平成22年12月


12月31日(金)

●大みそかや正月に出される「口取り」をめぐり、社内で意見が割れた。年末年始の定番と主張する道産子に対し、道外勢の大半はそんな風習はないと言い切る。国民生活の均一化が顕著な日本において、最も地域差を感じさせるのが食の習慣だ▼北海道で言う口取りは「口取り菓子」を指す。和生菓子やようかんを中心に、奇数個を詰め合わせるのが特徴。本州以南の出身者にとって、おせちや雑煮などの正月料理の中で菓子類は異質、あるいは邪魔者と映るらしい▼口取りとはそもそも「馬のくつわを取ってひくこと」(広辞苑)だが、口取り肴(ざかな)だと「うま煮にした魚肉をきんとん、かまぼこ、卵焼、寄せ物などと盛り合わせたもの」(同)になる。結婚披露宴を招待制ではなく会費制とするなど、北海道民はある意味で合理性を追求する術に長けている。口取り肴が転じて口取り菓子になったという見方もできるが、実際はどうか▼これと同様に、おせちなどのメーン料理を大みそかに食べる地域も、北海道など全国の一部に限られているようだ。「おせちはやっぱり正月でしょ」と断言する道外勢との習慣の違いがどこからくるのか、詳しい人にご教示願いたい▼今年も残すところ今日一日限り。道南でも明るい話題、気の滅入るニュースが交錯した一年だったが、さて来年は—。北海道らしく、おせちと口取りを囲み、家族で新年の夢を語り合ってほしい。(K)


12月30日(木)

●「のど元過ぎれば熱さ忘れる」—。苦しいことがあっても、その痛みや感情はやがて薄らぎ、時に形を変えたりもする。人間とはよくできたもので、忘れることの繰り返しの中で初めて生を営むことができる。ただ、命にかかわる問題となると話は別。忘れずにしっかり覚えておくべきことも、決して少なくはない▼昨シーズンに猛威を振るった新型インフルエンザが、この冬もじわじわと患者を増やしている。ところが、街中にマスク姿の市民は少なく、あれほど品薄だった消毒液などの予防グッズも店頭に積まれたまま。「のど元過ぎれば—」の典型である▼市立函館保健所は27日、市内におけるインフルエンザ注意報を発令した。国立感染症研究所の調査では、特に新型インフルエンザの患者が12月に入って急増し、それまでの主流だった季節性のA香港型との割合が逆転した▼新型一色だった昨シーズンと異なり、今季の流行は季節性と新型が混在しているのが特徴。より幅広い年代に注意が必要だが、予防に対する意識が薄れがちなことが、やや気掛かりだ。ワクチンは十分な量が確保されているという。ぜひ早めの接種を▼不安をあおるつもりはないが、かつて世界中に広がったスペイン風邪は、第二波で毒性が強まり、多くの犠牲者を出した。注意するに越したことはない。手洗いやうがいの励行など昨シーズンの“合言葉”を今一度、思い返してほしい。(K)


12月29日(水)

●中2の孫娘が「大晦日になぜ大掃除するの」と素朴な質問。「すす払いが起源。神棚や仏壇を清め、家の内外を清掃し、1年に感謝し、新年の豊穣と平和と幸せを祈る行事だ」と答えておいた▼最近、大掃除に代わって「断捨離(だんしゃり)」なる言葉が、ちまたに使われている。ネットで検索したら、断=入ってくる要らないものを断つこと、捨=ガラクタを捨てること、離=物への執着心から離れて“自在”の空間へ移ること、とあった▼ヨガや座禅の断行・捨行・離行からきているようだ。断捨離の達人を「ダンシャリアン」と呼び、「断捨離のすすめ」なる本も出ている。「片づけコーチ」も増えてきた。たしかに後で読もうと切り取った新聞や資料が部屋の片隅にたまり、後で整理しようと思ったガラクタが山ほど…▼なかでも大掃除には「断行=執着を断つ」ことが肝心。あれも欲しい、これも欲しいという「欲望」があるから「何でも」抱え込んでしまう。一つのことにとらわれて、そこから離れられないのが執着。不要なものは捨てて、縁を切って、離れること▼断捨離という大掃除は部屋のゴミも心のゴミも勇気をもって捨てることだ。《ガラス窓親子で拭いてにらめっこ》という大掃除川柳があった。家族ぐるみで同じ目標に向かって作業する師走の光景。民主党は政治とカネをめぐる元代表と縁を断つことができるのだろうか。除夜の鐘を撞いて百八つの煩悩を捨てたい。(M)


12月28日(火)

