平成18年4月


4月30日(日)

●「水俣病」が発症から50年になる。もうそんなに経ったか、という思いもするが、今に背負い続けている公害であり、大きな社会問題。患者会は国と熊本県などを相手どって損害賠償請求訴訟を起こしており、この17日にも追加提訴したところである▼改めて学習してみよう。「水俣病」は、化学工場から川や海に排出されたメチル水銀化合物を魚介類が吸収し、その魚介類を食した人の間に発生した中毒性の神経疾患。まず熊本県水俣湾を中心とする一帯で発生し、その後、新潟県阿賀野川流域でも確認されて今日に▼最初の認知が1956(昭和31)年の5月で、その翌年から「水俣病」と呼ばれるように。公害健康被害の補償等に関する法律に基づき、認定された患者は熊本、鹿児島、新潟の3県で合わせて約3000人。そのほかに未認定の患者が1万人はいると推定されている▼当然ながら原因企業や国、県の責任と補償を求める訴訟が提起され、国の責任を認めた最高裁判決が出されたのは2年前。国は村山内閣時に、未認定患者の救済に当たり遺憾の意を表明したが、患者は今なお長く、辛い裁判を強いられている。実に50年…▼国会が「悲惨な公害を繰り返さない」とする決議をしたのに続いて、小泉首相も28日、首相談話を発表した。石綿など公害問題は依然として後を絶っていないが、「水俣病」を風化させないことが一つの啓蒙対策。語り継いでいかなければならない。5月1日は「水俣病公式発見の日」。熊本県水俣市では式典が開かれる。(A)


4月29日(土)

●1カ月前、福岡城跡、小倉城、熊本城の桜を見てきた。桜は5弁の花びらが空いっぱいに広がり、ほのかな香りが風に漂い、刹那(せつな)の流れを教えてくれる。神社仏閣で見る桜ほど人を癒し、生への活力を与えてくれるものはない▼北朝鮮でも桜は咲くのだろうか。桜の接ぎ木は枝(親子)の「血管」と「血管」が、がっちりつながってこそ成長する。なのに横田めぐみさん(当時13歳)が理不尽に親から引き離されて29年。拉致の疑いがあるとして家族が調査を依頼しているケースは450人以上という▼母親の早紀江さんは米議会で世界にこう訴えた。「なぜ、助けられないのか、口惜しくて、悲しくてたまりません。数々の嘘(うそ)、偽りを言い続けながら、開き直っている北朝鮮。理不尽な国家テロの犠牲になっている世界12カ国の被害者を助けなければなりません」▼数奇な運命の人が見た嵯峨の桜。作家の瀬戸内寂聴さんは「末期の眼には、この世の自然は目が洗われるほど美しい。桜の花に魂を奪われるように、清らかに目に映った。源平咲きのしだれ桃も咲きそろって…」と、松明(たいまつ)の炎に照らされる夜桜に生命の大切さを書いている(毎日新聞)▼声紋分析でモナリザの声が復元されたという話もあるが、歌の好きな少女だっためぐみさんの声紋を分析したら、暗い船底の壁をかきむしって「お母さん、助けて、お母さん」と絶叫し続けた声に聞こえるに違いない。家族が元気なうちに救い出し、ゆっくりと桜を見せてあげたい。五稜郭公園など道南の桜も、間もなく開花の時期を迎える。(M)


4月28日(金)

●桜前線は北上を続け、函館・道南のソメイヨシノも開花まで秒読みの段階に。毎年、咲き具合が気になるが、先日の本紙によると、今年は野鳥のウソが桜のつぼみを食べる食害が少なく、最高の状態が期待されるとのことだが、喜んでいいのかどうか▼というのも、食害がないということは、野鳥の減少を意味するから。ウソは山に木の芽がない1月下旬から3月末ごろまで、山から下りて桜や梅のつぼみを食べるとされ、実際に昨年も函館公園や戸切地陣屋(北斗市)などでは、半分ほどが食べられたと言われた▼今年も覚悟しなければならない自然条件下だったが、日本さくらの会・桜守(さくらもり)の浅利政俊さんの話では、食害の形跡がなく、ウソも松前でわずか20羽ほど確認された程度という。これは異変。どこへ行ってしまったのか、と逆に気になってくる▼そうでなくても、旭川など道内ではスズメ、東京ではハトの大量死といった不可解な現象が起きている時。思わず連動して考えたりするが、日本野鳥の会函館支部長の有馬健二さんによると、ウソに限らず函館では10年ほど前から野鳥の数が減っているのだという▼その理由は? 答えは難しいが、素人でも想像つくのは自然を取り巻く環境の変化。木々ばかりか、鳥も住みづらく、生きづらくなっている、ということだろうが、今年だけの一時的な現象か否かを含めて、科学的には…。「咲き乱れる桜の裏に野鳥の異変あり」。何とも気になる話である。(H)


4月27日(木)

