平成22年11月


11月30日(火)

●忘年会シーズン。高校の同期生と会食。高齢者になると、食道が細く、胃が小さくなるせいか、一人前が食べきれない。10人集まると7人分で十分だ。店の人は「料理の3割近くは破棄してしまう」と嘆く▼世界の飢餓人口が増えているというのに、食べ物を捨てるなんて、もったいない。飢餓と餓鬼。悪業の報いとして餓鬼道に落ちて、やせ細って、のどが針の穴のように細くなって、飲食することができず、常に飢渇に苦しむ…▼FAO(国連食糧農業機関)によると、世界で慢性的な栄養不足に苦しむ飢餓人口は9億2500万人超で、実に6人に1人が飢餓に直面している計算。特に子どもの飢餓は深刻で「6秒に1人が飢えでなくなっている」と報告▼韓国の延坪島に砲弾を撃ち込んだ独裁国はどうか。十数年前に食糧不足が始まってから、100万人から300万人が餓死したとみられている。急激な餓死ではなく、何年かの飢えのため免疫力が弱まったことが大半。約6割の子どもたちが発育不良(栄養失調)とも▼今年は異常気象による干ばつ、水害などの影響で食糧価格が上昇傾向にあり、FAOは「飢餓は世界最大の悲劇を招く」と指摘している。アメリカでは長引く不況も加わり約500万人の高齢者が飢えの危機にさらされると聞く。学校給食に郷土の食材を取り入れる学校が増えているが、子どもたちが「ごちそうさま」と完食するよう指導しなければ。(M)


11月29日(月)

●心のどこかで「きっと最後は大逆転してくれるはず」と期待していたフィギュアスケートグランプリシリーズ(GP)最終戦だったが、浅田真央に奇跡は起きなかった。これで2年連続ファイナル進出を逃したことになるが、復調の兆しが見え始めていた昨季に比べ、今年はまだもがき苦しんでいるように感じる▼数多くの栄冠に輝き、名実ともに国民的ヒロインとなった浅田だが、最大の目標であった五輪での金メダル争奪戦に敗れてしまう。この大きな忘れ物を取り戻すために決断したのが、日本人コーチのもとでの再出発だった▼その選択が正しかったどうかは素人には判断しにくい。現時点で結果に結びついていないのは事実だが、ソチ五輪へ向けた長期計画の準備段階と信じるしかない▼そんな心配をよそに、新たなスター候補が世間をにぎわせている。16歳になったばかりの村上佳菜子だ。デビュー2戦目でのGPシリーズ優勝は、浅田と並ぶ快挙。浅田はファイナルでも優勝しているので、村上にもその可能性は十分にある▼このまま村上が新女王の座を手にすれば、今まで浅田に向いていた期待は彼女に移るだろう。かつて安藤美姫に集まっていた国民の視線を奪い取った浅田自身の姿が重る。しかし、その安藤は22歳になった今年もGPファイナル切符を手にした。まだ20歳の浅田が、このまま輝きを取り戻さないはずはないと信じよう。(U)


11月28日(日)

●♪トイレには、それはそれはキレイな女神様がいるんやで—。亡き祖母との思い出をつづった「トイレの神様」は9分52秒の長い曲だ。大みそか恒例の「NHK紅白歌合戦」の出場を決めた植村花菜は、この曲をノーカットで全国に届ける▼歌詞は次のように続く。♪だから毎日キレイにしたら、女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで—。そう教えられて育った植村は、祖母との別れの悲しみと感謝の気持ちを曲に託す。肉親への思いは世界共通。上海万博のライブでは、中国人の観客も植村の歌に涙を流したという▼「トイレの神様」は実際に家の神の一つとして古くから伝承されてきた。「厠(かわや)の神」と言う。便所を守護するのは、埴山姫(はにやまひめ)と水罔女(みずはのめ)の二神。お産などと関係して信仰されたことから、妊婦が便所を掃除すると、きれいな子どもが生まれるという言い伝えもある▼江戸時代の便所は清潔だったという。長屋の共同便所も例外ではなく、汚物は農民が使う肥やしとして売り買いされた。この時代にリサイクルの流れが確立していたことに驚かされるが、清潔な便所は「厠の神」への信仰心の表れでもある▼東京では、産んだばかりの乳児の遺体がトイレに遺棄された事件があったばかり。逮捕された母親の愚行を、トイレの神様が許すはずがない。願いを込めてトイレを磨く人たちとの心根の違いが悲しい。(K)


11月27日(土)

●「消化したくても消化し切れない有給休暇」。そんな思いを抱いている人が多かろうが、全従業員1300人が100%消化、という企業がある。しかも21年間継続中というから特筆に値する。その企業は函館でも店舗を持つ六花亭製菓▼有給休暇は労働基準法(第39条)で勤続年数ごとに定められている。その平均付与日数は年間18日だそうだが、厚労省の調査によると、大企業から中小企業まで含め平均取得(消化)日数は8・8日(取得率48%)。ほぼ半数でしかない▼先進諸外国に比べても際立って低く、国も取得を促しているが、刻として進んでいない。従業員サイドの理由として仕事の停滞や同僚に対する気遣いなどが言われるが、同時に指摘されるのが企業側の意識。快しとしない風潮がなお根強く残っている▼「全力で働いてもらう一方で、休むことも大事」。その結果として働く意識が変わってくるといい、具体的には業務の効率化を考えるようになり生産性の向上に結びつくのだ、と。同社では毎月、職場ごとにチェックするというからまさに会社主導▼全員が消化するのだから同僚への気兼ねもない。企業にとって大事なのは「業績アップに何が必要か」。ISOの精神とも重なり合うが、現状を改善し、効率化を図ることである。その成果につながっているというのだから身近な実践例。説得力ある話だが、多くの企業の現実はそれを容易にしていない。(A)


