのだとか。何とも信じられない、もったいない話である▼さらに驚くのはその金額。みずほ銀行が今年の発売開始前に発表した昨年の年末ジャンボの未換金額は、高額分だけで実に14億5000万円。1等2本、2等5本、さらに1等の前後賞が11本という。当選を知ってあえてしまっている、そうとは思えない▼だとすると、確認を忘れている、何かでもらってそのままになっている、ということかもしれない。もし手元に昨年のジャンボ券が残っているならまず確かめ、その上で今年の分を買っても遅くはない。1億円以上を手にする人が全国でざっと200人…。ジャンボの夢は追いたくなる。(N)


11月24日(水)

●いつの間にこんな世の中になったのか、昨今、そう嘆きたくなる犯罪が多い。理解を超える理由で起きる凶悪事件、子どもの虐待などと同様に、怒りが込み上げるのが「人をだます犯罪」。不特定多数が被害を受ける詐欺が次々と起きている▼その最たる例が「オレオレ詐欺」。だんだん複雑、巧妙になって、東京では中学生までかかわっていた。警察庁がまとめた昨年の全国の被害は4319件。今年は9月までで既に6800件を超えている。未遂で終わっている率こそ高まっているが、それにしても多い▼まさに人の情の弱みをつく卑劣な行為だが、最近は混乱や知識のスキをついて、という新手が横行している。函館市内でも現実にあった新潟県中越地震の義援金募集電話も一例だが、いかにも公的機関と思わせる名称を語るはがき送付という事例など、悪質極まりない▼さらに今度は国民年金の悪用が。日本国民年金協会の名で、年金の過払いを返金せよ、などと記したはがきを送りつけるという手だが、11月中旬の段階で社会保険庁が把握しただけでも416件も。幸い道内では被害の報告こそないが、はがきの認知は20件を数える▼悲しいかな、悪(わる)がはびこる世の中になったと思うしかないが、だからといって許したり、泣き寝入りしたりでは…。対策の決め手はただ一つ。それは「自衛」。こうした電話、はがきにはまず「疑い」を持ち、必ず家族や機関に「確認」することである。「自分だけで判断しない」。少なくともこれだけは頭にたたき込んでおきたい。(N)


11月23日(火)

●規模の大小にかかわらず地震の脅威は想像を絶する。北海道南西沖地震、阪神淡路大震災など近年の大地震が教えているが、改めて見せつけられたのが先月23日夕に発生した新潟県中越地震。その後も震度5、4規模の余震が続いて今なお不安が▼水道などのライフラインは全面復旧に至らず、復興の見通しを立てるのさえ難しい状況。人的被害も大きく、40人が命を落とし、2800人がけがをしたと報告されている。大変な人数だが、問題は家の中に。けがの原因というか理由がそう警告している▼それは東京都消防庁が発表したデータからも明らかに。発生後、救急搬送した人200人あまりについて調べたものだが、「転倒した家具類や落ちてきた物に当たってが41%だった」という。ちなみに、このほかでは自分が転んで、熱湯を浴びて、ガラスを踏んで、など▼実は昨年7月の宮城県北部地震、9月の十勝沖地震でも、そうだった。「災害への備え」がよく語られ、それは非常用の食料だったり、貴重品だったりするが、こと地震に関して忘れてならないのが、タンスなど倒れやすい家具の固定、それも引き出しまで頭に入れて…▼言われてみると当たり前のこと。固定対応グッズなどに頼ることもできるし、物を詰めて天井とのすき間を作らないことも考えられるが、意外とされていないのが現実。東京消防庁は防止対策を考える検討会を立ち上げ、啓蒙活動に力を入れるとしているが、自らを守るのは自分。今一度、家の中を点検した方がいい。(Y)


11月22日(月)

●ヒラメと並ぶ高級魚として扱われる「マツカワ」。そんな名前の魚知らないな、という人もいるだろうが、北海道の太平洋側に分布するカレイ科の魚。今から30年ほど前には渡島から日高の辺りで年間数十トンの水揚げがあったが、現在は激減して…▼大きめのウロコの様子が松の皮に似ていることが名前の由来で、タカガレイ、タカノハガレイなどの別名も。味はカレイ類の中では上位にランクされ、今や高値の魚。その「マツカワ」の資源を回復させよう、という取り組みは、東北・北海道で進められてきたところ▼岩手県水産技術センターもそうだが、道内で増養殖の研究に当たってきたのが鹿部町にある道立栽培漁業総合センター。それも「100万匹放流計画」を持って。技術的にはほとんど課題はなくなったようで、あとは量的な施設の問題だけというから関係者の期待は大▼ここに至るまで研究スタッフや漁業関係者の苦労は多かった。今月3日付の本紙で報じているが、天然の採卵用成体の確保、ふ化した後の餌の与え方、最適な飼育環境づくり等々。だが、その努力のかいあって、将来に可能性を抱かせる壮大な計画はいよいよ現実に▼順調に取り組みが進んでいくと、伊達市に着工した種苗生産施設が完成する2年後には取り組みが本格化し、4年後には水揚げ体制に。知らなかったが、既にブランドネームも決まっているのだとか。「王蝶」(おうちょう)。今の時代、ネーミングも大事。「王蝶」がその名にふさわしい存在となる日が、そう遠くなくやってくる。(A)


