平成17年10月


10月31日(月)

団塊の世代で遺言を具体的に考えている人は少ない。自分の死後に身内でもめ事を起こしてほしくない、だったら遺言をしたためておくべきと言われるが、50歳代では「そんな財産はないよ」「まだ考えるには早い」ということだろう、具体的にはまだの域▼遺言に早すぎはない、そんな話も聞くが、確かに金融機関や信託銀行などの窓口での相談は増えている、そんな話も耳にする。ただし、それはある程度の年齢の人ということかもしれない。やはり50歳代では、というのが一般的な思いだが、それは調査結果からも▼冠婚葬祭互助会の(株)くらしの友が、首都圏などの55歳から58歳までの男性を対象に行った調査結果に、それがうかがえる。ちなみに最も多かったのは「今は考えていない」という答えで60%。そして「既に準備している」人は12%、「残したいと思うが」が11%▼逆に「残すつもりはない」と考えている人は17%。70歳代になると、この率も大きく変わるに違いないが、啓もう手段としての遺言川柳が結構な人気。UFJ信託銀行が3年前から手がけており、先日発表された今年の特選作は「遺産分け 不思議な人が席につく」▼さらに「一筆が 火種となるか輪となるか」「書くたびに だんだん人が見えてくる」(入選)「遺言書 開封までは仲が良い」(佳作)なども。遺言はないより、あった方がいい。誰もがそう思っているが、その前段で問われるのは財産を残すかどうかの判断。となれば、遺言も定年年齢で考えて当然と言えなくもない。(H)


10月30日(日)

函館の12月といえば「クリスマスファンタジー」。今年も12月1日から25日まで開催される。冬の観光イベントとして脚光を浴びて8年目。「市民の手で支えよう」。新たな取り組みとしてボランティア組織「クリファンクラブ」の結成が提案されている▼イベントを創出するのは大変なこと。ましてや地域を代表するような規模ともなるとなおさらだが、さらに難しいと言われるのが継続させていくこと。1年目は試行錯誤で、2年目も頑張れる。だが、3年目あたりからは往々にして「支えがなければ厳しい」と…▼クリスマスファンタジーが一つのモデルと言われる理由もそこに。色々な意見はあるが、函館青年会議所が打ち出し、基礎を造った後、観光団体などと連携する形を整えた。大変ながら、それが継続の“力”となった。ただ、ボランティアの広がりだけはいま一つ▼会場の案内やグッズの販売、会場の装飾作業、さらには警備など、現場で活動してくれる人が足りない。「あなたも一緒にやりませんか」。考えたのが協力者の呼びかけである。どのぐらいの人が参加してくれるかだが、今後の支えになることは確か▼見方を変えると「クリファンクラブ」は、地域へのメッセージ。あらためて言うまでもなく夏の野外劇と同様、ファンタジーは市民が生み出した函館の貴重な財産。「全国には異国情緒あふれ、夜景の美しい街はありますが、函館にはクリスマスツリーが一番似合う雪があります」。あと1カ月ほどで今年もその日がやってくる。(H)


10月29日(土)

「来年度から2年間、月給を10%、手当を15%減額する」。さらに職員の削減と合わせ、道が思い切った経費の削減案を打ち出した。それほどまでに道の財政が追い込まれた状況にあるということの証しだが、道民にすると、賛意と同情の思いが交錯する話▼このままでは歳入が足りず、財政再建団体に転落するとは再三、聞かされてきた話。実際に今後2年間で1800億円の不足が見込まれている。財政再建団体になると、国の指導が強まり、さまざまな制約を受ける故、自主性を保つためにも回避の努力は最大の命題▼過去の例をみると、まず求められるのが職員の削減と給与の減額。今か後か、いずれにせよ避けられない環境にあるということだが、道が今を選んだのは当然。ただし、悩み抜いた末に出した、苦渋の決断だったことは容易に推察できる。それだけ重い提案内容と思うから▼民間なら業績が悪ければ給与の削減なんて当たり前のこと。10年ほど続く不況で現実に味わってきている人が少なくない。だから、公務員も財政事情が厳しい時の削減は当然、と思われて不思議はない。それでなくても北海道では“恵まれた存在”と映っているから▼そうは言っても、最初からならともかく、途中で減らすとなると、平常心でいられないのも人間。41歳平均で年間100万円もの減となればなおさらのことで、その辛い思いは察するに余りあるが、だからと言って、このままというわけにも…。ほこ先は道議にも向けられて当然。いつ返上話が出てくるか。この職員に対する提案は、思い切った定数の削減を含めて、その姿勢を問いかけている。(N)


10月28日(金)

「学力、思考力の原点は国語にあり」。この説に異論を唱える人はいまい。読む力、意味を理解する力がないとしたらどうなるか、答えは言うまでもない。その力を育(はぐく)むのが国語だが、小学生から大学生まで、その国語力に疑問符がつけられて久しい▼カナに始まり漢字を覚え、文章を読み意味を理解する。そればかりでない、どう表現し伝えるかということまで。問われる意味を理解できるか否か、他の教科を学ぶにも国語力はついて回る。国語の力がある子どもは他の教科の成績もいい、と言われる理由もそこに▼ところが、現実は、というと、国語のレベルは下がるばかりのようで、決定的なのは漢字の覚え、語いの少なさと意味の誤認識。とりわけ大学生の実態は憂慮される状況という。日本漢字能力検定協会の調査結果を、10月初めの朝日新聞は報じていたが、確かに…▼難易度をつけたとはいえ、正答率が最も低かったは大学生だった、というのだから。国語の力がなくて困るのは“学校時代”ばかりでない。悩むのはむしろ社会人になってから。漢字はパソコンが選んでくれるが、それが正しいかどうか、の判断まではしてくれない▼誤字、脱字が目につく文章では評価が半減する。読解力ばかりか、正しい記述、文章力はにわかに備わるものでない。だから国語をないがしろにしてはならない、と言われるのだが、ここまでの現実を突きつけられると、大学入試で国語は別格扱いとして基本的な力を問うことも考えた方がいいのでは。そうも思えてくる。(N)