11月26日(金)

●作家・辻仁成さんは、最も多感な時期を函館で過ごした。この体験がなければ、函館を舞台にした芥川賞受賞作「海峡の光」も生まれなかっただろう。辻さんは事あるごとに函館への愛情を口にする。かつて著した旅行エッセー「函館物語」(集英社文庫)などを手に取れば、その思い入れの強さは一目瞭然だ▼講演会「辻仁成『函館』を大いに語る」(函館青年会議所主催)が市内で開かれた。市民ら約300人を前に辻さんは、独自の函館論を展開。その中で、GLAY(グレイ)をはじめ函館出身のアーティストを集めたロックフェスティバルの開催を、函館活性化策の一つに挙げた▼問題はコンサート会場の確保だ。先日たまたま目にしたテレビの音楽番組で、GLAYのリーダー、TAKUROさんの発言を聞いて意外に思った。今年のコンサートツアーの地元公演が北斗市内になったのは、函館市内で会場が取れなかったためというのだ▼いろいろ事情があってのことなのだろうし、北斗が会場にふさわしくないとも思えない。ただ、それを差し引いても、アーティスト自身が希望する出身地での開催が会場の都合でかなわないというのは、何か解せない▼ロックフェスの会場は函館の緑の島がふさわしい、と辻さんは言う。その点、緑の島に屋根付き屋外ステージの整備を—とする市西部地域振興協議会の提言と合致する。市による本格的な検討を期待したい。(K)


11月25日(木)

●今度は札幌で、いじめが原因と見られる自殺が発生。「1年生の時、無視されたり『キモイ』と言われた」「学校のスピーチが嫌い」。中2女子がA5判の紙12枚に手書きの遺書を残し、自分から「自殺です」と通報して、マンション6階から飛び降りた▼学校は遺書について「女の子らしい文字で、まだちゃんと読んでいない」と言い、いじめが原因とも考えられ、国語の授業で全員がスピーチをする予定だったと説明。美術部に所属、半年ほど前から態度に変化が見られたという▼道内の子どもの自殺は、5年前に滝川で小6女児がいじめを苦に自殺を図り半年後に死亡。3年前には函館で高3男子が中学時代の元同級生ら7人にいじめられ、集団暴行を受け死亡している▼「ウザイと言われた」「汚い言葉を言われ怖かった」。先月、自殺した桐生市の小6女児の学級の数人が他のクラスの子にも、ののしったり、暴言を繰り返していた。学級崩壊が進み、担任は病気を理由に欠席がちだった▼教育庁などは学級崩壊の原因の一つに「いじめ」を挙げ、いじめなどの問題行動への遅れが学級崩壊を助長させていると指摘しており、学校、家庭、地域の連帯が不可欠という。7人から集団暴行を受けた高3男子が住む町内会では「いじめをなくす決意の日」を実施、いじめ根絶を呼び掛けた。中2の孫娘には「いじめられたら親に報告せよ」と言い聞かせているが…。(M)


11月24日(水)

●新聞に携わる仕事をして40年。毎日の制作や発行に関しては、それなりの経験もあれば、知識もあるが、読み終えた新聞紙の使い勝手については無知だった。というより無関心だったと言った方が的確だが、最近になって改めて▼俗に言う古新聞も生活に役立つことは、主婦歴の長い人なら知っている知恵。ネットなどで調べると、あるわあるわ。驚きでもあったが、まず感心したのは、窓拭きに力を発揮すること。ただ水でぬらして拭くだけで、きれいな状態になるという▼次が台所のごみ処理にも有効なこと。腐敗が進みやすい生ごみも包むことで水分の吸収が図られ、臭いの軽減に役立つのだそう。そうこうしているうちに子ども時代の記憶が蘇ってきた。そう、かつての時代、古新聞は家庭でさまざまに活用されていた▼押入れ、箪笥(たんす)や靴箱などの下敷きとして確かに。押入れではゴザなどの下に必ず、何年も代えずに済んでもいた。さしずめ押入れでは湿気を吸収する働きを、靴箱は泥などの汚れや臭いを軽減させる役割を担ったということだろう▼さらに…。玄関掃除の際には、ぬらした古新聞をちぎってまき、箒(ほうき)で掃いていた。経済の発展によって古新聞に代わる商品が生み出され、その座を譲ることに。今となっては、こうした活用術も新鮮に映るが、実は昔の人の生活の知恵。昨今、問われているエコの視点からも感心させられる。(A)


11月23日(火)

