平成17年12月


12月31日(土)

●一昨日の本欄は全国的な十大ニュースに触れたが、今年の締めくくりとして函館地域の1年…。本紙も「2005年この1年」として主な出来事を選び出したが、交通事故死者の減少など比較的明るい話があった年だったよう▼今年は函館市が渡島東部旧4町村と誕生した新函館市の実質的初年だったほか、一定の行政権限が移譲される中核市の指定を受けるなど、行政面でも変革への動きが緒に就いた年。町村では森町と砂原町(4月)に続き、上磯町と大野町が来年2月の合併に向け準備を進めた▼その一方、都市基盤の視点で話題の多い年でもあった。まず挙げられるのが地域の歴史的な事業である北海道新幹線の着工。5月には新函館駅建設予定地で起工式が行われたが、いよいよ工事が本格化、10年以内での開業が現実のものとして実感しつつある▼また工事が継続されていたJR函館駅周辺の区画整理事業が完了し、そのイメージを刷新した。さらに函館空港のターミナルビルも観光都市の名に恥じない素晴らしい施設としてベールを脱いだほか、エア・ドゥ(東京線)、エアトランセ(帯広、新千歳)が就航した▼まだある。函館市中央図書館の開館、屋台村の開設、新五稜郭タワーの建設なども頭に浮かぶが、そんな中で気にかかったのが夏場を含む上期の観光客の入り込み減。北海道新幹線の開業を見据えた動きもいまひとつだった。「今年目立ったハード面に対し、ソフト面で新風が生まれるように」。そんな思いを来年に託したい。 (A)


12月30日(金)

●1秒をどう過ごしますか。来年の元旦は「うるう秒」に当たり、いつもより1秒長い1日で始まる。1秒の価値を理解するためには「たった今、事故を避けることのできた人に聞いてみるといい」といわれる。1秒の判断ミスが大惨事を誘発するという意味▼総務省の報道資料に「2006年1月1日午前8時59分59秒と午前9時00分00秒の間に《8時59分60秒》を挿入します」とある。地球と天体の動きに基づく時刻と原子時計の時刻が0・9秒以上ずれないように1秒を加えたり、除いたりする操作が「うるう秒」。新年は7年ぶりの1秒挿入だ▼「人は93_gの空気を呼吸し…心臓が1回脈を打ち、60_gの血液を体に送り出し…世界に420万dの雨が降り、39万立方bの二酸化炭素が排出されている」(山本良一著「1秒の価値」)。光は1秒に29万9793`走る。オリンピックは「0・1秒の価値」を目指して戦う▼約167万本のバナナが輸入されている、東京ドーム1つ分のオゾン層が破壊される、手放した風船は4b上昇、私たちの細胞は約333万個入れ替わっている、日本の借金は92万円ずつ増えている(「みんなで考えた1秒の世界」入選作)。新年度の国債は29兆円に抑えられたが、気が遠くなる▼たった1秒、されど1秒。時間の価値観は人によって違う。仏教思想でいう「刹那(せつな)」は時間の最小単位で75分の1秒。すべてのものが刹那刹那に生じては滅すると説く。一瞬一瞬を大切にすることが大事。新年に与えられた貴重な「朝の1秒」。1秒、1秒刻む音に「諸行無常の響きあり」か。(M)


12月29日(木)

●激動の2005年も残すところ、あと2日。政治、社会、さらには国内、世界に目を向けると実にさまざまなことがあった。新聞やテレビで既に十大ニュースなどが発表されたが、国内では暗い気持ちになる出来事の多かったことをあらためて実感する▼各紙、各局、取り上げたニュースに大きな差はない。ここでは新聞・出版界の業界紙である「新聞之新聞」が紙面で発表した全国紙などの「社会部長が選んだ十大ニュース」から振り返ってみるが、今年の1位にランクされたのは「耐震強度偽装で『住』の安心崩れる」▼この年末に警察の強制捜査が入り究明は来年に持ち越されているが、高層ビルの信頼性を揺るがした事件として当然。2位はこれも衝撃的だったJR西日本福知山線の「尼崎の脱線事故で107人死亡」で、安全性をないがしろにした超過密ダイヤが問題になった▼そして3位が親や教育界を震かんさせた「広島、栃木、京都で女児殺害相次ぐ」。広島、栃木は下校途中、京都は塾で起きた事件だが、各地で子どもを守る取り組みが広がっている。この上位三つはあまりにも社会的な問題が大きく暗い話だが、10位以内にはほかにも…▼「アスベストで深刻な被害」(5位)、「『カトリーナ』など世界で自然災★害。国内でも地震頻発」(6位)、「個人情報保護法などで社会の匿名化深刻に」(8位)、「大型談合など企業犯罪多発」(9位)など、明るいとは言い難い話が並んだ。こうして振り返ると、今年も「来年こそは…」という思いしか浮かんでこない。(A)


12月28日(水)

●この24日、函館に朗報が飛び込んできた。それは日韓航空当局間会議での合意。国土交通省が函館―ソウル(韓国)などの新規開設路線について発表した。まだ就航の道筋がつけられたというだけだが、明るい話であることは言うまでもない▼あとの判断は航空会社に委ねられるが、国家間で合意したことの意味は大。というのも背景に需要が見込まれるという認識があるから。観光都市として、海外からの入り込みを期待する函館にとって、それは将来の可能性を秘めているという評価を受けた証しでもある▼函館と海外を結ぶ定期路線は現在、週2本のユジノサハリンスク(ロシア)のみ。ここ数年は冬期間を中心に、台湾や香港などから観光客を乗せたチャーター便が急速に増えている。韓国も期待される国の一つだが、将来的に求めたいのは第二、第三の定期路線…▼「実現すれば国際空港として弾みが付き、大変よろこばしい」(木村孝男助役)、「函館の観光振興にもつながる」(沼崎弥太郎国際観光コンベンション協会長)。関係者は本紙の取材にこう答えているが、その意義は談話にある「弾み」と「振興」という言葉が物語っている▼日韓の間には貨物を含め日本の航空会社だけで週100便余りが運航している。その上、今回の合意によるソウル間は道内で旭川も一緒であり、現実の開設競争はこれから。このチャンスを生かせるかどうか、そのために必要なのは航空会社への強力な働きかけ。あらためて函館の底力が問われている。(H)


