平成18年7月

 


7月31日(月)

●警察に届けられる遺失物、拾得物に減る気配がないが、高額な現金も意外と多い。そう知ったのは北海道警察のホームページに記載されていた情報からだが、今年4月以降3カ月間で現金10万円以上の拾得物が全道で33件もあったとのこと▼この中に函館・道南の7件も含まれ、5月1日には37万円の札入れが拾われている。ということで、気になるのが道内での遺失物、拾得物の数。想像もつかないだろうが、昨年1年間に警察が受理した遺失届は約13万6600件、拾得届が約11万9800件という▼このうち遺失者に返還されたのは約3分の1の約4万7000件、持ち主が現れず拾得者に引き渡されたのは2万1000件で、残りの帰属は道に。現金のほか、毎年、珍しい拾得物があるが、依然として多いのは自転車であり、増える傾向なのがペットなど▼自転車は昨年1年間に全道で1万6000台が拾得されている。こうした動向は函館中央署管内も一緒。同署は遺失で全道2番目、拾得で3番目に扱いの多い署だが、昨年も遺失が6863件(うち現金総額約8200万円、物品約2万400点)、拾得が6548件という▼拾得された自転車は約1200台(返還は約300台)を数え、犬猫などのペットの届け出も139件。人間誰しも考えごとをしたり、ちょっとした不注意で落とし、忘れることがあるものだが、それにしても多い。ちなみに1日平均(昨年の場合)の遺失届数は…。全道で374件、同署管内では19件になる。 (H)


7月30日(日)

●共働き世帯の増加、子どもを取り巻く事件の多発などを背景に“学童保育”の需要が、全国的に増している。函館も然りで、先日の本紙によると、本年度は1000人を超えたという。この増加傾向は、将来的に今の体制で十分か、を問いかけている▼“学童保育”とは、両親が仕事を持っていたりして放課後、家に大人がいない概ね10歳未満の小学生を預かる施設。学童クラブ、児童クラブなど地域によって呼び方はいろいろだが、その歴史は1940年代後半というから、戦後間もなくに始まったとされる▼東京や大阪を中心に広がり、全国的に設置が進んだのは30年ほど前からで、国が腰を上げ、法律(児童福祉法)で位置づけられたのは1998年のこと。放課後児童健全育成事業と堅苦しい表現はともかく、特に民営ではその後も運営面などに悩みを抱えたまま▼確かに「学童保育は民営が担っている」と言って過言でない実態がある。函館市内もそうで、公営4に対し、民営は25。施設も増えてはいるが、一方の入所児童も…。5年前の714人が、昨年度は861人、そして本年度は1034人。1施設平均36人になる▼こうした函館市内の動きからも明らかなのは、少子化による児童数の減少に反比例して“学童保育”の需要は増えている、という姿。子どもの安全という視点からも“学童保育”が担う役割は大、ということに異論はない。今後、どう維持させていくか、行政はあらためて課題を突きつけられている。(N)


7月29日(土)

●不祥事を隠したがる。民間もそうだが、それにも増して役所という世界に共通した意識。先日の千葉市教育委員会の嘘(うそ)の発表にはあきれるが、個人情報保護法の施行後、この法律を都合よく利用し、裁量権でもあるがごとく“隠す傾向”が一段と顕著に▼参考までに千葉市教委だが…。女性宅に侵入し下着を盗んで懲戒免職にした教員名を、被害者の希望という虚偽の理由をつけて公表しなかった、という事例。疑問がつきまとう対応だが、結局は嘘で固めた2度の会見の末、全面的に非を認め公表したのだからお粗末▼嘘はともかく、最近は不祥事を起こした公務員の名を明らかにしないケースが増えている。公表の判断は自分たちの裁量権と勘違いしているとさえ思えるが、役所が最もご都合主義と揶揄(やゆ)されるのもそれ故。そこに忘れているのが社会性の認識である▼公務員だからと言って、なんでもかんでも明らかにすべき、と主張するものではない。誰もが納得できる理由を示してのことなら理解もされる。だが、現実は必ずしもそうでないから身内に甘いという印象を抱かせ、批判を招くことになる▼不祥事はどの世界でも起こりうる。その時に大事なのは事後の対応。もちろん民間にも言えることだが、対応のまずさで傷口を広げた事例の多いことが物語っている。今、問題になっているパロマはすべてに論外だが、そのパロマ工業にせよ、千葉市教委にせよ、改めて「隠さず」「嘘をつかず」が事後対応の原点であることを教えている。(N)


7月28日(金)

●北海道を代表する農作物の一つにジャガイモ(馬鈴薯)がある。知られるように「メークイン」は厚沢部町、「男爵」は七飯町と、ともに発祥の地は道南。身近な作物でもある、そのジャガイモが北海道に伝来し、は種されて今年が300年なのだそう▼ジャガイモは北海道の気候に適した畑作物として推奨された。特に輪作体系の維持に欠かせない作物として十勝などで栽培規模が拡大し、近年は全道で5万5000ヘクタール程度が作付けされている。もちろん生産量は全国一だが、それも長年の積み重ねがあってのこと▼道のホームページは、北海道農業発達史(高橋正男氏の「馬鈴薯ニ関スル調査」)を参考紹介している。「宝永三年五月松兵衛ト云フ者今ノ瀬棚村漁場内ニ始メテ畑ヲ開キ…馬鈴薯ヲ播種セシコト記録ニ明カナルヲ以テ既ニ宝永年間ニハ本道ニ於テ馬鈴薯ノ栽培ヲ偽セシ事確ナリ…」▼ほんの一部の抜粋だが、宝永三年は西暦で1706年であり、確かに300年前。ということで、道は急きょ、北海道伝来(栽培)300年の年を記念し、愛食や地域おこし運動を提唱することに。ロゴシールの配布のほか、リーフレットの作成を急いでいる▼世界一のメークインコロッケを作る「あっさぶふるさと夏祭り」(29日)も、関連事業と位置づけられている。ジャガイモは、家庭菜園や学校農園などでも栽培される手軽な作物の一つであり、北海道を代表する観光食材。その始まりの地が道南で、しかも300年前とは…。これまでにも増して身近な存在に思えてくる。(H)


