平成18年8月


8月31日(木)

●「二百十日」という言葉を聞いたことがあるだろう。特に農業関係者にとっては、大きな意味を持つ言葉であり、日(時期)でもある。立春から数えて210日目のこと。現在の暦では、あす9月1日(立春が2月4日の場合)がその日に当たる▼この時期は多くの地域で稲の穂が膨らむ大事な時であり、南などの早い地域は収穫期。その一方で手塩にかけて育てた実りを奪いかねない台風の来襲が多い時期でもある。「三大厄日」という言葉もあって、八朔(はっさく=旧暦8月1日)、二百二十日とともに二百十日も…▼ここ数年、道南でも収穫目前のリンゴの落下などの被害があったが、この時期の気象環境は昔も今も同じ。「二百十日前後の気象が最終的にその年の豊凶を左右する」。今から30年ほど前、記者として農業を担当することになった際、こんな話を先輩記者から教わった▼気象観測機器や技術が向上し、予測が可能になったことで、確かに昔ほどの被害は避けられるようになった。しかし、要注意時期であることは何ら変わっていない。今年の道南も生育の遅れを取り戻しつつあるところ。あとの鍵は台風が握ると言っても過言でない▼台風は紛れもない気象災害。そう、9月1日は「防災の日」でもある。1923(大正12)の関東大震災の教訓を忘れず、この時期に多い台風に対する心構えを、という趣旨から制定されて46年目。ちなみにわが国への台風の上陸数(気象庁)は昨年が3で、今年は現時点で1。このまま過ぎ去ってくれるといいのだが…。(H)


8月30日(水)

●身近なことから地球規模のことまで、環境意識が問われているのは個人ばかりでない。企業にとっては社会的責任を担うテーマであり、年々、求められるのが理解の広がり。その手段として、東京商工会議所が打ち出した検定が注目されている▼それは「環境社会検定試験」で、通称ECO検定。環境問題に精通した企業人を育て、その知識を企業内で生かしてもらうことが企画の趣旨。ご当地ものなど昨今、全国的に検定ブームの感があるが、それらと一線を画し、あくまで実務的な検定と位置づけられている▼環境問題のコンセプトは「持続可能な社会づくり」だが、その前提となるのが、ほかならぬ“人づくり”。この検定の意義もそこにあり、同会議所も「いわばエコ資格の共通1次やセンター試験のようなものに…」(ホームページ・検定事業部長談)と説明している▼ちなみに出題内容は、環境問題に関する基本的な知識に加え、地球と自然環境の関連、世界的な問題と課題、生活の中での環境問題などだが、さらに注目されるのは…。検定で終わりとせず、今後、合格者が研さんを積むNPO(民間非営利団体)の組織化などまで視野に入れていること▼申し込みは既に締め切られ、初の検定は10月15日。企業の関心は高く、最終的には1万人を超えたと言われる。どんな検定でも役割の一つに人材の育成があるが、この申込者数は紛れもなくその役割の大きさを物語っている。(N)


8月29日(火)

●わが国の食糧基地と呼ばれる北海道。農業、漁業はまさしく基幹産業であり、その発展は消費拡大を抜きに考えられない。今年は牛乳の余剰が問題になったが、大事なのは地元が率先して消費することであり、地産地消は道民が問われている命題▼これまでもさまざまな取り組みが行われてきた。それをさらに幅広く、ということで、道が新たに打ち出したのが…。“愛食”という表現がポイントの「北のめぐみ愛食レストラン」と「北海道愛食大使」の認定事業。現在、周知中で、9月から11月末まで募集する▼“北海道産”の素晴らしさを広く知ってもらう方途としての試み。「北のめぐみ愛食レストラン」の募集対象は、道産食材を使用したこだわり料理を提供する道内の宿泊施設や外食店で、3年前まで実施された同種事業の「北の食材こだわりの宿」の後継版。一方の…▼「北海道愛食大使」も基本的な考え方、趣旨は同じ。道内向けと一線を画したものとも言えるが、こちらの募集対象は東京や大阪など道外の外食店。いずれも公的証明(認証)を与えるものではなく、特に「…大使」には、北海道の応援団的な意味合いを期待している▼ここ数年、使う食材の産地を明示する外食店が急速に増えている。そうした時代の流れの中で、道産食材の評価をさらに高める力となるのは、外食店や宿泊施設などの理解と協力であり、この事業は、言葉を換えると“協力店”の募集。どれだけの反応があるか、期待と注目が交錯する。(H)


8月28日(月)

●「孔子は弟子の問いに『民、信なくんば立たず』と言っている。民心を安んずる方策を問われ、軍備、食糧、信用と応じた後、やむを得ず取り除くとすれば、いずれかと再度問われ、最後に答えたのは『信』だった。知事は幌延計画を白紙に戻すと公約していた」▼道議会で深地層試験所など幌延問題を鋭く追及した、小田原要四蔵先生の一般質問。先生は臥牛子の江差高校の恩師。化学などを教えてもらったが、厳しく追試験を受けた覚えがある。人を思いやり自然を大切にせよ、自分で行動し社会の発展に貢献せよ、郷土に親しみ平和を愛する人になれ、が口ぐせだった▼沈んでいく船影に榎本武楊と土方歳三が号泣した幕府軍艦「開陽丸」。故・宮下正司先生が鴎島横の砂地に埋まった遺物を引き揚げた後、小田原先生は鴎島の入り口に建つ開陽丸復元(青少年研修センター整備)に貢献された。今では江差の重要な観光スポット▼中歌から姥神にいたる「いにしえ街道」整備にも熱心だった。姥神大神宮祭典実行委の会長も務め、リニューアルされた山車「姥神山」の模型に「祭典が後世まで盛んになること」を誓った。そして教諭時代から願っていた「いにしえ街道」を練り歩く山車を見守った▼「平和を愛する心」は人一倍で、元士官学校生の立場から反戦を訴えていた。先生と最後に話したのは今夏の祭典翌日の12日。上町での同期会に顔を見せてくれ「郷土と平和を守る教え子に恵まれた」と目を細めておられた。「一に江差の姥神まつり ヨーイヤサ」の切り声が聞こえてくる。合掌。(M)