12月27日(火)

●記録的な大雪が続く。ウオームビズに徹しようと室内温度を18度に設定したが、長続きする自信はない。暖冬予報が「寒い冬」に修正された。師走に入ってからの大雪は強風を伴うのが特徴。その強風を受けて山形県庄内町の羽越線で特急が脱線した▼運転士は「最上川にかかる橋梁付近で突風に車体が浮いて…」と説明している。厳冬の橋の上は一般道よりアイスバーンがひどく、ちょっとした突風でも車体が滑る。かつて、十数台の衝突事故を取材した時、新石狩大橋で猛烈な吹雪のため車体が対向車線にはみ出し、間一髪だった経験がある▼線路の上とはいえ、時速100キロで走っていれば避けられそうもない。20メートルの突風を伴う橋梁は徐行運転するのが原則だろう。穏やかな大みそかを迎えられると思ったが、この特急の脱線による死傷者は36人。昨年末はスマトラ島沖地震で津波による大惨事があった▼四季の果てるシハツ、師僧が読経のため東西を馳(は)せるシハセ、なし終えて収めるシヲヘオサメヅキ…昔は年末の数日間を師走と言っていたようだ。しかし、想定外の明暗の世情を映し出す月とも言える。昨年は拉致された横田めぐみさんの遺骨が別人のものと判定された月でもある▼24日からの日本と北朝鮮の政府間対話でも拉致問題は進展しなかった。「ともかくもあなた任せのとしの暮れ」(一茶)と言っておられない心境。魔よけとしても重宝されるナンテン(難転)が中島廉売などの店頭に並び始めた。赤い実に願いを込めて「災いの年」と別離しなければ。そんな思いが込み上げてくる。(M)


12月26日(月)

●「チャイルドラインはこだて」が地域に定着しつつある。先日の本紙が報じた常設1年の実績は、そう実感させるに十分。受けた電話は約250件ということだが、その陰には必要性を訴え、立ち上げに奔走した関係者の努力の姿があった▼知られるようにチャイルドラインとは、子どもの思いに耳を傾ける、子どものためのホットライン。人間関係が希薄で、複雑な今の時代、その中で悩みを抱える子供たちが増えている、と言われる。親にも、兄弟にも、友だちにも話せないけど、誰かに聞いてほしい…▼だから名乗らなくてもいいよ、いつ(電話を)切ってもいいよ。意見がましいことは言わないから、話をすることで楽にしてあげるから…。強いて例えるなら“電話版かけ込み寺”だが、全国的な動きの中で、函館での取り組みがスタートしたのは3年前だった▼理解者を求め、ボランティアを募って、昨年末には当面の目標としてきた常設化を実現した。毎週木曜日の午後4時から4時間の週1回だが、それから1年。通話時間も、話す内容もそれぞれだが、自分自身のことや学校のことで悩む子が多いという現実があることが明らかに▼社会的に担う大きな役割。としたら、地域としてどう支えていくか、さらなる理解の広がりが待たれるが、本紙の取材に答えた小林恵美子代表の言葉が、この活動が担っている意義を教えている。「30分の無言の後、話し出してくれた子どももいる。話したいと思うまで待ち続けたい」―。(H)


12月25日(日)

●喫煙に対する社会認識は急激に変化している。直接であろうが、間接であろうが、少なくとも他人に迷惑が及ぶ“吸い方”は市民権が得られない。屋内ばかりか、東京や札幌など全国的に繁華街での路上喫煙を規制する動きが広がっている▼分煙から禁煙に、その流れを作ったのは乗り物だが、先日、東京地裁の裁判長が示した見解が話題になった。それはタクシーの受動喫煙に悩む乗務員と利用者が「国が規制の措置を怠っている」と訴えた裁判だったが、賠償請求は退けたものの、裁判長がつけ加えたのが…▼「タクシーの場合は乗車時間などから全面禁煙にしても支障はない」という見解だった。国内で禁煙タクシーが登場したのは、1988(昭和63)年のこと。東京の事業者で、他の乗り物に先駆けての試みだった。それから17年、ここ数年、禁煙台数が増えている▼しかし、全面的に、というところまで踏み込んでいる事業者となると、ごく一部。喫煙する乗務員にとっては長時間の禁煙を強いられる、一方で喫煙を求める客もいる、など多々理由はあろうが、禁煙と喫煙が混在しているが故に利用者が混乱する、という指摘もうなずける▼タクシーは乗り物の中で最も狭い空間である上、利用者も老若男女、中には病人もいる。この問題のキーワードは「快適な乗車環境」であり、その判断を事業者に委ねるにしては数が多過ぎる、ということだろう。「国の対応が期待される」。裁判官はこう述べたそうだが、確かに…。(H)


12月24日(土)

