平成16年5月


5月31日(月)

●地方議員における女性比率はわずか7%。先に総務省が発表した2003年度末現在の全国地方自治体の議員調査で明らかにされた実態だが、男女共同参画社会と言われながら、政治の世界が圧倒的な男性優位である姿が依然と続いている▼それは国会も同様。確かに地方よりは率が高いが、それでも…。1950(昭和25)年は衆参合わせ24人だった。その後、40年ほど20人台で推移し、10年近く前に40人台、そして現在60人程度まで増えているが、男女比率ではなお10%未満。10人に1人にも満たない▼国会でこうだから地方は推して知るべし。都道府県議数でみると、1980年代は全国で30人台だったのが、ここ10年ほど増加の流れにあって、1991(平成3)年は82人、1995(平成7)年は92人。そして先の総務省の発表では昨年の選挙で32人増えて197人に▼増加の印象を受けるが、元々が低過ぎたから思えるだけの話。2002年12月時点の全国市町村議会の女性議員は4001人で、全体の6・9%。国会、地方議会にしても先進国の中では極端に低い。女性の擁立が少ない政党側にも問題があるが、せめて30%ぐらいにならなければ…▼男女共同参画社会基本法が公布、施行されたのは1999(平成11)年6月。間もなく5年になるが、政策・方針決定過程への女性の参画、その現実が最も分かりやすいのが政治の世界。「今まさに成熟過程」と思いたいが、その速度を速めるか否か、その鍵は国民の意識が握っている。(H)


5月30日(日)

●いつから、こんな世になったのか。そう嘆きたくもなる。“オレオレ詐欺”に続いて、今度は“年金不審はがき”というのだから。いつの世にも悪知恵を働かせ、悪行を重ねる人間はいるものだが、それにしても不特定多数の弱者から金を巻き上げるとは…▼“オレオレ詐欺”が社会問題化してから、はや1年になる。「交通事故を起こしちゃって」。離れて生活し、日常的な接触がないと、子かな、孫かな、と思い込ませる手口。いかにもといった口調でオレオレと。函館・道南でも被害が出ているが、全国的に依然と多い▼警察庁のまとめで今年4月の被害は、実に1100件、約11億円。これまでの被害額累計は約75億円になるといい、さらに手口が巧妙化しているそう。そんな中、今度は“年金不審はがき”という。本紙も昨日の紙面で報じたが、函館・道南でも現実の話…▼日本国民年金組合という架空の団体を名乗り、未納をちらつかせて「相談に応じます」と。要は、何とかしますから金を振り込んでください、という手口だが、未納問題が浮上して時間も経っていないのに。幸い被害はないようだが、油断もすきもあったものでない▼それはインターネットサイトの架空請求詐欺などにも言えること。ちなみに詐欺など知能犯罪の全国発生件数は、今年の1月から4月までだけでも3万件という。疑ってかかれ、とは言いたくないが、「まずは疑って、次に確認や相談を」。仕方ない。油断の出来ない現実があるのだから。(H)


5月29日(土)

●盲目の老いた親を先導して空爆から逃げるカンボジアの少女の痛々しい姿…。31年前、フリーの戦場カメラマン、一ノ瀬泰造が、解放軍が立てこもった聖域「アンコールワット」にとりつかれた。「うまく撮れたら持って帰ります。もし地雷を踏んだらサヨウナラ」と書き残して…▼テレビで一ノ瀬さんの映画を観ている時、イラクで取材している2人の日本人記者が乗った車が銃撃され炎上するというニュースが飛び込んできた。フリージャーナリストの橋田信介さんと、おいの小川功太郎さん。サマワの自衛隊を取材し、バグダッドに向かう途中だった▼イスラム教シーア派の武装勢力と米軍が戦闘を展開している地域。車にはロケット弾が撃ち込まれ、遺体の損傷が激しいという。橋田さんはバンコクを拠点に各地の内戦などを取材。今回は米軍の攻撃で目をやられた少年を日本で治療させるためイラクに入り、近く帰国する予定だった▼50年前、第2次世界大戦の戦場写真家で知られるロバート・キャパもベトナムで地雷を踏み、40歳で死亡した。子どもを抱えて川を渡る母親などを撮って、反戦を訴えた。戦場を取材する記者やカメラマンは常に危険が伴う。イラク開戦以来、報道陣の犠牲が相次ぎ、43人が死亡している▼イラクはジャーナリストも巻き込む「戦場」になった。いわゆる「自己責任」で活動しなければならない。橋田さんの奥さんは「戦場ばかりを回っていましたので、覚悟はあります」と気丈に話しているが。キャパも一ノ瀬も橋田さんらも、その直前に何を目にしたのだろうか。(M)


5月28日(金)

●高齢者の施設には幾つかのタイプがある。その一つの特別養護老人ホームで、近年、個室化が進んでいる。気兼ねのない、快適な生活を望むのは老若問わず一緒。だが、行政の考え方として入所希望を満たす、という視点で動いた時代が長かった▼現在、わが国にある特別養護老人ホームは約5000施設。30万人あまりのお年寄りが生活している。ただ、国の補助基準から、何人かが同じ部屋で生活する、いわば多床型が多く、実際に1980年代までは6人部屋や4人部屋が主流。せいぜい2人部屋だった▼施設改築が大変という経営事情に加え、個室化には「看護の目が届きづらい」「引きこもりにつながる」といった思いが根強かったのも事実。それらを払しょくしたのが先進施設の試みであり、国を動かす原動力に。遅ればせながら、個室化が一つの流れになってきている▼確かに、個室化率が50%を超える施設はまだ少ない。それは現実だが、ここ数年の新設施設は完全に個室化へシフト。2003年度の新設計画をみると、225施設が全室個室の考え方というところに、急速な変化を感じ取れる。その中で、既存の施設ながら80%が個室という施設がある。それも函館市に▼旭ケ岡の家。同施設のホームページは、フィリップ・グロード氏の考えをこう伝えている。「障害老人にも、いや障害老人にこそ個室が必要」と。お年寄りの立場に立つか、介護する側の論理に立つか、という問いかけでもあるが、この個室化への移行こそ、その答えにほかならない。(N)


