平成16年7月


7月31日(土)

●札幌の愛護団体がサル譲渡の差し止めを求めていた訴訟が棄却された。孫悟空が自分の毛をひとつかみ抜き取って、口に入れて噛みくだき、ふっと吹き出して、呪文をとなえ「変われ」と叫ぶと、幾百、幾千の子ザルが飛び出す。悟空の「分身の術」だ▼動物園の役割の一つに「種の保存」がある。絶滅しかかっている野生動物の種を繁殖させ、守っていこうというもの。それが子供の環境教育や動物愛護の心をはぐくんでいる。サルと人の違いは「毛が3本」というが、サル山は「分身の術」で年々増えて、全国的に過密状態▼札幌の円山動物園のニホンザルは当初の61匹から年々増えて現在は140匹。函館の熱帯植物園も100匹前後。過密状態が続くとストレスがたまり、子ザルが死亡する懸念もある。熱帯植物園では97年から死産が相次いだという。そこで浮上したのが京大霊長類研究所へ譲渡する計画▼札幌の愛護団体は、社会教育を担う動物園がサルを実験施設に譲渡するのは青少年に悪影響を与える、譲渡は過密状態の根本的な解決策ではない、と譲渡しないよう請求していた。判決は「譲渡は繁殖目的で、市に財産上の損害を与えるものではなく、違法とは言えない」としている▼実験用に使われるのは確かにかわいそうだが、愛護団体の要請で譲渡を中止している函館市や松本市は札幌の裁判を注視している。高崎山では避妊処置の導入などで10年で1800匹から1000匹に減ら計画。動物園で飼うのなら、サル山を大きくして、生態系を守ってやることも必要。(M)


7月30日(金)

●青森市で「おでんの街」構想が進んでいる。独自の食文化を発信する取り組みで、にらんでいるのは6年後と予想される新幹線の開業。「その時に間に合わせるには今から…」というわけで、固めた基本的なスタイルに基づき、現在、レシピを募集中▼青森は函館同様に新鮮な海産物が“売り”の都市だが、おでんは隠れた一品。残念ながら食味したことはないが、話によると、青森おでんはホタテやツブなどの海の幸やタケノコなどの山の幸を串に刺し、すり下ろしの生姜を加えた「しょうがみそ」で食べるのが特徴という▼かつての青函連絡船の時代、冬など出航を待つ客の体を温めるメニューとして考え出され、実際に人気を集めたと伝えられる。そこに目をつけたのが商工会議所の会員有志。名物になり得る、名物に育て上げたい、そんな思いから出発させたのが、この「おでんの街」復活作戦▼盛り上げのさらなる取り組みが、アイデアあふれるレシピの募集。「しょうがみそ」を使うことだけが条件で、ほかは自由。昔風か、今風か、どんなおでんが誕生するか楽しみだが、別の視点から伝わってくるのは地域活性化の熱意▼新幹線開業の経済効果などの享受は、それぞれの地域における知恵の絞り如何。函館も開業時期はともかく着工の灯りが一段と明るくなってきた。「時間はすぐ来るよ。今から考えていた方がいいのでは…」。青森の「おでんの街」構想は、函館にそんなシグナルを送っている。(A)


7月29日(木)

●年々訴訟が増える中で、法曹界には裁判の迅速化という課題が提起されている。裁判疲れという言葉も大げさでないほど、一審判決まで時間のかかるケースが少なくない。そこに浮かび上がるのは、増える訴訟の数に体制が追いついていない現実…▼裁判の前提は慎重な審理であり公平な判断だが、特に長引くケースが多いのは民事。原告、被告双方の主張を聞くという前提があるからだが、それにしても時間がかかり過ぎるあまり、肝心な権利救済が手遅れという事態になっては、裁判の意味が薄れかねない▼確かに訴訟は急増している。民事だけをみても昨年1年間に裁判所が新規に受理した件数は、過去最多の15万7833件。1日430件の訴訟が全国どこかの裁判所に起こされている勘定だから大変。その中で、確かに一審判決までの平均審理期間が短縮されてきている▼昨年の民事の平均は8・2カ月で過去最短だった。当社が提訴している裁判もそうだが、その一方で、長期化を余儀なくされている裁判も。昨年末時点で提訴から2年を超してなお一審判決に至っていない民事は8873件。かつて3万件もあったことが報告されている▼まだかなりの数が“一審2年目安論”から外れている。それは当事者の責任なのか、裁判所の事情によるのか、それぞれ事情もあろうが、裁判所が忙しいということだけは事実。公判の数もさることながら、東京地裁・東京高裁を訪れる度に驚かされるのが訪れる人の数。今、司法界が抱える悩みは、その光景が物語っている。(H)


7月28日(水)

●いくら薬を飲んでも、気力は戻らない。医者の診断はうつ病。原因はこれだったのかと思うと、その深刻さに悲哀のようなものを感じてしまう。心の奥のえたいの知れない動き、恐ろしくて仕方ない。学校には退学届けを出した(上原隆著「友がみな我よりえらく見える日は」)▼相変わらず自殺者が多い。警察庁がまとめた昨年の自殺者は約3万4000人(前年比7%増)で、統計を取り始めた78年以降で過去最悪を記録。北海道は東京、大阪に次いで3番目。若年者の自殺者が6割近くも増えており、ネット上の集団自殺が多発したのも特徴▼リストラや倒産など厳しい経済情勢に苦しむ中高年が死を選ぶケースも少なくない。また、動機には入試苦や学業不振も挙がっている。中間試験でカンニングを疑われて指導を受けた後に自殺した高校生もいた。自殺者の多くはうつ病にかかっている可能性が高いという▼イラクでは攻撃で多くの子どもが死ぬ悲惨な光景を目撃して、うつ病になり自殺する米兵が続出。病気で本国に送還された兵士のうち、約400人が精神衛生上の問題で送還されている▼ネットで知り合い自殺を図った男女4人の1人は言う。「挑戦する前に、あきらめてしまう。生きている実感がない。努力、挑戦しなかった自分が甘かった」。多くは専門医の治療を受ける前に命を落としている。うつ病も他の病気のように早期発見が第一。それを含め、自殺者問題の社会的な対策が急がれる。(M)


