平成21年9月


9月30日(水)

●「ああ家計は不況に圧迫されて、どうしたらいいの」「ダイエットもかねて、わたし一食ぬくわっ」数週間後「やったわ、4キロやせたわっ」最後は「こまったわ〜いままでの服あわなくなった…」「すぐもどんだべや」—先日の本紙の4こままんが(おおた美登利さん)▼ダイエットしても、食欲の秋、馬肥ゆる秋に負けてメタボ(腹囲=男性85センチ、女性90センチ以上)になってしまう。そのメタボ健診の受診率(国保で全国平均28%)がかんばしくない。腹囲が基準を超えていなければ血圧や血糖値、脂質に異常があっても指導の対象にならないのは納得できない▼メタボ健診の代わりに、眼底検査や心電図が削除された。心電図は動脈硬化や狭心症、心筋梗塞などの予防に必要なのに…。単に腹囲が大きいだけでは生活習慣病の危険要因としては不十分という調査結果も出ている▼臥牛子はメタボ健診は効果なしと自己判断、今年の受診はやめ、主食を減らすことにした。北陸地方では「一口残(ひとくちのこす)」という。加賀藩のある老人が一口残し、残った米は托鉢僧に施し、僧はそれで生活し、「一口残、以(もっ)て民を救う」のだ▼いわゆる「腹八分目」、いや「腹七分目」だ。今ブームの黄金食「卵かけご飯」も侮れない。4こま漫画のように、家計費減、体重減の一石二鳥は難しい。過食や飽食を戒めるためにも、効果的なメタボ健診を考えてほしい。(M)


9月29日(火)

●例えば月収が20万円あるとしよう。そこから5万円の借金を毎月支払うとする。残り15万。一人暮らしなら、十分やっていけそうな気がする。しかし、市町村の場合、その程度の借金を抱えていると「早期健全化団体」と呼ばれる。「健全化」といえば聞こえはいいが、言葉を変えれば「破たん一歩手前」という意味である▼収入の25%が借金返済でも、75%は自由に使えるように見える。しかし、市町村の場合、職員の給料や生活保護費、道路整備費など簡単には削れない経費が多い。だから財政は相当厳しい▼全国でその程度の借金を抱えたり、出費が多すぎて倒れそうな市町村が、読売新聞の調べで21あった。財政が行き詰まる前に自治体の力で再建を目指す団体だ▼その指標は4つあるが、江差町の場合、昨年度決算で標準的な収入のうち、25%以上を借金返済に充てていたことが引っかかった。北海道にはこうした団体が江差をはじめ7市町あり、「第2の夕張」になる恐れもある▼江差町では1980年代後半から、役場、文化会館、運動公園などの大型事業が相次いだ。今がその借金返済のピークで、数年以内に軽減されるという▼しかし、誰が借金漬けにしたのか、何が理由か、過去を問題にしても始まらない。大事なことはこれ以上、財政を悪化させないことだ。どの市町村にもやりたい事業は山ほどある。しかし、身の丈だけは忘れてはならない。(P)


9月28日(月)

●2年ぶりの優勝へ向け、今シーズンは序盤から好調だった日本ハムファイターズ。8月中旬に突然襲った新型インフルエンザの猛威に苦しめられながらも、ソフトバンクとの天王山を1勝1敗1分で切リ抜け、ついにゴールテープが見えてきた▼しかし、この優勝争い以上にヒートアップしているのが、ソフトバンクと楽天との2位争い。特に、2005年の球団誕生以来、最下位争いに甘んじてきた楽天の頑張りには目を見張るものがある▼開幕直後に首位に立つものの、ずるずると後退し一時は5位に転落。名将野村克也監督をしても、やはり定位置のBクラス脱出は難しいかと思われたが、8月から始まった快進撃で一気に台風の目となった▼残り試合数を考えると、さすがに日ハムまでを逆転し首位に立つ可能性は低いが、クライマックスシリーズに勢いが持ち込まれれば、手強いライバルになることは間違いない。それにしても、北海道と東北が本拠地の北国の2チームが日本シリーズをかけて争うこと日が来るとは、だれが想像しただろう▼もちろん道民としては日ハムを応援すべきだとは思うが、楽天には駒大苫小牧高出身の絶対的エース田中将大投手に加え、函館工業高校出身で、今季2勝5セーブと活躍する青山浩二投手も在籍する。両投手が1勝ずつ挙げながら、最後は日ハムが勝利をもぎ取るシナリオを望むのは虫が良すぎるだろうか。(U)


9月27日(日)

●会社の一角に菓子箱を見つけた。東京土産という。菓子名であろう「華麗なる一族」の大きな文字と、鳩山由紀夫首相・幸(みゆき)夫人の似顔絵。中身のせんべいは゛カレー″味だった▼歴代首相をモデルにしたまんじゅうなどが人気を呼んだのはいつごろからか。小泉純一郎氏あたりに始まり、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各氏が続いた。大半が短命内閣だったことで、むしろ新味が出たのだろう。菓子箱の顔が変わるたびにテレビなどが取り上げた▼民主党を中心とした連立与党に政権が変わった。変わらないのは菓子業者のたくましい商魂である。前述のせんべいはその一例。一躍人気者になった幸夫人を引っ張り出すあたりは先見の明がある。この種の菓子類やグッズはほかにも多い。いずれも肖像権の問題をクリアしているものと信じたい▼その鳩山夫妻が国際デビューした。温室ガス削減の国連演説で拍手を受けた鳩山首相。これまでの首相夫人とはひと味違った存在感をアピールした幸夫人。ただし、新政権の真価が問われるのは、課題山積の内政に直面するこれからだ▼八ッ場ダム(群馬県)の建設中止方針、日本航空の再建問題、中小企業向け融資などの返済猶予制度…。このほか、既存の後期高齢者医療制度や障害者自立支援法にどう手をつけていくか。菓子箱の似顔絵が早晩に変わることがないように—。できればそう願いたい。(K)


