平成17年8月


8月31日(水)

●衆院選が公示された。否決したのは参院なのに、それも内閣不信任案でもなかったのに…。これまでの参考書になかった衆院の解散劇から3週間。街頭演説など各党党首の精力的な行動が目立ったが、公式な選挙戦に入ってボルテージは一段と▼小泉首相は郵政民営化の可否を問う選挙と強調、それが一つの争点になっているが、最大の焦点は小泉政権の継続か交代かの選択。望む政策として有権者は年金・福祉対策の充実、経済政策を挙げているが、それらの判断を含めて▼現実に内政、外交で「さぁ、どうする」と問われている政治課題は多い。それぞれに各党が“答え”を出しているが、現実問題として膨大な量の選挙公約を読み切るのは大変なこと。争点を分かりやすく示し、有権者にどう理解させるか、ポイントはむしろそこに…▼情勢の厳しさでは北海道の12選挙区、比例道ブロックも全国と同じ。選挙区で注目度が高いのは自民が新公認候補を送り込んだ道10区だが、新党が加わったことで比例も一段と複雑に。こうした中で函館・道南の道8区は民主の前職、自民と共産の新人の3人が立候補した▼「誰を…」。選ぶのは有権者。投票率は政治意識を推し量る一つのバロメーターと言われるが、その投票率が芳しくない。ちなみに函館(旧)は、前回(2003年11月)が57・48%など過去4回続けて60%を割っている。「何も変わらない」からは何も伝わらないし、何も動かない。各党から投げられたボールを送り返す日、9月11日こそ、その日である。(N)


8月30日(火)

●地球の温暖化防止対策は今、世界的に問われている最大の環境課題。現実問題として温室効果ガスの削減が提起され、急ぎ求められている行動が理解を広げる取り組み。その実例として夏のエアコン、秋冬の暖房の抑制対策が挙げられている▼夏対策を象徴した言葉が「クールビズ」。「クール(涼しい・格好いい)」「ビズ(ビジネス)」を合成した和製英語だが、事業所のエアコン温度設定を28度に抑えよう、そのために暑さをしのげる服装を、という趣旨で始まった運動のキャッチコピー。啓蒙の役割は十分に果たした▼その意味では目的を達したとも言えるが、続いて秋冬にバトンタッチする言葉が「ウオームビズ」。「ウオーム(暖かい・ぽかぽかする)」と「ビズ」の造語だが、「ウオーム」には「コールド(寒い)」と「ホット(暑い)」の間の温度というニュアンスもあるそう▼環境省が目標として掲げた(オフイスの室内設定)温度は20度。「クールビズ」がネクタイを締めず、上着を着ないで、何とか28度で凌(しの)ごう、という呼びかけだったが、「ウオームビズ」の提案は上着の下にベストを、ワイシャツの下に薄手のとっくりセーターを、などと▼「クールビズ」「ウオームビズ」いずれも源は温暖化対策だが、その一方で、固定観念のあった背広ファッションに一石を投じていることも事実。環境対策とファッション対策、さらに経済効果も期待できるとあれば一石三鳥。2323億円、第一生命経済研究所ははじき出している。(H)


8月29日(月)

●“びっくり解散”から3週間。衆院選があす30日、公示される。孫を連れてアニメ映画「マダガスカル」を観てきた。大自然に放り込まれた都会っ子動物たちが繰り広げる冒険。野生の本能に目覚めたライオンがステーキに見えた仲間にかみつく。動物園育ちのライオンが野生化すると、手におえない▼不謹慎ながら郵政民営化の矢を放ち、その後の“公認劇”を演出した小泉首相の姿を思い出してしまった。終戦記念日に靖国神社に参拝しなかったことにも明確な説明がなく、あたかも国民投票のように一つの政策についての賛否を迫る▼刺客、くノ一、安政の大獄、比叡山の焼き討ち…。本来、政治と無縁なはずの言葉が飛び交い、国民新党や新党日本などが立ち上がる騒動に。「改革を止めるな」「日本を、あきらめない」「改革力 公明党」「たしかな野党が必要です」「国民を見ずして、改革なし」▼各党のキャッチフレーズは今一つインパクトが低く、マニフェストも行革、外交、憲法、財政問題など近い将来の姿が見えずらい。マダガスカルのライオンは仲間を食べず最後に「友情の大切さ」に気づく。「哲学者は世界をいろいろと解釈したにすぎない。問題は世界をどう変革するかだ」(マルクス)▼政治課題が山積する中で、有権者が見たいのは政治劇でもなければ、批判合戦でもない。そこを各政党がどこまで認識しているか、公示後、それを示す時間は12日間しかない。(M)


8月28日(日)

●開館予定の11月末まで3カ月ほど、函館市中央図書館の開館準備が本格化している。五稜郭公園に面した旧渡島支庁跡地に建設された新館は、斬新なデザインで、明るく、近代的な造り。環境、利便性の面からも“学ぶ拠点”としての期待は大▼図書館は都市の重要な教育文化財産。その規模、位置づけなどが都市の文化度を推し量るバロメーターとさえ言われるのもそれ故だが、函館市にとって新館の建設は長年の懸案だった。というのも、広さ、利用しやすさなど、新館を求める時代背景が強まってきたから▼これまでの図書館に愛着を持つ人は少なくない。函館公園の南側という素晴らしい環境の中にあり、しかも味わい深い歴史的な建造物。1927(昭和2)年建築の3階建ての本館は、左右対称の正面など特色が多く、いかにも図書館といった雰囲気に満ちている▼だが、75年余の間に蔵書は増え続け、閲覧室なども十分確保できなくなったほか、市街地の変遷で利用者の利便性に欠け始め、さらにIT(情報技術)管理が当たり前の流れとなって…。紛れもない時代の移り変わりだが、それは建物の新旧ばかりでなく、求められる位置づけも▼新館に運び込まれる図書は新刊本5万7000冊など約36万冊。管理システムに沿って開架コーナーや書庫に仕分けする作業が本格化している。当たり前ながら新旧の雰囲気はまるっきり違うが、いつの時代も求められる使命は一緒。「より身近な存在に感じてもらいたい」。新館は今、そんなメッセージを発している。(H)