7月27日(木)

●函館競馬場のスタンドの全面改築が決まった。日本中央競馬会の発表によると、2年後の2008年秋に着工し、ほぼ1年半をかけて完成を目指す計画。設計はこれからだが、「リゾート地の開放感あふれる競馬場」が一つのコンセプトという▼函館競馬場の歴史は、1896(明治29)年にさかのぼる。1周約1000メートルのコースでの開場だった。それから100年余。戦時中は高射砲陣地ともなったが、戦後は全国で10カ所、札幌とともに馬産地・北海道の中央競馬場と位置づけられて今日に…▼芝(1周1627メートル・直線262メートル)とダート(1476メートル)のコースがあり、開催日は毎年6月後半から8月前半までの土・日曜。今年も間もなく終えて札幌に移るが、しのぎやすさを求める競走馬の夏対策に加え、2歳馬(新馬)のデビュー地という役割を担っている▼現在のスタンドが建設されたのは1970(昭和45)年。馬場の向こうに函館山や海が望めるなど、その景観が函館らしさを生み出している。悩みは老朽化したことだが、なかなか改築計画が具体化しないために気をもむ向きもあったが、これで将来展望もはっきりと▼夏の函館開催が観光面にも寄与していることは明らか。道内、道外を問わず訪れるファンが少なくないことからもうかがえるが、さらに競馬場のグレードが上がるとなれば…。ともかく総工費150億円を投じる改築であり、どういう雰囲気に生まれ変わるか…。取りざたされているレトロ調も悪くない。(N)


7月26日(水)

●江差の東別院にいた高校生のころ、予習を終えた深夜、本堂に近い部屋で眠りにつく時、ペタッ、ペタッ、ペタッと暗い廊下にスリッパの音。翌朝、聞いたところ、その時間帯に誰も通っていなかった。幽霊だったのか。後日、親類から不幸の知らせが…▼それ以来、幽霊の存在について話し合い、葬式があるたびに夜の墓地に出かけて肝試し。幽霊との遭遇はなかったが、青白い人魂(ひとだま)は見えた。幽霊にも善い幽霊と悪い幽霊がいるという。深夜、車の前にスーッと立って、ブレーキをかけさせ、運転手の命を守るのは善い幽霊か▼その善し悪しは別に、幽霊、心霊、亡霊は特定の人にしか見えない不思議な現象。そう、見えないと言えば隣国にも…。他国の若者を拉致したり、食糧をくれないからと離散家族との再会を中止したり、無分別にミサイルを発射しながら。分が悪くなればなるほど公式の場に出てこない▼道南では松前城の耳塚(耳を切り落とされ殺害された人たちの怪奇現象)などがあるが、インターネットには、全国の心霊スポットが書き込まれている。その数、実に多数。留置所で眠る畠山鈴香容疑者には、2人の児童の幽霊がつきまとっているに違いない▼「1枚〜2枚〜」。どよどよ風の吹く東京・四谷のお岩稲荷。働き者で信仰心のあつい、実在した女性を怨霊劇に仕立てた「四谷怪談」が初演されたのが1825(文政8)年の7月26日。誰が決めたか、その日が「幽霊の日」ということは、あまり知られていない。(M)


7月25日(火)

●北海道にいると、地方自治体の財政はどこも厳しい、という思いを抱くが、全国的には必ずしもそうでないようで。実際に地方交付税を受け取らずに行政運営ができている自治体があり、その数、本年度は171自治体というから、ほぼ1割…▼地方の税収は人口や企業の立地などによって自治体間で開きが出てくる。地方交付税はそれを踏まえ、全国どこでも標準的な行政運営ができるように、という趣旨。いわば自治体間の財政力の調整役とも言えるが、現実の姿として北海道などでは紛れもない歳入の柱▼昨年度の場合で、交付額は道や県、市町村合わせて約1兆8800億円。北海道では後志管内泊村が依存せずに財政運営ができる不交付団体だが、景気の回復などを背景に、不交付自治体が全国的に増えているとのこと。いい傾向だが、それは限られた一部地域の自治体…▼ある意味、景気の良し悪しを推し量るバロメーターとも言えるが、その色分けは不交付団体地図からもはっきりと。先日報じた毎日新聞によると、本年度新たに不交付団体になった裕福な自治体は、全国で35あるそうだが、その多くが首都圏や中京地域に集中している▼まさに地域格差。北海道の自治体にとっては現実離れした話にしか映らないが、さらに辛いのは、国が地方交付税に厳しく臨んできていること。何らかの対策は講じられるにせよ、未だ不透明。その先行きに不安を抱く北海道などからすると、首都圏や中京地域と一緒に考えられてはかなわない。(N)


7月24日(月)