9月26日(土)

●この夏、北斗市(旧上磯町)七重浜の海岸はいつも通りのにぎわいをみせていた。あれから55年。ここが1400人余りの犠牲者を出した惨劇の場とはにわかに信じがたい。ビーチマットを広げる家族連れの目に、半世紀も前の出来事はどのように映るのだろう▼1954年(昭和29年)9月26日。本道を襲った台風15号は洞爺丸など青函連絡船5隻をのみ込んだ。日本海難史上最悪の惨事となった「洞爺丸台風事故」である。おびただしい数の遺体は七重浜に流れ着いたという▼被害状況は「上磯町史」に詳しい。それぞれの青函連絡船の乗客、乗員のうち生存者はわずか55人。この中の52人は七重浜付近の住民の手によって救助された。一方で、台風は町民の生活にも深刻な打撃を与えた▼上磯町おける損害額は家屋、農業、水産、林業など計1億8281万5000円(上磯町史)。暴風は各地で吹き荒れたというから、道内全体の損害は計り知れない。中でも最大の被害を出した洞爺丸の遭難。その悲劇は今も住民らの間で語り継がれている▼事故原因については「洞爺丸はなぜ沈んだか」(上前淳一郎著)、「青函連絡船洞爺丸転覆の謎」(田中正吾著)など多数の検証例がある。多くの関係者がこれらを基に再発防止に取り組んできた。残されたものにできることは、未曾有の事故を「忘れない」ことである。26日、犠牲者をしのぶ慰霊祭が七重浜で行われる。(K)


9月25日(金)

●コスモス、ヒガンバナ、エゾギク…色とりどりの花が秋風に揺れている。秋分がすぎて冬至まで夜が長くなっていく。コーラス部に入った中1の孫娘が「この前、『花はどこへいった』を聴いた。反戦歌っていうけれど、誰が歌ったの」と聞いてきた▼「花はどこへいった」「娘たちが摘んだ」で始まり「少女はどこへ行った」と続く。若い男—兵士—墓地へ…、墓地が花で覆われる。最初の「花はどこへ」に戻れば何時間でも歌は続く。この歌を最初に聴いたのはマレーネ・ディートリッヒのレコード▼先ほど放映されたBS開始20周年記念の「花はどこへいった」で、36年前のライブ映像が目に入った。戦場へ旅たった恋人を追いかけて戦場慰問に出かけ「戦争を起こさないために、何か本当にできることはなかったのか」と語り、訴えた▼この歌はショーロホフの「静かなるドン」のコサックの子守歌が引用されている。「あしの葉はどこへいった 少女たちが刈り取った」とあり『花』ではなく『葉』だった。反戦フォークソングといえば新谷のり子の「フランシーヌの場合」を思い出す▼40年前、パリで焼身自殺を遂げた若い女性。戦争を繰り返す愚かさ。いつも子どもを巻き込む。「花どこ」の花は「私を信じて」の花言葉のエゾギクではないか。「不滅の花」ともいわれているから。英語を習い始めた中学生でも分る歌詞。孫娘も平和への希望を持ち歌ってほしい。(M)


9月24日(木)

●原稿は書くものだが、本欄も記事も、文章はパソコンで打っている。駆け出しのころは原稿用紙に鉛筆で手書きした。上司に「早く書け」と怒鳴られて育ったが、今では「早く打て」だろう▼わずか20年間での変化だ。この間、どの職場でもOA化やIT化が進んだ。紙の上で行ってきた作業をコンピューターやワープロ、パソコンなどで電子化し、事務効率を高めるシステムだ。OA化が始まった1980年代、将来は紙の使用量が減るペーパーレス化が予想された▼しかし、現実は違った。日本製紙連合会によると、1950年に10キロだった1人当たりの年間紙消費量、が80年に約150キロまで増え、2000年以降は約250キロ。最近は活字離れもあり頭打ちというが、それでも多い▼身近な例で考える。原稿を「打ったら」画面で確認できるが、プリンターで印刷して読み直す。公表されている情報はデータで持ち歩けるというのに、かばんの中は資料でいっぱい。ランドセルのように重い。図書館や調査部署で調べていた事柄は、インターネットで簡単に調べられるが、情報は洪水のようにあふれている。選んで印刷しているうち、この有様だ▼森林資源から作られる紙を大事にしようと、あらためて思う。日本は紙のリサイクルが進み、新聞紙の6割は再生紙が使われている。手に取られている新聞から必要な情報を得た後は、しっかり古紙回収へお願いしたい。(P)


9月23日(水)