8月27日(日)

●「星はなんでも知っている」「星に願いを」。冥(めい)王星はギリシャ神話でプルート(ギリシャ語でハーデス)といい、冥界の王。冥界に流れている「三途(さんず)の川」の渡し守りの名にちなんで命名されたとも言われ、太陽から非常に遠く、暗い神秘的な星▼星占いでは「破壊と創造の星」。何か強いことを生み出すような雰囲気をもっているという。松本零士の「銀河鉄道999」などでは、冥王星に敵の前線基地が置かれたり、人間の墓地になるなど、太陽系の重要な惑星として描かれている▼月よりも小さいが、カロンという衛星が回っている。ソーラシステム(太陽系)の末っ子として76年前に発見された。247・8年かけて太陽を一周するが、その冥王星が1000人の天文学者が参加した国際天文学連合(IAU)の会議で、太陽系一家から籍が抜かれた▼惑星の新定義の一つ「軌道周辺で圧倒的に支配的な天体」の条件に満たないというのが、その理由。以前の会議では冥王星の衛星「カロン」、火星と木星の間にある「セレス」、最近見つかった10番目の惑星「2003UB313」を加えて、12個に増やす方向だったのに…▼「すいきんちかもくどってんかいめい」。誰もが覚えている言い回しだが、太陽を回っているのだから、末っ子を見捨てなくても良いのではないかという思いも込み上げてくる。惑星候補は50個、いや100個とも聞く。落語の「じゅげむ」もどきになっても、家族は多いほどいい。冥界入りしても、その夢とロマンは生き続ける。 (M)


8月26日(土)

●新卒者の就職環境に明るさが言われる一方で、若者の雇用問題が取りざたされて久しい。早期離職者が多い実態をどう受け止め、さらにはフリーターやニート対策をどう講じていくか、いずれも大きな課題だが、決め手を欠いた状況は変わっていない▼新卒で正社員として職に就きながら、さまざまな理由で数年のうちに離職する率は驚くほど高い。各種調査の結果はほぼ共通し、3年以内に離職する割合は“七五三現象”と呼ばれ、中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割。さらに1年以内でみると45・25・15%…▼仕事を甘く見ている、我慢が足りない、などと指摘したところで最終的には個人の意思。ただ、それがアルバイトも含めたフリーター人口を押し上げる一つの要因とも言われ、その人数が200万人超、それに加えニート人口も80万人を超えるとなれば、簡単に割り切れない▼政府の若年者雇用実態調査によると、3年前との比較で、「やや…」も含め、若年正社員の定着率が向上したと答えた企業は26%。逆の判断(16%)より多かったのは救いだが、悩む企業の本音は、行政や学校に「職業観教育」を求める声となって向けられている▼確かに、この10年ほどの経済情勢が、雇用環境に影を落としたのも事実。この離職率、フリーターやニートの実態は、雇用だけにとどまらない。税収、年金などにも波及する問題であり、わが国の将来にかかわる内政の最重要課題。まさに憂慮する現実だが、残念ながら永田町からはそんな認識は伝わってこない。(N)


8月25日(金)

●「キレる」子ども対策として文部科学省は、本年度から手をつけた早寝早起き運動を、来年度さらに拡大する方針。親に合わせがちな生活習慣から、子どもの睡眠時間の乱れが指摘されて久しいが、啓蒙(けいもう)運動を必要とする現実は認めざるを得ない▼年齢に応じた睡眠時間は、心身の健康維持に不可欠。特に子どもにとっては重要な成長要素で、小学低学年ぐらいまでは9―10時間と言われる。ところが、睡眠不足の子どもが増える傾向にあり、「小学生の約40%が不足を感じている」という調査結果があるほど▼誰しも実感することだが、睡眠が十分でなければ、疲れはとれず、集中力を欠き、気分も不快、といった弊害のほか、夜食に手を出す、朝食が食べられないなどの健康面への影響も。そこから問いかけられているのが、年齢に合った生活を実践することの大切さである▼言い換えると「規則正しい生活のリズム」を守れということ。それが欠ける現実にあり、生じているのが睡眠時間まで乱れる事態。その結果として朝から生あくびをし、集中できない子が増えている、と。同省が「早寝早起き朝ごはん運動」を進める理由もそこに▼「規則正しい生活のリズム」が情緒の安定をはぐくむという研究報告もある。確かに、本来なら必要のない運動だが、せざるを得ないのは必要とする現実があるから。せめて、寝不足から、食欲がなく朝食抜きで学校へ、だけはなくしたい。「子どもに見合った睡眠」は、それを呼びかけるメッセージと受け止めたい。(H)


8月24日(木)

●北海道を、函館を第二の生活の地にしませんか―。定年退職期を迎える団塊の世代をターゲットに、移住を促す取り組みが全国的に活発。北海道は沖縄や長野などとともに注目の地の一つだが、座していては…。函館で新たな動きが始まっている▼生活観の多様化に加え、交通手段の充実などを背景に、大都会から地方への転居意識が高まっていると言われて久しい。本欄でもかねて、函館は受け皿となり得る地域であり、対応を急ぐべきと論じた経緯があるが、その役割を担う企業が函館に誕生している▼「北海道コンシェルジュ」(若松町12)という会社。コンシェルジュとはあまり聞き慣れないが、サービス係といったニュアンスがある言葉。その起業の後ろ盾となったのが一昨年4月に発足し、意向、需要調査や提言活動を続けてきた「はこだて生活産業創出研究会」▼「北海道移住情報の窓口的役割を担い、受け入れを支援していきたい」。企業としてはこれからだが、寺西隆経社長ら関係者の思いは熱い。今後、体験機会の提供を含めた受け入れ態勢の整備、首都圏でのプロモーション活動などを進めるが、官から寄せられる期待は大▼移り住む人が増えることは、それだけ街に魅きつける力がある証拠。うれしいことに転居してきた世帯が出始めている。「おいでよ函館」。同社のパンフに登場するコピーだが、官民の態勢は整った。地域がこの動きをどれだけ理解し、共通認識を醸成していけるか、次なる鍵はそこにある。(A)  


