平成22年10月


10月31日(日)

●「小5の娘のいじめで悩んでいます。ますますエスカレートしているみたい。いじめっ子も傍観者も最低。いじめを見て見ぬ人はいじめっ子と同じ」(ある「いじめサイト」から)▼マフラーが恋しくなる晩秋。棒針編みで編んだのだろうか。家庭科好きの群馬県桐生市の小6女児が、母親にプレゼントしようと編んでいたマフラーを自室のカーテンレールにかけて首をつり絶命。毎日のように「汚い」「あっちへ行け」と、いじめられていた▼いじめが始まったのは引っ越してきた2年前。特に給食の時間。今秋から給食は決められた席ではなく、好きな人同士で食べるようになったが、いつも女児はひとりぼっち。欠席が多くなった▼8月には高槻市で小3女児がベランダの物干し竿にタオルをかけて、折り畳み式の椅子に乗って首をつり絶命。この女児も1月に転居してきたばかり。女児の道具箱や教科書、ドリルなど12冊に「しね」という落書きがあったという。昨年度、自殺した児童生徒は165人。年々減っているが…▼桐生市の女児の自殺について保護者会で、いじめの有無を問われた校長は「プライバシーの問題」と繰り返すだけ。果たして、いじめはプライバシーの問題で片付けられるものだろうか。どの親も「わが子がいじめられたら、どう対処したら…」と不安だ。学校は真剣に取り組んでほしい。母親に暖かいマフラーを編んだ女児が痛々しい。(M)


10月309日(土)

●5年ぶりにクライマックスシリーズ進出を逃し、例年より早いシーズンオフに物足りない思いをしていた道内の日本ハムファンに、ドラフト会議から驚きのプレゼントが届いた。あの「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹投手の入団交渉権だ▼齋藤投手と言えば、田中将大投手率いる駒苫の甲子園3連覇の夢を打ち砕いた早実の元エース。当時の“王子”は、道民の願いの前に立ちはだかる“宿敵”にほかならなかった。来年はその彼の右腕に楽天のエース打倒を託すことになるとは、なんと不思議な巡り合わせだろうか▼大学生や社会人の指名が目立った今年のドラフトだが、ヤクルトからは甲子園に出場した小樽北照高の西田明央捕手と又野知弥投手が3、4位でダブル指名された。このうち又野投手は函館出身ということもあり、地元の関係者は歓喜に沸いた▼高校ではエースでありながら4番として通産35本塁打を放つなどマルチな活躍を見せた又野投手だが、プロでは打者に専念する見通し。同じく高校ではエースで4番だった中田翔選手(日ハム)のイメージと重なる▼しかし、超高校級と呼ばれた中田選手でさえ入団3年目にしてようやくその片鱗を見せるのが精いっぱいの厳しいプロの世界。又野選手にもまずは地道なトレーニングが科せられるだろう。それでもいつか大輪の花を咲かせることを信じて、郷土の金の卵の成長を温かく見守っていきたい。(U)


10月29日(金)

●奄美大島が未曾有の大水害に見舞われた。2時間の降水量が260ミリ(奄美市住用町)を記録、さらに降り始めからは1000ミリを超えたというのだから、自然現象の驚異というか、人間の手に負えない異常事態というか▼どれだけ科学が進歩しようと、人間は大雨や地震を止める術を持ち合わせていない。確かに警戒するために必要な自然のメカニズムの解明は進み、情報の精度も高まっている。しかし、時として、そのレベルを超える現実にも遭遇する。奄美災害もそうだった▼加えて奄美大島には道路や住宅などの被害が大きくなる理由がある。自然の宝庫を売りにするに値する山が多く、その山を縫うように幹線道路が走り、人家と山も近い。6年ほど前に訪れた際の感想でもあったが、山から平野部までが急なのである▼奄美大島でなくても、これだけの雨量となれば土砂崩れは避けられない。ただ、裾野がないだけ襲ってくる速さ、エネルギーが大きい。「あっという間に」という話は、その通りだろう。まさに雨に対し危険な地形と言えるが、そんな所は少なくない▼道南も例外ではない。10年ほど前の夏、八雲町の野田追橋が通行止めになった際、専門家から「渡島も、桧山も山と海が近く、土砂の流れ込みが速い地域」という話を聞いたことがある。ということは、奄美の災害は道南にも起こり得る出来事。「あっという間に」。この言葉を大事にしておきたい。(A)


10月28日(木)

●26日、函館に初雪が舞った。平年に比べ、7日早いという。ここ数日、知人との会話の多くは「寒くなりましたね」で始まる。酷暑に悲鳴を上げた、この夏の数カ月が遠い昔に感じる。季節は夏から冬へ。秋の存在感がこれほど薄い年は珍しい▼雪虫を見かけるようになると、数日中に初雪が降る—。単なる迷信ではない。今年もその通りになった。その姿は雪片がひらひらと舞う「風花」に似ている。よもや本物の雪が、「先を越された」と勘違いしたということはないだろうが、自然界の法則は驚きの連続である。そこで何が起こっていても不思議はない▼雪虫は地方によって綿虫、雪蛍などとも呼ばれる。科目は、はかなげな姿には似つかわしくない「カメムシ目ワタアブラムシ科」。卵からかえった雌は、卵ではなく幼虫を生み、その幼虫もすべて雌という「単為生殖」(処女生殖)で数を増やす▼子どもの頃、晩秋に自転車を走らせると、服にびっしり雪虫が付き、口の中にも容赦なく入り込んだ。手で払い落そうとすると、簡単につぶれて服にしみを作る。「雪の妖精」と言われる雪虫の、厄介者としての一面だ▼世界的な異常気象が叫ばれている。昨冬の函館は降雪量が多く、今夏は猛暑が続いた。予測の難しさは気象予報士泣かせでもある。さて、この冬は—。雪虫に聞いておくべきだった。「唇緘(くちと)ぢて綿虫のもうどこにもなし」(能村登四郎)。(K)