7月27日(火)

●“資格社会”を実感させられるが、資格試験というか、資格検定の多いこと。履歴書で生きる仕事上必要な資格から、知識レベルを計る趣味の域の認定まで数え切れないほど。それは裏返すと、継続するに見合う受験者がいるということでもある▼今年も幾つか生まれたのだろうが、8月からの募集開始が予定されている消費生活能力検定試験もその一つ。レベルを2段階に分け、それぞれに級を認定する、というもので、財団法人日本消費者協会が今年の10月に札幌など全国8カ所で第1回を行う予定▼近年は消費者、というより弱者をターゲットにした悪質商法がはびこり、騙される事犯が急増中。○○商法と呼ばれるものから、広い範囲ではオレオレ詐欺もそうだし、携帯料金の架空請求なども然り。法律や諸規定も変わるから日常的に必要とする知識は増えるばかり▼被害に遭ってからでは遅い。現実に毎年多数の人が嫌な、辛い思いを味わっている。同協会はコンサルタントの養成はもとより、相談、啓蒙の活動を続けているが、この検定試験もその一環という位置づけ。関心を持つ機会になることを願っての取り組みという▼それならば、問題集と回答例を希望する学校や主婦の組織などに無償提供する方が協会の精神に合うのではないか、という議論もある。今やインターネットの時代、全国から請求できるし、その方がむしろ広く普及するはず、と。確かにそうも言えるが、問題があるわけでもなく、その是非は受験する人の数が握っているというしかない。(N)


7月26日(月)

●函館で「小さな親切」運動が芽生えて30年。地味だが、大事な社会運動として息づかせた原動力は関係者の地域を思う気持ち。その函館支部(小笠原孝支部長)には企業や団体約50社、個人約150人が参画し、地道な啓蒙、実践活動を続けている▼この社会運動のきっかけは、あまり知られていないが、実は東大学長の卒業告辞。1963(昭和38)年だった。いわゆる卒業生へのはなむけの言葉として、当時の茅誠司学長が贈った話に共感した人たちが運動を立ち上げ、企業なども賛同してその輪が全国へ▼「『小さな親切』を勇気をもってやっていただきたい。そして、それがやがては日本の社会の隅々まで埋め尽くすであろう“親切”という雪崩の芽としていただきたい」。戦後の辛い時期を乗り越え、一息ついた社会に「いま何が大切か」を教えるメッセージでもあった▼「できる親切はみんなでしよう それが社会の習慣となるように」。運動スローガンはこう呼びかけている。以来、今日まで40年の間に、全国で実行賞を受けた人は400万人。支部数は210を超えるが、1974(昭和49)年に誕生した函館は、今年で30年の節目に▼地域社会とのかかわりが希薄で、人間関係も淡白な今の時代。人や社会に対する思いやりに欠ける行動が多々、指摘される。「小さな親切」は人間が本来持っている心であり、助け合って生きる上で欠かせない心。ボランティアの原点とも言われるが、その「小さな親切」運動が函館に根づいていることがうれしい。(A)


7月25日(日)

●車を運転中の携帯電話使用の罰則はさらに厳しく、手に持っているだけでも…。年内を予定し、警察庁が施行令の改正案を公表した。違反の程度から見て額が妥当なのか、なお議論があろうが、改正案で考えられているのは普通車で6000円、大型車で7000など▼携帯電話の使用モラルは悪評だらけ。多少、迷惑をかけたという程度ならまだしも、その結果が事故に結びつきかねないとなると、見過ごしておけない。「運転中の使用は注意が散漫になる」。実験結果などからも明らかなように、大げさでなく危険と隣り合わせの行為▼実際、携帯が絡んだ起きた交通事故は年間、全国で3000件近く。4人に1人が「過去に運転中の携帯使用でヒヤッとしたことが…」と答えた調査データもあるが、それでも減らない。もはや啓蒙での解決を期待しても無理。罰則を強めるのも致し方ない▼意外と軽く思われがちだが、運転中の通話行為は危険への反応速度で飲酒運転と差がない、という説があるほど。それほどの問題を含んでいるということだが、6月に改正された道路交通法の中で罰則強化が明確に。反則点数にプラス反則金を課す、もはや仕方ない▼社会が危険とみなした行為であり、誰しもが認識を共有している行為なのだから。にもかかわらず、守らないとすると、それは極めて悪質な行為というほかない。改正法では「5万円以下の罰金」とする規定が設けられた。ある調査によると、万単位でもいい、という声も…。厳罰に異論はない。(N)


7月24日(土)

●猛暑の一方で新潟、福井県を襲った豪雨災害。堤防を決壊させ、一瞬のうちに濁流が街を飲み込んで、高齢者が逃げ遅れで犠牲になった。ボランティアも加わって後片づけが行われているが、改めて自然の脅威を見せつけられた思いがする▼災害で避難が伴うのは主に地震(津波)と豪雨。科学の進歩で、地震の予知はともかく津波はかなり予測できる。その点は雨も同じで、予報レベルは高くなり、ある程度の判断材料の入手はそう難しくない。そこに避難を巡る論議が頭をもたげる背景がある▼避難をさせるか否かの権限を持つのは自治体の首長。そのランクは避難準備勧告、避難勧告、避難指示とあり、最も重みを持つのは避難指示。難しいのは、その発令をどの段階で下すか、ということ。早過ぎても批判が出る、かと言って遅れては大変なことに…▼その判断には常に悩みがつきまとう。多くの自治体が規定を設けているが、災害によって状況が異なるから、必ずしもマニュアル通りにはいかない。函館市も「防災計画の中で一応の基準を設けている」が、抽象的な表現になっている自治体がほとんどなのは、それ故▼今回の豪雨災害では新潟のある市が、住民への伝達を含め非難を浴びている。函館市は「だからこそ関係機関との連絡を密にして集める情報、さらにはパトロールの情報などが大事になる」と説明しているが、鍵を握るのは状況判断。ただ、忘れてならないのは、後で批判を受けるにしても、勧告や指示は早いに越したことはない、という視点。どんな場合にも、これだけは通じるのではないか。(A)