8月23日(水)

●ネットや携帯ビジネスの広がりは目を見張るばかり。パソコンに加え、携帯電話が新たな役割を担う時代に入った。新たなサービスが次々生まれ、それに対応した新機種が登場するテンポも驚くほどに速い。大都市に限らず携帯はもはや必需品…▼携帯電話が登場して、せいぜい15年。最初の通話機能だけでも大変な技術革新と映ったが、動きが速かったのは、むしろその後。メールやカメラ機能などが加わり、決済や情報入手機能までも。ここまでくると「場所を問わない多機能生活端末」と呼ぶに値する存在▼情報入手という面では、新聞ニュースなどが当たり前になっているが、今年4月からはワンセグ(携帯向け地上デジタル放送)も始まった。新時代の到来とも言えるが、7月末、大手の印刷会社が発表した「携帯へのチラシ広告サービス(画像)開始」も新たな動き▼システム的には販売情報など企業が作ったチラシを画像データに変換する形。各企業のサイトから広告欄を選択することによって、無料で閲覧できるサービスで、拡大して見ることも。特に商店やスーパーなどの特売情報や不動産情報などでの需要が期待されるという▼チラシの担い手は昔も今も新聞だが、携帯へのチラシ広告サービスの鍵を握るのは需要であり、企業の判断。そこが不透明ながら影響が予想される業界は見過ごせない動き。一般広告面では既にネットの台頭が際立っているが、それもこれも…。紙媒体に押し寄せている“時代の波”にほかならない。(N)


8月22日(火)

●栴檀(せんだん)林 栴檀林 校旗は雲と起れり〜。甲子園で何回響いたことか、駒大苫小牧高の校歌。栴檀は発芽のころから香気が漂うように、良い環境で育つ子らは大成するといわれる。その“栴檀林の獅子児たち”が、いくつもの苦境を乗り越えて、37年ぶりの決勝再試合を激闘した▼夏連覇の快挙を成し遂げた昨夏の大会。その興奮が覚めやらぬうちに、野球部の部長が食事のルールをめぐって部員に暴力を振るう事件が発覚。夏ばて防止に3食ごと茶わん3杯の白米を食べることを決めていたということで…▼今春のセンバツは大会直前に出場辞退を余儀なくされた。卒業式を終えた野球部の3年生10人が居酒屋で飲酒、喫煙し補導されたからだが、夏春連覇を目指す新チームの1、2年生も連帯責任に追い込まれた▼駒大の前身の栴檀林は学僧たちの修行勉学の場所。駒苫の球児たちも修行、猛練習して昨夏と今春の不祥事に翻ろうされながら、苦境にうち克(か)った。「苦しい時こそ、元気を出していけば何とかなる」。エースが高速スライダーを取り戻し、主砲らは長打力を取り戻したが…▼夏連覇の頂点に向かってチャレンジ精神で「心をひとつ」にして再試合の決戦も死闘を繰り広げた。73年ぶりの3連覇は達成できなかったが、3度も決勝に進出した駒苫ナインの偉業は高校球史に輝くことだろう。公式戦の連勝記録48も、北海道の球児に夢を与えるに十分。「感動をありがとう」。最後にこの言葉を送りたい。(M)


8月21日(月)

●新鮮な血液がどれだけの人の命を救っているか、献血の重要性は敢えて言うまでもない。ただ、残念ながら、ここ数年は献血者の数が減る傾向。函館市なども例外でなく、この5年の減少は6000人以上…。改めて協力の広がりを求められている▼わが国の献血制度の始まりは、戦後間もない1949(昭和24)年。その3年後には血液銀行が発足するなど体制を整えられるが、売血問題を抱える中であり、最初の10年余は苦労の連続。「黄色い血追放キャンペーン」が象徴的だが、それを受けて政府も…▼「輸血用血液は献血により確保する」と決議した。1964(昭和39)年のことだが、その日の8月21日は「献血の日」とされている。こうして献血推進運動は“国民運動”となり、全国的に体制が築かれ、400ミリリットル献血、成分献血と、さらに高度化して今日に至っている▼その中で生じている悩みは、献血者の数が減少しつつあること。全国的にもそうだが、函館市をみても、例えば2001(平成13)年度に2万3702人だったのが、2004年度には2万人台を割り、昨年度は1万7078人。渡島・桧山管内も傾向は同じである▼輸血を必要とする可能性は誰にもあり、献血はボランティアと背中合わせのいわば自分の問題だが、函館は「(献血者が)減っている分を400ミリリットル献血でかろうじてカバーしている」といった状況。願うは常時、安定的に、という姿であり、そのためには根気強く啓もうを続けるしか道はない。(H)


8月20日(日)