10月27日(水)

●「速記」の仕事場が次第に狭められつつある。誕生してから120年余り、文書の記録に大きな役割を担ってきたが、アナログからデジタルの時代になって、主役の座を譲り渡せと迫られている事例の一つともいえる▼会議での発言や講演などを正確に書き取ることは難しい。どんなに書くのが速い人でも話に追いついていかないからだが、それを現実にしたのが「速記」。言葉を簡単な符号で表すことで、聞き書きに対応できる文字ということだが、その数、80種ほど▼先鞭(せんべん)を切ったのは田鎖式と呼ばれる文字で、1880年代に生まれている。著名なのは衆議院式、参議院式、早稲田式など。専門学校が結構あったが、国会もしかり。衆議院と参議院が別々なのも理解に苦しむが、さらに無駄なことに、それぞれに養成所があった▼速記者の姿は国会中継などで見掛けるが、昭和の時代は重宝された技能者として職場も多かった。国会はもとより都道府県議会、さらには新聞社も。通信手段として電話しかなかった時代、記者が取材先で書いた原稿を受ける役割を担っていた▼しかし、時代の変化は次第に脱速記をうながし、衆参両院も数年前に養成所の募集を止めた。録音、パソコン入力が取って代わりつつあるが、個人の財産として「速記」を覚えることのプラスはいつの時代も同じ。改めて「速記」の力をかみ締める機会にしたい。10月28日は「速記の日」である。(A)


10月26日(火)

●週休2日制になって、新聞を活用するなど、学校の先生たちは授業や教材に工夫を凝らしているが、中には新聞を切り張りして「脅迫文」を作らせたり、「殺人数」を計算させたり、とんでもない授業をする先生が相次いでいる▼東京の小学校で23歳の女性教諭が3年生の算数で「人を殺す」というクイズを出した。「3人姉妹の長女が自殺した。次女は葬式に来た男子に会いたいと思った」「男子に会えるのは葬式」、児童が「妹を殺すの」と聞くと「それが正解」と▼女性教諭は「授業を楽しくするため、友人から聞いた質問を出した」という。愛知県の小3担任の男性教諭は「ここに18人の子どもがいます。1日に3人ずつ殺すと全員を何日で殺せるでしょう」と割り算の問題を出した▼同じく愛知県の高校の中間試験で校舎を舞台に「校長を殺害した教諭」を実名の選択肢で答えさせる問題が出た。山梨では小5の担任が道徳の授業で新聞を切り張りし、黒板の例文を再現させて脅迫文を作らせた▼55歳の中学校長はパチンコ店で24万円入りの財布を盗んだ。女生徒にゴキブリ駆除剤を食べさせたり、生物の授業で男子の口と鼻をふさいで失神させたり…。このところ、小中学生の暴力行為が目立つ。それに教諭が「殺人」や「不徳」という無神経な設問をだすと、子どもの暴力行為に拍車をかけるのでは。こんな命を粗末に扱う“手作り授業”は許せない。(M)


10月25日(月)

●かつてはディスカウントショップの専売特許だった「価格破壊」の言葉だが、今ではコンビニエンスストアにもごく当たり前のようにディスカウント商品が並ぶようになり、ちょっとやそっとの安売りでは驚かなくなった▼そんな中でも、際立って価格の下落が激しいのが「クラシック音楽のCD」。これらは、数百枚から数千枚単位の初回プレス分のみで廃盤となるものがほとんどで、「マスター」と呼ばれる音源は倉庫に眠ったままになる▼これに目を付け、マスターを破格の安値で買い取りCD1枚あたり3、400円で販売するメーカーが登場したのが10年ほど前。ファンにとっては、3000円近い値段で購入をちゅうちょしていた録音が気軽に入る夢の時代が訪れた▼その一方、新人音楽家たちには深刻な問題が生じている。評価が高く値段も安い名演奏家の録音が山ほどある中で、高価な若手演奏家の高価CDは、実力の有無に関わらず見向きもされない。そのため、欧米のステージで名前の通ったアーティストも、日本では無名というケースが増えている▼今や20代の若者にもクナッパーツブッシュやクレンペラー、フルトベングラーなど物故指揮者が大人気という。もちろん偉大な存在であることは間違いないが、未来のクラシック界を担う若手にも注目してほしい。投資の意味も含め、新録音のCDをせめて1000円前後で販売してもらえないだろうか。(U)


10月24日(日)

