平成16年12月


12月31日(金)

●2004年も残すところ十数時間。色々なことがあった。明るい話が多かった、と言いたいところだが、残念ながら国内外ともに暗い話ばかりが目立って…。自然現象の脅威も含め、十大(重大)ニュースを選ぶのが大変なほど多難の年だった▼各方面の“今年の総決算”が明らかにしているが、本当に「またか」「えっ」という思いを、どれだけ抱かされたことか。新聞の業界紙が主催した大手新聞社の社会部長が選んだ十大ニュースでも、明るい話と言い切れるのは「アテネ五輪のメダルラッシュ」ぐらい▼ちなみにランクされた出来事を上位から拾っていくと、トップは「新潟県中越地震」。災害では「台風ラッシュと猛暑などの異常気象」もあり、さらに事件事故関係では「イラクでの日本人拉致、殺害事件相次ぐ」「佐世保女児殺害など子どもが犠牲になる事件の続発」などが▼世相を表す漢字(日本漢字検定協会)に選ばれたのも、暗いイメージの「災」。約5票に1票がそうだったというから、災害が多くの人の心に重くのしかかったことをうかがわせるに十分。せめて「来年は『災い転じて福となす』となるように」と願わずにいられない▼一方、振り返る目を函館・道南に向けると、大門の火災などが影を落としたが、年末になって将来に弾みのつく話が。5市町村が合併した新しい函館市が歴史を刻み始め、それを祝うかのように新幹線の新函館までの来年度着工が決まった。「こうした夢膨らむ話がかき消されないように」。そう期待して今年の本欄を閉じることとしたい。(A)


12月30日(木)

●地方自治体を語るとき「財政難」という現実を切り離して語ることはできない。平成の大合併も根底にあるのは「財政難」であり、この厳しく、難しい局面を乗り切るには効率化しかない、その有効な手段が合併、と。受け止め方は別にして一理ある▼函館市だけの北海道はともかく、全国的には市町村合併が進行中。5年前に3229あった市町村は既に2927まで減少。来年4月には2500を割ることが予想されている。その一方で至上命題とされているのが経費の節減で、それぞれ知恵を絞っているはずだが…▼全国紙2紙のホームページに数日前、興味深い対照的な事例が載っていた。一つは横浜市で、職員の給与明細書に広告を掲載することにして年50万円の節減を図ったという話。もう一つは大阪市で、多くの自治体では一般職の係長職に管理職手当を支給しているという話▼どっちが住民に評価されるか、答えは歴然としている。それでも大阪市が総務省の是正指導を受けて見直すというのならまだしも、是正の考えはないというのだから呆れるばかり。50年来の慣行であり、「勤労意欲を高めるために必要」ときては、もはや言葉がない▼制度や規定はけっして固定的なものでない。時代の要請の中で変わっていって当然であり、この問題に関する限り大阪市は時代錯誤も甚だしい、と言わざるを得ない。国もそうだが、地方自治体が今求められているのは時代感覚。それが欠けている、大阪市にその典型的な一例を見た思いがする。(N)


12月29日(水)

●「もういくつねると お正月…早くこいこいお正月」。滝廉太郎が50年前に作った童謡に、なぜか「お年玉」の文句が出てこない。クリスマスが過ぎると、お正月。子どもたちにとって、いつものお小遣いより沢山のお年玉は待ち遠しい楊貴妃が子どもを産んだ時、玄宗が「お金」を贈って、我が子の誕生を祝ったのが「お年玉」の起源だという。生まれてきた子どもに魔よけのお守りを贈るという意もある。日本では年神様の御歳神に供えた鏡餅を「御歳魂(おとしだま)」と呼んで、半紙(今はポチ袋)に包んで分け与えたのが始まりとか1人当たりのお年玉の平均予定額は幼稚園児が1734円、小学校低学年が2306円、高学年が3375円、中学生が4618円、高校生が5504円で、昨年より若干減っている(11月下旬、UFJ銀行調べ)。大学生になると2万、3万円とハネ上るようだ最近の子どもは年賀状に「いっぱい勉強しています」と書いて、お年玉を催促。最も欲しい物は携帯電話(65・4%)といい、化粧品(14・3%)などが続く。世代を超えて生活の必需品になったのか、臥牛子の孫(小2)も「ケイタイがほしい」と待っているお年玉は金額じゃないけど、金銭感覚が薄らいだ今の時代こそ、お年玉をあげて、お金の価値を学習させるべきではないか。「二歳児の命が光る修羅の中」(全国紙の川柳欄)。中越地震でがけ崩れの下で92時間も生き抜いた優太ちゃんにも、命を守り、魔よけになる「お年玉」を贈りたい。(M)


12月28日(火)

●今月中旬のこと。東京の地下鉄に乗車中、「何じゃこれは」と思う車内広告が目に飛び込んできた。連れも同じだったようで、「こんなことやってるんだ」と。インパクトは大きく、広告効果も当たりだが、その広告の主が国土交通省とあって驚きはさらに▼「11月27日(土)から、路上工事の不人気投票がスタート」。それがキャッチコピーだった。人気投票というのはよく聞くが、不人気投票とは…。どういうことか、その下の文章を読んでいくと、やはり不人気で間違いない。しかも寄せられた声を公表するという▼最後まで読んで分かった。要は苦情の多い路上工事の縮減や改善に模索する取り組み。この不人気投票の一方で、施工業者には工事看板の変更も迫っている。例えば「傷んだ舗装を直しています」など、誰が何のために実施している工事か、を表記するように▼道路補修に加え、電気、ガス、水道…。東京23区内に限らず、日本列島各地、路上工事は日常茶飯事。「いつも同じ所で工事している」とか、とかく不満が多い。そうした声に国は業者を指導する内部調整型で対応してきたが、外部評価型に転換したということである▼タクシーなどのドライバーをモニターに委嘱し、工事をチェックしてもらうことも打ち出している。これらの試行地として選んだのが最も工事の多い東京23区。そう理解する中で一つうかがえるのは、変わろうとしている姿。「ようやくここまできたか」。そんな思いを抱きながら地下鉄を降りた。(M)


