平成17年9月


9月30日(金)

●住民基本台帳の閲覧が来年にも規制される。学識経験者らによる検討会が「一定の制限が必要」との結論を出す見通しで、ダイレクトメールを送るための閲覧などが対象になるもよう。政府は検討会からの報告を待って法改正の詰めを急ぐことにしている▼現行法の規定では、手続きさえ行えば誰でも住民基本台帳、選挙人登録名簿を閲覧することができる。その法整備がされたのは、プライバシーの保護意識がまだ希薄だった40年ほど前。ところが、時代は変わって「このままでいいのか」という問題提起が急速に…▼そんな中で施行されたのが個人情報保護法。知り得た個人にまつわる情報を第三者に渡したり、漏らしたりしてはいけない、という趣旨の法律だが、一方で基本的な個人情報である住基台帳の閲覧は認められたまま。そこに整合性がないとして議論が浮上していた▼あらためて言うまでもなく、住民基本台帳は最大量の個人情報を管理する法律である。全面規制も一つの考え方だが、検討作業での焦点は、どこまで閲覧させるかの線引き。どうやら世論調査などの「公」、ダイレクトメールなどの「私」で区別する考え方が採用されたよう▼いわば原則公開から原則非公開ということで、大学の学術研究目的など公共性が高いと判断される社会調査については閲覧を認め、商業的な目的は認めないとする判断。「公」ということで認める場合も、手続きにはより厳しい制約が考えられている。いずれも当然のことで、早い法改正が待たれる。(H)


9月29日(木)

●日本PTA全国協議会が行った「親が子どもに見せたい番組」の1位に挙げられたテレビ番組「プロジェクトX」(NHK)。残念ながら、来年春での放送終了が報じられた。スタートから5年余り、発信された人間ドラマは180話ほどになる▼始まったのは2000年の3月。第1回は「巨大台風から日本を守れ〜富士山頂・男たちは命をかけた」だった。そして第3回(同年4月11日)で取り上げられたのが、世紀の大事業となった「友の死を超えて〜青函トンネル・24年の大工事」▼反響が大きかったという証しだが、アンコールで3回、今年の3月には特選プロジェクトXとしても放送された。さらに北海道関係では第43回(01年3月6日)の「えりも岬に春を呼べ〜砂漠を森に、北の家族の半世紀」も、感動を呼んだ忘れることのできない一話▼「プロジェクトX」のホームページは、番組の趣旨をこう説明している。「熱い情熱を抱き、使命感に燃えて、戦後の画期的な事業を実現させてきた『無名の日本人』を主人公とする組織と群像の知られざる物語である」。そして「…『挑戦への勇気』を伝えたいと考えている」と▼「つばめよ 高い空から教えてよ 地上の星を…」。番組の趣旨を見事に表現した「地上の星」(中島みゆき)が大ヒットしたのも話題だが、01年には菊池寛賞の受賞という栄誉も。NHKならではの番組という言い方にも異論はない。しばらく時間を置いて、再び復活を、そう願う一人がここにいる。(H)


9月28日(水)

●道が音頭をとった北海道バイオマスネットワーク会議が、設立された。「バイオマス」。最近、耳にすることが多い言葉だが、学術的には「動植物から生まれた再生可能な有機性物質」であり、家畜排せつ物や生ごみ、木くず、もみがらなどのこと▼この50年ほどの間、わが国を含め世界が築いたのは大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会。その“つけ”として地球温暖化などの問題を提起されている。そこで改めて問われているのが環境に配慮した循環型社会の形成で、「バイオマス」の取り組みはその柱…▼わが国では年間、家畜排せつ物が9100万トン、食品廃棄物が2200万トン、廃棄紙が1400万トンなど、ぼう大な量の「バイオマス」が出ている。一方で、食品廃棄物を例にとっても肥料や飼料に再活用されているのは10%。ほとんどが焼却か埋め立てられている▼政府がバイオマスニッポン総合戦略を閣議決定したのは、2002年12月。取り組みの中心はバイオエタノールなどの燃料、発電などのエネルギー利用だが、抱える課題はコストや収集の難しさ。そんな中でも全国各地で具体的な取り組み事例が報告されている▼道内でも富良野市や滝川市で生ごみ等の利用、帯広市ではバイオマスプラスチックの利用が。その広がりを考える場(北海道バイオマスネットワーク会議)が誕生したのは一歩前進だが、問題は国民レベルでの認識共有であり、これからの進め方▼「自然の恵みでニッポン再生」。農水省のパンフレットには、こんなコピーが添えられている。(A)


9月27日(火)

●「出店する大型商業施設には地域貢献を求める」。消費低迷の中での競争激化によって大型店の閉店話が珍しくないが、その一方で新規の展開もなお活発。道内でも今年、苫小牧市に大規模な商業タウンがオープンして話題を呼んだばかりである▼急速に車社会が進んだ結果、店舗は郊外でも良くなった。十分な駐車場があって食品から衣料品などまで一通り揃っていれば…。その思いを誘導する大型店側の郊外出店攻勢は、ラッシュのごとく、と表現されたほど。実際に地元の意向などお構いなしの動きだった▼ところが、ここ10年ほどは淘汰の時代と言われるようになり、函館では西武があったが、閉店話は多々。全国的にはかなりの事態とも言われるが、閉店話ばかりかというと、必ずしもそうでなく、新たな出店が続いているのも現実。改めて対策を講じる自治体も出ている▼8月末だったと記憶しているが、日本経済新聞の地域面(九州方面)の記事に目がいった。熊本県の話。大型店の出店を計画する企業に県としてどう対処するかの検討で、大店法の規定より早めの届け出と地域貢献計画書の提出を求める独自案をまとめたという記事▼出店に地元は反対する。しかし、法の規定からも阻止できるものでない。ならば地域産品の取り扱いなど何らかの形で貢献してもらおうと考えた、ということである。地域の理解を得たい企業側にも悪くない話という問いかけでもあり、一つの知恵。実(じつ)を取る現実的な考え方として悪くはない。(N)