●“塩味ブーム”が続いている。特に人気があるのは、一見ミスマッチな菓子と塩の組み合わせ。若い女性などに「塩スイーツ」としてもてはやされているという。日本人の舌はつくづく欲張りだと思う▼フランス・ブルターニュ地方では、菓子に塩や有塩バターを使うことが多い。塩キャラメル発祥の地であり、日本の塩スイーツブームもここから始まった。今はアイスクリームやチョコレート、さらに大福やようかんといった和菓子も塩味が売れ筋と聞く▼菓子以外でも同様の傾向がみられる。古くから人気の牛タン、ホルモン、最近は天丼、カツ丼、そば、サイダーなど。ほんの一部だが、いずれも塩味への進出例だ。そして忘れてはならないのが、函館の代名詞の一つともいえる塩ラーメン。塩を使っためん類の先駆けとして、その知名度はほかを圧倒している▼函館の店では、ラーメンを注文すると黙って塩味が出てくる。ラーメン発祥の地という説があるほど、その歴史は古い。昨日や今日、塩味をうたった新参者とは違う、と威張る必要もないが、少し誇らしい気持ちにさせられる▼原材料や原産地を正しく記すなど、食用塩の表示に関する規約が今春施行された。これを逆手に取ってか、インスタントの塩ラーメンなどは塩の産地や特長を前面に押し出した商品がずらり。しかし、ブームはやがて去る。そこで生き残るのは、やはり函館の塩ラーメンであってほしい。(K)


10月23日(土)

●「こんなに来てくれている」。函館駅からベイエリア、元町などを散策していると、まだまだ函館は恵まれていることを実感する。夏のピークを過ぎ、10月も中旬から下旬になろうとしているのに、週末ともなると観光客でにぎわっている▼今年は新しい看板として「奉行所」が加わったこともあろうが、五稜郭の人出も際立って多く感じる。でも、どんな新名所が生まれようが、函館観光の揺ぎない主役は函館山。もっと厳密に言うなら「函館山からの夜景」である▼函館が通過型観光地を免れている理由もここにあるが、先日、その存在感を教えられる場面に出合った。別に盗み聞きしたわけではなく、聞こえてきたのだが、場所は札幌からの特急列車の中。前の席にいた年配の夫婦で、推察するところ関西から札幌への転勤族…▼初めての函館のようで会話が弾んでいた。雨の予報が外れて良かった、という話に始まって、函館に着いたら、まず塩ラーメンを食べて、夜は夜景のあとイカは欠かせないなどと。ところが、大沼を過ぎるあたりから、会話は急にしぼんできた▼車窓に激しく雨が当たり始めたのだ。「うわぁ夜景、駄目かな」「最高の楽しみなのに」「雨でも行くさ」。それが小降りになるや「大丈夫かもね」「セーフかな」と再び笑顔に。夜景を巡ってまさに一喜一憂。この夫婦が改めて教えてくれているのは函館山の、夜景の財産価値。足を向けては眠れない。(A)


10月22日(金)

●記録が破られて悔しいと感じる。そのこと自体が、俗人の証しなのかもしれない。記録に直接かかわる当人たちの多くは、逆に拍子抜けするほどさばさばしている。自らの仕事に対する誇りという精神的な支柱があるからだろう▼スイス南部のアルプス山脈で掘削が進められていた全長56・7㌔の鉄道トンネル「ゴッタルドトンネル」が、このほど貫通した。スイスとイタリアを結ぶ要所の完成には、約10年を費やしたという▼それだけなら素直に感心し、祝福もするところだが、青函トンネルが持つ53・85㌔の世界最長記録が25年ぶりに塗り替えられたとなると、地域住民として心穏やかではない。青函トンネルに関する展示物や看板に「世界一」の文字のある福島、知内の両町では、表記の変更も検討している▼ただ、19日付の本紙記事を見て安心した。「青函トンネルで駆使した技術は今でも“世界一”」のコメントに目が留まったからだ。福島町内の菊地謹一さん(72)は、青函トンネル貫通までの約20年間、工事に携わった元トンネルマン。その誇りと自信は今も色あせていない▼福島町出身の元横綱・千代の富士が持つ連勝記録が、現役横綱の白鵬に破られた。白鵬の快挙に拍手を送る千代の富士の「大人の対応」が話題になった。記録は抜かれても、自分史が書き換えられることはない。“プロの仕事”に参画した菊地さんの場合も、また同様である。(K)


10月21日(木)

●♪車じゃないのよ くま くま 歩けないけど踊れるよ…。宇多田ヒカルが歌う「ぼくはくま」は「おはよう、まくらさん」とあいさつもする。でも、先日、新聞に載った写真の親子のヒグマは40分も小学校側の林や商店街に出没▼沢山の車が行き交う斜里町の商店街を我もの顔で徘徊。その前に学芸会の練習中だった児童が3頭を目撃。2頭は射殺されたが、母親の耳には4年ほど前に取り付けた標識があったという▼今年は全国的にクマが出没、クマとの「危険な出会い」が後を絶たない。本州はツキノワグマ。介護施設や学校に入り込んで、看護師や校務員、農作業に出掛ける主婦がかまれたり…。富山県では海岸で釣りをしていた男性が襲われた▼昔は見通しのよい採草地がバリアーとなって人里に出没しなかったが、今は奥山と市街地の境目がなくなって人間もクマも“共生の道”を求めて右往左往? 地球温暖化のせいか、山の柿やクリ、ドングリなどのエサ激減がクマ出没に拍車をかけている▼♪ある日 森の中 クマさんに出会った…。人間が捨てた残飯なども市街地に引き寄せているとしたら、いったん味をしめたクマは奥山には戻らないだろう。本州のクマに比べて大きいヒグマは恐ろしい。出会った時のため登下校や山菜取りにはランドセルや腰にクマよけの鈴をつけなければ。「森のくまさん」は出会った女の子に逃げるよう忠告しているが…。(M)


10月20日(水)