5月27日(木)

●全国どこへ行っても聞くのは合併論議。平成の大合併を実感するが、道南でも4月末に道内のトップを切って函館と隣接4町村が合併協定書に調印、具体的な事務手続きに入ったほか、七飯と鹿部、上磯と大野など幾つかの枠組みで協議が進んでいる▼とは言っても、すべてが順調か、と言えば必ずしもそうでない。函館など5市町村のケースと違って、町村同士の新設合併となると、総論でも悩み多く、さらに各論に入るや懸案が次々と…。合併後の市町村名、どういう名称にするかは分かりやすい一例▼住民はそれぞれ、現在の市町村名に愛着を持っている。したがって規模に多少の差があり、手順を踏んだところで、既存の一つを引き継ぎことに他の抵抗感は強い。新たに考えるのが一般的なのはそれ故。事例としては住民からの公募を受け、決定する手法が多い▼これから受け付けを始める動きの上磯と大野も然り。この両町のケースで特に注目されるのは、公募に当たって文字に制限をつけていること。現町名にある「上」「磯」「大」「野」の文字、ひらがな、カタカナの現呼称の除外している。ここに両町の住民意識、感情への配慮がうかがえる▼合併協議で大切なのは互いを尊重し合うことだと言われるが、市町村名の決定はその最も重要なファクターの一つ。しかも行政的な視点で答えを出せない問題だけに、より慎重さが求められて当然。現文字を除外して公募する上磯と大野の対応に、それがうかがえる。(N)


5月26日(水)

●全国どこへ行っても聞くのは合併論議。平成の大合併を実感するが、道南でも4月末に道内のトップを切って函館と隣接4町村が合併協定書に調印、具体的な事務手続きに入ったほか、七飯と鹿部、上磯と大野など幾つかの枠組みで協議が進んでいる▼とは言っても、すべてが順調か、と言えば必ずしもそうでない。函館など5市町村のケースと違って、町村同士の新設合併となると、総論でも悩み多く、さらに各論に入るや懸案が次々と…。合併後の市町村名、どういう名称にするかは分かりやすい一例▼住民はそれぞれ、現在の市町村名に愛着を持っている。したがって規模に多少の差があり、手順を踏んだところで、既存の一つを引き継ぎことに他の抵抗感は強い。新たに考えるのが一般的なのはそれ故。事例としては住民からの公募を受け、決定する手法が多い▼これから受け付けを始める動きの上磯と大野も然り。この両町のケースで特に注目されるのは、公募に当たって文字に制限をつけていること。現町名にある「上」「磯」「大」「野」の文字、ひらがな、カタカナの現呼称の除外している。ここに両町の住民意識、感情への配慮がうかがえる▼合併協議で大切なのは互いを尊重し合うことだと言われるが、市町村名の決定はその最も重要なファクターの一つ。しかも行政的な視点で答えを出せない問題だけに、より慎重さが求められて当然。現文字を除外して公募する上磯と大野の対応に、それがうかがえる。(A)


5月25日(火)

●人気も売り上げも格段の違いがあり、その差は開くばかり。中央競馬と地方競馬の間に見られる現実だが、地方の経営環境はいずこも厳しい状況。「このままでは…」。ホッカイドウ競馬も然りだが、存続論議がされている事例も珍しくない▼「頑張れ地方!」。そんな声をかけたくもなるが、昨年あたりから幾つか話題が生まれているのは歓迎される動き。依然、優勝経験のない高知の「ハルウララ」はその代表格。現在、109連敗中だが、走る姿は感動を与え、妹も高知入りするなど、人気は衰え知らず▼最近では中央で失格扱いされた馬が、地方で奮起しているといった話題も。駄目の烙印を押され、中央で一度も走ることなく、熊本の荒尾で蘇り、24連勝した「キサスキサスキサス」。デビューは4歳と遅かったが、その後は水を得た魚のように快走中。今や荒尾のスターに…▼実力派では、ホッカイドウの「コスモバルク」。皐月賞では追い込み及ばず2着に甘んじたが、輸送などのハンディを乗り越え、人気に応えたあたりは一級品の風格。次の舞台となる30日の日本ダービーで、どんなレースを見せてくれるか、押しも押されぬ注目の一頭▼ハイセイコー、オグリキャップなど、中央で輝かしい実績を残した地方出身馬は少なくない。だが、全体で言うと、チャンスに巡り合える馬はごく一部。「コスモバルク」はその一頭であり、期待が高まる“北の星”。応援したい。競馬史上初めて、ホッカイドウ競馬の所属馬として挑むというのだから…。(A)


5月24日(月)

●各地から植樹の話題が届いている。道内でも近年、その意義を認識した植樹活動の輪の広がりが顕著。実際、各地で増えている参加者の数からもうかがえるが、その先駆的存在として評価されているのは“帯広の森”づくり。それが今年で計画面積を植え尽くし、次のステップに入った▼「21世紀に向けて街を潤す森を、それも市民の手で」と、当時の吉村博市長が夢を掲げ計画を策定したのは1971(昭和46)年のこと。市街地に近い原野に新たな森が描かれ、最初の植樹祭が行われたのは4年後の1975(昭和50)年。市民の共感を得て…▼それから時を刻むこと30年。5月中旬に実施された今年を含め、植樹祭に参加した市民は延べ14万8000人。約133ヘクタールに、植えた木は23万本。市民参加の立派な森づくりだったことを教えられるが、今や市民憩いの場の雰囲気が漂う環境に▼「この森を『帯広の若者への置き土産。30年はかかる』と言った夫の仕事が完了し、本当にうれしい」。最後の植樹祭に当たって、吉村元市長の夫人が寄せた談話だが、森をつくる、緑を残す、それが何と素晴らしい事業で、意義あることか、という思いが伝わってくる▼森づくりは植えて終わりではない。むしろ大事なのは、育つ手助け。帯広市では数年前から枝払いなどの育樹活動が動き出し、毎年秋に、これまた市民参加で実施している。大野町などの「百年の森」は、さらに息の長いスケールの大きな取り組み。帯広市の取り組みが貴重な教科書となるに違いない。(H)