12月27日(月)

●手術室や霊安室が残っている病院跡、多くの人が事故で死んだ炭鉱跡、バブル期のリゾート跡…。夜通し悲鳴が響く廃墟が心霊スポットとして、なぜか若者にブーム。肝試しに使われていたという千葉県の「幽霊が出る料亭」の廃屋で女子高生が殺害された(23日)▼2年前、米国の精神病院跡の巨大な廃墟を舞台にしたサスペンス映画「セッション9」が公開されてから、廃墟ブームが一気に高まったよう。廃墟は厭世(えんせい)自殺の格好の場、時には犯罪の場にもなるが、未知の廃墟に神秘性を感じ、探索する若者も少なくなく、最近は「心霊ツアー」もあるという▼女子高生は少年ら4人に軽乗用車で連れ去られ、約20キロ離れた廃屋で絞殺された。5年ほど前に廃屋になり「幽霊が出る心霊スポット」として若者が出入りし、殺人事件の噂もあって、住民から対策が寄せられていたというのだが▼顔を見られ路上強盗が発覚するのを恐れて殺害するなんて、何とも卑怯な行為。不況が続くと廃墟化がさらに進む。廃墟は工場跡や病院跡、トンネル跡だけではない。永田町にも「認知症」をよそおって、幽霊のように泳ぎ回る心霊スポット「旧派閥跡」が…▼1億円のヤミ献金をめぐって、元首相は「記憶にない」と繰り返したり、小切手の受け渡しには「事実だと思う」とつぶやいたり。有力な3人が同席していたのに、である。Uターンして廃校を利用するのは歓迎だが、小切手が動く「薮の家」や、犯罪が起きる古い「建造物」は直ちに取り壊した方がよい。(M)


12月26日(日)

●「雇用と景気は密接不可分の関係にあり」。当たり前すぎる、誰もが分かる経済論理だが、先日、文部科学省が発表した来春、高校を卒業する就職希望の生徒の内定状況をみると、あらためてそれを実感する。全国的な地域格差があまりにも大きいから▼長いトンネルに入っていたわが国経済は、もやもや感が漂ってはいるものの、回復基調という受け止め方が一般的。ただ、これはあくまで全体としての認識であり、自ずと地域格差が。大雑把には名古屋を中心とした中京地域は明るく、東京などの首都圏も兆しが見えたと▼対極的なのが北海道や東北、沖縄などで、期待と願いに反し、依然として厳しいまま。直近の経済概況でも北海道は後退感がにじむなど、回復の兆しすら実感できないでいる。こうした景気回復の地域格差が、そのまま表われたのが新規高卒者の就職内定率▼同省の発表数字は10月末現在のものだが、全国平均で53・1%。昨年の同じ時期に比べ5上回って、「超」はとれたとしても、まだまだ氷河期。その中で中京地域に目を移すと、愛知が78・3%、岐阜が78・2%といううらやましいほどに高い数字。それに比べて北海道は…▼関係機関は相談窓口などを設け、企業に採用を増やすよう求めているが、渡島・桧山で11月末現在、38・4%(函館公共職業安定所調べ)。なお4割に届いていない。「厳しい雇用環境」。この言葉を死語にしたい、という期待は今年もかなわなかった。来年こそは、残念ながらそう思うしかない。(N)


12月25日(土)

●観光都市としての年季がなせる業なのか、京都には「さすが…」と思わせる何かがある。突き詰めるなら、行政、住民の観光に対する意識の高さということなのだろうが、先日行われた初の観光文化検定試験の受験者が1万人を超えたという▼京都はわが国を代表する観光都市。寺社の風景ばかりでなく、春は春、秋は秋の風情があり、京言葉や京料理といった歴史に培われた文化など魅きつける資源に事欠かない。リピーターも多く、年間の入り込み観光客は実に6700万人。外国人も群を抜いて多い▼その京都で、ガイドなどの関係者はもとより市民の地元知識をさらに、と取り組みが始まったのがこの検定試験。初年度は学術的な知識を求める1級はなく、2、3級だけだったが、全国的に通じる資格とは異なるのに、この受験者数…。うらやましいほどの関心というほかない▼京都の底力を見せつけられた思いだが、実はこうした地元知識試験、京都が初めてでない。東京と札幌で実施されている。名称は違うが、早かったのは東京で昨年の11月、札幌は今年の10月だった。東京では既に1170人、札幌では250人の合格者を出している▼3都市の期待は同じ。「知識面からも観光客の満足度を高めたい」という思いだが、それは函館が抱えている課題でもある。確かに「もてなしの心を」と呼びかけるだけでは限界があるのも事実。そう考えると…。実施するかどうかはともかく、試みとして3都市の検定は一つの方途と思えてくる。(Y)


12月24日(金)