●政府や日銀などの経済報告は、景気の回復宣言と言っていいところまできている。ついに、というか、ようやく、というか。確かに函館・道南ではまだ実感しかねるが、これまで「回復」の文字の前にあった「緩やかに」といった表現も消えて…▼景気の回復感は、経済の活性化をうながす、いわば原動力。それが端的に表われるデータとして設備投資などが言われるが、広告宣伝費もその一つ。前年割れが続いてきたが、ここ2年ほどは回復の動き。媒体によって差はあるものの、総体的には増加の流れに▼電通が先に発表した2005年の実績からもうかがえる。総広告費は5兆9625億円で前年比1・8%増。06年も増加基調が続くという判断だが、その理由としてサッカーのワールドカップもさることながら、基本的には「景気回復の持続」が挙げられている▼参考までに主要4媒体の実態をみると、テレビが圧倒的に多く2兆411億円と全体の34%を占め、新聞、雑誌、ラジオが続く構図。そして急速に地位を固めてきたのがインターネット。主要4媒体が前年比増に苦悩する中、この1年でも55%の伸びを示している▼既にラジオを追い抜いて第4の存在だが、数年後には雑誌をも追い抜く勢い。登場した10年ほど前は年間16億円だったのが、今や2808億円。しかも毎年2けたの伸びである。インターネットは、まさに第2のテレビ。新たな媒体としてテレビが普及した時代と重なって映る。(N)


4月26日(水)

●「ただの14歳の女の子と思わないで。私がどんなに落ち込んでいるかを知っているなら屋根裏に行く気持ちを分かって」。隠れ家の屋根裏で少年といるところを父親にとがめられたアンネ・フランク。子供扱いにしないでと激しく反発した(祖母あての手紙)▼楼閣風の3階建ての屋上に“物見やぐら”を構える異様な廃屋(岐阜県中津川市)。この最上階で13歳の中2女子が交際相手の15歳の高1男子に絞殺された。ミステリースポットなのか、昼夜を問わず、若者らのたまり場になっており、2人もたびたび出入りしていたという▼今、廃屋はありがたくないブーム。なんとインターネットに全国の廃屋が紹介されている。「廃屋で出会った高校生と少女。廃屋でのひと時は下校途中の楽しみだったが、突然少女に『一緒に死のう』と迫られた…」(サイトの書き込み)。すっかり、悪事や非行化の温床になっている▼かつて廃屋は郊外にあったが、最近は市街地に目立つ。函館市の調査では、連続火災があった若松町周辺では空き家(廃屋)が15%あるという。大正、昭和初期の古い建物が多く、土地と建物の所有者が別々で、所在がつかめずに放置されたままなのも少なくない▼アンネは「あらゆる困難のおかげで大人になった。大丈夫」と父親に訴えている。中高校生になれば心も体も自立しているはずだが、こんな理解し難い事件も起こる。早急に廃屋対策を講ずるべき。「危うき場所には近づかず、近寄らず」と諭すことも肝心だ。(M)


4月25日(火)

●永田町とマスコミが注目した衆院の千葉7区補欠選挙は、激しかった選挙戦を物語るかのようなきん差で、26歳の民主候補に軍配が上がった。それは厳粛な結果だが、自民、民主ともに敗北かもしれない、そんな一面を投票率が突きつけている▼昨年の衆院選の敗北、偽メール問題で受けた逆風、そこに登場した小沢代表…。民主がこの補選に命運をかけたのは理解できるし、結果として当選させた意味は大きい。ただ、この結果をもって政権への不信任の表れとかいった論評となると、疑問符がつきまとうが▼ましてや「来年の参院選を占う」などに至っては…。鍵を握るポスト小泉も決まっていない段階であり、今後の政局だって何が起きるか定かでない。それよりも、この補選で読み取るべきは投票率。確かに、補選は低いものだが、今回は背景が違っていたのに、である▼前議員(自民)が選挙違反で辞職したのに伴う補選であり、自民、民主が党首をはじめ競うように応援部隊を送り込んだ選挙だった。テレビのワイドショーも補選としては異例なほど取り上げもしたのに、有権者の反応は鈍く、49・63%の投票率にとどまる結果に▼確かに、都市部という点を考慮すれば低いとは言い切れない、という見方もあるが、昨年9月の衆院選に比べて15・12ポイントもダウンしたことの方が数倍も重くのしかかる。何故なら、そこに政治不信が透けて見えるからで、冒頭に自民、民主ともに敗北、と表現した理由もそこにある。(N)


4月24日(月)

●エトピリカを守れ! 漁業者も立ち上がった。絶滅の危機に直面しているのだから当然、という人もいようが、漁業者にとって“操業の場”ともなれば、はい分かった、とはなかなか。その壁を破り保護に貢献する漁協が現れた。それも道内で…▼今月中旬、各紙が報じていたが、その漁協は道東の浜中漁協。カレイ刺し網漁の漁場である浜中小島周辺での漁を控えることに。鳥(野生生物)の保護を理由にした禁漁区の設定は極めてまれ、と言われるが、エトピリカの繁殖地であることを考慮して9月末まで▼エトピリカは沖合で生活するウミスズメ科の海鳥。わが国では繁殖期の4月下旬から道東沿岸のがけなどで営巣するが、近年、その生息数の急減が指摘されている。20羽から50羽程度という見方もあり、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)種に挙げられている▼生息環境の変化とともに、その理由の一つとして推察されてきたのが漁網による混獲。エトピリカが海に潜って捕食する際、網に引っかかっている可能性があるという説である。事態を重く見た環境省が、漁協に保護への理解と現実的な協力を求めていた。数年前から▼ただ、漁業者にとっては生活に直結する話であり、おいそれとは…。結論を出すまで時間がかかったが、踏み切ったのは賞賛に値する英断。知床が世界自然遺産に指定されて、道東地方に注目が集まっている時だけに、評価はなおさら。その見本を示した浜中の漁業者に道南からも拍手を送りたい。


4月23日(日)