●北海道新幹線札幌延伸後の函館─新函館の経営分離問題で、高橋はるみ知事がJR北海道に再考を求めた。札幌延伸は賛成だが、経営分離は反対という函館市の立場に歩み寄った対応で、市や経済界は事態打開に期待している▼道新幹線の建設促進は、高橋知事の政治生命をかけた戦いと言っていい。2003年に初当選し、05年には新青森─新函館を着工。記念式典では「一日も早い完成と札幌までの延伸に向け、さらなる運動をしていく」と決意を述べた▼新幹線整備は政治力の勝負でもあり、財源の配分や新規着工路線への昇格などをめぐり、綱の引っ張り合いが演じられる。官僚出身の知事は中央とのパイプを生かし、将来の延伸を先取りするよう札幌側からの着工推進を示唆するなど、万策を尽くしてきた▼そうした中でJRが延伸の条件として示した経営分離方針。反対する函館の主張を道が酌めば、並行在来線の経営分離問題を抱える他地区でも見直しを求める声が高まる恐れがある。しかし、現状のままでは延伸運動に影響が出る。そこで知事はかじを切った▼難しい判断だったと思うが、拍手を送りたい。函館は単に、地元負担が「嫌」と騒いでいるわけではない。函館は道南の経済や医療、教育、娯楽など、圏域全体の生活を支えている。新幹線が走ることで、都市や地域が衰退するということは断じてあってはならない。地域のエゴではないはずだ。(P)


11月22日(月)

●きょう22日は二十四節気の一つの「小雪」。気象学では「数時間降り続いても降水量が1㍉に達しない雪」。ナナカマドが真っ赤になり、寒い北風が落ち葉を払う。夜空を見上げれば「満月」が見える日▼人は満月の夜に月光浴をすると元気になるという。身体の約6割が水分であることから月の引力に左右されやすいのか。その月より遠い小惑星イトカワから持ち帰った“土”が小惑星の微粒子であることが確認された。日本の科学技術の高さに驚く▼また「いい夫婦の日」(11月22日)だ。ある調査によると、妻が夫に対して持つ不満は、4人に1人が「気がきかない」「整理整頓ができない」ことを挙げ、2割は「家事の協力をしない」だった。へそくりは妻が約98万円で、夫の約34万円の3倍▼夫婦円満の秘訣は8割が「よく会話をすること」を挙げており、会話が不満解消のカギを握っていることに安堵。良い家庭は会話から。老夫婦は竹から生まれたかぐや姫を大事に育て、満月の夜に故郷に帰してやった…▼次の23日は「勤労感謝の日」。「勤労をたっとび、生産を祝い、互いに感謝しあう」ことが趣旨。懸命に働いて、へそくりを貯めて「お疲れさま」というところか。大学生の就職内定率(60%台)が過去最低の超氷河期とか。働きたくても働けない。「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と豪語していた菅直人首相。有言実行をお願いします。(M)


11月21日(日)

●「廃止とされた事業が、ゾンビのように生き返る」。ホラー映画の主役に例えられるほど、事業仕分けに抗(あらが)う官僚たちの戦術はしたたかだった。対する仕分け人は、次にどんな手を打つのか。個々の事業関係者にとって、気になる一瞬だ▼政府の行政刷新会議による事業再仕分け。そもそもこの「『再』仕分け」なるものが存在することが、仕分けという制度自体の限界を意味する。仕分け人による廃止通告後、国が事業名を変えて予算要求する“看板の掛け替え”が続出しているという。ゾンビと言われるゆえんである▼観光庁が認定した「はこだて観光圏」の整備事業も、再仕分けの厳しいチェック網にかかった。「無駄」と対峙(たいじ)する仕分け人の言動は時として痛快に映るが、そのターゲットが地元関係の事業となると話は別。住民が複雑な心境になるのも致し方ない▼同観光圏は、道南2市16町が一体で観光振興を図る広域事業。食をキーワードに、主にアジアの富裕層の取り込みを狙う。「日本1の観光地」から「アジア1」への飛躍を誓った矢先だけに、仕分けによる予算減額は痛手だ▼函館圏域では、観光振興の行方が地域発展の鍵を握る。こうした地域事情を知らないまま、仕分け人の面々が事業推進に待ったを掛けたとは思いたくない。その功罪を論ずるのは早計だろうが、事業仕分けそのものが廃止の対象にならないように、と切に願っている。(K)


11月20日(土)

●新幹線の青森開業(12月4日)は秒読みの段階。本州が道路に続いて鉄路でも高速体系で結ばれる瞬間であり、歴史的意味は大きいが、これに合わせたダイヤ改正で、JR北海道が函館—札幌で利便性を高めるのが特急の五稜郭駅停車▼交通機関が求められる課題は、速度と利用のし易さ。速度で言えば時間はかからないほどいい、利用面で言えば運行本数は数あった方がいい、乗降も近くでできるに越したことはない。とはいえ、そのすべてに応えることは難しい▼15年前、赴任した際、住宅は五稜郭駅の近くだった。なのに函館駅まで行って、戻らなければならない。しかもJRで戻ると、新たに運賃がかかる。腑に落ちない。不満だった。市民の多く、また七飯、北斗など五稜郭駅が近い利用者がかなりになるはずである▼例え、五稜郭駅に停めても函館駅着はほんの数分遅れるだけではないか。せめて上り(札幌発)だけでも。その不満が届いたか否か、恐らく時代が要請したのだろう。その後、少しずつ停車する本数が増えたが、次なる疑問は部分的だったこと▼それも解消される。今度の改正で通過は下りの1本(函館14時28分発)だけとなる。停車駅の増減や接続の調整などは容易なことでないという話を聞いたことがあるが、それだけに敬意を表したい。ちなみに、この間、新札幌駅にも停車するようになった。JR利用者の利便性は確実に増している。(A)