10月27日(木)

夏目漱石の「こころ」や片山恭一の「世界の中心で、愛をさけぶ」…。今年の「心が揺れた1冊の本」のベスト10の中で、読んだのは恥ずかしながら2冊だった。1カ月まったく本を読まない大人は50%、高校生は43%といわれ、相変わらず活字離れが進んでいる▼臥牛子が孫に贈る今年の1冊は、2000万部を超える大ベストセーラーとなったネズミの「メイシーちゃん」。作者が「メイシーは普通のネズミじゃないんです。人間のように振る舞える特別な種なのです」と言い、日本版にはアルファベットと日本文字が並び、英語の勉強にもなる▼本を読んだり、読み聞かせたりするのは文化の基本。そこから子どもたちは、いろいろと掘り起こし、自分の「畑」を耕していく。30年前、子たちが見続けた「まんが日本昔ばなし」が先週から復活した。自然と共生する心地よさや安らぎを感じさせる1467話全部を再放送してほしい▼文字離れに待ったをかけようと「文字・活字文化振興法」が成立した。画面から情報を見聞するのも大事だが、自ら進んで文字・活字・絵に接して、読み・書き・考える力をつけることが、もっと大事。まず、子どもを取り巻く言語環境を視野に入れつつ図書館の蔵書充実に力を入れるという▼子どもには学校の図書館を自由に使いこなして、仕事帰りのビジネスマンには地域の図書館を気軽に利用してほしいという狙い。振興法では、表現する能力にも言及し「言語力」の概念も盛り込まれている。読書週間初日の27日は「文字・活字文化の日」。子どもには感動する本を読ませよう。(M)


10月26日(水)

森の再生に「民」が大きな役割を担い始めているが、それは函館・道南でも。植樹一つとっても「官」主導の時代から、「民」に協力を求めて行う時代を経て、今や「民」が…。自然を守る、再生するといった視点では、全国的にそう言われる▼函館・道南の代表格は、函館市と七飯町の境界を流れる蒜沢(にんにくざわ)川の河畔林再生事業に取り組むNPO法人「北の森と川・環境ネットワーク」。13年計画の再生プロジェクトに取り組んでおり、その活動については本紙でも何度か報じている▼JR北海道などが手がけている大沼公園の森づくりも期待される動き。さらに注目されるのが近く発足するNPO法人「北海道に森を創(つく)る会」。というのも、トラスト運動(寄付や買い取りした荒廃地での植樹などを手がける運動)による森づくりを打ち出しているから▼中心になっているのは、道庁で林務畑の経歴を持ち知事室長、十勝支庁長などを歴任した道南出身の元幹部。全道的な運動として考えているが、その拠点となるのが亀田中野町に取得した民有地(5ヘクタール)。植栽の場としてはもちろん、苗木を育てる場ともなるという▼「確かに理解は広がった。でも、まだまだ…」。いわゆる専門家から、失った森の損失の大きさ、再生の難しさを聞いたあと、こんな感想が漏れたのを覚えているが、必要なのは理解の輪の広がり。取り組むNPO法人は紛れもない先導役であり、その活動は地域として敬意を払うに値する。せめて、この認識だけでも大事にしたい。(N)


10月25日(火)

現代病という言い方があるのかどうか、あるとすれば「アレルギー疾患」はその範ちゅうに入る一つ。幾つかの病名を総称した呼び方だが、例えば、と聞かれて頭に浮かんでくるだけでも幾つか。アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくや花粉症など▼そもそもアレルギーとは、体内で不都合な反応が起きること。近年、春になると大問題になる花粉症も吸入によって体内に入った抗原に対する体の反応だが、体質の変化か、食生活なのか、今や国民の3人に1人が何らかの症状を抱えている、といった報告があるほど▼生活環境も無関係とは言えず、治療に時間がかかる病気。都会から田舎への転居療法を選ぶ例も珍しくない。その中でも特に深刻と言われるのが「ぜんそく」。アレルギー疾患で亡くなる人のほとんどが「ぜんそく」とも言われ、2年前の統計では年間の死者は3700人▼かなりの数の人が悩み、辛い思いをしているのに、医療の体制、専門医院の数となると…。十分でない実情に厚生労働省がようやく腰を上げた。9月初めの朝日新聞が報じていたが、ぜんそく死をなくすことを目標に、来年度から5カ年計画で総合対策に取り組むという▼その柱として考えられているのが、病院ネットワークによる診療体制の構築と患者カードの普及。ハードとソフト両面からとも言えるが、具体的には全国370カ所(2次医療圏)ごとに専門病院を決めることなど。遅ればせながら、の感は否めないが、ここは期待を込めて一歩前進と受け止めたい。(H)


10月24日(月)