9月26日(月)

●禁煙包囲網は道内の特急列車にも…。JR北海道が本年度末というから、来年3月にも距離を問わず道内の特急車内を全面禁煙にする方針を明らかにして、しばらくたつ。全国的にも初。さぞかし愛煙家は一言あるだろうと思っていたが、際立った議論もないようで▼欧米に比べ遅れていたわが国の嫌煙権。非喫煙者の思いがねじ伏せられてきた時代が長かった。東京に禁煙タクシーが登場して話題になったのが1988(昭和63)年。17年前のことである。東海道新幹線などに禁煙車両が設けられたのも、ちょうどこの頃…▼その後の動きは速かった。特急の禁煙車両は当たり前、しかも徐々に増えて今や一編成で1、2両を除いては禁煙車両というまでに。建物内での分煙も常識というほどに進み、全面禁煙という建物も珍しくない。そればかりか路上喫煙(歩きたばこ)も規制され始めている▼東京都の千代田区が先陣を切って間もなく3年になるが、これまでに条例で禁止区域を設けている自治体は東京、千葉などを中心に25。この8月には新宿区、そして札幌市(札幌駅周辺)も実施した。この現実は喫煙に関する社会の答えであり、いわば時代の流れ▼JR北海道が普通列車を全面禁煙にしたのは、5年ほど前だった。特急の全面禁煙化に向けては喫煙車両を減らす取り組みから進め、いよいよ踏み切る段階に。乗り物の全面禁煙は航空機(国内線)が先行したが、乗車時間の長い鉄路ではJR北海道が先駆け。JR他社が追随するのも時間の問題に違いない。(H)


9月25日(日)

●派遣労働者を使っている企業は全国的には3社に1社。厚生労働省の調査結果だが、厳しい経営環境から特にここ数年、企業が派遣依存を強めている現実が浮かび上がる。その数は一昨年の段階で236万人というから、今では250万人…▼わが国では終身雇用という言葉が象徴する常用(正社員)がほとんど、という時代が長かったが、近年は嘱託、契約、パートなどと多様化し、派遣もその一つ。急に登場したわけではなく、人数や割合を増しているということであり、派遣にしても20年以上前から▼通称・労働者派遣法が成立したのが1985(昭和60)年。それまでは職業安定法で民間の人材派遣は禁止されていたが、実態はあり、契約条件などのトラブルが問題となって法整備された。それに加え、この10年ほどの長引く不況は、派遣市場を拡大させて今日に▼派遣による企業側のメリットは言うまでもない。人件費の面からも正社員はあまり抱えたくないが、例えぎりぎりの人数に抑えていたにしても不安はない。欠員が生じたり、急激に業務が増えることになっても、派遣があると思えば。面接などの採用業務なども省略できる▼この調査結果によると、人数はともかく職場に派遣労働者がいる企業は31・5%。金融・保険(64%)、情報通信(50%)、不動産(49%)が多いが、企業が派遣の“うまみ”を認識した今、経済情勢に関係なく求めるとの見方が一般的。派遣会社がこの1年半ほどで1・5倍に増えたという話が、それを裏づけている。 (N)


9月24日(土)

●原油価格の高騰が企業ばかりか家庭まで直撃している。最も身近なガソリンの価格は既に深刻な状況で、公的機関のデータでも、全国平均のレギュラー価格は1リットル130円(9月12日調査)。北海道も同じ価格帯にあり、十数年ぶりの高値水準▼専門家の間には「(原油価格は)もう極端なことにはならないのではないか」という見方もあるが、急激に上がり始めた価格の影響はまず産業界に。直接的に受ける運輸業界からは悲鳴が聞かれるほか、原油を原材料とする業種も値上がり分の飲み込みがもはや限界とも▼原油の高騰、材料費の値上がり、ときて最後に余波が行き着くのは製品価格。つまり使用する業者であり消費者ということだが、早くもこの秋の値上げラッシュが懸念されている。新聞業界もその一業種だが、身の回りでも食品のトレー、レジ袋がそうであるように多い▼わが国の経済はこの10年ほど、どん底をさまよい、とりわけ低迷を続けたのが個人消費。明るさが差し込んできたと言われ始めたところに、水を差すかのような“外圧”。価格に転嫁すると売れない、かと言って値上げしないことには持たない、企業もつらいところ▼懸念されるのは買い控えだが、消費者の側に立つと、当面、重くのしかかってくるのが需要期を迎える灯油。道内の平均小売価格は1g70円台に入っているといい、冬期間でみると、かなりの負担増は避けられない。産業から生活まで原油に鍵を握られる時代、今がそういう時代であることを改めて実感させられる。 (H)


9月23日(金)

●工業基本調査、学校基本調査など、わが国には公的な調査が数あるが、その中で最も基本的で、最も規模の大きいのが国勢調査。“国のいきおい”でなく“国の情勢”を知るという意味の調査で、1920(大正9)年からほぼ5年ごとに実施されている▼もう一つ言うなら国にとって最も重要な調査。議員定数の決定、交付税の算定基準や都市計画、防災計画など各種の行政施策を進めるに当たっての基礎資料となるからだが、今年が18回目となる調査年。というより既に本番を迎え、23日から調査票の配布が始まる▼今年の調査内容は氏名、住居の種類、就業時間など17項目。その結果として人口統計などが出るが、前回2000年の調査では…。函館市は合併4町村を合わせて30万5311人。ちなみに北海道は568万3062人、全国では1億2692万5843人だった▼函館市でその任を担う調査員は、市町会連合会などから推薦された2226人。守秘義務が課せられ、集計後、市町村には調査票の溶解処分などが課せられている。調査票は10月10日までに回収され、集計分析されるが、調査への参加はいわば国民の義務▼それだけ重視される調査という証(あかし)だろう、統計法第19条は申告しなかったり、虚偽の申告をした場合、申告を妨げた場合の罰則を規定している。だから協力を、というわけでなく、むしろ国民として協力を、という問いかけ。「数字から明日の日本を夢デザイン」(今年の標語)は、こう呼びかけている。(H)