●大きくなったススキの穂が風に揺られ、夕焼けの中をトンボが飛び交う。函館の最低気温は10度を下回るようになってきた。上空には大きな積雲が漂うものの、季節は秋本格化だ▼スポーツでは高校生の新人大会などが盛んだ。味覚では七飯でリンゴの収穫作業が本格化し、江差追分全国大会も大盛況。紙面も秋の話題が満載になってきた。だが、昨年から道南の夏や秋に多く接近、上陸する台風の話題がない▼今年は夏の長雨や低温の影響はあったが、強風による、収穫期を迎えた農産物への大打撃は今のところ発生していないようだ。気象庁の15日現在の速報によると、今年の台風の発生数は15で、国内への上陸は昨年からゼロが続いている。今年9月に入り、本州の300㌔以内に接近したのはわずか一つ▼8、9月には例年と変わらない9つが発生しているが、太平洋側の東や台湾の西などに大きくそれている。本来この時期の多くは九州や本州に上陸後、日本海に抜け強い勢力を保ったまま本道へ来る。中旬とこのシルバーウイークが明けたころの被害が多い▼忘れてならないのは1954年の15号、洞爺丸台風だ。死者1430人(洞爺丸は1155人)の海難大惨事が発生したのは26日である。今年も同日午前10時半から、北斗市七重浜の「台風海難者慰霊碑」で慰霊祭が行われる。穏やかな秋の天気が続き、55年の歳月は経っても悲劇は風化することはない。(R)


9月22日(火)

●ファンの願いもむなしく、国民的漫画「クレヨンしんちゃん」の作者、臼井義人さんは帰らぬ人となってしまった。死因についてはまだ不明の部分が多いが、登山中の転落死の可能性が高いという▼現場となった荒船山(1423メートル)は日本二百名山に選ばれ、登山コースも整備されていることから、初心者も楽しめる山として人気が高いという。臼井さんもこれまで何度かこの山に登った経験があり、今回は日帰りする予定だったという▼常に締め切りに追われる職業の漫画家にとって、大自然を満喫できる登山はストレスの発散には最適だったのだろう。しかし、安全なルートを一歩踏み外せば、人の命を一瞬で奪う断がい絶壁など多くの危険が待ち構えているのが山の怖さでもある▼山での遭難や事故死といえば、以前は危険な冬山や空気の薄い高所に挑む本格的な登山家の悲劇が思い浮かぶ。しかし、今年7月にトムラウシでの遭難事故で犠牲になったのは、本州からの旅行ツアーに参加した一般の高齢者ら9人。山菜採りで命を落とすのも、大半が高齢者だ▼この背景には、アウトドアブームや健康ブームに乗った高齢者の間での登山人気の高まりがある。きちんとしたガイド役の下、入念な計画準備に基づいて楽しむ登山には何の問題もない。大自然には、常に死の危険が潜んでいることを決して忘れることなく、二度と悲劇を繰り返さないでほしい。(U)


9月21日(月)

●「うれしいような、かなしいような」。こう言ったのは、きんさん・ぎんさんの愛称で親しまれた双子姉妹。成田きんさん、蟹江ぎんさんは国民の人気者だった。「うれしいような—」は二人が百歳の誕生日の感想を聞かれたときの答えだ。1992年新語・流行語大賞(現代用語の基礎知識選)の語録賞にも選ばれた▼きんさん、ぎんさんはそれぞれ107歳、108歳で亡くなった。大往生である。この二人を知らない子供たちもやがては老いる。そのころの平均寿命はどこまで延びているのだろう。100歳以上は当たり前で、それが長寿と呼ばれない時代かもしれない▼今年初めて、100歳以上の高齢者が全国で4万人を突破した。過去最多を39年連続で更新しているという。男女別では、女性が全体の86%以上を占めた。道南の100歳以上は渡島、桧山両管内を合わせて174人。内訳は女性158人に対し、男性はわずか16人▼女性はなぜ長生きなのか—。各方面で盛んに研究されている。いくつかの説も根拠に乏しく、これといった結論は出ていない。科学的に解明されれば、長寿社会の中で男性が今以上の元気を発揮するかもしれない▼医療の進歩は著しい。元気なお年寄りはますます増えていくことだろう。超高齢社会への備えに不安が残る中、鳩山新政権に寄せる国民の期待は大きい。将来のきんさん・ぎんさんにはやはり笑顔であってほしい。(K)


9月20日(日)

●江差追分が心に響くのはなぜだろう。「海に向き合い、のどを鍛え、腹の底から声を出していると、いつかしら唄の中にさまざまな思いが宿ってくる」。だからこそ「その人その人の人生が節の中に自然と浮かび上がってくる」▼江差町のホームページで紹介されている専門家の言葉だ。この民謡が広く愛される理由についても、次のような説明がある。「労働や生活、そして人の情愛の哀感も厳しさも美しさもすべて折り込まれている」▼江差追分の起源は正確には分かっていない。一説によると、信州の馬子唄と伊勢松坂節の二つを母体とし、それに北前船で運ばれたさまざまな唄の要素が加わった。漁場とは無縁の唄が「海の調べ」に変化した過程を想像するだけでも楽しい▼江差追分には前唄、本唄、後唄がある。よく知られる「かもめの鳴く音に ふと目を覚まし あれが蝦夷地の山かいな」は本唄である。この唄にはやはり江差の潮風が似合う。第47回江差追分全国大会は20日が最終日。できれば町内の会場で聞きたいが、インターネットの中継(町のホームページから入ることができる)を楽しむのも一興だ▼ジャンルを問わず大量の楽曲が日々生み出され、そして消えていく。人々に長く愛され、うたい継がれるものはそう多くはない。琴線に触れ、共振する。優れた音楽に理屈はいらないのかもしれない。江差追分にもまた心を動かす何かがある。(K)


9月19日(土)