●成人なら「メタボリック症候群」という言葉を知らない人はいないだろう。その抑制が国民的な課題になっていることの証だが、かといって日常の生活で注意を実践するとなると容易でない。ただ、意識だけは確実に浸透しているようで▼糖尿病などの生活習慣病は現代病とも呼ばれ、いわゆる境界レベルまで含めると、中高年世代ではかなりの割合に。国は約2000万人と推定する予備軍を10年後(平成27年度)には25%減らす数値目標を立て、2008(平成20)年度に特定検診制度を新設した▼それに基づき検診の際、腹囲を測られるようになったが、罹患状態か否かの目安は腹囲(体重管理)と血圧、血糖、中性脂肪。ちなみに日常的に管理できる腹囲の基準は男性85㌢、女性90㌢未満(日本肥満学会)であり、誰しもクリアしておきたいところ▼今月初めに厚労省が発表した調査結果(2009年国民健康・栄養調査)が興味深い。「メタボ予防のため体重管理などに注意を払っている」と答えた成人が男性で68%、女性で76%いたものの、具体的にどう実践しているかとなるとトーンダウン▼知られるように予防の基本は、適正な食事と無理なく続ける運動である。だが、多くは「注意はしつつも…」の域にとどまって、実践者は男性で28%、女性で24%という。やれそうでやれない、できそうでできない。メタボの予防の実践はその類の問いかけにも聞こえてくる。(A)


12月27日(月)

●空気の組成の78%を占める窒素。液体窒素はコンパクトで高圧装置なしで輸送可能な窒素ガスの供給源。使い切りの冷却剤として、鮮魚の瞬間冷凍や食料品などの輸送に使われている▼中高校では低温物理学の実験に欠かせない。先ほど、札幌の中学1年生の理科の授業で液体窒素の実験をしていたところ、30歳代の男性教諭が生徒70人の手のひらに液体窒素を数滴垂らした。手のひらに水泡ができ6人が軽傷、通院する生徒もいたという▼液体窒素で熱が奪われることなどを体感させようという実験。零下約196度にもなる沸点で、普通は生花やゴムボールを利用する。液体窒素が人体にかかった場合、皮膚表面で体温によって蒸発するが、凍傷になることもあり危険だ▼文科省によると、昨年度、精神疾患などで休職した公立学校の教諭は過去最多の5458人。うつ病から始まり、ノイローゼ、心身症になるパターン。「職責が重くなることに加え、体力の低下から自信をなくす例が多かった」と説明しているが…▼基本的には「子どもを過保護や過干渉にする親の増加」も教諭を激務に追い込んでいる一因とも言われているが、「液体窒素を人体にかけてはいけない」という科学実験の教育をおろそかにしてはいけない。教育実習など教員の資格をとるために勉強してきているはず。今年度に採用された男性教諭は「自分の知識が未熟だった」と話しているが…。(M)


12月26日(日)

●ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問を見誤り、政府は河野雅治・駐ロシア大使を事実上更迭する方針を決めた。旧ソ連時代を含め、ロシアの指導者が初めて北方領土を訪れたのは11月1日。河野大使は政府に「この時期の大統領訪問はない」と繰り返し伝えたという▼外交官は、自国の外交交渉を有利に運ぶための情報収集をしなければならない。だまし合いの世界だから、だまされぬよう相手の腹の内を探る。河野大使は「ロシア外務省が言っていた」と報告したという報道もあるが、本当ならば正直すぎる気がする。正面玄関から聞いて、まともに答えるような相手ではない▼そしてロ大統領は24日、北方4島について「すべてロシア領だ。日本は少し考えを変える必要がある」と述べた。日本へのけん制だが、外交の失敗が招いた事態であることは疑いない▼ロシア大使館が外務省情報をうのみにし、関係筋に当たらなかったとは思わない。しかし、今回に限らず、日本の外務省全体でロシア情報の収集能力が低下していることが言われている。良くも悪くも、鈴木宗男前衆院議員の影響力が省内から排除されるとともに、能力が下がったとの指摘もある▼結局、ロシアだけでなく、旧西側諸国や中国などの情報を含めた中から、大統領訪問を分析しなければならなかった。それができなかったのは、河野大使を筆頭とするロシア大使館だけの責任ではない。(P)


12月25日(土)

