平成16年4月


4月30日(金)

●未納であろうが、未加入であろうが、国民の目に映る姿は一緒。国民年金の保険料を納めていなかった閣僚が新たに4人。やはりいたか、と思っていたら、国会戦略として糾弾していた民主党の菅代表も“兄弟”だった。厳しい目が向けられて当然▼年金財政は実質的に破綻状態であり、何らかの対策は必要。28日に衆院で委員会可決された給付年齢の繰り下げ、保険料率のアップを柱とした改正案は、結局、つけを国民に押し付けるもの。それでなくても年金への未加入、保険料の未納が増えている時なのに…▼閣僚の中に未加入、未納付者が3人いただけでも驚きだったのに、28日になって新たに4人が。21年も放っておいた中川経産相には開いた口がふさがらないが、同様に驚きを通り越したのが野党第一党の代表である菅代表の失態。未加入期間があったことはもちろんだが…▼判明後の説明には呆れるばかり。江角マキコさんを国会に呼ぶべきに始まって、閣僚3人の問題が表に出た時には“未納3兄弟”と揶揄した張本人なのに、自分も兄弟となるや、「やましいことはない」と開き直り、「行政上の誤り」と責任を転嫁してしまった▼しかも未加入期間が年金所管の厚生大臣時代だったという落ちまでついては、逃げ道はない。今の政治に求められているのは「信頼」だが、それは間違いがあったら謙虚に認めることから芽生えるもの。それすら分かっていないか、と言われても仕方ない▼発覚から一夜明けた29日のワイドショーは、そろって特番扱いだったが、批判は閣僚7人分に匹敵するほどに。当然だろう。あれだけ声高に言っていたのだから。さらに信頼は揺らいでいる。ここまできたら国会議員全員の実態を明らかにすべきであり、その上で議論を始めなければ国民の納得は得られまい。


4月29日(木)

●「1年のうちで、いちばん美しい季節が八十八夜の頃。あなたの人生の八十八夜を大切に…」。23歳の妙子。亡き母の言葉を思い出す。殺風景なオフィス、平凡な男たち。この美しい季節を無駄にしたくはない。花として、いちばん華やいだ場所で咲いてみせましょう…(半村良著「八十八夜物語」)▼八十八夜は季節の変化を目安にする雑節の一つ。立春から88日目にあたる。この頃から霜も降りず天候が安定するため、苗代のモミ蒔き、茶摘など農作業がスタートする。サツキのサはタにあたり「田」のことをいう月といい、八十八は「米」で1粒つくるのに88の苦行がかかる▼新茶は中国の唐時代に薬として飲まれていた。日本にお茶を広めた栄西禅師は「茶は養生の仙薬なり。延命の妙術なり」と書き記し、飲めば1年の悪疫から逃れられると。織田信長や豊臣秀吉もお茶を愛し、千利休らとともに茶の大衆化を図った▼大志を抱いて箱館戦争に加わった土方歳三も新米を食べ、新茶を飲んだことだろう。15日の箱館五稜郭祭では土方コンテストが行われ「壮絶な戦い」を再現する。ペリー提督が上陸した17日には来航150周年記念祭が開かれ、ラッパ吹奏や祝砲が繰り広げられる。さらに江差では「朝市・新鮮組」も▼夏も近づく八十八夜―。いちばん美しい季節に、イラクのサマワに向かう函館駐屯地の自衛隊員45人の無事帰還を祈るばかり。ちなみに昨年の八十八夜の日(5月2日)に釧路湿原からオオハクチョウの一行が北帰行した。閏年の今年は1日が八十八夜…。


4月28日(水)

●「菜種油で作ったキャンドルの名前をつけてください」。はこだて菜の花プロジェクトが呼び掛けている。取り組みはまだ始まったばかりだが、キャンドルは生み出した製品の第一号。そして5月には初めての“菜の花まつり”を計画している▼野や畑を彩る光景から菜の花はふるさとの花を連想させる。かつては菜種油を採ることを目的に全国的に栽培された。それを裏付ける栽培面積をみると、1950年代半ば頃は約25万ヘクタール。それが安い輸入物に押されて激減に転じ、近年は500ヘクタールほどと推測される状況に▼だが、健康、環境問題などに対する意識の高まりの中で、見直され始めている。滋賀県の愛東町、青森県の横浜町などは、いわば菜の花プロジェクトの先進地。3年前には全国菜の花サミットが開かれ、話題となったが、広がりは今や36道府県の約80カ所までに▼その波及効果も出始めている。ディーゼル燃料にしてトレーラー4台を走らす静岡県トラック協会の実験は一つの例。また、横浜町のように開花イベントで13万人を呼び込んでいる例も。「函館でも…」。立ち上がったのは若い経営者たちで、熱心に取り組みを続けている▼油作りを中心に、車の燃料を試みる所、観光の呼び水にする所など、狙いとするところは様々だが、共通しているのは地域の活性化を目指すという視点。函館のキャンドル製作やネーミングの募集も、まつりの開催も、その具体的行動…。菜の花と縁のある地として、これからに楽しみが広がる。(H)


4月27日(火)