●携帯電話でメールを打つのが苦手だ。若者の素早い指の動きを見ていると、年齢の差を感じさせられる。だが、感心できるのはそこまで。自転車のペダルをこぎながら、視線は携帯電話に—という光景を見掛けることが多くなった▼曲芸に近い行為である。制服姿の中学・高校生が目立つ。器用に人や車を避けているうちはいい。メールに熱中すれば大事故につながる。怖いもの知らずの運転が、他者をも巻き込む惨事になるという当たり前のことを再認識してほしい▼函館西交通安全協会が実施した「交通安全標語コンクール」で審査員を務めた。小学生低学年、同高学年、中学生、高校生、高齢者の各部門に計429点もの応募があり、関心の高さをうかがわせた▼応募作品の中には自転車上や歩行中のメールに警鐘を鳴らすものが何点かあった。「メール見て よそ見してたら もう遅い」(小6)、「そのメール 明日打てない 死のメール」(中1)、「片手乗り ケータイ見るより 人を見ろ」(高3)▼秋の全国交通安全運動が21日に始まる。30日までの期間中、道警函館方面本部、函館中央署、函館西署合同の啓発運動が多彩に展開される。運動の重点は高齢者の交通事故防止、飲酒運転の根絶など。ほかに自転車の安全利用の啓発も行うが、携帯電話の使用についてもぜひ触れてほしい。交通安全運動にも時代に即応した指導が求められている。(K)


9月18日(金)

●青春の孤独や絶望、反逆のシンボル。失恋からマリファナや酒におぼれ、暴れたといわれるジェームス・ディーン。半世紀も前に主演した映画に共感した。薬物は治療薬の一つで、まだ“薬物汚染”と言われなかった▼戦時中に「仕事がはかどる」と軍需工場などで使われていた覚せい剤。20年前の愛くるしい笑顔、元気いっぱいの歌声は、アイドルを目指す少女らのあこがれだった。覚せい剤取締法違反容疑で摘発され、17日夕の保釈後に記者会見した「のりピー」からは純情派のイメージは消えていた▼薬物追放のイベントにも出ていたのに。今、戦後3度目の薬物乱用期といわれ、芸能界、大学生、力士などの事件が続出。好奇心から近づく若者、家庭の悩みから手を出す主婦も…。今年上半期の摘発は前年の21%増で最悪のペース▼自然の植物には身体の傷を治す力がある。例えば、道端のヨモギをもんで傷口にすり込むと痛みは消える。でも、大麻などは“こころの癒し”にならないばかりか、吸引を繰り返すと生命に危険を及ぼす▼今はディーンらの“不良ぶり”にあこがれる時代ではない。保釈金を積めば出てこれて、初犯なら執行猶予のケースが多い。厳罰も必要ではないか。「子どもに会いたい」という愛情があったら、覚せい剤に手を出さなかったはず。先日、函館の中学生が街角で「薬物乱用防止」を訴えていた。(M)


9月17日(木)

●衆院本会議場に響く祝福の拍手。報道陣のカメラから一斉に放たれるフラッシュの光。第93代総理大臣に決まった民主党の鳩山由紀夫氏が、同僚議員と握手を交わす。その表情からは、新生・日本の船出への決意がにじむ▼北海道初の首相誕生。衆院議長席には同じく道内選出の横路孝弘氏が座る。早い時期からこの光景を見通せた人は多くはないだろう。自民党による失政、民主党の衆院選での圧勝、そして政権交代。首相指名の映像に触れ、「政治は生き物」の感を強くした▼政治の世界に「もしも」はない。それを承知で仮の話をするのは野暮というものだが、少し気になることがある。もし自民党政権が続いていたら—。本道初の首相の座は誰が射止めていたかということである▼中選挙区の時代、本道5区(十勝・釧路・根室・網走管内)の選挙戦を取材したことがある。自民の中川昭一、武部勤、鈴木宗男の各氏らがしのぎを削った。将来の首相候補と言われた中川氏は、今回の衆院選で落選。武部氏はかろうじて復活当選を果たし、鈴木氏は新党大地の党首として独自の政治路線を歩んでいる▼「生き物」であるがゆえ、「一寸先は闇」。これが政治の常だ。政権交代が将来繰り返されることになれば、本道から第二、第三の首相が輩出されることもあり得る。「ついにきょう、新たな歴史がつくられた」。鳩山首相の言う歴史はほんの1ページにすぎない。(K)


9月16日(水)

●地理学の学会で以前、興味深い発表を聞いた。鍾乳石から年輪のようなデータを取ることで、平安—鎌倉時代は温暖で、江戸時代は寒かったという東アジアの気候変動の事実が裏付けられたという▼別の学者は湖沼の堆積(たいせき)物の分析結果を発表した。人間がもたらした産業革命以後と、それ以前の環境変動のデータを得ることで、今後の気候変動などさまざまなことを予測できるという▼産業革命後、劇的に増加した二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが地球温暖化の原因とされる。しかし、別の市民向け講座である学者はこう言った。「それは100%決まったわけではなく、学界にも異論がある」▼その先生の説にも、なるほどと思った。そうでなければ産業革命前の平安—鎌倉時代が暑く、江戸時代は寒かったという説明がつかない気がする▼民主党の鳩山由紀夫代表は、温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する考えを示した。企業の生産活動にも影響が出るため、産業界からは疑問や反論が出ている。目標の達成には国民も相当額を負担し太陽光発電やエコカーを導入しなければならない▼温暖化の原因が、二酸化炭素にあるのか。さらなる科学的裏づけが必要だし、環境問題を政治の“道具”にしてはならない。しかし氷河が解け、海面が上昇し、異常気象が続いているのは事実。地球の悲鳴に対し何ができるか、英知の結集を。(P)