●最近、永田町の議論の中によく登場する言葉の一つに「格差の拡大」がある。その意味するところを分かりやすく表現するなら、所得や生活レベルの差が広がっているということ。勝ち組、負け組とは違うが、課題として提起される現実があることは確か▼資本主義社会は本質的に格差を抱えるが、それは大なり小なり汗を流し、働いたという点では共通した土俵にあってのこと。それが昨今は…。ニートやフリーターといった非正社員化が増え続ける一方で、IT長者や株長者に象徴される富裕層が生まれている▼「格差」とは、あらためて説明するまでもなく、誰もが理解している。「同類のものの間における価格、資格、等級、水準などの差」ということだが、今、言われているのは、その中の「水準」の差。収入の水準、生活の水準などだが、個人ばかりか、例えば地域間にも▼最も端的に見てとれるのが景気動向。先日、新聞各紙は日銀の全国支店長会議で報告された景気動向を報じていたが、まさに「格差」がくっきりと。関東・甲信越、東海、近畿、北陸などは回復が着実から拡大のレベルにあるのに対し、北海道、東北、中国、四国などは…▼ちなみに北海道は「緩やかながらも持ち直しの動き続く」だったが、活況が伝えられる東海などとの差は大きい。その差は単なる努力の差ではなく、地理的な条件、とりまく環境などにもよる。そこを是正するのが政治だが、今、指摘されるのは、それを求める警告にほかならない。(N)


4月22日(土)

●子供たちに夢を与えてきたJR北海道の「ドラえもん海底ワールド」。一度は訪れたという人も少なくなかろうが、北海道新幹線の工事本格化に伴い、このゴールデンウイークと夏休み期間中でピリオドを打つことに。残念ながら、というほかない▼「ドラえもん」は子どもから大人まで、年齢を超えて愛されている漫画の代表格。依然として根強い人気を誇っているが、JR北海道が吉岡海底駅にワールドを開設したのは、1998年3月。青函トンネルの開業10周年を記念しての事業だった▼海底下の空間に広がるワールドは、子どもにとってはたまらない世界。「実物大のび太の部屋」「しずかちゃんの部屋」「ひみつの道具コレクション」などのほか、ドラえもんショップ、ドラえもんギャラリーなどが広がり、ラッピング列車とも連動して人気を集めてきた▼それが無くなる。一般論だが、今まであったものがなくなるとなれば、人間の心理は複雑に反応する。今のうちに、もう一度、と思うのは、その表れだが、“ドラえもん列車”も然り。JR北海道は4月29日から5月7日までの毎日1往復運行を計画したが、予約が殺到して…▼5月1日と4―7日の5日間、急きょ臨時列車(函館午前7時50分発)を増発することに。粋な計らいとも言えるが、それにしても、これだけ惹(ひ)きつけるとは、恐るべき“ドラえもん”の力である。この人気は子供たちの心に大きな施設だったことを教えている。(H)


4月21日(金)

●老若男女の手軽な足として重宝な自転車。その自転車が今、事故と不法駐輪の面から問題視されている。歩行者がいるのにスピードを速めて走る、交差点でも停まって安全確認しない、信号を無視する、よく指摘される光景だが、それは函館市内でも…▼意外と知られていないが、自転車の事故は多いのだ。警察庁によると、昨年を例にとっても全交通事故の2割が自転車絡み。その数、全国で18万3653件といい、この10年で1・3倍に。その半数以上が交差点での出合い頭だそうで、死亡者も実に849人▼ほとんどが対自動車ということで、被害者として扱われる形が多いが、加害者となる事故も毎年2万5000件以上という実態が続いている。昨年の統計でも2万7963件を数え、歩行者をはねたり、自転車同士がぶつかる事故は、むしろ増加する傾向に▼一方、都市部で社会問題になっているのが、いわゆる“駐輪公害”。歩道などに止める数が余りにも多く、東京の新宿などでは巡回して一定時間がたつと、強制撤去している。その取り組みは全国的に広がりをみせ、札幌市も駐輪場を設けた札幌駅周辺一帯を規制している▼事故、違法駐輪に共通しているのは、人に迷惑をかけない、という基本的なモラルの欠如。警察庁は本年度の交通安全対策推進プログラムで、重点的取り組みの一つに「自転車利用者による交通違反の指導取り締まりの強化」を打ち出したが、大都市だけが問われている問題ではない、函館・道南も…。(H)


4月20日(木)

●「イカゴロで海中施肥」。先日の本紙に、こんな見出しの記事が載っていた。イカゴロの処理対策かと思いきや、実は魚類をおびき寄せる作戦としての試み。実証データはなく、効果は未知数のようだが、計画を打ち出した桧山の関係者の期待は大▼漁業も長年の漁獲に加え、近年は海水温など環境の変化による貧栄養化や磯焼け現象が生じて、各地で量の減少など経営の厳しさ、難しさが言われ始めている。漁業が主産業でもある桧山沖も然り。スルメイカ、スケトウダラなどの漁獲が減少傾向をたどっている▼その対策を考える中で着目したのが、イカの内臓であるイカゴロだった。新鮮なものは生食にしたり、塩辛に使われるが、ほとんどは捨てられ、処理が課題になっている。海中施肥と言い方も、海中に不足している栄養素を補うという視点に立っての発想だから▼もちろん、イカゴロの“におい”が魚を誘引する効果を期待してのこと。2年前から検討し始め、国や道に理解を求めた経緯がある。心配されたのは海中汚染だが、イカゴロを目の細かい袋に入れ浮遊を抑えるほか、水質調査を継続していく考えを示し、道が開けることに▼施肥の予定場所は上ノ国町汐吹500メートルから1000メートル沖の水深約30メートル辺り。魚の通り道に沿って沈めていく計画で、早ければ6月以降にも踏み切るという。その結果、海中環境に問題がなく誘引効果が確認できれば、まさに言うことなし。今後2年をかけて行われる実証結果が注目される。(N)


