平成17年7月


7月31日(日)

●安心・安全な農畜産物を生み出す原点は、幅広い意味で使われるクリーン農業。その中で鍵を握るのが「土」。健康な土(地力のある土)から健康な作物が育まれる、当たり前のことだが、「土」を忘れた農業にあすはない、と言われるのもそれ故▼北海道農業が戦後歩んできたのは、農政の後押しを受けた拡大路線。十勝や網走などが象徴的だが、営農面積の拡大と機械化がセットになって…。その結果、地力の維持増進に必要な有機肥料には手が回らず、化学肥料への依存度を強める、そんな姿を現出させた▼「このままでは将来、大変なことになる。今こそ土づくりの重要さを提起しなければ」。全国的にも1970(昭和45)年から叫ばれ始めたが、北海道が本格的に取り組みを始めたのは1975(昭和50)年。北海道農協「土づくり」運動推進本部が発足して歩みを始めた▼運動を全道に広げるために、まず設けたのが「土の日」。一般的にはあまり知られていないが、8月1日である。制定から30年。各地で研修会や事例発表会が行われているほか、標語などでの啓発が…。ちなみに75年の標語は「人が土を守れば、土は人を守る」だった▼今の時代、消費者の目は厳しい。北海道産だからと言って特別扱いはしてくれない。信頼をどう得て、どうつなぎ止めていくか、その答えは「土づくりからの努力以外にない」と言い切る専門家もいる。言葉を換えると、それはクリーン農業の実効をどう上げていくかという問いかけとも言える。(N)


7月30日(土)

●さまざまな分野で、その功績がたたえられ、毎年、かなりの人が表彰を受ける。全国的な賞から全道的、地域的な賞まで…。その中でも特に頭が下がるのは、実際に自分の生活や時間などを犠牲にして、人のため、地域のために尽力してきた人である▼先日、本紙が報じたが、日本物理教育学会の学会賞(大塚賞・実践部門)受賞の渡辺儀輝教諭(函館東高)はその一人。固い表現をすると、物理教育での業績が認められたということだが、賞賛されるのは「理科を身近な存在に」と地域に目を向け、貢献していること▼今、教育界が抱える課題の一つが“理科離れ”。数学と理科の成績、理解度で世界のトップクラスと言われたわが国だが、近年、それにも陰りが出ているほか、「理科は面白い」と受け止める児童生徒が減少の傾向に。「このままでは…」。渡辺教諭もそんな思いを抱いたに違いない▼既に8年ほどになろうか、本紙に「レッツトライ理科実験」の寄稿を始めたのは。打診してきた時、その必要性を熱っぽく説いた姿が忘れられない。分かりやすく、親しみやすい、と好評だが、毎週だから大変。その努力は間もなく300回になろうとしている▼功績は学校や地域にも。前任の南茅部高での理科部創設とその指導、立ち上げにかかわった“ざいだんフェス”における「青少年のための科学の祭典」では今も中心的役割を。ともかく理科教育にかける情熱、行動は、この大きな賞に値するに十分。地域として心からの拍手を送りたい。(H)


7月29日(金)

●「健康保持のためには運動が大事。特に中高年になれば…」。いわゆる生活習慣病の予防対策とも絡んでよく言われるが、どの程度の運動をすればいいのか、この運動でどれだけ効果があるのか、といった認識の有無となると、疑問符がついて回る▼健康・医療問題の大きなテーマとして抱えているのが肥満対策であり、糖尿病や脳卒中などの抑制。その背景には高カロリーな食のはんらん、不規則になった生活習慣などがあるが、もう一つ提起されているのが歩く、走る、といった日常生活の中での運動不足▼わが国では20歳から60歳までの男性のうち29・5%が肥満者(厚労省)という調査データがある。10年ほど前に比べ5ポイントも増え、糖尿病予備軍も年々増加している。ということで、啓蒙されているのが、バランスのとれた規則正しく食事をとることと適度な運動をすること▼とりわけ運動は大事。糖尿病に関連して、薬の投与より運動の方が改善効果や発症を抑える効果が高い、といった研究データがあるほどだが、現実に奨励し、誘導するにしても例えば何`歩くと何カロリー消費するとか、理解し易い具体的な指針はあるようでない▼体操、ストレッチやウオーキング、ジョギングなど手短な運動も、目安があるなしは気持ちを左右する。そこに求められるのは目標設定の誘導策。厚労省が腰を上げ、検討を始めたという。「生活習慣病の予防は日常の運動から」。新たな指針は、そのきっかけづくりとして注目されていい。(N)


7月28日(木)

●函館の観光に欠かせないものは? と聞くと、間違いなく挙げられる一つが「夜景」。一時期に比べ光が落ち、対策が課題と言われるものの、函館の夜景は眺める人を魅了して止まない。まさに函館ならでは…。他都市がうらやむ都市財産である▼「素晴らしい」。その賛辞は函館山に登る人の数が裏づけているが、光を増やす努力が求められるのも、その人気故。函館市は一昨年、民間デザイン事務所に“診断”を委託。それを踏まえて検討、先日明らかにしたのが夜景グレードアップ構想素案という名の対策案▼それによると、第一点はライトアップ既存施設について照明位置などの修正、再整備。第二点は現在ごく一部地区だけにあるガス灯風街路灯の設置範囲の拡大、そして第三点が旧函館西警察署庁舎、弥生小学校など西部地区周辺の建造物11カ所の新たなライトアップ▼ほかにも裏夜景の施設整備なども懸案とされているが、ここでは素案の良し悪しを論ずるつもりはない。ハードだけで対策を考えてはならないと思うから。確かに最後はハードに行き着くにしても、そこに市民合意(共通認識づくり)という名のソフトは欠かせない▼それこそが民間を巻き込んで街全体の光の量を増やす道であり、そのために必要なのが「夜景は大切」という思いの広がり。「観光の魅力、函館がトップ」。釧路公立大地域経済研究センターによる、こんな調査結果もある。もし夜景がなかったら、この評価を得られたかどうか。今年も“夜景の日”(8月13日)が近づいている。(A)