市電通りをはさんだ大門広小路に並んだ30軒ほどの屋台。赤ちょうちんに裸電球、木製の長い腰掛け。5、6人が肩を寄せ合って。おでん、うどん、ラーメン、イカ、カンカイ、タラ、スルメ…。北洋漁業華やかな時代、商いの原点ともいわれる屋台はにぎわった▼屋台村は今や全国的なブーム。その大門に、かつての商売繁盛を取り戻そうと「大門横丁」が誕生した。にぎわいの創出と起業支援、商店街の空洞化対策などを目的に造成された東北以北最大の規模。函館名物のイカと塩ラーメンなどを提供しようと26店舗が軒を連ねる▼先ごろ、中国で世界最古のラーメン(アワとキビの粉)が発見されたが、記者として駆け出しの頃、臥牛子が大門広小路で食べた塩ラーメンはネギと焼きふを入れただけのシンプルなものだった。中国の宇宙飛行士が持っていった「イカ団子」のようなツマミも人気があった▼誕生した屋台村は、函館が水道発祥の地らしく古式の水道栓や当時の電柱も立つレトロ調。昔の屋台と形態は違って、家族連れなどがターゲット。アジアン料理に、カニピザ、クジラのウネス炭火焼き、マグロのかぶと焼き、男爵のグラタン…。さらに初恋のカクテルも出る街角のとまり木▼先輩格の帯広の「北の屋台」は、1カ月の来客数が1万4000人を超え、市街地の空洞化にも歯止めをかけているという。湯の川観光ホテルの「らーめんブギ」も頑張っている。23日は冬の足音が近づく「霜降」。ガゴメを使った温かいメニューも食べてみたい。大門再生の原点。市民の応援も求められている。(M)


10月23日(日)

新聞社には毎日、さまざまな電話がかかってくる。取材の要請もあれば、記事の問い合わせ、さらには苦情。まれに「聞いてほしい」というのもあるが、数日前にも…。ある新聞が報じていた記事を読んで抱いた思いを、どこかにぶつけたかったのだろう▼残念ながら名乗ってくれなかったが、その記事とは…。道議欠員による渡島支庁区の補選のために道が選挙経費として約1億5000万円を専決処分した、という記事。一般的な印象としては多額に映るが、この人は金額の多寡を言わんとしたわけでなかった▼要は財政難の時代にこれほど多額の金をかけてまで行う意味が補選にあるのか、ということ。法的に決まっていることも承知し、説明が必要ないほど分かっているのだが、どうしても割り切れないのだという。そのお金は他に使った方が有意義である、とまで口に…▼どうやら根っこにあるのは、政治というか政治家に対する不満。よく言われる「選挙の時だけ」という思いも強いようだった。答えに窮したのは、次の一言。「今、2人欠けていたとして何の支障があるのか」。仕方ないか、の言葉で終わったが、何とも複雑な思いが残った▼というのも、それは議員への強烈な警告とも思えたから。日ごろ期待に応える姿を見せていれば、こんな思いを持たれることはないはずである。厳しい声だったが、素朴な疑問とも感じられた。ともあれ補選日程は11月11日告示、20日投開票。2議席をめぐって既に3人が立候補の準備をしている。(H)


10月22日(土)

「切ると落ち着く。血を見ると悲しみも怒りも癒される。切ることだけが楽しみ」。リストカット、アームカット(自傷行為)。カッターやカミソリで手首や腕などの皮膚を切りつける。自殺ではない。小学生高学年に始まって20代前半でエスカレートすると言われる▼漫画でリストカットを知った少女。実力テストの結果を親になじられた夜、カッターを腕に押しつけたら心が静まった。いじめられ級友に無視された少年は腕のカットの傷跡をリストバンドで隠す。「先生、切っちゃった」と保健室に飛び込み「切るとほっとする」と言う女子高生▼先ごろ、著書「夜回り先生」で非行少年や薬漬けの子どもたちの実態をつづった水谷修さんが、上磯町と森町で講演した。「恐ろしい勢いで中高生の間でリストカットが増えている。学校や家庭で厳しい言葉で責められ追い詰められて、深夜、自室にこもり…。救いを求めるSOSの合図なのです」と訴えた▼児童がカッターナイフで級友の鉛筆を切り刻んで、切れ味をみせびらかす。教師に悪態をつく。文科省によると、昨年度「キレた小学生」は前年を18%も上回って過去最悪に。もちろん、リストカットとは違うが、問題行動であることは間違いない▼友だちや親の前では「明るい子」「いい子」でも、怒りや悲しみを言葉で表現できず、ついリストカットに。米国では2000万人、日本では数十万人とも。「早くSOSに気づいて、子どもを抱きしめ、一緒に泣いてやってほしい」。水谷さんの問いかけに同感だ。(M)


10月21日(金)

補助金とは、字が表す通り「不足しているところを補い助けるためのお金」だが、一般的に認識されているのは国や自治体が民間団体などに対し「事業費の一部を」という場合の用語として。その補助金をめぐっては、使われ方がよく問題にされる▼目的に沿って使われていない、というのが代表格だが、現実に疑義を指摘されることが少なくない。総務省が行政評価の一環として行った調査結果が先日、公表されたが、抽出調査したわずか四つの補助金だけでも「不必要」と判断された金額が約5000万円、と▼財政難の時代なのに、一言で言うと、ざる状態。学校プールに降る火山灰を除去する装置がだぶって入っていたとか、さらなる問題は目的外の使用というか流用。講演会を開いたことにして講師料を、また臨時職員を採用したことにして会合費などをねん出していた例も▼この程度の調査規模で、これだけの問題が表に出たということは…。帳簿類、報告書類だけの検査、確認業務では抜け道だらけということだろう。たとえぼう大な数だと弁明しても通らない。公金なのだから。遅きに失した感がある★が、見直し論議が高まっているのも当然▼「補助開始からかなりの年が経過し固定化したものが多い」。よく聞くが、それは審査がいかに甘いかという指摘でもある。要は補助金問題の根はそれぐらい深いということ。ある識者が言っていた。「補助金の見直しなくして財政再建はない」。この調査結果もそう語りかけている。(N)


10月20日(木)