11月19日(金)

●人から言いかけられた言葉を真似て、そっくりそのまま返答することをオウム返しという。オウムの舌は厚く丸みを帯びていて人の声帯に似ている。「おはよう」と話しかけると「おはよう」と応えてくれる▼法相はいいですね。(国会答弁では)二つ覚えておけばいいんですから。「個別の事業についてはお答えを差し控えます」。分からなかったらこれを言う。あとは「法と証拠に基づいて適切にやっております」。まぁ、何回使ったことか▼柳田稔法相の発言。国会で大臣失格と追及されると「仲間内での発言であり茶化してはいるが、間違ってはいない」と抗弁。常套句を繰り返す閣僚はいくらでもいるが、言う者と聞く者の暗黙の了解があってこそ成り立つ▼北沢俊美防衛相も失態を演じた。航空祭に政治的な発言をする恐れのある人を参加させないよう通達を出したことを追及され、「もし自民党内閣だったら同じことをなさるだろう」と答弁。「議論を混乱させるのなら…」とあっさり撤回した。なんと軽いことか▼「真摯に受け止め、反省します」も閣僚の常套句だ。「〇〇の一つ覚え」という言葉があるが、国会には「法務大臣の二つ覚え」がまかり通るのだろうか。審議を混乱させるような常套句のオウム返しは、いかがなものか。少し、覚えのいいオウムなら法相の後釜になれるかも…。それにしても、情けない「責任問題の国会」を早く卒業してもらいたい。(M)


11月18日(木)

●雇用環境が良くならない。というより最悪の状況。失業率もさることながら、これから夢を抱いて社会に身をおこうとしている新卒者をも直撃している。「いつになったらなくなる氷河期が」。改めてそんな悲鳴が聞こえてくる▼厚労省が発表した10月1日現在の大卒内定率(来春卒業予定)は57・6%という。ホッとしている学生は、なんと2人に1人のレベル。2年前のリーマンショックでさらに悪化し、昨年も厳しいと言われたが、その昨年同期と比べて4・9%下回っている▼確かに残り5カ月あるが、大卒に関しては大きな山場を越えたと言えなくもない。大企業を中心に終えた会社が多いから。過去には、この時期まで悪くても最終的に90%を超えた年もあったが、現状の経済情勢を考えると、そこまでは読み切れない▼それでなくても昨年度の未就職者(高卒も含む)は推計で約7万5000人いる、と。今年度の今後を、いっそう“狭き門”と受け止める理由はそこにある。逆の見方をすると、いい人材を確保できるチャンスだが、いかんせん、余力がない▼厚労省は新卒未就職者支援策として「卒業後3年以内は新卒扱い」へ、雇用対策法に基づく指針の改正を行った。しかし、これとても後対策。企業は雇用調整で経営バランスをとっており、今、問われているのはどう雇用を促していくかという視点であり誘導策。経済環境の改善なくして、答えは出てこない。(A)


11月17日(水)

●現在、出回っている通称「100円ライター」が、来年9月27日をもって販売禁止となる。幼児でも着火でき、それが原因と見られる火災が起きている現実を踏まえた措置。今月初め、販売を禁止する政令が閣議決定された▼着火道具と言えば、マッチの時代が長かった。家庭ではストーブの火付けに無くてはならない存在だったし、愛煙家も然り。故に企業や飲食店などが宣伝用として配布するように。ライターよりマッチ派という人も多く、パッケージの収集家もいたほど▼その立場にとって代わったのが「使い捨てライター」で、登場は40数年前。実際に売り出されたのは1975(昭和50)年とも言われるが、安価で手軽と急速に普及した。それに合わせて企業や飲食店も脱マッチに移行し、いつしか主たる存在に▼今や多くの家庭に幾つもあって、無造作に置かれるほどになった結果、子どもがいじる、という問題が。ただ、無くなるわけでない。新たに二段階操作か、レバーを重くするなどの安全基準を定め、それに適合した商品だけとなるのだが、当然の対応▼問題はこの既存ライターをどう処理するかである。販売や配布はやめさせられても回収となると…。数が半端でなく、少なくとも子どものいる家庭から無くさなければ、販売禁止との整合がとれない。一定時期に特別回収することも一つの方策。それなしに火遊びの危険が消えることにはならない。(A)


11月16日(火)

●「民主化実現の目標を達成するため、私たちは力を合わせなければならない」—7年半ぶりに軟禁状態から開放されたミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんは自宅前に集まった支持者に訴えた▼この日も髪には、英国で死亡した夫(留学中に結婚)と誕生日に贈り合った花飾り。愛の証であり、民主化運動の無言の抵抗の証でもある。先ほど、京都の西本願寺で「スー・チーを支えた家族の写真展」を見てきた▼青春を過ごした英国での様子からノーベル平和賞受賞前後の家族を中心とした約30枚の写真。オシメを着けたわが子の両手をしっかり握る笑顔は、軍事政権に立ち向かうスー・チーさんからは想像もつかないほど優しく穏やか。ノーベル平和賞は悲しみをも招く▼11年前に病死した夫が面会を申請したが、認められなかった。平和賞の130万㌦はミャンマー国民の健康と教育のための基金に使われたが…。もう一人、今年受賞する中国の民主活動家、劉暁波氏は今なお獄中▼広島市で開催の平和賞受賞者サミットに教え子が代理出席し「憎しみは知性と良心をむしばむ。希望こそ変化をもたらす」という劉氏の言葉を紹介した。中国政府が各国に圧力をかけており、授賞式には出られないだろう。15年前、自宅前で撮影されたスー・チーさん一家4人の最後の写真に涙腺がゆるむ。紛争や抑圧で脅かされる平和だからこそ、それに立ち向かう平和賞が必要なのだ。(M)