●幸か不幸か、学習塾が一般的ではない時代に生まれ育った。その代わり、書道と珠算を習わされた。習い事が一種のブームだった時代。悪友たちとも机を並べた。真剣に半紙やそろばんに向かった記憶がない。大声ではしゃぎ、いつも先生を怒らせていた▼ふまじめだった少年時代のつけは、社会人になって回ってくる。「ミミズがはったような字」とは言い得て妙である。書道の基本とされる「とめ・はね・はらい」をおろそかにした代償か。こんなことならあの時…と後悔しても、時は戻ってくれない▼先日、松前町で開かれた地域創造フォーラムに出席した。イベント名の「博古知今セミナーin松前」を毛筆でしたためた大きな幕が、舞台上段で異彩を放つ。松前高校の8人が手掛けたという。生命の宿った見事な筆さばきに感嘆した▼漫画「とめはねっ! 鈴里高校書道部」が人気を集め、書道に対する若者の見方が変わった。松前の取り組みは、さらに能動的だ。町が「小中高一貫した書道教育の推進」をうたっていることからも、地域を挙げた意気込みが伝わる▼松前町は、日本を代表する書家・金子鷗亭を生んだ。書道をテーマにした街づくりもこれに由来する。親しみやすい書を目指した近代詩文書運動の提唱者として知られる鷗亭。その精神は地元住民にもしっかりと受け継がれている。子どもたちの書を手にした、鷗亭の笑顔が見えるような気がする(K)


10月19日(火)

●漁船船長の逮捕に始まった今回の尖閣諸島問題は、中国国内で反日デモに発展した。インターネットでの呼びかけで若者たちが参集。日本車を破壊し、日本料理店を襲い、略奪に等しい行為までした▼一部が暴徒化した事態に、さすがの中国外務省も自制を求めた。「日本の誤った言動に義憤を示すことは理解できるが、非理性的で違法な行為には賛成しない」と。悪いのは日本だが、石や卵を投げ、暴動を起こすのは非理性的ということか。下手に制止すると、批判の矛先が国家に向かうというお家事情も見え隠れする▼暴動の根底には、急速に進む貧富の差など社会への不満がある。不満や怒りは中にあるのに、そのはけ口を外につくる。それが人口13億人の大国を治める手段であるにせよ、ガス抜きのたびに標的にされてはたまったものでない▼しかも同時に、日本との良好な経済関係を継続していかない限り、自国の発展もないというのだから、両国のバランスは極めて微妙だ。そして急速に発展した、国粋主義的なインターネット世論にも配慮しなければならない。このへんが中国の泣き所だろう▼しかし、このような危うい関係がいつまでも続くはずがない。教育専門家の信力建氏は「中国が真の大国になるためには、包容力と開放性がどうしても必要だ」と訴える。それが日本と、ひいては世界との友好関係を構築するカギとなるだろう。早期収束を願う。(P)


10月18日(月)

●日高路を車で走っていると、ゆったりと草をはむサラブレッドの姿が次々、目に飛び込んでくる。のどかな光景であり、とりわけ緑が濃さを増す5月から夏にかけては、誕生間もない子馬がさらに楽しみを広げてくれる▼そう、日高から胆振にかけての地域は、わが国の一大競走馬の生産地である。軽種馬(サラブレッド)生産農家は全国の9割を占め、日高では年間農業算出額の63%が軽種馬というほど。いわば地域産業の要の存在だが、ここ10年余り、その屋台骨が揺らいでいる▼その一つの要因が全国的な地方競馬の低迷。取引頭数が減るなど、その影響は回りまわって生産現場に。今年から門別競馬場(日高町)に集約し、再出発したホッカイドウ競馬も然り。「単年度赤字ならば廃止」という厳しい条件付きでの開催だった▼廃止は一挙に数百頭もの競走馬が行き場所を失うことを意味する。それでなくても生産頭数は減る一途。15年ほど前に年間1万2000頭台だったのが、10年前には1万頭を割り、今や7000頭台。それに比例して生産農家の減少も進んでいる▼日高地域の願いは、地方競馬の開催地が維持され続けること。中でも北海道は生産地としての姿勢も問われる立場でもある。この地域事情と厳しい収支との狭間でどう考えるか、道の判断が注目されたが、高橋知事が出した答えは「存続」。それは黒字化を期待しながらの重い政治判断だった。(A)


10月17日(日)

●「兵士諸君、君たちは野獣のような奴らの犠牲になってはならない。諸君の力を民主主義のために集結しよう。自由のために戦おう!」 独裁者になりすましたチャプリンふんする理髪師の4分26秒の名演説▼映画「チャプリンの独裁者」が日本で公開されたのは半世紀前の10月。先の大戦のさなかに作られ、破竹の勢いだったヒトラーを痛烈に風刺、チャプリンが初めて台詞をしゃべった名作。日本はドイツと同盟を結んでおり、20年後に日の目を見た▼海外メディアに公開した軍事パレード。民主主義人民共和国を名乗りながら、親子3代にわたって独裁権力を続けるのだろうか。3代目のお披露目に合わせ、新型らしき中距離弾道ミサイルも登場。ニューヒーローを世界の目に焼き込もうという魂胆▼首都以外の国民は四苦八苦しているというのに、パレードが終わった広場ではサッカーで遊ぶ子どもの演出も。3代目は昨春のテポドン騒動で「日本が迎撃していたら戦争になった」と語ったとも。援助がもらえなければ、何をしでかすか…▼「一党独裁」を批判する人権活動家がノーベル賞に決まっただけで右往左往した国も。「貧欲と憎悪を追放しよう」というチャプリン演説を聞かせたい。菅政権の弱腰外交の批判に官房長官は「柳腰というしたたかで腰の強い入れ方」と反論したが、“柳腰外交”で領土問題は解決するのか、拉致被害者は帰ってくるのだろうか。(M)