11月21日(日)

●あす11月22日は「いい夫婦の日」。典型的な語呂合わせ記念日の一つだが、年に一度ぐらい夫婦が互いを尊重し、互いにいたわりの気持ちを確認する日があっていい、というのが制定の趣旨。当時の通産省と余暇開発センターが提唱し、今年で16年に意識調査から浮かび上がる夫婦像は…。時代とともに変わってきて、かつて多かった「亭主関白」が少し影を潜め、近年は現実的にも、理想の姿としても「友だち夫婦」が主流。今の世代感覚がそのまま表れているとも言えるが、家事一つとっても変わってきている最近のある調査によると、結婚5年以上では夫の協力に妻の不満が高いが、5年未満では不満は低い、と。結婚年数が多いほど、夫より妻の不満度が高いという話をよく聞くが、何となくうなずける。その延長線上で「身勝手過ぎる」など、日々不満が口に出るが、そこは夫婦相手を思いやる気持ちを抱く時がないわけでない。互いの誕生日だったり、結婚記念日であったりするが、そこにもう一つ「いい夫婦の日」があってもいい。近年は商業ベースにも乗って、例えばカスミソウの産地・熊本県は「カスミソウを飾ろう」と提案しているカスミソウはフラワーアレンジで添え物としてよく使われ、清楚(せいそ)だけどなければ寂しい存在の花。ドライフラワーにすればいつまでも…。「末永くという夫婦の姿とだぶる」。そんなこじつけも、もっともらしく聞こえる。しかも、その花言葉は「深い思いやり」「清い心」「親切」など。これまたもっともらし過ぎる。(H)


11月20日(土)

●心地よい響きを持った「ゆとり教育」が揺れている。学力の低下が指摘される現実が浮かび上がってきたから。文部科学省も否定できない情勢だが、そんな中、東京都の葛飾区が来年度から夏休みの1週間短縮方針を打ち出し、注目されている過酷なまでの受験戦争に反省が求められ、対策として文部省(現文部科学省)が打ち出した新時代の柱が「ゆとり教育」。週休2日制にし、教科時間を減らし、子どもにも、現場にもゆとりを…。これぞ詰め込み教育解消の切り札と位置づけられてのスタートだったところが、早くも見直しが急務なのだ、という。当初から教科を消化できないなどの声があったが、それにしても結果として学力が落ちてきたとなれば、放ってもおけない。「非常に変化の激しい時代ですから(学習指導要領も)不断の見直しをしていくことは大事なこと」就任会見での中山文科相の話だが、函館大谷短大の保坂武道教授はこうなる事態を予告した識者の一人。自著「いま学校を変えよう」の巻頭「いつか来た道に逆戻り」の中で「ランクづけの教育の改善なくして(新学習指導要領)の成果はあり得ない」と断じていた議論より実行。そこに一石を投じたのがaオ飾区だった。ずばり学力アップを目的に区立の全中学校の夏休みを1週間(5日)減らし、1日6時間の授業を確保する。わずか5日間だが、区教委によると、されど5日間なのだという。議論はあろうが、大事なのは「これも一つの問題提起」と受け止めることである。(H)


11月19日(金)

●これから人気の鍋料理に欠かせない白菜などの高騰が続いている。東京あたりでは1個1000円という日もあった。ニュースを見た子どもが「お母さん、キャベツ、レタスが高いんだって」と教えてくれる。早く「安定」した値段に戻ってほしい▼好天続きの年は豊作貧乏になり、荒天の年は品不足になって、農産物の安全で安心な供給は難しい。特に今年は相次ぐ台風や秋雨前線、地震の直撃で大きな被害を受けた。価格は先月下旬から急上昇し、平年比、キャベツとレタス3倍、白菜3・4倍、大根3・5倍も…▼個食時代に合わせて並べた白菜やキャベツの「4分の1」売りもすぐ無くなり、漬物用の野菜が制限されている地域もあるという。台風でやられた無残な畑に「商品としてとても売れない」と嘆く農家の気持ちは分かるが、たとえ「不ぞろい」でも安く出荷してくれたらありがたい▼小玉のキャベツ、細めの大根、曲がったキュウリ…。見た目は悪くても味は変わらない。農水省も来月には不ぞろい野菜を出荷するよう奨励金を出す。中国では昔から白菜は大根、豆腐と並び「養生三宝」といい、芯を煮込んだ汁は風邪薬として飲まれ、体を温めると▼白菜1個920円の京都では近郊の畑から白菜、キャベツが相次ぎ盗まれた(13日)。台風で落ちたリンゴを食べたが、おいしかった。消費者も「傷ついているからダメ」「土が付いて汚れている」と敬遠すると、高い農産物を買うことに。「不ぞろい」に少しの問題もない。(M)