9月15日(火)

●イチロー選手(米大リーグ・マリナーズ)らしいヒットだった。9年連続200安打の大記録達成はショートへの内野安打。一塁を駆け抜けた偉大な日本人選手に、敵地レンジャーズのファンからも惜しみない拍手が送られた▼「解放されましたね」。試合後に会見したイチロー選手のコメントだ。まだ磨く部分はあるか—。この問いには、「時々崩れる人間性を磨いていきたい」とユーモアを交えて答えた▼あるときはシンプルに。あるときは哲学的に。「イチロー語録」は多彩だ。その一例が単行本「イチロー262のメッセージ」(ぴあ)に収められている。「ただいい結果だからと自分を認めていたら、今の僕は無かった」「試行錯誤は自分の型を見つけられない不安の証」▼イチロー選手は天才か、と問われれば、それを否定する人は少ないだろう。人並み以上の努力が天賦(てんぷ)の才を開花させた。そう言う人もいるかもしれない。イチロー選手の言動を見聞きする限り、どれもが正解のような気がする▼幼少のころのイチロー選手は、バッティングセンターに通い詰め、センスを磨いた。それらはやがて独特の「振り子打法」として結実する。自分流を貫く姿勢は、日本、世界の球児の目標となった今も変わらない。イチロー選手はこうも言う。「憧れを持ちすぎると自分の可能性を潰す」。伸び伸びと思うままに—という球児たちへのメッセージにも聞こえる。(K)


9月14日(月)

●9日に世界同時発売されたビートルズのリマスターアルバムの売り上げが、日本国内だけでもすでに100万枚を突破する勢いだという▼深刻なCD不況が叫ばれる中、今から40年も前に創られた音楽が、未だに多くの人々を熱狂させている事実には、ビートルズの偉大さをあらためて再認識させられる▼しかしこれは、ビートルズに限ったことではない。最近のCDショップで洋楽コーナーの大多数を占めているのは、発売から数十年を経ても色あせることのない「名盤」と呼ばれてきた60年代から80年代の作品たちなのだ▼6月に亡くなったマイケル・ジャクソンの「スリラー」や「バッド」などが、再びチャートの上位をにぎわせたことは記憶に新しい。また、先ごろ来日した「サイモン&ガーファンクル」や、テレビドラマやCMを通じて再ブームとなった「カーペンターズ」「アバ」「クイーン」のアルバムなども、コンスタントに売れ続けているという▼しかも購入している年齢層は、青春時代を懐かしむ中高年のみならず、これらの音楽に初めて接する10代20代の若者にまで広がっているという。まさしく、いい音楽は決して古くならないことの証明だろう▼果たして、現在最先端の音楽シーンの中で40年後も親しまれ続けるアーティストは存在するのだろうか。相変わらずビートルズが一番人気のままなら、ちょっと寂しいかもしれない。(U)


9月13日(日)

●顔を少し傾けて笑みを浮かべる祖母の柔らかく、優しげな表情——ねんりんピックの長寿社会・小学生の絵コンクールで最高賞を受けた函館の児童の作品。世界屈指の長寿国。100歳以上の高齢者が全国で4万人を超えた▼老いとは衰退経過ではなく、花の心まで理解できる円熟境だ(幸田露伴)。ねんりんピックの舞台裏には“悲劇の陰”が…。そう、夫婦間の介護問題だ。先ほど、裁判員裁判で60歳の妻の首を包丁で刺し殺そうとした63歳の男性に執行猶予付きの判決(山口地裁)▼男性は脳出血で倒れた妻を13年も介護。「僕が好いた人。今でも好きです」と声を詰まらせ、死にきれず自首。殺人未遂は重大犯罪だが、介護疲れで追い詰められた心境に、裁判員は「自分にも起り得る問題で悩んだ」といい、理と情のはざまで揺れた▼長寿社会の介護問題は最も重要な課題。ベッドや車いすから抱き上げたり、「お元気ですか」など会話ができたり、介護予防の体操をする人間型ロボットが施設などで活躍しているようだが、個人住宅への導入にはまだ時間がかかる▼介護ロボットでは長年連れ添った相手の心まで把握できない。「自分自身に情けなく、妻を殴ったり、けったりしました」(男性介護者の体験冊子)。常に自責の念が付きまとう。でも、児童の絵のように「優しく柔らかい表情」の回復を念じるしかない。シルバーウイークだ。介護問題を熟考しよう。(M)


9月12日(土)

●函館に住んでいて久しぶりに誇らしい気持ちになった。民間のコンサルタント会社「ブランド総合研究所」(東京)が発表した「地域ブランド調査」のランキングで、函館が初めて全国トップに輝いたという。「魅力的な街」の定評を、数字をもって立証した形だ▼調査は、全国3万人以上に対してインターネットで行われた。函館を「魅力的」とした回答は全国トップの85・1%。地域資源評価では「食事がおいしい」「買いたい土産や地域産品がある」の項目で1位。住民からみても、なるほどと思わせる結果である▼一方で、思わず首を傾げる項目も。街のイメージを挙げてもらった「イメージ想起率」で、8割以上が「観光・レジャーのまち」と答えた。観光は分かるが、レジャーには少し疑問が残る▼函館には、いまブームの動物園が存在しない、大型の遊園地もない、水族館の建設構想も消えた。「あくまでもイメージ」と言われればそれまでだし、大型レジャー施設を求めること自体、緊縮財政のこの時代に逆行する。ただ、レジャーのイメージを持って来函した観光客をがっかりさせていないか。そんな不安がよぎる▼函館観光の入り込みは減少傾向にある。繰り返し訪れてくれるリピーターを増やす。このことが第一の対策ではないか。レジャー施設にこだわることはない。近隣市町村との連携、接客態度の向上…。やるべきことは少なくない。(K)


