平成18年1月


1月31日(火)

●松前城が今年、築城400年という。その周辺の桜で知名度を上げている感があるが、わが国最後の日本式城郭として知られ、北海道に残る唯一の存在。松前町はこの400年祭をまちづくりの飛躍の糧に、と位置づけ、その意義を広く訴えている▼松前に城があることは分かっていても、歴史的な話までとなるとなかなか。ここで詳細に説明する紙幅はないが、概略だけ触れると、蝦夷地の支配者として認められた蠣埼慶広が姓を松前と改め、松前城の前身となる福山館を築城した、と言われる。それが今から遡(さかのぼ)ること…▼400年の1606年のことである。その後、ロシア船の出没などに備える蝦夷地警備の拠点となり、福山館を修築する形で松前城として完成したのが1854年だが、明治維新の戦いの舞台にもなって、旧幕府軍の攻撃を受けて落城したのが1868年▼天守閣は1949(昭和24)年に焼失したが、12年後に復元されて今日に。訪れた人も多かろうが、内部は松前城資料館。北海道の歴史の“証言者”であり、とりわけ松前町にとっては…。ホームページ(HP)に掲載の「400年祭の意義」からも思いが読み取れる▼「松前城400年の歴史は…北海道のまちづくりという視点において『北の大地にしっかりとした意思を持って生きていくことの決意宣言がされた日』からの歴史である」。HPでも読めるが、町広報が連載中の「築城400年祭」特集で、その歴史秘話などに触れることもできる。(N)


1月30日(月)

●「人生のブランコたまにはバックする大きく前へこぎ出すために」「幸せを待つのに少し飽きたからまずは歩いて探してみます」「どうしたらお前のようになれるのか見返りなしの盲導犬よ」「刈られても刈られた分だけまたのびる芝のあおさに力みなぎる」…▼ここに紹介したのは、1月中旬に発表された第19回現代学生百人一首の入選作(秀逸含む)の一部。東洋大学が1987(昭和62)年に創立100周年を記念して始めた事業だが、すっかり定着し、今では全国から5万8000首(今回)が寄せられるまでに▼昨年も本欄で取り上げたが、対象は小学生から大学生まで。「社会は刻々と変化しているが、みずみずしい感性で詠いあげていることに変わりない」。今回の総評だが、確かにその三十一文字(みそひともじ)から伝わってくるのは、若者の感性であり、ものの見方▼寄せられる作品のジャンルは多様だが、家族や政治・社会などのほか、「自分」についても。冒頭で紹介した4首がそうだが、より感動させてくれたのは「家族」を詠った作品で、「冬の夜心が一番あったまるのはストーブよりも『おかえり』の声」はその一つ▼作文などにしても同じだが、自分の思いや感じていることを正直に表現する、というのは簡単なことでない。ましてや三十一文字の表現で、となると、なおさら。まさしく“考える機会”“見つめる機会”の提供だが、それにしても6万首とは…。ちなみに北海道からは1170首が応募されている。(H)


1月29日(日)

●2月1日、道南に新しい「市」が産声を上げる。上磯町と大野町が合併する1万7800世帯、人口4万8000人の北斗市。「歴史や文化 資源を活かす豊かな環境都市」(北斗市まちづくり計画)を描き、昨年来進めてきた合併準備も整って…▼市町村の合併は容易なことでない。今日に至るまでさまざまな歴史があり、住民感情や財政事情もある。だから、せざるを得ない状況は理解されるものの、各論に入るや暗礁に乗り上げたりするのはそれ故。そんな中で両町は新しい時代のまちづくりを志向した▼産業構造などに多少の違いがあるとはいえ、明らかな隣同士。函館とも極めて近い隣接町として、近年はベッドタウンの色彩を強めている。現在も宅地開発が進んでおり、恐らく5万人都市となるのは時間の問題。さらに10年内には北海道新幹線の新函館駅が立地する▼よく言われる、合併で鍵を握るのは住民の連帯意識だ、と。行政のように一定の定義で進まない、進められないからだが、その住民サイドの取り組みとして北斗市で注目されるのが「北斗市の歌」を考えたこと。すでに出来上がって、合唱団の団員募集を行っている▼「時間をかけて培ってきたあらゆる財産を、さらに素晴らしいものに」。両町の良さをどう融合し、共有していくか、ということだが、大事なのは、むしろ意識しないこと。この歌が果たすであろう役割もそこにある。北斗市が期待を担って、新たな歴史を刻み始める日は、もうそこまできている。 (H)


1月28日(土)

●仕事柄、毎日、多くの情報に接する。地元で配達される新聞のほか、郵送などで届く全国各地の新聞…。さらにはインターネットで読ませてもらうことも多い。その中で地域紙や全国紙の地域版などに地域として参考になる情報が少なくない▼先日も日本経済新聞の地域経済ニュースで、目にとまった記事があった。「稲取温泉の食品残渣(さ)リサイクル事業、本格活動」という見出しがついていたが、食べ残しなどの生ごみなどを独自にリサイクルする事業に温泉ぐるみで取り組み始めた、という話…▼食糧難に悩む国や地域がある一方、わが国で食べ残し問題は提起されるようになって久しい。農水省が行った昨年の食品ロス統計調査でも、食堂やレストランなどでの1食当たりの食べ残し割合は34%。リサイクルへの取り組みも進んできてはいるが、まだまだの域…▼だから参考になるのだが、伊豆半島東部に位置する東伊豆町にある稲取温泉の試みもその一つ。雛(ひな)のつるし飾り発祥の地として知られるが、同紙によると、旅館協同組合が実行した一つが生ごみを養鶏の飼料に再生し、取れた新鮮な卵を宿泊客に提供しようとする事業▼その飼料作りの燃料には回収した食料油(廃油)を充てる、というから、いわば生ごみ、油のリサイクル事業。廃棄からリサイクルへ、処理という同じ問題を抱える温泉地にとっては注目に値する取り組み。まだ始まったばかりだが、各地の情報は時として貴重な参考書になる、この記事もそれを教えている。(N)