11月18日(木)

●「北海道市町村職員退職手当組合が、退職手当条例の一部を廃止することにした」。16日付の新聞各紙が報じた。こんな名称の組合があることなど知らない人が多かろうし、条例の一部改正というだけでは理解できないが、実は重要なことで…道内の9割を超える市町村が加入している組合で、その条例の中にあるのが「廃職により失職する特別職の退職金は通常の1・5倍」という規定。自分の都合でないから、ということかもしれないが、簡単に言うと、5割増しの退職金を支払う、ということである住民にとっては知る由もない話だが、函館市との合併が秒読みに入った4町村の町村長、助役らが当面の対象者。おかしい、道南市民オンブズマンは声を上げた。地域経済は冷え込んだまま、自治体も財政難に直面している時代に、それは住民感情に馴染(なじ)まない、とどう判断するか、こうした経緯があって注目されたのが15日の組合議会で、割り増しを廃止することにしたという次第。当然と言えば当然、良識が通ったというほど大げさな話ではないが、各紙の扱いが結構大きかったのは、明らかに理解を超える優遇措置だったから該当する人にしてみれば、変に騒がれて、不本意だったに違いない。規定があって、たまたま最初の合併だった、というに過ぎないこと。別に自分たちが求めたわけでもない。それにしても驚くのは、現実にこうした話があること。まだ、あるのかも、と思えてくるが、何とかその一つが是正された。(N)


11月17日(水)

●スポーツは実力の世界とよく言われる。確かに個人競技ではいわゆる強い選手、実績のある選手が、かなり高い確率で勝つ。団体競技にしても然りだが、多少なりとも意外性のあるのが団体球技で、その際たる競技に挙げられる一つがサッカー▼実際にJリーグなどプロの世界でも番狂わせが多く、絶対がない。そこに見る側を魅きつける何かがあるのだろうが、瞬時に攻守ところを変え、ちょっとしたミスが致命傷に。プロがアマチュアに負けることだって珍しくない。これこそスポーツという名のドラマ…▼今、行われている天皇杯の予選は、そのドラマの連続。J1、J2より格下のJFL(日本フットボールリーグ)のチームが、J1なにするものぞ、と。14日の4回戦で柏を負かした群馬FCホリコシ、C大阪に逆転勝ちしたザスパ草津。今年J2で苦しむ札幌もJ1上位の市原に競り勝った▼テレビ中継で試合を観たせいもあるが、草津は立派の一言に尽きる。選手の多くが温泉旅館などで働き、限られた練習の中で基盤を築いてきたチームだから。地域の応援体制もあったが、関東リーグからJFLに、そして今、J2入り目前。苦労が報われる寸前まできている▼「J1チームに一矢報いたい」。そんな気概が試合振りにも表われ、一歩も引かない、はつらつとしたプレーが印象的だった。専門家の戦力分析からすると、両チームには力の差はあるのだろうが、結果は必ずしもそれとイコールでない。だから面白い。草津とC大阪の試合がまさしくそうだった。(H)


11月16日(火)

●心地よい響きを持った「ゆとり教育」が揺れている。学力の低下が指摘される現実が浮かび上がってきたから。文部科学省も否定できない情勢だが、そんな中、東京都のaオ飾区が来年度から夏休みの1週間短縮方針を打ち出し、注目されている過酷なまでの受験戦争に反省が求められ、対策として文部省(現文部科学省)が打ち出した新時代の柱が「ゆとり教育」。週休2日制にし、教科時間を減らし、子どもにも、現場にもゆとりを…。これぞ詰め込み教育解消の切り札と位置づけられてのスタートだったところが、早くも見直しが急務なのだ、という。当初から教科を消化できないなどの声があったが、それにしても結果として学力が落ちてきたとなれば、放ってもおけない。「非常に変化の激しい時代ですから(学習指導要領も)不断の見直しをしていくことは大事なこと」就任会見での中山文科相の話だが、函館大谷短大の保坂武道教授はこうなる事態を予告した識者の一人。自著「いま学校を変えよう」の巻頭「いつか来た道に逆戻り」の中で「ランクづけの教育の改善なくして(新学習指導要領)の成果はあり得ない」と断じていた議論より実行。そこに一石を投じたのがaオ飾区だった。ずばり学力アップを目的に区立の全中学校の夏休みを1週間(5日)減らし、1日6時間の授業を確保する。わずか5日間だが、区教委によると、されど5日間なのだという。議論はあろうが、大事なのは「これも一つの問題提起」と受け止めることである。(H)