●国道5号・昭和―JR五稜郭駅前間が装いを一新、名実ともに函館市の中心部に入る主要道路の趣となった。狭い上に路盤も悪い、長年の懸案だったこの区間の拡幅工事が始まったのは1997年。ほぼ8年をかけた大事業だった▼道路は都市政策を考える時の大きなポイント。ただ、本格的な拡幅事業となると、用地問題から始まって多額の金と時間がかかる。この事業でも用地取得に約115億円、工事に約15億円を要したと言われるが、将来に目を向けると、その評価はおのずと生まれてくる▼10年前、車で函館に赴任した時を思い出す。鮮烈な印象を受けた赤松街道を過ぎて、この区間に入った際の印象は「これが観光都市・函館市内の入り口か」だった。その街の第一印象は玄関口で決まる、という話はよく聞くが、各都市が駅前の整備に力を入れるのもそれ故▼旅行でも、仕事でも訪れた都市で足を運ぶ所はごく一部。だからこそ玄関口の印象がより強くなるということかもしれないが、その玄関口と言えば、陸海空それぞれに。あらためて説明するまでもないが、陸は駅であり主要道路、海はフェリーターミナル、空は空港…▼函館市はいずれも兼ね備えた都市だが、今年は陸空の整備が画期的に進んだ。JR函館駅舎に続き区画整理を終えて駅前の装いは新たになり、北海道新幹線が着工、空港ビルは観光都市にふさわしく生まれ変わった。この国道5号・昭和―JR五稜郭駅前間の整備もその画期的な中の一つである。(A)


12月23日(金)

●「経済情勢は地域によって温度差がある」。当たり前だが、今年は特にその温度差を感じた年かもしれない。というのも東京などの首都圏、名古屋などの中京地域の良さが際立って映るから。生産実績、設備投資ばかりか雇用面にもそれがはっきりと▼雇用と言えば、新規高卒者にも回復基調が言われ始めている。文部科学省が発表した10月末現在の内定率からもうかがえるが、全国平均で5人に3人の59%といい、3年続けて前年を上回る動き。さらに2001年に比べると10ポイント以上も高く、昨年同期比でも6ポイント増▼この動きは確かに全国的な流れだが、ただ地域格差は厳然と。北海道をみても5ポイント上がっているが、それでも内定率は3人に1人の32%でしかないのに対し、中京地区の要でもある愛知県は実に83%。さらに隣の岐阜県、三重県が78%で、滋賀県が77%という▼最も内定率が低いのは沖縄県(20%)で、北海道はワースト2。ほかに低調なところは宮城県(40%)、青森県(43%)、熊本県(48%)など主に東北以東と九州以南の地域。景気と雇用は表裏一体の関係にある、という分かりやすい経済原則を端的に示している▼それから1カ月。11月末の北海道は厚労省道労働局の調査では47・5%(函館地域は47・1%)。間もなく正月を迎え、卒業も3カ月後に迫っている。地元に固執したり、業種を選んだりしなければ、と指摘する向きもあるが、当事者としては…。中京地域などが何とも羨(うらや)ましく映る。(N)


12月22日(木)

●昨日の本欄も「冬至」に触れたが、暦の上では一つの節目の日とも言える。これから本格的な厳冬期を迎える北海道だけに受け止める思いはさまざまだが、この日を境に「夜明けが早くなる」「日が長くなる」と考えれば、心楽しくもなってくる▼そういった思いの表れかもしれない、昔から「冬至」にまつわる逸話が伝えられる裏には。昨日も幾つか紹介したが、その中で最も一般的な風習として今に受け継がれているのが「冬至かぼちゃ」。「冬至がゆ」もそうだが、そこにことさら強調するほどの深い意味はない▼カボチャを食べる日だよ、この日に食べると病気にならないらしいよ、それでいい。要は寒くなる時期だけに体の温まるものを食べ、冬を無事に過ごそうというのが趣旨だと思うから。カボチャが推奨されているのは、栄養の面から体にいいということだろう▼実際にカロチンをはじめビタミンCや食物繊維も豊富で栄養価は高い。種類的には大きく日本、西洋(栗)、ペポの三つがあって、品種は数百とも言われる。北海道は気候的に栽培に適した地と言われ、意外と知られていないものの、全国一の生産量を誇る主産地である▼毎年7000ヘクタール余り作付けされ、収穫量は3年前で9万3000トンほど。道南も森町の駒ケ岳地区などを中心に年間5000トン以上を出荷している。きょうはぜひとも地元産のおいしいカボチャを…。道も「おいしいですよ北海道」の広報記事で「冬至」での愛食を呼びかけている。(H)


12月21日(水)

●22日は冬至。京都での学生時代、下宿屋の奥さんが「冬至の日に《ん》の字の付く7種類を食べると体にいいのよ」と話していた。ナンキンにレンコン、ギンナン、ニンジン、キンカン、カンテン、ウンドン(うどん)。語呂合わせで「運」にあやかっている▼1年中で昼が一番短くて夜が一番長い日。24節気では「冬至は大雪の次に来る」というが、今冬も大雪が列島を襲ったばかり。柚子(ゆず)湯に入って、南瓜(カボチャ)を食べるのが一般的。「ん」が付く食べ物には免疫力を高め、風邪にかかりにくくするビタミンCが多く含まれている▼特にレンコン、ニンジンには細胞の新陳代謝をスムーズにする亜鉛が多い。カボチャやユズは形や色彩から太陽の象徴とも言われ、冬至を境に太陽が蘇(よみがえ)る日だ。でも、北海道は厳冬が始まったばかり。中国では「冬至節」ともいい、暦の始まりとして小豆がゆなどを食べて祝っているという▼ユズ香にはアロマテラピーのリラックス効果もある。元1級建築士らによる耐震データ偽装問題で警視庁などが一斉捜査に乗り出した。正月を前にマンションの入居者は相次いで引っ越しており、寒空の下、安全を脅かされている。ユズ湯に入って、心身ともに寒さを乗り切ってほしい▼女児殺害やテロの恐怖を追っ払って、鳥インフルエンザなども防げるのなら「ん」が付く野菜類にすがるのも一計。地中には冬至芽が根強く育っており、長い昼が来るのを待っている。冬至芽の力を借りるだけでもいい。「金溜(た)まる ことに縁なき 柚子湯かな」(鈴木真砂女)(M)