●日の経つのがとりわけ早く感じる12月。「師走」というだけあるな、と改めて思うが、この間、12月に入ったと思っていたら、いつの間にか今年も残すところ1週間ほど。仕事は追い込みに、家庭は年末年始の準備とあわただしい時期である社会の変化、核家族化が進んだこともあってか、正月を迎えるからといって昔ほど構えた雰囲気はなくなっている。確かにそうだが、だから何もしない、とまでは割り切れない。新しい年を迎える気持ちは新鮮であり、出来る限りのことは、という思いは抱いて当然1年の締めくくりと1年の始めだから。実際のところ、正月を迎える負担、三が日の過ごし方などについて主婦はどう考えているか、UFJ銀行が行った調査結果がそれを教えているが、負担のトップは年末の掃除。年賀状書き、料理と続く傾向は年代に関係なく同じ…のしかかる負担は、正月に対する思いにも表れ、普段より楽しい、と答えた人は半数を割って46%。逆に普段より気が重い、と感じている人が25%いる裏に「大変」「疲れる」という思いが読み取れる。そして、正月の雰囲気に浸る瞬間で多いのは年賀状を手にした時、と正月休みには旅行する家庭も多い。帰省も旅行とするなら、その率は22%。正月は親元で、という思いが依然として根強い一面がのぞくが、その家庭、帰省先での過ごし方のベスト3は団らん、初詣で、テレビ(ビデオ)観賞。そこから「年末は頑張って、正月はゆっくりと」という姿が伝わってくる。(H)


12月23日(木)

●交通事故は長年背負い続けている社会問題。残すところ2週間という18日に、交通事故で命を落とした人が今年も7000人を超えた。ちょっとした規模の町村が毎年一つ無くなっているかと考えると、いかに多いか、それが実感として伝わってくる戦後の1946(昭和21)年から1996(平成8)年までの51年間で、犠牲になった人は50万人を超えた。交通戦争という言葉が使われたのも頷(うなず)けるが、現実に1970(昭和45)年は、1年間で1万6765人が死亡している。確かに物理的な要因もあった幅員の確保や改良の遅れなど道路環境も悪かったし、エアバック、シートベルトなど車の安全性も今のレベルとは違った。徐々に改善が進み、指導や取り締まりもあって、15年ほど前の1988(昭和63)年、とりあえずの目標としてきた1万人を割った北海道は今なおワーストワンのらく印を押されているが、努力は報われている。過去10年を振り返っても、それがはっきりと。最も多かったのは1995(平成7)年の632人だが、その後は500、400人台ときて、昨年は391人。今年は18日現在376人…交通事故の悲劇は幾つもの事例が教えているが、遭遇しないための決め手は一つ。「モラルを守った安全運転」。それしかない。11月末に開かれた函館大学の弁論大会でも、函館の交通マナーの悪さが指摘されていた。雪も降った。路面が凍結している上、何かと気ぜわしい年末。さらに気をつけた運転を心がけたい。(Y)


12月22日(水)

●約120年前のきょう12月22日が、わが国で初めて内閣が誕生した日であることは、意外と知られていない。正式には1885(明治18)年で、歴史教科書的に表現するなら「大宝律令以来の太政官が廃止され、新しく内閣官制が公布された日」とその最初の内閣は、これはよく知られる第一次伊藤博文内閣。敬称は省略するが、伊藤は44歳、ほかに名を連ねた山県有明、井上馨も40歳代で、近年の内閣とは比べものにならないほどの若い内閣だった。それから大正、昭和と時を経て発足時の小泉内閣は87代目当然ながら内閣の性格も幾多の変遷をたどっている。大雑把な説明になるが、議員内閣制の形が出来上がったのは大正末期から昭和初期にかけて。以来、今日に至るが、わが国の内閣を語る時、よく言われるのが短命だということ。特に近年はよく指摘される平成に入って16年が過ぎようとしているが、確かに首相は数えて11人目。就任順に覚えている人はよほどの政治通だが、参考までにさかのぼると…。敬称を略して森喜朗、小渕恵三、橋本龍太郎、村山富市、羽田孜、細川護熙、宮澤喜一、海部俊樹、宇野宗佑、そして竹下登また出身県別では歴史的な背景もあって山口、鹿児島、佐賀、和歌山、京都など西日本が圧倒的に多い。東日本では高橋是清や近衛文麿、吉田茂、鳩山一郎らを輩出した東京のほか、群馬、新潟、栃木、岩手など数えるほどで、神奈川も小泉首相が初。そう言えば、北海道からはまだ出ていない。(Y)


12月21日(火)

●きょう21日は冬至。1年で昼が一番短い日。師僧がお経をあげるために東西を馳せ走る月の意の「師走」も押し迫ってきた。国会のセンセイたちもイラクの自衛隊宿営地などへ走り回った…▼「多くの人に守られて数時間視察した防衛庁長官らに何が分かるのか。隊員や家族の気持ちを考えると延長は反対」(留守家族)のように、6割以上の国民が反対している自衛隊のイラク派遣があっさりと延長された。「自衛隊が活躍している地域は非戦闘地域」(小泉首相)を理由に▼治安不安定の中、今年イラクから撤退した国はスペインなど6カ国、撤退や削減を表明しているのは来年3月のオランダなど7カ国。「一度自衛隊に入ってサマワに行き、緊張感を持って活動すれば、またたく間に変わるんじゃないか」―。青少年の教育問題で講演した自民党幹事長にいたっては何をかいわんや▼所得税、住民税の定率減税もあっと言う間に廃止が決まった。学力低下などで今、最も重要とみられる三位一体の教育事業も中教審にまかせ、先送りとなった。05年度の国家予算案では約34兆4000億円の新規国債を発行、相変わらずの赤字国家▼野口英世や樋口一葉の新札に景気回復を願う夢もつかの間、増税路線が見え始めた。「痛み」を超えて「重傷」になっちゃう。冬至にはカボチャを食べて、ユズ湯に入って、か。今年は函館市の学校給食にもクジラ料理が出た。大みそかは台風や地震など「災の年」がサルことを願って、函館名物の「クジラ汁」を食べよう。(M)


12月20日(月)