●函館市中央図書館の入館者が開館から8カ月足らずで50万人を超えたという。足を運んだ人は1日平均で実に2670人。物珍しさと様子見で訪れたという人もあろうが、言葉を換えると、それだけ期待の大きかった施設という言い方もできる▼旧図書館は函館公園にあった。静かな環境の中にたたずむ歴史的な建物は存在感があったが、蔵書の開架もままならない手狭さ、進む建物の老朽化に加え、街の発展によって利便性も劣るようになっては…。利用者数は低迷し、年間15万人ほどでしかなかった▼新しい図書館を望む声が出て当然。論議の末に五稜郭公園を間近に望む場所(旧渡島支庁跡)が選ばれ、市民の願いが結実し、期待を担って開館したのが昨年11月27日。街の中心部に位置する所であり、広く、明るく、柔らかい雰囲気が漂う図書館として生まれ変わった▼もちろん開架している本の数は、旧図書館と比べものにならないほど。最近は検索が簡単になったとはいえ、利用者にとって開架している本の数は大事な要件の一つ。現在、中央図書館では21万冊を開架しているとのことだが、すべてに充実したことは言うまでもない▼確かに、この入館者数を初年度は“新館効果”と見る向きもある。ただ、市民が欲していたことも間違いない事実。利用者カードの登録者が5万4000人ほどまで増え、貸し出し冊数も100万冊を超える勢いという事実が物語っている。図書館を身近にさせた、それこそ“新館効果”にほかならない。(H)


7月23日(日)

●何時間か、という定義こそないが、睡眠が健全な体、精神の維持に大事なことは、誰もが知っている。だが、寝つけない、途中で目が覚める、など睡眠に充てる時間はあるのに「よく眠れない」と、いわゆる不眠に悩む人たちが増えているという▼「体の眠り」と「脳の眠り」の2つの眠りが周期で繰り返されるのが睡眠だそうだが、学術的な解説はともかく、体であろうと、脳であろうと、要は休息。だから、大事なのだが、十分にとれなければ…。1日、2日ならまだしも、長期になると放っておけなくなる▼その不眠にも、寝つけない入眠障害をはじめ、ぐっすり寝た気がしない熟眠障害、夜中に何度も目が覚める中途覚醒(せい)、そして早朝覚醒と症状は4つ。ある調査によると、成人では入眠障害が8%、夜間覚醒が15%など、何らかの不眠症状を持つ率は約20%と推定されている▼それが近年は10歳代にも広がり、中高校生の不眠率は大人を上回るという統計も。最も新しいのが厚生労働省の調査として日大医学部医師の調査結果だが、報じた毎日新聞によると、中高校生の入眠障害は14・8%を数え、不眠と判断される割合は23・5%…▼調査時に近い1カ月の睡眠状況や生活習慣などの質問から浮かび上がった実態という。その背景としては不規則になりがちな生活時間であり、精神的な悩みや食事のあり方が挙げられている。何と4人に1人。専門家の目にも多いと映る姿だが、それはストレス時代を象徴的に物語る姿とも言える。(N)


7月22日(土)

●「古来、丑(うし)の日には『う』のつく物を食べる風習があった」。スーパーのチラシはウナギ一色。1センチ足らずの稚魚がどうして3000キロの大海原を渡れるのだろう。迷うことなく父や母の川に戻る生命力はすごい。グアム島近くの南の海が故郷だという▼永遠に謎と思われていた産卵場所が確認された。水深約3000メートルの海底から海面近くまでそびえるスルガ海山で、親はこの海山をめざして集まってくるそう。ここで生まれた稚魚(シラス)が黒潮に乗って日本列島に回遊するが、最近は台風や熱帯低気圧のせいか不漁気味▼かば焼きを考え出した日本人のウナギ消費量は、世界の7割を占めている。大伴家持が暑気当たりした石麻呂を見かねて「鰻は夏やせに効くから、獲って食べたらどうだ」と勧めた万葉集の歌が有名だ。中国では薬膳(やくぜん)料理にも使われている。平賀源内の宣伝コピーで庶民にも広まった▼頭の方と尾の方、どっちがおいしいか…。まずは食べてスタミナを付けることだ。ウナギに限らず、ハモ、アナゴ、ドジョウなど、にょろにょろ魚の「頭の方」にはカルシウムやコラーゲンが多い。江戸時代の鰻屋は、滋養強壮のエレクチンを求める若いカップルのたまり場だった▼出荷するまでには半年から1年半の養殖期間が必要と言われる。1年以上前のシラスの不漁が影響して高値が続いているが、次々と焼き上げる職人技を見ていると、一層のウナギ効果が伝わってくる。先ほど、湯の川温泉で食べたウナギ入りの茶わん蒸しが格別だった。あす23日は「土用の丑」―。 (M)


7月21日(金)

●減っているとはいえ、半年で約100万件―。何の話かと言うと、今年上半期に全国で発生した刑法犯罪の発生件数(警察庁まとめ)。そんなに多いのか、と驚く人もいようが、これでも昨年に比べ10・2%減少し、7年ぶりに100万件を切ったのだ、と▼厳密には99万7355件。全国のどこかで毎日5541件もの事件が起きているという計算になるが、その4分の3ほど(74万5581件)は泥棒などの窃盗犯。ほかに殺人や強盗、放火といった凶悪犯が4965件、詐欺などの知能犯が4万1992件…▼その凶悪犯も12・6%減っているが、そこに影を落としているのは子どもたち(13歳未満)が被害者となる事件。この半年の間で45件も起きている。改めて地域の防犯活動に委ねられるところだが、その一方で総体的な減少に防犯活動の広がりが果たしている役割は大きい▼特に泥棒(浸入盗)や街頭での粗暴犯の抑止には…。そして今、全国的に子どもを守るための活動も活発化している。それは函館でも。自主防犯組織の設立に加え、青色回転灯装備車の登録も急速に増えて、今や100台を超える車が地域を巡回している▼「犯罪の抑止に最も効果的なのは人の目である」。昔からよく言われてきたことだが、地域でのつながりが希薄になった現代に、より必要なのはその目であり、地域の取り組みが期待される。ちなみに北海道内での発生も5月末現在、2万3600件と、昨年に比べ9・9%減少している。(N)


7月20日(木)