12月20日(火)

●今年もあと10日ほどで幕を閉じる。どんな年だったのか、個人的には、地域では、国内では、そして世界では…。十大ニュースに始まって、さまざまな手法で1年が総括されるが、先日は世相を表現する四字熟語(住友生命保険)も発表された▼既に16回目を数え、今年も1万余りの応募があったそうだが、選ばれた優秀作品はなるほどと納得するに十分。「全国政波」(全国制覇)は、にわかに関心が高まった解散総選挙を表したもので、これに関連して自民の候補者選びを取り上げた「人選色々」(人生色々)も▼このほか、ニッポン放送株取得の動きなどの「大株主命」(大国主命)、サラリーマンが納税者番付のトップになったことの「驚愕所得」(高額所得)、クールビズの現象を例えた「薄衣多売」(薄利多売)、社会の課題とされるニート問題を教える「無職無習」(無色無臭)…▼まだまだ紹介したいところだが、いずれの作品も楽しい気持ちで今年を思い返させてくれる。明暗いろいろなことがあった。閉塞(へいそく)感から抜け出せない灰色状態の1年だったという見方もあるが、日本漢字能力検定協会が発表した恒例の今年の漢字は「愛」▼ここ10年ほど「震」「倒」「災」など暗い印象の漢字が選ばれており、その延長線上の感触の字を予想した人が多かったに違いないが、意外や意外。最も応募の多かったのは「愛」だったという。そこから伝わってくるのは「来年への期待を込めて明るいイメージの字を」という思い。この「愛」には多くの人の願いが凝縮されている。(H)


12月19日(月)

●「ぜんそく」の子どもが増え続けている。そんな調査結果が今月初め文部科学省から発表されたが、そうか、と放置しておける話ではない。そこには何らかの要因があるはずで、少し大げさかもしれないが、今の社会への警告とも思えるから▼「ぜんそく」の症状は子どもの苦しみもさることながら、見ている親の方も辛い。臥牛子も経験者の一人だから、報じられた記事に目がいったのだが、それにしても多い。小中高校生約113万人を抽出して行った同省の調査ということだから精度は高いと見ていいが…▼それによると、小中高校の各学齢とも「ぜんそく」を持つ子どもは、10年前の2倍以上という。率で幼稚園児は1・6%(前年度比0・3ポイント増)で、小学生に至っては3・3%(同0・2ポイント増)というから、実に30人に1人。平均的にみて1学級に1人という実態▼さらに中学生では2・7%、高校生でも1・7%を数え、小学生以下と同様の率で増えている。このほか気になるのがアレルギー性鼻炎などの鼻・副鼻腔疾患だが、これまた増える傾向に。中学生では10・6%、高校生で8・1%、中高校生のほぼ10人に1人である▼もちろん根が深いのは「ぜんそく」。体質論もあるが、一般的に挙げられる要因は空気などの環境汚染や食べ物アレルギーなど。ただ、そう単純でなく、ストレスも加わった広い意味での生活環境が無関係でないと言われる。この調査結果は「子どもたちの体に優しい環境を」と社会に発しているシグナルにほかならない。(N)


12月18日(日)

●「ラブベリで並んでいたら、大きい子が割り込んできた」。小3女児の孫が泣いて帰ってきた。園児や児童の間で「ラブベリ」が大流行。土曜、日曜など大型店のゲーム機の前は順番を待つ子どもの列…。子どもそっちのけで熱狂する親の姿もある▼1プレー100円。1回につきカード1枚がもらえる。髪型やドレス、靴など「オシャレまほうカード」をゲーム機に読みこませて、ダンスでリズムよくポイントを重ねて勝負する。題して「オシャレ魔女 ラブandベリー」。男児の「甲虫王者ムシキング」に続くヒットゲーム▼それに小学校高学年以上の10代には腕にカラーバンドをはめてラブベリなどゲームに夢中になったり、街をかっぽするのがトレンドのようだ。ホワイト、パープル、ピンク、レッド、オレンジ、グリーン…。カラーバンドもいろいろ。1個数百円というが、無料で配布しているものもある▼飢餓から子どもたちを救おうという「ホワイト」、乳がん患者を助けようという「ピンク」、エイズ感染を防ごうという「レッド」、がん患者や家族を支援しようという「イエロー」、緑を増やして地球温暖化を防ごうという「グリーン」など。1人で数個もはめている若者もいる▼歳末助け合い運動が繰り広げられている折、おしゃれと社会貢献(チャリティー)につながるカラーバンド現象は大歓迎。知らず知らずのうちに「助け合い」の精神が根づいて、広がっていく。ただ、親や先生の言うことを聞いて順番待ちをしている列に割り込んだり、たたいたり、泣かせたりしては、その精神は本物でない。(M)


12月17日(土)

●自分が受給年齢になったら、毎月、どの程度、受け取れるのか。老後の生活を考える時、まず頭を過ぎるのが年金だが、50歳の声を聞く年齢ともなると…。定年後の生活をどうする、という思いとも重なって、誰しも無関心ではいられない▼臥牛子にも社会保険庁から納付確認の書類が届いた。その中に「現時点での支給見通しを知りたければ」という返信はがきが同封されていたので、勇んで求める手続きをしたが、何となく気分はブルー。というのも、この先、現状の制度内容のままで進むとは限らないから▼おそまつな運用や無駄遣いによって年金財政は、ひっ迫した状況。受給年齢の繰り下げなど、そのつけを国民に回し、すっかり信頼を失っている。年金改革という言葉も色あせてくる中で、国民が起こしている意思表示は納付拒否であり、さらに混迷を深めている様相▼同庁が先日、発表した上半期(4―9月)の国民年金の納付率は61・2%。実に4割の人が納めていないという現状にある。厳しい雇用情勢や所得の現実など、経済的な事情もあろうが、懸念されるのは「(年金を)当てにできないし、しない」という思いの広がり▼ちなみに北海道の納付率は71・7%。全国的にも高いが、だからと言って道民が優遇されるわけでもない。ともかく全国的に納付率を上げるための努力が求められるが、決め手は信頼を回復させることであり、その方策は国が「将来どうなるのか」について、明確に答えを示すほかにはない。(A)