9月22日(木)

●産業の振興は地域発展の大きなキーワード。そこに必要なのは、新しい技術の開発、新しい企業の創出であり、それを後押しする地域の認識。国際水産・海洋都市構想を掲げる函館市には特に求められる視点だが、その取り組みが徐々に動き始めている▼北洋漁業関連など地域経済を長年支えてきた業界が時代の波にのまれ、脱北洋など「脱」が言われて久しい。その目指す先は新時代を見据えた産業構造の構築で、欠かせぬ後ろ盾が産学官の連携や行政の支援。助成制度もその一つだが、利用が活発なのは明るい話▼9月初めの本紙は二つの話題を報じていた。一つは道立工業技術センターを管理運営する函館地域産業振興財団の助成対象事業が決まったという話。防犯・防災情報共有システムの開発、イカ墨色素粒子精製の量産プロセス技術の開発など、将来への期待が大きい5件▼もう一つは新たな事業を試みる法人、個人を支援するチャレンジ計画に2法人、1個人が認定されたという話。可能性という観点から、高鮮度の活イカ宅配事業、女性在宅ワーカーネットワーク事業、新しい発想と技術によるメモリアルグッズの提案事業が選ばれた▼大学などの高等教育機関、さらに試験研究機関がそろっているという点で、函館は恵まれた地域。新たな連携の輪が構かれた意義は大きいが、忘れてならないのは連携をどう強め、地域としてどう支援していけるかという視点。「可能性を秘めている」から「可能性を現実にしていく」へ。いよいよの感がする。(H)


9月21日(水)

●金属製の「ひとえ笛」が若者に人気。知人の子供が女性だけのブラスロックバンド「十二単(ひとえ)」のコンサートでもらってきた。演奏を盛り上げるミニ楽器だが、暴漢に襲われた時など警笛に使え、防犯グッズしても役立つという▼北朝鮮の核問題解決を目指す6カ国協議最終日に「北朝鮮はすべての核兵器及び現存する核計画を廃棄する」「日朝は平壌宣言に従い、国交正常化の措置を取る」などを盛り込んだ共同声明を採択した。拉致の文字は出てこないが、拉致問題が解決しない限り国交正常化はありえないのは当然▼「誠に忌まわしい出来事で率直におわびしたい。責任ある人々は処分された。これからは絶対ない」。3年前、金正日総書記が日朝首脳会談で拉致を初めて認めた言葉。今回の6カ国協議で日朝協議は数回もたれたが、北朝鮮側は「拉致問題はさらに本国で検討している」と言うだけ▼外交をサッカーに例え、ある評論家が「北朝鮮はゴールの位置を好き勝手にずらそうとしている」と評したように、駄々をこねたり、開き直ったり。そんな北朝鮮に核の完全放棄を約束させた忍耐外交には敬服するが、安心はできない▼と思っていたら、共同声明の翌日、「先に軽水炉が提供されない限り、核放棄には応じられない」と論評。拉致家族の問題も今後の核カードに使おうとしている。ゴールの位置をずらしたら、痛いペナルティーが待っているのに…。世界が一斉に「ひとえ笛」を鳴らすぞ、と言い続けるしかない。(M)


9月20日(火)

●お年寄りも求める肩の張らない食事と語らいの場が、江差町に誕生した。その名も、かあちゃん食堂「たまりば」。愛宕町商店街で働く主婦らが考えたコミュニティー活動だが、そこにあるのは「たまには話しにいらっしゃいよ」というメッセージ▼少子高齢化といわれる時代。高齢者夫婦の世帯ばかりか、独居という一人暮らしの高齢者世帯が増加中。全国の統計だが、5年前の国勢調査で、独居者は男性で74万人、女性で229万人という。住み慣れた地、気心の知れた人がいる、元気なうちは一人でも…▼とはいえ、何かと心細く寂しいもの。家には話し相手もいなければ、一緒にテレビを観る人も。食事も作ったにせよ食べるのは自分だけ。会話のない食事も味気ない。今の時代だからさまざまなサービスはあるが、気負わずに出かけられる所があれば…。「たまりば」の意義はそこに▼もちろん食事代(1食300円)は払ってもらう。商売でないから、長く続けることを考え、無理をせず、食事を用意するのは週1回。何よりいいのはお年寄りだけの場、独居の人の場と考えていないこと。「誰かいるかも知れない、行ってみようかな」。そんな場である▼「大にぎわいとなった店内では世代を超えた会話の輪が広がった」。本紙8日付紙面は初回の様子をこう報じていた。食事のない日もコミュニティーサロンとして開放している。一人暮らしのお年よりも出かけやすい。そんな場を地域の主婦や地域で働く女性が生み出した、立派というほかない。 (A)


9月19日(月)