●子どものころ、学校で何か悪いことをすると、先生の往復ビンタが飛び、罰に校庭の雑草取りや石拾いをさせられた。「勤労奉仕」にも駆り出された。野菜栽培、ブタやカイコの飼育、油を採るドングリや綿の代用品になるススキの穂採集…▼それが今は「社会奉仕命令」か。刑務所などの過剰収容を解消して、犯罪者の再犯防止や社会復帰を促すことを目的に、法務省は先ごろ、その導入を諮問した。対象に想定されているのは、交通事故や万引きなど比較的軽い罪に問われた受刑者ら。確かに悪意なく過ちを犯した人、心から反省している人も多くいる▼「社会奉仕命令」は、自宅居住を認めながら奉仕活動を義務づけるもので、34年前に英国で始まり、欧米など30カ国で導入されている制度。奉仕活動には公共施設での清掃(ごみ拾いなど)や高齢者介護、高齢者宅の雪下ろし、耕作放棄地の手入れ、障害者施設の奉仕活動などが考えられている▼洋服を万引きしたハリウッド女優が、障害者施設で480時間の社会奉仕を科せられ、薬物も所持していたため薬物カウンセリングへの参加を命じられたことがある。サッカーW杯で頭突きを食らわせたフランスのジダン選手は、3日間の社会奉仕命令を受けた。英国では遺跡の発掘調査などもあるという▼法務省は性犯罪者や薬物中毒者らには、施設での治療や教育プログラムの受講なども提案している。ただ、受刑者の中から、どう選り分けるかも難しい。監視態勢も問題になる。一般市民の中で活動するのだから。市民が安心して見守り、かつ協力できる仕組みをどう築くか、その議論も含めた検討が求められる。


8月19日(土)

●「(五稜郭跡に)箱館奉行所の完成に合わせて、市電を丸井前から行啓通の五稜郭公園近くまで延長させたらいい。元町・ベイエリアと五稜郭公園がしっかり市電で結ばれ、観光面でのインパクトは大きいよ。距離も長くないし、道幅もあるしね」▼先日、ある人から聞いたのだが、よく考えると、耳を傾けるに値する話。そう思って日曜日など車で行啓通を通った時に観察していると、五稜郭公園に向かって歩いている観光客らしき人が結構いる。確かに徒歩で10分ほどだが、だから良しとするのかどうかである▼排ガスもなく、環境に優しい乗り物として路面電車が時代の再評価を受けている。もちろん“生活の足”としてもだが、観光面での人気の視点からも。函館は個人での旅行者が増えていると言われるが、車でない人にとって、交通手段は印象を左右しかねない要素▼この人の話にも理由がある。五稜郭公園ではタワーが新しく生まれ変わり、あと5年もすれば奉行所が復元される。当然、訪れる観光客の増加が期待されるが、その時に向けて何を考えるか、五稜郭公園には市電で直近まで行けます、も対策の一つでないのか、と▼金はかかるし、道路行政、交通安全など立ちはだかる問題はある。ただ、それもクリアできないほどの難問とは思えない。近年は鉄道総合技術研究所などによりバッテリーで走る路面電車の開発も進んでいる。一笑に付すか、受け止めて検討するか、あえて取り上げたのは、紹介する価値のある話と思ったから。(A)


8月18日(金)

●事故を起こす危険性が高いというのに、認識度が低いのが運転中の携帯電話の使用。道交法改正で罰則規定が設けられて間もなく2年になるが、困ったもので、函館などでも片手でハンドル、片手で携帯という違反光景を見かけることが少なくない▼交通ルールを守る前提があって安全秩序は保たれるのだが、それがなかなか。無免許は論外として、速度オーバーと飲酒(酒酔い)が厳しく言われてきたのは、いずれも重大事故に結びつく確率が高いからだが、近年、同じぐらい危険とされているのが“携帯運転”▼「まさか…」と受け止める向きもあろうが、注意が散漫になって「ブレーキを踏むのが18%ほど遅く」なり、飲酒運転より危険という調査結果はその一例。その率に差こそあれ、アメリカ・ユタ大学の研究チームが学会誌で発表した研究報告も同様の内容だった▼「携帯運転ではブレーキを踏むまでの反応時間が9%遅れ、40人中3人が会話中に事故を起こした」。8月初め、読売新聞などが報じていたが、22歳から34歳までの40人の協力を得た実験データからの分析で、さらには車間距離を一定に保てなくなる傾向が強いことも▼「危険性は酒気帯び運転と同程度」というのが結論だが、ある調査によると、運転する時は「電源を切る」「ドライブモードにする」は3割程度とも言われる。これでは危険認識の欠如と言われても仕方ない。「事故を起こしてから後悔しても遅い」。言い尽くされた言葉だが、“携帯運転”の啓蒙(もう)、警告に掲げる言葉はほかにない。(N)


8月17日(木)

●ハードとソフトを兼ね備えた時代へ―。そこに見え隠れするのは「ハードだけでは理解を得られない」という思い。かつての北海道開発庁、現在の国土交通省(北海道局)のことだが、その象徴的な一つの取り組みが「地域協働プロジェクト」▼今もそうだが、このお役所が担う仕事は、社会基盤(インフラ)整備。分かりやすいのが道路(国道)や港湾造りであり、さらには河川の改修や農用地の改良などもある。その整備が遅れていた戦後の北海道にとって、文句なしに頼もしく、ありがたい役所だった▼政治の後押しがあってこそだが、道路をはじめとして目覚しいほどに整備は進んだ。そこに公共事業に絡む議論が押し寄せ、加えて国の財政問題が。ハード一辺倒では立ち行かなくなった現実は、ソフトへの傾注を表す「地域協働」という言葉からもうかがえる▼以前が造りっ放しだったとまでは言わないが、どちらかと言うと…。本紙が先日報じた函館開発建設部の「農水産物直売所ガイド」や「道南道の駅マップ」などの作製、配布などは身近な分かりやすい一例だが、背景はどうあれ、姿勢が変わりつつあるのは歓迎される動き▼「…地域の人々と協働して、活気ある、住みやすい、北海道らしい地域社会を実現する方策を進める…」。「地域協働プロジェクト」を紹介する中で、北海道開発局はこう語りかけている。そこから伝わってくるのは「一方的に造る」から「一緒に考えて造る」という姿勢の変化。その取り組みは始まったばかりだ。(N)