1月27日(金)

●民事、刑事を合わせ全国の裁判所では毎日、数多くの判決が出される。新聞などで知るのはごく一部だが、インターネットで最高裁の判決結果を見ていると、新しい法判断が結構示されていることに気づく。1月17日に最高裁第三小法廷が下した判決も▼それは公衆トイレの外壁にラッカースプレーで落書きして建造物損壊の罪に問われた被告の上告審。落書きは施設の機能を失わせていない、従って損壊の罪に当たらないというのが被告側の主張だったが、最高裁が示したのは「損壊に当たる」という判断▼この種の事件は損壊の解釈の難しさから従来、軽犯罪法の適用が多いが、この事件では刑法(建造物損壊の罪)が。1審(地裁)、2審(高裁)の判決は懲役1年2月、執行猶予3年だったが、最高裁の判断は、この事件に限ってとはいえ、建造物損壊に当たる、と▼「建物の外観ないし美観を著しく汚損し、原状回復に相当の困難を生じさせたものであって、その効用を減損させたというべきであるから、刑法260条前段にいう『損壊』に当たると解するのが相当である」。最高裁はこう理由を述べているが、今後の判例として重みは大▼公園や地下歩道など公共施設に対する落書きは、大都市を中心に管理者の大きな悩み。美観が損なわれ、補修経費もかかる。この判断が注目されるのは、より重い刑罰の適用に道を開いたことによる抑止効果。としたら…。この最高裁判断は社会的に意味を持つ判例とみることもできる。(N)


1月26日(木)

●地域の学校が頑張っている姿を見るのは、うれしいものだ。そんな思いを毎年、何度も抱くが、先日、本紙の教育面で紹介されていた「南茅部高校の理科部の日本学生科学賞入選」は、中でも特筆に値する話。地道な部活の成果であり、立派というほかない▼その活動と実績は、今や南茅部高校の名を道内ばかりか全国に知らしめるほどに。しかも、この間わずか10年。それだけ目覚しいということだが、当時の渡辺儀輝教諭(函館東高教諭)、そして今の堀輝一郎教諭らの指導を受けた生徒の努力が次々と開花している感じ▼記憶に新しいが、前年度は「偏光板とポリプロピレンによる着色現象に関する考察」で、全国最高賞の内閣総理大臣賞に輝いている。ということで注目された今年だが、全国から3000もの応募があった中で「水晶球の鑑定法に関する考察」を発表しての受賞▼ちなみに入選の研究は、というと…。「水晶球をサングラスなどに使われる偏光板2枚で挟むと、特定の方向から広がって見ることができる同心円状の緑とピンクの輪の原因を探った」(本紙)もので、その結果、結晶の並び方によって見え方が決定されることが判明したという▼最近は理科離れが言われる。その対策として函館でも青少年のための科学の祭典が開かれたりしているが、こうした実績は理科に目を向けさせる大きな原動力。その意味で南茅部高校理科部の活動は賞賛に値する。「南茅部高校に理科部あり」。昨年も本欄で取り上げたが、再度、拍手を送りたい。(A)


1月25日(水)

●映画「アマデウス」によると、その才能を前に嫉妬(しっと)と苦悩を募らせるサリエルが衰弱したモーツァルトを手助けするふりをして、最後の「レクイエム」の楽譜を書きとめ、モーツァルトを休ませずに死へと導く。この27日はモーツァルト生誕250年の日▼クラシックは苦手だが「アイネ・クライネ…」くらいは耳になじんでいる。漫画家の砂川しげひさ氏は「疲れたといっては『ピアノ・ソナタハ長調』をかけ、片思いの彼女にふられたといっては『弦楽五重奏曲ト短調』をかけてしまう」と書いている(雑誌「てんとう虫」1月号)▼五線紙を埋めた、のびやかな楽想、わだかまりのない魂の飛翔…。胎内の音環境に近い要素を持っているといわれ、今では癒し、セラピー音楽の代表格。特に人は病気や加齢などによって音が聞き取りにくくなり、不安や気力低下が起きるが、この聴覚のゆがみを治す力が大という▼音楽療法にも使われており、脳卒中で昏睡(こんすい)状態に陥ったイスラエルのシャロン首相のベッドで家族が、モーツァルトの曲を聞かせていることが話題を呼んだ。脳の活性化やストレス解消にいいよう。野菜栽培や酒造りでもモーツァルト効果が報告されている▼この天才も射的、ビリヤード、トランプなどに金を使って、年譜では31歳で経済状況「悪化」、翌年は「さらに悪化」、埋葬される35歳の7月には「ますます悪化」とある。先日のモーツァルトの頭がい骨DNA鑑定は“灰色”に終わったが、今夜は交響曲『ジュピター』でも聴いて、脳のリラックス効果を実感したい。(M)


1月24日(火)