5月23日(日)

●「離れていたからこそ、子供への思いは人並み以上なんだ。帰ってくる時の喜びと、また離れていく時の悲しみ…。子供が生まれた時、心の中で日本の名前をつけていた」(蓮池薫さん夫妻)。愛別離苦から1年7カ月ぶり涙の再会▼日本人拉致という許し難い残酷な北朝鮮の国家テロで、数奇な人生を経験した拉致被害者の子供たち5人が親の故郷に帰ってきた。これまで「私たちは帰国した在日朝鮮人」と話していたが、これからは胸を張って「私たちは拉致された日本人。だからお前たちも日本人なんだよ」と言える▼子供たちの普段着やパジャマなどを持参して羽田空港に出迎えた地村さん、蓮池さん夫妻。ただ「どこでもいいから死ぬまで4人で一緒に暮らしたい」と願っていた曽我ひとみさんの2人の子供は、夫が元米軍の脱走兵であることから、姿を見せなかった。曽我さんが北京で3人と会って話し合う方向で調整するという▼今度は「死亡」「不明」とされる被害者の再調査だ。北朝鮮は親や祖先を大事にする儒教文化圏なのに、墓は洪水で流された、他人の遺骨、生年月日の誤りなど、2年前の調査には多くの疑問が残ったまま。元脱北者から「被害者とみられる日本人を見た」という情報も相次いでいる▼「日朝国交正常化には拉致家族の帰国が大前提」と臨んだ小泉首相。今度は金正日総書記が日本に来て、四半世紀も苦しんだ拉致被害者たちに謝罪する番だ。横田めぐみさんら安否不明・行方不明の多くの被害者を早く帰国させてほしい。これ以上「絶望の涙」を流させないために。(M)


5月22日(土)

●殺伐とした事件・事故はともかく、旅先で読む新聞に函館・道南のニュースが載っていると、無条件で嬉しいものだ。この17日、東京のホテルでそんな思いを味わった。朝、部屋に届いた全国紙を開くと、いきなり目に飛び込んできたのは…▼箱館五稜郭祭の記事だった。それも社会面の真ん中。「大砲ドーン! 幕末の函館再現」の見出しで、扱いもよく、横長のカラー写真付き。全国紙は地域によって面建てや内容が異なる。この扱いは道内での紙面なら十分に考えられるが、都内に出回る紙面では、ここまではなかなか▼前日の16日は東京・浅草の祭りとして知名度の高い三社祭が開かれていたが、その記事はいわゆる都民版で写真も白黒と地味に。箱館五稜郭祭が三社祭を差し置いて大きな扱いを受けた事実は、情報発信を考えるという点で地域にヒントを与えている▼情報の地域内発信となると、地域メディアが全国紙より上。それは地域面の多少や取材態勢などによるが、道外への発信となると逆で、五稜郭祭の記事はその一つの証明。本紙もそうだが、道内紙とて幾ら胸を張ったところで、紙面宅配の術を持っていないのだから▼函館・道南は、観光都市としての知名度は上がっているが、全国への情報発信となると、まだまだ課題を抱えている。キャラバンもいい、東京などでの車内広告もいいが、インパクトとなると、軍配は記事に。全国紙の取材拠点が函館にあることの意義を、あらためて教えられた思いがする。(O)


5月21日(金)

●埼玉県のある都市が、外国産を含め学校給食で使う食材の産地名を献立表に表示し、話題になっている。地場の食材について表示するなどの例は少なくないが、全面的となるとまれ。その最大の意義は、情報を明らかにする視点かもしれない▼食料安保という言葉があるが、わが国の食料自給率は赤信号が点滅している状態。外国産依存度は年々増えて、旬のある野菜にしても輸入先はいまや50カ国とも。魚や肉にしてもスーパーの店頭では外国産が幅を利かせ、今や外国産抜きに食生活は考えられない時代…▼実際に食用魚介類の自給率は50%台というから、ざっと半分が外国産と思っていい状況。幾つか例を挙げると、サバ52%、マグロ・カジキ類43%、カニ類24%、エビにいたってはわずか6%…。野菜にしてもショウガ、アスパラ、ブロッコリーなどは50%を割っている▼学校給食は教育の一環と位置づけられている。だとしたら、自分たちが口にする食材の産地を知ることは、いわば生きた教育。もちろん外国産も含めて。「サバのたつたあげ ノルウェー」とあれば、そうか、サバはノルウェーからも輸入されているのか、と分かる▼さらにノルウェーはどの辺りにある国か、と地図を開き、漁業が盛んな国かどうかを確認する、そんな機会ともなり得よう。しかも街中に外国産食材があふれ、2割の学校給食施設が使用食材の15%以上は外国産と答えているデータもある。この現実を踏まえると、学校給食の産地表示は外国産も例外とすべきでない。


5月20日(木)