8月27日(土)

●道の建設業ソフトランディング対策モデル事業に、応募54事業の中から37事業が決まった。うち道南からは当地カレーライスの開発販売(八雲町)、機能性鶏卵の生産(上磯町)の2件。全道的にみると、かなり注目される事業が含まれている▼公共事業をよりどころに発展してきた、北海道経済にはそんな歴史があるが、その現実は…。「2005年度は1998年度の予算規模に比べ約53%にまで落ちている」(全国建設業協会)、「2004年度で既に1988年度並みの水準まで落ち込んでいる」(北海道建設業協会)▼かと言って、将来的に復活を望めるか、と問われると、答えはノー。それは公共事業依存からの脱却の問いかけであり、道と道建設業協会は2002年度から本格的な対策に。セミナーの開催などに加え、打ち出したのが新たな事業創出を支援するモデル事業▼新分野への進出や経営の多角化を模索する事業者に補助する制度である。道が昨年度行ったアンケート調査で「既に(他分野に)進出」16%のほか「具体的に検討中や模索段階」が46%という結果を受けたもので、さらに促す狙い。応募状況からも関心の高さがうかがえる▼新しい地域メディアの創出、介護付き有料老人ホームの運営、高級生食ペットフードの開発販売、エアコンの分解掃除、家庭玄関前の排雪、畑作に適した育苗用培土の製造販売、本ワサビ栽培…。福祉から農漁業まで多分野にわたり、それぞれ考える段階から、試みる段階に入った事業。建設業界からも熱い視線が寄せられている。


8月26日(金)

●本人は「大丈夫」、家族は「心配で」。高齢者の運転をめぐり浮かび上がっている意識構図だが、うなずく人は結構多いに違いない。確かに個人差はあり、年齢だけを持ってしての線引きや是非の判断はできないが、これからの社会への紛れもない問題提起▼わが国で発生する交通事故は、昨年で95万2191件。7000人台まで死者が減少したとはいえ、発生は大きく減っていない。その中で高齢者がかかわる事故はというと、むしろ増加の傾向。今後も運転人口率が高まり続けるだけに、懸念は広がるばかり▼人間誰しも年齢とともに反射能力が落ちるし、視力も衰える、だから事故に遭遇する確率は高い。三段論法のようだが、事故を起こしてからでは遅い、責任は家族にも及ぶ、できれば運転は控えてほしい。家族のそんな思いは、今年の警察白書からもはっきりとうかがえる▼「(70歳以上の高齢者がいる家族のうち)95%が危険と認識し、うち18%は運転をやめてほしいと思っているが、85%の本人は免許の返納を考えていない」。気になるのは返納しない理由だが、挙げられたのは「運転能力が低下していない」「他の交通機関が不便」など▼後者は分かる、地方ほど実感することだから。悩ましいのは前者。一般論として車の運転で最も取り除きづらいのは自己過信であり慣れと言われるから。ただ法的に問題ない以上、免許の返納や運転の自粛を強制することはできない。これも高齢社会の一つの現実。「気をつけて運転を」という言葉しかない。(N)


8月25日(木)

●わが国に「海洋」と名がつく気象台は4カ所。神戸、舞鶴、長崎と函館だが、函館海洋気象台がその名に改称されたのは1942(昭和17)年の8月25日。今から63年前にさかのぼる。以来、東日本の海洋、海上気象観測などに役割を果たしている▼大変な歴史的事実なのに、残念ながら意外と知られていないが、実は気象観測の最初の地こそ函館。1872(明治5)年、開拓使による気候測量所が設けられ、1日3回の観測を開始した、という記録が残っている。その日は陽暦で8月26日とされる▼わが国における気象観測開始の歴史をひも解くと、函館に続いたのは3年後の1875(明治8)年に始まった東京。その翌年に札幌で開始され、さらに長崎、広島と…。一方、道内では札幌の3年後の1879(明治12)年に根室、そして1884(明治17)年には寿都が▼測量所の時代からなら133年。函館の誇れる歴史財産として、その重みが伝わってくるが、測候所の名の時代を経て海洋気象台に。この間に現在の美原に移転し、戦後は観測船の配属、気象レーダー(函館山・横津岳)の設置など観測態勢の充実が図られ、今日に▼農業、水産などの産業ばかりかレジャーなど、今の時代、気象情報なしの生活は考えられないばかりか、今後ますます依存度が高まると言われる中で、地元の気象台は頼れる身近な存在。それも陸上、海洋・海上、航空気象の観測を合わせ担っている気象台なのだから。 (N)


8月24日(水)

●歓喜から落胆へ。夏の全国高校野球で、勝ち進むたびに「栴檀林、栴檀林、栴檀林〜」と球場に響き渡った駒大苫小牧高の校歌。57年ぶりに夏連覇の快挙を成し遂げ、その興奮が覚めやらぬ22日夜、野球部の部長が部員を殴るなどした事実が発覚した▼猛暑の甲子園での試合にはスタミナがいる。北海道の選手は四苦八苦。駒苫は夏ばて防止に3食ごと茶わん3杯の白米を食べることを決めたということだが、ことはその食事のルールを巡って。チームが甲子園入りした7日の夕食だった▼この部長は、6月にも朝練習でエラーなどミスした同じ部員の顔などを平手で数回殴ったことが。親は「30、40回は殴られている」とも言っているそうだが、学校側は高野連への報告遅れを「子供たちの将来を考えて」と説明している▼栴檀(せんだん)は白檀(びゃくだん)の異称で香木。栴檀の林に入ると自然と香気に染まる。「栴檀は双葉より芳(かんば)し」の如く、発芽の頃から香気があるように、良い環境で育つ人は大成するという意味が込められている。暴力は児童生徒を育てる「愛のムチ」にはならない▼明徳義塾は野球部員の喫煙と暴力事件で開幕2日前に出場を辞退。高野連が報告の徹底を指導した矢先のことだった。部員ばかりか生徒たちが受けたショックは大きい。栴檀の精神で甲子園を沸かせたミラクル野球。報告を受けた高野連がどう対処するのか、優勝旗返還という事態だけは避けたい。素晴らしい試合をし、結果を残した部員には罪はないのだから。(M)