7月27日(水)

●日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件は、現職の公団副総裁の逮捕へと発展した。全面否認しているようだが、公金意識の欠如など、長年の間に増殖した幹部の麻痺(まひ)体質を象徴する事態。ここまで腐らせた国(国土交通省)の責任も大きい▼“厚顔”“不遜”。東京地検特捜部に独禁法違反のほう助と背任の疑いで逮捕された副総裁の印象だが、言葉は丁寧ながら民営化推進委員会での開き直った態度は、そう思われても仕方ない。そんな人が実質トップだったとは、末端で地道に働く職員は堪らない気持ちに違いない▼「かずら会という名前を聞いたことがあるか」。「新聞で初めて知った」。「うそをついている」。「名誉棄損だ」。民営化委員会で行われた猪瀬直樹委員とのやりとりだが、公団副総裁が「知らない」としたら、むしろ職務怠慢。どっちに分があるかは歴然としている▼内田容疑者の“厚顔”なところは、これをその後の民営化委員会欠席の口実としたこと。国(国土交通省)が許していたことも解せないが、その裏にあるのは数年前から続く構造的な体質。少しも変わらぬ既得権の死守姿勢は、民営化への抵抗がすべてを物語っている▼その既得権の中でも、とりわけ根が深いのは国から公団へ、公団から業界へという天下りの問題だが、この機会にたまっているうみをどれだけ出し尽くせるか。そのために求められているのは全面的な情報の公開なのだが、これだけ批判されながら未だそれができていない。(N)


7月26日(火)

●夏真っ盛り。水泳で体を鍛えよう。高校生の頃、江差の豊川の河口から鴎(かもめ)島の赤灯台まで同級生と泳いだ。けっこう長い距離。奥尻航路の汽船が起こす波に巻き込まれそうになりながら、たどり着いたらヘトヘトだった▼水泳はスタミナを最も多く使うスポーツ。先ごろ、海水浴場に指定されていない石狩管内の海岸で11歳の男子児童が沖に流され、助けようとした34歳の男性がおぼれた。児童は他の男性に救助されたが、おぼれた男性は死亡した。泳ぎが達者でも、泳ぎながら人を助けるには強じんな体力がいる▼ある父親が息子の結婚式で「わが子に何を教えたかと聞かれると、一つだけ、何をおいても泳ぎだけは教えた」と話したことを何かで読んだ。臥牛子も「水泳は忍耐力と体力がつくよ」と3姉妹の孫を小学校のプールに通わせている。そして土曜、日曜には海水浴場に連れて行く▼スタミナといえば、28日の土用の丑の日に食べるウナギが一番。夏場に売れない鰻(うなぎ)屋が、幕末の学者の平賀源内のアドバイスで「本日土用丑の日」の看板を出してから大繁盛したという話は有名。今年は稚魚のシラスウナギが不漁だったためか、仕入れ値が2、3割高くなっているという▼最近は水の事故に加え、熱中症による事故も聞く。人生80年として秒数は25億秒。小さな単位の十数秒で溺死するなんて最悪だ。まずは海水浴場に指定されていない場所では泳がないことだ。もし、おぼれた人がいたら、複数で救助に向かうことである。(M)


7月25日(月)

●食材の宝庫・北海道は伝統的な食文化が根づいている地域。その「食」の豊かさをさらに感じてもらい、伝承していく取り組みとして、道は北海道らしい食づくり名人登録制度を打ち出した。8月末まで名づけて「食づくり名人」を募集している▼わが国も含め世界には歴史に培われた「食」が少なくない。それぞれに生い立ちや特徴、受け継がれてきた理由がある。スケールは比較にならないが、それは国内の地域に目を移しても同じ。郷土料理と呼ばれるものから保存食、伝統食などまで、素晴らしい「食」がある▼しかも近年は健康面から安心・安全が叫ばれ、北海道にとってはブランド価値を高めるチャンス。この動きをとらえてさらに、という思いが「食づくり名人」には込められている。狙いは大きく三つ。知恵と技の掘り起こし、観光などへの寄与、豊かさの再発見…▼北海道らしい食、食づくりの名人と言っても、漠然として範囲は広いが、この制度もそれを認めた上でのこと。こだわりを持って生産する人から、特色ある手法で加工品を作る人、伝統的な料理などにたけている人、食全般に詳しい人まで、定義を広く位置づけている▼いわば「“食バンク”的な意味合いをもち、『食』に対する認識を深めるための制度」。そう考えると分かりいい。歴史があり、農水産物に恵まれている函館・道南は、該当者がかなりいると推測される地域。自薦他薦…。初代として、どんな名人が、何人生まれるか。そんな関心もわいてくる。(A)


7月24日(日)