●見方は幾らでもあろうが、今の政治の選択は消去法かもしれない、そう思うことがある。政治への参加は本来「積極的」という意味合いを持つが、まったくと言っていいほど、現実はそうはなっていない。支持する政治家がいない、政党がない…▼その思いの結果として、判断が消去法にならざるを得ない。分かりやすい例が低迷する選挙の投票率。この候補じゃ、でもこの候補も、と消していくと、投票したい候補がいないと。政党の支持も同じで、この党も、あの党も物足りないとなって無党派層が根強い存在に▼それは26日で在任丸3年を経た小泉政権の支持率にも言える。短命内閣が多いわが国では近年、まれに見る長期政権。なにせ、この50年間で3年以上在職した首相は5人しかいないのだから。しかも、支持率は50%レベルを維持するなど、際立った存在だが…▼ただし、特異なのは政策評価がそう高くないのに、という点。政策が評価されて支持率は上がり、評価が低ければ下がる、それが客観的な説明がつく構図だが、小泉政権の場合は必ずしも該当しない。確かに期待度はあるにせよ、そこにうかがえるのも消去法の選択姿勢▼ほかに適当な人がいない、ほかの人よりはいい、だから支持する、そんなニュアンスが無きにしも非ずだから。裏を返すと、そこに積極的に支持できる人が出てくれれば、という思いが滲むが、消去法の選択はけっして正常な姿ではない。せめて今は…。その認識だけは持ち合わせていたい。(N)


4月26日(月)

●「何か冷たい雰囲気」「事務的で愛想がない」。今は違う、と役所からの反論もあろうが、こんなイメージがまだ払拭されていない。それは住民の心理であり、必ずしもそう受け止める現実にないから、とも言えるが、問われ続けているのがサービスのあり方▼本来、役所は住民に対するサービス機関であり、窓口での“にこやかな応対”などは当然のこと。だが、よく考えると、応対どころか窓口業務の時間設定などは、あくまで役所の都合だったし、住民が利用しやすい場所、時間を念頭に考える視点が欠けていたのも事実▼そこまではともかく、職員として原点に帰る必要がある。「この春、皆さんとの『ふれあい』から市役所が変わります」。札幌市が一歩を踏み出した。上田文雄市長が4月初めの記者会見で発表したサービスアップ行動計画がそれで、キーワードは三つの「アイ」…▼「私(I)があなたの目(eye)を見て、親愛(アイ)の情を持って接する」という意味だそうだが、平たく言うなら、にこやかに、心を込めて、親切な応対に努めます、ということ。具体的な行動として名札の着用、来庁者に対するあいさつ、電話の応対から始めている▼この種の取り組みは往々にしておざなりになりがちだが、札幌市で注目されるのは半年後に検証するとしている点。言うまでもなく行政運営に住民の理解と協力は欠かせない。その前提が行政に対する信頼感の醸成だとすると、先にボールを投げるのは役所か住民か、札幌市の行動計画がその答えを教えている。(N)


4月25日(日)

●清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人みなうつくしき(与謝野晶子)。花はサクラ。松前城の標本木を皮切りに函館、江差と開花する。かつて吉野山を訪れ、役行者(えんのぎょうじゃ)が山桜で仏像を刻み、大蔵経の版木を作ったという話を聞いた▼全国を回って喜捨を求めた鉄眼禅師が一切大蔵経(6956巻)の版木を作る時、約6万本の吉野桜を使った。従来の経本は中国からの輸入品か、写本が多く、1行17字だったが、鉄眼は1行20字で10行進んで三角印を付けた。これが400字詰め原稿用紙の基になったという▼サクラは花見をはじめ日常生活にけっこう食い込んでいる。あるアンケートによると、9割の人が「桜を見るつもり」と言い「花を観賞する」「酒を飲む」「おいしい花見弁当を食べる」と。毎年、同じ木の下で記念写真を撮って子どもの成長を再確認している一家もいる▼しかし、植木職は「ご法度は青いビニールシートとカラオケ」と警告している。根元まで敷き詰めたビニールは木の呼吸を妨げ、カラオケの振動は幹に伝わって、早く花を散らせるという。もう一つ、サクラが嫌っているのはライトアップ。「夜」がなくなり自然のリズムが狂うから▼染井吉野、紅枝垂れ、霞桜、深山桜、一葉、白妙、狩衣…なんと美しい日本語だろう。京都・醍醐寺の枝垂れクローン桜が今春、初めて花を咲かせた。少しはサクラに気を使って、桜に優しい「お花見」を心がけたいものだ。(M)


4月24日(土)

●桜前線が津軽海峡を渡りつつあり、函館・道南もすっかり春めいてきた。厳しい冬の寒さから開放され、日は長くなって木々は芽吹き、花や芝も生き生きとし、何となく心が弾む。その緑が徐々に濃さを増し、花も彩りを深めていくと夏に…▼「もっと緑を花を」。多くの都市と同様に函館市も掲げている。その中で市民の参加が求められるのが、植え込みからの作業を担う街路などの花壇造り。以前、さらに大規模な“花作戦”を展開すべき、という提言を耳にしたことがあるが、その機運が生まれつつある▼新たな動きとして注目されるのが、函館新道(国道5号)の石川町付近で始まるプロジェクト。ボランティア3団体と2町会が実施母体を立ち上げて取り組む計画で、10b間隔に植栽されたアカエゾマツを中心にマリーゴールド、サルビア、ニコチアナを植え、管理に当たる▼木や花のあるなしは、街の印象に大きくかかわってくる。函館新道は通行量の多い幹線。春から秋にかけての時期は、観光バスばかりか観光のマイカーも走る。しかも函館への入り口であり、出口の役割を担っている道路。としたら、花壇造りに期待が寄せられて当然▼美しく咲き乱れる花は感動を与えるが、旅行先で出くわすと、なおさら新鮮に映る。函館は観光都市。ロマンチック街道まではともかく、函館にもっと花を、というのが先の提言の趣旨だとすれば、函館新道の取り組みはその一つの試金石。花壇によってどう変わるか、新たな景観に楽しみが広がる。(A)


4月23日(金)