●「子どもも独立して、配偶者が亡くなり、一人身になったらどうしようか」。誰しも一度や二度、考えたことがあろうが、そんな問いかけに実感がない、という人は現実に直面していない故。遅かれ、早かれ、否応なしにいつか答えが求められる▼今の時代、その選択肢は幾つかある。11月末の本紙に掲載された函館消費者協会の老後・福祉アンケート調査の結果から浮かび上がったキーワードは「自宅」。健康なうちは、というただし書きがつくのだろうが、自宅での一人暮らしを選ぶ、という人が28%と最多▼このアンケートでは、ほかにヘルパーの世話を受けて自宅で、介護付きの高齢者向けアパートで、子どもの家で、施設で、などの項目があったが、養護などの施設や最近増えてきている高齢者向けアパートは、まだまだ「自宅」の次。子どもとの同居も2割に満たない▼「住み慣れた所、住み慣れた家が一番」。よく聞く話だが、その思いは年齢を重ねるにしたがって…。うなずける話であり、現実に自宅で一人暮らしをしているお年寄りが増えているのは、その証し。将来的にも自宅派が減ることはない、という説も決して根拠のない話でない▼だが、現実に目を移すと、防犯、健康、経済、さらには精神的な支えも含め日常抱える不安は多々。中でも最も気がかりは健康。それでも「老後はプライバシーを守りながら自宅で静かに暮らしたい」という人が多い。とすると…。言わずもがなだが、行政や社会が問われているのは「安心」ということになる。(H)


12月19日(日)

●「海」「船」から連想することは多々あるが、霧笛もその一つ。あの低く遠くまで響き渡る独特の音色…。一度や二度、聞いたことがあろうが、何となく哀愁を覚えさせ、海のロマンともダブる。だが、この霧笛が重要な役割を担っているのは誰もが知るところ▼その役割は、位置を知らせ、安全航行を促す、ということ。今でこそ船にはレーダー、灯台には電波などが機能装備され、状況の把握が簡単になったが、かつては、霧が深く立ち込めて視界が悪い時など光だけでは事足りず、それをカバーをしたのが音だった▼船もさることながら、わが国で最初に霧笛が設備された灯台は、道南と目と鼻の先の下北半島北東端にある尻屋埼灯台。今もそうだが、津軽海峡はいわゆる海の難所。事故安全航行を促す手段として設けられたのは、1879(明治12)年の12月20日▼4秒おきに鳴らしたと伝えられるが、実に125年前に遡(さかのぼ)る。その後、各地の灯台に設けられたが、近年は使用頻度が減り、残している灯台は全国で20カ所弱とも。道内では襟裳岬灯台などに併設されているが、尻屋埼灯台は10年ほど前、その歴史を閉じている▼霧笛が長きにわたって役割を果たしてきたことは、関係者に共通した認識。20日を「霧笛記念日」と称する向きがあるのはその表れで、霧笛は紛れもない灯台の歴史を語る1ページ。これまで数え切れないほど船を助けてきたに違いない。これから北の海が最も荒れる冬の季節、あらためて安全航行を願わずにいられない。(H)


12月18日(土)

●「森こそ豊かな海の源」。よく耳にする言葉だが、官民が連携した取り組みとなると、まだまだの域とも言われる。そこに一石を投じる新たな動きが始まろうとしている。11月末、道森林管理局と道漁連が協定を結んだ共同の森づくりがそれ▼森林と海の関係は、まさしく自然のメカニズム。具体例として分かりいいのが襟裳の話。知っている人が多かろう、森林をなくしたために土が流出して海が汚れ、昆布が全滅したが、悪条件と戦いながら住民の根気強い植樹への取り組みが実って、昆布が復活したという話である▼森が、川が海に栄養素をもたらし海藻などの成長を支える。いわゆる定説だが、その認識が広まり、近年は全国的に漁業者が植樹に力を入れ始めている。北海道でも漁協の女性部が中心になって15年ほど前から。そこにあるのは「100年前の自然の浜を…」という思い▼毎年3000本以上植えている。ただ、どうしても沿岸部の民有林ということになりがち。「このせっかくの取り組みをさらに実りあるものに」という思いが、国有林を管理する森林管理局と一致。沿岸からさらに奥の源流部まで、住民参加の形で植樹を進めようと…▼こうした協定の締結は全国で初めてということだから、注目を集めているのも当然。道南も含め具体的な取り組み方途はこれからだが、大事に考えるべきは息長く続けること。それでなくても森づくりは時間のかかるプロジェクト、どう広げていくか、続けることでいい答えが聞けるに違いない。(N)


12月17日(金)

●2004年も残すところ2週間。台風、地震災害をはじめ様々な出来事があった。間もなく新聞各紙が十大(重大)ニュースを発表する時期を迎えるが、一足早く先日、紹介された「四字熟語」(住友生命保険)の優秀作品からも今年が読み取れる気持ちの問題として明るい話から見ていくと、トップは日本選手が活躍した「後寝五輪」(アテネ五輪)だろう。時差の関係で寝不足を強いられた人が多かったが、あれだけ感動させてもらったのは久々。また、イチローの「咲多安打」(最多安打)も楽しませてくれた一方、暗い方では気象など自然現象。東京で39度など真夏日が連続した「惨三九度」(三三九度)もあれば、新潟、福井、三重などの台風大被害は「台風常陸」(台風上陸)「家田浸水」(我田引水)「風震禍残」(風林火山)「天地騒々」(天地創造)などと表現されてそして政治の分野では、内政、外交に懸案山積の「懲不内閣」(小泉内閣)、何としても走る「郵先純意」(優先順位)、さらにはいま一つ見えてこない「酸味一杯」(三位一体)のほか、年金の「前代未納」(前代未聞)というお粗末も…。「原油高苦」(原油価格)も気にかかるこのほか社会現象では、看板の偽りが一部公になった「露見風呂」(露天風呂)や「不湯表示」(不当表示)、詐欺が多発の「警戒電話」(携帯電話)など。そして最後に北海道として忘れられないのが「紅旗道来」(こうきどうらい・好機到来)。そう、夏の甲子園での駒大苫小牧の活躍である。(H)