11月15日(月)

●地球規模の課題として浮上している環境悪化の問題。実際に温暖化現象は気象のみならず現実になって、将来への不安は増す一途。二酸化炭素やメタンガス、フロンガスの排出量抑制などの取り組みが求められているが、対応は、と言えば未だ総論の域▼地球環境の将来に不安を感じている人は9割を超える。10月末の読売新聞に掲載された世論調査の結果だが、もう少し具体的に探ると、放っておけないとされる現象のトップが地球温暖化(62%)、そして化学物質による環境汚染(49%)、オゾン層の破壊(46%)など▼知られるように、わが国は温室効果ガスの削減目標達成(京都議定書)という世界への公約を背負っている。そのためには厳しい対策が不可欠。国民の認識度も高くなっているのは事実。8月に発表された函館市の調査では53%が「対策を進めるべき」と答えていた▼この世論調査でも7割以上(74%)の人が、排出量報告の義務づけなど規制が必要と。裏返すと、これは「現状の対策は十分でない」ということの意思表示。政府の環境対策を評価しているとの認識を持つ人は3割(29%)のレベル、という結果が物語っている▼ただ、対策強化と言ったところで、今の財政状況ではおのずと財源の限界があるのも事実。そこで環境税という話になるのだが、導入賛成者は45%。この率を高いとみるか低いとみるかはともかく、国民の認識が年々高まっていることは確か。あとは政治のリード、温暖化など地球環境問題はその域に入っている。(A)


11月14日(日)

●函館野外劇の継続開催が決まった。函館市民として、まずは関係者の熱意、努力に敬意を表しなければならない。その理由は本欄で再三述べてきた通りだが、今に生きる函館人が創造した文化・観光財産であり、内外に認められるまでになった地域財産だから函館野外劇が誕生したのは、今から17年前の1988(昭和62)年。スタッフ、出演者がボランティアで支えているとはいえ、舞台の五稜郭公園は国の特別史跡。毎年造り直さなければならないため設営に多額な資金がかかる、という事情を抱えている「函館の夏に野外劇あり」。知名度は上がり、評価が高まる中でも、財政問題は重くのしかかったまま。今年は初めて観客動員1万人を達成したが、それでも単年度収支は黒字にはならなかった。このままでは…。累積赤字があることもあって存続論議が浮上する事態に本紙も報じたが、理事会(野外劇の会)を経て来年の開催が正式に決まった。理由は概ね3点。財源確保へ関係者の同意が得られた、支援を約束する団体が複数現れた、中止が市のイメージダウンになりかねない、ことなどだが、意義ある議論だったことが伝わってくる関係者のさらなる自助努力を期待する一方、市をはじめ地域ぐるみの支援と協力が不可欠。来年の開催が決まったからと言って、将来的に安泰ということまでは意味しない。他都市から羨(うらや)まれる、素晴らしい地域財産・函館野外劇を確固たる存在とするために、まだまだ“地域の力”が問われている。(A)


11月13日(土)

●「根付くか『みんなの車』 本格実験スタート」。先日の札幌タイムスで、こんな見出しの記事が目に留まった。欧米で普及の動きが広まっている「カーシェアリング」の導入実験を白石区にある本郷通商店街が始めたというのだ「カーシェアリング」とは、あまり聞き慣れない言葉だが、「カー」は車、「シェアリング」は割り当てるという意味。つまり複数の人による車の共同利用だが、車の走行台数抑制など都会の交通対策、さらには公害対策などの観点から欧米で生み出された取り組み約450都市で15万人以上が利用しているという報告もある。わが国ではまだ定着には至っていないが、3年ほど前から東京の北区、三鷹などで実験が行われたりしており、ついに道内でも…。約40人が参加した同商店街の実験は来年2月までの予定で行われる会員制で、利用したい時は、ICカードであらかじめ設けられたキーボックスから鍵を取り出し、1回2時間、利用できる。都会だと車を所有するには金がかかる。税金や維持費に加え駐車場代もばかにならない。通勤や仕事で必要というのならともかく、そうでなければ…理屈はそうだが、わが国はマイカー志向が強い国民性。だから欧米のようにはいかないのではないか、という見方があるのも確か。条件設定にもよるが、車を所有する場合に比べ安上がりで、一方、社会的にも意義があるとすれば、札幌規模なら試みる価値は十分。実験後の報告が注目される。(N)