●道が選定した5月の花はチューリップとシバザクラだが、サクラに続きスイセンもツツジも一緒に咲く。花いっぱいの公園で、よちよち戯れる母子の姿はさわやか。でも「産みたい子供は理想は3人だが、現実は2人」(函館市のアンケート調査)という▼理想と現実の差は「1人」だが、その理由に「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」「体力的に耐えられない」が挙げられ、現実は幼い子供を持つ親ほど少子を望む傾向に。全国的にみても20代は「2人未満」が大半…▼一方、国連などの報告によると、世界の新生児の実に41%が出生登録されず、毎年5000万人の「無届け児」が誕生している。出生登録がないと入学資格は与えられず、人身売買や幼児労働の温床になりがち。途上国に多く、貧困から脱出するために無届け児を産む悪循環が続いている▼日本は、そんなかわいそうな子供はいないはずだ。ただ、少子化が年金改革にも影響している。ある母親は大学生の息子が年を取ってから困ると思って、就職するまで息子の年金を納付していたという。税金を取り立てる時以外はお役所からの通知がないのだから、勉強しなければ「うっかり」忘れてしまうことも▼年金の「未納3兄弟」や「未納大家族」なんてとんでもない。いまさら「未納と未加入を明確に区別すべきだ」といった屁理屈は聞きたくないし、「刺し違え」に国民を巻き込んでほしくない。「未納桜・残る桜」も早く散って、出直してほしいものだ。(M)


5月19日(水)

●アテネオリンピックまで3カ月ほど、各競技の国内選考会は終盤に。出場の標準記録があって人数面から言うと、今回ばかりは“女高男低”。女子選手の方が多いという構図だが、選考会や国際予選で感動を与えてくれたのも圧倒的に女子か▼アスリートの究極の夢であり、目標はオリンピックへの出場。そのために日々、苦しい練習に明け暮れ、4年間の集大成を発揮する場が選考会であり国際予選。コンマ数秒の争い、という表現に凝縮されるが、その差はなきに等しいほど。だから非情な舞台ともなる▼競技団体の内紛を押し付けられたテコンドーの岡本選手、女子マラソンの高橋選手…。様々なドラマがあった。そのぎりぎりの“戦い”の後に生じるのが勝者の笑顔であり敗者の涙。勝負の世界の厳しさを見せつけられるが、観る側にはその一つひとつが感動となって…▼そんなシーンが多かった。中でも特筆されていい例が女子のサッカーとバレーボール。出場権を決めたサッカーの北朝鮮戦は記憶に新しい。世界ランクの格上であり、過去9回対戦して1回しか勝っていない相手に対し、必死の戦いを挑んで勝ちを手にしたのだから▼痛くないはずはない。だが、倒れされても直ぐに起き、ボールを追う。もちろんアンフェアな姿もなかった。バレーボールも然り。プレーが感動を与えるから応援の環が広がる。伸び伸びと挑んでほしい、もちろん他の代表選手もだが。8月の本番に楽しみが広がる。(H)


5月18日(火)

●「第二新卒」。この言葉を聞いたことがあるだろうか。自由国民社の「現代用語の基礎知識」にも載っているから、立派に通用している言葉。確かに馴染み薄いが、インターネット上の専門サイトもあって、実際に目を向ける企業が増えつつある▼これまでは大きく「新卒」「中途」に分類されてきたが、「第二新卒」はその中間に位置する、と言えば分かりやすいかもしれない。「新卒」は未経験の学生を意味し、「中途」は採用側が求める経験を有する社会人を指すのに対し、「第二新卒」は卒業して3年未満程度の人たち…▼つまり社会経験を買うが、前職の経験は問わない、という位置づけ。企業には社会人教育を省けるメリットのほか、今後の人材確保の幅を広くしておく狙いがあり、若者にとっては早い段階で転職を考える際、新たな選択の道に。実際、この対象者は少なくない▼言うまでもなく雇用環境は厳しさ続き。多少明るさが覗きつつあるとはいえ、新卒にしても買い手市場。希望職種や希望企業への就職を果たせる人は極く一部でしかなく、その結果として数年で離職する人がかなり。大卒でも3年以内に30%レベルという統計もある▼その理由はともかく、「第二新卒」を生み出した背景にあるのが、これだけ離職が多いという現実。裏を返すと、卒業後、数年はいわば“新卒”の範ちゅうとするお墨付きとも解釈できる。確かに、まだ試行錯誤の段階とも言えるが、双方にメリットがあるのだから定着する可能性は大。「第二新卒」、よく考えたものである。(A)


5月17日(月)

●「地域に開かれた大学をめざして」。函館大谷短大が打ち出している大学運営の考え方だが、それを具現化する行動の一つが公開講座の開催。昨年度に続き今年度も6月(初回は5日)から来年3月までの間に19の講座を用意、地域住民に学ぶ機会を提供する▼大学はその学内主義こそ“大学の威厳”とする考え方もあって、長きにわたり近寄り難い存在だった。ところが、少子化の進行はそうした閉鎖性では将来立ち行かなくなる現実を教え、ここ数年は考え方の転換期…▼産学官という言葉に代表されるが、函館市内の各大学も地域を意識し、地域との連携に前向き。その中で函館大谷短大が考え、目を向けたのは住民の学ぶ意欲に対してだった。近年、生涯学習が充実してきたが、大学の専任教員による講義を聞く機会は、そう多くない。しかも無料となると…▼初めての試みながら「まずまずの反響」(保坂武道学長代理)だったという昨年度の実績を受けて、今年度は2カ月早めて6月からのスタートに。講座内容も教育、心理学、介護福祉、社会福祉、情報学、児童文学、健康運動、美術・音楽、法律相談、宗教など多岐に▼何とも贅沢な生涯学習プログラムであり、地域にとってはうれしい限り。日ごろ足を運ぶことの少ない大学で、学生と一緒に学ぶ場を提供してもらえたのだから。講座一覧パンフは大学などのほか当社の窓口にも置いている。19すべての講座はともかく、一つでも二つでもこの機会に受講を…。お勧めしたい。(A)


5月16日(日)