●どうして人は老いるのか。人は何歳まで生きられるのか。何年か前、毛越寺(岩手県平泉町)で延年の舞「老女」を観(み)た。音もなく静寂の中で舞い始める100歳の老女。舞う前に神前(実際は観客の方)に向かって、100歳の生に感謝して手を合わせる▼850年前から昔の姿のままで続いている延年の舞。「人生わずか50年…」といわれた戦後から日本人の寿命は30年も延びた、と言われる。厳密にはまだ延び続けているのだが、今や世界一の長寿国▼秦の始皇帝も日本に不老不死の薬を求めたと伝えられるが、長生きの秘けつは食生活と運動。栄養士が長寿地域で調べたたところ、塩分や動物性脂肪を取り過ぎず、野菜や果物をたっぷり食べ、乳製品や豆類を取ることだった。足腰を鍛えることは言うまでもない▼最近の研究では、老化を防ぐタンパク質を多く分泌するマウスを遺伝子操作で誕生させて寿命を1・2―1・3倍に延ばすことに成功した。人間なら120歳に相当する3歳を超えたマウスもいたという。この遺伝子を使って、老化を遅らせる薬の開発も不可能ではない▼まさかと思うが、1錠飲んだら1年延命という薬が出来ないとも限らない。「カルシウムなど栄養豊富なヒジキを高齢者に」と日本ひじき協議会が、9月15日を「ひじきの日」にした。加齢すると時間は10倍の速さで過ぎると言われる。ひじきをはじめさまざまに感謝して、老化時計をゆっくりと刻み「延年の舞」を観せられるように…。きょう19日は「敬老の日」。(M)


9月18日(日)

●「北海道のチャレンジパートナー特区の第一号に上磯町の保健・福祉一体化推進事業が…」。今月初め、新聞各紙が報じたが、チャレンジ、特区、大げさな表現が並ぶから画期的なことでもと思いきや、読んでみると、施設の目的外使用を認めただけの話▼補助金が拘束する条件を外しただけとも言える。上磯町には公民館を改修して設けた保健センターがある。その改修に当たって道から保健施設として補助金を受けており、それ以外の目的での使用は認められていない。学校施設で空き教室を簡単に転用できないのと一緒▼例え住民がそうしてほしいと願っても、違う使い方をすると返還を求められる。上磯町が住民の視点に立って考えた「福祉・保健サービスの一体的な提供」にもこの壁が…。保健センターに社会福祉協議会を入居させるのは、その目的外に当たるという壁である▼本紙の取材に上磯町はこう答えている。「ワンストップ(手続きを1カ所で対応処理する)サービスとなるので、町民にとっては便利になる」。住民にとってプラスなことに、行政制度が水を差している。不可解な話だが、さらにおかしいのは、その解決策が「特区」ということ▼そんな仰々しい話ではない。補助申請を修正させて認めれば済む話である。所管省庁がどこか、補助目的がどうかは役所側だけの論理。大事なのは「住民のためになるなら」という視点であり、この程度のことを「特区」で扱わなければ解決できないとしたら…。抜本的な構造改革など遠い話に思えてくる。(A)


9月17日(土)

●女性は85歳、男性は78歳にならないと、平均寿命まで生きたことにならない。「そうだよ、今の時代なら」と少しも疑問も感じないが、今や全国で90歳以上の人が100万人を超え、100歳以上も2万5000人の時代。胸の張れる長寿国家である▼平均寿命の伸びは保健医療や生活環境、食生活の向上の裏づけだが、その伸びは目を見張るばかり。例えば50年前、1955(昭和30)年は男性63・60歳、女性67・75歳だった。その後は確実に伸びて、この10年ほどはとりわけ顕著▼長寿者とは何歳以上の人を指すのだろうか、と戸惑いさえ覚えるが、大方のみるところ90歳以上か。高齢社会白書によると、昨年10月時点だが、その90歳以上の人は101万6000人と報告されている。励みを与えてくれる人数だが、100歳以上の人ももはや珍しくはない▼今から30年前の1975(昭和50)年は、わずか548人だった。1990年でも3500人ほど。先日の厚生労働省の発表には誤りがあって訂正されるようだが、それでも2万5000人を超えているはず。わずか15年で7倍強ということである▼長寿は先進的というか、近代的というか、高生活水準国の証しだが、大事なのは健やかな老後を送ることができる、長寿国に見合った社会基盤づくり。医療や介護、福祉あらゆる面で問われていることは多い。後手に回らないように…。90歳以上が500万人といった時代になるのも、そう遠くはないと思うから。(H)


9月16日(金)

●「どう考えてもおかしい」。きのうは衆院の選挙制度の話だったが、きょうは政党の話。重複立候補できる政党要件を満たすため公然と議員の貸し借りが行われたことに対して。国民新党と新党日本の話だが、幾ら小政党の生き残り策とはいえ頷(うなず)けない▼この両党の議員はもともと自民党が中心。郵政民営化関連法案に反対し、公認されないとなって結成されたいわば急造政党。“選挙互助会政党”と揶揄(やゆ)もされたが、ともかく議員を5人以上確保して重複立候補が可能な政党要件を満たさなければ、ということで…▼後に誕生の新党日本が1人足りない、ということで、先に生まれた国民新党から参院議員が移籍して帳尻合わせ。選挙直前とはいえ、政治家として、政党として節操ない、と思っていたが、選挙が終わった翌日、その議員が再び国民新党に戻ったと聞いてはあ然とするばかり▼しかも、平然と「もともと、そういう約束だった」と開き直られては、開いた口がふさがらない。10年ほど前、わが国は多党化の時代だった。新生党や日本新党など8党会派による細川連立政権が象徴的だが、政界再編成の名のもと、その後は離合集散して今日に▼こうした姿が政治不信、政治家不信を募らせる背景になった、とも言われるが、今回の一時的移籍は、それ以前の論外の話。結党に至った背景は同じとはいえ、理念も何もない議員の貸し借りだから。その結果として新党日本は1人が復活して比例当選したが、それでいいのだろうか、どう考えても疑問が残る。 (N)