●元町の教会群や歴史的建造物、ベイエリア…。「函館」のイメージとして浮かぶ光景は、と聞かれると、答えは人さまざまだが、地元の人間が身近に感じる建造物として挙げるであろう一つに旧函館ドックの大型クレーンがある。しかしながら、その運命も…▼所有者である函館市が、時期は未定ながら撤去する方針を固めた。その話は先日、一斉に報じられたところだが、それ故に市民の間には残念がる声が多いが、現実の問題に目を向けると、必ずしも郷愁に浸っていられない厳しい事情が。腐食が激しいのだという▼かと言って補修するにも、かかる費用は多額。この大型クレーン、正式には「ゴライアスクレーン」と呼ばれるものだが、旧函館ドックが造船用として建設したのは1975(昭和50)年。並んでそびえ建つ赤色の2基は、見る場所によって趣が違って映る▼ともえ大橋からは「港のデザインとも見える」と話す人もいるが、30年を経過し、補修して残すか撤去するか、市で昨年来、議論されてきた。その結論が撤去。レールが動かないほか鉄の腐食がかなり進んだ状態で、補修に要する費用が概算で9億円とあっては…▼有効利用の道でもあるなら別だが、将来的な管理費も考えると、補修判断はしにくかった、ということだろう。「惜しまれるが、やむを得ず」の思いだが、函館の歴史、産業遺産であることは紛れもない事実。写真に残す一方、今から“ゴライアスクレーンのある港”の光景を頭に焼きつけておきたい。(H)


1月23日(月)

●毎年1月24日からは全国学校給食週間。子どもの体づくり、食に対する教育など、学校給食が果たし、担っている役割は大。今では形はどうあれ、全国的に実施されて当然のことになっているが、その歴史は意外と古く、100年以上も前にさかのぼる▼わが国で最初に学校給食を行ったのは、山形県鶴岡市(当時鶴岡町)の私立忠愛小学校と言われ、1889(明治22)年のこと。弁当を持参できない児童のために無料で用意した救済的な意味合いが強いもので、おにぎりと焼き魚、漬物だったと伝えられている▼全国的に広がり始めたのは戦後。1947(昭和22)年には都市の児童約300万人に米国から提供を受けた脱脂粉乳での給食が始まり、函館でも「昭和26年2月からモデル校で主食(パン)、副食、粉ミルクの三品で600iを基準とする“完全給食”を実施した」(函館市史)▼文部省(現文部科学省)が、給食の教育的な見地から全国学校給食週間を制定したのは1950(昭和25)年。1月24日からとした裏には、初めての学校給食会が開かれた日(昭和21年12月24日)としたかったものの冬休みということで、1カ月繰り下げたのだと▼飽食と言われる今の時代、当時と違った視点から食の重要性が叫ばれている。「食育」という言葉の再登場がすべてを物語っているが、問われているのは家庭も巻き込んで、どう食に対する認識を広げていくかということ。数日前の本欄は子どもの肥満対策に触れていたが、「学校給食週間」は「子どもの食生活を考える週間」と言い換えていいかもしれない。(A)


1月22日(日)

●経営難から存続の危機に直面していたホッカイドウ競馬が、とりあえず継続される。昨年11月末の定例道議会で高橋知事が3年間の存続方針を表明したことで「2005年限りで」は免れたが、これで安泰とはならない。あくまでも条件付きの判断だから▼晴れやかで、スポットが当たる中央競馬の一方で、地方の競馬はおしなべて“苦悶の時代”から抜け切れないまま。ホッカイドウ競馬を含め、全国には昨年4月現在で16の地方競馬が運営されている。経営は苦しく、大なり小なりほとんどが存続論議のまな板に▼道営もここ数年、議論が繰り返され、今年はがけっぷちの年だった。答えを求められた収支は13億円の赤字と言われ、高橋知事の判断が注目されていたが、結果は運営委員会が示した存続支持の意見書を尊重した形。馬産地という事情もあるが、条件は赤字を半減させること▼つまり、存続させたいが、収支の均衡に見通しが立たないとなれば3年と言わずに廃止も考えるという、いわば最後通告。今年へと生き延びはしたが、ファン人口が伸び悩む中で「これぞ」という決め手を生み出せるなら別だが、それも容易なことではない▼これまでも手をこまねいてきたわけではない。ホッカイドウ競馬も開催地の集約、発売所の増設などの努力を続けてきた。それでも、なのだから地方だけで展望を開くのは至難。地方で廃止が進むと、馬産にも影響して、中央にもつけが回りかねない。この地方競馬問題はもはや競馬界全体の問題として議論する時にきている。(A)


1月21日(土)

●「青函交流に確かな実効を求めたい」。先日の本紙も伝えた青森・函館ツインシティ推進協議会によるアンケート調査結果から透けて見えてくる思い。それは「何か一つ物足りない。もう一歩踏み込んだ取り組みを」という期待感の表れとも映る▼函館と青森の付き合いは、今に始まったことでない。その歴史は古く、いまさらと受け止める向きもあるが、青函連絡船が姿を消すなど時代の波を幾度も受けて今日に。そうした変化を踏まえ「あらためて互いに生かし合う関係を」という趣旨で結ばれたのがツインシティ▼1988(昭和63)年に締結された後、生まれた交流事業は数多いが、実感としてインパクトは…。時代はさらに変わって、10年以内には新幹線で結ばれようとしている。さらに近くなるのだから、両市にとって「青函」が将来のキーワードと言われて当然▼このアンケート調査が必要と教えているのは、新たな取り組み。その一例が以前にも議論のあった青函ブランド商品の開発だが、この調査でも青森で28%、函館で21%が求めている。観光分野での連携も模索できる話で、共同PR戦略なども決して難しいことではない▼もちろん同協議会も手をこまねいているわけではない。北海道新幹線の開業時に向け柱に据えた一つが、その青函ブランド商品の開発。どんな商品が生み出されるか楽しみが広がるが、ここで確認しておきたいのは「交流強化」は、両市民の共通認識ということである。(H)


1月20日(金)