●道南はスギ(杉)の北限、トドマツの南限とされ、本州と北海道の樹木が混交する地域。函館山がその縮図とも称されるが、道南には北海道で珍しい樹木が存在する。その分かりやすい代表格がアカマツでありスギ。中でもスギの蓄積量は740万立方メートル▼近年はとりわけ花粉で知名度が上がった感があるが、学術的に表現すると、スギ科の常緑針葉高木。「日本特産。高さ約40メートルにもなり、材質は軽くてやわらかく、建築・家具の用材…」。日本語大辞典(講談社刊)はこう説明しているが、道南の悩みは有効活用策▼製材加工し、出荷されるのは年間1万立方メートル程度にとどまり、しかも地元での消費ウエートが2割ほどでしかないというのだから。道は長期総合計画の中で活用促進を掲げ、幾つかの取り組み、具体的には間伐材の奨励やブランド化の形成などを進めてはいるが、それでも実効はいま一つ▼何より良さを実感させることが必要、と渡島支庁は本年度、新たに一般住宅向け内装材の開発を打ち出した。独自政策である「道南スギの見える部屋推進事業」の一環だが、実際に現物を見せることで理解の輪を広げるのが狙い▼その研究開発に当たるのが研究機関や行政、業界の専門家らによる検討委員会。来年度中には突破口としての役割を託す試作品を生み出したいとしている。このプロジェクトは一つのチャレンジであり、スギをもっと身近な存在に感じてほしい、という問いかけとも言える。(H)


7月23日(土)

●今年上半期(1月―6月)に全国で犠牲になった交通事故死者は3124人―。警察庁によると、昨年の同期に比べ303人少なく1970(昭和45)年以降では最少。あと一歩…。政府が掲げる年間目標5000人以下が現実的に思えてくる▼車の普及テンポに道路環境の整備が追いついていかなかった、など理由はさまざま言われるが、交通事故の抑止は長年の懸案であり、切なる願い。というのも年間1万人レベルもの人が犠牲になる時代が長かったから。例えば1992(平成4)年の犠牲者は1万1451人▼それが近年は8000人台まで減少している。この傾向は北海道も同じで、一時期は600人台だったのが一昨年(391人)、昨年(387人)と300人台に。今年の上半期も昨年より53人少ない122人。1955(昭和30)年の94人に次いで少ない記録という▼北海道は交通死亡事故多発地域という汚名を背負っている。都道府県によって道路延長や事情、交通諸条件も違う、なのに都道府県で比較する意味がどこにあるか、常々そんな疑問を持っている一人だが、長年、交通事故死者数でワーストワンだったことは事実▼それが今年の上半期は、というとワンでなくエイト、8番目である。道警は死亡事故を分析した結果として「操作不適と前方不注意が多い」ことなどを明らかにしているが、それとは別に提起しているのがシートベルト。「非着用の犠牲者37人のうち26人は着用していれば助かった可能性が大きい」。悲しい犠牲者をまだ減らせるということである。(H)


7月22日(金)

●「食育」という言葉を最近よく耳にする。言わんとしている意味も、そんな現実があることも分かるが、それにしても、と思うのは、7月15日に政府がそのための組織(食育推進室)を内閣府に新設したこと。担当大臣を任命、職員8人を配置して…▼「育」という字には「そだてる」「やしなう」「はぐくむ」と「そだつ」「おおきくなる」という意味があり、いわば人間の本質を表す字。教育、体育、知育、徳育、養育などの言葉がすべてを物語っているが、この食育も今にわかに台頭してきた言葉ではない▼農水省のホームページ(消費者の部屋)によると「食育という言葉は明治以降、体育、知育と並ぶものとして…。出版物では1898年に石塚、左玄が通俗食物養生法の中で『今日、学童を持つ人は体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき』と…」などという解説が▼言葉として歴史はある。だが、今、その言葉がことさら強調され、問題にされるのは、食の乱れという看過できない現実があるから。小学生で15%、中学生で20%とも言われる朝食の欠食状況はその端的な例だが、一方で間食が多いなど提起される問題は増えるばかり▼生きる根幹を成すのが「食」であり、本来、こうすれああすれと国に関与されることでない。ただ、食育基本法なるものを定め、推進室を設けたということは、放っておけないとの判断があるから。議論はあろうが、それはそれとして情けない現実だけは認識せざるを得ない。(N)


7月21日(木)

●函館には誇れる地域文化財産が幾つかある。その代表格とも言える「函館子ども歌舞伎」が、本年度の益田喜頓賞(函館市文化・スポーツ振興財団)に輝いた。この新たな勲章は、子どもたちや指導者、後援者の努力の結晶であり、拍手を送りたい▼函館子ども歌舞伎のあゆみ、によると、その初舞台は1989(平成元)年の2月。初春巴港賑で、演じたのは「絵本太功記十段目」だった。それから16年。今日に至ったのも市川団四郎さん(歌舞伎役者)というかけがえのない指導者がいて、後援組織が支えたから▼自主公演をはじめ、地道な活動の積み重ねが力となって全国的に知られる存在に。とりわけここ数年の活躍は目覚ましく、全国子供歌舞伎フェスin小松(一昨年5月・小松市)、全国ふるさと歌舞伎フェスティバル(昨年1月・東京)への出演は、紛れもないその証し▼地方で伝統芸能の継承を図る、というのは容易なことでない。下地があるならまだしもゼロからではなおさら。なのに20年も経たずに評価を得るまでに。立派というほかない。小松で「子供歌舞伎では国内随一」と賞賛されたのも頷(うなず)けるし、益田喜頓賞に選ばれて当然▼それだけの実績を残し、今後の期待も大きいのだから。「本物志向の指導に子供たちが応え、その舞台を市民が受け入れてくれた。子どもたちの努力がもたらした栄誉…」。市川さんの本紙へのコメントがすべてを語っている。受賞決定後初の舞台は今月27日の帯広公演。賞賛を浴びる舞台となるに違いない。(A)


7月20日(水)