8月16日(水)

●大都市ほど脆(もろ)い。停電の話である。ひとたび起きるや都市機能が完全に麻痺(まひ)してしまうのだから。14日に東京など首都圏を巻き込んだ大規模停電が、あらためてそれを教えている。損傷されたのが大動脈の送電線とはいえ、大騒ぎの事態である▼約140万世帯が影響を受けたほか、地下鉄など電車は動かず、交通信号機やエレベーターも止まるなどお手上げの状態。社会も家庭も、あれもこれも、停電となれば…。「現代は電気に支配されている」という人もいるが、それを実証したかのようだ▼その電気への依存度は大都市ほど高い。生活の足一つをとっても、地方都市では自動車や自転車が結構多いが、東京や大阪などでは圧倒的に鉄道であり、自動車にしても交通量から信号機の価値は地方都市の類でない。30階以上の高層ビルやマンションも増えている▼お盆の比較的人の移動の少ない時期でも、3時間停電しただけで、この混乱である。七十数件の閉じ込め事故が起きたと報じられていたが、エレベーターも恐ろしい乗り物に。クーラーもパソコンもまったく機能しない。それが夜だったら、復旧に長時間を要していたら…▼それだけ電力会社が担っている使命が重いということでもある。水道管の破裂事故もそうだが、確かに人為的な“災害”が少なくない。クレーンを立てて航行したお粗末事故は想定外だったにせよ、大規模な停電が起きたのも現実。そんなことで、と思うと、こっちの方も脆いと思えてくる。(N)


8月15日(火)

●家庭でのしつけが甘い、父親と子どもの接触時間が短い…。アメリカやフランスなどに比べて親子関係に悩みや問題を抱えている、そんな現実を国立女性教育会館が行った「家庭教育に関する国際比較調査」の結果が浮かび上がらせている▼今月初め、新聞各紙が報じていたから、まだ記憶に新しいが、一言で言うなら非常に厳しい評価。この調査の対象となったのは日本、韓国、タイ、アメリカ、フランス、スウェーデンの6カ国で、12歳以下の子どもと同居している親、各国1000人に聞いている▼昨今よく親子関係が問題にされるが、この結果が教えるのも接触の少なさ。それは労働時間を抜きに語れないが、それにしても…。父親が子どもと過ごす時間は、平日でタイが5・9時間、スウェーデン、アメリカが4・6時間なのに対して、わが国は3・1時間▼この接触時間とも関連し、さらなる課題として提起されたのが、しつけの甘さであり、子どもの自立の低さ。例えば5歳の時に「行儀よく食事ができる」が他の国より劣るなど、全体的にしつけの達成度が低い傾向。しかも、その傾向は10年前と変わっていないという▼ごく一部の紹介でしかないが、他国に比べ家庭教育に課題があることだけは、容易に読み取れる。子育ての責任を担うのは親であることに異論を挟む人はいまい。ただ、核家族化、少子化という時代背景の中で、悩める親の姿が色濃くなっているのも事実。それに加え、現代は…。「子どもの身の安全」に対する不安も重くのしかかってきている。(H)


8月13日(日)

●13日は「函館夜景の日」。誕生したのは今から15年前の1991年だった。函館出身の大学生が提案した「や(8)けい(K=トランプの13)」の語呂合わせに由来するが、意義は制定したことに。というのも、函館ならではの記念日であり、かけがえのない財産だから▼言うまでもなく「函館市民が夜景に対する認識を深め、愛着を深める日」である。ただ、市民の間にその認識はどうか、啓もうについても多々問題を抱えているが、同時に新たな“光づくり”が課題として提起されて久しい▼とはいえ、函館の夜景は掛け値なしに素晴らしい。見慣れている地元の人間といえども、見るたびに感動を覚える。その一方で、昔はもっと明るかったという話が…。確かにそうだ、という思いから、本欄でも何度か街路灯の問題などを提起したが、函館市も腰を上げた▼別名“夜景グレードアップ作戦”で、本年度から動き始めている。専門家に仰いだ診断結果を踏まえ、5年間をかけて新たな光を創出していく計画。本年度中に完成する仮称・交流まちづくりセンター(旧末広町分庁舎)の照明整備が、その“第1作戦”という▼特に重視されているのが近景の十字街地区。もっと光量がほしいと望まれているからだが、来年度以降、弥生町、大町などの幾つかの建物を新たな光創出の候補と位置づけている。この取り組みに欠かせないのが市民の幅広い理解であり、そのためにも13日を大事にする必要がある。「夜景(を考える)日」として。(A)


8月12日(土)

●性愛に没頭していた生活に対する自己嫌悪といってもいい。その結果として罪の子が誕生した。それが彼の意識を苦しめ、前途を脅かすことになった。愛欲こそ苦の根本原理という哲学が説かれるようになった。その母子を捨てて家を出た▼妻の妊娠、出産の傍らにいて迷い続けていたとはいえ、無責任な態度である。しかも息子に「悪魔」という名前を付けていた。サンスクリット語のラーフ(日蝕の『蝕』の意味)。輝きや光の障りとなるような悪魔的な存在なのか(山折哲雄著「ブッダは、なぜ子を捨てたか」)▼そう言えば、日本でも息子に悪魔と命名し、役所が受理しなかった事例がある。若いブッダは妻子の立場を考えようともしない自己中心的だったという。最近、増えている子ども受難(虐待や育児放棄)と重複する。「怨(うら)みをもっている人々の間にあって怨むこと無く暮らしていこう」という真理の言葉の理解に苦しむ▼ウランバナ(逆さまにつるされている状態)で、食べ物を与えても手に触れるや否や火となって、口に入らない。かえって激しい飢餓に苦しめられる母親の姿を見た息子(日c」)は、百味の飲食で修行僧を供養して、地獄から母親を救った。これがお盆の始まりと言われる▼先の大戦では、特攻隊や人間魚雷などとして、国(親)に見捨てられた多くの若者(息子)たちが海原に散った。愛の強さ・哀しさが渦巻く「愛怨」を抱いて…。お盆(終戦記念日)は、妻子を捨てたブッダがどうして「四苦八苦」から解脱できたのか、「世界平和」を願ったのか、などを考える日にしたい。(M)