4月19日(水)

●「がんばらんば でんでらりゅう〜」。新1年生になった孫が口ずさんでいた。長崎出身のさだまさしさんが作ったNHKみんなのうた「がんばらんば」だ。「がんばらなくちゃ」の長崎弁。アニメの地蔵さんがユーモラスに踊りまくっている▼超軽快なヒップホップ調で、子供には全編長崎弁の歌詞は意味が分からないところもあるが、励ましつつ、肩をたたくような優しさがあって、母親が子供に歌ってあげたい曲の一つだ。2カ月間、拒食症に陥っている孫には「ご飯をいっぱい食べなさい」と言っているのかもしれない▼上の子2人を押しのけてまで何でも食べていたのに。幼稚園の給食で「他の子に迷惑をかけるでしょう。早く食べなさい」と叱(しか)られたようだ。幼稚園に通った2年間、ずっと食べるのが他の園児に比べ遅かったという。叱られてから、幼稚園でも家でも拒食するようになった▼子供のことだ一晩もすれば忘れていると思ったが、食べ物を勧めても何もしゃべらず、口にするのはアーモンドなどが入らない純粋なチョコと牛乳類だけ。体重が急激に減ってしまった。栄養失調になってしまう。よほど精神的にショックを受けたに違いない▼最近は小学生にも拒食症が目立つという。心の問題を取り除くことが第一だというが、脳貧血を起こして5階から転落死した男児もいる。政府は食育推進基本計画法で毎月19日を「食育の日」と定めたが、拒食症を含めて「がんばらんば」と励ますカウンセラー体制の充実も求められている。(M)


4月18日(火)

●地震、火山の噴火…自然災害はいつ何時起きて、身に降りかかってくるか分からない。だから怖いし、日ごろの備えが必要と言われるのもそれ故。確かに観測など予知は進歩しているが、対処に時間的余裕を与えてくれるレベルはまだまだの域▼函館市は広報4月号で、防災対策に関する市民アンケート調査の結果を公表した。市民815人の回答をまとめたものだが、その中からあらためて提起されたのがほかならぬ意識の問題。緊急食料の用意にしても、56%が必要と答えながら、実際にしているのは25%だけ▼避難勧告などを電子メールで携帯電話に自動配信するシステムも、認知度はわずか1割の9%。さらに、基本的なこととして自分の避難場所だが、73%が知っているとしたものの旧函館市民で市が2002年に配布した避難所マップの所持率は22%。5軒に1軒でしかない▼驚くのは32%が紛失した、27%がマップ自体知らないと答えていること。恐らくチラシなどと同じ運命をたどったと推測される。それもさることながら、気になったのが全戸配したことになっているはずのマップを「受け取っていない」という答えが5%もあったこと▼不測の災害が起きた時、起こす行動は情報をキャッチすることであり、避難することだが、それに加えて非常食があるか、家族の打ち合わせができているかも大事な要素。函館市でそれが徹底されているかとなると…。少なくともこの調査結果からは市側、市民側とも合格点はもらえない。(A)


4月17日(月)

●北見・網走地域と十勝地域を結んできた鉄路・ふるさと銀河線(全長140キロ)が、20日で90年余の幕を閉じる。沿線の理解、必死の経営努力も、収支という現実を突きつけられると…。必要論もはじき飛ばされての廃線で、残念というしかない▼この鉄路が期待を担って歴史を刻み始めたのは1911(明治44)年。網走線としてスタートだった。それから50年を経た1961(昭和36)年には池北線になり、国鉄民営化に伴い新たな選択が迫られた際、沿線自治体は第三セクターによる運行継続を選んで今日に▼当時、道内の地方線は、士幌線(帯広―糠平)、広尾線(帯広―広尾)、深名線(深川―名寄)、美幸線(美深―枝幸)など次々と廃止の道を余儀なくされた。その中で、ちほく高原鉄道(本社北見)を設立して、1989(平成元)年、ふるさと銀河線として再出発した▼しかし、経営安定資金は目減りを続け、さらに沿線人口が減少して利用客数の落ち込みが続くに及んでは…。しかも、今の市町村に毎年の赤字を補完するだけの財政体力はない。となれば、バスへの転換も致し方ないとなるが、割り切れない思いが込み上げるのも事実▼言うまでもなく鉄路は公的な社会基盤だから。民営化によって幹線は便利になったことは認めるが、その一方で、地方路線はこうして見捨てられていく。20日には「さよならふるさと銀河線号」が一往復し、終わりを告げる。寂しさ、むなしさ…。ほかに置き換える言葉はない。(A)


4月16日(日)

●函館と時を同じくして6月、旭川にも韓国との航空路線が誕生する。函館と競争関係になるが、初の国際定期路線ということもあって、旭川では迎える動きが活発。4月に入って民間レベルの組織として「オソオセヨ! アシアナ! 勝手に応援団」も発足した▼観光業者をはじめ住民有志が受け入れや相談などの協力体制をとる、いわば民間主導の支援組織。ビジネスチャンスにつなげたいとする思いの表れと受け止められるが、さらに驚くのは広域観光の視点から注目し、帯広でも立ち上げたこと▼ここ1、2年こそ、旭山動物園人気に沸くものの、観光となると条件的には…。帯広・道東も厳しい環境下に置かれたままであり、韓国との路線開設に託す期待は大きい。自主的な支援活動をうながした背景もそこにあり、旭川と帯広が地域を越えて二人三脚で臨むということに▼活動計画によると、観光情報の提供などのほか、周遊観光の提案(旭川から十勝を経由した阿寒、知床を回り、北見方面を経由して戻るなど)も。逆に地域に対してはハングル講座の開設などを考えている。スポンサーや会員の募集を行っており、本格活動は間もなく▼新たな航空路線の開設のありがたさを感じているか否か、黙っていても一定の観光客が来てくれる所か否か、そこに意識なり、行動の差をうかがうことができるが、旭川に比べて函館は…。函館には、そこまでしなくても大丈夫、という自信があるのかもしれないが、少なくとも、こうした取り組みの話は耳に届いてはいない。(N)