9月11日(金)

●函館空港のロビーで函館出身の大道芸人・ギリヤーク尼ケ崎さんと会った。「この前の選挙で、何で投票が締め切られた瞬間に当選確実が分かるの。速報とはいえ、開票作業する人の楽しみが無くなるのでは」と地声の大きいギリヤークさんの話は周囲の笑いを誘った▼インターネット、携帯電話での情報取得が盛んになり、あらゆる速報が提供されている。選挙速報、緊急地震速報、企業にとって倒産速報、受験生にとって試験の解答速報。日常的に最もポピュラーなのはニュースとプロスポーツの結果速報だ▼スポーツ中継をするテレビ局では、ほかのメディアに対し、試合結果は放送が終わるまで速報として流さないように呼び掛けているという。事情で生中継ができないゴルフなどである。結果を知り、視聴率が下がるのを避けたいようだ▼とは言え、速報で結果を知ったので、華やかなシーンをテレビで見たいという人もいるだろう。高校時代のコラム子はプロレスファン。住んでいた地域のテレビ中継は3週間遅れの放送。新聞や雑誌で誰が勝ったかを知った上で、テレビでダイナミックな決まり技を見るのを楽しみにしていた▼11日から秋の高校野球函館支部大会が始まる。道高野連の速報は充実しており、勝敗はリアルタイムに伝わってくる。球児たちの青春ドラマを伝えるのは新聞の役目。まずは結果を知り、翌日は新聞に見入ってもらえれば。(R)


9月10日(木)

●「私たちみんな宇宙人」「太陽をパクパク食べている」「眠っている間にUFOに乗って金星に行った」「前世でトム・クルーズと一緒だった」。次期総理になる鳩山由紀夫代表の幸夫人の“オカルト発言”が海外メディアに注目されている▼由紀夫氏が「宇宙人」と呼ばれる理由は「理解されるまで時間がかかる。こうしたいああしたいと主張しないから」(学友)という。キリストの絵画にUFOらしき物体が描かれていることから、釈迦もキリストもナポレオンも宇宙から600年周期で派遣されたという説…▼ナポレオンの次に派遣された由紀夫氏は日本の救世主となるだろうか。「宇宙の日」(17年前、毛利衛さんが初めて飛び立った日)の前日の11日未明に、米スペースシャトル退役後の主役になる日本の補給機を初打ち上げ▼幸夫人が「美しく緑あふれる場所だった」という金星をはじめ宇宙探査の拠点ISSの完成に欠かせない日本の大仕事だ。カラオケの十八番は「おふくろさん」、ISSで熱唱する「翔びたて平和の鳩」が聞こえてくるようだ▼座右の銘は「至誠通天」。39歳で初当選。「工学的発想で日本の政治を改革」「経済並びに幸福感の地域格差の是正」を公約していた。今回のマニフェストにつながっている。北海道から初の総理大臣は大歓迎。家訓の友愛精神で、北海道の発展、日本の躍進、世界の共存、宇宙の平和を目指して全力投球してほしい。(M)


9月9日(水)

●米同時テロから11日で8年。ニューヨークでは当日、在留邦人の有志による犠牲者追悼コンサートが開かれる。会場で合唱される曲がある。同時テロで長男を亡くした夫婦が作曲した「今も一緒に」である▼この曲の元になっている英語の詩は、新井満さん訳詞で知られる「千の風になって」の原詩と同じという(8日付読売新聞)。愛する人が亡くなっても、いつも自分と一緒にいてくれる—。そんな共通の思いが、それぞれの曲や詞に込められている▼冠婚葬祭互助会の「くらしの友」(本社東京)が、「団塊世代の葬儀観」をテーマにアンケート調査を行った。1947—49年生まれの400人から寄せられた回答で「自分の葬儀で流してほしい曲」(葬送曲)の1位は「千の風になって」だった▼ちなみに2位は同数で「川の流れのように」と「四季」。アーティスト別ではビートルズがトップだった。同社によると、最近は葬儀の際、故人が好きだった音楽を流す傾向がある。そのせいか、普遍性があるクラシックにも多くの票が集まった▼「千の風になって」がなぜ多くの人に支持されるのか。「私のお墓の前で泣かないでください」で始まる歌詞はもちろん、その繊細な旋律も一つの魅力だろう。石川啄木の短歌に曲を付けた新井さんは「感動がある文にはメロディーが付けられる」と語る。「千の風になって」も長く歌い継がれる曲であってほしい。(K)


9月8日(火)