8月11日(金)

●大学は今や生き残りにしのぎを削る時代―。高校生以下の子どもの減少など、いわゆる少子時代は既に大学にも波及、東京など大都市の一部有名大学を除いて、定員の確保に苦悩する大学が少なくない。しかも、その悩みは今後も消える見通しがないのだから▼今月初め、ショッキングなニュースが報じられた。道内にある短大が学生減による経営危機に陥り、民事再生法の適用を申請したという話である。実は全国で3例目。幸い開始決定を受け、新しい体制で継続されることになったが、これは表面化した一例に過ぎない▼特に、時代の影響を受けているのが、地方の大学であり、4年制よりも短大。短大はかつて人気を集めた英文や国文が陰りを見せ、一方で保健、栄養、養護などといった実務的な学科は専門学校と競合。学生が少ないと、収入は減り、大幅な定員割れは国からの補助金も削られる▼説明会やオープンキャンパスを開催し、納付金の減額など、各大学は競って対策を練っている。それでも現実は容易に変わりそうにない。ちなみに本年度、道内の私大では約半数が定員割れだという。厳しい展望は総務省の子どもの実態調査からも▼15歳未満の人口はこの20年来、減り続けている。だから知恵の絞り合いとなるのだが、一般論として言われるのは特色づくり。言葉を変えると、魅力づくりだが、それも言うはやすく行うは難し。昨年、ある大学関係者から聞いた「本当に大変なんですよ」という言葉が頭によみがえってくる。(H)


8月10日(木)

●「1台あたりの駐車スペースがもっと広いといいのに…」。隣の車との間が狭く、乗り降りが大変とか、ドライバーなら誰しも一度ならず思ったことがあるに違いない。実際にドアの開け閉めで傷つけられていたという話も珍しくない▼現代は車社会。特に地方では車が足の役割を果たして完全な生活必需品。函館で登録されている軽・普通乗用車数は約16万台とも言われる。当然ながら駐車場は不可欠で、特に商業施設などでは成否の大きな要素。まずは数だが、次に求められるのが1台の駐車幅…▼都市イメージとしてあるのか、実際にそうなのか、函館は狭い、という声をよく聞く。ただ、法的に野放しなわけではない。主な都市と同様、函館市にも駐車場条例があり、その第4章第24条は、他都市同等の「1台につき幅2・5メートル、奥行き6メートル以上」と規定している▼ただ、現実論としては設置者のモラルに委ねられるが、これまでの時代に最優先されたのは数。ところが、高齢ドライバーが増える時代を迎えて、新たな視点と考えられてきているのが幅(1台あたりの)であり、場内の余裕。「停めやすさ」が利用度の鍵を握ってくるという考えである▼「せめてあと50センチ広ければ」。そんな思いを抱いている一人だが、現実に全国的には広げる事例が出始めているという。これまで良かったことがそうでなくなる、時代は常に新たな要請をしてくるものだが、この駐車幅もその一つ。「ちょっと遠いぐらいなら、ゆったり停められる所に…」。この思いには、設置者に対する大事なメッセージが隠されている。(N)


8月9日(水)

●閉塞感が漂う現代、夢は宝くじで…。高額の幸運をつかんでいる人の数をみると、自分にも可能性あり、と思えてくる。一昨年のデータだが、1日当たり1・4人が1億円以上、7人が1000万円以上、36人が100万円以上を手にしているというのだから▼人気を持続しているのも頷けるが、それは日本宝くじ協会の「宝くじ長者白書」(2004年度)からも明らかに。国民の10人に1人が1カ月に一度は購入する「宝くじファン」で、1年間に一度は購入する「宝くじ人口」となると、2人に1人強という▼興味をそそられるのは、どんな人が高額を射止めているか、ということ。1000万円以上の当選者1100人余りに聞いたその白書によると、男女別では男性が3分の2の66%、年齢別では50歳以上が60%余りを占め、職業別では会社員が38%と最も多く、主婦、自営業の順▼購入歴別では10年以上が60%を占める一方、1年未満でも6%おり、購入枚数別では1回に10枚、10枚未満しか購入しない人でも16%の確率が。さらに、イニシャルをナンバーズ、ロトで100万円以上当たった人を対象にした別の調査でみると…▼多かったのは男性がT・Kさん、女性がM・Kさんという。こうしたデータを積み上げると架空の長者モデル像を浮かび上がらせることができるが、04年度の調査で“幸運者”の57%が答えているように、当選の秘訣(ひけつ)は「運」なのだと。としたら、あきらめは禁物か。11日にはサマージャンボの抽選が行われる。(H)


8月8日(火)