「地域貢献」「地域連携」。今の時代、大学が模索するコンセプトの言葉。言い変えると、大学の存在感を示す、いわば生き残り戦略だが、その動きは函館でも。産学官の新しい体制は、企業との共同研究や公開講座の開設などを促している▼産業技術など研究開発面では既に幾つかの成果が報告され、さらに今年は地域の全高等教育機関による共同公開講座を展開中。「食」をテーマに、大学や高専などが持ち味を生かしたテーマを考えて臨んでおり、最終はこの29日。加えてもう一つ注目される取り組みが…▼本紙も先日、報じたが、それは函館雇用創造促進協議会と函館大学による「函館・精鋭塾」。厳しい地域経済の中、様々な課題を背負う企業経営。どう生き残っていくか、どう新しい道を拓(ひら)いていくか。何かのヒントをつかんでもらいたい、新規開設の意義はそこに▼「自営業者、企業後継者らに経営のノウハウを学んでもらう場」であり、経営者への学ぶ機会の提供。官と学が経済界に放つ一種の刺激剤との見方もあるが、聞いて、議論して、そこから何かを…。それに応えるため著名な経済人など多彩な講師陣をそろえている▼受講は無料で、定員は15人。11月5日から来年3月25日まで間、全18回予定されているが、今年は3年計画の第1期。あらためて言うまでもない、地元に居ながら経営感覚を研ぎ澄ますまたとないチャンス。定員を上回る応募を期待したいが、どんな答えになるか。関心の目はその点にも向けられる。(H)


10月19日(水)

ごみは持ち帰ろう、ポイ捨てはしないように。いわゆる“環境マナー”が叫ばれて久しい。ほとんどの人が社会常識と認識しているはずなのに、現実はそうなってはいない。以前に比べて良くはなった程度で、なおも啓蒙(もう)と後始末が必要な状況▼街中然り、観光地然り。函館でボランティアや高校生らによって毎年、海岸などの清掃が行われるのも、捨てられる量がいかに多いかの証しだが、一人が捨てる量はそれほどでなくても何百人、何千人ともなると膨大な量に。その処理は決して容易なことでない▼対策として自治体は条例で規制する。北海道でも例えば北海道空き缶等の散乱防止に関する条例(2003年2月施行)などがあるが、求められているのは現実的な施策。その事例として注目されているのが、根室管内羅臼町が考え、実行に移した有料ごみ袋のみ回収する方式▼人の入り込みが多ければ多いほど、ごみの処量は増え、その費用負担はばかにならない。どうしても持ち帰りたくなければ「指定したごみ袋を買って、帰りには決められた場所に」という問いかけ。回収も楽、費用もねん出できる、というわけで、今年から採用された▼来年は網走管内斜里町も加わり、知床方式としての定着を目指している。そんなことをする必要はない、という状態が理想だが、残念ながら現実はそうなっていない。紛れもない次善の策。それにしても、世界自然遺産に登録された地でごみの心配とは…。“環境マナー”のレベルは、まだこの程度、と認めるしかない。(N)


10月18日(火)

原油価格の高騰はガソリンなどの価格にはね返り、高値安定の状況。レギュラーで1リットル130円レベルは高い。といって石油業界を責めたところで、原油高、という事情の前に解決策は生まれてこない。となれば、あれこれ自衛策を講じるしかない▼その一つとして提唱されているのが「エコ・ドライブ」。言葉の響きから思い当たるだろうが、要は省エネ運転・省エネ管理。ガソリン代を節約できて二酸化炭素の排出量削減にも貢献できる一石二鳥策だが、東京都では実践者を評価する制度の創設が検討されている▼地球温暖化の主原因とされる二酸化炭素排出量。わが国では年間ざっと12億5000万トンが出され、その約20%は自動車と言われている。毎日動いている自動車が、それぞれ少し注意するだけで、消費量は減って二酸化炭素の排出量が確実に減少する。問題はどう実践するか▼何も難しいことではない。例を挙げると、不要なアイドリングはしない、暖機運転はしない、夏のエアコンは1度でも高めに設定する、急発進や急加速はしない、タイヤの空気圧を適切にする等々。誰でも簡単に出来ることであり、別に準備の必要もない▼インターネットには「あなたのドライビングは環境に優しいですか」という診断もある。高値感のガソリン価格は「エコ・ドライブ」を認識する機会、と教えるメッセージとも受け止められる。嘆く前に考えよう、特にマイカー族は…。社会貢献できる自衛策はそうそうあるものではない。(H)


10月17日(月)

優れた郷土史研究者(団体)をたたえる神山茂賞の、今年の受賞者に大野町文化財保護研究会(木下寿実夫会長・会員70人)と函館産業遺産研究会(富岡由夫会長・会員57人)が選ばれた。文化財の保存や歴史の掘り起こしに尽力した功績が評価されての受賞▼もう少し詳しく説明すると…。大野文保研は1972(昭和47)年の発足以来、大野町内の学術的価値ある史跡・史料の調査、保存活動に努めており、1996(平成8)年に組織された函館遺産研は、船大工道具の収集整理、函館山の要塞調査などで知られる▼神山茂賞は1989(平成元)年に函館文化会によって創設された。その神山茂という歴史に残る人物だが、1893(明治26)年に函館で生まれた教育者。その傍ら昭和10年代に函館市教育史年表を作成、退職後は地域の歴史などの研究に当たった郷土史家▼函館の経済界に君臨した人を取り上げた「漁業と堤清六」「高村善太郎伝」「平田兵五郎伝」などの著者でもあるが、「函館市史資料集」「函館教育史」も手がけたことの評価は大。当然ながら函館文化賞(昭和28年)に輝くに値する業績で、その名は今に生きている▼「郷土史の研究に精魂を打ち込んだ函館市史編さんの先駆者」。ある書物ではこう紹介しているが、「後世の記憶に」と設けられたのが、ほかならぬ神山茂賞。その精神は今年の受賞団体などに受け継がれているが、地域のために一層の活動を…。この賞には、そんな期待のメッセージが込められている。(H)