8月23日(火)

●「虹と雪のバラード」。札幌冬季オリンピックのテーマ曲となった歌と言えば分かりいいが、トワ・エ・モアが歌ってヒットした後世に残る一曲。「あの感動を伝えたい」。そんな思いが詩碑の建立を促し、大倉山ジャンプ競技場に誕生するという▼メロディーもさることながら詩が素晴らしい。「虹の地平をあゆみ出て 影たちが近づく 手をとりあって 町ができる 美しい町が あふれる旗 叫び そして唄 ぼくらは叫ぶ あふれる夢に あの星たちのあいだに眠っている北の空に きみの名を呼ぶ オリンピックと」▼作詞したのは札幌医大教授で、詩人としても知られた河邨文一郎さん(故人)。NHK「みんなのうた」で「札幌五輪のうた」として放送され、オリンピックの感動とだぶって広く歌われるように。「オリンピック賛歌」とも呼ばれる理由もそこに由来する▼そのアジア初の札幌オリンピックが開かれたのは1972(昭和47)年。40歳から下の年齢の人は記憶にないかもしれないが、思い出されるのがジャンプの「日の丸飛行隊」。70メートル級(現在のノーマルヒル)で、日本人選手が金銀銅メダルを独占した快挙である▼33年経った今も、その映像とこの曲が脳裏で重なっている。詩碑は黒御影石の銘板と高さ2・5メートルの鋼鉄製モニュメントから成り、9月末に除幕式が行われる予定という。できるならば、あの感動をもう一度…。2007年には札幌でFISノルディックスキー世界選手権大会が開かれる。(H)


8月22日(月)

●「一公演1000人」の壁を超えた。市民創作・函館野外劇の入場者のことだが、それは理解の輪が広がったことの証し。公演9回(雨のため1日休演)の総入場者は9140人。当面の目標にしてきた大台に乗せた意義は大きく、今後の弾みに▼五稜郭の絶好のロケーションと市民ボランティアの心意気が支えてきた野外劇。運営面で課題を抱え、様々な苦労を経験したかいあって知名度は徐々に広がり、今や函館の夏に欠かせない文化財産であり観光財産。それを立証する一つのバロメーターが入場者数だった▼「五稜星を永遠に」が演じられて15年。マンネリ化の打破と将来へのステップアップを志向して選択したのがリニューアル。「星の城 明日に輝け」はこうして生まれた。その目指したところは、よりプロに近いステージ。それから3年、思いは着実に実を結びつつある▼これほどの規模の野外劇を継続開催することは容易なことでない。体制づくりに始まって資金手当てまで。断念した幾つかの都市がその難しさを教えている。函館が賞賛される理由もそこにあるが、継続が力となって「野外劇といえば函館」という現実を手にしている▼だからと言って悩みが解消されたわけでない。「もう少しの域にきている」という段階。もう一歩…。そこに必要なのは行政や経済界を含めた市民の後押し。「足を運んで、感動した思いを発信する輪」をどれだけ広げていけるか。函館野外劇は改めて函館の“市民力”を問いかけている。(N)


8月21日(日)

●今年の甲子園も“駒苫”が席巻した。57年ぶり、2年連続して全国の頂点を極めたのだから、そこには「快挙」以外の言葉はない。ただでさえ昨年の優勝校というプレッシャーがある中で。再びドラマを生み出したのだから、賞賛してあまりある▼冬という気象条件を抱える北海道は、屋外スポーツでハンディを背負っている。甲子園ではなかなか勝てない、高校野球でも“冬の時代”が長く続いた。その冬対策はこれからも向かい合う課題だが、練習方法の工夫などで徐々に克服しつつあるとも言われるまでに…▼北海道のチームとの対戦校は密かに喜んだと言われた時代が懐かしい。実際に1回戦突破でも大きなニュースだった。その積年の憂さを晴らしてくれたのが昨年の駒大苫小牧だが、あれよあれよという間に決勝まで駒を進めて初優勝。その記憶がまだ新しいのに、今年も…▼確かに下馬評は高く、期待も大きかった。だが、2年連続の優勝までの予想となると話は別。簡単でないことは半世紀余り出ていないという歴史が物語っている。意識するなと言っても肩には「昨年の優勝校」という重い荷物がずっしりと。それも克服してしまった▼5試合それぞれにドラマがあった。快勝した試合、接戦をものにした試合、戦いぶりは見事の一言。地区予選で甲子園への道を閉ざされた多くの球児も拍手を送ったに違いない。駒大苫小牧が夢を、目標を与えたとも言える。至難の連続優勝、それを北海道勢が成し遂げた、立派と言うしかない。(H)


8月20日(土)