12月16日(木)

●ターゲットは団塊世代…。函館市など道内の一部市町村が“移住者誘致作戦”を進めているが、道も検討に乗り出している。こうした取り組みも道外での認知度はまだ低く、北海道全体としての機運の高まりが求められているだけに、今後の道の動きが期待される定年退職後の人生が大幅に延び、かつての時代の10年そこらから今では20年以上に。しかも核家族化で、多くは夫婦2人。としたら、いわゆる第二の人生は「生活したい所で」という思いにかられるのもうなずける話であり、「第二の故郷探し」は今や現実…その場所が国内ばかりか海外だったりもするが、実際に事例は増えている。「それじゃわがまちに」。そう考える市町村が出てきて不思議はなく、全国的に受け入れを打ち出している市町村は数え切れないほど。道内では伊達市が知られるが、道南地方でも幾つか函館市の場合、気象や生活環境情報、さらには住宅情報などを流し、函館に住みませんか、と呼びかけている。確かに実績を挙げるまで時間のかかる、息の長い取り組みだが、人口の増加策という視点もさることながら、生涯学習や産業の人材確保という面の意義を言う人もターゲットは60歳の退職年齢を迎えている団塊の世代。それも首都圏の居住者。今のところ、北海道などの北は沖縄などの南に水をあけられている、とも言われるが、今後の鍵を握るのは「四季のある北海道」「安心・安全な北海道」を分かってもらう努力。それこそ道に求められている役割にほかならない。(H)


12月15日(水)

●「さらに美しい街に」。函館市の西部地区が道の環境美化推進地区の指定を受けた。空き缶等の散乱の防止に関する条例に基づき道内3カ所目。ごみのポイ捨てや歩きたばこの自粛などの啓蒙モデルの役割を担うほか、地域参加の清掃実践などが期待される▼函館山のふもとに広がる西部地区。重要文化財の旧函館区公会堂をはじめ、歴史のある教会や寺院など伝統的建造物が残る、言わずと知れた代表的観光スポット。函館を訪れた観光客の多くが足を運び、散策を楽しんだり、海を眺めたり、珍しい異国情緒を堪能する▼その観光もさることながら歴史・文化財産を守る視点から、1988(昭和63)年には函館市が西部地区歴史的景観条例を制定。今は名実ともに伝統的建造物群保存地域と位置づけられている。景観、建物の保存とともに、もう一つが将来を展望しての環境維持…▼それを後押ししようとするのが、この道の美化推進地区指定。確かに函館市は1993(平成5)年に、ごみの散乱防止に関する条例を制定しているが、理解の広がりは今一つ。指定によって今後、例えば歩きたばこの自粛やごみの排出抑制を求めることなども現実に▼金をかけ、人も使っての環境美化なら苦労はない。罰則を適用するのも簡単。だが、最も求められ、大事なのは、そこに住む人、そこを訪れる人の理解を得ていくこと。西部地区がそのモデル役ということだが、それは全市的に問いかけられているテーマ。指定の成否はその理解にかかっている。(N)


12月14日(火)

●映像に映し出されたウクライナ大統領選の野党候補、ユシチェンコ氏の腫れ上がった顔。原因不明の「奇病」に侵されたと言われていたが、ウィーンの医師が「ダイオキシン中毒」と診断したダイオキシンは米軍がベトナム戦争で使った「枯れ葉剤」にも含まれていた猛毒。1グラムで83万匹のモルモットが死んでしまう。大人が摂取すると、がんになったり、流産や奇形児が生まれる。日本ではゴミ焼却炉の灰から検出され問題になったユシチェンコ氏から検出された量は通常の環境で皮膚や血中から検出される値の1000倍にもなった。医師団は水溶性のダイオキシンはクリームスープに容易に混合できると指摘。映画スター並みと言われた顔は膨れ上がり、皮膚は青黒くただれ、目も腫れて、背中などに痛みが走るというアニメ映画「いのちの地球ダイオキシンの夏」が忘れられない。北イタリアの化学工場の爆発で起きた大規模なダイオキシン災害。白い灰が降った直後から鳥や犬、猫が死んでいく。ヒロシマの悲劇にも匹敵するダイオキシンの恐怖。少年らが毒物の正体を突き止めようと立ち上がる…科学者は「人間という一族が恐るべき力を手に入れ、自然を変えようとしている」と、化学物質や農薬などによって汚染される環境を嘆く。ウクライナの野党は「与党陣営が生物兵器用の毒物で暗殺を図った」と主張、司法当局も調査に乗り出した。26日の大統領再選挙から目が離せない。(M)


12月12日(日)

●税制の改正論議と言えば聞こえがいいが、増税論議が活発だ。定率減税の全廃論が公にされ始めたほか所得課税、消費税…。景気の先行きがなお不透明な中、国の財政建て直しの道は増税しかない、少子高齢化時代では増税も仕方ない、のだと▼わが国の財政は素人目にも明らかな危機的状況。先日、財務省が国民向けに編集した冊子「税のはなしをしよう」などを捲(めく)ってみたが、次第に気持ちが重くなって…。大変というレベルを通り越して、よくもここまでしたな、という感じ。政治のつけと言うしかない▼歳出に占める税収の割合は50・8%。10年前に69・3%だったのが20ポイントも落ちて、今や半分は公債という名の借金で賄っている状態。その公債残高は同じく10年前の倍以上の483兆円。国民1人当たりにして378万円、一般会計税収の12年分に相当する額である▼2006年をピークに人口は減り始め、労働人口も減少に転じる時代を迎えるというのに。それを分かっていて招いた現実であり、ずばり言って政治の責任。せめて非を認める姿があればまだしも、それもない。だから「何とかしなければ」と理解はしても、分かったよ、とは…▼政府は2010年代初頭で基礎的財政収支(利払費を除いた収支)の黒字化を目指すとしている。かなり難しい達成目標だが、そう思うのはあまりにも政治が信頼に欠けているから。しかも“回復メッセージ”はいつまで経っても伝わってこない。これでは…。政治は今、最も大事なことを忘れている。(N)