●「お前が暮らしてきた国はどんな国なのか知っているのか?」「オレがここに来たのは朝鮮公民としてだ」「オレ達は朝鮮から国交正常化のために来た使節団なんだよ!」。葛藤に苦しみ、乖離(かいり)が深まる兄弟▼拉致被害者5人が帰国したときの蓮池薫さんと兄の透さんの激しい言い合い。「24年前のお前と同じように…、オレを、お袋を連れて行く使命のために来たんだな…」と続く。復刊「漫画アクション」に拉致被害者のドキュメンタリー「奪還」の連載が始まった。リアルな作画は本そういちさん▼漫画は子どもから大人まで幅広く読まれており、関心を持つきっかけになる。透さんは「日ごろニュースを見ない人たちにも拉致について関心を寄せてもらい、沈静化する世論を少しでも食い止めることができれば」と、漫画人口を対象に新しいアクションを起こした▼5人は帰国して1年半経った。「母として今すぐにも飛んで行って抱きしめたい。私たちは何にも悪いことしていないのに…」(曽我ひとみさん)「親と子、孫、家族がどうして一つになって暮らせないのか。これ以上待って、というのはあんまりだと思う」(蓮池さん夫妻)▼拉致は現在進行形のテロ事件。北朝鮮は「親が迎えにきたら家族を帰す」と言うばかりで、政府間交渉は進展なし。人質として残された家族は、核問題をめぐる6カ国協議のカードになっている。政府も「20歳の薫を返せ」の強力なアクションを起こしてほしい。


4月22日(木)

●4月23日は「本」にゆかりの日。国際的には世界図書・著作権デーだが、国内的にはサンジョルディの日であり、子ども読書の日。この日から子ども読書週間がスタートする。その底流にあるのは、もっと本に親しもうよ、という問いかけ▼日本書店組合連合会などがスペインの風習からとってサンジョルディの日を制定したのは1986(昭和61)年。間もなく20年になるが、一方の子ども読書の日は近年、顕著な本離れ対策の一環として2001(平成13)年に制定され、文部科学省が実施している▼本を読まなくなっている、それも子どもから大人まで。そう指摘されて久しい。書店サイドのデータ、教育現場の声からもその現実がうかがえるが、読書、本購入実態の調査結果からも明らか。家庭における図書費の減少が顕著で、本の購入費が大きく落ち込んでいる▼日経産業消費研究所が首都圏の20歳以上の男女を対象に行った調査結果があるが、それによると、この1年間に雑誌を除いて読んだ本の数で最も多かったのが4冊以下で29%、逆に10冊以上は22%。つまり月に1冊程度読むという人が5人に1人でしかないのだと▼この姿は1カ月の本・雑誌の購入費にも表れている。確かに新刊書にこだわる人が減っている現実はあるが、それにしても1000円未満という人が34%というのだから。ほかの調査結果でもほぼ同じ傾向が出ている。このままでは…。4月23日を「本と読書を考える日」と位置付けるのも一考かもしれない。(N)


4月21日(水)

●「はこだての 夜景はまたねと  きりがいう」「けんかして 夜景を見れば 仲なおり」「つつじ垣 啄木ゐさう 青柳町」。この7日、函館国際観光コンベンション協会が発表した“はこだて観光俳句”で優秀賞に輝いた句の一部だが、函館を詠んだ甲乙つけ難い作品▼本紙はこの8日付で優秀賞と入選作40句を紹介した。こんな事業もやっていたんだ、と分かってほしかったからだが、無理もない。この事業、始めてまだ2年目でしかないのだから。それでも「函館の四季」をテーマに寄せられた作品は、936人からの1295句▼函館に来た思い出を句に残してもらおうよ、そんな願いが込められた素晴らしい企画である。応募数はまだまだ少ないが、これらの作品に接し、改めて頭に蘇ってくるのが冬フェスを見直す中で、10年を目前にして姿を消した“愛のメッセージ”の一件▼「愛情の表現って難しい。照れもあるから面と向かってはなかなか。でも伝えてみたい、それを30字に」。バレンタインデーと重ね合わせ、今の時代に必要な心を問いかける企画だった。減ったとはいえ、止める前の年でも4000点近い応募があったことがその証▼Xマスファンタジーに絡めて続けるなどの選択肢もあったはず。「せっかく築いてきてもったいない」。当時の本欄はこう結んだ。それは何事も立ち上げるのは大変、という思いによるが、“はこだて観光俳句”がそうならないように…。継続こそ大事。函館を印象づける素晴らしい企画なのだから。(H)


4月20日(火)

●馬産地の日高・胆振には、晴れ舞台で活躍した馬が種牡馬などとして多数、繋養されている。新冠、静内、浦河などには、サラブレッドロードと呼ばれる道路があるほどで、この時期が本格的な出産期。毎年、期待を担った新馬が数千頭生まれる▼かつて2年半ほど、その馬産地に勤務した経験がある。競馬はもちろん農業としての軽種馬に関しても無知だったが、掛け値なしに牧場回りは楽しかった。新緑の季節は特に印象的で、長閑なその光景は訪れる人を魅きつけて離さない。訪れるファンも多かった▼人気という点で当時、他を圧倒していた馬がハイセイコー。ご存知の人も多かろうが、地方の大井競馬で6戦6勝の実績を引っさげて中央へ。弥生賞、皐月賞など重賞を制して一躍ヒーローに。有終の美を飾って第二の生活の場となったのが新冠の明和牧場。その時期だった▼ひと目会いたいと訪れ、グッズを買って、記念写真を撮って帰る。休日ともなるとファンの列は続いた。2000年に亡くなった後に開かれている偲ぶイベントが別格の証明。軽種馬を巡る環境が影を落とし、中止となったが、馬産地でこれほどの人気を集めた馬はいない▼今、強いて匹敵する馬を挙げるなら高知で連敗記録の更新を続けるハルウララだろうか。浦河町が誘致に乗り出し、引退後は優駿ビレッジAERUで生活する話が進んでいる。この2頭、現役時代に生きた世界は違うが、ハルウララは引退後、晴れて“一流馬”の仲間入りをする。(A)