10月16日(日)

「高齢者」の定義が揺らいでいる。それだけ長寿社会になったということだが、もはや65歳には違和感が。その思いは各種の調査からもうかがえるが、昨年秋に内閣府が行った調査(対象60歳以上)でも65歳でいいと考える人は20%を割って少数派▼満65歳以上の人が高齢者と位置づけられて20年余りになる。そのバックボーンは国連が1982(昭和57)年に開いた高齢者問題世界大会で示した定義。その時、高齢化社会とは満65歳以上の人が7%以上、高齢社会とは14%以上、と線引きされた▼2000年で17・4%。わが国は既に高齢社会に入っているということだが、振り返ってみると、戦後、復興の道を歩んでいた1960年(昭和35)年は5・7%。その20年後でも9・1%だったが、さらに10年後の1990年になると12・1%…▼その率は高まるばかりで、2010年の予測では実に22・5%。今の位置づけだとほぼ4人に1人が「高齢者」と呼ばれる時代は現実に近い話。自分では年より若いと思っている人は多い。平均寿命も伸びている、この際、その線引きを見直したら、という問題提起があって当然▼内閣府の調査でも意識変化がはっきりと。65歳以上でいいが14・0%に対し、70歳以上派が46・7%、75歳以上派が19・7%。70歳以上がほぼ半数を占め、5年前の調査に比べ75歳以上派の増加も目立つ。これは満65歳以上では若すぎるというメッセージ。検討の時期は既に熟している。(A)


10月15日(土)

実るほどにこうべを垂れる稲穂。「稲を束ねるのが難しかったけど、収穫した米の試食会が楽しみ」。稲作体験会で上がる子供たちの歓声。そこには人生の実りの秋を重ねて学ぶ感性が同居する。ところが、今年は記録的な豊作が見込まれ、過剰米の心配が出てきた▼全国の作況指数は102。北海道は全国トップの「109」で15年ぶりの「良」。渡島は108で収穫量は戦後3番目、桧山は110で戦後最高の収穫量が予想される。ただ、問題はこの作況指数が101以上となれば、過剰米扱いになること▼受給バランスを調整する国の過剰米対策が初めて発動される公算が強まった。今年の1表(60キロ)の生産者の手取り価格は1万円だが、くず米を含めた過剰米になると1表6000円…。道内の過剰米は約5万トンになると推測されている▼先ごろ、道南育ちの新品種「ふっくりんこ」が発売された。「きらら397」などに比べ「粘りと柔らかさ」が特徴で好評だという。中越地震で被災した「魚沼産コシヒカリ」が東京浅草で全国で初めて販売されたという話があったが、「ふっくりんこ」も負けじとPRしなきゃ▼日本人1人当たりの消費量は半世紀で半分に減ってしまった。米の1粒に、作った人の苦労が宿っているから「ご飯は最後の1粒まで食べよ」と教わったものだが、消費拡大にもっと新メニューを開発することも必要。過剰米対策が米作りに対する農家の意欲を低下させることにしてはならないのだから。(M)


10月14日(金)

「環境税」に賛否両論あり、合意の域には達していない。内閣府が行った地球温暖化対策に関する世論調査の結果だが、その裏に透けて見えるのは、新たな負担に対する抵抗もさることながら、本当に目的通り使われるのかどうか、といった不信感▼温暖化が原因とみられる災害の発生が指摘されて久しい。地球環境の歯車は狂い始めているとも言われ、不安は増す一途。1年前の読売新聞の世論調査でも9割が「将来に不安を感じている」と答えているが、現実問題として国際社会から二酸化炭素排出量の削減を強く求められている▼対策は不可欠、内閣府調査でも地球温暖化防止など環境施策は必要と考えている人は多い。問題はそのための財源ということだが、別途に考えるべきとして税制論議の中で浮上したのが「環境税」。経産省などは慎重論を唱えているが、依然として検討そ上に乗っている▼ただ、国民の側でも税の新設となると話は別で、賛成が25%に対し、反対は32%。注目されるのは反対の理由だが、家計の負担が増えるはともかく、ずしりと重く響くのは「政府によって無駄に使われるかもしれない」と思っている人が、半数近い43%もいること▼環境庁が発足したのは1971(昭和46)年。それから30年後の2001年、中央省庁の再編に伴い環境省になったばかり。環境行政は遅れに遅れをとり、政治への信頼も揺らいでいる。(対策が必要と)理解はしながらも(きちんと使うかどうか)不信が先に立つ、善し悪し以前の問題として「環境税」の前途は平坦(たん)でない。(A)


10月13日(木)

経済の話は難しいという人が多いが、金融の話となると、その思いはさらに…。隔週ながら当社が日銀函館支店の山澤光太郎支店長に「函館けいざい学」の執筆をお願いしているのも、分かりやすくという視点から。既に23回、好評をいただいている▼その最新の記事(10月2日)で、山澤支店長が取り上げたテーマは「ことしは『金融教育元年』―函館における金融教育の重要性」。冒頭、こう問いかけている。「お金の役割や使い方について、どの程度、お子さんを教育しているでしょうか」。答えに窮する人が多いに違いない▼だから金融教育が必要なのだ、と。(1)ペイオフが解禁され自己責任原則への流れがある(2)金融関係のトラブルや犯罪が増加している(3)金融商品やサービスの仕組みが複雑になっている(4)容易に借金できる社会になっている、その理由として4点を挙げている▼ところが、家庭もさることながら、教育現場でもほとんど手つかずの状態。株式に対する偏見、さらには自己破産に至る人が増えている現実は、そのつけと見ることもできるが、少なくとも就職すると、否応なしに知識と判断が求められる。その時になって戸惑わないように▼子ども時代に身につけた金融知識、経済観念は社会人になって必ず生きる、という指摘に誰しも異議はないはず。だが、受験教科を優先する現実の前に、こうした基本的な部分の教育がないがしろにされてきた。「今からでも遅くはない、真剣に考えようよ金融教育を」。山澤支店長が言いたかったのも、その一点に尽きるのではないか。(H)