9月15日(木)

●「どう考えてもおかしい」。総選挙が終わるたびに込み上げてくる思いがある。ほかならぬ小選挙区比例代表並立制という制度である。比例では公示と同時に何人かが事実上の当選が決まる、それも変だが、さらに解せないのは復活当選がまかり通ること▼一つの選挙区に複数の定数を与える中選挙区制から、この制度に変えたのは1994年。その2年後の衆院選が最初で、今回が4回目。全国300の選挙区(候補に投票)で300人、全国を11ブロックに分けた比例(政党に投票)で180人を選ぶ▼選挙制度にはどれも一長一短があるが、この制度の最大の欠陥は選挙区と比例への重複立候補を許していること。名前を書いてもらう選挙区で落選したはずの人が、比例の方で当選してしまう、そんな議員が何十人も。選挙区で3、4位の人が当選となることもあり得るのだ▼実際に今選挙でも道10区、奈良2区などで現実の事例となった。これでは選挙区の有権者の意思はどこへ、となる。選挙区では大政党優位ということで、中小政党の救済の意味もあったのだろうが、尋常な姿でない。定数一ということは、この候補は支持しない、という意思表示でもあるのだから▼復活当選というよりは、むしろ敗北当選。重複は「候補者の滑り止めのため」と揶揄(やゆ)されるのも、こうした矛盾があるから。見直しを求める声が少ないわけでない。国会も以前に動きを見せたが、いつの間にか立ち消えている。だったら再び提起しよう、重複立候補はなくすべきだ、と。検討が求められる。(A)


9月14日(水)

●理想を追い続けたドン・キホーテの作者のセルバンテスは400年前の著作で「光り輝くものが、すべて金だとは限らない」と言い残した。外見はよくても一皮むけば、ということか。定年後、年金がもらえると思ったら額面は減り、介護保険まで引かれる▼その介護保険をめぐって、衆院選で自民党が大躍進した12日、渡島管内選出の現職の道議が逮捕された。診療報酬を不正受給したとして起訴されている医療法人社団から「経営する病院に道の実地指導が入らないように」と頼まれ、多額の現金を受け取ったという容疑▼5期目の道議は自民党道支部の役員を務めるベテラン議員。水産加工流通促進議員連盟の会長も務め、今年2月には中国の水産物流通状況を視察、輸出拡大に努力したとも。また、新幹線・総合交通対策特別委の委員としても活躍してきた▼地元が受けた衝撃は大きい。それでなくても町村合併によって道議の定数問題が議論になろうとしている時。それもあっせん収賄の容疑とは…。疑いを持たれること自体、許されないのが議員。住民の信頼を揺るがし、定数問題にも水を差す行為であり、厳しく批判されて当然▼病院への実地指導が見送られたとすると、道議から依頼された道職員にも疑いがかかる。今月初めに介護保険をめぐる贈収賄事件で元石狩支庁長に実刑判決が出たばかり。一皮むけば「輝く金ではなく、私利私欲のサビた鉄」だったのか。そんな思いがしてならない。(M)


9月13日(火)

●「(函館には)いい所があるのに(函館の人は)何もないと言う」。転勤族の人たちからよく聞く話だが、まず例として挙げられるのが函館山。多様な森林植生、季節ごとに咲く草花、そして鳥が和ませてくれる。しかも幾つかのルートが整備されている▼本紙も「秋の七草」と題し、函館山に咲く花のうち7種を紹介したが、春は春、秋は秋で、訪れる人を感動させる。花を見、鳥のさえずりを聴き、新鮮な空気を吸って、登り切るや函館市街、港、海峡などの景観が開けてくるのだから、いい所を通り越してぜい沢…▼加えて最近もう一つ言われるのが、函館山と反対側、公立はこだて未来大学に隣接する丘に造成された道南四季の杜公園。花の丘、野原の丘、里の森、小川の里の4ゾーンで構成されている公園だが、先日久々に訪れ、改めて実感したのがぜい沢な公園という思い▼ゆっくりとしたペースで、樹木や湿性植物を残したままの小川の里を歩いた。約1時間。秋の草花、飛び交う牒、せせらぎの心地よい音…。所々にある腐葉土の上を歩く感触も格別。標識も行き届いていて、迷う心配もない。東屋のほか休憩所も十分すぎるほど整っている▼今の時代、都市生活者にとって最高のぜい沢は「身近な自然」と言われる。その点で言うと、函館は恵まれた都市となる。街中にこうした場があるのだから。ただ、住む人がそれを身近に感じているかどうか、となると答えは別。「もっと利用されていい」。冒頭の話が言わんとしている思いはそこに尽きる。(H)


9月12日(月)

●有権者が下した選択は、自民党を軸にした公明党との連立政権継続だった。衆院の解散から1カ月余り。この結果を分かりやすく解説するなら「郵政民営化の是非を問う小泉首相の仕掛けに、民主党をはじめとする野党が決め手を欠いた」とでもなろうか▼将棋で言うなら小泉政権の先手必勝パターンが功を奏し、ボクシングに例えるなら序盤のカウンターが最後まで効いた、とも表現できる。例えば民主党だが、「政権交代」を掲げながら当初、その論争を避けようとしたことで改革守旧派イメージを持たれた感が否めない▼思いもかけなかった解散は、連立与党圧勝という思いもかけぬ答えを出した。ともあれ審判が下った今、論評は幾らでもできるが、急ぎしなければならないのは郵政で生まれた政治の空白を取り戻すことであり、政治課題の解決への取り組みはまったなしの状況▼国民の関心事は景気の回復や雇用対策、年金や福祉など社会保障の対応…。それを含め政治が問われている課題は数え切れないほど。郵政民営化をはじめとする構造改革の実行や財政再建なども緊急を要するし、外交では近隣アジア諸国との関係修復などを抱えている▼課題は多い、解決はなかなか、じゃあもういいや。投票率の低迷は深刻な政治問題でもあったが、今回、全国的にも、ここ道南地域でも上がったことは一つの光。選挙は終わったが、有権者の役目はこれで終わったわけでない。この後には大事な“監視の目”という役割が待っている。(N)