●鹿児島県の地域紙・鹿児島新報が廃刊、というニュースが連休明けに飛び込んできた。同県には南日本新聞という県紙があるが、地元の経済界が「一県一紙の体制はよくない」と創刊を支援し、以来、発行を続けること45年。事情はどうあれ、その歴史を閉じた▼道内でも数年前、新聞の廃刊を経験した。多くの人の記憶にあろう北海タイムス。52年間、刻んできた紙齢を途絶えさせたのは1998(平成10)年の9月だった。戦後、全道紙二紙時代の一翼を担い、道民世論を醸成する大きな役割を果たしてきたのに…▼「地域に新聞は複数あった方がいい」。昔から言われ続けているが、さらに最近は「地元紙があって、他の新聞との競いがある地域は発展している」という認識を説く人も。いずれも意味するところは、互いがけん制し合う環境が生まれ、独善的な姿勢がなくなる、ということ▼本紙の創刊後、よく耳にした“函館新聞効果”なる言葉は、それを物語る端的な例。鹿児島新報、北海タイムスにしても、存在そのものが紛れもない地域貢献だった。「県民に寄与できる新たな第二紙の芽の誕生を期待して…」。鹿児島新報は廃刊の辞で、こう述べている▼本紙はまだ創刊8年目。その間に50年の歴史を誇った新聞が幾つか姿を消したのは残念だが、一方で新たな創刊の話はうれしい限り。いわゆる県紙がなかった滋賀県で、来年春の創刊を目指している「みんなの滋賀新聞」もその一つ。頑張ってほしいと思う。その理由は鹿児島新報、北海タイムスなどが教えてくれている。(A)


5月15日(土)

●旅行ブーム健在―。それはゴールデンウイークの統計などからもうかがえるが、実際、東京など大都市の旅行代理店の店頭には、あふれんばかりのパンフレットが並び、新聞や雑誌、電車の中吊りなどの広告も国内、海外を問わず目白押し▼旅行は人間誰しもにある欲求。日常生活を離れてゆっくりしたい、関心のある所に身を置いてみたい。癒やし、リフレッシュの手段と言えば、多くの人が旅行を挙げるに違いない。ただし、お金もかかる、なかなか休みがとれないが、年に一度や二度は出かけたい、のは心理▼日本人はどの程度、旅行をしているのだろうか。観光白書によると、例えば国内旅行の2002年統計で、国民1人当たり宿泊旅行を行った回数は平均2・49回、うち観光目的が1・26回。景気の低迷などで手控えが言われたが…▼さらに海外旅行もアメリカの同時多発テロ、その後のイラク戦争、新型肺炎騒動の影響を受けて低迷していたが、それは一時期の現象。このゴールデンウイークの動きを見ると、完全復活の印象…。だからと言って、国内が減っているわけでもない▼あまり知られていないが、あす16日は「旅の日」。日本旅のペンクラブが1988(昭和63)年に制定したのだが、その謂れは松尾芭蕉が「奥の細道」へ旅立った日が陽暦の5月16日ということで。旅行のスタイルは人それぞれ。芭蕉風でも、今風でもいい。自分が満足できる旅であれば…。統計、現実の姿が、そんな思いを代弁している。(A)


5月14日(金)

●またか、またか。次々と出てくる国民年金未納の国会議員。兄弟どころか、今や“永田町未納社会”の様相。その中には大臣や党幹部経験者ばかりか、首相経験者まで。認識不足で、不注意で、手続きを忘れて…。釈明も、お詫びも聞き飽きた▼ここまでくると、怒りを通り越して、ただただ呆れるだけ。気持ちを表す言葉すら見当たらない。「国民のためになる年金改革に全力を挙げたい」。言ってほしくない。聞けば聞くほど、虚しく響くだけだから。辞職や辞任をすることで、責任が帳消しになるわけでもない▼こんな恥ずかしい姿をさらして、さらに政局にしようなどとはもってのほか。お互いに脛に傷を持ちながら、足の引っ張り合いでは、ますます滑稽にしか映らない。今、考えるべきは、すべてを明らかにして、早く未納問題にけじめをつけ、真の年金論議に入る環境を整えること▼同時に信頼を回復するなら、多数の未納議員を出した国会の責任として、国会の名のもと国民に詫びることであり、未納議員にペナルティーを課すなどの行動。例えば、未納推定額の5割とか7割を各人選挙区の社会福祉に寄付することなども一つの考えかた▼それは寄付行為に当たる、と言われそうだが、あくまで社会罰と考えて。それでもなお堅いことを言われるなら、寄付行為の除外とするように法を改正すればいい。理由や事情はどうあれ、国会議員が制度の根幹にある「支えあう精神」を踏みにじったのは事実。永田町の論理で幕を閉じられてはかなわない。


5月13日(木)

●自分は大丈夫と言ってはいられない。いつ何時、身に降ってこないとも限らないからだが、そんな現実を消費者相談の実態が浮き彫りにしている。持ち込まれる相談は全国的に増え続け、完全な社会問題状態。しかも手口は巧妙化し、悪質度は目に余る▼相談件数はここ数年、際立って増える一途。函館市消費生活センターが扱った相談をみても、6年前の1998年度は790件だった。これでも多いのだが、5年後の2002年度には2倍以上の1990件に。そして昨年度は2819件というから尋常でない▼その被害内容は時代を反映し、数年ごとに多発事案が変わる。例えば、催眠商法など“商法被害”の相談が多かった年もあったし、消費者金融絡みが増えた年もあった。それが昨年度は携帯電話料金の不当請求に関する相談が全国、全道的に急増した。もちろん函館・道南でも▼インターネットもそうだが、安易にアクセスは危険。思わぬ落とし穴が待っているからだが、実際に同センターが扱った携帯電話の有料サイトなどからの請求に伴う相談は939件。実に前年度の2・4倍。ここまできては社会への警告と受け止めざるを得ない▼あまりの現実に気が滅入ってくるが、不快な思いをしないために大事なのは自衛の意識を持つことであり、万一問題を抱えた時に泣き寝入りをしないこと。消費者保護基本法が施行されて35年、法整備は進んできたが、「消費者を守る」という視点に立つと、まだ不十分。今年も間もなく「消費者の日」(30日)を迎えるのだが…。(N)