11月14日(日)

●世相を映す「ユーキャン新語・流行語大賞2010」(「現代用語の基礎知識」選)の候補60語が決まった。iPad、AKB48、イクメン、ゲゲゲの〜、食べるラー油、2位じゃダメなんですか…。年間大賞は12月1日に発表される。選考が難しいだろう多彩な顔ぶれだ▼ちなみに09年の年間大賞は「政権交代」。その一語からは、誕生間もない民主党政権への国民の期待が見て取れた。あれから1年。今回も政治関係の候補語は多いが、政情不安を反映してか、どれもが現政権には冷たい▼その最たるものが「イラ菅/ダメ菅/○○菅」で、言うまでもなく菅総理による国政のかじ取りを皮肉ったもの。社会情勢では「無縁社会」「待機老人」「年金パラサイト」といった負のイメージが主にピックアップされた。菅内閣が目指す「最小不幸社会」との乖離(かいり)はいかんともしがたい▼報道各社による世論調査で、菅内閣の支持率が軒並み急落している。中には、30%割れの危険水域に入ったところも。背景には、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や、ロシア大統領による北方領土訪問をめぐる政府の対応への国民のいら立ちなどがある▼最近では、貿易自由化を促進する環太平洋経済連携協定(TPP)への政府対応に注目が集まる。煮え切らない態度ではもう国民は納得しない。外交・経済問題を中心に「ダメ菅」の汚名をいかに返上するか。今が正念場だ。(K)


11月13日(土)

●函館の夏を彩る港まつりを盛り上げる「いか踊り」。手軽で、ノリがいいことから、今ではまつりに欠かせない存在だが、函館市は先日、実行委員会に市長賞を贈って、長年の取り組みを称えた。誕生から30年目のことである▼全国的に伝え継がれている「踊り」は、かなりの数になるだろう。阿波踊り(徳島)や郡上おどり(岐阜)、おわら風の盆(富山)など何万、何十万人という観光客を集めるメジャーな踊りに、地域の人たちの楽しみとなっている踊りまで含めると…▼北海道といえば「北海盆歌」が頭に浮かぶが、練り歩くにはテンポが遅く、何より地域個性に欠ける。「いか踊り」は、この課題を打ち破って市民権をつかんだ踊りの一つ。市民の酒飲み話が原点という話もあるようだが、まさしく継続は力なり▼最大の売りは「楽しむ」というコンセプトがあること。軽快なリズムに加え、動きは速く、形もあるようでないようで。しかも振り付けはその場で覚えられるほど簡単。だから、見ている人を踊りたい気持ちにさせてしまう。「いか踊り」の魅力はそこに尽きる▼これほどに踊る側と見る側の垣根がない踊りも珍しい。今年の港まつりパレードで踊った人は1万3千人。近年は函館観光のPRでも役割を担い、6月には公的評価に値する北海道観光振興功労表彰を受けた。「函館の夏にいか踊りあり」。改めて市を挙げての知名度アップ作戦が求められている。(A)


11月12日(金)

●正月の鯨汁に代表されるように、道南ではクジラの肉が一般的な食材として広く知られる。函館市内の小中学校で9日、鯨肉メニューの提供が始まった。本紙の記事によると、初日にはクジラの酢豚風が出され、今後はクジラ竜田揚げなどがメニューに加わる▼「クジラは普段食べない珍しい食材。少し堅いけれどおいしい」。中学2年の男子生徒のコメントだ。若い世代にとって鯨肉は確かに食べ慣れない食材である。そのことを再認識するとともに、「堅い」という表現に中学生らしい素直さを感じた▼「堅い」という表現は「歯応えがある」に言い換えることもできる。現代は軟らか食品ブーム。一昔前までは普通だった、歯応えという食感はむしろ敬遠される傾向にある。そう言えば、前に堅いせんべいやスルメを食べたのはいつだったか。遠い記憶をたどることになる▼先日、札幌市内で「美唄焼き鳥」の店に入った。モツ串も正肉も歯応えがあっておいしい。美唄市のホームページによると、肉本来の深い味わいは「昔から親しまれてきたふるさとの味」という。「美唄焼き鳥」は立派なご当地グルメとして、その人気を各地に広げている▼そもそも食べ物をよくかむことは、脳の活性化や栄養の吸収促進など全身の健康促進につながる。道南の鯨肉、美唄の焼き鳥…。その味と食文化の重みを同時にかみしめることができ、健康にもいい。まさに一挙両得である。(K)


11月11日(木)