7月23日(金)

●日本人の平均寿命は2003年で、女性が85・33歳、男性が78・36歳―。男女とも過去最高齢となったことが、先日、厚生労働省が発表した簡易生命表で明らかにされた。男女とも4年連続しての延びを記録するなど、改めて“長寿国”を実感する▼簡易生命表と言っても分かりづらいが、1年間の死亡状況が変わらないことを前提に、平均して何年生きられるか、年齢ごとの余命をはじき出したもの。ゼロ歳児の平均余命が平均寿命となるわけで、けっして亡くなった人の平均年齢から割り出したものではない▼平均寿命が延びているのは世界的な動向だが、わが国でも100年余り前まで50歳にも届かなかった。それを考えると、ただただ長寿の軌跡には感嘆するばかり。実際に1898(明治31)年あたりの生命表には女性が44・3歳、男性が42・8歳と記録されている▼それが戦争直後の1947(昭和22)年には、女性が53・96歳、男性が50・06歳と、そろって50歳を超えた。その後も確実に延び続け、それから50年後の1996(平成8)年には女性が83・59歳、男性が77・01歳。男性も“人生80歳時代”に手が届くところまで…▼食生活が改善され、健康管理が幅広く行きわたり、医療技術が進歩、医薬品の開発も進んでいるのだから当然といえば当然。男性の半数が80歳まで生き、女性の半数が米寿を迎える時代もそう遠い話でない。「年金、介護がその場しのぎの政策では困る」。平均寿命も今の政治にこう問いかけている。(H)


7月22日(木)

●「障害者に優しい社会を」。そう叫ばれ続けているが、残念なことに差別は無くなっていない。良くはなった、とはいえ、それは余りにひどかった昔に比べてのこと。社会生活の上で、就職に当たって等々、提起されている課題は依然として多い▼解決に向けての一つの誘導策として、国際的に求められているのが差別禁止の法整備。40数カ国が終えていると言われるが、わが国は3年前に国連から制定するよう勧告を受けたまま。先の国会で障害者基本法を改正し、差別を禁止する条項を盛り込んだに過ぎない▼そんな中、全国で初めて条例制定の検討を打ち出し、注目されているのが千葉県。障害のある人も交え、1年がかりで議論し、今月に入って発表した「第三次千葉県障害者計画―誰もがその人らしく地域で暮らすために」で、その行動の柱として条令化が盛り込まれている▼罰則などを設けない代わりに、本人や家族がいつでも相談でき、きめ細かく対応できる体制や態勢を整備することで実をあげる考え方。確かに条例も大事だが、むしろ千葉県が重きを置いたのは日常…。県内14カ所に支援センターを設ける方針も、そこから出ている▼当たり前のことが当たり前でない現実をどう変えていくか、千葉県の試みはその新たな第一歩。計画書を読んでいて印象に残ったのが「…計画策定に当たって」の中にあった一文。「今までの意味での『福祉』という言葉のなくなる時代の初めにいるのかもしれません」。そこに社会が早く気づいてほしい、そんな響きに聞こえてくる。(A)


7月21日(水)

●街路灯の新規設置や裏夜景眺望場所の整備を…。函館市が東京のデザイン事務所に委託した夜景診断の報告骨子だが、改めて分かったのは夜景対策に奇策はないということ。どう考えても、光を増やす、見る所を整備する、誰の目にもこの二つしかない▼ただ、報告書の中で少々、疑問に思ったのは24年前との比較。「昔はもっときれいだった」という話を再三、聞いていたからだが、専門的な観点からは、光の点が散らばって見えた1980(昭和55)年ごろに比べ、今は面が増えている、そこに違いがあるのだと▼光量は増えているが、逆にメリハリが無くなったということかもしれない。確かに、街路灯の整備を上回るペースでビルなどが増えている。単純に「きれい」と感じてくれるに越したことはないが、そのために大事なことは街中における光の整備…▼報告書はその一つに街路灯を挙げている。以前に本欄でこう書いたことがある。「一部の幹線を除いて街路灯が暗く、夜景対策の観点からも長期的な取り組みが必要。新設、更新の際は少し光を上に漏らす視点を…」と。街路灯の光の線が夜景の演出役を担うと思っているから▼この報告書を受けた函館市は、2年後から対策に乗り出す考えだが、近年、人気を集める裏夜景の眺望対策も必要。誰もが認めるように函館観光は夜景抜きで語れない。その夜景を将来的にどう考えていくか、改めて行政課題としての位置づけが問われている。(A)


7月20日(火)

●21日は立秋の18日前の「土用の入り(丑)」。子供たちも土用(夏)休みに入る。土用の間、芝居興行は休むことにした。この期間、若手役者が安値興行をするのが夏狂言(土用芝居)。夏狂言の出し物は怪談ものが普通。今年は「1億円小切手の旅烏」か▼3年前の参院選の夏。封筒に入れられて、ある料亭で歯科医師の親分から自民党派閥の親分に手渡された。政治献金のつもりだったようだが、派閥側は領収書を書かなかった。当然、家計簿には記入されず「ヤミ献金」に。1億円の大金が闇にほうむられた▼派閥の親分は「俺がもらったものではない」と言っているが、国民を小ばかにした芝居。また、先の参院選で自民党比例区の新人候補に投票するよう働きかけた南茅部町長が公選法違反容疑で逮捕された。町職員に票のとりまとめを頼んだという。なんと古い政治感覚か▼土用の丑は、中国から伝わった「五行説」で最も暑い日。蒸し暑い夏に栄養たっぷりのウナギを食べるのは理にかなっているが、近年は天然ものが激減、養殖ばかり。しかも、スーパーで販売された中国産ウナギの蒲焼から禁止されている合成抗菌剤が検出されるなど物騒な話も▼親ウナギに発信機を付けてニホンウナギの回遊ルートを調べる研究も進んでいる。政治家にも発信機を付けて、1億円小切手の信号を人工衛星でキャッチしたらどうか。国民不在の下手な芝居は見たくない。安値でもいいから地道にウナギの稚魚を育てる、そんな夏狂言が見たい。(M)