5月12日(水)

●「イラク人収容者に対して行われた身の毛もよだつ、残酷な行為」。ブッシュ大統領が謝罪したものの、イラク人虐待の写真や映像が次々と公開されている。タバコをくわえ笑いながら虐待。いくら「上官の命令」とはいえ、一方的に傷つける心理が分からない▼バグダットでタクシーに乗っていた時、拘束された。その挙げ句には刑務所で全裸にされて…。男女9人の兵士が叫び、笑いながらの暴行。人間ピラミッドではきちんと出来るまで約30分間練習させられたとか。それを女性兵士が撮影していた(販売業者の証言)▼必死に防御している男性の痛ましい姿、米兵や看守がイラク女性捕虜、少年たちを暴行している動画…。裸にされて殴打を受ける12歳の少女、病気なのに水いっぱいの大きい缶を持たされ、崩れ落ちた15歳の少年も▼ジュネーブ条約(赤十字諸条約)では「紛争当事国は15歳に達していない子供が敵対行為に直接参加させない」とうたっている。米国国防長官は「アル・カーイダらは捕虜ではない。不法な戦闘要員で、戦争や武力紛争の捕虜が受けるジュネーブ条約の人道的待遇は適用されぬ」と強気だが…▼もちろん、自爆テロなどに子供を使ってはいけない。まして「戦後のイラク」では子供や一般市民を拘束する理由はない。刑務所の憲兵が「人道的処遇」の訓練を受けていなかった問題も問われて当然。南北戦争で奴隷解放を宣言したリンカーンを忘れたのだろうか。(M)


5月11日(火)

●ご存知かと思うが、函館駅前の国道5号線から電柱が姿を消し、すっきりとした“陸の玄関口”にふさわしい景観となった。「こうも違うものか」というのが率直な感想だが、さらに工事中の駅前広場が完成すると…。新しい時代を予感させる▼都市景観を考える時、電線地中化を切り離しては考えられない。たとえ素晴らしいデザインの街路灯を建設しても、美観がかき消されてしまう。しかも都市中心部では張り紙が見苦しさを助長している。ない方がいい。だが、電線地中化には費用と時間がかかる▼一説によると、地中化は空中(電柱)化に比べ20倍のコストがかかるとか。それを国と事業者が負担するとしても大変な額であり、地中化が遅れに遅れた背景もそこに。残念ながら経済先進国の中で最低レベル。ロンドン、パリは地中化100%、ニューヨークでも72%▼これに対して、わが国は…。最も進んでいるとされる東京都区内でさえ、平均で5%(2002年度末)。対策として政府は1999(平成11)年から5カ年で3千キロ程度地中化する計画を実行したが、手をつけた段階に等しい程度。その中で函館の駅前340メートルで実現した▼国道5号は駅前、元町などに通じる函館市街への幹線。観光都市として美的な姿を求められていたが、ようやく現実に。昭和付近は拡幅整備も進んでイメージを変えているが、その象徴が駅前の電線地中化。これこそ地域に歓迎される公共事業、改めてそんな思いがこみ上げてくる。(A)


5月10日(月)

●「健康の源はしっかり朝ごはんを食べることから」。よく言われ、誰もが分かっているが、ついつい…。朝食を抜いて学校へ、職場へ、という人の率は高まる一方。厚生労働省の「国民栄養の現状」からもその実態がうかがえるが、とりわけ男性で顕著▼今から30年ほど前、朝食を食べない男性は平均6・7%だった。それが10年ほど前に10%台に乗って2000年も10・7%(女性は5・8%)。これは放置できない、出来れば米を食べてもらおう。そんな運動団体・朝ごはん実行委員会が4年前に発足している▼啓蒙活動を中心に各種調査も行っており、最近は単身赴任者の朝食実態を調べている。健康が心配される年代の人たちだが、案の定というか、毎日食べていない人が41%と5人に2人の割合。さらに全く朝食を食べない人は13%を数え、黄信号が灯っている▼朝ごはんの効用は血糖値と体温を上げ、1日の活動の準備を整える、など多々言われる。実際、この調査でも半数以上の人が「朝食をしっかり食べた日は午前中の仕事がはかどる」と答えている。なのに、近年はこの朝の欠食、孤食が子どもにまで広がる傾向という▼4月3日の本欄で取り上げた青森県鶴田町の「朝ごはん条例」も、こうした現実を懸念するが故の制定。夕食に比べ、時計とにらめっこの慌ただしい朝食は軽く考えられがちだが、自分に言い聞かせよう、朝食は抜かない、と。「元気なカラダ、朝からだ」。同委員会はこんなキャッチフレーズを掲げている。(A)


5月9日(日)