●親の子育て力が落ちている、と近年、よく言われる。街中などで実感する光景にも出合うが、その背後にあるのが、善悪を「教える」や手伝いなどを「やらせる」など、しつけの問題。そんな現実は第一生命経済研究所の調査(1月)からも明らかに▼「本来、就学前に親が教えておくべきことができていない。話すと、学校で教えてください、と平気で言う親も。おかしいですよ」。小学校の先生から聞いたことがある。まさかそこまでは、とも思ったが、この調査結果をみると、そんな一面もあるかと思えてくる▼例えば子どもとの信頼関係だが、信頼を得ている、と胸を張って答えた親は半数以下の40%。さすがに信頼されていないは4%だが、残る50%あまりは「ある程度は…」というただし書き付き。もっと自信を持って、と言いたくなるほど、肝心なところが揺らいでいる▼それが家庭における手伝いにも現れているということだろう。最も身近で大事なしつけのはずだが、子どもが手伝いに非協力的と認識している親の42%が、頼んでも嫌がられるからと回答。さらに驚くのは23%もが頼まない(頼んだこともない)と答えていることである▼叱ってばかりでもいけない、かと言って褒めてばかりでも。それほどに子育ては難しいが、家庭で教えていかなければならないことは多い。その一つが人の役に立つということで、家庭ではさしずめ手伝い。確かに昔ほど子どもに手伝わせる用事は少なくなったが、だからいい、ということではない。(N)


7月19日(火)

●日本人の主食と言えば米(ごはん)。その消費が落ち込み、生産を抑制する事態になって久しい。対策がさまざま取られているが、依然として回復の流れにはなっていない。農林水産省によると、2004年度1年間に国民一人が食べた米の量は59`▼1俵は60キロだから1カ月5キロ弱ということになる。翻って今から40年前の1965(昭和40)年度は、今のほぼ2倍、年間一人当たり112キロ食べていた。それがパン食などの広まりによって米離れが現実となり、その5年後には95キロまで落ちて、あとは減少の一途▼2000(平成12)年度には64・6キロとなり、03(平成15)年度からは60キロも割って59`台。こうした消費減は生産現場を直撃、減反という名で、作付けの抑制を強いることに。意外と知られていないが、北海道は全国の作付けの7%台を占める米の主要産地である▼「きらら397」「ほしのゆめ」など、2004年の作付けは12万500ヘクタール。このうち渡島地域は3150ヘクタール。今から20年ほど前は5200ヘクタールあったのが、である。生き残りは「食味のいい、消費者に支持される米」を作ることと言われるが、今があるのはその努力故…▼道南農試が取り組み、生み出された「ふっくりんこ」も然り。一流ブランドに育て上げられるかどうか、その一翼を担うのは地域の人たち。みんなが食べて、評価することによって生産農家の意欲は喚起され、さらに素晴らしい米になる。「ふっくりんこ」にはそんな道を歩ませてあげたい。米離れの現実は厳しいが…。(N)


7月18日(月)

●「審議の場に酒気を帯びて入り、品位を乱す行為をしてはならない」。当たり前過ぎて、言われる方が恥ずかしくなる、いわば良識の範ちゅうの話。それが欠けていたのが他ならぬ国会、厳密に言えば衆議院というのだから情けないというか…▼良識とは「健全ですぐれた見識」という意味。選挙で選ばれる国会議員は少なくともその見識を持ち合わせた人たちのはずだが、その建前と現実の間には結構開きがあるようで。良識の場にふさわしくない言動、行動など、時々疑問を抱かせる光景が飛び込んでくる▼本会議などが顕著だが、居眠り、おしゃべり、読書、それに最近は携帯電話のメール…。立って歩く議員もいる。学校の教室の方がまし、とは言い過ぎかもしれないが、新たに表面化したのが酒を飲んでの出席。これまた非常識なことだが、現実の話だからたまらない▼それは6月17日。郵政民営化で揺れる今国会の会期延長を決める衆議院の本会議だった。酒気帯びで出席した議員がいるとされ、与野党が9人の名をあげて懲罰動議を提出。ところが、最初の正論は失せて、事実関係を明らかにすることなく冒頭の申し合わせ内容で幕▼量の多少にかかわらず酒を飲んで国会に出席することがいいか悪いか、子供でも分かること。それを国会議員があえて確認し合った。恥ずかしいついでに居眠り、おしゃべり、読書、携帯メールの禁止も申し合わせてはどうか。何とも次元の低い話であるが、この際だから…。(N)


7月17日(日)

●夏だというのに暖房の話で恐れ入るが、「ペレット」というのを知っているだろうか。廃材や残材など木質系の副産物を粉砕、圧縮して長さ1、2センチ、直径1センチ内の大きさに成型した固形燃料のことだが、そのペレットストーブが脚光を浴びている▼北海道はストーブなくして冬を越せない。明治以後、開拓が本格化する中で、その歴史が始まったと言われるが、国産初のストーブが誕生した地は函館。一般化はしなかったが、1856(安政3)年、武田斐三郎の設計で箱館奉行が製作したという記録が残っている▼以来、幾つか変遷をたどって今日に。燃料が容易に手に入るとして薪(まき)の時代が長かったが、その後、石炭が主役となり、灯油にバトンタッチされ、今やその灯油にガス、電気が加わる。そして環境問題が言われる中、光が当たっているのが「ペレット」▼発祥は欧米。1970年代以降、2度あった石油危機の際で、わが国に伝わってきたのは1982(昭和57)年。普及するに至らなかったが、今、見直されているのは品質とストーブ性能が向上したから。そして未利用資源を有効活用する暖房だから、環境にもやさしい、と▼道も奨励に乗り出した。この話を取り上げたのも、具体的な施策として打ち出したペレットストーブ導入支援事業(購入費の一部補助)が、ホームページに掲載されていたから。残念ながら道南はモデル地区から外れているが、温暖化防止に貢献する暖房であるというのだから、無関心ではいられない。(A)


7月16日(土)