●冷たい秋雨。晩秋から初冬にかけて降る雨。陰暦の10月は時雨月。降ったかと思うと、さっとやむ。その時雨月に、動画サイトに投稿された尖閣諸島の中国漁船衝突の映像が列島を揺るがせている▼鳴り響くサイレン。「おい! 止まれ、止まれ!」|保安官の悲痛な叫び。ネット上に公開されたビデオは国会議員用に編集されたビデオの7倍以上の44分。網を揚げる中国漁船、巡視船後部の1回目の衝突、後部右舷の2回目の衝突、それを撮影する第3の巡視船▼中国漁船の船長を拘束したが、拘留期間の延長を決めた直後に釈放。政府が尖閣ビデオを秘密扱いにしたのは刑事事件の証拠であり、外交上の問題としているが、釈放した船長は起訴できない。証拠として秘密にする根拠はない▼過去に内部からの情報提供で権力の不正や独断専行がばらされることは往々にあった。この尖閣ビデオは神戸市のネットカフェから送信された可能性が高く、10日、神戸海上保安部の職員が「自分が映像を流した」と上司に告白。やはり内部からだった▼「大変遺憾だ」—中国漁船衝突の時も、ロシアの大統領が北方領土を訪問した時も聞かされた。広辞苑では「物事が思うようにいかず心残りなこと」をいうが、自国の領土なのに中国やロシアに気を使う必要は毛頭ない。電網で中国の若者も知っていることだ。2時間の尖閣ビデオを全部公開して、うっとうしい秋雨を晴らしてほしい。(M)


11月10日(水)

●今年のカレンダーも残り少なくなってきたが、暖かい日が続くせいか、その実感が湧かない。それでも師走はすぐにやってくる。年の瀬には大掃除の心配もしなければならない。年中行事とはいえ、なんと慌ただしいことか▼11月22日は、その語呂合わせから「いい夫婦の日」と呼ぶ。この日に合わせ、ダスキン(本社大阪)が大掃除に関するアンケート調査(インターネットで4000人余りが回答)を行った。結果からは、家庭の一大イベントである大掃除と夫婦の相関関係が浮き彫りになり、なかなか面白い▼昨年末の大掃除で、妻に対する夫の満足度は80・5%と高く、逆に夫に対する妻の満足度は52・0%にとどまった。後者が低率だった理由は「夫が大掃除に積極的ではなかった」「参加しなかった」など。要は「なぜ私だけが…」という妻の不満に他ならない▼俳句の季語に「掃納(はきおさめ)」がある。大掃除の意味と大差はないが、「掃納」には新年に対する心の準備という風情が感じられる。何よりバタバタとした切迫感がない。ゆとりを持って家庭を清めなさいという、世の夫たちへの啓示か▼では、大掃除を通して「いい夫婦」になる秘訣(ひけつ)を一つ。積極性をみせ、さらに相手が望む場所を重点的に掃除する。夫の場合、例えば「窓・網戸」「浴室」「照明器具」など。アンケート結果はこう言うが、思惑通りになるかどうかはあなた次第? (K)


11月9日(火)

●まだ食べられるのに捨てられる食品は、半端な量でない。常々、そう思ってはいたが、11月上旬に消費者庁が公表した推計は衝撃的な量だった。スーパーなどで賞味期限内に廃棄される食品が年間1千万トンを超えるというのだから▼食品の表示には「賞味期限」と「消費期限」がある。ともすると混同しがちだが、おさらいの意味で説明すると「賞味期限」はおいしく食べることが出来る期間、「消費期限」は過ぎたら食べない方がいいという目安。定められた方法で保存した場合である▼もっと明確に言うと、賞味期限を過ぎたからといって食べられないわけではない。ところが、現実の話として期限が迫った商品は敬遠されがち。売れないため値引きをし、それでも、となると、店頭から撤去される運命となる▼それにしても、これほどの廃棄量とは…。確かに業者側は対応を誤ると企業倫理が問われ、後々問題が起こされてはかなわない、という思いを抱えるから、神経も過敏になる。その一方で、消費者側は少しでも残余期限が長い商品を選ぼうとする。その結果が…▼なんとももったいない量の廃棄となる。まさに大量生産、大量消費時代が招いているつけ。飲食物の残渣(ざんさ)の量もそうだが、豊かさにマヒしているぞ、という警告とも言える。あまりの現実に消費者庁は対策に乗り出した。これもわが国が抱える一つの社会現象。放っておけない問題である。(A)


11月8日(月)

●今年のプロ野球12球団の頂点に立ったのは、パ・リーグのロッテだった。開幕当初は盛り上がりに欠けていた日本シリーズも、第6戦では過去最長5時間43分にわたる延長15回の死闘が繰り広げられるなど、両チームのファン以外も興奮させられる名勝負で沸かせてくれた▼今大会では、ロッテがシーズン3位から初めて日本シリーズに進出したことが話題となった。パ・リーグが上位3チームによるプレーオフ制度を取り入れてからまだ6年と歴史が浅いので、今後も同様のケースは出てくるだろう。このような逆転劇が期待できるからこそ、プレーオフ制度を取り入れたはずなのだ▼ややこしいのは、レギュラーシーズンで1位になったチームがプレーオフで敗れても、リーグ優勝として扱われること。リーグ2、3位のチームが日本シリーズで勝利しても「日本一」ではあるが「リーグ一」ではないのだ▼これは「ペナントレースで積み重ねた勝利のほうが、短期決戦の結果より重い」という判断が根拠となっているそうだが、それなら1位チームが自動的に日本シリーズに出場するのが筋ではないだろうか▼賛否両論あるプレーオフ制度だが、今年の日ハムとロッテの3位争いのように、シーズン終盤までペナントレースを盛り上げる原動力となっているのは確か。プレーオフ覇者がリーグ覇者としてすっきりとシリーズで戦えるように、再考を期待したい。(U)