12月11日(土)

●歴史の街でもある函館市。通称“伝建”と呼ばれる建造物をはじめ公的施設など、歴史の面影は随所に。何気なく日常的に触れているようで、中には意外と気にとめられていないものも…。だが、専門家の見る目は違って財産価値を教えてくれる▼函館港の石積み堤防の「船入澗(ふないりま)防波堤」や、函館どつくの「第1号乾ドック」も然り。あの堤防にしても「結構古いね。石造りだよ」。そんな思いを抱いとしても、歴史的価値があるとまでは…。ところが、この二つに学術面からの勲章が与えられた▼先ごろ、社団法人土木学会から「土木遺産」というお墨付きが。道内から3件、全国から17件(26施設)が認定された中に含まれた。函館港改良施設群の船入澗防波堤が3年の歳月をかけて完工したのは1899(明治32)年のこと。今から数え実に105年前にさかのぼる▼小樽港にもあるそうだが、それより1年早く、砲台を解体した石を再利用したと伝えられる。そこに歴史的、土木工学的に価値ありと判断された理由があるが、一方、函館の産業を支えた象徴的存在でもある第1乾ドックも、ほぼ同時期の1903(明治36)年に▼実のところ、函館市内からの認定は初めてでない。3年前に「函館市水道施設群の笹流ダムと元町配水場」が受けている。函館は優れた土木事業がある都市ということであり、こうした地域財産にもっともっと目を向けていい。そして大事に考えよう、認定された遺産からも、そんなメッセージが聞こえてくる。(A)


12月10日(金)

●朝鮮半島は儒教の地。死が近づくと頭を東向きに寝かせ、口と鼻にあてた綿の動きで死期を知り、死ぬと哀号し、招魂を行って埋葬する。遺骨は大事にする。掘り起こして何度も焼却するなど、とても考えられない。まして、複数の骨にすり替えるなんて…▼北朝鮮が横田めぐみさんの「遺骨」として提出した骨はDNA鑑定で全く別人のものと判定された。母親の早紀江さんが直感的に「めぐみのものではない」と言い切った通りの結果だ。先月、持ち帰った松木薫さんの可能性があるとされる遺骨も別人のものだった。不誠実きわまりない▼「ウソをいえば本当と、本当をいえばウソと思われるのが北朝鮮だった」。ジェンキンスさんが語るように、ウソにウソを重ねると、生きていても「死者」にせざるをえないのか。日本の科学がウソを暴いた。何度も焼却したからバレないと思ったのか。命をもてあそび続けることに腹が立つ▼死亡時期の訂正など、終始つじつま合わせの度重なるごまかしは日本を愚弄するばかりだ。弾道ミサイルを背景に経済制裁はできないだろうと、日本の世論を甘く見ているとしたら、大間違い。めぐみさんらが叫ぶ「ここにいるよ、助けて」の声は必ず故郷に届き、懸命に救出するだろう▼めぐみさんの「夫」とされる男性も別人の可能性がある。儒教によると、政治思想として「君主は道徳的に卓越していなければならない」と主張している。北の指導者も非道なオニばかりではないはず。道徳のカケラは残っているはず。目を覚まして、拉致被害者を元気な姿で早く帰すべきだ。(M)


12月9日(木)

●拉致家族の曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんが佐渡入りした。「私は人生で大きな過ちを犯したが、娘を連れ出したのは唯一の正しい行為だった」と語り、さらに北朝鮮が2人の娘を大学に入れたのは対南工作のスパイにするためだったと。そう受け止めたのは北朝鮮の教育に対するジェンキンスさんの読解力のたまものだ読解力。広辞苑には「文章を読んで、その意味を理解し、解釈すること」。文章やグラフを理解して知識を高め、社会生活に生かす能力。文章を読んで情報を探し出し自分の経験や知識に結びつけるなど、実生活への応用力に主眼を置くOECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査の結果が発表されたそれによると、日本の子どもの読解力(調査対象15歳の生徒)は、41カ国・地域のうち14位。前回3年前の調査では8位だった。加盟国平均を500点とすれば日本は498点。科学的な活用力は2位、数学的な活用力は6位だったが…携帯電話などで日本語が「話し言葉」だけになった昨今、意見を述べたり、自分の考えを書いたりする授業も少なくなった。読書の時間も減った。教師側にも問題がある。同じ調査で「学校への誇り」や「熱意」などを基準に教師の士気を比較したところ、日本はイタリア、韓国、香港などとともに低かったという「佐渡の人から頑張ってね、と声かけられた」。美花さんのように拉致家族の子どもたちは一生懸命に日本語を勉強している。読解力の低下は「ゆとり教育」で国語の授業時間と内容が減ったことによるのは否めない。朝の「10分間読書」などで文章を読んで感動する授業を増やすべきだ。(M)


12月8日(水)