4月15日(土)

●陸上競技の華といえば、まず頭に浮かぶのがマラソン。オリンピックなどでも幕開けとか、最終日とか、注目される日に位置づけられることが多いが、それも華であることの証し。わが国は言わずと知れた有数のマラソン国であり、一目置かれる存在▼それを裏づけるように、世界に名の残る選手を輩出してきている。知られるようにマラソンは男子の競技として始まったのだが、今や女子がお株を奪うほど。大会数も男子とほぼ互角で、活躍度でもむしろ女子。知名度のある選手も女子に多く、実際に選手層も厚い▼シドニー五輪では高橋尚子、アテネ五輪では野口みずきが金メダルに輝いて、いっそう人気を高めたが、3月半ばの名古屋国際ではベテランの弘山晴美が悲願の初優勝を飾ったなど話題も多い。走る距離は男子と同じく42・195キロだが、記録的にもレベルは上がって…▼2時間30分を切ったのがニュースになって、そう時間はたっていないのに、今や世界のトップクラスともなると2時間10分台。その女子のフルマラソンがわが国で初めて開かれたのは1978(昭和53)年のことで、東京の多摩湖畔で開催された大会とされている▼出場した選手は49人だったというが、当時としては多い人数だったに違いない。それから28年、着実に競技実績を積み重ねて今日に。これからどんな選手が出てくるか楽しみだが、その切磋琢磨(せっさたくま)する姿は北京五輪へと夢を膨らませてくれる。実はその初の大会が開かれた日が4月16日と伝えられている。(H)


4月14日(金)

●観光やまちづくりを考える時、欠かしてならない視点に「景観」がある。というのも、市街地は市街地で、郊外は郊外で、さらに農漁村は農漁村で、そこに描き出される姿は地域にとってかけがえのない財産だから。だが、その逆もあり得て…▼現実の動きとして近年、この「景観」が話題になることが多い。最近でも幾つか。その一つが金沢市の「周辺環境に調和した道路標識金沢特区」。道路標識の大きさは全国一律だが、景観を良くするため標識の縮小化が認められた初めてのケースとして注目されている▼これは道路に絡む「景観」だが、実際に車を運転していて、美しい光景が広がっていると気持ちが和むし、印象にも残る。まばゆい海岸線、すっきりとした山並み…。身近な所では七飯町の通称・赤松街道が分かりいいが、賞賛されるのは素晴らしいと映るから▼「景観」を大事に考えている世界的な事例の一つにドイツのロマンチック街道などの例がある。訪れると実感するが、人を魅きつけているのは風景と道路。わが国にも、それを“売り”にできる所は少なくない。あらためて着目し、NPO(民間非営利団体)の認証を得た自治体も出てきた▼農村風景や環境を観光資源にしようと考える「日本で最も美しい村」連合。全国7町村のうち道内から上川管内美瑛町、後志管内赤井川村が参加している。「景観」は軽視できない、国交省なども取り組みに力を入れ始めたが、そこに重要なのは地域の意識。「景観はハード面のホスピタリティー」という言葉がすべてを物語っている。(H)


4月13日(木)

●二十数年ぶりに旧青函連絡船「大雪丸」に会ってきた。「長崎さるく博」という散策で。「さるく」は「街をぶらぶら歩く」という長崎弁で、街全体をパビリオンに見立てて異国情緒を体験してもらう企画。坂道が多くて函館と似ている▼出島を見て、南山手界わいを中心にしたコース。垂直エレベーターでグラバー園に上り、石畳の祈念坂を通って日本最古のゴシック様式の大浦天主堂や、どんどん坂のマリア園へ。函館でいえば元町界わいか。グラバー邸の丘から港に係留されている「大雪丸」が見えた▼22年間、津軽海峡を走った懐かしい船体。よく旅客名簿に住所、氏名、年齢、性別を書き込んで乗船した。長崎港に係留されて約10年間、ホテル・ビクトリアとして修学旅行生や観光客ら約18万人が泊まったが、海底にたまった土砂の影響で「波で客室が揺れる」などの苦情が出て、昨年末で廃業▼そう決まってから、大雪丸の最後の船長、北山榮雄さんが函館から度々駆けつけてガイド役を務め、大雪丸の存続を呼びかけた。幸い、再びホテルとして使いたいとする企業があると聞いて安どしたが、国内に残る旧青函連絡船は4隻▼八甲田丸は青森港で、羊蹄丸は東京台場の船の科学館のパビリオンとして、摩周丸は函館港でメモリアルシップとして青函航路の盛衰を伝えている(十和田丸はフィリピンでホテルに)。それにしても「長崎さるく博」のように、街を歩いて、人とふれあってこそ、比類なき文化と遺産を満喫できる、あらためてそう教えてくれる旅だった。(M)


4月12日(水)