●「修士論文がうまく書けず、むしゃくしゃしてやった」。先日、24歳の北大大学院生が強制わいせつ未遂容疑で逮捕された。数年前には大学入試センター試験も受けて、難問を突破し、最高学府で燃えていたはずなのに▼その大学入試センター試験は、新学習指導要領で勉強した高校生のため、今年から英語のリスニング(聞き取り)テストが導入される。受験生に巻き戻しや一時停止ができないICプレーヤーを1台ずつ配布。問題を聞き直すことはできず、勝負は1度きり▼「テスト始め」の声で再生ボタンを押すと、問題文が2度読み上げられ解答する仕組み。選択肢に気を取られると、次の問題を聞き逃すこともあるという。かつては「読解力」だけで「聞き取り」などの授業はなかったが、「話せる英語」へのワンステップ▼ICプレーヤーの故障や周囲の騒音によるトラブルが心配されているが、30分間聴覚をとぎすまして、「ゆとり教育」で積み重ねた実力を発揮してほしいと思う。リスニングテストは韓国でも導入されており、厳しい試験を受けて希望の大学に進学するのだそう▼ヒトクローンES細胞の論文をねつ造、国民的英雄から転落したソウル大の教授はリスニングを受けたかは分からないが、そこから思うのは、いつまでも真しに向学心を忘れないでほしいということ。いわんや強制わいせつ未遂容疑で人生につまずくなんて…。その大学入試センター試験はあす21日から2日間実施され、約55万人が受験する。(M)


1月19日(木)

●「現代社会は子どもから大人まで生活習慣病にかかりやすい環境にある」と言われる。実際に高脂肪、高カロリーの食品があふれ、その摂取習慣の結果、肥満が増えている。中高年でよく指摘されるが、むしろ深刻なのは子どもの増加なのだという▼肥満は「肥え太ること」だが、遺伝的な原因はせいぜい3割で、6割から7割は環境が握っていると言われる。環境には社会環境もあれば、家庭環境もある。栄養バランスが崩れ、時間的に不規則な食事、さらには屋外での行動減による日常の運動不足など…▼学校保健統計(文部科学省)によると、2年前で身長ごとの平均体重より2割オーバーの小学生は1年で4・6%、6年で10・8%、中学2年生では9・6%。小学高学年の児童から中学生では約1割が肥満傾向ということに。20年前に比べるとほぼ2倍だそう▼完全な“黄信号状態”であり、このままにしておいては…。というのも肥満のまま大人になる確率は高く、生活習慣病へ発展することが懸念されているから。「厚生労働省が新年度から子どもの肥満防止対策に乗り出す」。1月初めの朝日新聞にこんな記事が載っていた▼そこに異論をはさむ気はないが、考えられているのがモデル地区を設定して健康状態、食事や運動の習慣を調査することなどとあっては、ちょっと疑問。根本的な原因源は家庭であり、もはや指導など具体的な対策を講じるべき段階に入っていると思うから。「家庭に対する食育」。待たれているのは、その啓蒙活動の具体策ではないのだろうか。(N)


1月18日(水)

●インターネットを使った株への個人投資は増えているが、風評や風説に左右されることが少なくない。「投資家は勉強しなければいけない。そうしないと、ずる賢い人にだまされちゃいますからね」。ライブドアの堀江貴文社長は外国特派員協会の講演でこう発言していた▼資本金600万円で仕事を始め、10年後には862億円に膨れ上がり、子会社44社、関連会社5社の巨大グループに。企業の合併・買収(M&A)を繰り返す経営戦略で、投資家にすそ野を広げ、株を分割し、10倍、100倍と増やした▼この錬金術に捜査のメスが入ったのは、関連会社が出版関連会社を買収した際の取り引き。実際には現金で相手側の株式を買っていたのに、ライブドアが株式交換で買収すると発表したことが証取法の禁じる「風説の流布」にあたるという容疑。誰でも分かるが、虚偽の情報を、株価を動かす目的で流したら違法…▼風説の流布で法律のグレーゾーンに突っ込み、ボーダーラインの一線を超え、ルール無視の灰色手法に手を染めたのだろうか。自ら「投資家は勉強しなければならない」と力説していた講演が空しい。ある元証券マンは「プロの餌食にならないように」と警告している▼IT企業など「勝ち組」が集う六本木ヒルズの象徴に上ったライブドア。想定内であろうと、想定外であろうと、今回の捜査がIT業界に与えた打撃は大。知りたいのは事実。当然ながら、それが明らかにされるはずである。(M)


1月17日(火)

●「道有林」。厳密には「北海道有林野」といい、北海道が管理している森林のことだが、今年で100年になる。アイドルキャラクターがクマゲラであることも含め、知られているようで意外と知られていないが、これからの時代に大事なのが理解の広がり▼温暖化防止効果など、森林が我々の生活に果たしている役割は大。ちなみに北海道内の森林面積は、と言うと、国有、民有、道有を合わせ558万ヘクタール余り。「道有林」は11%の61万ヘクタールを占め、そのうち渡島、檜山の道南には12万6800ヘクタールがある▼蓄積量は天然林が5万2000立方メートル、人工林が1万5000立方メートルなどで、さらに見方を変えて保安林は78%、水源かん養が51%…。恵山や松前矢越など道立自然公園も10カ所設けられている。その「道有林」の歴史が始まったのは今から100年前▼道のホームページによると…。「1906(明治39)年、林業経営の模範を示し、道財政を援助する目的で、国から模範林として譲渡された」のが始まり。それから…。今や森林の恩恵を再認識すべき時代で、道有のみならず林野は今に生きる者が後世に残すべき重要な財産▼森林は育てるのも、啓蒙するのも時間がかかる、と言われるが、せめて「道有林」が100年を迎えたことぐらいは認識していたい。求められる共通理解の前提と思われるからで、啓蒙は欠かせない取り組み。道が小中学生からアイドルキャラクター・クマゲラの愛称を募集(2月9日まで)しているのも、その一環である。(A)


1月16日(月)