10月12日(水)

後を絶たないばかりか、むしろ次々登場し、被害が急増している悪徳商法や架空請求。社会問題化して久しいが、あらためて個人には認識、関係機関には対策が求められている。それほどの現実にあるということだが、函館・道南も決して例外でない▼消費者被害の相談に応じる函館市消費生活センターの統計を見ても、1999年度に受けた相談は1165件だったが、一昨年度は実に2819件。この5年間で2・4倍と急激に増えている。そして本年度も4月からの上半期だけで1815件を数える状況▼この件数にも驚きを覚えるが、根が深いのは苦情相談の多さ。一昨年度の場合も全相談の79%を占めている。同センターでは、ホームページで浴室改築工事の契約、覚えのないサラ金からの請求など最近の相談事例を紹介したりしているが、減る気配はないよう▼ちなみに直近の9月の苦情相談で多かったのは(1)心当たりのない請求等(168件)(2)訪問販売・電話勧誘(26件)(3)資格取得講座・学習教材関連(12件)など。わずか1カ月での数である。こうした現実への対処に必要なのは、迅速な情報の交換など関係機関の連携▼9月末、函館では対策組織(函館市消費者被害防止ネットワーク会議)が設立された。参加したのは市や支庁などの行政と警察、消費者協会といった18の機関・団体。もちろん鍵を握るのは消費者だが、その消費者をどう救うか。多角的な注意喚起など、この組織には大きな役割が期待されている。(N)


10月10日(月)

学生時代、試験でカンニングしてひどくしかられた覚えがある。かの夏目漱石は東大の入試で代数の問題に歯がたたず、隣りの受験生から教えてもらって合格したという話もある。先ほど、渡島管内の小学校の教頭が校長選考の論文試験でカンニングしていたことが公になった▼消しゴムや鉛筆に書き込むのは古い、紙切れの手渡しは危険だ。最近は太ももに書いてスカートで隠すカンニングもあるという。韓国では優秀な受験生が携帯メールで外にいる中継役に解答を送り、そこから他の受験生に転送するという集団カンニングが発覚、約1600人が逮捕された事件はまだ記憶に新しい▼懲戒処分を受けた51歳の教頭は、学校経営をどうやっていくかなど、予測した論文テーマを約600字にまとめ、それを横3センチ、縦9センチに縮小コピーして試験会場に。左手に握り締めているところを試験官に見つかったという▼教頭は「見ようとしたが、字が小さ過ぎてはっきり見えなかった。自分の記憶で思い出して書いた」と言っているそうだが、テストのたびに「カンニングをしてはいけないよ」と諭している立場なのに、自らするとは信じられない▼昨年、指導力不足とされる公立校の教員は全国で566人を数え、最多を更新したことが報告されている。「教育者、管理職として恥ずべきことで誠に申し訳ない」と反省しているのは当然のこと。一般教諭への降任を申し出たと伝えられているが、どんな気持ちで再び教壇に立つのだろうか。むなしさと情けない気持ちが交錯する。(M)


10月9日(日)

「『なぜ』『どうして』もっと知りたい新聞で」。複雑、多様で、閉塞(へいそく)感が広がる今の社会。政治をはじめ「なぜ」「どうして」という思いにかられることが多い。その疑問に、不満に、答えを示してほしい、そう問いかける素晴らしい標語である▼これは15日から始まる新聞週間の今年の代表標語。新聞週間の標語は時代を語るとも言われるが、この作品も然り。ラジオ・テレビにインターネットが加わった今の時代、「なぜ」「どうして」は、新聞に求められている一つのキーワードだから▼今年は58回目の募集だったが、ちなみに第1回、1948(昭和23)年の代表標語は、というと…。「あなたは自由を守れ新聞は自由を守る」。第2回は「自由な新聞と独裁者は共存しない」、第3回は「新聞は民主社会の安全保障」と、「自由」「民主」という言葉が使われている▼戦後間もなくの民主主義社会を模索する当時の姿が伝わってくるが、新聞は後ろ盾としての役割を求められていたことの証し。その後は「変革」(変革の明日へ…)「混迷」(混迷の世に…)の時代を経て、ここ10年ほど目につく言葉は「情報」「ネット」「アクセス」など▼その点、今年の代表標語には、時代背景の直接的な言葉こそないが、「こんな時代だから」というメッセージが読み取れる。同時に「なぜ」「どうして」に答え切れていないという新聞社側への忠告の意味合いも。近年、新聞力、という言葉を聞くが、今年の標語はその新聞力を問うているのかもしれない。(A)


10月8日(土)