●あなたは多機能派、それともシンプル派? そう聞かれての答えは若者なら多機能、中高年者はシンプル…。察しがつく人もいようが、何の質問かと言うと、テレビに始まってDVD、パソコン、エアコン、携帯電話など家庭内機器の機能について▼この10年ほどの機器類の進化は著しい。パソコンや携帯電話が象徴的だが、短期間に次々と更新し、その度に機能が増え、便利な世界へと誘っている。実際、多機能追求の時代は続いているが、その一方で操作の複雑さというか難しさからシンプルを求める声も▼湯まわり設備メーカーのノーリツが40歳以上の人を対象に行った調査結果が興味深い。そこに浮かび上がったのは複雑な操作、小さな文字表記を何とかしてほしいという思い。中高齢者になると、確かに使っている機能はほんの一部だけ、という人が少なくない▼必要に迫られていないから、とも言えるが、使いこなそう、使いこなさなければならない、という必然性もない。そこにシンプルなものを求める背景があるが、特に操作性の面でシンプルニーズは強く、それは実際に購入する際の意識、判断材料にも表れているのだと…▼「シンプルなものを求めたい」と答えた人が、40歳台で59%、50歳台で72%、60歳台に至っては78%だったという。65歳以上の人が2500万人いると言われる高齢化の時代。あと20年もすれば多機能派が圧倒的になろうが、今はどう考えるべきか。この調査が一つの示唆を与えている。(H)


7月15日(金)

●かつて学校の壁や天井に吹き付けられたアスベスト(石綿)。児童生徒の健康に影響するのではないかと一斉に撤去されたが、今、再び問題になっている。自宅で夫の作業服の石綿を吸い込んだ主婦が亡くなったことが判明するなど、ここ2週間ほどアスベストによる健康被害が次々と明らかに▼アスベストは耐熱性があり、摩擦に強く切れにくい特性を持つ。50年ほど前から耐火被覆材などとして使われるようになったが、頑丈で変化しにくい鉱物繊維で、人が肺に吸い込むと組織に刺さって肺の中に残って、悪性中皮腫などの病気を引き起こしてしまう▼しかも潜伏期間は15年から40年と長い。冒頭の主婦の夫も13年間、アスベストの原料供給を担当した人だった。主婦は夫の作業服の石綿を風呂場などで洗っている時に吸い込んだのが原因で、何十年もたってから発病したということだが、大手機械メーカーなど従業員の死亡は全国で460人(13日現在)を超えている▼函館では17年前から4年間でアスベストを使った10施設のうち9施設は撤去されたが、天井全面に1センチほどの厚さで吹き付けられている市民体育館アリーナは先送りされたままだった。幸い健康被害などは報告されていないというが、やっと今月下旬から撤去することに▼これで学校や公共施設は大丈夫かもしれないが、心配なのは一般のビルや民家などには残っている可能性があること。ギリシャ語で「消すことができない不滅」を意味するというアスベスト。この機会にくまなく調査し、完全に撤去してほしいものである。(M)


7月14日(木)

●戦後60年―。沖縄をはじめ悲惨な爪(つめ)跡は未だ消しようもなく、心の傷跡も癒えていない。その姿を目にし、話を聞くにつけ、戦争がいかに悲惨なものかを教えられるが、忘れてならないのは後世に伝える努力。地域で経験したさまざまなことを含めて…▼函館もそれを求められている。出征し戦没した人が4000人とも言われるほか、米軍の激しい空爆に見舞われ、樺太からの引揚者を迎え入れた地域である。本紙も現在、証言企画を連載中だが、市は今年、さらに体験や資料を網羅した新たな記録集を発刊する方針▼函館が空爆を受けたのは終戦1カ月前の7月14、15日だった。「七月十四日早朝、太平洋上の空母から発進したアメリカ軍の艦載機約2000は、一斉に攻撃を開始した」「…米軍機の攻撃は七月十五日も行われた」。函館市史(通説編第三巻)はこう記述している▼さらに続く。「十四日二四時現在で連絡船はほぼ全滅の状況にあり、この段階では無傷のままであった第一青函丸も翌十五日の空襲で沈没…青函連絡船による輸送ルートは壊滅的な打撃を受けたのである」と。この空襲による陸上での死者は79人とも言われ、家屋の損壊、火災も▼体験した人は高齢化し、豊かな時代になった今、この大戦に対する認識が風化しつつある、のも事実。記録集の発刊について市は「平和について考える、新たなきっかけになれば…」と説明しているが、それも伝える努力の一つ。「8月15日とともに、函館では7月14、15日を忘れずに」というメッセージでもある(H)


7月13日(水)

●道路公団の鋼鉄製橋梁工事を巡る談合事件で、天下りの元公団理事らが東京高検に逮捕された。その企業のため出身官庁・団体に「顔」を利かす―とはいえ制度は競争入札―合法的に見せなければならない。問題が凝縮された典型的な事件である▼天下りの弊害が言われて久しい。専門知識を持つ人が必要といった理由は表向き。本音は官とのパイプであり、もっと露骨に言うなら利益誘導役。それは天下り官僚らの高額な給与が物語っているが、官(特に中央省庁・都道府県)も民(大企業)もあまりに無神経▼天下りとは言いえて妙だが、講談社刊の「日本語大辞典」はこう解説している。「天から人間界におりてくること」「上役から下役へなど上からの強制的な押し付け」とともに「退官した高級官僚が職務と関連のある団体や民間会社などに幹部として就職すること」と▼その実態だが、例えば昨年度の場合、人事院が承認したのが89件、府省の承認が630件。人数の多少は議論外。問題はこれほど弊害が言われ、批判を受け続けているのに、この人数だということ。「官と民 打算で成り立つ 天下り」。こんな川柳すら頭に浮かんでくる▼官が駄目なら民が行動を、と期待するが、大企業も同じ体質のようで…。今回の談合事件を受けて、経団連は会員企業に天下りの受け入れ自粛を求めることを検討していたが、11日の正副会長会議が出した結論は見送り。国、大企業の双方から反発があったから、という。呆れて続ける言葉もない。(N)