7月19日(月)

●「4人一緒に日本で暮らしたい。帰ってきます」とジャカルタに向かい、1年9カ月ぶりに家族と再会した拉致被害者の曽我ひとみさん一家が帰国した。北朝鮮は不明者らの調査結果の不備にも触れており、今度は10人が笑顔で帰国する番だ▼北朝鮮に亡命した元米兵のジェンキンスさんは腹部手術の後遺症で苦しみ、内臓疾患も分かった。日本の病院で治療させようと、政府が「人道上の配慮」から早い帰国に踏み切ったが、米軍は訴追方針を崩していない▼「人間は決して肉身五尺のみで外に何ものもないというような単純なものではない。無形の精神という大切なるものがありて、心と身との二つの関係最も親密なるものである。而して身体上に発現したる行為は法律の制裁を受けねばならぬ」(須藤隆仙著「北海道刑務所宗教教誨史」)▼須藤さんは「ロー(法律)とは線ということで、無限に延長して引き伸ばすことの出来るものだ。されど人為の法律は限りあるもので、無限の制裁はできぬ」と続けている。ジェンキンスさんは、まず戦時中の脱走、敵への支援などを認めて、法の裁きを受けることだ。その過程で必ず光明は見えてくる▼「きれいな身になって、家族と日本で暮らしたい」と宣言したら、日本国民はこれまで以上に支援するし、米国に嘆願すれば「訴追免除」や「恩赦」も考えられる。ずっと入院しているわけにもいかない。堂々と訴追問題をクリアし、日本国籍を取って、佐渡島で永住してほしいと思う。(M)


7月18日(日)

●収入は増えない、せめて夢だけでも追わなければ…。宝くじ人気は高まる一途。億単位の幸運に巡りあっている長者が毎年100人以上生まれているのだから、気持ちは分かる。その幸運像だが、昨年度の場合で言うと「60歳以上のみずがめ座の人」という▼これは、みずほ銀行宝くじ部が1000万円以上当たった1495人にアンケートをした結果。年代別では「60歳以上」が男女とも31%でトップ。星座別では「みずがめ座」が11%だった。さらに当たる秘訣では、宝くじらしく「運」が最も多く、続いて「継続・忍耐」▼ちなみに「運」は59%。「継続・忍耐」が20%で、半数以上が10年以上の継続購入者だった。別にPRを買って出る気はないが、「継続こそ当選の道なり」ということかもしれない。それにしても宝くじの売り上げは右肩上がり。“15兆円産業”の域に達しようとしている▼その歴史は60年。終戦間際の1945(昭和20)年7月、政府が浮動購買力を吸収して軍事費を調達することを目的に、1枚10円で、1等10万円が当たる“勝札”という名で販売したのが最初と言われる。その販売額が1兆円を超えたのは、36年後の1981(昭和56)年…▼それが2002(平成14)年では、14兆円レベルというから驚くばかり。「当たり券の一時保管先は財布」。1億円以上当たった人の3人に1人がそう答えているというデータがあるが、そんな経験を一度は…。そんな夢をかきたてるサマージャンボが今、発売されている。(H)


7月17日(土)

●“団塊の世代”が、ここ2、3年で退職年齢を迎える。人数たるや極めて多い。その層がすっぽり抜けるのだから、社会に様々な影響を生むと言われるが、それを裏付ける調査結果がつい最近、財務省の財政総合政策研究所から発表された▼定年退職した場合と雇用が継続された場合を比較し探った結果だが、特に消費など経済面における影響はくっきりと。雇用人口は約110万人減り、それに伴う給与・報酬減は実に7兆3000億円。そして実質GDP(国内総生産)は約16兆円減るとはじかれている▼これは確かに総論。個別に見ていくと別な面も浮かび上がる。例えば、企業にとっては…。この世代は比較的給与が高く、人数も多いので人件費負担が軽減できる一方、組織の見直しなどが迫られる。その準備は既に始まっていて、現実の姿として現れているのがリストラ▼“団塊の世代”とは、堺屋太一さんが著書の題名にして定着した言葉。戦後のベビーブームと言われた昭和22年から26年ごろまでに生まれた人たちを指す。塊みたいな年齢層ということだが、大学紛争を経験し、就職後は出世競争にもまれ、結構打たれ強いとも▼そうは言っても現実の風は冷たい。リストラに遭い、再就職活動の渦中に身を置いている人が嘆いていた。「60歳を超えると職があるのに、俺たちの年代は見事なまでの狭き門」と。少子高齢の時代、この報告書は皮肉にも「団塊の世代は60歳を過ぎても重要な存在」と提言している。そう言ってもらいたいのは今の今なのだが…。(H)


7月16日(金)

●「がごめ昆布」が脚光を浴びている。今、なぜ、と思うが、スポットが当たる時って、そんな理屈なし。テレビ、雑誌で取り上げられ、火がついた例は枚挙に暇がない。「がごめ昆布」はそれとは違うが、この10年余り、着実に値打ちを上げてきている▼道南では昔から知られた存在。恵山を中心に函館から南茅部あたりまでの海域に生息し、一等級の評価がつけられる根昆布で、「藻体表面に篭の目に似た凸凹がある」のが特徴。その篭の目がなまって「がごめ」になった、とも言われる。もちろん体にもいい、と▼確かに脚光を浴びるようになったのも健康志向の観点から。昆布は健康食品。牛乳と比べると分かりいいが、カルシウムは7倍、ミネラルは23倍、鉄分は39倍、ビタミンAは5倍も含まれているというデータもあるほど。いかに栄養価が高いか、容易に理解できる▼「がごめ昆布」はその中でも上位ランク。アルギン酸カリウムが多く含まれ、高血圧を抑え、免疫力を高める働きがあるという話だが、さらにはがん細胞の増殖を抑制するとも。今の時代、ここまで聞かされると、脚光を浴びて当然。その動きが根強く続いている▼産地の道南にとっては、ありがたい現象。数年前の高水温の影響で天然ものが減少したとも聞くが、その復活努力の一方で、願うは新たな商品開発。そう思っていたら、先日、函館市が発表した、今年度新設の産学官連携促進補助事業の中に1件含まれていた。「がごめ昆布」の今後に楽しみが広がる。(H)