10月16日(土)

●国会から市町村議会まで、議員定数の妥当性議論は、昔も今も空回りし続ける。しかも決定権が議会にあるから、話はよけいにややこしく、進まない。それでも市町村は結果を残しているが、国会、都道府県議会は、と言えば、常に先送り▼だから国会が「議論を始める」との方針を打ち出しても半信半疑。期待しても裏切られるだけと思ってしまう。そんな中、今回、北海道議会が下した判断もお茶を濁したに過ぎないレベル。2議席を減しただけで幕を下してしまった▼地方議員の定数は地方自治法第90条に規定されている。それに基づく道議会の法定定数は112。すでに6議席を減数しており、新たな定数は104。ただ、これが妥当で、この数でなければ民意が反映されないのかどうか、その議論は聞こえてこずじまい▼示された判断は若干の選挙区格差の是正だけ。定数論議はともすると1票の格差に目が行きがち。それも大事だが、現状の議員定数でいいのか、また「北海道の均衡ある発展」という視点から都市部の議員割合が増える構図でいいのか▼少なくても、この問いかけに答える判断ではなかった。「自分たち(議員)の身に降りかかる問題だから(抜本的な論議など)期待しても無理」。誰もが頭では分かっているが、改めて教えてくれたということかもしれない。ただ、納得できるか否かは別。「(それでは)いつまで経とうが変わらない」と思うから。(A)


10月15日(金)

●作家の島田雅彦さんが芥川賞の選考委員になった。島田さんは芥川賞で最多となる6回の落選を経験。同賞を受賞していない作家の選考委員抜てきを主催者側の英断と取るか、矛盾とみるか。意見が分かれるところだ▼島田さんが初めて同賞候補になったのは、1983年。奇しくもこの年は、函館出身の佐藤泰志さんの小説「水晶の腕」も候補作に入っている。同年を挟む前後の数回、佐藤さんは落選の苦汁をなめた。芥川賞との因縁の深さは、島田さんに勝るとも劣らない▼佐藤さんがその後に書いた「海炭市叙景」が、映画化と文庫本出版で注目を集めている。本にある詩人・福間健二さんの解説が印象的。「最後まで悪戦をしいられた文芸ジャーナリズムでの仕事の一方で、『海炭市』がときに慰安の場所のように彼を誘っていたとさえ感じられる」▼「海炭市」のモデルは函館であり、佐藤さんは自ら命を絶つまで故郷にこだわり続けた。この小説では市井の人たちの生活を描いた。「実際、この構想を話すときの彼はとても明るかった」。福間さんの述懐だ▼函館在住の作家・宇江佐真理さんもまた、直木賞の落選を数度にわたって経験している。それでも今は、小説「雷桜」の映画化で再注目される旬の作家の一人。佐藤さん然り、受賞の有無は必ずしも読者の評価に直結しない。この地に根付いた作家たちの息遣いと、その才能を市民の一人として大切にしていきたい。(K)


10月14日(木)

●高血圧で野菜中心の食生活を心掛けている女房が庭に植えた3本のナスは猛暑の影響か、小さなナスを4個つけただけ。でも、スーパーから買ってきた長ナスの焼きナスは食欲の秋の王様だ▼「親の小言とナスビの花は千に一つも無駄がない」といわれるナスはインド原産。国内では奈良時代から栽培されている。初夢に見る「一富士、二鷹、三茄子」の「なす」には「早く実が成る」という意味があり、「成功」にもつながり、縁起がいい▼栄養価は高くはないが、ビタミンC、Eなどが含まれ、血管を強くし、血栓症や高血圧の予防・改善に役立ち、動脈硬化を防ぐ作用もある。残念なのは、子どもを対象にした食品メーカーの調査でナスは嫌いな野菜の3位▼また「秋茄子は嫁に食わすな」と聞くと、なんといじわるなと思うが、ナスは体を冷やす効果もあるので涼しくなる秋に体調を崩さないようにという思いやりの言葉。腹痛や下痢を起こしやすく、女性は流産の恐れもあるという▼焼きナスを食べながらテレビを見ていたら、チリの鉱山落盤事故で地下700メートルに閉じ込められていた33人の救助が放映された。次々と救出カプセル・不死鳥から降りて、69日ぶりに一日千秋の思いで待っていた家族と涙の抱擁。みんなにナスの料理を食べさせてあげたい。京都にいた時、下宿のおばさんが作った加茂ナスの漬物の味が忘れられない。ナスにはさまざまな効用がある。(M)


10月13日(水)

●「体育の日」(11日)に合わせて文部科学省が発表した2009年度の体力・運動能力調査結果によると、小学校高学年から高校生までの運動能力が3年連続で回復傾向にあるという。ピーク時の1985年の水準には及ばないとはいえ、これまで低下の一途をたどっていた印象があったので、わずかながらでも上向きであることに驚いた▼そもそも体力低下はなぜ始まったのだろう。1985年といえば、ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」が発売された年。有識者がやり玉にあげるテレビゲームの象徴とも言えるソフトが出現した時期と、下降線をたどり始めた時期がぴったり重なるのは興味深い▼さらに拍車をかけたと言われるゲームボーイが登場するのが89年。パソコンの普及もこのあたりから本格化し、子どもたちを屋外での遊びから興味を遠ざける要素はこの時点でほぼ出そろったことになる▼一方で“塾”の存在も無視できない。学校から帰宅すると毎日のように直行し、再び自宅に戻るのは午後8─9時。この状況で太陽の下で遊ぶことは不可能だ▼それでも回復傾向にあるのはなぜか。学校や地域での取り組みの成果もあるのだが、民間のスポーツクラブやジムなどに通う子どもたちが増えているのだそうだ。つまりは体力作りのための“塾”通い。学力も体力も、伸ばすことのできるのは経済的余裕のある家庭の特権になってしまうのか。(U)