●どの世界にも「偉大な人」はいるが、プロ野球・阪神の金本知憲選手もその一人。連続試合フルイニング出場904試合(4月9日)の記録は、偉大な記録の名に値する。新聞、テレビが大々的に報じたのもそれ故だが、まさしくプロ選手の鏡…▼1999年7月21日から6年余にわたる前例のない、無遅刻、無早退の皆勤賞。それも競争の激しいプロの世界である。誰でも希望すれば出場させてもらえるわけでない。賞賛して余りあるのは、それなりの技術と力を維持し続けて初めて成せる記録だから▼しかも人間は生身であり、誰しも体調が良い時ばかりでない。けがもする。金本選手にせよ同じで、実際に死球を受けて手首を骨折したこともある。しかし、休まなかった。出場させた監督もさることながら、次の試合では片手でヒットを打ったのだから驚く▼鉄人の異名を持つ衣笠祥雄さん(広島)の連続出場2215試合という記録もすごいが、全イニング出場には、さらなる意味がある。9回まで出尽くし、守備機会もあれば、打席にも立つのだから、体、精神の負担たるや…。少なくても狙ってできる記録ではない▼「好き(な仕事)だから…」。確かにそうかもしれないが、金本選手から教えられるのは自らに対する責任感であり、努力の大切さ。突き詰めると、今の時代に欠けているとされる意識の問題である。この記録の最大の価値はまさしくそこに。あらためて「生きた教科書」を贈られた思いがする。(H)


4月11日(火)

●日常の中で使う単位として、長さに「メートル」「センチ」、重さには「グラム」を使うことに少しの疑問もない。メートル法が定着していることの証しでもあるが、その一方で、広さを表す「坪」などに代表される旧単位も影を潜めていない▼尺(しゃく)、寸(すん)、間(けん)…。わが国では古来の単位である尺貫法を使っていた時代が長かった。例えば1尺は30・3センチ、1寸はその10分の1、1間は6尺で1メートル82センチだが、これでは国際的には通用しない。メートル法が採用されて既に90年余が過ぎている▼記録によると、改正度量衡法が公布され、法律によりメートル法を使用することが定められたのは、1921(大正10)年のこと。ただし、経過的措置として他の単位の使用も認められ、それが続くこと30年余。最終的に併用期間が切れたのは1958(昭和33)年だった▼象徴的な単位である「メートル」にしても、今や日常語のようなもので、そのいわれなどには無関心。1メートルの定義も理解している人となると、ごく一部…。厳密には数字がたくさん並ぶが、分かりやすく表現すると、光が真空中を約3億分の1秒進む距離、なのだそう▼ちなみに生まれたのはフランスで、18世紀末。英語では「メーター」で、漢字表記は「米」。こうなると雑学の世界だが、われわれが知っている知識なんて微々たるもの。メートル法公布記念日があることだって。実はきょう4月11日がその日であることも、あまり知られていない。


4月9日(日)

●森林は“癒やし効果”を持つと言われる。それを健康づくりに生かす取り組みを進める組織が北海道にも誕生した。「北の森林(もり)と健康ネットワーク」で、3月末の発足時会員は賛助を含め130団体・個人。渡島管内からも1人が参加している▼森林浴という言葉が登場して25年ほど。森が織り成す風景や香り、鳥などの音色、フレッシュな空気…。「森林には気分の落ち込みや疲労などを軽減させ、心も体もリラックスさせる効果がある」とされ、リフレッシュ効果の視点から推奨されてきた経緯がある▼必ずしも解明されていないが、さらに踏み込んで最近は医学的な見地から“森林療法”が注目されるように。それを物語る言葉が「森林セラピー」だが、全国的に、しかも急速に関心を高めている。山梨県で森林セラピー推進指針を策定した動きなどは一つの事例▼渡島支庁が昨年度、新規に整備を打ち出した「大千軒の森・ブナの里」も含め、森林に恵まれている北海道で目が向けられて当然。2年前に全国的な研究会が誕生したのを受け、一昨年秋に準備会を立ち上げて検討を続けた結果、立ち上がったのが「北の…ネットワーク」▼既に幾つかの療法を生み出しているドイツなどに比べ、わが国は遅れているが、大事なのは着実に輪を広げていくこと。「森林セラピー」は産業面、治水面などから叫ばれることが多かった森林の活用についての新たな提案であり、まさしく今の時代が必要としている取り組み。道南での広がりを期待したい。(H)


4月8日(土)

●わが国が抱える借金(国債、借入金、政府短期証券等)は2005年末段階で、実に813兆1830億円。驚くのはまだ早い。これはあくまで国の話で、地方自治体が抱える地方の債務は204兆円と言われ、合わせてざっと1000兆円強▼あまりにもけたが大き過ぎて、庶民には天文学的数字にしか映らず、逆に現実感を伴って伝わってこない。国にせよ、自治体にせよ、漠然とながら財政が“瀕死の姿”にあることは誰もが知るところだが、まさかここまできているとは、というのが率直な感想に違いない▼毎年、税収で足りない部分を国債の発行で埋める手法で辻褄(つじつま)を合わせてきたのだから、いわば分かった上で招いた事態。なのに懲りることなく、新たな借金が年ごとに積み上げられるばかりで、2006年度で見込む国債発行額は約30兆円。終わった05年度をみても…▼歳入に占める税収の割合は5割程度に過ぎず、国債など公債の発行ウエートは約4割の水準。その一方で、膨らんだ公債の返済、利払いは増え続ける一途で、既に歳出の2割以上を占めている。どうしなければならないか、答えは簡単、歳入を上げ歳出を抑えること▼既に迎えた少子高齢化の時代、社会保障関係費の大幅な増加は避けられない。その上に、時代のつけである公債の返済がさらに重くのしかかられては…。だから今のうちに、と言われるのだが、構造改革、行財政改革という名の策は進まないまま。永田町も、霞が関もすっかり借金慣れしてしまっている。(N)