7月12日(火)

●ドングリころころ ドンブリコ お池にはまって さぁ大変〜。童謡に出てくるドングリが、13日午後(日本時間14日早朝)打ち上げられる米スペースシャトル「ディスカバリー」で、宇宙飛行士の野口聡一さんとともに宇宙に旅立つ▼無重力の宇宙を経験した後でも発芽するかどうかを実験するためだ。11年前、向井千秋さんが乗船したスペースシャトルには4匹のメダカ(オス、メス各2匹)が同船し、無重力を体験した。宇宙でも子孫を増やすことができるか、人類が宇宙で暮らすことが可能かを調べるために▼地球に帰ったメダカは最初水槽の底にべたっと沈んでいたが、時間がたつにつれ泳ぎだし、15日間の飛行で無重力に十分適応。4匹は宇宙でも元気に卵を産み、人類の宇宙進出へのデーター収集に寄与した。宇宙メダカの子孫は、教材として全国の小学校に贈られている▼先ほど、NASAの探査機が超高速で遠い宇宙を飛んでいるすい星に衝突体を命中させた。太陽系ができた当時の物質が閉じ込められており、生命誕生の手掛かりをつかもうというもの。宇宙へのロマンがかき立てられる▼終戦後の食糧難のころ、よくドングリを食べ、実を絞って油を取った。宇宙に旅立つドングリは野口さんの出身地・横浜の里山から採ったもので、虫食いの有無や形などを調べ、バケツ1杯の中から選ばれた精鋭20個。無重力を克服し「子孫」を増やし、緑いっぱいの地球にしてくれるかどうか、これも宇宙のロマンである。(M)


7月10日(日)

●「生活習慣病」は中高年に限らず今や最大の健康課題。誰もが知るように肥満や糖尿病などの総称で、その名の通り生活習慣が鍵を握るとされる。かつては「成人病」と呼ばれていたが、食生活や社会生活の変化から要注意は成人だけではない、と▼とりわけ糖尿病が怖いのは合併症を誘発するからだが、健診の度に「血糖値はどうか」と気になるのもそれ故。そうなる要因として不規則な生活が挙げられ、規則正しくが予防対策となるが、よく言われるのがバランスをとった食生活の遵守であり、適度な運動▼その運動の中で真っ先に奨励されるのがウオーキング。確かに負担がかからず適度。20分も歩いていると、じわっと汗がにじんでくる。言うは易く行うは難し、なかなか続かないという人が多いと言われるが、必ずしもそうでなく、意識して取り組んでいる人が少なくない▼そう実感するのは、時々訪れる早朝の五稜郭公園の光景。慣れたコースもいいが、身近に1時間程度のコースを幾つか持っていると気分転換にもなって続けやすい。それは自分で考えたら、と言われれば確かにそうだが、何か参考になるものがあるとありがたい▼そう思っていた一人だが、先日、本紙が報じた記事によると、市立函館保健所がそのマップ作りへの取り組みを始めている。とりあえず初年度の今年は西部、東部、亀田など9地域で1時間程度の4、5キロコースを10月にも提案する予定という。さて、どんなコースが登場するか、楽しみが広がる。(H)


7月9日(土)

●7月は社会を明るくする運動の強調月間。「すべての国民が力を合わせて犯罪や非行のない社会を築こう」という趣旨で展開されている全国的な運動。今年も「ふれあいと 対話が築く 明るい社会」を統一標語に、各地で催しが開かれている▼この運動が始まったのは1951(昭和26)年。今年は第55回に当たるが、その背景にあったのが戦後の混乱期の社会。貧困などから少年犯罪が多く、それを憂い、心を痛めた東京の銀座商店街の人たちが、犯罪から少年を守るフェアを開催したのがきっかけとされる▼その精神が今に受け継がれているということだが、願いとは裏腹に依然として犯罪は多く、しかも凶悪化している。安心できる社会という認識は揺らぎ、読売新聞社が4月に公表した戦後60年世論調査で、問題点のトップに「犯罪の増加」が挙げられても驚きはしない▼さらなる悩みは低年齢化に加え、少年の犯罪そのものが高水準にあること。もちろん全国的な傾向だが、道内も然りで、昨年1年間に検挙された少年は前の年より349人増え、実に5220人(道警の統計)。警察などの対応だけでは手に余る現実を教えている▼その役割を担わなければならないのが地域社★会。函館も含め住民組織による防犯ボランティア活動が生まれているが、同時に課題とされているのが無関心の除去。社会を明るくする運動は「地域で考えよう」という思いを広げる機会とも言える。函館では16日午後1時から市民会館で第13回市民のつどいが開かれる。(H)


7月8日(金)

●函館地域の自然財産は、と聞かれて思い浮かぶ一つが「赤松街道」。アカマツは青森が天然分布の北限とされ、しかも函館地域にとっては歴史の語り部としても貴重な存在。その位置づけに異論を挟む人はいまいが、今、老齢化対策が大きな課題となっている▼「赤松街道」は国道5号の七飯町峠下と函館市桔梗町の約14キロの間。道路両側に植えられている。特に七飯町の大中山と鳴川間の約2キロは美しいと言われ、1986(昭和61)年には建設省(現国土交通省)の「日本の道百選」に。実際、何度通っても感激を覚える▼誕生は1876(明治9)年。明治天皇が七重勧業課試験場を行幸した記念に植えられたと伝えられる。それから130年。重ねる年には勝てず、老齢化が進んできて、今や樹齢100年以上の木が半数余りを占める状況。毎年台風の度に倒木が心配されている▼昨年も25本を伐採せざるを得なかった。こうした姿に、管理者である函館開建が後継樹の育成に乗り出したのが1992(平成4)年のこと。まだ13年だが、その遺伝子を受け継いだアカマツ2世は、2000(平成12)年から国道のほか新道にも登場しつつある▼樹木を育てるのは息の長い大変な事業。近年、とりわけその価値が見直されているが、「赤松街道」のアカマツはその筆頭格。というのも、金と時間を要しても途絶えさせてはならない地域財産だからだが、大事なのは継続した取り組み。おのずと地域の共通認識も求められる。 (A)