●「環境意識の醸成は小学生の時から」。その実践的な取り組みとして道が本年度、実施を打ち出したのが環境教育の「Kid’s ISO 14000プログラム」。募集に名乗りを挙げた松前町の大島小など全道で17校が、この夏休みから具体的な活動を始める▼地球の温暖化現象に象徴されるが、環境対策は今や世界的な課題。工業分野や車の排ガスをはじめさまざまな要因が指摘されるが、ゴミの問題など身近にも環境意識が求められることは多々。もちろん、大人の意識改革は必要だが、将来的に鍵を握るのは子どもたち▼この教育プログラムは国際芸術技術協力機構が開発したもので、環境意識を目覚めさせ、解決策を考える能力を身につけてもらうのが狙い。子どもたちが作ったワークブックをインストラクターが目を通し、評価書を子どもたちに示して意識の向上を促すシステム▼「自分たちの行動で環境が良くなるという確信が得られ、生きる力となります」。同機構は取り組みの意義をこう説明しているが、国内では埼玉県川口市での全校で実施(3カ年計画)する動きなどが。さらに米国や韓国などに広がりつつあるのも注目されていることの証し▼費用もかかるが、企業の支援が芽生えつつあるといい、北海道でも北海道ガスや北洋銀行などが協力を申し出ている。道が掲げる初年度の実施目標は児童1000人。まだ余裕があることから引き続き募集している。生きた教育であり、継続した取り組みとして今後の広がりが期待される。(N)


7月19日(水)

●大相撲名古屋場所は終盤の優勝争いを迎えている。白鵬の横綱取りが絡み、盛り上がりが期待される中、それに水を差すような事件が起きた。7日目の幕内力士による暴行は歴史に残る汚点。深刻に受け止めて当然なのに相撲協会は必ずしも…▼端を発したのは千代大海―露鵬戦。両者のにらみ合いは勝負がついた後、さらにエスカレート。観客、テレビ視聴者の前でのあきれる様だったが、控えに戻った後の露鵬の行動は事件。風呂場のガラスを割り、カメラマンにけがを負わせたのだから釈明の余地はない▼今の土俵に“礼儀”を感じる人がどれだけいるかは別にして、相撲協会は否定できない立場。だから理事長以下、さぞかし懺悔(ざんげ)の思いかと推測したが、そうでなかった。最初の不問に付す考えが批判されるや、一転して露鵬に3日間の出場停止処分を科すことに▼理事長や担当役職者が減給などの処分もあって当然の事態である。力士はプロであり、少なくても場所中は公の存在だから。百歩譲ってカメラマンが近づき過ぎたとしても、その行為が正当化されるものではない。ところが、相撲協会という世界は違っていた▼力士が加害者扱いされ、その後の協会の対応が批判されたことに、ことさら不満の様子。17日の理事長会見からもうかがえるが、トップの認識がこれでは…。観客の減少など相撲人気の翳り(かげり)が言われて久しい。その中で起きた事件だが、相撲協会の姿勢をみる限り危機感は伝わってこない。(H)


7月18日(火)

●骨髄バンクのドナー登録者が25万人を超えたという。わが国で本格的に骨髄移植の研究が始まって30年余り、登録を呼びかける推進協議会などが全国各地に誕生し始めて15年ほどと言われるが、着実に理解の輪を広げていることをうかがわせるに十分▼骨髄移植は白血病や再生不良性貧血、先天性免疫不全症など血液難病患者に有効な、今では一般化した治療法。移植実績は1994年2月に200例だったのが、3年後には1000例、8年後には5000例、そして現在は6000例を超えるまでに▼とはいえ、骨髄移植の難しいところは、患者と(骨髄の)提供者の白血球の型が一致しなければならないこと。その確率が極めて低いため、多くの人に理解を求め、登録者を増やす取り組みが鍵を握るとされ、役割を担ったのが骨髄バンク推進協議会などのボランティア組織▼函館にもあるが、全国各地に立ち上がって骨髄バンク事業が公的に始まったのは1992年。函館では年間100人程度の登録があるそうだが、25万人まで築き上げたのは、各地のこうした努力の積み重ねの結果…▼ただ、これで満足というわけにはいかない。移植を望んでいる患者がなお多いのが現実で、移植を待っている患者を救うには30万人の登録者が必要という説があるから。急ぎあと5万人。手の届く範囲まできているとして、骨髄移植推進財団はあらためて理解と登録を呼びかけている。(H)


7月17日(月)

●「ドミニカ移民訴訟」は、国との間で和解が成立する見通しとなった。国の説明を信じて移住したものの、過酷な日々を強いられた人たちにとって、和解内容が十分かどうかという疑念は残るが、時間のかかる裁判が歩み寄らせたことは確か▼この損害賠償請求訴訟が起こされたのは、6年前の2000(平成12)年7月18日。第一次として125人が提訴したのに続き、翌年7月に第二次、8月に第三次…。原告約170人が求めたのは、ずさんな調査をもとに移住を勧めた国の責任であり、補償だった▼「日本政府は1956(昭和31)年から1959(昭和34)年にかけて『カリブ海の楽園』での大農場経営、と銘打ちドミニカ移住を推進した。しかし、その『楽園』は『生き地獄』でした。実際に(あてがわれた)大部分が塩の砂漠やジャングル、石ころの山でした」▼心情を綴った文書の抜粋だが、国はなかなか責任を認めようとしなかった。判決(東京地裁)が下されたのは今年6月7日。国の責任を明確に認めながらも訴えが遅すぎたとして請求は棄却されたが、裁判所の判断は重かった。政府は対応せざるを得ず、和解の動きは急速に▼それから1カ月余り。提訴した人たち(原告)も「首相が謝罪する」「全移住者に最高200万円の支払う」を骨子とする国の和解案を受け入れた。賠償金でなく見舞金という表現になっているのが気になるが、それにしても…。もっと早く解決できたはずで、国の責任はその点でも重い。(N)