11月7日(日)

●飽食の時代の、いわゆる現代病の一つに糖尿病がある。世界的に増え続け、対策が求められて久しい。その患者数は推定ながら、わが国で「疑いが強い人」で約890万人。しかも、4割が「治療を受けたことがない」という▼さらに「可能性を否定できない人」となると約1320万人いるそうで、合わせると注意対象者は約2210万人というから深刻である。一方、全世界では数年後に4億人を超える、とさえ言われ、とりわけ問題なのは食生活の乱れや運動不足が原因のケース▼糖尿病は初期の自覚症状が乏しく、手遅れになりがち。怖いのは気づかずに放っておくうちに、さまざまな合併症が誘発されること。わが国では糖尿病に伴う腎臓障害発症者が年間1万5千人、網膜症(視覚障害)は3千人と推計されている▼しつこいほどに啓発が行われ、世界的に取り組みの輪が広がっている理由は、そこにある。多くの国が11月を糖尿病月間と定めているのは端的な例だが、わが国では、さらに週間も。今年も全国的に8日から(14日は世界糖尿病デー)展開される▼もちろん道南各地でも。函館では13日午後、国際ホテルで市民糖尿病教室が開かれる。専門医の講演、栄養相談、血糖値測定サービスなど内容は多彩。頭では生活習慣病の一つで、鍵は「食と運動」であると理解している。ただ改善の実行となると…。教室は気持ちと意識を新たにする機会である。(A)


11月6日(土)

●米中間選挙はオバマ民主党政権の「歴史的惨敗」に終わった。日本の民主党も内憂外患が続き、一時の勢いが全く感じられない。経済や外交など国力の衰えは、端的にその国の政情不安となって表れる▼日本の場合、外交問題の揺らぎが顕著だ。尖閣諸島をめぐる中国側のけん制に振り回され、その直後、ロシア大統領の北方領土訪問という悪報が続いた。いずれも領土問題。ロシア側の外交戦略と取れないこともないが、日本にとってはまさに弱り目にたたり目である▼そもそも日本における外交の歴史は浅い。来航したペリーから開国を迫られた江戸幕府が右往左往し、一方で攘夷派は外敵を撃ち払おうと外国人に刀をかざす。幕末の混乱期からわずか1世紀半。現代に至るその間の日本外交にどれほどの成長がみられたか。こう問われると、いささかの不安が残る▼外交にはテクニックが必要とされる。中国やロシアのような強硬路線が正しいとは思えないが、それに対抗し得る技量ぐらいは身に付けたいものだ。押すところは押す、引くところは引く。そんなメリハリの利いた対外戦術が、日本の現政権には欠けている▼世界は今、地殻変動のただ中にある。中国やインドなどの新興市場大国が急伸し、タイやベトナムといったほかのアジア諸国も経済成長が著しい。外交でしのぎを削る相手は今後さらに増えるだろう。対外政策が幕末並みというのでは、やはり困る。(K)


11月5日(金)

●登山ブームの一方で、山の自然環境維持が課題になっている。北海道の日高、大雪山系も然りだが、登山者の数が圧倒的に多い富士山や剣岳などのアルプスはその類でない。対策として登山者から「協力金」を求めざるを得ないという▼山の環境を守る第一弾の取り組みは、ごみの持ち帰りだった。20年ほど前、大雪山系で環境庁のレインジャーの“ごみ拾い登山”を取材し、担ぎ切れない量に驚きを覚えたことがある。地道な啓蒙運動によって改善されつつあるとはいえ、まだまだ▼多くの人が入ることによる生態系への影響もさることながら、ごみ問題とともに重くのしかかっているのが排泄物の処理。最近はバイオ処理などが開発されてきているものの、抜本的な対策費として料金を求める山小屋も増えているという▼このほか危険回避のための登山ルートの整備にも金はかかる。富士山も環境対策、登山者対策の費用はこれまでは公費でまかなってきたが、もはや限界ということだろう。山梨側の富士吉田市が「協力金」(環境保全協力金)の検討に乗り出した▼来年7月の導入を目指しているという。金額の目安は、これからの議論に委ねられているが、最近、発表された5合目観光客調査は63%が導入に賛同しており、理解は得られる感触。自然の中に身を置いて、素晴らしい景観をたん能できるのだから多少の金額は…。「協力金」は時代が求める負担である。(A)


11月4日(木)