●1カ月ほど前になるだろうか、新聞各紙は「東京都教育委員会が2007年度から『奉仕』を高校の必修教科とする方針を打ち出した」と報じた。都教委に「国より先に」という思いがあるのか否かはともかく、将来のあり方を探る一つの提起。注目を集めたのは当然かもしれない▼人間関係の希薄化など様々な問題を抱える今の社会。思いやる気持ち、助け合いの気持ち、を子どもたちにどう醸成させるか、それは教育的課題としても問われている。かつて教育改革国民会議で「奉仕」の義務化が議論されたのはその証しだが、今なお懸案のまま▼函館・道南の高校もそうであるように、科外ながら急速に「ボランティア」の活動が輪を広げているのも事実。そうした動きは本紙をはじめ新聞紙面でもよく目にするが、東京都では昨年度、「ボランティアの日」を設定し、学校の、生徒の取り組みを促してきた経緯が▼それを一歩進めようとするのが、この必修化。1単位(年35時間)を想定し、大雑把ながら、話を聞く教室内授業と公園の清掃や福祉施設などでの実習授業を組み合わせる考え方が有力。ただ、単位の認定をどうするかなどの問題もあり、まだまだ総論の域▼そこで本格実施に向けてだが、来年度、学識経験者にカリキュラムなど授業内容を考えてもらうほか、20校ほどを研究校に指定し、現場での検討も求めることに。「強制されてするものでない」「きっかけを与えることは必要」。賛否の議論はあるが、いずれも間違ってはいない。東京の試みに注目が集まる理由もそこにある。(N)


12月7日(火)

●「人間誰しも『健康』に勝る財産はない」。昔も今もよく言われることだが、「健康」について回るのが食事と運動。規則正しく、バランスのいい食生活をし、適度な運動を、ということだが、ともすると忘れて「健康」とは疎遠な生活をしがち▼若い時ならいざ知らず中高年になると、運動は不足気味に。ウオーキングやジョギングもいい、だが、もう少し計画的に運動をしたい、となれば…。スポーツクラブが人気を集めているというのも分かるが、函館市の総合保健センターの利用も官の施設とは思えないほど▼その理由は健康管理に重点が置かれていることであり、利用の気軽さ。運動能力や体づくりが目的でないから無理がなく、あくまで適度。健康診断と体力測定の結果を踏まえて、個別のプログラムが設けられる。あとは自分のペース。必要な機器類も充実している▼運動も出来て、健康管理もしてくれる。もちろん講座も各種設けられている。オープンして1年半ながら、本年度も10月までの利用登録者が8500人を超えているのもうなずける。男女別では女性が8割を数え、50歳以上が多いといい、まさにセンターとしての面目躍如▼莫大な投資をして建設したものの、計画通りに利用されず管理費が重くのしかかるばかり。公的施設にはこうした「造ったはいいが」という例が少なくないが、これだけ利用されていると「造ったかいがある」というもの。同時にそれは市民の健康管理意識がけっして低くないことを教えている。(H)


12月6日(月)

●諸外国から「働き過ぎ」と言われてきた、というか、今も言われているわが国。労働時間の国際水準化を目標に労基法の改正も行われてきたが、まだまだ際立っている実態。10月末の全国紙に載っていたILO(国際労働機関)の超過勤務調査もそう教えている▼戦後、国を挙げて早期復興を目指したわが国では、労働時間などいとわず、国民は働きに働いた。その結果として今日の繁栄があるのだが、それが労働者環境の整備を遅らせた背景でもある。国ばかりか企業の対応も鈍く、実際、週48時間労働の時代が長かった▼週40時間に労基法が改正されたのは1987(昭和62)年。だが、猶予期間が10年あって、全面的に法適用されるようになったのは、つい7年ほど前。この間に週休2日制もかなり普及し、一般的な労働条件は格段に良くなったが、それはあくまで法的に、ということ▼“サービス残業”と言う言葉が現存しているのは、その一つの証しだが、函館・道南も含め地方の零細企業などでは守りたくても守れない現実があることも事実。実際、現実の姿はこのILOの報告より厳しいかもしれない。そのILOの調査とは、週50時間以上働いている人の割合を調べたものだった▼わが国は28%。4人に1人。ちなみに主要国をみると、アメリカが20%、イギリスが16%だが、ドイツ、フランスは5%台で、スウェーデン、オランダに至っては1%台。「いつの時代になったら…」。つい、そんな思いがこみ上げてくる。(A)


12月5日(日)

●「現代の名工」。何と響きのいい言葉だろうか。技能者として生きてきた人にとって、最高の勲章だが、今年も全国で150人がその称号を受けた。北海道から2人、うち1人が函館の人だった。先月末に報じられたが、造園の大釜昭太郎さんがその人▼世界から高い評価を得ている日本人の技能。それが産業を支え、経済の発展に大きく寄与してきたことを否定する人はいまいし、科学技術が進んだ現代でも頼られる存在に変わりはない。実際に圧倒されるほど素晴らしい腕を持つ人に感動を覚えることがある▼その人たちを大事にしたい、技能を持つことの素晴らしさを知ってほしい、そんな思いを込めて設けられているのが、この「現代の名工」。国の表彰制度だけに「卓越した技能者」と正式名は堅いが、名称はどうあれ、誰もが認める技能者を讃(たた)えようというのが趣旨▼1967(昭和42)年に設けられて38年。昨年までに、この称号を得た人は4088人。新たな150人を含めると4238人になる。今年も全国から約400人の申請があったというが、その全員に共通しているのは地道に腕を磨いてきた人たちということ▼大釜さんは北国の厳しい気候風土に合った造園技法を編み出し、亀田八幡宮の庭園造りでも知られる人。内閣府はこう説明しているが、ご本人はもとより、地域にとってもうれしい話。函館・道南にいる名工候補者にも光が当たるように…。そう願うのも卓越した技術は、地域の財産でもあるから。(H)


12月4日(土)