11月12日(金)

●東京に新しく北海道産品の厳選ショップが誕生した。実際には間もなく1カ月を迎えるのだが、経営に乗り出したのは北電グループの北海道フードフロンティア株式会社。今年7月に会社を立ち上げ、わずかな準備期間でオープンさせた▼消費者から安心、安全な食品が求められる時代。だが、北海道は長年、原料供給が中心で、産品が持つ良さを消費者にきめ細かく売り込めていない、と言われてきた。今もその指摘が当てはまるが、北電グループがそこに着目し、考えたのが、この東京での事業展開▼「北海道の生産者との連携を通じて、安心・安全でおいしい北海道産品を選定し、首都圏を中心に全国のお客さまにご提供させていただきます」。同社がホームページに記載した挨拶文の冒頭部分だが、コンセプトは生産者と消費者の“橋渡し役”であり、目指すは北海道産品の専門店▼店の名称は「北海道フーディスト」で、分かりやすい東京駅八重洲口斜め前に。先日、出張した折に立ち寄ったが、単に売るだけでなく、できる限りの説明表示をしているなどコンセプト通り。インターネット通信販売や体験型ツアーパッケージなども打ち出している▼どんな商品でも同じだが、買ってもらう前提は、知ってもらうこと。そのために“橋渡し役”が担う役割は大きく、北海道にとって同社のような存在はありがたい限り。真の広がりはこれからだが、産業関係者が寄せる期待は大。単なるアンテナショップとは違うから。(A)


11月11日(木)

●「一家の収入と支出を記入して計画的な家計を考えていく帳簿」と聞かれれば、答えは家計簿。記載の仕方というか、整理の仕方はともかく、多くの主婦が実践していると言われ、先日の本紙報道によると、その歴史は100年を過ぎたという▼「友の会」の創設者である羽仁とも子さんが考案したとされるのが1903(明治36)年。その根底に息づいたのは、予算を考え、それに基づいて計画的に家計を維持しよう、という考え方。その流れは戦後さらに強まり、書店には数多くの家計簿が並ぶ新たな時代に▼“永遠のベストセラー”とまで言われ、幾多の改善の跡を残している。一方、組織的にも「友の会」に加え、日本生協連も独自のスタイルを打ち出して推奨するなど、その輪は広がって、パソコン管理が台頭する時代。金融広報中央委員会もインターネットにこんなメッセージを▼「当委員会の無償家計簿ソフト“みんなの家計簿”はだれでも自由にダウンロードしてご利用いただけます」。こうして時代背景は変われど、根底をなす考え方は100年前のまま。その精神は函館・道南でも受け継がれ、その役割の一端を担ったのが函館友の会▼12日(午前10時から、ホテルロイヤル柏木)には、100年を記念した講演会を開く。開催に当たって本紙の取材に「家計簿の良さを地域社会に広めたい」との思いを伝えているが、それにしても…。家庭経済計算簿とも言うのか、家計簿が大変な歴史を刻んできたことをあらため教えられる。(H)


11月10日(水)

●舞い散る五稜郭公園の枯れ葉を見ていると「桐一葉落ちて天下の秋を知る」の格言を思い出した。物事のちょっとした動きを見て、その後に何が起きるかをすばやく感じることだ。新札に登場した樋口一葉(5000円札)と野口英世(1000円札)は、どうだったのだろう▼2人に共通しているのは「お金の苦労人」だということ。貧乏で、しょう油代も払えない一葉は金策に走り、面識のない人にまで借金を申し込む。借金の腕前は石川啄木といい勝負だったという。それでも「文学は糊口(ここう)の為になすべき物ならず」と宣言し「たけくらべ」などを書き続けた▼脳の病理切片の標本1万枚を来る日も来る日も顕微鏡で観察し、9995枚目にして目指す病原体を発見した野口英世。友人らにお金を無心する多くの手紙が残っている。金銭感覚はなく、留学資金など500円(今なら数百万円)の大金も渡航の送別会で使ってしまった…▼紙幣に政治家や科学者、文化人が登場するのは、お札を見るたびに「その生き方」が指標になるからだ。「和をもって貴しとなす」の聖徳太子は平和主義者だった。リンカーンは選挙演説で「人民の 人民による 人民のための政治」を訴えた。その言葉は、その時代の経済動向をも左右する▼訴える「顔」のない2000円札は、どこへ行った…。日銀券の肖像として初の女性採用となった一葉の「顔」は、どんな「にらみ」を見せるのだろう。財布に少しでも長く入っていてほしい。忘年会で石川さゆりの貧しくてもくよくよしない「一葉恋歌」が熱唱されるかもしれない。(M)