4月19日(月)

●最も身近な交通手段である自転車。通勤、通学にも使われ、また気軽なサイクリングなど、数えようもないほどの数が街中を走っている。手軽で便利、環境にも優しい乗り物だが、今、大きな問題になっているのが乗り方。全国的に事故が増えている▼スピードを緩めずに歩道を、さらには2人乗りや携帯電話をかけながら、という光景は珍しくない。「ルールが守られていない」。よく指摘されるが、実際にぶつかった、など危ない目に遭った人もいるはず。だが、法の適用となると、甘く扱われてきた感を否めない▼ところが、現状は放っておけない実態に。昨年、自転車が歩行者をはねた事故の数が物語っている。警察庁のまとめによると、全国で前の年より300件余り増えて2243件も発生している。負傷した人は2045人。さらに驚くのは死亡者が出ていることで、昨年は6人…▼そこに浮かぶのが、自転車に関する法知識の欠如。乗りながらの携帯電話使用など安全運転義務違反は罰金の対象になるなど、自転車に乗ることが道路交通法の適用を受ける、その認識すらない人が多いのも現実。これでは…。警察庁が指導の強化に乗り出した▼無灯火、信号無視、一時不停止などの違反者に警告書を渡し、悪質かつ危険な違反には逮捕も辞さないと。だからというわけではないが、起こしてからでは手遅れ。全国でこれだけ自転車事故が起きているという事実は、自分にも有り得ておかしくないということ。まずはこの事故統計を社会からの警告を受け止めたい。


4月18日(日)

●「貴重な高山植物を守るためには入山規制を辞さず」。地域、関係者の間で、その合意を得ている山が北海道にあるのをご存知だろうか。今まさに守るべき山と位置づけられ、保護の手を差し伸べられているその山は、aウ別市の崕山(きりぎしやま)▼山は自然の宝庫とも言われるように高山植物など貴重な草花が自生している。だが、悲しいかな、その草花が厳しい状況に置かれ始めているのも事実。大きな問題は盗掘だが、人が入ることによって、気づかぬまま生態系に影響を与える、そんな指摘も大げさでない▼林野庁などでは登山者の多い山に監視員を配置したりして、保護に努めているが、対策としては自ずと限界が。悩みを抱えている山が少なくない中で、敢然と入山規制に踏み切ったのが崕山。1999年度のこと。とりあえず5年間だったが、再び下った判断は規制継続…▼崕山は芦別岳の北西に位置し、標高は1066メートルながら、特異な地形や希少価値のある植物が多い山。レッドデータブックで絶滅の恐れありとされる植物が28種も確認されている。だが、盗掘が相次ぎ、さらに登山者による踏み荒しなどで環境は悪化の一途に▼一度乱れた生態系を元に戻すにはかなりの時間が必要、と言われるが、崕山はいわばその実践例。5年を経ても保護対策が必要な状況に変わりはないと。全山的な入山規制をしても回復が容易でない現実を如実に物語っている。全国的に注目を集める崕山。官民連携によるaウ別の試みはさらに続く。(A)


4月17日(土)

●「空は希望 イラクにも続いている 思わず手を合わせた」母親の願いが届いた。後輩らが折った千羽鶴7000羽の思いが、はるかイラクに届いた。人質の3人が7日ぶりに解放され、元気な姿で日本の「希望の空」を羽ばたける▼ストリート・チルドレンを支援してきた高遠さん、劣化ウラン弾の怖さをイラク市民に伝えたいという今井さん、イラクの惨状をカメラに収め反戦を訴える郡山さん。3人は中部ファルージャの戦闘に巻き込まれた。3日後に解放されるはずだったが、身の安全確保に手間取った▼同じ武装集団に拘束されたフランスのジャーナリストは、日ごと拘束グループが変わり、ノドを切ると脅かされ、棒で殴られ、辱めを受け、生きた心地はしなかったという。米国の警備機関に働いていたイタリア人は「アメリカの占領政策に貢献している」と1人が頭を銃で撃ち抜かれた▼高遠さんら3人の解放理由に、聖職者から「人質はイスラムの教えに反する」と説得された、日本国民が自衛隊派遣に反対している、東京のデモで「アラー」の横断幕が掲げられた、ファルージャの実態を伝えてほしい、などを挙げている。アラー(宗教者)の影響力はすごい▼宗教は紛争のない平和な世界に導くもの。「自衛隊が撤退するまで人質を」という過激派を説得した。フリージャーナリストら2人の解放も強く諭してほしい。3人の解放で「ジハードのための人質作戦」が終結した訳ではない。日本人は標的になる覚悟で行動すべきだ。モーツァルトのレクイエム「涙の日」なんか聴きたくない。(M)


4月16日(金)