●「地域の食を守り伝えよう」。そんな思いを具現化した取り組みは数多いが、道が今年度から進めている「食づくり名人」の登録もその事例。スタートしたばかりで、まだ知名度は低いが、現在の登録者は104人。さらに自薦他薦で名人を発掘している▼郷土料理と呼ばれるものなど、地域で受け継がれている食は結構ある。有名な食はごく一部で、ほとんどが表に出ていないが、それを大事にすることは地域の財産づくり。「北海道の食を発信する原点」とも言える行動であり、新たに一つ加わったということ▼道のホームページで詳しく紹介されているが、68人が初登録されたのは昨年の9月28日。その後、順次、追加登録されて100人を超えるまでに。始まったばかりのため、まだ地域によって人数に差があり、道南からは桧山が多く18人(団体)、そして渡島が3人▼料理や伝承に限らず食品加工まで幅広く、例えば、地元の伝統食「かたこもち」づくり名人(厚沢部)、お米のお菓子「こうれん」づくり名人(江差)、ホッケのシャブシャブづくり名人(奥尻)、鯨餅ヘあわせ名人(上磯)、函館に入植時から伝わる赤かぶの漬物名人(函館)等々▼北海道は質の高い「食材の宝庫」と言われるが、残念ながら「食の宝庫」とは…。その意味で「食づくり名人」は「食の宝庫」を発信するきっかけづくり。輪を広げてもらうための気取らない取り組みとして、大事なのはこれから。登録して終わりということにだけはしてならない。(N)


1月15日(日)

●「個人情報の漏えいを懸念するとともに、個人情報の過剰保護によって暮らしにくく不便な社会になるとの不安を感じる人が半数以上…」。読売新聞社が昨年12月に行った世論調査の答えだが、その裏に見え隠れするのは“ご都合解釈”に対する疑問▼個人情報の定義として一般的なのは「氏名、住所、生年月日、性別、職業、電話番号、電子メールアドレス等」と「幾つかを照合することで特定の個人を識別できる情報」。国民はその保護を求め、規制する法律として昨年4月、個人情報保護法が施行された▼ところが、この8カ月ほどの間に生じているのは、過剰な保護であり、言い訳の利用。国や自治体が懲戒処分の職員名を公表しなくなったなどは典型的な事例だが、実際に法の趣旨から逸脱した解釈がみられるという指摘が多く、そこにあるのは「何か変」といった思い▼この調査結果によると、本来、圧倒的多数であって当然の「(保護法が)適正に運用されている」という認識度はわずか25%。逆に61%というから5人に3人までが「おかしい」と。特に疑問を提起されているのが、役所などでの都合のいい自己規制というか出し渋り▼このまま進むと、身近なところでも匿名社会が色濃くなっていくのは必至という声もうなずける。過度な保護に対する不安は根強く、57%が「暮らしにくく不便な社会になる」と答えているのはその表れだが、判断を当事者に委ねている限りは…。早いほうがいい、運用の問題点を改めて議論すべき時はきている。(N)


1月14日(土)

●「新しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重吉事(しけよごと)」ー大伴家持は新年はより良い事が起きると詠んだ。時代は流れて、今年は記録的な白魔の襲来に、突然訪れた男に母子が殺傷されたり、全国で77人に鳥インフルエンザの陽性反応が出るなど沈痛な小正月…▼かつて本来の年越しと言われた小正月には、豊年を予祝する行事が多い。どんど焼きなど、火をたくことも広く行われ、みそぎの日でもある。木古内の佐女川神社の寒中みそぎは、なんと176回目で、4人の若者が厳寒の津軽海峡の浜で水ごりの荒行、稲荷など4体の御神を清める▼大雪による家屋倒壊などにより死亡した人が全国で80人を超えた。子どものころ、古老の口癖は「家がギシギシ鳴るのは危険信号。ふすまが開かなかったら、すぐ雪を下ろせ」だった。もう一つの家屋倒壊の恐れは耐震データ偽装によるマンションだ▼「雪は怖い。小さな一片が降ってくるだけだが、その雪が地や岩を隠し、…一つの家を隠し…遂には人間の生命を隠そうとする」。ある詩人の一文が脳裏をよぎる。耐震偽造マンション建築主の証人喚問(17日)では真実を語り、入居者を安心させるべきだ▼小正月は子育てなどで多忙な女性をねぎらう「女正月」でもある。誘Oサされた生後11日の赤ちゃんが寒風に耐え2日後に無事保護され、元気に母親の胸に戻った。まさに「いや重吉事」。15日の朝には小豆がゆ、七草がゆを食べて、あらためて家族の健康と無病息災を祈願しよう。(M)


1月13日(金)

●函館市内の年間救急車出動は1万3000件余り。昨年の統計だが、1日平均にすると36回、1時間当たり1・5回ということになる。ありがたい存在であり、救急車が市民生活の“安心”を支えている現実を物語っているが、それにしても多い▼函館市消防本部が配置している救急車は、予備の3台を含めて13台。50件を超える日もあるということだから、ほぼフル出動に近い実態と言える。実際に本紙が伝えた12月21日現在の出動は1万3099件。10ほど残しているから最多記録の更新はさらに…▼函館市に救急隊が誕生してほぼ40年。事故なども増えたか、その存在が身近になったこともあってか、出動は年々増加の一途。1999(平成11)年に1万件を超えてからでもまだ6年しか経っていない。一昨年1万2000件を超えたと思ったら、一気に1万3000件台▼確かに東部4町村との合併もあったにせよ、多いというのが実感。出動推移をみる限り、今後も増え続けるのかという思いになるが、「(このままでは)重篤な患者を搬送できないことになりかねない」という声が出てくるのも当然。そこで関係者が求めるのが…▼「適正な利用」。確かに病気やけがだけに、素人に軽いか否かを判断せよ、というには難しさがある。高齢化の時代ではなおさらのことだが、ただ市民として頭に入れておきたいのは、過密出動の現実があるという事実。「今年は出動減に転じた年となるように」。できることなら、そう願いたい。(H)