●12月は1年を締めくくる月。当然ながら1年を振り返る動きが次々登場してくる。その最たるものは20日過ぎから発表される新聞などのいわゆる十大ニュースだが、ヒット商品番付、四文字熟語などに先んじて、この1日には“流行語大賞”が発表された▼その受賞語は「チョー気持ちいい」。ご存知のようにアテネ五輪水泳の北島康介選手が優勝を決めた直後、プールサイドで応じたインタビューに答えて発した言葉。いわば本音の声だったが、現代っ子に受けたよう。五輪の年ということか、あの「気合だ!」もトップテンに▼この流行語大賞(「現代用語の基礎知識」選)が生まれたのは1984(昭和59)年で、ちょうど20年。毎年、世相を反映した言葉が選ばれるということで関心が高いが、流行語というだけあって、意外と忘れられがち。「昨年は」と聞かれても答えに窮してしまう▼「IT革命」「タマちゃん」ときて、昨年は「なんでだろう〜」だった。経済環境は相変わらず、いいことはない、そんな庶民の思いが重なりあったのが「なんでだろう〜」。紛れもなく世相を反映した言葉だが、今年はちょっと違って“決定打”がなかった年だったかも▼ちなみにトップテンに選ばれたのは「自己責任」「新規参入」「サプライズ」「冬ソナ」、そして「って言うんじゃない…残念…斬り!」など。確かに決め手に乏しい。となると、「チョー気持ちいい」は妥当な線か。もちろん「そんな思いが出来る時代になってほしい」という願いを込めてのことだが…。(H)


12月3日(金)

●夜空に広がるファンタジィックな光の演出…。函館の冬を彩るクリスマスファンタジーが、きらびやかに、華やかに幕を開けた。「港に大きなツリーを。それも本物のモミの木で。きっと訪れる人の心を魅きつけるはず」と始められて7年になる▼この季節、どこの都市でもイルミネーションの花が咲く。インターネットにも情報が多々掲載されているが、際立って全国区なのが神戸の「神戸ルミナリエ」。阪神・淡路大震災で犠牲に遭った人たちへの鎮魂の思いと街の復興と再生を願って始まり、今年が10回目▼例年500万人の人出というから桁(けた)はずれだが、規模などでこれに匹敵すると言われるのが東京・丸の内の「東京ミレナリオ」。たまたま昨年、訪れる機会があり、そのスケールの大きさに圧倒された思いが再び脳裏に蘇(よみがえ)ってくる。それは芸術の域と思える光景だった▼事業費などの面からも別格というほかない。一方、道内に目を移すと、各地で北海道らしい演出が。札幌・大通の「さっぽろホワイトイルミネーション」、小樽のイルミ・コンテスト「小樽港マリーナ」、帯広の「平原のルキア」などがあり、既に今年も本番に…▼その中で知名度を高めているのが、メルヘンの世界を演出している「はこだてクリスマスファンタジー」。今年も多くの観光客の訪れが期待されるが、地元の我々も一度は足を運びたい。5日まで開かれる「函館港イルミナシオン映画祭」とともに。「素晴らしいじゃないか」。必ずやそんな感動を覚えると思うから。(H)


12月2日(木)

●「政治家に 潔しを求めても 無理なだけ」。下手な川柳だが、またまた、そんな思いをこみ上げさせる政治家の登場である。橋本元首相。日本歯科医師会からの1億円ヤミ献金問題の事実関係も認めたようで、かわしたようで、何とも潔くない明らかになった事実関係をたどっていくと、素人目にも答えは明らかなのに政倫審(衆院)でも「客観的に…」とか「…と思う」と。さらには「記憶にない」の常套句。1億円の巨額。何かはっきり認めては困る事情があるのだろう、と勘ぐられたとしても仕方ない政治と金の問題は何度も論じられてきた永田町のテーマ。実際に献金の処理、秘書給与の流用など金の問題で議席を失った政治家は少なくない。振り返ると、そのほとんどに共通して見られたのが、取り繕ってしのごう、という姿勢であり、それが厳しい糾弾を浴びることに確かに永田町ばかりの姿ではない。不祥事が発覚し、社会的批判を受ける問題に直面した時など、企業にも事例は多々ある。だが、その都度、教えられるのが、事実なら最初に潔く認めた方がいい、ということ。取り繕えば、取り繕うほど無理が出てくるからだこの問題も真相が明らかにされたと判断できるかと聞かれれば、答えはノーであり、結果として疑惑を残し、政治不信を増幅させている。ここまできたら、証人喚問は避けるべきではないし、このまま幕を引くのはどうか。もし、そうするなら、国民と永田町の距離はさらに開いていきかねない。(N)


12月1日(水)

●面積約678平方キロメートル、人口30万338人(10月末現在)…。戸井、恵山、南茅部町と椴法華村が加わった新「函館市」が、産声を上げた。市町村を取り巻く財政環境の厳しさなどが背景にあったとはいえ、それは来るべき時代が求めた合併とも言える▼昨日の本欄でも触れていたが、函館市には幾度かの合併の歴史がある。直近は30余年前になる1973(昭和48)年の亀田市だが、一度に複数の町村とは初めて。道内で3番目の人口規模は変わらないものの、行政面積は大幅に広がり、これまでの約2倍に▼産業面では漁業のウエートが高くなって、水産都市としての厚みを増すほか、観光面では新しい戦略をどう構築するかなど、各分野で課題と期待が背中合わせ。だが、それは大なり小なりどこの市町村も抱えていることで、合併の場合は幾らか多くなるにすぎない▼それよりも、合併の話題の中で、よく耳にしたのが「今がタイミングだった」という話。確かに、事情もあった。というのも、発展の歴史を支えた産業基盤にひびが入って20年、新たな産業創出など21世紀の函館を考えるプロジェクトに手がつけられたところだから▼苦労して、互いに譲り合って、こぎつけた合併。それだけに、定数で議論のあった議会が担う役割と責任は重い。函館市民としての思いを共有する姿を率先して見せてほしい、そう願う声が聞こえてくる。「きょうから30万人みんなが函館市民」。華やかなクリスマスファンタジーが、お祝いの彩りを添えてくれる。(H)


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