●「都市景観」。この言葉を使える都市は恵まれている。というのも、それは立派な、かけがえのない都市財産を有していることの証しだから。実際に条例の制定などを通して保持していく取り組みをしている市町村は、全国的にもごく一部でしかない▼都市景観と言えば欧州各地に参考事例が多い。旅行でそれを実感した人も多かろうが、実に大事に考えている。例え不便なことや都市整備に支障が生じようとも…。歴史を積み重ねてきた景観は特にだが、そこにあるのは誇りであり、今、大きな財産となっている▼わが国はそこまで徹底されてこなかったが、近年は違って、まちづくりの柱に据える市町村が増えている。函館市もその代表的な都市。制定された景観条例をバックボーンに、都市景観審議会が“お目付け役”を担って、ハード、ソフト両面で一定の成果を挙げている▼「さらに充実を」。この当然の問いを具現化していくためには、規制に加え、さまざまな角度から助言する専門家の存在が欠かせない。函館市では2年前から景観アドバイザー制度を設け、公共事業のほか、建築物や広告物のデザインや色など、景観面全般に意見を求めている▼現在のアドバイザーは3人で、これまでに対応した相談は約200件。相談の増加は歓迎すべきことであり、その一つひとつが将来に大事な意味を持つ。ただ、求められるのはそれに応えられる体制づくりで、市は増員を柱に体制の拡充を検討しているという。もちろん、その考えに異議があろうはずはない。(N)


8月19日(金)

●主語として安易に口にしてほしくない。かねがね、そう思っていた言葉がある。その主は国会議員という人たちであり、気になる言葉とは「国民」。国会の場や国政選挙の際には、ことさら多く耳にするが、ついに新党の名にまで登場してしまった▼日本語大辞典(講談社刊)によると、「国民」とは「一国の統治権のおよんでいる所にあって、その国籍を持っている人々」「一国を形づくっている人間の全体」。ほぼ全人口に匹敵するとしてわが国なら1億2700万人、有権者の数と受け止めるなら1億人余になる▼その「国民」を自分の都合いいように使い分けている姿は、国会の委員会審議などで見かける。「それが国民の声ですよ」「国民は怒っていますよ」…。その際の国民とは、どこまでの人を指しているのか不明だが、この漠然さが逆に使いやすい、ということかもしれない▼「国民」のついでに「政治」をめくってみると、「国や共同体を治めること」のほかに、こんな解説も。「ひろく社会集団がその意思を決定し、メンバーを拘束する手続きや仕組みと、それにともなう権力闘争などの現象」。今回の解散劇とだぶって映るが、その主役は「国民」▼そう考えると、説得力を持たせる政治家の枕詞、という説も頷(うなず)ける。何とも便利な、使いやすい言葉なのだと…。だから、そう目くじらを立てることはない、という向きもあろうが、忘れてほしくないのは「国民」という言葉の重み。願うはこの一点である。(N)


8月18日(木)

●「マニフェスト」。いわば“公約”を具体的に示したものと考えれば分かりいい。ラテン語で「はっきり示す」という意味だそうだが、一般的には政党の「政権公約」と訳され、イギリスなどで根づいているシステム。わが国での歴史は始まったばかり…▼これまで選挙の際に示されたのは、表現が抽象的、能書きを掲げただけと揶揄(やゆ)されてきた「選挙公約」。「マニフェスト」との違いは、端的に言うなら、政策の内容を具体的に示すか否か。どっちがいいかは聞くまでもないが、それを制約していたのは公選法▼選挙期間前、期間中も簡単な法定ビラ以外は配布してはならない、とされていたため。それに異を唱え「マニフェスト」を提唱したのは前三重県知事の北川正恭氏。民主党がその実現を模索、自民党が応じ、公選法の改正によって配布場所の制限つきながら配布が可能に▼ただ、つきまとう問題は示す側の姿勢であり行動。「選挙公約」も「マニフェスト」も有権者への約束という意味では同じ。幾ら具体的に示そうが、守らなければ同じ、ということである。心地よい数字を並べ合うだけになりかねない、といった危惧(ぐ)の声が聞かれるのもそれ故▼大事なのは約束をどう守るか、守ったかという視点。問われて然るべきは、自ら一定期間ごとに検証して、その結果を具体的に明らかにすることであり、それが伴わない限り「マニフェスト」は上辺だけのもので終わり、本物になりはしない。そこをどう見極めるか、有権者にはその眼力も求められている。(N)


8月17日(水)

●よく「災害は忘れた頃にやってくる」と言われるが、とんでもない、このところ「地震は忘れる間もなくやってくる」。16日午前11時46分ごろ、宮城県沖を震源に発生した地震(マグニチュード7・2)は最大震度6弱、東北地方を広く襲った▼わが国は地震列島と呼ばれ、関東大震災をはじめ大地震に見舞われた歴史は数々。死者48人、負傷者4800人などの被害をもたらした昨年10月23日の新潟県中越地震(震度7)の記憶は鮮明だが、あの阪神淡路大震災、北海道南西沖地震の後も大きな地震は多く…▼気象庁の統計をひも解くと、それをより実感する。この10年の間に震度5弱以上が観測された地震は実に41回もあり、さらに建物の損壊などがあった震度4以上となると68回。このうち北海道、青森を震源とした地震は釧路沖4回、青森東方沖2回など9回を数える▼地震は突然襲ってくるから怖い。しかも北から南まで全国的に起きるから安心していられない。今年も上半期だけで13回。3月20日(震度6強)、同22日(同5強)、4月20日(同5強)、5月2日(同4)と続発した福岡西方沖地震は、新潟県中越地震からわずか5カ月後…▼幸いにも16日の地震では道南に直接被害はなかった。だが、知っておきたいのは、毎日どこかで震度1以上の地震が発生していること。10、11、14日各4回、12日2回、13日1回、15日3回、16日7回(うち宮城県沖4回)。10日から1週間の地震情報がそれを教えている。(H)


8月16日(火)