●「ふるさと銀河線」が土壇場に立たされている。減る利用者、積もる赤字、見えない収支展望、その中で底をついてきた経営安定資金…。存続を願う地元の思いとはうらはらに、道がバス転換を促すなど、情勢として存続の可能性は狭まるばかり▼この欄でも何度か取り上げたし、改めて銀河線を説明するまでもなかろうが、旧国鉄池北(池田、北見の頭文字)線。民営化に伴い道内唯一の第三セクター線として生まれ変わってほぼ15年。経営努力も過疎化、通学生の減少などに勝てず、赤字は毎年4億円ほどに▼「銀河鉄道999」をアピールする取り組みやイベントの開催など、この間、地元が手をこまねいてきたわけではない。それでも収支が合うレベルにはほど遠く、経営視点だけからすると、答えは誰の目にも明らか。頼りにしてきた経営安定資金が将来的に続く現実もない▼「(道の財政状況では)援助はできない」。道がバス転換を促すのもこの視点から。でも、地元は「何とか…」という思いを拭い切れない。沿線の有志や団体が存続運動連絡会議を結成した。そして打ち出したのが存続のための募金運動。全国的に展開する考えという▼道路は整備されている、だからいいのか。情勢も15年前と違う、だから仕方ないのか。確かに財政的な課題は重い。だが、ここで忘れてならないのは鉄路だということ。函館の市電が頭に浮かぶが、一度レールを外すと、状況が変わって元に戻そうとしてもまずは無理。まだ間に合う、少なくとも結論を急いでほしくない。(A)


4月15日(木)

●函館・道南も春の観光シーズンに入った。景勝地・大沼では遊覧船などが営業を始め、休日ともなると函館のベイエリアや元町には散策する観光客の姿が。今月末からのゴールデンウイークは第一のピーク、そして修学旅行生がやってくる季節を迎える▼「函館は恵まれている」。そう言われることに反発する声も聞くが、その度にこう問いかけてきた。「じゃ、函館に観光がなかったら、と考えたことがありますか」。さらに「他の都市は(函館を)羨ましがっているんですよ。黙っていても(観光客が)来てくれるから」と▼どの業種であろうが、額は別にして観光客は必ず金を落として行ってくれる。宿泊費、交通費、食事代、お土産代…。函館市の2003年度調査によると、その額1人当たり2万6858円。多くの地域や都市が必死になって観光に力を入れる理由がここにある▼だから「函館は恵まれている」。しかも、道内では小樽や富良野などとともに個人観光客のウエートが高く、いわゆるリピーターも多い。実際、この調査に応じた人の三分の二に当たる61%が2回以上という人たち。4回以上という人も道内客で57%、道外客で20%…▼幸い函館の印象は悪くないが、喜んでもいられない。「もてなし」に、これが最高はないと言われるから。函館と道南をどう結びつけて地域観光の輪を広げることも考えていかなければならない。その答えは遅くとも新幹線の開業が実現するまでに。調査の結果がそう問いかけているように聞こえる。(H)


4月14日(水)

●「空は希望 この空 イラクにも続いている 思わず手を合わせた 菜穂子 空を見て 希望色に染まるまで」―。無事を祈る母親の願いが届いただろうか。イラクの日本人人質事件から6日目。「24時間後の解放」の声明もほうむられた▼第1次大戦中、アラブの民族と一体となって戦った英軍人の「アラビアのロレンス」。砂漠の民族衣装をまとってゲリラ戦を展開、トルコ兵の拷問を受けるも、英軍よりも早くダマスカスを占領、アラブ人による国民会議を立ち上げた。だが、多くの部族同士が対立し、砂地獄の飲み込まれた…▼イラクは暫定政権が出来ない前に砂地獄に陥った。フセイン元大統領派、イスラム教過激派、アル・カーイダと関連する勢力、日本人を拘束した系統不明派など約50集団が入り乱れて、反米英抵抗を繰り広げている。大学構内に武装学生が立てこもる事件も起きている▼米軍がファルージャのモスクを攻撃して以来、一般市民の犠牲者も続出。「勝利するまでジハードにささげる」と民衆もほう起し、「イラクのインティファーダ」(パレスチナ民衆の反イスラエル闘争)と言われる現実に。この危険地域に日本人3人も巻き込まれた▼復興に当たっている技術者やボランティアなど、ソフトターゲットを狙う事件の続発が懸念される。イスラム教聖職者協会やイラク部族協会は、武装グループを強く説得、3人を1日も早く解放させ、日本の「希望の空」を見せてほしい。(M)


4月13日(火)

●日本郵政公社が発足して2年目。地域における官の精神に民間の意識を加え、この1年余、全国的に様々な取り組みが展開されてきた。コンビニを併設した東京の代々木郵便局、花屋を併設した札幌の山鼻郵便局などが話題になったのも記憶に新しい▼さらに行政との連携では、道内でも住民票などの証明書交付などが広がっているが、この5日、全国に先がけ高知県の東洋町で始まったのが、発想をさらに一歩進めた取り組み。1カ所で用が足りる、ということだろう、ワンステップサービスと名づけられている▼役場支所が郵便局舎に間借りし、いわば“同居”のサービススタイル。支所と郵便局が30メートルと300メートル離れていた2地区で実現させた。同公社四国支社の報道発表資料によると、業務内容はそれぞれ従来通りだが、役場、郵便局、住民それぞれのメリットを挙げている▼「郵便局と役場がひとつになりました」のキャッチフレーズが物語っているが、郵便局はスペースの有効活用、役場は施設維持費などが節約出来る。そして住民は、と言えば、これまでのように別々に足を運ぶ必要がなくなる。この取り組みの最大の意義はそこにある▼言葉を変えると、住民サービスの観点に立った一つの実践例。業務を見直していないから施設を単に統合しただけ、とも映るが、いわゆる“同居”によって、これだけのメリットがあるのだから注目に値する。一考の余地は十分で、今後、広がる可能性を秘めている。もちろん道南地域でも。(A)


4月11日(日)