9月11日(日)

●衆院選たけなわの先日、獄中をリアルに描いた「調律の帝国」などで知られる小説家がマンション8階から飛び降り自殺した。46歳の若さで。自殺と聞くと「あなたが空しく生きた今日は、昨日死んでいった者が、あれほど生きたいと願った明日」の名言を思う▼WHO(世界保健機構)が報告している世界での年間自殺者100万人は、殺人被害者の50万人、戦争による死者23万人の合計を上回る。日本では7年連続3万人を超え、交通事故死の3倍強。自殺率は世界10番目。30歳代、40歳代と子供(小中高生)の自殺が目立つという▼原因は貧困、失業、仕事の行き詰まりなど。働き盛りの年齢層は、うつ病が誘因している。自殺する前に相談してくれればと思うのだが、厚生労働省研究班の調査によると、自殺者の7割が「誰にも死にたい気持ちを相談していなかった」▼医師への相談もほとんど無かった。自殺が死亡原因の5位に上昇した中国では2分間に1人が自殺、8人が未遂、年間の自殺は28万人を数え、防止のため病院などに心理専門家を配置。上海の病院では、うつ病患者らに対する専門治療や面接によって、3日間に1人の割合で自殺未遂を救っているという▼インターネットの「自殺サイト」で共感し命を落とすケースも少なくない。識者は「最近の子供は生きる目標をなくしており、友だちとのきずなもない」と分析するが、心の病に対する手当ての強化が急務。WHOは自殺は予防可能な保健課題と、各国に対策を呼びかけている。残念ながら、きのう10日が世界自殺予防デーだったことはあまり知られていない。(M)


9月10日(土)

●まさかの解散から1カ月余り、総選挙はいよいよ、あす投票日を迎える。引き金は郵政民営化だったが、二大政党化の時代における総選挙は、今回に限らず、常に「政権を委ねる政党を選ぶ」という意味合いを持つ。ということは、この選挙も問われているのはその判断▼わが国が直面している政治課題は多い。高齢化時代に入った今、国民生活の将来像をどう描くか、そのために何が必要か。ひっ迫した財政、柱が揺らぐ年金の問題、数え上げればきりがない。その一方、中国などアジア諸国との問題など外交面でも難問を抱えている▼解散総選挙は、まさに短期間の問いかけ。自民の候補擁立劇、新党の誕生など、選挙への関心を集めた話題があり、各党の党首ら幹部の街頭行動が際立った選挙だが、個々の選挙区に目を移すと、それぞれに激突模様。民主前、自民新、共産新が競う函館・道南の道8区も然り▼自社激突の55年体制が崩れて10年余りになる。政党の離合集散が象徴するように、わが国の政治はこのところ混迷続き。その中で経済は疲弊し、増幅する生活不安、将来不安から政治への信頼が大きく揺らいでいる。有権者に必ずしも責任はないが、鍵を握っているのも有権者…▼どの政党、どの候補者を選ぶか、が大事だから。その意識度合いのバロメーターが投票率だが、何度も言われているように函館はあまりに低い。2003年11月の前回は57・48%。今の選挙制度になってから60%を超したことがない。誰を、どの党を選ぶか、考える時間はまだある。(H)


9月9日(金)

●きょう9日は「救急の日」。救急業務の重要性は高まるばかりだが、さらなる理解の広がりと救急医療関係者の士気高揚を目的にした啓蒙(もう)日。いわば「きゅう・きゅう」の語呂合わせ。厚生省(現厚生労働省)が1982(昭和57)年に制定した▼函館でも救急車が走る音を聞かない日はない。それほど多いということだが、年間の出動数をみると、旧市時代の一昨年で1万1933件。昨年は1万2941件で、1日平均では35件ほどになる。その6割強が急病で、一般負傷、交通事故が続いて多い▼これが全国となるとけたがいくつも上がって出動は503万件。しかも増加の一途をたどっている。「ありがたい存在」。誰もがそう感謝しつつ、いつも問題とされるのが利用の実態。不要不急の利用が多いということだが、全国的には出動の約半数が軽傷だったという報告もある▼無料だから安易に呼ぶのではないか、だったら一部有料化を考えてはどうか、そんな議論も出始めている。ただ、そう簡単に答えを出せる話でないのは、一般の人が病状などの急・不急を見極められるのか、料金も安ければ逆に堂々と呼ぶことになりはしないか、となるから▼いつでも119番通報をすれば、救急車が短時間で来てくれる。無料で“安心”を提供してくれる素晴らしい社会財産だが、だからこそ大事なのは現実認識の共有であり、利用する側の良識。9月9日は「救急のありがたさを考える日」と考えてはどうだろう、2カ月後の11月9日(消防庁制定119番の日)とともに。(A)


9月8日(木)