1月12日(木)

●生活の中に「ネット販売」が急速に浸透している。まさに変革の10年だが、ジャンルも広まるに広まって、今や食料品、もちろん生鮮食料品まで。食へのこだわりは“お取り寄せ”という言葉をより現実のものにし、さらに期待される市場と言われる▼「商品を手にとって確かめて」。それが食料品に限らず消費者心理として根強かった購入行動だった。ところが、それには足を運べる範囲内、という制約がある一方、全国各地の商品情報が増え、インターネットの登場で“いいもの”が容易に手配できる環境に▼その中で注目を集めている商品ジャンルの一つが、米や野菜、果物、魚介類などの生鮮食料品という。農林漁業金融公庫が昨年7月に行った調査によると、ネットで食料品を購入した経験のある主婦は71%を数え、うち現在も購入している人がほぼ半数近くの43%▼購入した品目(複数回答)では生鮮食料品が59%と最も多く、次が洋菓子類(44%)。農水産物は産地から新鮮で有機栽培の安心・安全なもの、菓子類は全国的に有名な店のものを、という消費者心理が読み取れるが、そうした行動がとれる現実になったということ▼ただ全体の消費ウエートからすると、ごく一部であることも事実。1カ月に1―2回の利用という実態からもうかがえるが、裏返して考えると、それは情報の提供、品質保持などの充実を図ることで今後に可能性を残しているという示唆でもある。今年、来年とは言ってられない。刻々と時代は変化している。(N)


1月11日(水)

●かつて繁栄を極めた都市中心部の空洞化は、函館市も含め多くの地方都市が抱える悩み。車社会になって大規模な駐車場を構えた量販店の郊外出店が生み出した現実だが、帯広市が来年度に向けて詰めの検討中という新対策が注目されている▼帯広市では数年前、中心部にあった大型スーパーが郊外に移転し、ビルごと空き店舗状態になったほか、JRの高架で駅前から中心部にかけての様相が一変。老舗百貨店も相乗効果を発揮する店舗がなく、人通りは減って、位置的に孤立無援の営業を余儀なくされている▼「なんとか人が集まる方策を」と行政、経済界が議論する中で浮上したのが、百貨店のワンフロアーの借り上げ。駅前にある公共施設の補完的機能を持ったコミュニティスペースとする考え方であり、それを「中心部に人を呼び込むきっかけにしよう」という発想▼民間施設の公的利用は珍しいことでもない。札幌の駅前や帯広の駅関連施設に設けられたパスポートセンターなどが分かりいいが、利便性の観点からではなく、空洞化対策、活性化対策の視点からの取り組みとなるとどうか。斬新に映る施策であり、注目されるのもそれ故▼地方財政が厳しい時代環境を考えると思い切った施策と言えなくもないが、これこそが紛れもない行政判断。まだ最終決定には至っていないようだが、最も大事 で、鍵を握るのは、そこにどういう機能を持たせるかということ。それも含めて、いずれ函館で参考になる話かもしれない。(A)


1月10日(火)

●わが国の美術振興に貢献している団体の一つに、行動美術協会がある。主催する公募展(行動展)は画家を志す人たちにとっての登竜門。函館でも毎年の巡回展が美術ファンを楽しませてきたが、その貴重な地域の“文化財産”が消えることに▼今、函館美術館で開催中の第60回記念展で、函館での幕を閉じるという。協会が誕生したのは1945(昭和20)年の11月。結成の辞はこう記している。「吾々は新生日本美術を樹立し…徒らなる論議よりも先づ行動、逞しく黙々とこの道を邁進せんとするものである」▼設立会員に函館が生んだ偉大な画家である田辺三重松らが名を連ねた。そこに函館との縁が生まれ、次第に関係を深めていくことになるが、函館が道内唯一の巡回地であるのも、そんな縁から。始まったのは第4回(1949年)からで、今ではなじみの深い美術展▼今年も15日まで第60回記念展の函館巡回展が開催されている。受賞者や会員、さらに道南の11人の作品80点が展示されているが、そこに飛び込んできたのが何とも残念な情報。これが函館での最後の巡回展になるとの話で、本紙も5日の紙面で伝えている▼毎年の開催を支えるのは容易なことでない。函館開催を支えてきた人たちが高齢化してきたのに加え、鑑賞者数の伸び悩みなどにより運営面での負担も大変となると…。関係者のつらい思いは察するに余りあるが、一言で言うと、地域が守り切れなかったということ。大きな使命を果たして50年余、それだけに惜しまれる。(H)


1月9日(月)

●冬季オリンピックとサッカーのワールドカップは、同じ年に開かれるが、今年はその開催年。2月にはイタリア(トリノ)で冬季オリンピック、6月にはドイツでワールドカップ…。既に秒読みの段階で、スポーツファンならずとも楽しみが広がる▼冬季オリンピックは、今年が区切りの20回目。2月10日から7競技84種目が展開される。前回ソルトレークシティー(アメリカ)での日本選手はいま一つだったが、その前の長野では船木和喜らスキージャンプ陣、スピードスケートの清水宏保の活躍が記憶に新しい▼そして迎えるトリノ。最も注目されるのは女子フィギュアだが、さらにスピード男子500やスキーの女子フリースタイル、スノーボードなど。もちろん道南から熱い応援を届けたい選手もいる。大野町出身で、メダルへの期待がかかるスキーアルペン男子の佐々木明▼それから4カ月弱で、世界の目はドイツにくぎ付けとなる。ワールドカップはオリンピックに勝るとも劣らない人気のサッカーの祭典。18回目になるが、日本の本大会出場は前々回のフランス大会が最初。前回の日韓共同開催では決勝トーナメントに駒を進めている▼今回は出場決定一番乗りで、熱い思いは高まるばかり。ブラジル、クロアチア、オーストラリアとの予選F組にエントリーされ、6月12日のオーストラリア戦が皮切りとなる。笑顔と涙が交錯し、感動の世界に導いてくれるオリンピック、ワールドカップ。その本番が刻々と近づいてきている。(H)