●函館観光に求められていることの一つが「優しさ」と「きめ細やかさ」ではないか。そんな話を観光に詳しい識者から聞いたことがある。「優しさ」はホスピタリティーに通じ、「きめ細やかさ」は情報や利便性の提供…。それが徐々に形となり始めている▼そう実感させる事例が先日の本紙で報じられていた。「函館バスと函館山ロープウェー 片道ずつ利用できます」「函館山の往復乗車券を販売 格安」という見出しがついた記事。まさに利用者の側に立った「きめ細やかさ」の提供。実現したことに大きな意味がある▼函館観光は長きにわたり、受け身で通用してきた。というのも、恵まれた歴史的・文化的資源を求めて年間500万人もが来てくれる土壌があったからだが、その結果として自分たちの論理が優先してきた感は否めない。バスとロープウエーの連携はその逆…▼一人の観光客として考えると分かりいい。函館に来たからには夜景を見たい、駅前からはバスでの往復が便利だが、せっかくだからロープウエーにも乗ってみたい、そんな思いも込み上げてくる。だったら片道ずつ利用してください、という提案はむしろ当然のこと▼両社は大人1000円(子ども半額)と割安料金で踏み切った。PRが十分に行き届かず、すぐの実効は求められないかもしれないが、敢えて取り上げたのは、そこに今の函館が問われている大事な視点があるから。まだ1カ月ほどだが、この連携、決して「ちょっとしたこと」ではない。(A)


8月15日(月)

●物資輸送の青函連絡船をかかえた戦時中の国鉄函館駅。徴兵される男性に代わって若い女性が24時間交代の激務。仕事が終わって仲間8人で分けて食べた1個のリンゴ。貨車で運ばれた来た石炭を大八車に積んで引く14歳の少女。本紙の「銃後の乙女たち」に胸が痛む▼原爆投下の長崎。郵便配達中に被爆した16歳の少女。家族の安否を心配する便りを必死に届けようと、爆風に吹き飛ばされても「死ぬもんか。死ぬのはいやだ」と叫んで。この少女の半生を描いた英国のジャーナリスト著「ナガサキの郵便配達」がこの夏、復刊された▼先ごろ、特攻隊が飛んだ鹿児島県知覧町を訪れた元教諭の知人は「今、俺は征く。母を呼べば母は山を越えてでも、愛の彼方からでも馳せ来る。母ほどありがたいものはない。母、母」という遺詠に涙したという。九州各地から飛び立った若者は1036人。母親の偉大な愛に包まれて…▼米兵の死者が1700人を超えたイラク。陸軍兵の息子を失った母親が「息子はなぜ死んだのか、イラク戦争にどのような大義があったのか、大統領に問いたい」と反戦を訴え、大統領が休暇中のテキサス州で座り込みを続けている。同じように息子を亡くした多くの母親たちも駆けつけて▼30`もある小荷物を区分けして「泊まりの晩は労務米としておにぎり1個だった」。ヤミ米にも目をつぶった。身を粉にして力仕事をこなした「銃後の乙女たち」には頭が下がる。函館も女性の力なしには復興はなかった。きょう15日は60回目の終戦記念日。彼女たちに感謝し、改めて平和のありがたさをかみしめたい。(M)


8月14日(日)

●どうアピールするか、総選挙に向けた5党のキャッチフレーズが出そろった。自民は「改革を止めるな。」で、民主は「日本を、あきらめない。」、公明は「改革力  公明党」、共産は「たしかな野党が必要です」、そして社民は「国民を見ずして、改革なし。」▼言いたい思いを凝縮した言葉を考えればいいわけではない。キャッチフレーズの鍵は訴える力であり、政党が神経をとがらすのもそれ故。発表された中で際立つのは「改革」の文字。郵政民営化を構造改革の本丸と位置づける与党の自民、公明は当然として、社民も採用した▼これに対して、民主は「日本」と「あきらめない」の二語に政権交代への思いを託したのだと。漠然とし過ぎとの評もあるが、当初の段階で“郵政土俵”に乗らない考えをとり、幅広い政治課題の問いかけを模索したためとも受け止められている▼共産は「たしかな」の枕詞までつけて「野党」色を鮮明にした。郵政民営化を巡っていち早く「政府与党が仕掛けてきている以上、受けて立つ」とし、重点項目に掲げた姿勢を二語に込めた印象。この5党のキャッチフレーズ、間もなくポスターなどで目にするようになる▼強烈に仕掛けた小泉自民、対する野党。解散直後に行われた全国紙などの世論調査では解散支持が高かったほか、内閣支持率、政党支持率とも自民に分があった。短期決戦の中で変わるのか、変わらないのか、自民の公認問題に目が奪われる感がある中、公示日は2週間余り後に迫っている。(H)


8月13日(土)

●52年から60年前のことだから今日的価値はないにせよ、預けた人、家族にとっては苦労が染み込んだ、かけがえのない財産…。戦後、引揚者から国が預かった形になっている通貨などの個人財産が今も主の申し出を待ち、函館税関の倉庫で眠っている▼保管されているのは、終戦の1945(昭和20)年の9月から、その後、ほぼ8年の間に引き揚げてきた人たちが持っていた通貨や証券類。「持ち込む通貨がすべて出回るとインフレを招きかねない」とGHQが求めた措置で、つらい思いながら預けざるを得なかった▼わずかな蓄え、当座の生活費…。誰一人として手放したくなかったが、逆らうこともできず、預けた人は2万8000人、件数にして10万3000件を数える。そして1953(昭和28)年の9月から返還が始まったが、預け主に戻ったのは未だ3割強でしかない▼「眠らせたままにしておくのは忍びない」。誰しも抱く思いの一方で、引き取りを諦めてしまったり、預けた本人が亡くなり家族が知らないでいたり、で返還は進まない。かと言って連絡をとろうにも、混乱した当時のこと、記された住所に現住しているはずもない▼残された道は照会、申し出を待つことだけ。同税関も市町村の広報紙などを通じて周知に努めているが、近年は照会件数そのものが減少気味に。「いつになったら戦後は終わるのか」。まだまだ聞く問いかけだが、このぼう大な数の通貨・証券類も未だ戦後処理が終わっていない現実を伝えている。(A)