●万葉集で相手の心を詠んだオミナエシなど函館山の秋の七草が揺れている。スズムシなどに比べて、帰化昆虫のアオマツムシが「リィィー、リィィー」と繰り返す鳴き声はうるさい。下界は衆院選の真っただ中、連呼が響く▼先日、札幌で高齢者の臓器提供による手術が無事行われた。70歳代の臓器提供は国内で最高齢。ドナーを待っている患者は沢山いて、特に子供は…。米国のように臓器提供ができないため海外に出かけるしかないが、衆院の解散で12歳から提供できるという臓器移植法の修正案が廃案になってしまった▼障害者自立支援法案も然り。審議されないままお流れに。巡礼者の群集に自爆テロがまぎれ込んだウワサで1000人近くが川に落ちて死亡(イラク)。超大型ハリケーン「カトリーナ」で数千人の犠牲者が(米国)。日本列島を襲った大型台風では多くの死者・不明者が出ている▼救済が遅れるほど悲劇は増える。緊急の対策(法案)を犠牲にしてまで踏み切った衆院選。「改革か守旧(抵抗)か」の二分割ムード。それも「地元の自然や財産を守ります」「勝たせて下さい。力をかして下さい」「国会で働かせて下さい」の例の連呼にマニフェスト(政権公約)がかすむ▼「明日の選挙のことは考えない。次の選挙のことも考えない。私が考えることは次の世代のことです」(マーガレット・サッチャー)。1票で何も変わらない、そう言われるかもしれないが、若者の投票率が上がれば、みんなの発言が生かされる。それだけは確かだ。(M)


9月7日(水)

●ここ10年ほど「○○年問題」という言葉が登場する。例えば2000年問題、2003年問題、そして最近で言うなら2007年問題。それぞれ社会に“警告”を発する意味合いがあるが、とりわけ2007年問題は深刻と受け止められている▼2000年問題はコンピュータの問題だった。日付を扱うアプリケーションソフトなどが西暦2000年になると誤った処理を行う可能性があり、その結果としてトラブルの発生を招きかねない、と。役所や企業を問わず、その対応処理に追われたのは記憶に新しい▼2003年問題は函館地域などには無縁の話で、大都会におけるオフイスの需給問題。東京の六本木、汐留、北品川などに象徴されるが、超高層のビル建設が相次ぎ、オフイスが供給過剰になって既存ビルに影響が出ることが懸念される、と。そして迎える2007年問題は…▼年齢別人口が最も多い団塊の世代(1947―49年生まれ)が、一挙に定年を迎える問題。労働者の9%強に当たる約670万人と言われるが、技能の伝承に時間のかかる分野などで穴が開きかねず、製造業を中心に30%の企業が危機意識を持っているとされる▼一方で、その団塊の世代には60歳から年金を受給できず、働きたいという事情がある。その軟着陸策として考えられているのが定年延長もしくは再雇用だが、若年層への雇用枠の拡大という考え方とどう整合させていくか。悩ましいことだが、2007年問題はその提起でもある。(N)


9月6日(火)

●地域にはそれぞれ意外な姿がある。生活や仕事に支障がなければ知る必要もないが、雑学的にデータを示されると、興味が沸いてくるのは人間の心理か。「へぇー、そうなんだ」。実は函館市の市勢要覧にも、そんな思いを抱かせてくれる1nが▼2005年版の資料編にある「数字で見る函館市民の生活」がそれ。いずれも「函館市の」という修飾語がつくのだが、例えば…。一世帯平均の人数は2・1人。また「一日平均」の動きとして出生者は5・3人、死亡者は7・6人。転入者は33・1人、転出者は36・6人という▼死亡者が出生者より、転出者が転入者より多いのだから人口増になりはしない。何とも分かりやすい示し方だが、ちなみに結婚は4・2組、離婚は2・5組。さらに交通事故の発生や救急車の出動状況など、社会問題として覚えていていい興味深い数字も結構あって…▼交通事故の発生は一日平均4・4件。これには驚きはしないが、救急車の出動件数はどう考えても多過ぎ。実に35・5件である。ちなみに火災は3・7日に1件という。このほか、いずれも一日平均で観光客数が1万4000人、ごみの収集量は185・9トン▼普段、目にするのはトータルな数字。けたが多くて、ともすると実感が伝わってこないが、こう表現されると、市の予算や税金だって…。市職員は市民72・9人に1人いて、一人当たりの一般会計予算額は43万9000円、税額は10万5000円。こうした数字からも街の姿は浮かび上がってくる。(H)


9月5日(月)

●「ドングリによる森づくり」を掲げ、植樹活動を進めて6年。JR北海道の労使が大沼公園を舞台に実践している大沼ふるさとの森づくりは、着実に実績を残し、今や評価の高い社会貢献事業。今年も10月8、9日の両日、イベントが計画されている▼森が、林が、緑がいかに大切か。さまざまな角度から語られるが、締めくくりに必ず触れられるのが植樹の勧め。現実に疲弊した森林による災害は増えており、対策として問われ続けているのが植樹。道内でも自治体などを中心に、徐々に取り組みの輪が広がっている▼枕木など木を使ってきた鉄道会社としてJR北海道などが選んだ活動拠点が大沼の流山温泉地域。そして考えた取り組みがドングリを拾い、ポットに種をまき、苗を育て、自ら植樹する一方、苗木を提供する、といった緑づくりの独自システムだった▼10月のイベントは年1回集う賛同者の祭典。昨年も道外からも含め500人余りが参加した。メーンは森林再生プログラムと名づけられたポット苗づくりと植樹作業だが、今年のテーマは「失われた森の再生」。昨年の台風で倒木被害を受けた場所への植樹も計画している▼この数年で苗はかなりの数に。道の「みどりバンク」を通して希望者に提供している。その支え役を果たしているのが“10月の祭典”の参加者。「この植樹活動を通して自然の大切さを学び、地球環境保護の活動に結びつけていきたいと考えています」。今年の開催告知文書にあった一文だが、さらなる広がりを、そう願ってやまない。(A)


9月4日(日)