12月16日(金)

●函館市と青森市が「ツインシティ(双子都市)」の関係を結んで17年。単に津軽海峡を挟んで向かい合う都市であるばかりか、長きにわたって青函連絡船の発着地として発展した両市だが、そのつながりの深さは歴史的に培われた財産でもある▼その両市があえてツインシティを締結したのは、新しい時代の交流を求めてのこと。「新青函経済文化圏の形成を目指し、末永い友好親善と将来の飛躍的発展を念願する」として調印したのは1989年3月。以来、幅広く市民レベルの交流の輪も広がっている▼ただ、際立った成果、実績はいまひとつと指摘する向きがあるのも事実。締結20年になろうとしているばかりか、10年以内には新幹線が開業し、さらに近づく関係になる。その時に向けて一歩踏み込んだ取り組みを考えるべき、というのは誰しもに共通した思い▼特に言われてきたのが経済面だが、その答えの一端が先月下旬に開かれた今年度の協議会で示された。5年後の東北新幹線新青森開業をめどに打ち出したものだが、具体的には独自のブランド商品開発の推進であり、青函のブランドを同じパッケージで販売することなど▼また観光資源や食材のPRも確認されている。合言葉である「手をつなぐ心を結ぶツインシティ」を両市飛躍の糧とするには、目に見える実績を残すことが大事であり、商品開発などは大いに期待されるところ。新幹線が現実となった今、ツインシティはさらなる実効を上げる時を迎えている。(N)


12月15日(木)

●毎年のように聞き慣れない横文字言葉が登場する。それが一般的な慣用語になればいいのだが、そのレベルに達する前だと紙面の表記も難しい。注釈が必要になってくるからだが、その点で最近、ちょっと気になったのが「ロハス(LOHAS)」▼今月初め、SMBCコンサルティングという会社が発表した今年のヒット商品番付にも登場している。東西の横綱は「愛知万博」と東京・秋葉原を意味する「アキバ」。ともに今年、フィーバーした両翼だが、その東前頭1枚目にランクされていたのが「ロハス」▼アメリカ生まれのシンプルライフを語る、まさにキーワードの言葉で、日本語に訳すと「健康と持続可能な社会に配慮したライフスタイル」。いわば使い捨て文化を見直すことを前提に、環境の保護や健康な生活を最優先すべきものとして位置づける考え方であり、その実践▼もっと具体的に言うなら「安ければいい」「効率が良ければいい」といった考えを捨てようということ。安全なものを食べ、環境に配慮した商品を使う、のが大事であって、目先の安いか高いかではなく「後世のために」を頭に入れた暮らしの勧め、とも言える▼まさしく北海道が展開する「安心」「安全」なものづくりと重なり合う思想。わが国に伝ってきたのは3年前だが、世界のロハス人口は1億人とも言われ、欧米では「ロハス」が新たなビジネスチャンスを生み出し始めているという。せめて言葉だけでも覚えておこう、今後さらに聞く機会が多くなるはずだから。(H)


12月14日(水)

●自動車税納税通知書の封筒に広告を掲載しませんか! 道のホームページに、こんな情報が掲載されている。厳しい財政事情から道は職員給与の削減など歳出の抑制に努める一方、歳入増を求める努力を問われているが、この封筒広告はその一環▼言うまでもなく発送経費はばかにならない。全経費まではともかく幾らかでも経費の足しになれば、それに越したことはない。自動車税に限らず道が使用する封筒に広告を掲載した例はなく、関心の目が向けられる理由もそこにあるが、明らかにした計画によると…▼掲載するのは2006年度に配布する封筒の裏面。枠は一つで、色は黒か道が指定する色(2色刷り)。当然ながら公序良俗に反する、政治性があるものや意見広告は除かれ、対象は企業や団体。最低価格は100万円プラス消費税及び地方消費税相当額となっている▼意外と安いという印象だが、というのも数が数で、全道的に届くものだから。発送数は05年度の実績で約158万通である。もちろん最低価格で落ち着くとは考えられない。何社(団体)が応募するか、どこに決まるか、価格はどのぐらいか、興味は尽きない▼この実践例は大阪、埼玉、広島の3府県にあり、道が初めてではない。歳入増の模索がいわば官の経営努力とも言われる今の時代、広報誌に広告を掲載するなどの動きが広がっているが、その流れの中で「広告媒体として非常に有効ですよ」と封筒広告作戦を呼びかけて、少しも不思議でない。(N)


12月13日(火)

●車の後部座席のシートベルト装着率は一般道で8・1%、高速道では9・8%。後部ではほとんど装着されていない実態が、警察庁と日本自動車連盟(JAF)の調査結果から明らかにされた。法的な義務づけはないが、それにしても1割未満とは低率▼シートベルトが登場したのは今から100年余り前。事故対策としてフランスの技術者が交差式スタイルのものを考案したのが最初といわれ、今やシートベルトの装着は世界の常識。わが国でも運転席、助手席に義務づけ、啓発運動を展開するなど普及に努めている▼その結果、今年10月の同調査でも一般道の全国平均は、運転席で92%、助手席で80%のレベルにまできている。3年前に比べ運転席で4ポイント、助手席で5ポイントほど上がっているほか、高速道での装着率は運転席が98%、助手席が92%など、万が一に対する意識の高まりはうかがえる▼ただ、後部座席となると話は別のよう。現実には自分ばかりか前の席の人を犠牲にしかねない。例えば、装着していなければ事故などの際、前に投げ出され、シートを押してしまうことで、運転者がハンドルとシートに挟まれる、そんな危険もあるのだという▼「後部座席のシートベルトは運転者の命も守る」と言われる理由はそこにあるのだが、大丈夫と誤解されているのか装着率は低いまま。函館・道南では後部座席を論じる前に運転席や助手席の徹底を、と言われかねないが、ともかく地道に啓発していくしかない。「車に乗ったら全員がシートベルトを」―。(H)