11月9日(火)

●東洋大学が展開している「現代学生コラム」が、注目を集めている。募集を始めてまだ3年半ほどだが、昨年、全国の高校生から寄せられた作品数が6400編というから結構な数。教育の一環として学校ぐるみで取り組む高校も出始めている▼コラムとは「短い社会評論」という意味で、本欄もそうだが、新聞などには不可欠の囲み。それを高校生に、という企画だが、教科とは別の教育効果が言われるのは、文章表現力もさることながら、社会事象などに目を向けるようになるし、考える力が養われる故▼それは2003年度の入選70編を収録した冊子からもうかがえる。月ごとに特定のテーマが多い、というのも事象に反応していることの表れ。また、自分たちの身の周りのことにも考えを及ばせている。ボランティア、携帯電話、平和、家族…。様々な考えが600字に▼その1編「平和の国に生まれて」は、こう結んでいた。「…平和の時代に生まれた私達にできるのは、なぜ戦争をしていけないかを考える事、そして後の時代に残す事。戦争を忘れてはいけない。知らなければならない。二度と起こらない様に」。主張が読み取れる▼そこにうかがえるのは、高校生の感性であり、真面目に見つめる姿勢。よく考えて書いた作品が多い。函館・道南を含め道内から選ばれた入選作品はなかったが、応募するしないはともかく、願うのは手をつける高校が1校でも多くあってほしい、ということ。それだけの意義がある取り組みだと思うから。(Y)


11月8日(月)

●「運転中に携帯電話を使用してはいけません」。交通事故防止の観点からいくら呼びかけても守られない。としたら、罰則を設けて臨むしかない。遂にその判断が現実に移され、この1日、罰則規定を盛り込んだ改正道路交通法が施行された▼乗り物の中など携帯電話にまつわるモラル論議は枚挙に遑(いとま)がないが、最も問題なのが危険と隣り合わせの運転中の使用。「たとえ手に持っていなくても注意力が散漫になる」という指摘があるほか、危険への反応速度は飲酒運転と差がない、という説もあながち大げさでない▼実際に携帯電話の使用が原因とされる事故は全国で年間3000件とも言われる。たとえ、事故に至らないまでも、日常的にその使用光景は函館市内でも珍しくなかった。こうした実態を突きつけられると、呼び掛けも限界。罰則による対処も致し方ないと思えてくる▼警察が1日からの3日間の集中取り締まりで摘発した違反者は、全国で6000人を超えたという。現実は正直なもので、いかに守られていなかったか、を改めて浮き彫りにした人数とも言える。とはいえ、これは氷山の一角。恐らくこの数十倍いるという見方もうなずける▼運転中の携帯電話使用は「社会が断罪している行為」であり「危険を誘発する行為」。飲酒運転と同様、ここにうかがえるのも「自分は大丈夫」という独りよがり。罰則に触れなければいいというものではない。忘れてならないのは、安全をどう確保するか、という思いではないか。(N)


11月7日(日)

●ターゲットは団塊の世代! 長年、若者にスポットが当てられてきた定住促進策が、ここへきて定年退職者に注目する動きがみられる。函館市もそうだが、積極的な“誘致”に乗り出している自治体は多く、道内の都市では室蘭市がその筆頭格…「老後は気に入った地でゆっくり過ごしたい」。国内外を問わず、そんな思いを実践する人が増えている。インターネット上でも情報は多く、当然のごとく自治体が目を向け始めたということ。函館市も今年から取り組みを打ち出したが、積極さでは室蘭市の方が上ホームページでも函館市がまったく触れていないのとは逆に、室蘭市は「総合案内」の中に「室蘭移住情報」を設置。開くといきなり飛び込んでくるのが「はじめませんか 室蘭ぐらし」の文字。移住者の体験談などのほか定住ガイドや不動産情報、相談窓口を紹介している鉄のまちとして一時代を謳(おう)歌した室蘭市も10万人を割りかねない状況。「このままでは…」という思いが強く、市は5月から検討プロジェクトチームを立ち上げた。そして具体的に打ち出したのが、定年時期を迎えた、迎える人たちに焦点を当てたこの定住誘致「移住してもらうためホームページ、パンフレットや室蘭出身の著名人らを通じて全国に情報を発信する」。地元の室蘭民報はこう取り組みを伝えているが、早速、PRなどの行動に。あらためて言うまでもなく、人口は街の活性化を考える上で大きな要素。室蘭市の積極的な姿勢からも、それを読み取ることができる。(H)


11月6日(土)