●減ったとはいえ、半年で9000件、被害額100億円超―。実はこれ「オレオレ」や「架空請求」「口座詐欺」などの、いわゆる振り込め詐欺事件の発生実態。根底から後を絶つ動きになっていない現実は、警察庁がまとめたデータから明らかに▼詐欺犯罪はいずれも卑劣だが、この振り込め詐欺は特に。ターゲットにする相手が個人であり、その多くが高齢者だから。例えばオレオレ詐欺の被害者をみても、60歳以上が70%余りを占めている。ともかく多い。警察が認知した今年上半期(1―6月)の発生は9136件▼確かに一昨年は年間2万5667件、昨年は2万1612件。単純に弾くと今年は年間で2万件を割る計算で、確かに減少の流れだが、喜べる実態にはほど遠い。全国で1カ月間に1523件、1日当たり51件の発生である。しかも未遂はわずか194件というのだから▼ちなみに、その中で最も多かったのが融資保証金詐欺で44%、オレオレ詐欺が34%、架空請求詐欺が22%。さらに横領のでっち上げなど次々と新手が顔を出している。まさに手を変え品を変えの実態だが、その被害総額は半年間で実に約117億7300万円▼驚きを覚える額だが、一方で今年上半期に検挙されたのは386人(1372件)で、多くが姿を隠したまま。自衛に勝る対処はない、と言われる理由もそこにある。「変な電話やはがきを受け取ったら、誰かに相談するか、問い合わせを」。この半年間の実態があらためて注意を促している。(H)


8月7日(月)

●頑として進まない北方領土の返還。その運動に携わってきた元島民や運動関係者の間には、疲労感、焦燥感が見られるとして道が考えたのが励ます取り組み。8月からホームページ上で応援メッセージ(HP)の募集を始めた。来年の3月末まで▼北方四島の領土返還は国民の多年の悲願であり、最重要の政治課題。それは8000万人とも言われる署名の数が物語っている。もちろん今も継続中だが、その返還運動の始まりは終戦間もない1945(昭和20)年の12月にさかのぼる。道の対策本部資料によると…▼それは当時の根室町長(現根室市)の安藤石典氏が、連合国最高司令官・マッカーサー元帥に行った陳情という。「択捉島以南の島は古くから日本の領土であり、これらの島々において島民が安心して暮らせるよう措置してほしい」。提出した陳情書には、こう記されていた▼それから60年余の月日が流れている。この間に北方墓参が行われるようになり、いわゆるビザなし交流では双方約4000人規模で訪れているが、返還の流れはいまだに…。交渉の方法論に議論がある中、元島民や運動関係者の高齢化が進み、精神的な疲れが言われている▼関心を持ってもらい、運動を盛り上げる思いも込められているが、そこで考えられたのが関係者を激励する取り組み。応援メッセージの字数は100字程度とし、新たに設けるHP上の「メッセージの部屋」に掲載していくという。8月は北方領土返還要求運動強調月間である。(H)


8月6日(日)

●鎮魂の熱い夏が来るたびに、広島や長崎に投下された原爆のビデオを観て心を痛める。広島の地を一瞬のうちに血と炎の海に変え、市民20万人が命を落とした。閃(せん)光で焼かれ、痛々しいやけどを負った人々が、行く手に炎があれば押し返され、また戻され…▼被爆者は、悲痛なうめき声を上げながら、血のしたたり落ちる手を差し伸べて「水、水、水をください」と叫ぶ。放射能を浴びた黒い雨とも知らず、水たまりの水を先を争って飲む。爆心地から2`ほど離れた託児所の保母だった女性(87)は、この光景になすすべはなかった▼10年後、山の中腹の「滝の観音」を見て、水を求めながら亡くなった霊に飲ませてやりたいと、献水活動を開始。以来、半世紀にわたり、広島市内や近郊にある120カ所の原爆慰霊碑を1年間かけて回って献水している。路傍の名もない慰霊碑に、多くの犠牲者が流れ着いた小島にも▼31年前から記念式で「献水の儀式」として執り行われるようになり、今では「汚染水を飲んだ霊に清らかな水を」と、羊蹄山の噴き出し水や黒部川のわき水などが全国から届けられているという。きのこ雲の下で燃え上がるがい骨などを描いた岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」も修復された▼人の身体は大半が水分だ。それが熱線で焼かれたら…。「水、水、水」は生命の根源。イスラエルが空爆を再開したレバノンの村落で1週間ぶりに水を飲み干す老女の姿を新聞で見た。あの日の被爆者もそうだったのだろう。道南の名水も献水してあげたい。きょう6日は広島原爆記念日―。 (M)


8月5日(土)

●膿(うみ)は出し切って、もう無くなっていたかと思っていたら、甘かった。問題が表面化した事例は氷山の一角という指摘もあったが、それにしても…。岐阜県の不正経理による裏金づくりだが、持て余して一部は焼却していたというのだから言葉を失う▼役所のずさんな公金管理、不正な使途は、北海道をはじめ全国的に大きな社会問題になったところ。納税者にとっては堪らない話だが、岐阜県にも開いた口がふさがらない。8年前の時点で、その額は4億4100万円。副知事を先頭に全庁示し合わせての不正だった▼その時期、景気の低迷期に入り、財政が厳しさをのぞかせた頃である。率直に認め、返還する行動を起こしていたのならともかく、県がとった行動はその逆。さらに隠すことにし、何を考えたか、処分に困って500万円とも言われる現金を捨てたり、焼却したという▼聞く方の頭がおかしくなってくる。このお金、税金である。「汗水たらして稼いだお金でないから」。公金意識の欠如はことあるたびに言われるが、この行為はそれ以前の話で、事後の処理も含め完全な犯罪行為。謝って、返還するといって、許される範囲を通り越している▼さらに質(たち)が悪いのは、本来なら歯止め役を果たさなければならないはずの職員組合も深くかかわっていたこと。岐阜県民の怒りは容易に察しがつくが、他都道府県に関係のない話とも言えない。他にもあるのではないか、という不信の目が広がるから。実際にまだあったのである。(N)


8月4日(金)