健康維持は適度な運動から、適度な運動は歩くことから。特に中高年は、となるが、今の時代は子どもにも言えること。というわけで近年、いわゆる“ウオーキング人口”が増える動き。函館でも然り、毎朝の五稜郭公園がそれを物語っている▼「行政も後押しを」ということだろう、遊歩道の整備などに力が入れられているが、市立函館保健所が考えたウオーキングマップもその一つ。先日、市内で30分ほどから1時間余りの9コースを提案した。それとは別に意外と知られていないのが、郊外型の長距離自然歩道▼環境省が計画し都道府県が整備する健康づくり事業である。全国9番目の「北海道自然歩道」は、着手されたのが2年前ということもあって知名度は低いが、道南は「維新の道」として函館市と長万部町が結ばれる計画。実はそのうちの2コースが部分的に供用されている▼最終的には12のコースでつながるが、一つは「赤松街道を歩く道」(函館市桔梗―大野町市渡・国道5号沿い10・8キロ)で、もう一つが「駒ケ岳山麓をたどる道」(七飯町大沼―森町駒ケ岳13・3キロ)。解説によると、いずれも「ほぼ平坦で、小さな子どもでも歩けるコース」▼道南も春と秋は格好のウオーキング季節。春は若葉が芽吹き、秋は紅葉に出会える。新鮮な空気を吸って、素晴らしい景観を眺めながら、自分たちのペースで。体にも、心にもいい。さらに何か新しい発見があるかも…。函館・道南は今年も、その最高の時期を迎えている。(H)


10月7日(金)

「団塊の世代をわがまちに」。そんな思いを熱くする市町村が連携する北海道移住促進協議会が発足した。参加したのは函館をはじめ伊達、室蘭、小樽など14市町で、移住ビジネスの創出などの取り組みを確認、井上博司市長が会長に就任した▼定年後の人生は20年以上という時代。65歳定年が定着するのは時間の問題だが、それにしても退職後をどう過ごすかは大きなテーマ。しかも核家族化で、多くは夫婦2人。住み続けなければならない理由があるなら別だが、老後は気楽に好きな所で、という気になって不思議でない▼そんな第二の人生を選択した人が少なくない。もちろん函館・道南にも。人口減に悩む市町村にとっては“ありがたい存在”で、わがまちに、という輪は広がる一途。道内では伊達市が先行した感があるが、名乗りを上げる市町村が増えている▼ところが、各市町村の取り組みは、まだ住宅や生活に関する情報などを流すといったレベル。家賃や物価は安い、食べ物は新鮮、というだけでは移住への背中を押すには弱い。例えばだが、適度に技能を生かせる場があるか、それぐらいの情報は提供しなければ…▼道も積極的な姿勢を打ち出しているが、市町村も連携して、と発足したのが促進協議会。反響はあるという点では共通しているが、その一方で、移住行動まではなかなか、というのも現実。「迎える環境をどう整えるか」。それを考え、行動する、促進協議会の発足意義はそこにある。 (H)


10月6日(木)

いわゆる“ネット商売”は広がる一途だが、ついに競馬の馬券販売も現実になるという。その注目の競馬主催者は岩手県競馬組合。ソフトバンクグループと業務提携して行うことで基本合意、来年度からの実施を発表して話題になった▼競馬は大きく中央と地方に分かれ、現在、全国で運営されている地方競馬は道県営2、組合営12など16。土日にメーンレースがテレビ中継される華やかな中央競馬と違い、存廃論議が続くホッカイドウ競馬同様に、いずれも赤字の厳しい経営環境を強いられている▼中央との差別化を図るナイター開催、場外発売所の増設など、知恵を絞り、必死に対策を講じているが、具体的な成果はいま一つ。岩手県も昨年度までの累積赤字が129億円という。「新たな策を」ということだろう、ソフトバンクとの提携に踏み切ったのは▼競馬場に足を運ぶしかなかった時代に比べると、場外発売所の新増設や電話投票など手段は増えたが、今やネットの時代。馬券に限らずパソコンからの購入が一般的になりつつあるのだから、これもいわば時代の流れ▼場外発売所を増やすにもおのずと限界がある。経営が成り立たないのなら止めよというのも簡単だが、馬産地の北海道としては、そうだね、とはならない。生き残る道を模索してもらいたい。その中で岩手県にとっての最後の砦(とりで)が、IT企業に委ねての“ネット商売”。他の地方競馬からも岩手県に熱い視線が注がれている。(A)


10月5日(水)

今、北海道が全国に発信しているキャッチフレーズは? あらためて聞かれると、返答に窮する人がいるかもしれないが、言われてみると、そうだよ、となる。答えは、そう「試される大地。」。1998年10月の登場だから、もう7年になる▼観光や道産品の消費拡大など北海道への関心を高めてもらう道を。そのイメージアップキャンペーンの柱として募集したのが、キャッチフレーズとロゴ。全国から6万1000点の応募があったという。それだけでも十分に宣伝効果があったということにもなるが…▼キャッチフレーズとして選ばれたのが、この「試される大地。」。「される」という表現に違和感を覚えた一人だが、実際に選考会でも議論があったそう。その結果は…。世に問いかける、前向きに挑戦する、そんな意味合いがあるとして採用されたと報告されている▼以来、このキャッチフレーズ、ロゴはさまざまな場所で目にすることに。例えば今春、函館にも就航した北海道国際航空(エア・ドゥ)の機体、バスやトラックの車体、観光土産品などのパッケージ…。昨年9月の段階で道が受けた使用願は2100件を超えている▼北海道は今、多くの課題を抱えている。自主・自律という言葉が象徴的に物語るが、一方で“良さ”をどう残し、どう発信していくかも問われている。その一つのキーワードに安心・安全があるが、それらを包括している言葉が「試される大地。」。聞き慣れた今、頑張る北海道という響きを伴って聞こえてくる。(A)


10月4日(火)