4月7日(金)

●かつて一村一品という地域おこし運動があったが、地域に新しい産物が誕生するのは無条件にうれしいもの。それも特産品のレベルまでいけば言うことはない。函館・道南は比較的多く持つ地域だが、厚沢部町で思いが高まっているのが芋焼酎…▼サツマイモと言えば鹿児島など九州の産物で、一般的なイメージとして北海道に適さないという認識を持たれている作物。しかし、厚沢部町で栽培される「黄金千貫(こがねせんがん)」の評価は本場でも高く、札幌酒精工業との間で具体化したのが焼酎づくり▼ただ、種芋からの苗づくりやビニールハウスの温度管理に始まって、その栽培はけっして楽でない。今年は約20万本を育てる計画といい、順調ならば6月ごろに畑に定植し、10月前後に収穫期を迎える。その出来が鍵を握るが、既に昨年、本格栽培を経験した実績がある▼「ぜひとも特産品に育ってほしい」。そんな願いを込めて本紙も動きがある都度、報じている。3月中旬には苗づくりが始まったこと、下旬には同社の工場建設が着工したことなどだが、今年の秋には「原料生産地も、製造地も厚沢部」という形の本格焼酎が誕生する▼そのブランド名は、喜び多きふる里は北海道にあり、からとった「喜多里(きたさと)」。この喜多里シリーズには、ほかに昆布、ジャガイモ(メークイン)焼酎があるが、地域にとってサツマイモへの期待はとりわけ大。厚沢部から「北国産の芋焼酎」を発信する、地域と酒造メーカーの取り組む意義は、そこにある。(A)


4月6日(木)

●公立はこだて未来大学と函館工業高等専門学校が、単位の互換協定を結んだ。本年度から未来大の3、4年生と高専の専攻科学生が決められた科目なら履修できる内容で、学生にとっては朗報。函館の8高等教育機関で初めての取り組みとしても注目される▼ほとんどの場合、学生が学ぶ場は選んだ大学なり機関だけ。他の大学などの講義も受講したいという思いを抱く学生も少なくないが、その道はなかなか。学生時代にもぐり込んだ経験を持つが、あくまで単位に関係なく単発的に聞いたというにすぎなかった▼でも、楽しかった。それが本格的に履修できるとあれば…。全国的に高等教育機関間の連携が増えているが、函館も然り。昨年秋に合同公開講座を開いたが、情報系、工業系と関連ある分野とはいえ、単位互換へ踏み込んだ未来大と高専の試みは、まさに新たな一歩▼協定には「授業科目の履修・単位の取得を認める」「それぞれ特別聴講生とし、入学金、授業料は徴収しない」などが盛り込まれており、学生に学ぶ機会、環境を広げる内容。各講座10人程度を募るというから、かなり本格的な体制でのスタートと受け止めることができる▼大学(高専)側にも学生にも戸惑いがあるかもしれないが、恐らくそれも当初だけ。軌道に乗れば刺激されて、これをモデルとして新たな単位互換のケースが生まれてくることも期待される。その先に見えてくるのは、函館が掲げる“大学センター”の姿。未来大と高専が最初の扉を開けようとしている。(H)


4月5日(水)

●今年9月まで東京・霞が関の本省庁舎内の照明を原則的に午後8時以降消すほか、日曜日は原則的に登庁を禁止する。これは環境省の独自環境対策だが、率先する姿を見せようとしたのか、単なるパフォーマンスなのか、そしてなぜ9月までなのか▼取り組みの思いが十分に伝わってこない。環境対策が世界的に問われているのは、誰もが分かっていることで、民間レベルでも徐々に意識が浸透している。所管する環境省もクールビズ、ウォームビズを提唱し、それなりの成果を上げたが、何か実践しなければ…▼ということで、二酸化炭素の排出量を減らすため冷暖房の節減見本として、庁舎の暖房温度を下げる取り組みをしたが、考えた次なる策が照明の節減ということらしい。それ自体はいいことであり、疑問を呈する話でないが、いま一つ素直になれない。というのも…▼なぜ環境省だけなのか、その疑問がつきまとうから。霞が関では夜遅くまで各省庁の明かりが煌々(こうこう)としているが、環境省はむしろ小所帯の役所であり、しかも合同庁舎。国民に真剣な姿を見せる、というなら、ほかの省庁を抱き込まなければインパクトに欠ける▼確かに仕事の中身が違うから一概には、という理屈も分かる。だが、考え方の足並みだけでもそろえて然るべき。どんな取り組みにも言えるが、難しいのは点から面へどう広げるか、ということ。そうした考えで、とりあえず点を記すというなら理解もするのだが…。残念ながら、そう映ってはこない。(N)


4月4日(火)