7月16日(日)

●江差姥神大神宮祭に供奉する愛宕町の山車は、お腹に子供を宿したまま朝鮮半島に出兵した神功皇后(卑弥呼ともいわれる)の人形を飾っている。お腹に石を当てて、さらしを巻き、冷やすことによって出産を遅らせたと言われ、安産の守護神とされる▼左腕に赤子を抱き、右手に女性ホルモンが含まれているザクロを持つ鬼子母は、多くの子供を持ちながら他人の子供を食い殺していた。そこで釈p・ェ鬼子母の末子を隠したため、初めて子を失った母の悲しさを実感し帰依。安産、子育て、子供を守る鬼子母神として信仰を集めている▼隣家の小1男児殺害の容疑で逮捕された秋田県の畠山鈴香容疑者が、また供述を覆した。水死した長女彩香ちゃん(当時小4)について「一緒に川を見に行った際、橋の欄干から落ちた。気が動転して助けは求めなかった」と。「1人で自宅を出て戻らなかった」と言っていたのに▼サクラマスが見たいという彩香ちゃんを抱き上げ欄干に上らせて、川を見せていたが、足を滑らせて転落したという。欄干から川面まで約5b。誤って転落したとしても、助けを求め、流れるわが子を追いかけるのが母親の本能のはずだが、捜索願を出し、再捜査を依頼している。なぜ…▼子供を産み育てることは大変なこと。戦場に駆けつけた神功皇后は、さらしを巻いてお腹の子供を守った。鈴香容疑者の母性本能はどこへ消えたのか。「長女の死は事故ではない」と訴えていたが、果たしてその真相は…。男児や長女の悲痛な声が聞こえてくる。(M)


7月15日(土)

●「商売に求められるのは新しい発想」とも言われるが、函館バスが夏休みに向けて出したアイデアは、社会的な意味合いもあって注目に値する。先日の本紙でも報じていたが、小中学生を対象に夏休み中利用の路線バス乗り放題定期券を発売するという話▼車社会の現代は各家庭に車があり、家族で出かける際は多くが車。一人で、となると自転車だが、そう遠くには行けない。ましてや通学は徒歩で、バスを利用する機会はあまりなく、乗り方すら知らない小中学生が結構いるという話もあながち大げさでない▼これがバスの乗降客減少の一つの理由とも言われるが、函館バスが打ち出したこの定期券「バス冒険キング」は社会貢献であると同時に、将来的な利用誘因策。「子どもの時からバスに親しんでほしい」という願いと、地域に出かけてほしいという思いが込められている▼市内の社会教育施設や観光施設などの情報を盛り込んだ「研究手帳」を作製し、料金を格安にしたのも、その願いと思い故。何と小学3―6年生が1000円で、中学生が2000円という。休み中の自由研究のためでも、単なるお出かけでもいろいろな使い方が…▼実際に子どもだけの行動範囲も広がる。「(これを利用して)多くの施設を訪れ、有意義な夏休みを過ごしてもらう一助になれば」。函館バスは本紙の取材にこう答えている。きょうはどこそこへ、次はちょっと遠出しようとか、子どもの自立心を養い、自主性を促す効果も期待される。(H)


7月14日(金)

●カラマツ材が甦(よみがえ)っている。乾燥技術の進歩などによって、かつての持て余され気味だった時代がうそのように、今や住宅建築材として。道によると、道産カラマツ住宅の建築戸数は年々増え、この4年間だけで1000軒を超えたという▼落葉松とも呼ばれるカラマツは、北海道や東北などの寒冷地帯に合った樹種として、戦後の植林で多用された。その結果、道内ではトドマツに次いで面積が多く、全体の約30%を占めているが、この十数年、伐採期を迎え、その用途が大きな懸案として提起されてきた▼というのも、未成熟材に多いのだが、カラマツは水分が抜ける時に曲がる、ねじれるといった特有の欠点があるから。その克服が課題だったが、試験研究機関や業界の取り組みが実を結んで…。乾燥技術が確立され、集成材加工施設の整備が進んだことで事情は一変▼7年ほど前から住宅の柱、梁(はり)用の集成材生産量が増え始めた。さらに住宅建築などへの利用促進対策を打ち出した道の後押しもあって、年間の構造用集成材の出荷量は2001年に4000立方メートルを超した後、ここ3年は年間9000立方メートル前後という▼この出荷量の増加はカラマツを使った住宅建築戸数にも表われ、2002年以降、年間118棟、212棟、348棟、370棟と増え、この4年間で1048棟。道産カラマツ材の利用は、地産地消の林業版であり、北海道にとっては明るい話。道がホームページで紹介しているのも頷(うなず)ける。(H)  


7月13日(木)

●祖先の霊の迎え火、送り火、お祭りの山車、花火…。全国的に8月が「火の季節」と言われるが、函館の場合は7月が「火の季節」だ。函館八幡宮の例大祭とぶつかるのを避けて、お盆を迎えるためだが、親せきなどに贈るお中元の真っ最中でもある▼危険なことに「火の季節」は北朝鮮のミサイル発射から始まった。日本海にスカッドやノドン、テポドンなど7発を撃ち込み、とりわけ日本やロシア沿岸の漁船に衝撃を与えた。核弾頭を積んでいたら…ぞっとする。こんな「危険な贈答品」はまっぴらだ▼物騒な「言葉の贈答品」もあった。サッカーW杯決勝戦でフランスのジダン選手がイタリアの選手に強烈な頭突きをしてレッドカード。行為に至ったいきさつは未だ定かではないが、差別的な暴言が発端でなかったかと言われている▼お盆で帰ってきた亡き人たちは、さぞかし怒っているに違いない。「ミサイルを発射するお金があったら、飢えで苦しんでいる自国民を救え」「晴れの国際舞台で人を傷つけるような暴言は吐くな」と。中国では1月の上元、7月の中元、10月の下元(いずれも15日)といい、天・地・水の神様をまつっていた▼中元は「慈悲神様」といって、庶民に楽を与える慈、苦を除く悲の心だ。これが盂蘭盆会(お盆)と結びつき、仏前に供えた供物を贈ったのが「お中元」の始まり。最近は「高級ペットフード詰め合わせ」出るなど、時代は変わった。でも、変わっていけないのは感謝の気持ちである。(M)