7月15日(木)

●イギリスの国花の一つになっている12種類33株のバラがいやしてくれる。そこは函館の旧イギリス領事館のローズガーデン。ナポレオンが「余の辞書には不可能という言葉はない」と言ったが、その不可能の代名詞とされていたのが「青いバラ」▼バラは色とりどり。青い色素を持たないバラを青くするために、約1000年前から多くの育種家がチャレンジしてきた。その途中に紫のバラが生まれている。青いバラは日豪の企業がバイオ技術で開発。3年後の商品化を目指しているが、写真で見る限り「薄紫」だ▼若い時季の青春、四神の一つでキトラ古墳の青竜、青い空・青い海など「青」は、これから成長するものの代名詞。「プリンセス・ミチコ」など皇族の名をとったバラも…。15世紀には赤いバラのランカスター家(紋章)と白いバラのヨーク家が王位を巡って、30年間も争われた「バラ戦争」もあった▼神話ではヴィーナスが海の泡から誕生したと同時にバラも生まれたとされる。クレオパトラの部屋には数十センチの厚さでバラの花が敷き詰められていたとも。トゲがなければ「初恋」、つぼみは「恋の告白」、赤は「愛情・情熱」、白は「純潔・尊敬」、ピンクは「暖かい心」…バラの花言葉▼青いバラの花言葉は「何でも可能に」か「永遠の憧れ」か。先の参院選で自民党の当確に付ける「赤いバラ」が減った。「官は貪りを断って、欲を捨て、民のために尽くせ」という聖徳太子の言葉を肝に銘じて、国会は今一度、不可能を可能にする「青いバラ」の論戦を繰り広げてほしい。(M)


7月14日(水)

●「自民苦戦、民主躍進」。参院選挙で国民は政府・自民に厳しい判断を示した。「お灸を据えた」という言葉に置き換えることも出来るが、そこに滲むのは国民の揺れ動く思い。13日付本紙の「意見・見解」からも、そんな思いを読み取ることができる▼「ある程度予想できた結果」「謙虚に受け止めてほしいという結果」のほか、「今のままでは駄目という国民の声が反映された結果」「全般的に国民の批判が具体化した結果」「新しい風に期待する人が多く表われた選挙結果」など、冷静に分析する声がある一方で…▼「どの政党が勝っても負けても政治は変わらないという思いがあり評価はできない」「現状を変えてほしいと願いを込めて票を入れるが疑問は残る」という厳しい指摘も。よく言われる政治意識がそこに垣間見えるが、この政治への揺れ動く思いは投票率が物語っている▼選挙区での全国平均は56・57%。前回(2001年)に比べ、かろうじて0・13ポイント上回った。落ち込みが懸念された事前予想からすると、まずまずという受け止め方もあるが、実質的には横ばい。期日前投票などで、2人に1人のレベルをなんとか維持したとも言える▼低いという話になると函館が登場するが、今回も全道ワースト1。1・24ポイント上がったとはいえ、最低の53・02%。「意見・見解」でも、気になるのは投票率という声があったし、投票所の場所も考えるべきという提言も。「住みにくい社会は有権者にも責任があるような気がする」。この言葉が重みを持って伝わってくる。


7月13日(火)

●本紙もそのジャンルに入るが、わが国で発行されている地域紙は日刊だけで200紙とも300紙とも言われる。その多くは朝刊か夕刊の単独発行だが、頁数などの紙面構成や発行部数も違えば、たどってきた歴史、置かれている環境も異なる▼そのうち全国的に知られるのはごく一部。県紙など大手の新聞社が加盟する日本新聞協会とも距離を置く、通信社からの記事配信を受けているところも少ない。経済的な理由などにもよるが、地域完結型になって、ともすれば新聞業界内での付き合いが希薄になりがち▼かと言って全国紙、地方紙などとは噛み合わない。「地域紙同士の連携を考えるべき」。一石を投じる動きが出たのは5年ほど前のこと。それは日本地域紙協議会の発足だった。島根日日新聞社の菊池幸介さんの呼びかけに応じた地域紙は、協会未加盟で比較的大きな27社▼情報交換会を開くなど精力的に活動を続け、この4月には東京に拠点を設けるまでに。地域紙関係者の拠り所となる日本ローカルプレスセンターである。その場所も日比谷公園の一角、日本新聞協会の建物と道路1本挟んで斜め向かいに建つ歴史的建造物の市政会館に▼そこに7月から日本地域紙図書館が加わった。確かに国会図書館などでかなりの新聞を閲覧できる。だが、地域紙ならここで、というのがコンセプト。それは「地域紙を分かってもらうための取り組み」でもある。揃えられているのは実に180紙。本紙をはじめ道内の地域紙も並んでいる。(A)


7月12日(月)