10月11日(月)

●夕焼け小焼けの赤とんぼ〜 童謡「赤とんぼ」は子どものころ母親と別離した三木露風がトラピスト修道院(北斗市)で文学講師を務めていた時、子守娘に「負われて見た」光景を思い出して作ったという。日本人の心の原風景だ▼その赤トンボ(アキアカネ)の姿が全国的に見えなくなったという。「赤とんぼには豊作の神様が乗っている」とか「捕ると悪いことがある」などと言い伝えられ、稲に寄生する害虫を食べることから、昔から重宝された。弥生時代の銅鐸にも描かれている▼特に田園地帯はトンボ天国だったが、開発が進み田んぼが激減し、トンボの生息地が奪われた。埋め込みタイプの農薬も影響しているのではないか。トンボばかりではない。カエルの姿も世界各地で消えている。カエルの生息環境も破壊されているのだ▼地球上で約3000万種と言われる生物が開発や温暖化で消えつつある。今、その保護と利用の仕組みを探る国連の生物多様性条約会議(COP10)が名古屋市で開催。トンボやカエルなどを含む生物多様性の損失を防ぐ国際目標などが話し合われている▼赤く染めたヒガンバナが朝露に濡れ、周りを舞う赤トンボを見ていると自然と童心に帰る。よく竿の先に止まった赤トンボとにらめっこした。無農薬とか減農薬なんて言っていれない時代。COP10では、開発で劣化している生態系の保全策を樹立してほしいものだ。(M)


10月10日(日)

●「3R=スリーアール」とは、と聞かれて、即答できる人がどのぐらいいようか。固く言うと「環境と経済が両立した循環型社会を形成していくために必要な取り組みの啓蒙用語」であり、是非とも覚えておきたい言葉である▼というのも、これからの時代に重要な意味を持っているから。そのキーワードは、三つの「R」で始まる言葉。一つは無駄遣いをなくしゴミなどを減らそうという意味の「リデュース」で、二つ目は使えるものを再使用しようと呼びかける「リユース」▼そして三つ目が資源の再利用を促す「リサイクル」。それなら聞いたことがあるし、知っている、という答えが返ってきそうだが、大事なのは、限りある資源の中、産業界はそれぞれの生産現場で、国民は日常生活の中で、どれだけ実践するかということ▼ゴミの減量と分別やレジ袋の廃止(エコバッグの利用)などは進んでいるが、一方で無駄も依然として多く、家庭でやれる「R」はまだまだ残っている。必要なものだけを買う、不用になった衣類はリフォームし、家電も使えるうちは修理して…▼先行した「リサイクル推進月間」から「リデュース」「リユース」を加えた「3R推進月間」に衣替えされて8年になる。「生産活動の中で、暮らしの中で実践できる『3R』はたくさんあります」。啓蒙文書はこう問いかけている。そう言われてみれば確かに。考えよう。10月はその「3R推進月間」である。(A)


10月9日(土)

●「事業仕分け」ならぬ「家計仕分け」に、サラリーマン諸氏の悲鳴が聞こえる。職場は「経費節減」の大合唱。帰宅してほっと一息といきたいところだが、各家庭の“財務大臣”がそれを許さない。真っ先に仕分け対象になるのは大概、小遣い銭と決まっている▼ベストセラー「武士の家計簿 『加賀藩御算用者』の幕末維新」(磯田道史著、新潮社)は、同藩の経理業務に代々携わった「猪山家」の記録。著者は同家の家計簿を入手し、つぶさに内情を分析する。そこから浮き上がる武家の日常生活は驚きの連続だ▼最も興味深いのは、膨れ上がった借金を返済するため、一家を挙げて家財道具を売り払う場面。茶道具や書籍はもとより、衣類や食器までが人の手に渡った。「武士は喰わねど高楊枝」と言われる武士の貧乏・倹約イメージについて、著者は武家社会からの検証を果敢に試みている▼研究書ともいえる同書が最近、映画になった。映像化は難しいと思われていただけに、出来栄えが楽しみだ。うたい文句は「力ではなく、そろばんで一家を守った侍がいた」。ややセンチメンタルに過ぎるような気もするが、娯楽映画という性格上、これも致し方ない▼長引く景気低迷を受け、世は空前の“倹約ブーム”である。こうした社会情勢があってこそ「武士の家計簿」の本が売れ、映画化もされた。武士の秘められた精神世界にこそ、現代人の生活のヒントが隠されている。(K)


10月8日(金)