12月12日(月)

●休 刊 日


12月11日(日)

●学習塾の教室にも悪魔がいた。京都府宇治市で小6女児が、大学生で23歳のアルバイト講師によって首や胸などを刺され死亡した。広島や栃木で小1女児が連続して殺害され、学校、保護者、地域が団結して「子どもの安全」に正面から取り組んでいる矢先の惨事▼指導法などをめぐり、講師と女児はトラブルがあったという。この日のスケジュールを踏まえ、包丁2本とハンマーを用意し、施錠した教室で女児と2人きりになった可能性もある。「口論になって刺した」と供述しているようだが、計画性が感じられる▼講師は2年前、財布を盗もうとした際、警備員を負傷させて逮捕され、停学処分となった。臥牛子も学生時代、塾の講師をしたが、履歴書を見ながらの面接で、子どもの心をつかむ教科指導などが要求された。宇治の学習塾でも講師の倫理教育に取り組んでいたというが、なぜ面接で「不適格」を見抜けなかったのか。教室に凶器を持ち込むとは…▼女児は4月に東京から転校。学校では手芸クラブに所属し、飼育委員などを務めていた。学習塾も学校と同じように通学路の安全確保や不審者の侵入防止に万全の対策を取っているが、講師が塾の中で子どもにXナをむくとは「想定外」だったに違いない▼理由はどうあれ講師や先生が教え子を殺害するとは言語道断。事件のことも停学処分のことも、塾側は把握していなかった。「塾講師の採用には性格や過去のトラブルなどを把握すべきだ」と言う識者の警告に同感だ。小さな生命を守るためにも。(M)


12月10日(土)

●北海道の人口は? と聞かれると、これまでは570万人と答えてきたが、これからは560万人と訂正しなければならない。というのも8日に道が発表した国勢調査(10月1日実施)の速報によると、道民は562万7422人と出たのだから▼わが国は本格的な人口減少時代を迎えたと言われ、その姿は各種のデータが語っているが、北海道は“流出”という現実も加わって、その動きは少し早め。10年前に569万人台だったのが、前回に続き今回も5万5640人、率にして1・0%も減っている▼今回に限らず国勢調査のたびに浮かび上がるのは、過疎化の広がりであり、逆の言い方をすると札幌の一極集中。札幌はちょっとした地方都市に該当する5万8507人も増加して188万875人。道内人口に占める割合は33・4%というから、実に3人に1人ということに▼ところで函館市…。戸井など旧4町村と合併し中核市となったが、30万人に届かない29万4212人。4町村を含め5年前に比べて1万1099人も減っているのが気にかかる。渡島・桧山の町村も押しなべて減少組で、予想されたとはいえ、道南には厳しい現実▼人口減は地域にさまざまな課題を提起するが、増加対策ほど難しい取り組みはない。雇用の場の確保、住み良さの模索…。それは行政、経済界といった個別の枠組みの中で解決できる性格の問題でないからだが、今の道南がその問いに応えているか、国勢調査の速報は改めてその努力が必要、と語りかけている。(H)


12月9日(金)

●来年度の「縄文シティサミット」が、函館市で開かれることが決まった。このサミットは縄文遺跡を持つ全国の自治体が縄文の魅力を生かしたまちづくりを考え、情報を交換する組織として活動する縄文都市連絡協議会が手がける主要事業▼加盟しているのは函館市のほか道内の伊達市、道外では三内丸山遺跡で知られる青森市、さらには糸魚川市(新潟)、国分市(鹿児島)など合わせて15市町。それぞれが保存に力を入れる一方で、社会教育、観光資源などの観点から地域の貴重な歴史財産と位置づけている▼函館市内にある遺跡は昨年12月の市町村合併で増えて316カ所。中でも脚光を浴びているのが南茅部地域。国の重要文化財「中空土偶」など貴重な遺物が出土しているほか、国指定の史跡・大船遺跡は、大規模な集落跡が残されていたことから学術的にも貴重と…▼これらを今後、どう保存し、地域の財産としてどう伝えていくかの取り組みは、函館市が今後、迫られる課題。したがって青森市をはじめ他市町の対応は大いに参考になることであり、協議会加盟の意義もそこに。まさに学ぶ場であり、発信する場とも言える▼その一つの舞台がサミットというわけだが、8年前から持ち回りで開かれ、毎年、参加者は300人規模という。今年の会場は青森市で、来年が函館市。そこで願うは「市民の間にも縄文文化に対する認識を広げる機会に」という思い。函館市の“縄文文化”を素晴らしいものとして後世に引き継ぐことが必要だから。(H)


12月8日(木)