●選挙の結果は、必ず明暗が伴うが、今参院選挙では民主に明、自民に暗と出た。見事なまでの事前予想の通りだが、そこに垣間見えるのは絶妙なまでの国民のバランス感覚。「永田町に緊張感を」。昨年の衆院選挙に続き、同じメッセージの発信だった▼いわゆる国政選挙の結果は、直前の政局に左右されやすい。それが国民生活に密着した問題になればなるほど影響が大、ということになるが、今参院選挙で挙げるなら年金問題。無責任管理に加え、改正法案の説明不足、将来への不信感などの矛先が自民に…▼就任後3年が過ぎて“小泉流”にも陰りが出始めた頃と重なった。郵政、公団…。看板の構造改革も目に見える形で進んでいない。そう簡単に進む問題でないと判っていても、国民は早めの答えを求める。それらがこの選挙結果となって表われたということだろう▼つまり民主の明は、政府・自民の“失点”が回ってきたもので、敢えて表現するなら消去法の勝利。実際、民主が訴えた政策が浸透した結果とは言い難い。3党合意までした年金問題にしても然り。そこを真摯に受け止めるか否か、民主の今後はこの現実認識にかかっている▼内政、外交ともに政治課題が山積している。「自民にはブレーキをかけ、民主には責任感を持たせたい」。議席数でいうところの2大政党時代に戻った今、この選挙結果から国民のそんな思いが読み取れる。それが永田町にどう理解され、どんな答えが返ってくるか、厳しい監視の目を離せない。(N)


7月11日(日)

●“平成の大合併”と呼ばれる市町村合併は、国の目標を達成するのが難しい情勢。財政面での優遇措置などを掲げた特例法(市町村の合併の特例に関する法律)は魅力だが、総論段階では賛成でも各論に入るや、住民感情が表に出てきたりして…▼特例法の適用期限は来年の3月31日。残すところ9カ月ほどで、まさに大詰めの段階。全国的にはかなりの市町村が苦しい模索を続けている。この2日現在、全国で設置されている法定協議会の数は、総務省のまとめによると、1966市町村による581▼北海道は全国に比べ取り組みの遅れが言われるが、現在の設置数は32。道南でも、7日に道に編入合併(12月)の手続きをとった函館市と4町村のほか、上磯・大野、松前・福島など9の法定協が設けられている。ただ、道南に限らないが、そのすべてが合併に向けて順調にことが運んでいるかとなると必ずしも…▼大枠の議論をする任意協議会の段階は「そういうことで努力しましょう」と進むが、市町村名や庁舎の位置をはじめ各論を担う法定協議会の場では、きれい事ばかりも言っていられない。その結果、法定協議会まで進みながら“破談”となったケースが少なくない▼実際、全国でこの2年間に70の法定協議会が姿を消しており、道南でも江差などの檜山南部が9日、解散した。住民の意識、感情も無視できない。財政格差など調整が難しい問題も少なくない。どうしても時間がかかる。としたら、条件付きでもいい、特例法の期限を延ばすことを考えるべき。もともと性急すぎる国の期間設定だったのだから…。(N)


7月10日(土)

●「国をしっかり運営できるのは自民党だけ。この国を想い、この国を創る」。「日本人には力があるんです。まっすぐに」の民主党。遠山の金さんを登場させてマニフェストを解説する公明党。「憲法9条を生かす日本を作ります」の共産党。年金問題、護憲を唱える社民党。参院選の各党のテレビCM…▼古代ローマの役員選挙で、家の壁に書かれた「有能なAを監視官の位につけよ」「Bに投票しなければ、ロバに乗せて引き回す」のスローガンが、世界最古の“選挙ポスター”と言われている。政策の訴え、顔の売り込みは昔も今も基本的には変わらない▼しかし、国民が一番知りたいマニフェストを、事務所の片隅に数万部も放置したままの陣営もあるという。マニフェストは政策内容や達成期限、数値目標などを示した公約集。比例代表候補に未配が多いのは、名前や顔のPRに役立たないということなのだろう▼年金問題などで政治不信が加速し、シラケムードが漂っている中での参院選。函館は過去6回の国政選挙で全道最低の投票率。だが、渡島・檜山管内の17町村が投票締め切り時間を1時間から4時間も繰り上げる。それでも変わらないという判断かもしれないが、投票率の行方は大きな懸念材料…▼五稜郭に入城した榎本軍は元首(総裁)を選挙で決めていた。函館は選挙制度の発祥地。なのに、近年の選挙でも投票率は最低ランク。棄権は決して政治参加の一つでない。参加は投票所に足を運ぶことから始まる。「有権者もいろいろ」は単なる開き直り。11日には必ず投票しよう。(M)


7月9日(金)

●家庭で“親父”の存在感が薄れた、と言われて久しい。その流れは会社人間という言葉が登場し始めた時期と重なる。仕事優先で、毎日のように帰りは遅く、食事も一緒でなく…。休みの返上などは序の口。それが当たり前、確かにそんな時代があった▼しかも、たまに家にいる時は、テレビばかりでは父親の威厳もどこかへ。会話もなければ、きちんと怒ることもしない。さらに子どもの学校の役員など地域活動には時間がないと言い逃れ。結局はあれもこれも母親任せとなって…。思い当たる人が多いに違いない▼父親と地域社会との距離は開くに開いて、今や「このままでは」という現実に。数年前、函館に誕生したPTAの父親組織もその一例だが、腰を上げた象徴的な存在が「おやじ日本」。まだ馴染みは薄いが、「子育てに親父パワーが必要」と、6月末に結成されたばかりの父親全国組織である▼合言葉は「おやじ、出番だ!」。目指すは父親の威厳復活であり、社会における父親のアピール。ちょっと大げさでは、と受け止める人もいようが、冷ややかにみるのは早計。何せ東京で開かれた結成大会に18都道府県から500人近い父親が集まったというのだから▼自分の子どもを育てる責任を担うのは、学校や地域でなく、親であり家庭。その家庭でどれだけ父親としての役割を果たしてきたか、「おやじ日本」の結成はその一つの問いかけ。「子どものつぶやきに耳を傾けよう」「学校や地域へ足を運ぼう」。幾つか挙げられたアピールが、今まで何が欠けていたかを教えている。(H)


7月8日(木)