●来年の秋には高速道路(道央自動車道)が、森まで延びてくる。そして2年後には大沼まで。改めて「函館まであと一歩」という思いが込み上げてくる。というのも、他地域に増して、この道路への期待が大きいから▼札幌・道央と結ぶ函館—長万部間の道路は、国道5号頼りという時代が長かった。片側1車線区間がほとんどで、大型車が通行できる代替道路もないから、豪雨災害でも起きると…。野田追橋(八雲)の橋脚破損で長期通行止めになった際が記憶に新しい▼言うまでもなく、高速道路の整備は、物流や観光を中心にした経済活動の振興や救急搬送などに果す役割は大きい。それに加え、道南にとっては、代替道路としての意味合いを強く持つ。森までつながれば、函館との間は砂原、鹿部回りがある▼北海道で初の高速道路開業は、小樽—札幌西間などの1971(昭和46)年。以来40年、札幌を中心に南へ、北へ、東へと整備が進んできた。函館との間は札幌から延びてきて、13年前に長万部、4年前には八雲、そして昨年11月には落部まで開通した▼残る未定区間は大沼からの最終部分だけ。国の財政事情があるにせよ、ここまできたら、なんとか5年で実現を、と祈らずにいられない。5年後には新幹線がやってくるからだが、新幹線の開業と高速道路の全線開通が同じ年に重なれば…。具体化した大沼までの開通情報はそんな夢も描かせてくれる。(A)


10月7日(木)

●先に亡くなった作家・井上ひさしさんは、戯曲「父と暮らせば」で戦争を描いた。本の中にある“前口上”が印象的だ。「あの地獄を知っていながら、『知らないふり』することは、なににもまして罪深いことだと考えるから書くのである」。井上さんは広島、長崎の原爆の悲劇を「あの地獄」と呼んだ▼NHKが3日に放送したドキュメント「“核”を求めた日本〜被爆国の知られざる真実〜」が波紋を広げている。すかさず反応した前原誠司外相は翌4日、事実関係を調査するよう省内に指示。一テレビ番組に対する政府の対応としては異例の早さといっていい▼1969年、外務省幹部が旧西ドイツ外務省幹部と協議。席上、日本側が核兵器を保有する可能性を示し、西ドイツに協力を求めた。番組は、機密資料や複数の証人に当たるなど、丹念な取材で進行する▼「核協議」が行われたとされる69年は、「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則が宣言された翌年のこと。井上さんの言を借りれば、核協議自体が幾重もの「知らないふり」で凝り固まっている。非核三原則の存在はもとより、被爆という「あの地獄」を忘れたかのような、しらじらしさを感じる▼作家の大江健三郎さんは先の講演で、非核三原則の法制化の必要性を訴えた。結果的に井上さんの遺志を継ぐものであり、「知らないふり」はもう許さないという政府へのメッセージでもある。(K)


10月6日(水)

●アングロサクソン時代の公判は人民集会で行われた。被告人の話が真実か否かを証明する人に確認をとりながら、無罪か有罪かを決めた。証明する人が見つからない場合は神さまに決めてもらったという▼神さまは、熱湯の中の石を素手で取り出させたり、熱い鉄の棒を持たして火傷が3日で治れば無罪、体にロープを巻き水に沈めて浮かんできたら有罪、おぼれたら無罪にしたといわれる。民主党の小沢一郎元代表に「強制起訴」を突きつけたのは検察審査会▼容疑者を不起訴とした検察の処分が正しいか否かを判断する機関。裁判員制度と同じく、国民感覚を反映させようと有権者から抽選で選ばれ、起訴相当か、不起訴相当かを議決。容疑者に強制的に刑事裁判を受けさせるのが強制起訴だ▼土地購入をめぐり、現職代議士ら3人が逮捕された陸山会の虚偽記入事件。検察は小沢元代表を嫌疑不十分と不起訴にしたが、今回は「国民は裁判所によって本当に無罪なのか有罪なのか判断してもらう権利がある」という“民意の包囲網”に屈した…▼座右の銘は真心を尽くせば天に通じる「至誠通天」と聞く。検察審査会は“刑事訴訟の素人”かも知れないが、民意は4億円の出どころをめぐって、政治資金、銀行融資、個人資金と二転三転する発言に素朴な疑問を抱く。自分の口から真実を話すべきだ。政治的な責任も免れない。“熱い鉄の棒”を持って、神さまに決めてもらおうか。(M)


10月5日(火)

●禁煙道場へ仲間と通っても、自分だけ失敗した。減煙パイプ、ニコチンガム・パッチと何でも試したが、やはり駄目。入院や手術をして苦しい中、はって喫煙所に向かったこともある。だから絶対、禁煙できない“自信”があった▼そんなヘビーなニコチン中毒だったが、1年ほど禁煙が続いている。かかりつけのクリニックで禁煙補助薬を処方してもらったところ、不思議と断つことができたからだ。ただし、今でも吸いたいと思うし、1本でも吸ったら元に戻るだろう▼無駄に終わると思いながら、なぜ禁煙にチャレンジし成功したのか。つまらない体験談だが、理由は三つ。ひとつ目は禁煙補助薬。よほど意志の強い人でなければ、禁断症状には勝てない。自分の力でできないなら、他人の力を借りるのが世の常だ。借りた力は、保険が効く薬で、禁断症状が大きく緩和された▼二つ目は、吸わない人に迷惑をかけたら申し訳ないという気持ちが、ひとかけらでもあったこと。喫煙者の多くは、そんな心を多少なりとも持っていると思う。それでも禁煙できないから苦しんでいる人が多い▼三つ目は「失敗しても落ち込まなくていい」と言ってくれた医師。禁煙に挫折した時のみじめな気持ちはこりごりだ。だから失敗を極度に恐れ、退路を断つぐらいの気構えでいたが、医師はそれを笑って打ち消してくれた。駄目でもともと…。禁煙外来を試してみてください。(P)


10月4日(月)