7月12日(水)

●「従業員の『心の健康』を保つための体制を」。官公庁や大企業では対応が進んでいるが、中小企業などは容易なことでなく、ほとんど手つかずのままなのが現状。カウンセラーなどを抱えられない、かと言って、外部に委託するにしても、経費面で…▼現代は子どもから大人まで“総ストレス社会”とさえ言われ、その実態は各種の調査結果が浮き彫りにしている。その中で、近年、特に問題視されているのが職場でのストレス。「人間関係で疲れる」「ノルマがきつい」「仕事内容が合わない」などが理由と言われる▼こうした悩みが昔はなかったわけではない。ただ、育った社会環境も違えば、職場環境も一緒ではない。確かに労働条件などは格段に改善されてきたが、厳しい企業間競争やコンピューターの登場、能力主義の台頭などが逆にストレスを増幅させる状況を生み出している▼「仕事で不安や悩み、ストレスを感じている」と答えた人が6割、という調査データもあるが、一方の事業所側の対応は、というと、中小企業などでは現実的に難しい。そこで厚生労働省はカウンセラー配置に対する補助の対象を、外部委託にまで広げたという▼事業所が「信頼の職場づくり」に努め、従業員の心や体の健康に目配りできればいいのだが、それも空論。対応し切れないでいる故に問題が提起されているのだから。悩みを抱える人がここまで多いとなると、紛れもない社会問題であり、公的な対応がなじむ話。あらためて相談所(窓口)の充実や新設が望まれる。(N)


7月11日(火)

●“まちづくり”に対する考え方は世代によって異なる。同世代でも一致するわけでないから、世代が違えば、さらに差があって不思議でない。だから“まちづくり”は難しいのだが、それは函館市が行った市民調査(広報7月号に掲載)からも明らかに▼来年度スタートの新総合計画策定の参考にするため、回答を20歳以上(大人)、学生、高校生と分けて集計した結果だが、例えば「住み良さ」でもその差はくっきりと。明確に「良い」と答えた率は、大人で39・2%だったのに対し、高校生は25・5%、学生は15・7%▼他都市で育った人の割合が高い学生については、多少、割り引いて受け止める必要があるが、さらに注目されるのが将来の“まちづくり”に向けた考え方の違い。「函館市の将来の望ましい姿」の設問に対する答えが端的に物語っているが、世代でかなりの差が表われている▼大人が挙げた上位は「福祉や医療が行き届いたまち」「高齢者や障がい者を大切にするまち」「防災や消防、救急体制などが整った安全なまち」。そこからは生活関連重視の“まちづくり”を望んでいることがうかがえるが、学生、高校生がイメージしたのは…▼「観光でにぎわうまち」「自然環境などに配慮したまち」「歴史や文化遺産を大切にするまち」。将来への危機意識が垣間見えるが、そこに描かれたのは、より外に開かれ、活性化したまちの姿。この違いは違いとして、生活重視も、活性化を求める考えも“まちづくり”に必要な視点であることは言うまでもない。(H)


7月9日(日)

●中高年齢者の登山人気が言われる中で、問題になってきているのが事故の増加傾向。昨年も全国で1年間に1382件(遭難者1684人)の山岳遭難が発生しているが、死亡・行方不明者の実に81・5%が40歳以上というから、対策が求められる状況▼人数にして1372人で、さらに細かくみると60歳―64歳が279人、55歳―59歳が244人。健康ブームや日本百名山などを背景に裾野を広げている登山愛好者。その中には40歳、50歳を過ぎて始めた人たちが多いとされ、遭難事故の心配は増加と比例して▼旭岳、羊蹄山、羅臼岳など魅力あふれる山の多い北海道も、まさしく同じ傾向。北海道山岳連盟のデータをみても、1996年以降、この10年は年間30件未満で推移していたのが、一昨年は40件、昨年は37件とほぼ40件レベルとなり、中高年齢者が増える動き▼遭難事故は冬山に多いと思われがちだが、実は違って、むしろ夏に。雪が残る道内は特にそうで、要注意時期は7、8月。道警の統計によると、この10年間に道内で発生した事故298件のうち、約半数の144件(死亡24人)をこの2カ月間で占めている▼登山は自然と触れ合える素晴らしいスポーツ。だからこそ事故は起きてほしくない。そのために必要なのは基本的な留意事項の厳守。遭難の原因をみても、道迷い、転落などとともに疲労・病気が少なくない。「楽しみが悲しみに変わらないように」。よく言われることだが、夏山を甘くみてはならない。(H)


7月8日(土)