●プロ野球界が揺れている。近鉄とオリックスの合併話が急展開して1カ月。過去にも球団の売却などがあったが、今回の合併劇に違和感を覚えるのは「球界、各球団にファン、選手あってのプロ野球」という最も大事にすべき視点が欠けているから▼戦後長きにわたって、少年あこがれのスポーツと言えば野球。今もそうだが、将来の職業を聞かれて、プロ野球選手、との答えの多いことが物語っている。小学生から中学、高校、そして大学、社会人野球と出来上がった構図が、今日までのプロ野球を支えてきた▼敢えて過去形に表現したが、ここ数年、その隆盛に陰りが指摘されている。観客数の減少に悩む球団があるほか、人気球団でもテレビの視聴率はダウンしたり…。今回の合併劇もその延長線の話と言えなくもない。いつの間にか競技人口はサッカーに追いつかれている▼今、球界が真剣に考えなければならないのは、この現実のはずだが、今回の合併劇から透けて見えるのは、球界の思惑であり、各球団の損得勘定。経営の問題と開き直っている、としか映らない。長年、球団を経営してきた企業の社会的責任、球界の良識はどこに…▼伝わってくるのは自分の球団にとっての都合だけ。買収話もあるのに、そろって無視して、ともかく急げ急げ。一連の拙速行動がそれを物語っている。大事なのは経営本位であり、球界の将来などは二の次。この合併劇からは、そんな姿がくっきりと浮かぶ。ここまでくると、もう…。「ファンあってのプロ野球」という言葉も使ってほしくない。(A)


7月7日(水)

●東京へ出張する度、気づくことがある。やたら人が多いとか、高層ビルの建設ラッシュが続いている、などは否応なしに目に飛び込んでくる図だが、意識して発見する変化も多々。最近、意外な場所が広告に使われていることに気がついた▼ビルの屋上、線路沿いなど、都心部はさながら広告だらけ。そのほとんどは場所貸しの商売であり、開いている所は既に最大限活用されている。素人目には新たな場所なんて残っていない、と映るが、気づくのが遅かったか、それは二つの活用例だった▼一つはJR新橋駅の改札口に降りるホーム上の階段壁面であり、もう一つはモノレール浜松町駅のエスカレーターの手すり。駅の階段壁面はコンクリートのむき出しが多く、確かに味気ない。それにしても…。借り手がいて、金になるのなら使わない手はない、ということか▼エスカレーターの手すりも然り。「東京に広告媒体にならぬ 所なし」と変に納得してしまうが、ホテルで開いた新聞には、上野動物園で「動物の案内板に企業広告を入れることに踏み切る」という記事。ちなみに人気者・パンダは294万円の値がついていた▼結構高い感じもするが、人出が多く、しかも老若男女が訪れる場所であり、広告効果が期待できるから。是非論もあろうが、こんな光景を見たり、話に接すると、東京は何と貪欲な所かと思えてくる。「活用していない場所を探せ」。恐らく今も新たな“媒体”探しが続いているに違いない。(H)


7月6日(火)

●天の川をはさんで牽牛と織姫が逢う七夕。短冊に「いつでも、どこでも4人一緒に暮らしたい」と願った北朝鮮による拉致被害者の曽我ひとみさん。9日に、ついにジャカルタで娘の美花さん、ブリンダさん、夫のジェンキンスさんと再会する▼ジェンキンスさんはベトナム戦争のさなかに脱走したとされる元米兵。この数奇な運命は、北朝鮮の日米に対する外交カードに利用された。ブッシュ大統領は「家族が暮らす場所が日本でなければダメなのか。愛があればどこでもいいじゃないか」との趣旨の発言をしていたが、訴追問題には触れていない▼蓮池さん、地村さん夫妻の子供たちの帰国が決まった時、「5人とあまりにも違う立場。悲しさの海を彷徨(さまよ)っていた。1人では、どうしようもない現実。でも、母親として妻として娘としての役割を、愛情もって果たしたい」と、悲しみをこらえて手記をつづった▼インドネシアの代表的な花・ジャスミンが香る異国の地での再会。ジャスミンの花言葉は「温和・愛敬」「あなたと一緒に」。キリストが亡くなった夜、他の花たちが悲しんで花を閉じたが、ジャスミンは葉だけたたんで、悲しみと苦痛に耐えていたという。どこか曽我さんの姿と重なる…▼曽我さんの七夕は、愛別離苦から1年9カ月後の9日だ。草木もなびく佐渡島で家族4人が暮らせるように、3人をじっくりと説得してほしい。ブッシュ大統領は曽我さんに「同情」を表明したとも言われるが、「同情なんかいらない。訴追問題を黙認してほしい」が本音だろう。(M)


7月5日(月)

●「老後をどう生きる」。一定の年齢がくると誰しもが抱える人生テーマだが、その答えはなかなか難しいようで。現役時代から老後も継続できる趣味でも持っていたならともかく、仕事一筋、いわゆる会社人間として生きてきた男性となると…▼平均寿命が60歳代や70歳代だった時代と違って、今は現役を退いた後の老後期間は短くない。仮に65歳まで働いたとしても、まだまだ先は長い。だから、このテーマが重くのしかかってくるのだが、50歳代も後半に入ると、まだ先のことだから、とは言っていられない▼だが、生きがいを見つけるのも容易でなければ、付き合いにも不安が。生命保険文化センターが以前、首都圏で働く30歳以上のサラリーマンを対象に行った「老後の人間関係」に関する調査結果からも、その姿が読み取れる。こう思っているが、どうかな、というニュアンスで▼例えば…。63%が「現在の人間関係を深めたい」と思っているが、「深まると思う」と言い切った人は34%。また、71%が「新しい人間関係を広げたい」と考えていながら、59%までが「広がるとは思わない」と答えている。この思いと受け止め方の差は男性の方が大▼老後における夫の妻依存、妻の夫離れがよく言われるが、人間関係を深めたい相手、にもそれがはっきりと。子や孫は二番目で一緒だが、一番に男性は配偶者を挙げているのに対し、女性は幼なじみ・学生時代の友人。老後の現実が透けて見える、この調査はそう警告しているのかもしれない。(A)


7月4日(日)