「木づかい運動」を知っているだろうか。知らない、と答えても別に恥ずかしくはない。今年、新たに提起された運動なのだから。「地域材を積極的に利用して二酸化炭素を吸収する元気な森林を育てるエコ運動です」。政府広報はこう説明している▼森林が二酸化炭素の吸収源という役割を果たし、環境保持に貢献していることは知られるが、その妨げになる放置された森林が少なくない。しかも京都議定書(二酸化炭素排出量を1990年より6%減目標)の達成を迫られている▼その森林を整備するために欠かせないのが間伐、伐採、下草刈りなどの管理であり、伐採跡は植林して新たな森に生まれ変わらせる取り組み。この循環こそ森林の本来の機能を発揮させる道で、国民的な運動として打ち出されたのが、気遣い、木使いならぬ「木づかい運動」▼昨年11月の日本の森を育てる木づかい円卓会議の提言を受けたもので、その具体的呼びかけの一つが国産材の活用や製品の利用。日本木材総合情報センターも「森林の循環的な利用こそ持続可能な暮らしを実現し、地球温暖化の防止につながる」とアピールしている▼その意識拡大策として、7月にはプロ野球マスターズリーグを「木づかい応援団」に委嘱したが、今まさに啓蒙活動に力を入れ始めたところ。道南もスギなどの利活用対策を進めているが、それも「木づかい」の確かな取り組み。ちなみに10月は木づかい推進月間、運動の広がりが望まれる。(N)


10月3日(月)

クリーンエネルギーとして脚光を浴びる風力発電。江差、恵山など道南でも目にする。当然ながら発電設備としての機能しか求めていないが、それらを集積させることで関連産業の起業や観光面での活用なども考えられる、そんな動きが青森県で始まった▼帆船の時代、風力は既にエネルギーだった。実生活、産業への活用としてはオランダが知られるが、発電機能として登場したのは今からほぼ100年前と言われる。主に北欧で広がったが、わが国に登場したのは環境問題が言われるようになった、この20年ほど▼とりわけ着目されたのが、風の強い日本海側の海岸部。ただ、その名のごとく風まかせで、発電量が一定的でなく、安定供給という前提の確保が難しいという悩みがあるほか、採算面で課題を抱えるところも。それでも全国ではかなりの数になる▼その代表格が津軽半島を抱える青森県で、いわば風力発電の先進地。設備の容量(発電可能量)は全国の5分の1ほどに当たる約18万キロワットとされる。これだけの設備機能をトータルで考えるべき、と立ち上げたのが学識経験者や事業者による検討委員会▼白紙から議論するとしているが、一歩進めた取り組みであることは確か。集積させることで企業誘致も不可能でない、観光地化も考えられる。それは風力発電の付加価値であり、プラスアルファ。来年春には大まかなプランがまとめられるということだが、どんな構想が打ち出されるか、道南からも注目していたい。(N)


10月2日(日)

国家公務員は世間とかけ離れた特別な存在なのかもしれない。ひがみなのか、そう思うことは多々あるが、給与の口座振り込みが未だ完全実施できていないのもあきれる事例。そのために年間1億円が無駄に使われているというのだから驚きを通り越す▼財政の危機が言われ、増税論がささやかれる中で、国民が払っている税金である。少しでも効率化出来ることは率先して、というのが普通なのに、まったく逆の話。何も難しいことではない。民間では一般化していること。いい加減にせよ、と言われて反論の余地はない▼完全実施でなければ現金支給もあり、そのための事務経費が伴ってくる。昨年9月に「振り込みは職員全体の約6割」というあまりの実態を知られて、今年度末までに山間地などを除いて完全に口座振り込みとする方針を打ち出していたが、現状は…▼人事院が調べた中央省庁や独立行政法人など98機関のうち38機関が完全実施されていない。特に遅れているのは農水省関係で、実施率は本省で57%、水産庁で40%、林野庁で29%。給与の口座振り込みは最も簡単に実現出来る事務効率。それが出来ないのは意識の問題▼期限を区切って踏み切ればいいだけのことである。給与法が足かせになっているのなら改正すればいい。何故こうも時間がかかるのか、自分たちの腹は痛まないからだろう。こんなことが速やかに出来ないで、どうして公務員改革が出来るのか。5年間で10%削減の計画も虚しく響いてくるだけだ。(A)


10月1日(土)

魚屋やスーパーに並ぶ銀色のサンマ。日本の食卓にのぼって約200年。こんろで焼いて大根おろしを添え、しょうゆをジュッとかけて食べるのが一番。「さんま苦いか塩っぱいか/そが上に熱き涙をしたたらせて/さんまを食ふは…」―佐藤春夫の詩を思う▼狭真魚、三馬、三摩、秋刀魚。暖かい南の海で生まれたサンマは黒潮に乗って北上し、千島列島や北海道周辺でエサを食べて成長、産卵のため、また南下する。旬のサンマの脂肪分は20%以上で、この脂には頭がよくなるといわれるDHA(ドコサヘキサエン酸)がたっぷり含まれている▼血液をサラサラにするEPA(エイコサペンタエン酸)や、ビタミンA、D、カルシウムも豊富。日本人は1日1cのDHA摂取量が必要と言われるが、サンマだと1匹で十分。七輪で焼く定番のほかに、刺し身もよく食べられ、酒蒸し、煮付け、すり身団子、根室ではサンマ丼も▼ある調査によると、72%が「サンマの形はけっこう格好いい」と思っている。ただ、サンマ漁業関係者にとって今季は3年連続の豊漁貧乏とか。魚価が例年の半値近くに低迷し、漁船の燃料代の高騰もあって、一部では出漁規制をするなど四苦八苦▼日本の食料自給率が約40%の中で、サンマの輸入は国内漁獲量の約0・3%。北海道の漁獲量は日本一だが、よく食べる都市では札幌が秋田、青森に次いで3位。あらためて言おう、サンマの脂は脳を刺激する、パコスマ・キャンペーンで大いに笑って、豊かな心を育む秋の原動力にしたい。 (M)


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