●『孤児院の少年たちはあなたの息子であり、あなたがここに戻ってきて、また会えることを祈っています。あなたがとても必要です』。ストリートチルドレンの「母」といわれ、イラクで人質となった高遠菜穂子さんにバグダッドの孤児院からメッセージ▼「安っぽいヒューマニズム」「民間やNGOでこそできる支援がある」―。高遠さんらが取った行動については依然、賛否両論がある。しかし、立場はどうであれ、親を失った子供たちの悲痛な叫びに耳を閉ざしてはならない▼わが国では最近、「男より女の方が楽しみが多い」と考える人が増え、「1番大切なもの」に「家族」を挙げる人が過去最高を占めている(統計数理研究所調べ)。もちろん、母の子育てを含めて「生命・健康」などと続いており、いつまでも元気で「地球家族志向」へ延長していく傾向にある▼函館市の「男女共同参画条例」の懇話会では「女性らしさ、男性らしさが無視される」と「ジェンダーフリー(性差別からの開放)」には否定的だった。「差別」はいけないが、「区別」は必要だ。母の日のプレゼントに「実の母には予算高め」「義母には抑えめ」(某デパート調べ)は差別なのか、区別なのか▼信念に基づいて各国の孤児たちを助け、バグダッドでも靴磨きなどで飢えをしのぐストリートチルドレンの生活を支援してきた高遠さん。行動の是非はともかく、真心から子供たちに接してきた彼女に銃を向けた行為は指弾されるべき。母を思う子供の気持ちは人類普遍だ。きょう9日は「母の日」。(M)


5月8日(土)

●国会議員の国民年金未加入、未納問題は、福田官房長官の辞任に発展した。本来、閣僚の公開を迫った民主は、してやったり、と点数を上げたところだが、菅代表をはじめ前代表、特別顧問が“未納兄弟”の仲間入り、とあっては、差し引きゼロ▼年金財政がひっ迫したのは、運用の失敗であり、少子化などの見通しの甘さ。なのに、政治はその責任の所在を明らかにせずにきた。今の今もそうだが、挙げ句の果てにそのつけを国民に回す給付年齢の繰り下げ、保険料のアップときては、不信感が増幅して当たり前▼追い打ちをかけるように、明らかになったのが国会議員の未加入、未納…。事情はどうあれ「みんなで支える」という精神を放棄したに等しく、既に両手、両足に余る人数になっている現実は重大。その結果として年金審議は霧散し、裏舞台での決着に。それも玉虫色で▼まさに痛み分けであり、傷のなめあい。自民もさることながら、今改正案を改悪と言っていた民主は、その主張を引っ込めざるを得なかった。仕方がない、攻める側が脛に傷を持ってしまったのだから。せめて、けじめだけでも…。だが、それも先を越されてしまった▼2幕、3幕のなくなった“永田町年金劇”が、あとに残したのは政治不信。強いて挙げる唯一の功績は、これまで無関心だった人の目を年金に向けさせたことだが、それは年金離れと別の問題。将来も大丈夫なのか、その唯一の答えこそ政治の信頼だったのだが…。またまた裏切られてしまった。(A)


5月7日(金)

●「後を絶たないこと」と聞かれて頭に浮かぶ一つが交通事故。まさに「あすは我が身」なのだが、現実に道内では昨年より早く事故死者が100人を超え、道南も4月29日現在で昨年同期比で2人多い状況。警察処理を受けた事故件数も既に760件余りを数えている▼酒酔い運転などは論外だが、速度の出し過ぎや無理な追い越し…そんなルール違反、さらには運転中のちょっとした気の緩み、それらを直接的な事故原因とすると、内面的によく指摘されるのが自己過信。「自分は(運転がうまいから)大丈夫」という意識に象徴される▼実際にそう錯覚している人が多いと言われ、高齢者も例外でない。近年、高齢者の事故は急増しており、事故原因を作った第一当事者になった死亡事故は、この15年ほどで約3倍に。それでも自信を持っている人が多いことが種々の調査からもうかがえる▼例えば、東京交通安全協会が70歳以上の高齢者講習を受けた人を対象に行った調査結果。「高齢者の運転は危ない」という認識を持っているが、自分のことになると話は別…。57%が「自分の運転はうまい方」と自負、73%が「運転技術は若者に負けない」と答えている▼一般論だが、年齢とともに視力は衰え、反応も鈍くなる。この調査でも47%が標識を見落としたことがある、と認めているが、それでも持ち続けているのが「自分は別」という意識。専門家は要注意現象と総括しているが、大事なのは謙虚さであり自覚。もちろん高齢者だけに限ったことではないが…。(A)


5月5日(水)

●きょう5日は「こどもの日」。子どもの人格を重んじ、健やかな成長を願う日として、1948(昭和23)年、国民の祝日に。その3年後には子どもの権利に関する「児童憲章」が宣言され、子どものことを考える一日と位置づけられて56年になる▼その子どもの数は近年、減少の一途。出生数が端的に物語っているが、1970年代前半の年間200万人ほどが、1980年代には150万人ほどに、そして2000年代に入るや120万人を切るまでに。人口構成はゆがんで、将来に様々な問題が提起されている▼なのに、子どもを取り巻く環境は悩み多く、問題を抱えるばかり。その象徴的な現実が虐待だが、児童相談所が扱った相談の中で虐待として処理されたケースをみても、この10年あまりの増え方は異常。1994(平成6)年までは全国で2000件未満だったのに…▼この数でも多いのだが、1997(平成9)年には5000件、その2年後には1万件を超え、一昨年度は遂に2万3738件、単純に計算して1日65件というのだから。さらに文部科学省の調査によると、連続30日以上欠席している小中学生が4万9352人もいる▼これら統計の裏にある姿を考えると、「こどもの日」は、社会がこうした悲しい現実と向き合う日と考えるべき、とも思えてくる。それほどまでの異常事態ということだが、今年度の統計では減少傾向に転じた、となるように…。「こどもの日」に当たって、この現実を頭に刻み込んでおきたい。(N)


5月4日(火)