8月12日(金)

●「裁判長」や「裁判官」は誰でも知るが、「裁判員」はどうだろうか。正しく、詳しく理解している人はなお少ないと言われるが、裁判員制度はもはや現実の話。2009年までの導入が決まっているからで、自分は選ばれないとは言い切れない▼わが国の裁判は裁判官が判決を下すが、先進国の多くは陪審制度、参審制度のどちらかを採用している。いずれも判決に裁判官以外の人も加わるスタイルだが、その背景にあるのは「人を裁くのは国家権力、だからこそ国民が参加してチェックすべきだ」という考え方▼いわば裁判への“市民参加”だが、法曹関係者の間などでの議論を経て現実に。対象となるのは刑事裁判で、1件につき選ばれる裁判員は6人。該当する裁判は年間2500件ほどと推測されているが、一生の間に「裁判員」になる確率は67人に1人というデータもある▼例外は学生、70歳以上の人、重い病気の人、家族の介護をしている人ら。それ以外の人は、選ばれると断ることができない。国民の義務と位置づける考え方によるが、それを含めて国民の認識はまだまだ低く、「このままでは…」という不安の声も聞かれる状況▼ということで、あらためて各地で啓もう活動に力が入れられているが、その一方で選ばれた人が受けやすい社会環境づくりも求められる。法務省などが打ち出した裁判員休暇の制度化方針もそうだが、鍵を握るのが広く理解を促す取り組み。踏み切るまでにどれだけ認識を広げられるか、制度の導入は数年後に迫っている。(H)


8月11日(木)

●「本当にやっちゃったよ」。大なり小なり、そんな思いを抱いた人が多かったに違いない。郵政民営化の是非、ここに至った経緯などを議論し始めるときりがないが、衆議院が解散して3日、激震が走ったままの自民党をはじめ波紋は大きい▼そんな中で注目されたのが10日付で全国紙が報じた世論調査の結果。法案の否決サ総辞職という道をとらず、小泉首相がとったのは解散だったが、その解散に賛成か否かについて聞いた答えは、毎日で54%、読売で52%、朝日で48%が賛成と。いずれも否定を上回った▼それにしても、この1カ月ほど永田町で演じられた郵政民営化という名の公演は、分かりやすい政治劇だった。自民党内ではいつの間にか小泉首相対有力反対者という構図が浮き彫りになり、民主党は、というと時々舞台に立ったものの、受け身で反対を唱えた雰囲気▼結局、善し悪しは別として際立ったのは小泉首相ということだが、かつての「自民党をぶっつぶす」発言が頭をよぎる。そして解散に踏み切らせた裏には、今なおポスト小泉が出てこない事情が。そこに広がる閉塞(へいそく)感。全国紙の世論調査の結果からも、そんな思いが透けて見える▼小泉首相は郵政民営化の賛否を問う選挙、民主党の岡田代表は政権交替の選挙と訴え、連立過半数割れ、政権を取れない場合の辞任を表明している。公示は8月30日、投開票は9月11日。短期決戦の混乱選挙の様相だが、国民に答えを出す機会を与えられたということ。冷ややかではいられない。(N)


8月10日(水)

●ピーピーピュルピュル〜 キョロキリキーキョロキ〜 チリリリ〜。ノゴマだったか、ギンザンマシコだったのか、知床峠の癒し系の保安林で美しい鳴き声。横断道路ができて以来、25年ぶりに世界自然遺産に登録された秘境・知床に行って来た▼シリエトク(地の果て)が「地球の宝」に。流氷が運ぶプランクトンを魚が食べ、ヒグマなどがその魚を食べる。陸と海の食物連鎖の生態系が評価された。自然を破壊しないため、人が入れるのは五湖探勝路と岩尾別、羅臼温泉、硫黄山、縦走の4コース、それにチカポイ岬の展望台ぐらい▼帰って来てテレビ中継を観ていたら衆院解散。なぜ「バンザーイ」というのか分からぬが、叫びともつかぬ「うめき」の騒音。知床峠の野鳥の美しい声にはほど遠い。郵政解散、自爆解散、超変人解散、夏の妖怪解散、だだっ子解散…。なんか周囲の「さえずり」もさえない▼信念のためなら「殺されてもいい」など、例のサプライズ手法か。政治空白を作らぬというが、年金問題や社会保障改革などが山積している。障害者自立支援法、少年法改正など61法案が廃案になってしまった。選挙には約500億円の費用もかかる▼知床は世界遺産になってから観光客で満杯。ある観察指導員は「危険地域への入山やゴミのポイ捨てなどがまだ目立つ」と嘆く。自然との共存の知床ルールを急がなければ。衆院選も国民に分かりやすいマニュフェストを作って臨むべきだ。「騒いで、散らかして…」とならぬように。(M)


8月9日(火)

●「大学」と「地域」の距離が大幅に縮まってきている。全国的に言われることで、道内では音更町と帯広大谷短大による地域生涯学習事業が注目を集めているが、共同研究、公開講座の広がりなど、いわゆる「開かれた大学」の模索は函館でも▼公私を問わず大学など高等教育機関は、長い間、開かれた存在でなかった。ところが、少子化、法人化など時代は大学の体質に変化を求め、その流れの中で生まれてきたのが、地域との連携、協調の関係づくり。近年、個々に行動を起こし始めている▼函館ではついに全大学・校による合同公開講座が実現する。5日付本紙が詳しく伝えたが、9月3日から10月1日を除く10月29日までの毎週土曜日(函館東高校)。特記されるのは受講対象を中学生以上としたことと、共通のテーマを設けたことで、今回選ばれたのは「食」▼趣旨に沿った講座内容が示されているが、そこには各大学・校の特徴がはっきりと。あらためて理工系、文系など特徴を持つ8つの大学・高等専門学校が地域にあるありがたさを実感するが、例えば北大水産学部は「現代人の健康の切り札『魚食』」、はこだて未来大は「食の安全を守るユビキタス社会の情報技術」▼さらに道教大函館校は「健康づくりのための行動心理―食事・運動・ウエートコントロール」、函館大は「歴史でたどる食」、大谷短大は「子どもの食と育ち―『関係』という視点から考える」など。こうした講座を無料で聴講できる、何ともぜいたくというほかない。今度は地域(住民)が応える番である。(A)