7月7日(木)

●函館に夏がやってきた、そう連想させる一大歴史スペクタクル「市民創作・函館野外劇」。18年目の今年のステージが、いよいよ8日夜、幕を開ける。本番への準備は万端。会場設営や出演者の練習も終えて、あとは好天に願いを託すだけ…▼全国にはその地にしかない貴重な自然や文化、歴史に培われたイベントが少なくない。函館野外劇はまさしく今、その道を歩んでいる地域財産である。五稜郭を舞台にした壮大なロケーション、スケールの大きな演出など、その素晴らしい舞台は他の追随を許さない▼函館が創出した誇れる地域文化など、野外劇はさまざまな表現で賞賛され、その存在自体が羨(うらや)ましがられている。真似て幾つか野外劇を試みた地域もあった。しかし、人、金、態勢、どれ一つとっても甘くはない。いつしか姿を消している。それは函館野外劇の価値を裏付ける証しでもある▼「スタッフ、キャスト、ボランティアなど総勢1万人以上の函館市民によって綴(つづ)られ…人が、歌が、歴史が、そして函館への思いが夜空に向かってあふれ出す国内最大規模の野外劇…」(パンフレットから)。昨年は1万人が酔いしれた。今年はさらに多くの人に▼その人数はある意味、地域の理解を推し量る一つのバロメーター。今年の公演は初日の8日に続き9、15、16、22、23、29、30日、そして8月に入って5、6日(いずれも午後7時半開演)。関係者、出演者の熱い思いに地域がどう応えるか、函館の“市民力”を占う野外劇は本番を迎えようとしている。(H)


7月6日(水)

●母親に捨てられ児童養護施設で育った少年は「手紙を書くから」と言った母親の約束を信じて毎日、郵便配達を待っていた。成長して山村の郵便配達員になり、一人暮らしのおばあさんに息子の名前で服を贈ったり、手紙を代筆したり…(韓国映画「美しい郵便配達員」)▼一般的には無駄を省いて、もうけが出るようにするのが民営化だ。しかし、採算が取れない過疎地の郵便局などが廃止される可能性はある。政府は現状維持を強調しているが、将来の保証はない。民営化されたJRでは、経営の悪いローカル線が相次いで廃止された…▼自民党は郵便局はコンビニ並みになると紙芝居「あすなろ村の郵便局」で、民主党は小さな商店がつぶれると「あすなろ村の惨劇」でPR。衆院本会議の郵政民営化法案の投票中継を観た。「何が何でも早い衆院通過」に目が向いて、聞く耳を持たない表情の小泉首相▼民営化の問題点を十分説明していないから国民は蚊帳の外。「否決されたら衆院解散も」と脅しをかけたものの、与党に造反者が続出し、5票差で辛うじて衆院を通過。郵便事業には、すでに一般企業が参入しており、自由競争の原理で振り込み手数料の変動などは免れない▼郵便配達が登場しないのに「郵便配達は二度ベルを鳴らす」と題した米映画は「2度目のベルは決定的な報いを意味する」ことを教えている。民営化法案は参院に舞台を移す。2度目のベルを鳴らす時間はまだある。弱者から「美しい郵便配達員」と慕われるような改革しなければ。(M)


7月5日(火)

●地震の際の避難場所はかなり告知されているが、津波が街中に流れ込んできた時には…。公園や広場、グラウンドでいいはずはない。「どこか高台や高い建物に」。それぐらいは考えつくが、具体的にどこへ、となると、答えに窮する人が多いに違いない▼津波は怖い。押し寄せる速度が非常に速く、しかも深い所では波が低く、陸地に近い浅い所で高くなるという特徴があって現認しづらいから。昨年12月に発生し、死者・行方不明者3万7000人を出したスマトラでの惨状が記憶に新しいが、歴史的にも少なくない▼道南はその一つを経験した地域でもある。1993(平成5)年の北海道南西沖地震。震源地に近かった奥尻島に津波が押し寄せたのは発生からわずか2、3分後。気象庁が大津波警報を出した時には…。1960(昭和35)年のチリ地震津波も22時間半で日本沿岸にやってきた▼それほどに速い。津波の避難対応を急ぎ考えておくべき、と言われる理由もそこに。あり得ないことでない。警報などの情報に敏感になると同時に、避難の場所を考えておくべき。どう考えるか、政府が検討したガイドラインが示された▼市町村に対するもので、それは沿岸地区のマンションやホテルなどを「津波避難ビル」として指定する際の基準など。道南は津波に警戒を要する地形の地域であり、特に函館市の中心部などでは「津波の可能性が高い場合はここへ」と示しておくことは大事。備えあれば憂いなし、この「津波避難ビル」の考えもそこにある。(A)


7月4日(月)