●ガソリン価格が値上がりし、レギュラーでついに140円台。今のわが国は原油に、言葉を換えれば中東に首根っこを押さえ込まれていると言って過言でないが、今回も顕著な一例。個人もさることながら経済界が被る影響は大きく、とりわけ運輸関連は▼この1カ月ほどの間に1リットル「10円ほどの値上がりである。何時になったら下がるという見通しもなければ、今後こうした事態にならないという保証もない。とすれば、ガソリンの使用量を減らす道を考えるしかない。実は世界各国でその取り組みが始まっている▼その期待を担っているのがバイオエタノール。サトウキビやトウモロコシなどから作られるが、原油への依存が軽減できるばかりか、温暖化ガスの排出削減が可能。まさに一石二鳥で、既に先進地のブラジルでは20%以上の車が、この燃料で走っていると言われる▼わが国では3%の混合ガソリンを認めたところで、政府は4年後には10%混合を発売させたいとしている段階。知られるのは沖縄振興策としての宮古島や伊江島などでの取り組みだが、北海道でも…。十勝では規格外の小麦からエタノールを作る実験が行われている▼その実用化を目指す動きは世界のすう勢。確かに課題も多い。対応する車の問題、採算性や価格の問題などで、関連業界の連携も求められる。その推進役をどう担い、けん引していくか、国が果たすべき役割だが、中東情勢をみていると、近い将来の目標を50%混合ぐらいまで高めていいと思えてくる。(N)


8月3日(木)

●なぜ、事故防止は子どもの目線で考えられないのか。さぞ、怖かったろう、苦しかったろう。敷地内に監視員や看護師、現場責任者など15人がいたというのに…。埼玉県ふじみ野市の「流れるプール」で、女児が高速で配管に吸い込まれるという悲しい水死事故が起きてしまった▼小2女児は近くにいた友だちに近づこうとして潜った時、外れていた柵状の吸水口に、あっと言う間に吸い込まれたとみられている。別の子どもが棚状のふたが外れているのに気づき、監視員に知らせていたが、事故はその10分後だった▼しかも驚くのは、固定しているボルトはなく、針金で留めた跡だけがあったということ。運営管理は民間に委託し、具体的な防止マニュアルもなかったという。としても、子どもが吸い込まれたら大変と判断し、直ちに吸水装置をストップさせるのが本筋ではないか。10分間あれば十分な対策がとれたはずである▼プールから全員引き揚げさせるべきだった。監視員の教育を受けていなくても、子どもを守る大人の常識。ボルトだって、針金だって、プールに入れた塩素の影響で時間が経つと腐ったり、解けたりする。この科学的な反応も常識だ。日々の点検の必要性がそこにある▼道南でも一斉に緊急点検し、監視体制を強化することになった。「吸水口や排水口に堅固な格子状の鉄のふたや金網の設置し常時点検」という基本を守ることは、子どもを守ること。プールに限らず、エスカレーターや回転ドアなど、周りの大人が危険性をキヤッチしたら、監視員らに「動力」を止めさせる、改めてその徹底が必要だ。(M)


8月2日(水)

●大雪山系の主峰・旭岳(2290メートル)。冬は厳しく、かなりの経験者しか寄せつけないが、夏は道内外からやってくる多くの登山者でにぎわう。ふもとから歩いても登れるが、中腹の姿見駅までロープウエーを利用し、それから登り始める登山者が多い▼その1670メートル辺りに、火口の跡に水がたまって出来た小さな池(姿見の池)があり、近くには「愛の鐘」(正式には大雪山愛の鐘)が建っている。その清らかな鐘の音は、登山者を和ませてくれるが、実はこの「愛の鐘」は遭難者への慰霊の思いが凝縮された碑でもある▼しかも函館と無縁の話ではない。それは1962(昭和37)年の12月30日だった。時間が経って語られる機会は少なくなったが、遭難したのは道学芸大函館分校(現道教育大函館校)の山岳部員10人。中腹にビバーク中に、想像を絶する暴風雪に見舞われて…▼10人の霊を慰め、また濃霧や吹雪の際の目印に、と旭川山岳会などによって作られたのが、この「愛の鐘」。それから40数年、風雪に耐える中で倒れる危険が生じたため修復話が浮上。東川町によると、現函館校の関係者をはじめ全国から寄せられた浄財により、7月末、青色からこげ茶色となってよみがえった▼旭岳に限らず、山は訪れる人に素晴らしい世界を与えてくれるが、時として牙を向けてくる。10人の学生は犠牲者だが、その教訓は生きて今日に。「眠れ旭岳の山の友 夢に故郷を見て眠れ…」。刻まれている詩の一部だが、この「愛の鐘」は山を愛する人たちの友情の証しにほかならない。(A)


8月1日(火)

●“資源”は無限か、と言うと、必ずしもそうでない。単に気づかずにいるだけで、有限であり、日常何気なく使っている水もその一つ。「大切に…」と呼びかけられる理由もそこにあるが、きょう8月1日は「水の日」であり、7日までは「水の週間」▼わが国の水需要は、産業活動の進展、家庭での水道や下水道の普及によって急速に増大。今では電気と同様に産業活動、生活の生命線とまで言われる。それだけ恩恵を受けているということだが、しかも水道水の質は向上し、何処にいても、おいしい水を享受できている▼実際に水自慢をする市町村は多い。函館市もそうだが、その一方、住民の間で取水源など水道の姿は意外と知られていない。ちなみに函館市の場合は3河川で、亀田川の笹流、新中野の両貯水池のほか、松倉川、汐泊川からも堰堤を設けて。その取水能力は1日約16万立方メートルという▼おかげさまで十分な量を確保できているが、鍵を握るのは雨量。今年こそ聞かないが、四国や九州などでは給水制限の事態が少なくない。まさに有限の立証だが、その啓蒙策として「水の日」が制定されたのは1977(昭和52)年。ちょうど30年前のことである▼さらに国連は…。1992(平成4)年に、3月22日を「国連水の日」とすることを決議している。水資源の保全や水質の向上が世界的なテーマという認識からだが、わが国は恵まれた国の代表格。水道の整備は進んで、水質も世界に誇れるレベルなのだから。感謝して余りある。(A)


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