1月8日(日)

●函館市の広報1月号に、市民から寄せられた昨年の「市長への提言」が紹介されていた。主な提言内容として28。勝手に「どうせ要望ばかりだろう」と思っていたが、中には「その通り」「ぜひそう考えるべき」と共感を覚える話が幾つかあった▼よく言われていることだが、例えば…。「車で函館観光をする人は駐車場の少なさに頭を痛めると思う。リピーターを増やすためにも、せめて市営も駐車場は無料、もしくは1回200円など固定金額にして、ゆっくりと観光を楽しんでもらえるようにした方がいい」▼さらには「赤川線、産業道路線など、交通量の多い場所に市電の路線を増設すべき。また、自転車と一緒に乗降可能な方式など新しい工夫も必要」「熱海市のように有料老人ホームをたくさん作り、福祉の街として売り出す。その家族が観光を兼ねて函館を訪れる経済効果もある」▼どう受け止めるかだが、悲しくなるこんな提言も。「生活上のマナーやルールの遵守は、残念ながら道内でも最低レベル。特に交通マナーは何とかしなくては、よそから相手にされなくなると思う。市民監視員や指導員を設け、警察と連携し、権限を与えてもいい」▼方法は別にして、ほとんどの市町村が住民の声を直接聞く機会を設けている。その狙いは住民が日ごろ、行政に関してどう考え、何を求めているかを知ること。反応が多いほど行政に対する関心度が高いとも言えるが、そう考えると…。「市長への提言」が268人だったのが気にかかる。(N)


1月7日(土)

●地球が太陽に最も近づき、太陽エネルギーの放射量が地球に最もふりかかるのが「近日点」。太陽が近づくのに、何でこんなに寒いんだろう。素人には科学的なメカニズムは分からぬが、小寒(5日)の寒の入りと重なった。あと1か月は厳寒期▼本州からの年賀状に「厳しい寒波の日々、正月前に50aも積もった」「北海道の寒さは体感したことはないが、北陸でも大変な寒さ。年寄りは縮こまっているのみ」「自然現象も社会現象も何が起きるか分からない時代。記録的な大雪も自然の怒りなのか」など、四苦八苦の様相▼玄関や車が雪で埋まった写真の電子メールも数通。「風邪が長引く、インフルエンザかな。薬を離せない毎日」と書き込んだ賀状も。函館市出身の大道芸人、ギリヤーク尼ケ崎さんは「東京も寒い。新作の《うかれおわら》を磨いて、今年も世界平和を願い踊りまくります」と寒中稽古(けいこ)▼孫からは「ゲーム機がほしい」とお年玉催促の便り。現金はやらない主義で、防犯の絵本シリーズ「ついていかないよ!」を買ってやった。クマに誘われるが「知らない人にはついていかない」と逃げて帰るお話。オオカミとヤギが懸命に友情を育むアニメ映画「あらしのよるに」も観せようと思っている▼子どもたちが身近な危険に気づいてくれれば…。そんな中、氷点下の6日未明、仙台市の病院から生後10日の赤ちゃんが男に誘Oサされた。男は「火事だ」と病室に侵入、添え寝していた母親から奪ったという。さぞ寒かろうに。一刻も早く、無事な救出を願いたい。(M)


1月6日(金)

●スポーツに「過酷」という言葉はつきもの。体を耐え、歯をくいしばっての練習にも言えるが、精神的な重圧など大会本番はまた別の意味の「過酷」が加わる。そこにし烈な戦いが生まれ、勝利のため全身全霊を傾ける姿が見る者を感動させる▼その代表例として分かりいいのが、2日間にわたって繰り広げられる東京箱根間大学駅伝。正月にはラグビー、サッカーなどのテレビ中継も多いが、箱根駅伝は別格。毎年の視聴率がそれを物語っている。今年は2日が平均27・6%、3日が29・1%で歴代3位とか▼これだけ引きつけるのは、次々とドラマが生まれるから。それも「過酷」という名のドラマである。一つの区間が20キロ余りというから、いわばハーフマラソンの駅伝だが、その長い距離に加え、母校の名誉や来年のシード権確保…。その緊張感たるや想像を超える▼快調なペースで心地良く走る選手の一方に、苦しい表情の選手がいる。勝負の世界では見慣れた現実だが、急にペースダウンし、後続に追い抜かれていく選手のつらい表情、必死に併走する選手の歯をくいばる表情、もうろうとした意識の中でも足を進めようとする姿もあった▼激しいデッドヒートの末、今年は亜細亜大学が初優勝して幕を閉じたが、出場全チームを勝者としたくなる11時間だった。そこから伝わってくるのは、あきらめない、ひたむきに挑み続ける、そんな姿勢がいかに感動を与えるかということ。箱根駅伝はこれ以上ない「過酷」ドラマというほかない。(H)


1月5日(木)