●どんぶり茶わんに卵を割ってクルクルクル…栄養満点さ たまごごはん〜。かつて円いちゃぶ台を囲んで食べた究極のファストフード「卵かけご飯」が復活、ブームだという。テーマ曲「クルクルたまごごはん」が人気、食べ物ソングのヒットを狙っている▼この夏、歌手の真琴いづみさんが即興的につくった曲。「夢がつまっているのさ たまごごはん」などのメロディーに子どもが喜ぶ振り付けもついて、幼稚園の運動会などで大もて。「無敵のパワーがあふれてくるのさ」と元気いっぱい▼卵はバナナと並んで昔から希少価値が高く、特に卵は病人食や虚弱体質の栄養補給として重宝がられた。卵かけご飯は、真っ白いご飯に卵を割って、しょうゆを垂らし、かき混ぜた単純なもの。ご飯と卵はお互いに不足している栄養素を補い、特に三大栄養素のバランスが改善されると言われる▼「ご飯の上に適当なくぼみを作って、そこへ卵を割り入れ…」「茶わんの中で卵を先にときほぐし…」「青ジソや柴漬けも入れて…」。ネット上ではレシピをめぐって百家争鳴。ご飯の量、くぼみの深さ、かき混ぜ方、温度によって食感が変わるというから奥深い。専門のしょうゆ、レストランも出てきたという▼「卵かけご飯」のシンポジウムまで開かれたとの話も。日本人の主食である米飯が減っているだけに、子どもたちの「世界に羽ばたくたまごごはん 君も食べようたまごごはん〜」の歌や踊りは大歓迎。お米の消費を促す道までつながれば、さらに歓迎されるのは言うまでもない。(M)


12月7日(水)

●道民で「道産食品はおおむね安全」と感じている人は約9割。この率をよしとするか否かは判断の分かれるところだが、全面的な信頼を得ているか、となると、残念ながらまだの域。言葉を換えると「さらなる努力を」という激励にも聞こえてくる▼食の安全・安心は広い意味で生産者、生産地が突きつけられている最大の課題。食糧基地とも言われ、海外との競争問題などを抱える北海道には、より重くのしかかっている。「北海道産は安心して買って、食べることができる」と、無条件に言われるまでには残念ながら▼現実の問題として安全に関する目は厳しい。10月中旬に発表された道民意識調査の結果でも8割が「注意している」と答えている。それは安全・安心こそ購入時のキーポイントという教えだが、道民にして「(道産食品は)安全」と言い切った人は16%でしかない▼少なくとも50%は欲しいところだが、実態は「だいたい安全である」と、何とか合格点をつけた人が73%いて全体として約9割ということに。さらに気になったのが、主要農業地域である十勝やどちらかと言うと漁村部で否定的な声が10%を超えるレベルもあったこと▼食の安全・安心条例が施行して8カ月ほど。確かに道独自の施策は緒に就いたばかりだが、鍵を握るのは生産者や製造者の認識であり道民の意識。安全・安心の構築は信頼の構築とも言われるからだが、その信頼をどう築いていくか、道民意識調査はその余地がまだまだあることを物語っている。(N)


12月6日(火)

●今年の新語・流行語大賞(自由国民社主催)が発表された。社会的にはJR西日本の脱線大惨事、国政では郵政民営化をめぐる解散総選挙などがあった年だが、多用された言葉となると…。「これだ!」という決定打に欠けた年だったのかもしれない▼その中で大賞に選ばれたのは「想定内(外)」と「小泉劇場」。「想定内」はライブドアの堀江社長がフジテレビの株取得問題の際に多用した言葉。それ以降、巷(ちまた)でも何か問われると使われる光景が見られたし、常用語でもあるから納得もできるが、「小泉劇場」はどうか▼端的な姿が解散総選挙だが、確かに永田町は小泉ペースで流れ、まさしく「小泉劇場」の感があった。しかし、それは現象を指しているだけであり、巷で口にされたか、となると若干の疑問が。あとトップテンに選ばれたのは「クールビズ」「萌え〜」「ちょいモテオヤジ」など▼流行語というぐらいだから、1年も経つと記憶の彼方。実際に昨年は何だった、と聞かれると、答えに窮する。実は水泳の北島康介が発した「チョー気持ちいい」だが、さらに遡(さかのぼ)ると、一昨年は「なんでだろう〜」であり、「タマちゃん」はその前の年▼どんな1年だったのか、新語・流行語大賞もその一つの表現だが、間もなく四字熟語、漢字(1文字)なども発表される。残り1カ月を切った今年はともかく、来年こそは期待したところの「想定内」で進む年であってほしい、そんな願いが込み上げてくる。(H) 


12月5日(月)

●かつての時代、華やかな存在だった大学の弁論部もいつの間にか姿を消している。時代の流れがここにも、という感がするが、実際に北海道・東北では今や函館大学だけと聞く。先日、その第6回弁論大会が開かれ、今年も聞かせてもらった▼弁士は学生8人と社会人、教員各1人の10人だったが、改めて開催の意義を実感させられるひと時だった。というのも近年自分の考えをまとめ、語る機会が少なくなっているから。弁論はその「場」であり、同大の弁論大会が素晴らしいのは一つの視点を持っていること▼「函館」をテーマに抱き続けていることである。函館にこだわった弁論大会、とも言えるが、実際に第1回の「函館観光―現状と将来」から「再発見!函館!!」「函館浪漫紀行」などと続き、今年は「私たちの描く函館」。真剣に函館を考える「場」を生み出している▼音楽のまちづくり、福祉のまちづくり、若い力を育てるまちづくり、ここに住みたいと思わせるまちづくり・人づくり…。今年もそれぞれの視点で函館が描かれていたが、七つの色(観光、自然、学生、お年寄り、光、祭り、市場)に例えて素晴らしさを問いかけた提言も▼そのベースにあるのは函館に対する愛着で、だからこうすべき、こう考えるべき、という思い。話す学生も、聞く人も皆、一生懸命。その会場に広がったのは清々しく、さわやかな時間だった。ただ一つ気になったのは傍聴者が少なかったこと。素晴らしい主張ばかりだっただけに残念というほかない。(H) 


12月4日(日)