●パークゴルフ」。老若男女を問わず、手軽で健康的なスポーツの代表格。全国的な愛好者の増加がそれを裏付けているが、要望に応えてコースの数も増加の一途。函館など各地に協会が誕生し、今や単なる遊び、楽しみから競技の域に入っている▼パークゴルフが登場したのは1983(昭和58)年。幕別町だった。臥牛子の十勝勤務の時で、考案者である同町の教育長から勧められ、第一号コースとなった役場庁舎裏の河川敷コースで体験した記憶がある。それから20年。用具は進歩し、ルールも確立されて…▼考案4年後に結成された国際パークゴルフ協会によると、コースの数は海外8カ国を含め800あり、そのうち公認コースは昨年末時点で195。渡島・檜山から函館の志海苔など12コースが含まれている。さらに正会員団体は330を超え、推定愛好者は実に50万人▼人気さらにの感があるが、函館・道南も例外でない。函館の協会登録者は370人ということだが、競技はともかく、単に楽しみたい、という層まで含めるとけた違いの人数になるに違いない。その一方で、協会事業だけを拾っても5月以降は大会、講習会が毎週のように▼「田舎の公園は、人が遊ばずに公園が遊んでいる」。考案秘話だが、確かに公園を、河川敷をこれほど生かした事例はない。とっつきやすく、清々しい空気を吸って、和気あいあいに。体力も問われない。笑顔が広がり、歓声がこだまする。今年も間もなく本格シーズンがやってくる。(A)


4月10日(土)

●ゆく河の流れは絶えずして、もとの水にあらず…。奢れるものは久しからず、一見強者に見えるものに潜む弱さ…。人の渇愛から脱出させてくれるのが「ニルヴァーナ(涅槃)の思想」。燃え盛る欲望の火を消してくれる高龍寺の双幅の掛け軸「釈迦涅槃図」が一般公開されている▼193年前に松前藩家老で画家の蠣崎波響が描いた。高龍寺が亀田村(現在の万代町)にあったころ、第18代住職が波響と交遊していた。同寺を訪れ数日間かけて描き上げたという波響の最高傑作。優美な花鳥や艶麗な人物が多いなか、釈迦涅槃図のような仏教画は珍しく貴重な作品▼朱色の衣で横たわる入滅の釈迦の周りに嘆き悲しむ弟子たち。右上の天上からは釈迦の母親が急いで「薬」を手渡そうとしているような光景も。同寺は箱館戦争のころは野戦病院にもなった。榎本軍の傷兵が官軍に惨殺されたり、焼かれたりした「傷心惨目」の地▼涅槃とは、元来は炎を吹き消すこと、または吹き消した状態をあらわし、悟りを完成させた境地。強者に潜む弱さを知り助け合って、平和な現世を創ることだ。傷兵らも敵味方を超えて、高龍寺の釈迦涅槃図に慰められ、釈迦の母親から「薬」をもらって癒されたことだろう▼フセイン政権崩壊から1年。イスラム教という同じ宗教でありながら、主導権を巡って交戦している。一方で、邦人3人を人質とする犯行も出て、イラク情勢は新局面を迎えた。サマワの自衛隊宿営地の近くでも砲弾が飛び交った。いがみ合っては困る。イラクの人にも釈迦涅槃図を見せたい。(M)


4月9日(金)

●まだ表向きだが、ようやくと言うか、女性の社会進出に道が開かれてきている。1999(平成11)年に制定された男女共同参画社会基本法など法整備に後押しされた感もあるが、そこには当然のこととして社会が認めたという現実がある▼女性の権利を語る時、4月10日は切り離せない。戦後初の総選挙で初めて婦人参政権が行使され、39人の女性代議士が誕生したのが1946(昭和21)年のこの日だった。3年後に労働省(現厚生労働省)は、この日を「婦人の日」と定め、今の「女性の日」になったのが8年前▼隔世の感があるが、ここに至るまで50有余年。労働市場でもその芽が開きつつあり、現実に働く女性が増えている。2003年版女性労働白書によると、女性の雇用労働者は2177万人で、全雇用労働者の41%を占めるまでに▼その背景として家庭、社会ともに働く環境が整ってきたことが挙げられる。ただ、ここで間違ってならないのは、あくまで形が整ってきただけということ。働く実態をみると、あるべき姿にはほど遠い。人事、給与の差などは言うまでもなく、雇用形態などが物語っている▼白書は「働く女性の4割以上がパートなどの短時間労働者」と報告している。大都市はともかく、規模の小さな企業しかない地方では、そのウエートはさらに。まだまだ不十分。社会は引き続き新たな流れを生み出していく努力が求められている。あすの「女性の日」に続いて、1週間後の17日は「ハローワークの日」でもある。(N)


4月8日(木)

●乱切りのジャガイモ、短冊切りの大根、ニンジン、コンニャク、小口切りのゴボウ、長ネギ、コンブや煮干しのダシ、それに熱湯で油抜きした塩クジラ。そう、函館や江差で人気の鯨汁。かつては学校給食にも当たり前のように鯨料理が出た▼ペリー提督が函館に来航したのは米国の捕鯨船団基地を作るのが目的の一つだった。クジラは縄文時代から日本の食文化。大晦日、正月などには欠かせない。江差ではクジラをエビスといい、ニシンを浜に呼び寄せ、大きな体から家が栄えるようにと祈る意味を込めて食べていた▼ミンククジラの寿命は50歳から60歳といわれ、死ぬまで子供を産み続けるためか「クジラを食べると若返るかも…」という常食者もいる。鯨ラーメンもある。しかし、鯨肉が食べられていたことを知らない若者が多く、20代の3人に1人は一度も食べたことはないという▼函館は全国で4つしかない調査捕鯨の港。道南や津軽海域でツチクジラを限定捕獲している。先日、南極海産ミンククジラの捕鯨調査船団が入港、440頭分の鯨肉が陸揚げされた。ザトウクジラは過去最大数が確認され、南氷洋の生態系は回復傾向のようだ▼弥生町にある「鯨族供養塔」の存在を知らなかった。調査船団の入港に合わせて、この供養塔がライトアップされる。船団の一般公開は24、25日。鯨汁の無料試食は4000食。また、函館独自の第2回「くじらの日」は9日。市内の鮮魚店やスーパーで鯨肉をアピールする。それにしても南氷洋捕鯨の再開が待ち遠しい。