●「慣れてしまうや最初覚えたありがた味を忘れてしまう」。よくあることだが、日常生活の中にも少なくない。快適な生活という視点で貴重な下水道もその一つ。欧米に比べ整備が遅れたわが国だが、数次にわたる計画によって、かなり整ってきている▼下水道の歴史は古代にさかのぼる。そこまではともかく欧米で整備の動きが出始めたのは18世紀。わが国でも1884年に東京府神田下水施工といった記述がある。近代の下水道となると、さらに後となるが、ちなみに函館での歴史は1907(明治40)年が始まりと言われている▼「明治42年までを第一期とし、当時の市街地のほぼ中央地域で事業費7万3882円を見込み、自然流下方式による載頭卵形コンクリート側溝を道路両端に構築した」(函館市ホームページ)。ただ、全国的にもそうだが、本格的に広まったのはここ50年ほど▼函館で市街化区域全域に下水道計画を定めたのも1971(昭和46)年のこと。現在の整備状況(人口普及率)は85・8%。ただし、合併前の市街地に限ってみれば91%という。「もはや下水道のない生活など考えられない」。そう思わせるに十分な進み方である▼トイレの水洗化、路上などの雨水対策、河川等の環境対策…。下水道は水の“リサイクル事業”の側面も強めており、今後さらに認識の広がりが求められるところ。「整備の促進」から「理解の促進」へ。「下水道 いつか私に もどる水」。今年度の全国下水道推進標語はこう語りかけている。(A)


9月3日(土)

●景気の回復はなかなか実感できず、企業を取り巻く経営環境も厳しい。これでは税金の納付も遅れがちになって仕方ないか、そうは思うが、実際に数字で示されると驚きが先に。整理継続中の滞納額は1兆円を超えているというのだから▼国税庁によると、昨年度新たに発生した国税の滞納額は8995億円。これでも減ったというのだが、実際に1986(昭和61)年以降は年間1兆円を超えていたのだそう。それが毎年積み重なって、滞納整理額はいたちごっこのように残り、昨年度では1兆8673億円▼数ある税目の中で特に問題とされるのは消費税。というのも消費税はあくまで「買い物をした人から預かっている税金」であり、いわば言い訳の効かない滞納だから。しかもその税率アップが取り沙汰されている時に、何と4885億円である▼北海道に目を移すと、厳しいままの経済情勢から、滞納は多いと想像はつくが、新たに発生した滞納額は全国の3・6%に当たる320億2600万円で、うち消費税は半分余りを占める174億3400万円。整理中の税額は、というと、433億2300万円まで膨らむ▼「税金は納めなければならない」という認識を持っているが、やり繰りがつかない、結果として納期内には難しい。そんな姿が多いということだろうが、だからと言って、仕方ない、は通用しない。公平感を欠くことは税の根幹を揺るがすことを意味するから。それにしても滞納がこれほど多いとは…。(N)


9月2日(金)

●アスベスト(石綿)による健康被害は、過去のつけから生じた大きな社会問題。国は労災の認定を受けずに死亡した労働者をはじめ家族、工場などの周辺住民を救済するため新法の検討に入ったが、当然であり、成立を急がなければならない▼アスベストはいわば天然の繊維状鉱物。価格が安く、工事も手軽で、しかも耐熱性に優れているということで、わが国では建築の断熱剤や補強剤などとして多用された。とりわけ公共施設に使われた事例は多く、函館でも市民体育館で今、除去作業が行われている▼健康面への影響が取り沙汰されたのは、初めてではない。微細なので肺に吸入されやすく排出されにくい、と言われ、ILO(国際労働機関)やWHO(世界保健機関)の専門家会合は、1972(昭和47)年段階で発がん性を指摘。対策を講ずるべきだと認識された経緯がある▼吸引したあと体内での潜伏期間が長く、確かに当時は被害者が多くなかった。例えそうだとしても、飛散防止など政府の使用規制が後手に回ったことの説明にはならない。対応が十分でなかった、ということであり、それは当時の懸念が現実となったことが語っている▼政府の発表によると、アスベストが原因で死亡した人は、製造企業で391人、その他で190人。罹患(りかん)している人となると、かなりの数に。周辺住民に早期診断を促す意味も込めて関連事業所名、発生施設(工場)なども公表したが、どう救済策を講じていくか、国の姿勢が問われるのはこれからだ。(N)


9月1日(木)

●9月1日と言えば、誰もが分かる「防災の日」。未曽有の惨事だった関東大震災(1923年)を防災の教訓に、と60(昭和35)年に政府が制定した。それから45年。「常に意識を新たにせよ」と問われる現実に直面し続けている▼ここ十数年だけでも阪神淡路大震災、北海道南西沖地震、新潟県中越地震など多くの人的被害を伴う地震に遭遇した。その記憶は今も鮮明だが、日本列島は常に要注意状態。この16日にも宮城県沖を震源にマグニチュード7・2規模の地震が発生している▼8月上旬に奥尻島を訪れ、まず12年前の夏、津波と火災に見舞われた青苗地区に足を運んだ。その爪跡に建つ「時空翔」と津波館であらためて被災の実態に触れたが、周辺を散策する中で込み上げてきたのは、整備され、復興した姿こそ災害の“語り部”という思いだった▼災害は怖い。誰にも共通の当たり前の心理だが、とりわけ地震は…。台風などと違って予知が難しく、突然、襲ってくる。だから、できる備えは日ごろから、と言われるのだが、それも官は官で、民は民で。家具が倒れたり、物が落ちてこないような対策などは民の一例▼さらに求められるのが飲料水、食料品、ラジオ、懐中電灯、マッチ類、防寒具(雨具)などの非常持ち出し品。ある調査は家具類の対策済み39%、持ち出し品の備え済み54%、と報告している。まだまだ、と防災機関。「対策は十分か」。9月1日は官民それぞれに考える日としたい。(N)


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