8月7日(日)

●「健康ハートの日」を知っているだろうか。「健康」と「ハート」から推測できるが、心臓病予防の啓蒙日。生活習慣病の一つである心臓病は、食生活などに注意し、改めることで予防できると言われるが、それを分かってもらおうというのが趣旨…▼心臓病は言わずと知れた要注意の病気。近年、罹患者の若年化が指摘され、日常的に啓蒙していく必要があると判断した日本心臓財団と厚生省(当時)が、1985(昭和60)年に定めたのが「健康ハートの日」。「ハー(8)ト(10)」の語呂合わせで▼その啓発標語として使われているのが、呼びかけ3原則。「まず歩こう 煙草を吸うまい 太るまい」だが、簡潔明りょうで、実に核心を突いている。適度な運動が大事、煙草は良くない、カロリー過多は避けるべき、といった一般的に言われることが凝縮されているから▼問題はそのための具体的な行動指針だが、諸説ある中で共通しているのは…。「食事は栄養バランスを考えて」「脂肪の摂取は植物性を中心に」「お酒はほどほどに」「煙草は吸わないように」「努めて歩くように」「ストレスは上手に発散を」など。これまた、よく聞くことである▼「健康ハートの日」のほかに、生活習慣病予防週間(2月1日から1週間)もある。いずれも境界型とか予備軍とか言われている人には、ありがたい存在。「日ごろの不摂生に反省を」と問いかけ、考える機会を与えてくれるのだから。しかも2月と8月の年に二度。あとは個人の責任である。(H)


8月6日(土)

●「ともかく華やかで活気があった。あのにぎわいが懐かしい」。ため息混じりによく聞く言葉だが、料飲店の数も減って、空き店舗も少なくない。実際に夜の人の流れも閑散としている。こう言えば誰もが推察できるに違いない。その場所は函館市の大門地区▼時代の流れと表現するしかないが、それほどの変わりようである。駅前を中心にした駅周辺地区が都市の顔という位置づけは函館も他都市も、昔も今も変わらない。同時にそれは顔に見合ったにぎわいが求められるということでもあるが、陥っているのは厳しい現実▼ぼやいていても前には進まない。そこで「一つの起爆剤に」と計画されたのが屋台村。屋台の原点は戦後の闇市と言われるが、近年、人気を集める屋台村の発想はまちおこし。2001(平成13)年に誕生した帯広をはじめ小樽、八戸などはその典型的な事例▼観光都市・函館が注目して少しも不思議でない。計画を詰めてきたのは(株)はこだてティーエムオーで、名づけて「大門横丁」。松風町7番街区の高砂通りと大門仲通りに挟まれた場所に誕生する。カウンター方式とテラス方式の店を組み合わせた造りが特徴という▼出店するのは居酒屋など26店舗。願いは「地域の人と観光客が気軽に交流できる場」となること。その鍵を握るのは出店者の努力などによる魅力づくりと同時に、地域の理解。帯広では隣接する料飲店にも波及効果があるという話も聞いている。函館もぜひそうなるように…。あと2カ月余り、10月23日のオープンが待たれる。(H)


8月5日(金)

●米軍のB29戦闘機が原爆を積んで飛び立ったのが太平洋の西に浮かぶテニアン島。終戦1年前、この飛行場の建設に日本の刑務所の服役者が動員され、網走刑務所などから365人が駆けつけた。不眠不休の突貫工事。完成したら皮肉にも米軍の手に…▼B29には広島、小倉、長崎の地図。搭乗員には原爆の放射能やエネルギー源などは秘された。広島は「終日風心地よく吹く」(詩人・峠三吉)快晴だった。日本に戦闘能力がなく原爆は不要という反対意見を無視してトルーマン大統領は、「軍事基地を狙い、非戦闘員の殺傷を避けた」と豪語▼だが実際はベトナム、湾岸、アフガン、イラク戦争のように多くの民間人が犠牲になった。さく裂する瞬間、燃える骸骨の姿に「核に負けない人間の誇り」を託した岡本太郎の壁画。藤田嗣治はわが子に最後のお乳をやる母、両手を上げて叫んでいる女の「殉教の図」を描いた。「ドイツより先に原爆を」と進言したアインシュタイン博士は原爆投下に「うぅ」とうめいて苦悶したという▼中国の戦争をめぐる反日デモのように、最近はナショナリズムを刺激する傾向にある。広島の原爆慰霊碑を破壊した男は「過ちを犯したのは米国。過ちという文言が気に入らなかった」と話す。戦争責任を論ずるのは難しい▼真っ青に澄み切った海のテニアン・ブルーの下、日本軍守備隊は玉砕、飛行場建設に駆り出された服役者も引き揚げ船もろとも藻くずに。島の人々が原爆犠牲者追悼の平和式典を開いてくれるという。広島では6日、長崎では9日、戦後60年の原爆忌を迎える。(M)


8月4日(木)