●森づくりを掲げる大野町に、頼もしいボランティア組織が誕生した。行政がどこまで担うか、の問いかけでもあるが、植樹、育樹など緑の維持、管理は、住民の理解と協力なしには難しい。というのも、森づくりは手間と時間がかかる息の長い事業だから▼その大野町が進めているのが「百年の森」づくり。きじひき高原一帯を100年後には…。かつての森を蘇らせ、天然林が生い茂る「大森林公園」に、という壮大なる事業。力を入れる吉田幸二町長は、この事業を「子孫への夢のバトンタッチ」と表現している▼そのための具体的策として、みどりの森づくり基金条例を制定し、町民植樹祭や体験会、講演会を開催したり…。とりわけ植樹祭は年々参加者が増え一昨年は850人、そして昨年は985人。今年からは全日空も活動に参加することになり、緑化運動は確実に広がりを見せている▼素晴らしいのは参加者数が象徴する賛同の輪の広がり。大野森づくり応援団は、その延長線として生まれた。楢山文治会長は本紙の取材に「まずは自分たちが学ぶことから始めたい」と語っているが、将来的な視点に立つと、組織が立ち上がったことの意義はなおさら▼確かに、まだ20人ほどで、具体的な活動はこれからだが、森づくりに厚みを増す存在としての期待が高まる。植樹祭の支援、森の清掃などから地道に取り組んでいく中で、必ずや理解もされ、会員も増えていくに違いない。是非、そうあってほしいという思いから、間もなく踏み出す活動の第一歩に、拍手を送りたい。(H)


5月3日(月)

●東京都・杉並区で7月から防犯カメラ設置・利用条例が施行される。犯罪が多い今の時代、大都市ではカメラに囲まれている、と言って過言でないほど。駅や商店街など不特定多数の人が集まる所では、ほぼ全てで、と思って間違いない▼条例は地方自治体が制定できる法規。地方自治の立法権とも言え、憲法第94条の規定に基づき、罰則を盛り込むことも認められている。鹿児島大学法文学部の全国条例研究会によると、その数はざっと2万弱。近年は地域の特性、実情などを踏まえた条例も少なくない▼例えば、全国的に注目を集めた東京都・千代田区の路上喫煙禁止条例。杉並区の防犯カメラに関する条例にも言えるが、人通りに多い東京ならでは。この防犯カメラは犯罪の抑止効果とともに、万一犯罪が起きた際には手がかりとなる。確かにそうだが、だからと言って…▼この問題にはプライバシーの保護が相反する形で存在している。記憶に新しいが、長崎市で起きた幼児殺害事件では犯人検挙に貢献、さっぽろ雪まつりでは設置を巡って論争となった。そうなるのも運用に関するルールというか、具体的な“拠りどころ”がないから▼条例で規制する。杉並区が全国に先駆けて動き、区や商店街、自治会などが設置する際に撮影範囲、設置台数、画像の取り扱いを定めた利用基準を設け、届け出ることを義務化した。これで十分か、となれば議論があろうが、ここで認識したいのは「気づかぬ間に自分が見られている社会になっている」という現実。無関心ではいられない。(A)


5月2日(日)

●紀元前1世紀、ユダに裏切られ民衆の手に引き渡され、十字架にはりつけにされて息絶えたイエス。数人がかりで先に刃物が付いたムチで叩く。皮膚が裂け肉が飛び散る、残酷な処刑シーン。救いと許しを語るイエスが、むごたらしく痛めつけられる…▼イエス・キリストの最後の12時間をリアリズムで描いた映画「パッション」。ゾッとするほどの受難だった。燃えさかる車両、焼け焦げた2遺体を切り刻み、車で引きずって鉄橋に吊るす。ファルージャで起きた米民間人殺害事件の映像。イラクの受難は絶えない▼イラクで人質となり、16日目に解放された3人。「高遠さんは恐怖のあまり泣いていた。自爆テロをするんじゃないかという恐怖にさいなまされ、死の恐怖に襲われた」(今井紀明さん)「銃身を押し付けられた時は、さすがにまずいなという感じだった」(郡山総一郎さん)▼高遠菜穂子さんは体調がすぐれず、自宅で静養中。今井さんは「劣化ウラン弾を調べるためイラクに行った。戦争の悲惨さを伝えることが自己責任だ」、郡山さんも「今後もこの体験を生かして、世界中を自分の目で確かめ、伝えたい」と、リスク覚悟の渡航だったと言い切った▼ファルージャ惨事の発端は、洗濯物を干す姿を双眼鏡でのぞかれる女性の怒りだった。何がきっかけで武力衝突が起きる分からない。退避勧告は継続されている。3人の後で解放されたジャーナリストが話した。「何かあった場合に政府にどう対応してもらうのか、事前に一筆残すなどの準備が必要だったと思う」。同感だ。(M)


5月1日(土)

●「困っている時、悩んでいる時は、ここに電話をかけて。名前を言わなくてもいい。どんなことでも一緒に考えるから」。今の時代が求める、子どものためのホットラインと言われる「チャイルドライン」が、全国的に広がりを見せ、いよいよ函館でも…▼学校のこと、家族のこと、自分のこと…子どもたちは悩んでいる。相談したい、話したい…その時に聞いてくれる人がいたなら。イギリスの特集番組でとられたホットラインの開設が始まりと言われ、ボランティア活動としてわが国で動き出したのは1998年▼函館で組織づくりが始まったのは2002年の11月。少ない人数だったが、地道に運営委員や会員を募る一方、毎月のように研修会を開くなど本格活動への準備を進めきた。その努力が結実、5月5日から1週間行われる全国一斉の「子どもの日チャイルドライン」に参加する▼学校をはじめ「子どもの日―」ポスターの掲示依頼な★ど、スタッフは本番準備とPR活動に奔走中。その一環として5月3、4日の両日、市民体育館で子どもたちに楽しく遊んでもらう啓蒙イベントも計画している。一人何役も…。忙しい日々が続いている▼チャイルドラインの意義は、年間で13万件というアクセス数が物語っている。函館の当面の目標は、「子どもの日―」の取り組みを成功させ、常設化を実現すること。そのための努力が続くが、行政を含め、どう後押ししていくか、常設化に向けて地域の認識が問われてもいる。(A)


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