●木枯らし吹いて、あす7日は立冬。庭木の冬囲いを急ぐ。誰かが言った。「人には忘れてはならないことがある。なくしてはいけないこともある、それを忘れ、なくした時、人は人でなくなるかも。だから人は記念日を創る」。11月は語呂合わせで「いい月」▼3日は「いいお産の日」だった。5日は「いいリンゴの日」だった。8日は「いい刃物の日」、9日は「いい空気(換気)の日」と防火の「119番の日」、10日は「ハンドクリーム(いい手)の日」、12日は「いい皮膚の日」、16日は「塗装(いい色)の日」と続く▼語呂合わせではないが、11日は「世界平和記念日」でもある。1918(大正7)年11月11日は、ドイツと米国が第一次世界大戦を終結させ停戦協定に調印した日で「戦うことはもうやめよう」と決めた。アフガン、イラク、チェチェン…。もう殺し合いはなしとしたい▼立冬の頃になると、禅宗の開祖・達磨(だるま)大師の「面壁九年」を思う。少林寺で9年間、壁に向かって座禅を組んで悟りを開いた。桃栗3年、柿8年、達磨9年…。転んでも転んでも起き上がろうとするダルマ。11月は一つのことに努力する「不屈の月」でもある▼10月は大きな台風や強い地震が列島を直撃した。新潟県中越の被災地では余震が止まらず、避難生活をしている約5万人に「安住の地」を早く確保してやってほしい。9日は今一度、防火や防災の意識を高め、年末年始を迎える「いい11月」にしたいものだ。(M)


11月5日(金)

●「ミズナラの苗木を無料で提供します」。樹木や花の譲り渡し役を担う道の「みどりバンク」に、10月末からこんな情報が掲載されている。さらに読んで提供者欄をみると、そこには大沼ふるさとの森づくりの会という名が。今年は1万本を用意しているという▼「緑を増やす一助に」。JR北海道、JR東日本と労組などが、そんな思いを込めた社会還元事業としてドングリの苗づくりを始めて5年。場所はJR北海道が所有する東大沼の流山温泉地で、一般の人の参加も求め毎年500人規模の“大作戦”を展開している▼今年も10月2、3日の両日に行い、ポットに1万1000本程度を植え込んだ。「順調に育って」という願いが通じ、現在、約5万本の苗木が成長中。初期のものは高さ20センチほどになり、昨年から植樹活動向けに無料提供を開始した。取り組みのサイクルはいよいよ軌道に…▼初年度の昨年は720本程度だったが、提供2年目の今年に寄せる関係者の期待は大。それにつけても思うのは、このプロジェクトを支えているのは苗づくりの参加者ということ。そう思ってインターネットで関連情報を検索していると、こんな報告に出会った▼「大沼の大自然にふれ、自分たちで森を育てるというフィールドワークは、人間が地球の中で『生かされている』ことを実感できた素晴らしいものでした」。こうした応援者がいて、苗も育ってきた、大沼ふるさとの森づくりの会が掲げた思いは、5年を刻んで、花開こうとしている。(A)


11月4日(木)

●花の間にもぐりこんだうずらだが、ハチに刺されそうになって飛び出した。「みーつけた」。少しデフォルメされたウズラとヒヨコが繰り広げるアクション型絵本。10年前の発行以来、ロングセラーだった「うずらちゃんのかくれんぼ」鮮やかな色彩と丸っこい絵が人気。「わあっ、おばけだ」…。ちょっと怖い目にもあうが、読み手と幼児がかくれんぼゲームに夢中になれる。先月、皇太子さまが愛子さまに、この絵本を読んでおられるビデオが公開されて以来、売れに売れて3週間で約10万部重版のベストセラーになった読書や読み聞かせは、心と言葉を育む。言葉の発達にはテレビを見る時間の長短よりも、絵本読みや外遊びの方が大きく影響し、意味が分かる言葉も50単語の差があるという(NHK放送文化研究所)。最近は「破っても気にしないで」と、だっこされた幼児が絵本に触れられる図書館も出てきた児童書や絵本を読んでいる人は全体の13%(女性20%、男性4%)。今年5月の1カ月で読んだ本が「0冊」の児童・生徒は昨年を下回り、小学生は1カ月に7・7冊読んでいる(毎日新聞の読書世論調査)。大人の心配をよそに、小学生は積極的に本を読んでいるようだ上ノ国の元保育士が描いた「あひるのがーきち」も挿絵に園児の絵をふんだんに使って、敬遠される屋外での遊びの必要性を訴えている。読み聞かせで読書が増えるようになり、「世界の中心で、愛をさけぶ」を愛読する中高生に成長する。9日まで秋の読書週間。新たな1冊を求めて書店へ行こう。(M)


11月3日(水)