●函館市が函館港の「緑の島」に建設を計画している「海の生態科学館(水族館)」を巡る議論が、大詰めを迎えている。開会中の市議会でも改めて議論の場を提案する動きがあったが、その一方、市民の声を直接聞く場ともなる説明会が10日から始まる▼「緑の島」をどう活用するか、海にかかわりを持つ都市として水族館は必要…。この二つのファクターが合致する形で最終的に構想されたのが、この「海の生態科学館」計画。計画案でも「水族館を求める市民要望が長年にわたって強くあり…」を理由に挙げている▼社会教育や観光などの観点に立って考えると、あるに越したことはない。財政や運営(経営)見通しを抜きに、というのなら、ほとんどの人が賛成するはずだが、そうはならない。財政の厳しさが現実の中で、多額の予算を伴うから。ちなみに計画案によると…▼総事業費として試算されているのは41億2500万円。合併特例債(70%は地方交付税で措置)約35億円、市の一般財源約4億円などで手当てし、実質的な市の負担は14億7400万円という。その一方、入場者数は15年間の年平均で約26万人を見込んでいる▼「教育施設の観点から多少の赤字が出ても…」「先々に負担を強いることになるのではないか」。今の時代が故に、賛否の最大の論点も突き詰めれば収支展望に行き当たる。それだけに判断は難しいが、市が市民に資料を配布し、説明会を開くのもそれ故。直接聞いて、声を届けるまたとない機会。説明会への多くの市民の参加が期待される。(N)


7月7日(金)

●「生きものの いのちをとらば 生きものはかなしかるらん 生きものをかなしがらすな 生きもののいのちをとるな」―室生犀星の「動物詩集」の序詩だ。ハチやウジにいたるまで68種の身近な生きものが登場する。動物の命を大切にする詩集に感激した▼今思えば残酷かも知れないが、臥牛子の子供のころ、ヘビを殺して食べたり、フナを釣って食べたり、トンボのしっぽをちょん切ったり…。生きものの死を間近に見て「命の学習」をしたものだが、今は、どうだろうか。「人生をリセットしたくなった」の言葉が胸を刺す▼奈良県の医師宅の殺人放火事件で逮捕された高1男子の供述。パソコンのボタンを押す感覚で3人の命を奪ったのだろうか。「うじでも 生きてゐるんだ のびたりちぢんだり あっちを見 こっちを見…」。室生犀星のように動物を観察していれば、リセットしたり、キレたりする発想など浮かんでこないはずなのに…▼本紙も報じたが、函館亀尾小が先ほどの「河川学習」で「昆虫やごみ、見つけた物が、なぜ、この場所にあるのか考えてみよう」と、虫取り網などで河川を探索して昆虫などの命の実感を勉強。また、江差では「キュウ」と鳴き声を上げる活イカを刺し身にし、動物から命をいただいていることを学んだという▼放流した幼虫がやがて光を放つ。「光っている間は元気におしゃべりをつづけているのだろう…生きている間がみじかい それだけにあわれな生きもの…ほたるよ」(動物詩集)。子供たちにもっと生きとし生きるものへの愛情を身につけさせなければ。昨今、起きている少年の凶悪犯罪は、そう“警告”している。(M)


7月6日(木)

●昨今、地域の物知り度を認定する“ご当地検定”“シティガイド検定”が大はやりだが、函館もいよいよ実施の段階に。名づけて「函館歴史文化観光検定」(通称・はこだて検定)。その第1回として来年3月11日に初級試験が計画されている▼長年、住んでいるからと言って地域の歴史や文化、観光資源などに精通しているとは限らない。確かに漠然とした知識は頭に入っていても、正しくは、となると…。特にホスピタリティーが求められている観光都市としては、物知りを一人でも増やす取り組みは不可欠▼その先駆けは東京商工会議所などが始めた「東京シティガイド検定」。2003年の11月だった。その後、急速に広がって、最も受験者が多いことで知られる「京都・観光文化検定」のほか、全国的には福岡、岡山、長崎、鹿児島、奈良などで実施されている▼道内にも札幌の「札幌シティガイド検定」「北海道フードマイスター検定」があり、札幌シティガイドは既に6回の試験を終了済み。それに続く函館の検定は市と商工会議所、国際観光コンベンション協会が実施を打ち出したもので、最終的な詰めを急いでいるところ▼1年半ほど前、本欄は京都の人気を例に「函館でも(検定は)検討に値する」と提起したが、それは「もてなしの心に加え、知識面からも観光客の満足度を高めたい」という思いから。紛れもない地域振興策の一つであり、地域を知る機会として、多くの市民が挑戦する光景が期待される。(H)


7月5日(水)

●負債が膨らんで財政再建団体となるのに、職員のボーナスは増額とは…。夕張市の姿勢が批判を浴びている。擁護する向きがないのは、大方の理解を超える話だからで当然といえば当然。少なくとも市民感情をくみ取る意識が決定的に欠けている▼先日の本欄は、主要産業だった炭鉱が閉山し、将来を観光に託した選択は必ずしも責められない、と書いたが、会計のやり繰りなど、その後の対応はずさんな実態は別問題。632億円にまで負債を重ねた行政、議会の責任はあまりに重く、言い訳は通らない▼なのに、職員や議員の夏のボーナスは健全時のまま。財政再建団体の申請方針を固める前に職員組合と決まっていた、ということだが、支給は方針決定後である。「市民に負担を強いるのだから幾らかでも返上しよう」。そのぐらいの意識がほしかったし、配慮の時間はあったはず▼これでは「今後減らされるのだから、今のうちにもらっておこうということか」となりかねない。財政再建はまず議員、職員の意識改革から、と言われるが、給与の削減を飲むこともその一つ。民間では経営が行き詰まるや、ただちに給料やボーナスのカットである▼この夕張市の姿勢は、あまりに甘い。総務省の事務次官が「危機意識を持って対応してほしい」と苦言を口にしたのは当たり前。市民に理解と協力を求めなければならないのに、飛び込んできたのが気持ちを逆なでするような話では…。行政、議会が財政再建の出鼻をくじいたと言われても仕方ない。(N)


7月4日(火)