4月7日(水)

●定年になった、延長期間も切れた…。3月で長年務めた職場を離れた人は今、ホッと一息つけたところだろうか。中には4月から直ちに次の職場に、という人もいようが、しばらくは骨休みをし、これからの人生をゆっくり考えたい、そう思っている人の方が多いのかもしれない▼働き続けて40年前後、とりあえず定年で第一線を退く時、誰しもが抱くのが、何らかの形で気持ちけじめをつけたいという思い。そこには第二の人生に移るに当たっての区切りという意味合いもあり、一般的に多いのは旅行だろうが、とる行動は人それぞれ▼こんな計画を実行した人がいる。当社の創刊時に単身赴任で札幌からはせ参じ、昨年の秋に定年を迎えた人だが、それは函館を引き払うに当たって札幌まで歩いて帰るという計画。無理を言って半年ほど勤務を続けてもらって、いよいよ有言実行へ▼そのための準備として休みの日は歩く特訓をし、函館と七飯の峠下間を何度か往復、1日50`に備えた。心配する同僚に笑顔で応え、函館を出発したのは4月1日。気温も低い、特に翌日の2日は湿った春の雪に悩まされたが、そんな悪条件を克服して5日目の深夜、元の同僚が待ってくれていた札幌の自宅に到着▼その体力もさることながら、感心するのは精神力。成し遂げた後の電話の声はさすがに弾んでいた。「やれるもんだね」と。人間誰しも定年が近づいてくると様々考えるものだが、どう区切りをつけるかは自分の気持ち次第。続く者として身近の人から大事なアドバイスをもらった思いがする。(H)


4月6日(火)

●新入社員が加わり、人事による異動者も落ち着き、各職場とも新しい体制に。昨日の臥牛子は人事の不満、上司と部下の信頼関係を取り上げていたが、その職場の人間模様第2弾として付き合いの意識を探ってみたら、これまたズレがくっきりと▼上司や先輩との付き合いは職場にとどまらない、そんな時代が長かった。今でいうアフターファイブも仕事の延長。酒を酌み交わして仕事を語り合う、サラリーマンの象徴的な光景だった。若い人は説教をされる場ともなるが、そこは夜の食事代が浮いたと割り切って▼若い頃は上司や先輩払い、そして肩書きがつくにつれ逆の立場に。誰もが通った道とも言えるが、近年は必ずしもそうでないようで。公(勤務中)と私(勤務外)を区別する風潮がここにも、ということだろう。若い人からの拒否反応がじわじわと広がっている▼「誘っても断られることが多くて」「付き合い方が難しいよ」。実際にそんな声をよく聞くが、それは昨日と同じ調査会社アイブリッジの調査からも浮き彫りに。若手との飲み会に「積極的に」参加したい管理職は28%。「どちらかといえば」を含めると60%が、その気持ちを持っている▼ところが、若手は…。「どちらかといえば」を含め58%までが拒否派。育った時代が違えば、物事の価値観や意識も異なる。そう考えると、ここで示された結果は少しも不思議でないが、それにしても…。教訓は現実を認識すること。少なくとも「昔は…」「若い時は…」は、禁句とした方がいい。


4月5日(月)

●人事異動はサラリーマンに悲喜こもごもの思いを抱かせる。期待通りに昇進し希望の部署に移り張り切っている人がいれば、望みが叶わずちょっと腐り気味な人もいよう。人事が生み出す現実とも言えるが、とりわけ今は様々な人間模様が交錯する時期▼人間関係が良好か否か、それは仕事に対する意欲、効率にも影響する。信頼のあるなしという表現に置き換えることも出来るが、だからと言って、自分ではままならない。どうあがいたところで、自ら身を置く環境を選ぶことは許されない。人事の重みはそこにある▼「子どもたちは先生を選べない」。よく言われるが、実際に、この先生を信頼している、だから教えてもらいたい、と思っても通らない。サラリーマンの社会も同じで、出来るのは希望を挙げることぐらい。部署にせよ、上司にせよ、最終的には受け入れざるを得ない▼その希望も簡単に通るほど甘くないから、不平や不満がつきまとう。調査会社のアイブリッジが行ったモニターによる調査結果が興味深い。異動してほしい上司・部下の有無で、上司の異動を求めたいは40%、逆に異動させたい部下がいるは32%。何となく頷ける▼さらに驚かされるのは、人事異動という言葉から連想する言葉。答えは栄転かと思いきや左遷が多いこと。「皆満足する人事はない」と言われるが、それにしても若手で30%、管理職で20%いるとは…。今の時代故か、そう思いたいが、人事が重くのしかかるサラリーマン心理は昔も今も変わってはいない。


4月4日(日)