●“団塊の世代”の人生に影響を与えたもののトップはインスタントラーメン。6月末に大手広告会社アサツーディ・ケイ(東京)が公表した調査結果だが、それにしてもカラーテレビの登場、東京オリンピック、安保闘争などを差し置いて、とは驚き▼確かに今から35年余り前に家を出て学生時代を過ごした人たちにとってインスタントラーメンは、貴重な存在だった。仕送りが届くと、まず箱(20袋か30袋入り)ごと買うなど、お世話になった一人だが、この結果はそんな“仲間”が結構いたという証しだろう▼ひもとくとインスタントラーメンが誕生したのは、1958(昭和33)年。日清食品が売り出した「チキンラーメン」が第一号。発売開始の際のキャッチフレーズは「お湯をかけて2分間」。魔法のラーメンと呼ばれたというエピソードが残っているのもうなずける▼生みの親は安藤百福氏(同社創業者会長)。おいしさはもちろん、調理が簡単なこと、保存できること、安全なことなどを目標に開発したという話が伝えられているが、その後、カップめんも開発され、袋めんとともに市場を大きくして今日に。世界にも広まっている▼これに刺激されたコーヒーを筆頭として、インスタント食品が次々と登場することになる。“インスタントブーム”の火付け役はラーメンと位置づけられるのはそれ故。食生活にもたらした功績も大なら、このトップランクが意味しているのは印象や影響も大ということ。それにしても誕生してわずか50年弱である。(H)


7月3日(日)

●依然として多い交通違反。この半年ほどの間にも飲酒、携帯使用などの運転に対する罰則が強化され、摘発件数は減ったとはいうものの、まだまだの域。「見つからなければ」「自分は大丈夫」といった勝手な解釈が消えない現実が透けて見える▼ルールに従い、危険とされることはしない。それはハンドルを握る者が認識すべき基本的な原則。守られるなら厳しい規制は必要ないが、現実はそうでない。昨年も全国で95万2000件もの事故が発生、7358人余りが犠牲になり、118万3000人が負傷している▼これでは罰則の強化に反論できない。危険運転致死傷罪が設けられたのに続き、昨年11月には酒酔い運転や携帯電話使用も厳しく規制された。それから半年。いずれも検挙、事故件数は減少した。効果があったということだが、なお根絶レベルにはほど遠い▼警察庁によると、昨年11月から今年3月までの5カ月間に、携帯がらみで発生した事故は427件。確かに減りはしたが、使用による摘発(昨年11月―今年4月)は依然として多く、全国で15万411人。道警函館方面本部管内も人ごとではない▼6月に行われたシートベルト着用違反者の分析結果が浮き彫りにしているのは、相変わらず問題が多いという姿。違反者の13%が普段から締めていないという実態が象徴的。選挙の投票率も然りだが、いつになったら“全道ワーストワン”の汚名を返上できるのか。少しも難しいこととは思えないのだが…。(N)


7月2日(土)

●ややピークを過ぎつつあるが、今年も立待岬のハマナスの花が、訪れる人を魅了している。ハマナスはバラ科の落葉低木で国内に広く分布し、自生南限は鳥取県西伯郡大山町。実が梨に似るところから「浜梨」の字が当てられ、それがなまってハマナスという和名になったと伝えられる▼石川啄木が歌集「一握の砂」で「潮かをる北の浜辺の砂山の かの浜薔薇(はまなす)よ 今年も咲けるや」と詠んでいるが、大森浜に咲くハマナスを見て、以前、東北地方で見た情景を思い出して歌ったとされる▼皇太子妃雅子さまの「お印」としても知られ、その花からは、香料の原料となるローズ油、根からは秋田八丈の染料が採れる。果実は食用となるが種の部分を食べると口の中がかゆくなることがある。果実酒を造る人も多い▼また花には豊富なビタミンCとポリフェノール類が含まれており、アイヌ民族が壊血病の薬としてせんじて使っていたとも。このポリフェノールに強力な抗酸化作用があることを北見工業大学国際交流センター教授の山岸喬氏が発見。ベンチャー企業「はるにれバイオ研究所」を小寺一氏と設立し、健康食品として商品化した▼5月の北海道薬学大会で、同研究所はハマナス花弁の成分に整腸作用と血中の中性脂肪の低下効果があることを発表したが、体臭、加齢臭の低減や細胞の老化抑制の効果が期待され、さらに研究を進めているところ▼道民に古くから親しまれ、道南では江差、奥尻、瀬棚町が町花に指定しているハマナス。今、そのハマナスに科学の面からも新しい光が当てられようとしている。(K)


7月1日(金)

●暑い日。沿道で大声で泣く婦人は釈迦問いに「家族5人と幸せに暮らしていましたが、主人が原因不明の病気で死にました。かわいい3人の子を残して。懸命に働いて子供を育てましたが、2年後に3人の子供も原因不明の病気で逝きました」▼「偉大なお釈迦様なら主人と3人の子をこの世に生き返らせて下さい」と嘆願。「過去に死者と葬式を出した家が無かったら生還させよう」と言う釈迦の条件に、婦人は25年間「死者を出さない家」を探したが、1軒もなかった。釈迦に「人間は生き返れないのですね」と報告(仏典の寓話)▼17歳の兄からいじめを受けていた15歳の少年が、兄を包丁でメッタ刺しにして殺害する事件が福岡市であった。「生き返ったら逆にやられると思った。生き返らぬほうがいい」と、逃げる兄を追いかけ、さらに数回刺して浴槽に投げ込んだという▼かのミケランジェロは創作のため人体解剖を手掛けた。若い頃に作った高さ40センチほどのキリスト像の表情など、解剖学を肉体表現に生かし、完ぺきを期した。博多人形師の置鮎与一も解剖学で骨格や筋肉を勉強し、人間の内面表現に迫った。人間の肉体は人間が生み出した最高の芸術である▼理科教室には人体の標本が欠かせない。「心臓が止まれば死ぬ。生き返ることはない。だから命を大事にせよ」と教わった。沿道で嘆き悲しむ婦人のように神仏に嘆願しても、殺された人間が生き返るのはゲームの世界だけ。その後の「喜怒哀楽」を体験させる生涯学習があってもいいのでは…。(M)


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