●硬い表現も、言い換えによって身近なものになる。その一例が「接遇 (せつぐう)」。「もてなし」や「接待」の方が分かりやすいし、サービス業に限れば「接客マナー」とした方が、より通じがいい▼フジテレビの番組「エチカの鏡」(道内はUHB)が、ある接客講習に密着している。舞台は函館の人気洋菓子店。講師を務める平林都さん(エレガントマナースクール代表)は、その方面で有名な人らしい。番組では「伝説の女講師」と紹介される▼何が伝説かというと、講習の厳しさにおいてだ。実際に「笑え!」「前を見ろ!」「泣くな!」と女性店員らを怒鳴りまくる。「スパルタ式」という言葉が現代に通じるかどうかはともかく、体で覚えさせるという昔ながらの手法である▼この番組には続編がある。自分流を貫く平林さんと、それに猛反発する一人の店長の「全面対決」が次回の見どころという。「スタッフのこれまでの接客と講習後の接客対応を比べてください」。同菓子店のホームページにある自信の一文が興味を倍加させる▼「○○養成講座」「○○強化研修」—。民間企業の社員らを対象にした講習は数多い。何度か受講した自身の浅い経験から言えば、これらが職場での実戦に役立つことは意外と少ない。さて、机上にとどまらない「—女講師」の力勝負が、現代っ子である函館の店員たちにどこまで通用するか。結末が楽しみだ。(K)


9月7日(月)

●ボクシング業界のお騒がせ、亀田三兄弟の長男・興毅が、5日に行われた試合で、メキシコの選手に5回KO勝ちを収めた。この試合自体は世界タイトルとは関係していないが、11月末に予定されている内藤大助とのWBC世界フライ級王者戦への前哨戦として、十分手応えのいく内容だったようだ▼亀田兄弟といえば、次男・大毅が2年前の内藤との世界戦で反則技を連発し惨敗。この時、セコンドについた父・史郎氏と興毅が反則を指示したのではないかと物議をかもしたのは記憶に新しい▼対戦相手を馬鹿にしたり茶化したりする言動で、以前からアンチが多かった亀田兄弟だったが、この敗戦が決定打となり一気に国民全体を敵に回す格好に。逆に「国民の期待」に応えた内藤は一夜にしてヒーローの座を手にすることになった▼この試合の直後から、「弟のリベンジ」をかけた内藤と興毅の対戦を望む声は少なくなかった。内藤は「あんな反則を受けるなら、亀田兄弟との試合は二度としたくない」と公言していたが、2年の時を経てようやく夢の対戦が現実になろうとしている▼世間的には当然、内藤を応援する声が大きいだろう。筆者もあの憎めないキャラクターの彼が再びチャンピオンベルトを巻く姿を見たいと願う一人だ。ただ、天国も地獄も経験した22歳の若者が、どのように成長した姿を見せてくれるのかも楽しみな一戦である。(U)


9月6日(日)

●ダム建設の大きな目的は治水と利水。大雨による河川はんらんや洪水を防ぐのが治水、生活用水や農業用水を蓄えるのが利水だ。洪水と水不足という対極の被害をダム湖が防いでくれる▼函館市の松倉川にも10年以上前、ダム建設計画があった。治水と利水の目的で道が主体となって整備し、総事業費は240億円。函館市も利水目的で相当額の負担を予定していた▼松倉の問題は、ダムありきではなく、本当に必要なのは何かという市民を巻き込んだ議論に発展した。水を蓄え、洪水を防ぐ山の緑が環境破壊で失われていないか、市民も節水に努めることが必要ではないか…。議論の末、道は計画を中止した▼「首都圏の水がめ」として建設が進められてきた群馬県の八ッ場ダムについて、国土交通省は本体工事の入札を延期した。八ッ場ダム中止を掲げる民主党が総選挙で圧勝したのだから、霞が関の官僚も新政権の意向は無視できないに違いない▼しかし、総事業費約4600億円のうち約3200億円が執行済みで、東京をはじめ地元は推進で合意。ダム湖に沈む住民の移転補償なども進んでいる。事業が未完で終われば、投じた税金の責任は誰が負うのか▼民主党の公約実現には、将来的に年間16・8兆円が必要という。「無駄な公共事業」として少しでも財源を確保したいだろうが、本当に無駄な事業なのか、野党自民党との今後の論戦は必要だ。(P)


9月5日(土)

●函館市内の西部地区に住んでいた。窓からは弥生小学校の校舎が見えた。同校は選挙の投票所としても使われた。散歩がてら投票に行くと、狭い校内が有権者で混雑している。決して便利ではない。それでもなぜか満足して帰宅した記憶がある▼その校舎は重厚にしてモダン。1938(昭和13)年に建てられたというから、人間でいうと古希をすぎたあたり。投票のときの満足感は、歴史の空気に触れたことによるものか。その校舎がこの秋に取り壊される。長い間ご苦労さま—とねぎらいたい▼前身の弥生尋常小では、歌人の石川啄木が代用教員を務めた。1907(明治40)年のことだから、もちろん現校舎に啄木の足跡はない。それでも彼が生活していたころの息吹が感じられるから不思議だ。新築の校舎ではこうはいかない。函館有数の古建築が姿を消すことはやはり寂しい▼期せずして「国際啄木学会」の函館大会がきょう5日に始まる。函館での開催は93年の第4回以来16年ぶり。当時、啄木が函館に滞在したのはわずか4カ月。それでも彼は「死ぬ時は函館で」と言い残したという▼その強い思いが、いくつかの節目を一本の線でむすんだのか。今回の啄木学会は創立20周年記念大会として開かれ、折しも函館は開港150周年の記念の年。加えて、弥生小の一つの歴史が幕を閉じる。これに何かの縁を感じるのは、感傷的にすぎるだろうか。(K)


9月4日(金)