●発生件数、死亡、傷者ともに減少―。今年上半期に道内で発生した人身交通事故の統計だが、何とも明るい話。期待を込めてだが、大幅な減少を実現させた昨年(死者302人)より減って、年間200人台も現実味を帯びた話として、伝わってくる▼北海道は長年、都道府県別で交通事故死者数ワーストの汚名を背負い続けてきた。この10年ほどをみても、1995年の632人など、2001年までは500人台。官民挙げての地道な努力がようやく実ったのが昨年で、今年は正念場▼満足してはいけないが、上半期の統計を見る限り「減少は本物」と感じさせるに足る状況。道警によると、今年1月から6月までの、いわゆる上半期の死者は103人で、昨年より19人少なく、傷者も1万6566人と783人減少した▼全国的にも死者数は減って、昨年に比べて198人減の2907人。政府が目標に掲げる年間5000人台も見えてくるが、ちなみに都道府県別の死者数は、愛知154人、千葉138人、埼玉133人、福岡127人…。北海道は、というと、ワースト10には入っていない▼しかし、油断は禁物。毎年ながら、長距離を走る車が増える夏は要注意時期。7月に入り、道内では1、2日の2日間で6人が死亡している。人身交通事故が月平均で2000件を超す数で発生し、2700人ほどがけがをしているのは動かせない現実。「思いやる 心ひとつで 事故はゼロ」。今年の交通安全標語(運転者向け)は、こう呼びかけている。(A)


7月3日(月)

●新入社員の働く意識は、時代背景と無縁でなく、社会環境にも左右される。かつて「仕事中心が当たり前」という時代もあったが、逆に「生活を大切に」という考えの台頭を経て、近年は「仕事と生活を両立させたい」という思いが一般的な時代とも言われる▼その意識は、社会経済生産性本部と日本経済青年協議会の「働くことの意識」調査からもくっきりと。6月下旬に今年の結果が公表されたが、このほかに目についた動きが二つあった。一つは女性の職業意識の高まりで、もう一つは就職活動の情報源が変わってきたこと▼前者では…。例えば「デートの約束があった時に残業を命じられたら…」に対する回答。この十数年「仕事を優先」の率が高まってきているが、今年は80%に。意外とも映る高率だが、さらなる注目は、女性の方にその意識が高いことで、男性の77%に対し女性は85%▼そのけん引役を果たしたのが、男女雇用機会均等法や育児休業法などの法的な条件整備だが、女性の職業意識は国の「働く女性白書」などからも明らか。全国的なデータだが、50%余りが現在の仕事にやりがいを感じ、社内では男性と対等という認識も非事務系では50%弱という▼そして後者…。就職活動で利用する情報源のトップにインターネット(企業ホームページ)が躍り出たことである。会社説明会を超えるのは時間の問題と言われるようになって数年、早くもその時代の到来である。そして、もう一つ気になる変化が就職先を選ぶ基準。そこにも時代背景が垣間見えるが、かつて上位だった「将来性」「一流」「経営者の魅力」が率を下げている。(N)


7月2日(日)

●道が観光ホスピタリティ運動のキャッチコピーとイメージキャラクターを募集している。北海道観光の課題とされている“心のこもったおもてなし”を考える一つの機会。どれだけ寄せられるか、道民意識を占う視点からも、その応募数が注目される▼観光ホスピタリティについては、今さら説明の必要はあるまい。自分が観光客という立場になって考えると分かりいいが、端的に言うと「(訪れた人に)また来てみたいという思いを抱いて帰ってもらう」こと。ただ、北海道はまだまだの域、という評価であり、函館・道南も然り▼「道民気質として『おおらか』と言われることが、一方で『シャイ』『無頓着』とも見られるため、迎える心が伝わりづらいと考えられる」。道のホームページには、こんな記述もあるが、「このままでは…」という危機感が、意識改革を促す運動を提起して今日に▼スタートは1985(昭和60)年というから20年前にさかのぼるが、今なお、自然は一流、サービスは…といった指摘が聞かれる。道がここ数年、プロジェクト会議を設けるなど、あらためて取り組みを強化したのも、観光関係者ばかりか道民一人ひとりの意識が鍵を握ることだから▼そのために必要なのは啓もう運動だが、今の時代、キャッチコピーやイメージキャラクターは欠かせない要件。ちなみに募集のコピーは…。「私たちが伝えたいものは心」「あなたのホスピタリティが旅人の思い出をつくります」。締め切りは今月31日。9月下旬には審査結果が発表される。(H)


7月1日(土)

●函館のタウン誌「街」が6月、季刊として復刊した。月間だった時代と同じ体裁で、コンセプトもしっかりと引き継がれており、復刊というより継続の感。関係者の尽力には頭が下がる思いだが、市民の一人として、うれしさと懐かしさが交錯してくる▼改めて説明するまでもなかろう、「街」は編集発行人だった作家、木下順一氏が「函館に文化の灯を」という思いを具現化した正統派タウン誌。地元の文学界に多大な貢献をしたばかりか、「函館に『街』あり」と他都市から注目される存在だったが、昨年の2月で…▼木下氏が病のため終刊のやむなきに。510号だった。10月に他界された後、その意思の継承を、と立ち上がったのが西野鷹志さん(函館山ロープウェイ社長)らと長年の編集スタッフ。協力者の輪も広がり、その熱い思いは「2006夏 511号」として結実した▼なじみのA5判で48ページ。100回を超した西野さんの連載「ライカは行く」も継続され、復刊記念の座談会「人が好き、函館(ひと)が好き」のほか、15人からのメッセージ、4人のエッセーなども。少し寂しいのは、硬派で説得力のあった木下氏の論説がないことだけ…▼函館に限らず地方都市で結構、タウン誌を目にする。ただ、その多くは商業ベースの情報を伝えるもので、「街」とは同類でない。それだけ函館にとっては大事な存在であり、もっと言うなら、函館に残すべき文学的都市財産。次号を楽しみに、あらためて復刊に参画した人たちに拍手を送りたい。(A)


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