●10月1日、ロッテの最終戦勝利とともに日本ハムの今シーズンが終了した。クライマックスシリーズ(CS)に出場していた過去4年に比べ、約1カ月も早くグラウンド上で選手の姿が見られないことになる▼北海道に本拠地を移して7年。当然のように毎年優勝争いを繰り広げてきた日ハムにとって、今季は正念場だった。助っ人外人に頼らず純国産打線で開幕を迎えた姿は小気味よかったが、ふたを開けると明らかな長打力不足。さらに金子、高橋、森本と主力選手の相次ぐ戦線離脱に守護神・武田久の絶不調と悪条件が重なり、昨年のパ王者がまさかの最下位独走となった▼ここからCS進出争いに加わるまで持ち直した驚異的な粘りには心から拍手を送りたいが、わずか0・5ゲーム差であっても3位と4位は天と地の差。早くも坪井や多田野などの人気選手が戦力外通知を受け、来季へのテコ入れが始まっている▼チームとしては納得のいかない結果に終わったが、初の打点王に輝いた小谷野、防御率と奪三振で2冠のダルビッシュ、打率2位の田中など個人の活躍には目覚ましいものがある。終盤は失速したが、中田翔の覚醒も来季への大きな希望である▼ただひとつ気がかりなのはダルビッシュの去就。今季は12勝にとどまったが、勝ち星以上の大きな存在感を持つエースがもし抜けたら…。日ハムにとっての本当の正念場は来年なのかもしれない。(U)


10月3日(日)

●少年ジョバンニが、友人のカムパネルラとともに銀河を旅する。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」は、幻想的な物語として長く読み継がれてきた。子どもから大人まで、その読者層は広い。内包するロマンの世界が、想像力を刺激するからだろう▼銀河はたくさんの星の集まりであり、淡い光の川のように見えることから天の川(あまのがわ)とも呼ばれる。宇宙にはこうした大きな銀河が無数に存在する。中には、地球と同様に生物がいる可能性もあるが、いまだに謎のままだ▼宇宙にちなんだあるニュースが、天文ファンの間で話題を集めている。タイトルは「第2の地球?」。米国の天文学者などが、太陽系外の惑星の中で最も地球に似た惑星を発見した。生命の生存に適した条件を備えているという▼この惑星は、地球から20光年の距離にある恒星「グリーズ581」の周りを公転。大気と温暖な領域、さらに水が存在する可能性がある。「これまでに見つかった約500の系外惑星の中で、最も生物の生存に適している」(ナショナルジオグラフィック)というから、この先の解明が楽しみだ▼子どもの頃、太陽系の配列を「水金地火木土天海冥」と覚えた。天文学は日進月歩であり、一般学習の範囲が太陽系の外に及ぶ日も近い。「宇宙の不思議」の一つひとつに答えが出される。うれしい半面、「銀河鉄道の夜」の神秘性が損なわれてしまわないか、少し気掛かりでもある。(K)


10月2日(土)

●「レアアース」。多くの人がつい最近まで聞いたこともなければ、何に使われる物質かも分からなかったに違いない。それがにわかに知るところとなったのは、そう尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件の関連で▼その裏には中国が圧倒的な世界の主産出国という現実がある。実は、この「レアアース」、携帯電話、パソコンなどの最先端機器やハイブリット車の製造にも不可欠な物質。悲しいかな、わが国はその調達のほとんどを中国に依存している▼1カ月ほど前、岡田外相(当時)が輸出拡大を求めた経緯がある。これは「有効な手段」とばかりに早速、わが国に対する輸出規制措置をとってきた。規制は産業界にとって減産につながる大問題であり、政府として手を打たないわけにはいかない▼それから数日後、拘留期間内という異例の形で、那覇地検は逮捕した船長を処分保留のまま釈放した。国民にとっては釈然としない話だったが、すかさず中国は規制解除へ。どう考えても「レアアース」を巡る動きは、船長の釈放と無縁ではなかった▼中国との間ではさまざま問題を抱えているが、一方で経済分野での関係は拡大している。それでも不測の事態が起きるや、ここまでの大きな問題となる。大事なのは後処理だが、わが国はいとも簡単に弱みを見せてしまった。その裏に…何かがあった。菅首相の国会でのお詫びがすべてを物語っている。(A)


10月1日(金)

●「どげんかせんといかん」と声高に訴えて登場した東国原英夫宮崎県知事。言うはやすしである。結局、「県知事として限界を感じた」ことを理由に、あっさり2選不出馬を表明した。どげんしたのか、と本人のことが少し心配になる▼知事就任からわずか3年8カ月。「限界」を口にするのが早すぎはしないか。知事や市町村長の多選を肯定するわけではないが、1期目はあくまで種まきの段階であり、2期目から収穫の時期を迎える。自分のまいた種が実際に花を咲かせるのか、どんな実を付けるのか。これを見ずに畑を手放す農民はいない▼東国原知事に限らず、地方からの発言、行動を通して国や一地域を変えていこうという政治家は少なくない。目標実現の受け皿の一つに地域政党(ローカルパーティー)がある。橋下徹大阪府知事が代表を務める「大阪維新の会」、河村たかし名古屋市長が設立した「減税日本」など全国に数多い▼「大阪—」の橋下知事は、国会で議員数を増やす「みんなの党」と接触し、連携の方針で合意した。来春の統一地方選で候補者の推薦や選挙区調整の連携を進めるという。橋下知事の打った一手が大阪をどう変えるのかは未知数だが、これも地方発の政治手法の一つではある▼地方の疲弊が言われて久しい。政治・経済の中央集権の構図に風穴を開ける地方政治家はいつ現れるのか。期待していただけに、東国原知事の変心が残念だ。(K)