●豪雨の原因は「にんじん雲」だという。湿舌(しつぜつ)で刺激された前線周辺で発達する積乱雲がニンジンを横たえたような先細の形になり、細い部分で豪雨や雷を伴うようだ。このためか、日照不足、降雨多量の今夏だった▼函館海洋気象台によると、8月の平均気温は管内の全観測地点で平年より低く、2・5倍から3・5倍の降水量を記録。6月から8月の日照時間は348時間で126時間も少なかった。当然、お米や夏野菜など農作物の生育に大きく影響▼道内の水稲は平年より5日遅れ、タマネギ2日、豆類3日、それぞれ遅れている(1日現在)。今、ブームの家庭菜園も順調なのはキュウリくらい。疲労回復に効果があるキュウリの酢の物は堪能したが、ジャガイモ、トマト、ニンジンなどは思わしくない▼日照不足で涼しかったせいか、8月に入ってヒグマの出没も急増し、道内の目撃は160件を超えた。冬仕度の準備に入ったのか、農作物や家畜への被害も出ている。八雲ではデントコーン畑が荒らされたり、国道で乗用車と衝突したり▼異常気象は秋サケにも影響。稚魚を放流した時期の海水温が低かったためか、産卵で遡上してくる秋サケが減る見込みで、桧山支庁などは河口付近でのサケ釣りを自粛するよう呼びかけている。これから、きのこ採りのシーズン。「にんじん雲」を見て、里に出没するヒグマに襲われないように、ご注意を。(M)


9月3日(木)

●函館入りした鳩山由紀夫氏を取材したことがある。何年も前のことで、当時は民主党代表という肩書きはなかった。それでも政界の重鎮には違いない。街頭での演説には大勢の人が集まった。その後、市内のホテルで開かれた会合でも、全国紙の鳩山番や地元紙の記者に囲まれた▼取材で感じたのは、政治家としてのおごりを全く感じさせない鳩山氏の性格だ。市民や地元政財界の関係者、記者の誰に対しても態度が変わらない。多くの修羅場をくぐる政治家の中で、これだけ表と裏の違いを感じさせない人も珍しいのではないか▼衆院選での民主党圧勝の余波が連日、新聞やテレビをにぎわせている。ふとテレビ画面を見ると、鳩山氏の性格について選挙関係者がインタビューに応えていた。「誰に対しても分け隔てのない人」という評価を聞いて、やはりと思った▼その鳩山氏が北海道初の首相になることが確実だ。16日召集の特別国会で第93代首相に選出される見通しという。党の圧勝におごることなく、いつも通りの淡々とした表情で首相指名を受けてほしい▼これに先立ち、初めての組閣の顔ぶれがあちこちでささやかれている。先行する民放テレビ各社は、あの手この手の予想合戦を展開する。これはやり過ぎだろうと思いつつ、つい見てしまう。ただし、政治のショー化はここまでである。国民生活にかかわる難題解消という宿題がすぐそこに控えている。(K)


9月2日(水)

●「クーポン券」。その語には、消費者の心理をくすぐる響きがある。「切り取り式の券」を指すクーポンは、旅行・宿泊券といった昔ながらのものにとどまらない。むしろ今は、商品の割引券としての意味合いが強いようだ▼新聞チラシやフリーペーパーにはクーポン券付きのものが増えている。切り取った複数の紙片が常に財布の中に入っているという人も少なくないだろう。携帯電話を店頭の読み取り機にかざす。それだけで割り引きの対象になるという便利なシステムもあると聞く▼そのクーポン券がついにがん検診にまで進出した。一定の年齢に達した女性に、政府が乳がん・子宮頚(けい)がん検診の無料クーポン券を配布。「クーポン券はお得」という意識が根付いたのを待って、それを予防医療の戦略として生かす。批判されることの多い政府の政策としては、なかなかの妙案といえる▼函館市でも、対象となる延べ1万963人に対して無料クーポン券を発送した。来年2月まで受診が可能という。ちなみに同市では、2007年度の乳がん受診率が9・2%と全国平均を下回っている▼「女性なら、受けなきゃソン! がん検診」。クーポン券に同封される検診手帳の呼び掛けだ。無料で検診を受け、異常がなければそれに越したことはない。がんの早期発見につながることもあるだろう。くれぐれもクーポン券入りの郵便物を見逃さないように。(K)


9月1日(火)

●8月初め、道東のある街に行ったときのこと。JRの駅構内やその周辺で、明らかに仕事に就いていないと見られる何人かを見掛けた。この街では厳冬期にも同様の光景に出くわす。公共施設に長時間いることで外の寒さをしのぐという▼道内の雇用悪化は深刻だ。函館公共職業安定所が発表した7月の渡島・桧山管内の雇用失業情勢をみてその感を強くした。有効求人倍率が前年同月を0・18ポイント下回る0・29倍にまで降下。0・30倍を割り込んだのは実に9年半ぶりとなる▼計算上は、仕事を求める10人に3人未満しか仕事がない。同職安はこれを「危険水域」と表現した。「非常事態」に置き換えてもいい。特に気掛かりなのは、函館観光の生命線ともいえる宿泊・飲食サービス業の新規求人が大きく落ち込んでいることだ▼仕事に就いても低賃金を余儀なくされる層を「ワーキングプア」と呼ぶ。数年前にはその過酷な実態が社会問題化した。改善の気配がみえないまま、今はその仕事にすら就けない人たちが増え続ける。状況は好転するどころか、悪化の一途をたどっている▼仕事に就き、働くという日常が続くと、失業者の存在は忘れがちになる。特に、観光客であふれる函館の風景は、景気の良しあしを誤認する材料にもなりかねない。仕事がない人たちは相当数に上る。このことを再認識することが、対策の第一歩ではないか。(K)