●「絵手紙」。はがきに大きな絵と文字を書いた手紙だが、特徴は決まった書き方や形式もなければ、下書きも、手本もないこと。自分が感じた思いを感じたまま表現する伝達手段であり、「下手でいい、心を込めて書いたものは相手の心を打つ」が、その精神▼パソコン文字が当たり前の現代、手紙やはがきにしても印刷されたものが多い。そこから伝わってくるのは儀礼でしかないが、絵手紙はほのぼのとした“温かさ”を感じさせてくれる。人気の理由はそこにあるのだろう、全国的に愛好者の輪を広げている▼函館・道南も然り。千人を超す人が親しんでいると推定されている。その絵手紙が函館に紹介されたのは1994(平成6)年。指導者として今も東奔西走している北出喜代彦さんが、当時あった北浜湯で開講した教室が最初と言われている。それから今年で10年に▼関係者は記念事業として講演会(7月23日)を計画している。講師に迎えるのは、絵手紙創設者として知られる小池邦夫さんで、7月1日、山梨県の忍野村に小池邦夫絵手紙美術館がオープンする絵手紙界の第一人者。40年の絵手紙歴が語らせる奥深い話が期待される▼本紙は創刊直後から月2回ほど最終面カラーで作品を紹介している。それは「殺伐とした時代だからこそ、絵手紙の持つ“温かさ”を、多くの人に知ってほしい」という思いから。時代がどう変わろうと、手作りに勝るぬくもりはない。絵手紙の存在は大きくなっても小さくなることはない、そんな思いがする。(A)


7月3日(土)

●ワイドで切れない波で水量もたっぷり。そこへセットが入って炸裂の予感。ドルフィンも意味がなさそうなので、スープに押し流されようと思ったが、まんまと捕まり洗濯機。するともう1本…。板が離れて、浮かない。本当に死ぬかと思った(あるサーファーの体験)▼長く伸びた防波堤に3人の男性。先月下旬の台風、テレビに映し出された映像。高波が堤防を洗う。3人は高波を受けて何回耐えられるかという「肝試し」をしていたらしい。2回、3回と耐えたようだが、次の巨大な波に足元からすくわれて、海に飲み込まれた。なんと無謀な挑戦▼「さざ波」や「いそ波」などでの海水浴は楽しいが、台風や低気圧によって起きる「うねり」は危険だ。専門家は、寄せる波は12回目に最も大きくなり、3―4階のビルの高さになると解説していたが、子どもの頃、波は7回あって「最後の波」に気を付けろと教えられたことを思い出す▼海水浴による水死は全国で年間200人以上。特に「離岸流」には注意が必要。離岸流は秒速2bの速さで、水泳選手もかなわない。沖向きの流れに逆らって陸側に泳ごうとして力尽きてしまう。巻き込まれたら横に泳いで流れから早く脱出することが肝心。海底は常に変化しており、深みにもはまらないことだ▼札幌では約220の団体や企業が参加して「サマータイム」がスタートした。昨年は「冷夏」だったが、今夏は海水浴日和が続きそうな予報。離岸流など波のメカニズムと天気予報に十分注意して、怖い思いをしてまで「波乗り」などはしないことだ。きょう7月3日は「波の日」。(M)


7月2日(金)

●テレビの影響は大。子どもから大人まで、不特定多数が見ることを共有するからだが、番組を制作し、流す側のテレビ局の姿勢が問われる理由もそこにある。確かに評価は人それぞれの価値観によるが、現実に議論を呼んでいる番組があることも事実▼とりわけ番組に厳しい目を向けるのは、小中学生を持つ親。子どもに見せたくないと親が考える番組は、往々にして子どもが見たい番組、ということもあって、よけい神経質に。その姿はPTA全国協議会が行った保護者アンケート調査の結果からも読み取れる▼そこから推察するに、親が抱いているのは「テレビを見るのは悪くないが、いわゆる“ためになる番組”がもっとほしいし、見るようにさせたい」という思い。子どもに見せたい番組として、人間の生きる姿が伝わり、知識が広がる番組を挙げていることが物語っている▼調査の対象となったのは、小学5年と中学2年の子を持つ親だが、見せたい番組は、というと、実は昨年とほぼ同じ。「ニュース番組」をはさんで、「どうぶつ奇想天外」「その時歴史が動いた」「伊東家の食卓」「地球!ふしぎ大自然」「世界ふしぎ発見!」などが上位に▼ちなみにトップランクは、仕事を通して生きる姿を描く人間ドラマ「プロジェクトX」だった。逆に、子ども側の見たい番組も知りたいところだが、予測できるのは、まったく違った番組がリストされるであろうこと。親にすると、だからこそテレビ局も考えて、ということになる。(H)


7月1日(木)

●7月1日は函館にとって大事にすべき日。何のことか、と首を傾げる人が多いと推定されるのが残念だが、函館港の開港記念日だから。長崎、横浜とともにわが国最初の貿易港として開港したのが1859(安政6)年。それから145年になる▼函館港は湾の形状から、穏やかな“天然の良港”の代名詞をいただく。当時から物流拠点としての機能を有し、その後も北海道の人的、物的交流の拠点港としての役割を担った。港の賑わいは関連企業の立地を促し、函館地域の歴史は港の存在抜きに語れない▼それを裏付けるかのように函館市の「市勢要覧」の略年表には「高田屋嘉兵衛、辰悦丸で箱館に来航」に始まって、港に関する記述が多々。今日まで地域を支えてきてくれた港に感謝しなければ、と制定されたのが開港記念日。70年ほど前の1935(昭和10)年だった▼戦後の1951(昭和26)年には重要港湾の指定を受け、存在感を高める時代がしばらく続いたが、時代の流れというか、陰を落としたのが長年、依存してきた北洋漁業の衰退や青函連絡船の廃止。商業港としての整備の遅れも重くのしかかり、厳しい環境に…▼その中で水深12メートル、14メートル岸壁が完成した。遅ればせながらで、しかも荷揚げなどの付帯施設の整備が残っているが、ハードは整いつつある。とすると残る問題は新たな利活用策。これまでに増して地域の努力が求められる。「港の歴史を振り返り、港の未来を考える日」。開港記念日の制定意義を今一度、思い起こしたい。(A)


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