●最近、よく聞き、目にする政治的造語に「三位一体改革」がある。今の財政事情を踏まえ、国と地方の税財政システムを再考しようという趣旨。総論賛成で議論がスタートしたが、ご多分にもれず各論に入るや議員、省庁の思惑が交錯して迷走気味に▼具体的に掲げられた“三位”とは、それぞれ改革が求められている「補助金の削減」「地方交付税の見直し」「地方への税源移譲」。今のままではいけない、というのは議会、行政にかかわる誰しもが抱いている思いだが、いざ見直しという現実に直面すると案の定、抵抗が…▼とはいえ行財政改革の焦点であり、小泉内閣にとっては掲げる改革の一つの柱。少し経緯に触れると、政府が全国知事会など6団体に2006年度の補助金削減についての検討を求めたのが今年5月。それを受けて知事会などがまとめたのは3・2兆円の削減だった▼ところが、この案に対し、省庁側はたまらないとばかりに反発。林野庁や国土交通省の部局などが市町村に補助金の存続を求める意見書の文案を作って流し、批判を浴びたが、それでも懲りずに省庁側が対案として示した削減案は、政府の方針も影が薄い1兆円…▼そこに浮かび上がるのは省庁の権益保持を優先する姿であり、その裏に見え隠れするのが、いわゆる“補助金族議員”。都合のいい時は地方の時代ともてはやし、都合が悪くなると…。そんな思いも込み上げてくるが、地方の案が通るか否か、その結果は今後の行財政改革の先を占うに値する。(N)


11月2日(火)

●「夜間、主として灯火の標識を出して、航海者に位置を知らせたり、航路を指示したりする施設」。国語辞書にこう記されている灯台。誰もが知っており、何となく郷愁をそそる施設だが、知名度の高い灯台を除いては意外と存在が知られていない▼灯台の歴史は140年余り前の1860年代にさかのぼる。徳川幕府がアメリカなど4カ国と結んだ江戸条約に、航路標識の整備が盛り込まれたのが始まり、と言われる。それが明治政府に引き継がれ、最初の西洋式灯台として誕生したしたのが三浦半島(神奈川県)の観音崎灯台▼1869(明治2)年のことだった。これを機に灯台の整備が進み、今では大小あわせ5300ほど。近年は電波や音を出すものもあるほか、無人化が進んで、映画「喜びも悲しみも幾年月」の世界はもはや過去の話▼襟裳岬や竜飛岬、足摺岬などのように、岬と灯台はパッケージ、となって観光地化している所も多い。海上保安庁と社団法人燈光会が6年前に行った「日本の灯台50選」に選ばれた灯台などは知名度がある所ばかり。道内から九つ、渡島・桧山からは恵山岬灯台が選ばれている▼さらに白神岬灯台、矢越岬灯台、汐首岬灯台、aオ登支岬灯台など、地形柄、道南は灯台の多い地域。それぞれが安全航行を誘う使命を負って毎日、合図を送り続けている。実はきのう1日はその灯台記念日だった。観音崎灯台が着工した日を記念して1949(昭和24)年に制定され、それからでも55年の月日を刻んでいる。(A)


11月1日(月)

●ベージュのシャツにジーンズ姿、手足は縛られ、遺体は首と胴体が切断されていた。反米勢力の拠点のバグダッド・ハイファ通り。単身イラク入りした香田証生さんだった。日本人の命がまた一つ失われた▼海外へ行く資金をためるためリュック一つで旅をするバックパッカー。今夏には働きながら旅行するワーキングホリデーでニュージランド入り。イスラエルからヨルダンに渡り、旅行者のガイドや皿洗いなどのアルバイトをして、周囲の制止を振り切ってイラクに入った▼どうしたら世界は平和になれるのだろうか、戦争というものを肌で感じて、そこから平和について考えようとしたのか。7カ月前に劣化ウラン弾の怖さを世界に伝えたいとイラク入りし拘束された今井紀明さん(聖職者の仲介で解放)の行動と似ているが、無謀な行動が心配された▼今度、無慈悲にも「処刑」したのは聖職者の影響が及ばない超過激派の武装グループ。アメリカに協力する有志連合国の人質はイラク人も含めて殺害し、その模様をインターネットで流すなど残忍さはエスカレートするばかり。日本のイラク支援の感情とテロ組織の考え方の断絶が改めて示された▼「僕の首をはねると言っています。すみませんでした。また、日本に戻りたい」と訴えた映像が脳裏を離れない。最初から「テロに屈しない」と犯行グループの要求に全く応じない首相の発言が非情な殺害につながったのなら、問答無用の相手といえども、交渉の余地を確保すべきだった。悲劇を繰り返さないために。(M)


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