●女性は85・59歳、男性は78・64歳。と言えば何のことか分かると思うが、厚労省の簡易生命表で明らかになった日本人の2004年平均寿命。昨年生まれた女児の76%、男児の55%は80歳まで生きられる見通しという意味でもある▼食生活の向上、医療や福祉の充実などを背景に戦後、わが国の平均寿命は伸び、今や世界屈指の長寿国。それは各種調査が明らかにしているが、高齢者白書では、昨年10月現在、65歳以上の人は2488万人、うち90歳以上の人は100万人を超えたと報告されている▼平均寿命の伸びをうかがわせるに十分。実際に1955(昭和30)年に女性で67・75歳、男性で63・60歳だったのが、20年後の1975(昭和50)年には男性も70歳代に乗り、5年前の2000(平成12)年には女性が84・60歳、男性が77・72歳になっていた▼昨年の平均寿命を50年に照らすと、この間に女性は17・84歳、男性は15・04歳も伸びている。女性は世界一、男性は第二位…。ちなみに女性はわが国に続く香港が84・3歳、スイスが83・0歳。男性はアイスランドが78・5歳。“人生80年時代”を実感させる▼まさに世界に誇れる姿だが、長寿に伴って増しているのが年金、福祉介護問題に象徴される幾つもの課題。そこに問われているのは「豊かな老後」に見合った現実があるか、また「豊かな老後」を送れる社会環境が築き上げられているか、ということだが、残念ながらその答えは未だ見えていない。(N)


8月3日(水)

●健康志向の時代を反映してエコツーリズムが根強い支持を得ている。その“売り”が森林浴であり森林セラピーだが、ブナ(落葉広葉樹)林を活用する試みがいよいよ道南でも。松前、福島、上ノ国各町で構想する大千軒の森・ブナの里づくり事業である▼ブナは代表的な温帯木で、保水力のある木。澄んだ、さわやかな空気をはぐくみ、その林の散策はリフレッシュ効果を生み出すとも言われる。ちなみに名の由来だが、林を抜ける風がこずえを揺らしブーンという音を出すのでブンナリノキ、それが詰まってブナになった、と▼その林としては世界自然遺産に指定されている白神山地(青森・秋田)があまりにも有名だが、道内の黒松内も北限の地として知られる存在。推定200年以上と言われる天然の木が多数残っている。いずれも貴重な自然財産と実感させるに十分▼道南西部のブナ林にもスポットを当てていい、と思っていたが、渡島支庁の独自事業として実現に。確かに足を踏み入れることが難しい所が多く、活用できる場所となるとごく一部でしかないが、とはいえ3町にある道有林の7割(3万3600ヘクタール)がブナ林なのだから▼本紙によると、8月中には地元関係者との検討会議を立ち上げる方針という。体験学習フィールドといった位置づけ、それに伴う見どころマップの作成などが考えられているようだが、最も大事なのは訪れやすい環境づくり。道は「木育」を提唱しており、その一つのモデル事業として注目されていい。(A)


8月2日(火)

●昔は心底からありがたく感じたことも、いつしか当たり前の感覚に。電気は分かりやすい例だが、それよりも、と言われるのが水。ぜいたくに使えるばかりか、水道の普及によって井戸からくんで運ぶ手間はなくなり、居ながらにして享受できる▼水分補給せずして人間は生きていけない。体成分における水の含有率は平均で73%と言われるほどなのだから。しかも水は健康で文化的な生活を支える柱であり、経済活動などにも欠かすことのできない基盤施設。着実に「安全」と「おいしさ」の追求も進んできた▼わが国の水道の歴史は100年ほどだが、普及率は96%強にまで。その施設整備と並行する形で問われてきたのが質の向上。努力は実を結んで、今や水自慢(水道水自慢)をする市町村が全国に数多い。もちろん函館市もそうだが、水道局のホームページはこう記している▼「よりおいしく、質の高い水道水を供給するための管理目標設定項目である『おいしい水の要件』(おいしい水研究会が提示)を満たし、安全でおいしく飲める水です」と。確かに、飽食の時代は湧水やミネラルウオーターへと走らせてもいる。しかし、生活の柱は紛れもなく水道水▼ともすると、あって当然という感覚に陥ってしまうが、忘れてならないのは「いつでもどこでも安心して飲める水道」が整備されていることのありがたさ。「もしなかったら」。そう考えると分かりいい。7日まで「水の週間」であることも忘れずに…。(H)


8月1日(月)

●「道の駅」。言い得て妙、素晴らしいネーミングだが、実態としても今や主要道路には不可欠の公共施設。トイレなど誰もが必要と思っているからだが、最近は物販やイベント機能も強化され、単なる休憩施設から脱皮している所が少なくない▼先日、所要で札幌を往復する際、黒松内、京極、ニセコなど幾つかの「道の駅」に立ち寄ってみた。それぞれ飲食、物販が充実し、例えば黒松内ではパン屋さんに列、ニセコでは個人名の付いた農産物店が大人気…。そこにあったのは、目標と言われる交流の場の雰囲気▼「道の駅」が担う機能は役所風な表現をすると休憩、情報発信、地域連携。要は「休む」「知る」「触れ合う」というコンセプトだが、歴史は新しい。誕生は12年前の1993(平成5)年。疲労運転による事故防止、さわやかトイレ運動などを背景にしての誕生だった▼かつて車の旅行はトイレに苦労した。数は少なくあっても不潔な所が多く…。「道の駅」が支持を得たのも、24時間対応の清潔なトイレが認定条件とされ、その期待に応えたから。全国で運営されている「道の駅」は785駅あり、うち道内は道南の10駅を含め86駅▼道路利用者にすれば、地域の物産を賞味し、おいしいと思えば買って、運転の疲れも癒やせる。また、地域にとっては格好の売り込みの場。最近はイベントの場など地域活性化の拠点となっている所もあるが、共通しているのは交通安全、地域振興に貢献していること。改めてそう実感する。(N)


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