●「育てよう 一人一人の 人権意識〜思いやりの心・かけがえのない命を大切に〜」。きょう4日から始まる人権週間のスローガンだが、今の時代に求められている大きな課題を飾らずに問いかけた秀作。具体的に週間強調事項として14項目が提起されている▼あらためて説明するまでもなかろうが、人権とは「人間が人間らしく生きるために生来持っている権利」。生存権はその基本だが、国連は1948(昭和23)年の第3回総会で世界人権宣言を採択。その2年後、採択した日である12月10日を「人権デー」と定めて今日に▼それから50余年になるが、この人権侵害問題は今なお各国で。大事なのは意識の醸成であり、わが国で「週間」を設けて啓発を続けているのもそれ故。道は昨年2月、関係機関による人権施策推進本部を設置したが、それも日常的な啓蒙(けいもう)が必要という判断から▼人権意識は子どもの時代に、と言われるが、毎年取り組まれている「週間」事業に、中学生人権作文コンクールがある。応募作品は道内だけで約7000編。今年の道南地方大会では函館北中3年の荒井ニ葉さんが最優秀賞、乙部中3年の中村夕貴さんが優秀賞に▼年間多々ある啓発週間の中で、人権週間は最も重要視されて然るべき「週間」。なぜなら、掲げられている強調事項が「子どもの人権を守ろう」「高齢者を大切にする心を育てよう」「障害のある人の完全参加と平等を実現しよう」など、当然のことばかりだから。人権週間はそれが実現できていない現実を教えている。(N)


12月3日(土)

●右手を挙げて「オーラ」(スペイン語で「こんにちは」)と声をかけた。女の子は「分からない」と言った。名前を聞いた瞬間に何かに突き刺されたような感覚になり、悪魔が自分の中に入ってきて体を動かし、気がついたら死んでいた…▼広島市の小1女児を殺害した日系3世のペルー人は、逮捕から2日目で自供を始めた。「悪魔が箱を取ってくるように指示した。女の子を階段の上がり口で箱に詰めて、テープで巻いて、ごみの置いてある所に捨てた」▼ペルーから日本に働きに来ている人は約5万6000人。家を建てるために出稼ぎにきて、稼いだお金を送金している人が大半という。容疑者の妻は「食べ物がなく、子どもの手術費も必要だった」と嘆いているが…▼「自分の娘が歩ける前に日本に来たので、通りかかった女の子に親しみを感じた」と話しているようだが、8年前、ペルーで9歳の少女に性的暴行を加えた前歴があることも報道されている。「自分の子どもが同じように殺害されたら耐えられない。女児に謝りたい」。そう言いながら、悪魔の仕業とは白々しい▼2日には茨城県内で前日から行方不明になっていた栃木県の小学1年の女児が遺体で発見された。複数の刺し傷があったという。悲しく、切ない事件がこうも続くのか。IT(情報技術)グッズを持たせる動きも出ているが、とっさに役立てる余裕があるだろうか。しかも悪魔がこんなにたくさんいるとしたら…。もはや「近所の底力」で守るしかない。(M)


12月2日(金)

●「福岡で児童劇団が高松凌雲を取り上げた舞台を来年1月に」。10月末の本紙が伝えていた。箱館の地で人道的に活躍したことで知られる凌雲をどうして福岡で、と一瞬、疑問に思ったが、実は福岡県の出身者…。演じる意味はそこにあった▼参考までに凌雲(1836―1916年)だが、こう紹介されている。福岡県の小郡市の出身で、箱館戦争時に旧幕府軍ながら敵味方の区別なくけが人の治療に当たったことで知られる医師。日本で初めて赤十字活動をした人物とも言われ、その姿は今に語り継がれている▼生誕記念碑を建立した小郡市にとっては、まさに地域が生んだ歴史上の人物であり、演劇の題材となって当然。その「箱館戦記 新章 静かなる獅子」を演じるのは、3年前、小郡市に誕生した児童劇団の「みくにっこ劇団」で、公演日は来年の1月28、29日という▼もちろんオリジナルで、奥の深い内容。「凌雲先生の博愛の精神のみならず、戦争の根源を追及していければ…」。原作者で演出をする小学校講師の大平太悟さん(28)は、本紙の取材に、こう話しているが、子どもたちがどんな舞台を作り出すか、楽しみが広がる▼できれば函館で公演する機会ができれば、と考えたとして不思議はあるまい。函館にゆかりのある“人物物語”でもあるのだから。そう函館には全国に誇る子ども歌舞伎がある。その子ども文化交流事業として何らかの方途で招くことは難しいだろうか。市教委などが音頭をとるのも一考と思われるが…(H)


12月1日(木)

●「生涯学習」への意欲は総じて高く、内閣府が今年5月に公表した調査結果でも64%が「してみたい」と答えている。女性なら子育てなどを卒業した後、男性なら現役を離れた後、という受け止めが一般的と言われるが、徐々に年齢が低くなる傾向も▼「生涯学習」の定義は諸説あるが、読んで字のごとし。誰もがいつでも学べる環境とでも言おうか、かつての社会教育の輪を広げた取り組みと思えば理解しやすい。わが国では1990年に生涯学習振興法が成立したのを機に行政などの対応が始まった▼戦後を振り返ると分かる。つい最近まで社会に出た後は、仕事や生活に追われ、学ぶ余裕などなかった。確かに習い事などはあって、カルチャーセンターを生み出したが、社会的な位置づけという点では、この「生涯学習」という言葉の誕生が密接に絡み合う▼その言葉に今や違和感もなくなって…。この調査結果によると「してみたい」ことの上位には、趣味を深めたい(53%)、親ぼくを図りたい(39%)、健康・体力づくりをしたい(37%)が挙げられているが、むしろ注目されるのは「教養を高めたい」が34%あったこと▼そうした場をどう確保していくか、新たな問いかけとも言えるが、全国には自治体と地元の大学が連携し、体制を構築した地域がある。函館での公開講座の増加も、その前段的な取り組みとして期待されるが、この先、「してみたい」から「する」へと進むかどうか。「生涯学習」の将来は受ける側が握っている。(N)


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