●「思いやる 心ひとつで 事故はゼロ」。全日本交通安全協会、内閣府などが選んだ2006年の運転者向け交通安全標語だが、運転者の心がけこそ事故防止の鍵という安全標語の原点ともいえる作品であり、その素朴な問いかけがむしろ新鮮▼交通事故は身近な社会問題。年間1万人以上の人が命を落とした時代が長かったが、1995年の1万679人を最後に“1万人時代”を卒業した。道路環境の改善に加え、啓発や取り締まりなど息の長い取り組みが実を結び始めているとも言える▼とはいえ昨年も6871人もが犠牲になっている。この人数はちょっとした町の人口に匹敵する数であり、さらに減らない負傷者の数を考えるなら、取り組みは「さらに」の域であり、我慢強く安全意識に訴えていくしかない。その柱の一つを担っているのが交通安全の標語▼1965(昭和40)年から設けられ、既に40年。第1号は「世界の願い 交通安全」で、「せまい日本 そんなに急いで どこへ行く」「とび出すな 車は急に止まれない」などは記憶に新しい。ちなみに2005年は「確かめよう 歩行者 スピード 車間距離」だった▼06年はこの運転者向けのほか、歩行者・自転車利用者向けに「反射材  あなたの命の 守り札」、子ども向けに「手を上げて しっかり見よう 右左」が採用された。「みんなが思いやりと注意の気持ちをもつことで事故は減る」。新しい標語が発しているのは、実に分かりやすいメッセージである。(H)


1月4日(水)

●厚生労働省は昨年末、日本の人口が2005年で自然減の見通しとなったことを明らかにした。統計を取り始めたのは1899(明治32)年と言われるが、減少は初めてのこと。わずか1万人とはいえ、政治、社会に問いかける意味は大▼「少子化」という言葉が、日常語になって久しい。出生減は30年ほど前から顕著になってきていた。対極にある「高齢化」によって自然減はくいとどまっていたが、もはや…。問題は1年とはいえ予測が狂ったことである。というのも、こうした予測は政策の根幹だから▼分かりやすい例が年金。保険料負担の増や、受給の繰り下げも将来見通しを前提に打ち出したものであり、労働人口は予測通り確保できるのか、など不安が生じかねない。それほどに人口予測は重要ということ。簡単に「1年早まりました」で済まされる話ではない▼発表が同じ時期の昨年末、国の来年度(2006)年度予算案が決まったが、その中に盛り込まれた「少子化」にかかわる予算は1兆457億円。言葉を換えて、端的に表現するなら出産を奨励する予算だが、政府にどれだけの成算があるかというと、確固たるものは…▼少子化の原因は生き方の価値観に始まり、実に多様と言われる。必要な対策を講じるのは当然として、決め手にかけるのも事実。こうした現実を直視するなら、求められるのはシビアな予測であり、その上に立って施策を見極めること。「期待感込みの予測はそろそろ卒業を」。初の自然減はそう語りかけている。(N)


1月3日(火)

●2006年が3日目の時を刻んでいる。本紙にとっては10年目の歩みとなる。創刊したのは1997年の1月1日。確かに寒い季節で、それ故の苦労もあったが、1年の始まりという区切りのいい日であり、年数などの計算もしやすい▼創刊の事前準備に費やした期間はほぼ1年。そこまでさかのぼると10周年ということになる。30万都市の函館市を中心とした地域に「地元のことを考える新聞がないのは…」という声に後押しされての立ち上げだったが、さまざまな問題に直面してたどり着いた10年とも言える▼新聞社を立ち上げるのは容易でない。昨年は滋賀県で創刊した“県紙”がわずか4カ月で休刊に追い込まれたという例もある。ただ、本紙の場合には支えてくれる読者をはじめ地域があり、一方で編集制作、営業の両面で後ろ盾となってくれる体制があった▼さらに…。創刊準備から発行が軌道に乗るまでは、ということで、核となるスタッフとして経験者を確保できたことも大きい。函館・道南以外の出身者が多かったが、これまでの間に地元出身者のウエートが高まり、今やその率は6割を超えるまでに。地元の新聞としての体制が整いつつある▼10年一昔。当事者にとっては、あっという間のことでしかないが、長い時間と言えば確かに。本紙も制作機器類を更新し、夕刊から朝刊に移行しているのだから。そして何より重みを持って伝わってくるのが紙齢。いわゆる発行号数だが、本日は3190号。あらためて10年を迎えたことを実感する。(A)


1月1日(日)

●日本を旅行したアインシュタインは、自然の美しさ、神社仏閣の荘厳さに心動かされ、離日する前に「純粋さと穏やかさ、躾(しつけ)と心の優しさなど日本人固有の価値を忘れないでほしい」という言葉を残した。観光で生きる函館への提唱でもある▼1963(昭和38)年に4000人の観光客を対象にした調査で、函館山の夜景、トラピスチヌ修道院、五稜郭公園の三大要素(同年の観光客は約95万人)が感動を与えたが、宿泊施設の評判は必ずしも良くなかった▼このため青函連絡船で観光客や修学旅行の団体が着くと、市長や旅館組合の幹部らが出迎え、もてなしたこともあった。以来、観光客は毎年20%のペースで増えたが、今年度上半期は6・9%もの減。流れは「見る」から「体験」、エコツアー型に向かっている▼函館は文化庁の「日本の歴史と文化をたずねて」の100選に組み込まれている。さしずめ今年のテーマは日本の夜明けを告げた「箱館戦争」。鷲ノ木海岸からの初冬行軍(履物にトウガラシを入れ防寒)、峠下の2昼夜の激戦、江差沖で沈没した「開陽丸」、土方歳三が切り込んだ若松界わい…▼世界遺産に登録された知床ではスケトウダラ漁のエコツアーを企画しているが、津軽海峡には“青函連絡船”のエコツアーが似合う。ツインシティの青森と一緒に考えられる話の一つ。昨年の世相漢字の「愛」を「満」にするためにも、今年はアインシュタインが83年前に予言した「優しい心」「もてなしの心」を加えて、函館の体験型観光元年の年にしたい。 (M)


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