●一番左は眠っている表情の根子岳、次いで胸部を表す高岳、腹部を表す中岳、杵島岳や烏帽子岳の脚足と続く。中岳から上る噴煙の姿はヘソで甘茶を沸かしているよう。大分県との県境にある瀬の本高原から見た阿蘇五岳の展望は「寝シャカ」といわれている▼阿蘇山は世界有数のカルデラ火山。平成に入ってからも8回噴火し、土砂噴出や多量の降灰で農作物などに被害を出している。先月下旬、3度目の登山で火山活動が最も活発な中岳のエメラルド色の火口を見ることができた。この日は火口の表面温度が高く、土砂噴出も発生していた▼山頂まで行けても有毒ガスが発生すると立入禁止になる。喘息(ぜんそく)や気管支疾患、心臓障害など健康に影響する。臥牛子が登った日は30分もしないうちに、風向きが変わって有毒ガスが流れ込み下山勧告が出た(前日は晴天でも入山禁止)。コンクリートの避難所に逃げたが、異様な臭気が胸をついた▼雲仙普賢岳の麓(ふもと)では、土石流で埋まった集落がまだ痛々しかった。雌阿寒岳も7年ぶりに小噴火、山頂部の赤沼火口に噴煙が充満。6年前の有珠山噴火では1万6000人が避難した。これを教訓に国道と並行して避難道路が造られた。駒ケ岳も安心していられない▼今回の阿蘇登山で大規模災害時には速やかな避難が大事だと痛感した。函館の避難所は大地震で倒壊するような所もあり、市は身近な校区単位で避難所(51小中校を想定)を設定するなど見直しを検討している。神仏の宿る山々は観光客らを癒してくれるものの、自然の怒りには十分備えなければならない。(M)  


4月3日(月)

●「犯罪被害に遭う不安を感じている人は約7割おり、感じる被害として6割以上が空き巣狙いを挙げている」「地域で起きている犯罪の発生認識は高いが、かと言って防犯活動に参加している、参加したことがあるという人は2割にも満たない」▼これは道が昨年12月に行った道民意識調査(犯罪のない安全で安心な地域づくり)の結果から浮かび上がる姿。不安を感じる犯罪としては、このほか「悪質商法」や「振り込め詐欺」と「車上狙い」が高く、自宅や駐車場、近くの道路など不安を感じる場所で多いのは身近▼確かに「近く」がキーワードの犯罪が後を絶たない。それだけ被害者の経験を持つ家庭が多いということの裏返しでもあるが、ここ数年、対策として全国的に力を入れられているのが地域の自主防犯パトロール。函館市内でも大川、白鳥町会などで取り組まれている▼核家族化、地域内疎遠という今の時代、こうした地域の地道な活動が鍵を握ると言われる。以前に聞いたことがある。地域を犯罪被害から守るために最も大事で、有効なのは“地域の目”だ、という話を。その認識は着実に広まっているが、課題はその担い手の少なさ▼全国的な悩みとされ、この調査結果にもはっきりと表われている。防犯灯の整備などは必要だし、もちろん情報の提供も欠かせないが、地域活動なくして相乗効果は生まれない。「安全・安心は一人ひとりの参加から」。この調査結果は、そんなスローガンを浮かび上がらせている。(H)


4月2日(日)

●3月26日に投票の横浜市長選挙は、近年ではまれな翌日開票だった。夜中にかかる即日開票が一般的となった中で、あえて翌日を選択した理由が気になったが、答えは簡単、経費の節減という。そこまできている財政事情を垣間見た思いがする▼選挙結果は有権者にとって一刻も早く知りたい情報である。横浜の判断もその理解の上に立ったものだが、同時にそれは多額な経費をかけてでも即日であるべきか、という一つの問題提起。何とも難しい判断の問いかけだが、注目した自治体は少なくないはず▼わが国では町村は即日、市は翌日という開票形態が長かった。そのため国政選挙ともなると、即日分の開票を終えても大勢は容易に判明しない。新聞の競争も即日票だけで何人「当確」を決められるかで、翌日朝刊の紙面づくりに苦労した、そんな思いが頭から離れない▼その後…。政治不信に端を発した投票率の低下を食い止める対策として、投票時間が午後8時まで延長されたが、計算機器の普及もあって、早く知りたい要望に応える形で即日開票に。当然ながら深夜にかかる開票経費を伴うが、今の時代、それがばかにならない額、と▼横浜市が発したのは、そんなメッセージ。即日か翌日かで深夜勤務手当や交通費などで実に3200万円が違うというのでは、分からなくもない。公職選挙法第65条も翌日開票を非としてはいない。痛し痒しで、行政サイドも苦慮するところだが、有権者としてどう判断するか、最後の鍵はそこにある。(H)


4月1日(土)

●きょうから4月―。新しい年度が始まった。新入生、新入社員など人生の新たな出発を迎える人も多いが、行政や多くの企業にとっては会計年度の始まりであり、同時に法律や制度などが変わる時でもある。今年も生活にかかわることを含め幾つか▼まず頭に浮かんでくるのは負担だが、なお課題を残している国民年金の保険料が月額280円アップするし、医療面では診療報酬の一部が改定され、介護保険分野では認定区分が7段階になり、要支援など介護予防サービスにより重点が置かれる仕組みが動き始める▼雇用に目を移すと、まず挙げられるのが高齢者雇用安定法の改正。いわゆる定年問題で、65歳未満としている企業は定年制の廃止か定年年齢の引き上げを課せられる。さらに内部告発者に解雇など不利益処分がないよう規制する公益通報者保護法の施行も注目される▼もう一つ忘れてならないのが電気用品安全法の、いわゆる“PSE問題”。経産省は面子をとって、あとは玉虫色に譲歩する形としたが、ともかく法的には施行される。その一方で、携帯電話などに地上デジタル放送を流す「ワンセグ」が東京など29都府県で始まる▼毎年度のことながら明るい話、厳しい話が混在した新年度入りだが、12カ月の中で、4月ほど夢や希望、期待といった表現が似合う月はないのも確か。誰もが願うのは、そうした思いが実を結ぶ年度であってほしいということ。せめて、景気が回復した、と実感できるだけでも…。(H)


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