●子どものころ、けがややけどをした時、よく祖母がムカデの油を塗ってくれた。ムカデを半年くらい油に漬けると、溶けて、とろりとした油になる。かみ付く毒虫も感染を抑える塗り薬になるのだ▼セミの抜け殻には解熱作用があり、キノコに寄生されて死んだカイコの幼虫は喘息、破傷風に効き、カマキリの卵や乾燥させたカメムシは腎臓の働きをよくし、あのゴキブリも血液凝固抑制と肝臓障害にも効くという▼米国の製薬会社は抗がん剤を作る過程で、マダガスカル島に生息するニチニチソウの遺伝資源を使用。バイオテクノロジーが進歩すると、生物の遺伝子操作が可能になり、特に医薬品開発には欠かせないようだ▼受粉活動のミツバチがいなくなると、産業に大打撃を与える。利益配分をめぐって先進国と途上国が対立していた生物多様性名古屋会議では「生物多様性の損失を食い止めるための効果的な緊急行動を取る」と、公海を含む個別の数値目標も決めた▼感染症から人類を救った世界初の抗生物質ペニシリンはアオカビから作られた。大沼に映える鮮やかな紅葉も、やがては散って、その枯れ葉の堆積の中で人類を救う虫が生まれてくるだろう。その「蓼(たで)食う虫」が近い将来、われわれを助けてくれるかも知れない。生態系を壊さず、あくまでも多様な生物を守るのが最大の目的。多様性をはぐくむ里山の復活など実効性ある取り組みを進めなければ。(M)


11月3日(水)

●話題を呼んでいる映画「海炭市叙景」。先の東京国際映画祭では惜しくも受賞を逃したが、本紙によると、2回行われた上映はいずれも満席となるなど反応は上々で、全国公開で目指す観客動員数7万人に大きな弾みとなったよう▼昨年来、何度も報じられ、函館・道南の人なら、誰もが分かる話題。そう28歳の若さで文壇にデビューし、芥川賞の候補にも選ばれるなど将来を嘱望された函館出身の作家・佐藤泰志(1949─1990年)の小説が原作の映画である▼「函館出身の作家が書いた、函館がモデルの小説を映画にして残したい」。そんな市民有志の思いが大きく輪を広げ、製作資金集めに始まり、撮影への協力など、結集された情熱が完成へ導いた。ちなみにメガホンをとった熊切和嘉監督も北海道出身という▼当社は数年前「パコダテ人」という映画製作で、編集局を場所提供し、撮影のための新聞印刷などで協力した経験がある。それほどに函館が映画やドラマの舞台になっているのは、函館フイルムコミッションのホームページの撮影作品一覧からも明らか▼森田芳光監督の「海猫」(2004年)、辻仁成監督の「ACACIA」(2008年)など、この10年だけでも20本。だが、この「海炭市叙景」は、市民の想いという点で、それらと同列でない。次なる支援は、一人でも多くの市民が観ることである。函館から全国へ。27日の一般公開が迫っている。(A)


11月2日(火)

●予想通りといおうか、10月からのたばこ値上げが投げかけた波紋は大きい。大幅アップに対応するため、一部の喫煙者がたばこの買いだめに走った。そこまではまだいい。気になるのは、値上げに合わせて禁煙を決意した人たちの「その後」である▼禁煙補助薬の品薄状態が続いている。製薬会社大手のファイザー(東京)が販売する飲み薬「チャンピックス」がそれだ。禁煙の切り札的な存在に躍り出たことで、函館でも在庫切れとなる医療機関が続出。禁煙外来の多くは、新規患者の受け付け中止などの対応に追われている▼たばこの値上げを機に禁煙を—と考えていた喫煙者は、見事に肩透かしを食った。たばこ税を極端に引き上げた政府は、その後の現象をシミュレーションできなかったのか。禁煙希望者のいら立ちの声が聞こえる▼「健康の観点から(たばこ)の消費を抑制する」。政府は増税の理由をこう述べた。前例がない大幅値上げで国民のたばこ離れが加速することは十分に予測されたことだし、むしろそのための増税であったはず。禁煙の風潮をあおるだけあおり、後のことは製薬会社任せというのでは合点がいかない▼国の医療政策は、万事がこの調子である。地方の医療機関が悲鳴を上げる医師不足の問題もその一つ。しわ寄せはいつも弱者にくる。禁煙対策における知らぬ存ぜぬの姿勢もまた、健康国家づくりのお寒い現実を浮き彫りにしている。(K)


11月1日(月)

●予想通りといおうか、10月からのたばこ値上げが投げかけた波紋は大きい。大幅アップに対応するため、一部の喫煙者がたばこの買いだめに走った。そこまではまだいい。気になるのは、値上げに合わせて禁煙を決意した人たちの「その後」である▼禁煙補助薬の品薄状態が続いている。製薬会社大手のファイザー(東京)が販売する飲み薬「チャンピックス」がそれだ。禁煙の切り札的な存在に躍り出たことで、函館でも在庫切れとなる医療機関が続出。禁煙外来の多くは、新規患者の受け付け中止などの対応に追われている▼たばこの値上げを機に禁煙を—と考えていた喫煙者は、見事に肩透かしを食った。たばこ税を極端に引き上げた政府は、その後の現象をシミュレーションできなかったのか。禁煙希望者のいら立ちの声が聞こえる▼「健康の観点から(たばこ)の消費を抑制する」。政府は増税の理由をこう述べた。前例がない大幅値上げで国民のたばこ離れが加速することは十分に予測されたことだし、むしろそのための増税であったはず。禁煙の風潮をあおるだけあおり、後のことは製薬会社任せというのでは合点がいかない▼国の医療政策は、万事がこの調子である。地方の医療機関が悲鳴を上げる医師不足の問題もその一つ。しわ寄せはいつも弱者にくる。禁煙対策における知らぬ存ぜぬの姿勢もまた、健康国家づくりのお寒い現実を浮き彫りにしている。(K)