●「農繁期の3カ月間、託老所を開設」。毎日送られてくる幾つかの地域紙に目を通すが、時々、おやっと思う記事に出会う。最近ではこの記事だった。託児所は一般化しているが、託老所とは…。しかし、よく考えると、時代はそこまできているということ▼わが国は少子高齢化時代に入り、高齢化率は年々上がる見通し。その高齢化への対応は遅れ、柱となる介護制度もスタートしたばかり。そんな中で農村部は少子、高齢が極端な姿で表れている。託児所はだんだん入所者が減って統合などの動きも珍しくない状況▼その一方で在宅のお年寄りが増えている。農家は農繁期となると家族総出を余儀なくされるが、デイサービスも毎日でない、かと言って世話も必要だから家に一人で置いておけない。そんな農繁期の介護ニーズに応えようとするのが託老所。それを今年、JAめむろが試行する▼同農協が単独での取り組みを決断した背景にあるのは「家族の介護負担を軽減することで、安心して農作業に励んでもらいたい」という思い。対象者は「要支援」までの人で、サービス内容は送迎、昼食、レクリエーションなど。利用料は基本的に農協が半額を負担する▼ちなみに開設時期は、播種時期の4月下旬から5月下旬までと、収穫期に入る8月下旬から10月下旬まで。試行結果に注目が集まるが、十勝では農協連なども本格的に検討を進めている。道南も例外でない。現実がそこまできていることをあらためて認識させられる。(N)


4月3日(土)

●「健康維持は規則正しい食生活と適度な運動から」。誰もが分かっていることだが、実行しているかとなると…。調査から導き出される答えもほぼ一致して、食事は不規則、運動もあまりしない、と。体力・運動能力が劣ってきた、そんな指摘も頷ける▼深刻なのはそれが大人ばかりか、子どもにも当てはまること。平均的に体重が増え、体格はよくなっているが、運動能力は逆に低下の流れ。走る、投げる、跳ぶ、とも20年の間に落ちている。さらに歩くも減って幼稚園児の歩数は20%減というデータが出ている▼それでも食習慣が規則正しければ救われるが、これまた乱れた実態に。毎日ではないものの、朝食抜きで学校へ、が増えている。対策として子どもや親に対する栄養指導に力が入れられているが、このままでは…。そんな思いを条例に込めた町がある。青森県の鶴田町▼「朝ごはん条例」を制定した。津軽平野のほぼ中央に位置し、人口1万5千人の同町は「鶴の健康長寿の町」を掲げ、早寝早起き運動などを推奨している。この条例もその一環だが、敢えて「朝食」としたのは、心身の健康のためには朝食が大切という認識を広めるため▼食事は規則正しく、楽しく、和やかに、と言われる。夕食には団らんイメージがあるが、あわただしい朝食は軽く考えられがち。それにしても条例に登場してくるとは驚きだが、そうでもしなければ、という現実があることも認めざるを得ない。「生活習慣の見直しは朝食から」。この問いかけを大事に受け止めたい。(A)


4月2日(金)

●東京都内にある国会議員宿舎の家賃が値上げされる。これまでがべらぼうに安かったのだから、ようやく世間並みになるかと思いきや、答えは予想通り。新しい家賃でも民間の物件相場とは話にならないほどの格安。そこに抜本的という姿勢はなかった▼都心の高級マンション並みの宿舎でもせいぜい5万円ほど。高級官僚の宿舎が槍玉に上がったばかり。昔は給料が安かったから、緊急時に間に合うように、様々な理由があったのだろうが、今の時代に何故、立派な宿舎を用意しなければならないのか理解に苦しむ▼通信が発達した現在、どう探しても宿舎を必需とする大義はない。民間ではとっくに脱社宅の流れになっているのに、惰性で建て替えられ、しかも家賃は採算を無視して、とは。ところが、国会議員がそれに異を唱えられない。そう、同じ恩恵を受けているからだ▼国会にも近い麹町の宿舎(79平方メートル)で月4万8028円。場所にもよるが、単身者用で7801円という家賃のところも。値上げしました、と言ったところで、麹町にしても上がるのは1万6000円余り。しかも3年間は値上げ幅を半分に据え置く優遇措置付きとは▼この人たちが受け取る歳費は、年間2000万円。さらに驚くのは、この家賃、法律などによらず、自分たちが決める仕組みになっていること。ならば、良識を発揮するチャンスと思うのだが、そう求めても無理。そもそも「おかしい」という現実認識がないのだから。ただただ呆れるしかない。(N)


4月1日(木)

●イラクやアフガンに平和が戻った。イスラエルとパレスチナが握手し子供を使った自爆テロがなくなった。ロシアが北方領土を返還した。北朝鮮の将軍様が拉致被害者の家族を帰した。平成の経済成長期が始まった。五稜郭城が復元された。いずれもそうなってほしいウソ…▼4月(卯月)は平安時代から春夏の衣をかえる月。現代の生活感覚にピンとこないが、夏の始まり。ウツギの花が咲き、植え月でもあり、生物に陽光がそそぐ月。1日のエープリルフールのあと、世界保健デー(7日)少年を非行から守る日(17日)みどりの日(29日)と続く▼16世紀の西欧では新年は3月25日からと決められ、4月1日まで春の祭りが行われていたが、440年前にフランスのシャルル9世が1月1日を新年とする暦を採用。これに反発した住民が「4月1日」をウソの新年の始まりとバカ騒ぎをするようになったのがエープリルフールとか▼日本でも京都の「都をどり」を皮切りに日光や大分の「けんか祭り」などがある。最たるものはパッと咲き、潔く散る桜のお花見だ。一時期、世間をアッといわせるエプリルフールのジョークが飛び出したが、最近は粋なウソが聞かれない。1日だけバカになる御仁が少なくなったのか…▼冒頭の「四月バカ」は早急に実現してほしいもの。4月は春の入り口。ピカピカの新1年生にとって怖いのは、セキュリティーの不十分な回転ドアだけではない。エープリルフールと言わないで、真面目に「子どもを守る」ことを考えなければ…。(M)


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