●「総額319億円」。この膨大な金額は覚えておいた方がいい。厳密でないまでも「約320億円」というぐらいは。何を隠そう、国庫から、つまり税金から各政党(共産党を除く)に支払われている政党交付金(政党助成金)の年間交付額である▼「政治と金」の問題は、一向に改善されない古くて新しい政治テーマ。腐敗を招く温床になっている企業や団体からの政治献金を制限する代わりに制度化された。1994(平成6)年のこと。政党助成法と関連法案が制定され、翌年から交付されるように▼支持政党などに関係なく、その国民負担額は一人当たり年間250円。共産党は「政治思想の自由に反する」として申請しない姿勢を貫いているが、他の要件を満たす政党は議席数や選挙での得票数など規定に基づく金額を受けている。その総額が上記の金額…▼2010年の政党別の交付額は、民主党が171億円、自民党が102億円など。すでに15年が経って、その交付額累計は4800億円にもなる。それで本当にクリーンになったのならまだしも、現実は旧態依然。小沢氏の問題ばかりか、不正常な使い方が後を絶たない▼飲食に始まり、最近は娘のゴルフツアーの同行に使ったという、あまりに情けない話まで。それでなくても政治に対する信頼は地に落ちたまま。「政党交付金も事業仕分けの対象にせよ」と言われても仕方ない現実をどう認識しているか。改めて聞いてみたい。(A)


12月24日(金)

●2010年も残りわずかとなり、忘年会シーズンもピークを迎えている。そんな中、忘年会から帰宅途中に行方不明となっていた39歳の女性が、凍死状態で田んぼで発見されるという痛ましいニュースが新潟から流れた。死亡原因はまだ特定されていないが、泥酔状態のまま意識を失った可能性が考えられるという▼酒の席での死亡事故といえば、大学の新入生歓迎会での急性アルコール中毒事故が社会問題化したことが記憶に新しい。大学側は指導を強化して防止に力を入れているが、一方で社会人の飲酒マナーについては個人の裁量に任されるのが現状だ▼日本独自の風習である忘年会は、12月中旬から終盤にかけて集中する。自分の会社、取引先、趣味仲間、友人同士など、付き合いが多くなれば連日のように酒宴にお誘いがかかる。酒の強さに自信のある人でも、アルコールが蓄積されていけば、酔いのダメージは大きくなる▼しかもこの時期は、夕方までは比較的暖かくても深夜にかけて一気に冷え込みが強まることが多い。ほろ酔い気分で帰宅する途中、うっかり道端で寝込んでしまったら、夏場なら風邪をひく程度で済まされるが、冬場は命の保証はない▼1年間の憂さ晴らしとしてはめを外して盛り上がってしまう忘年会だが、せっかくの楽しい席が悲劇を生んでしまっては元も子もない。自分の身の丈にあった正しい酒のたしなみ方を、今一度確認したい。(U)


12月23日(木)

●「今年こそは」と期待して何度、裏切られたことか。わが国の経済の話だが、いつまで経っても明るさが見えてこない。というより、一段と閉塞感が強まっている感じ。「まただめだったか」という思いを抱かせたまま、今年も終えようとしている▼近年の混迷ぶりは経済成長率の推移からも浮かび上がる。1974(昭和49)年—1990(平成2)年度の平均はプラス4・2%だった。それが1991(平成3)年—2009(平成21)年後はプラス0・8%。だが、ここ2年を単年度でみると…▼2008年度がマイナス4・1%、2009年度はマイナス2・4%。まだ途中の2010年度はどうか、政府は今年1月に1・4%のプラス成長を見込んだ。多くを望めないことははっきりしており、気持ちは来年度だが、それもどうか▼みずほ総合研究所が発表した来年度の経済見通しはプラス1・4%だが、その解説では「緩やかな回復軌道に戻るが、デフレ脱却には至らず」と。国内全体での判断でこうだから、北海道は…。北洋銀行、北海道銀行の経済見通しも物語っている▼北洋銀はマイナス0・8%、道銀はプラス0・1%。その道銀でさえ「成長実感の薄い『ゼロ成長』との位置づけが適切な見方」と説明している。「来年度もだめか」。ため息が出てくるが、肝心の政治も信頼薄ときては八方ふさがり。でも期待する、どうやら来年もそんな年になりそうだ。(A)


12月22日(水)

●「はこだてクリスマスファンタジー」(函館市・金森倉庫群)が、今年も冬の街並みに彩りを添えている。このイベントの主役は何といっても、巨大なモミの木。天高くそびえるメーンツリーの電飾が一斉に光を放つ光景は壮観だ▼クリスマスファンタジーの始まりは1997年。函館青年会議所が提案し、メンバーやOBらによる実行委員会が運営を続けてきた。曲折もあっただろうが、その苦労は市民や観光客の笑顔によって報われる。頑張ってこられた関係者の皆さんに感謝▼イルミネーションスポットは全国に点在する。東京・六本木ヒルズの「Artelligent Christmas」はその規模や豪華さから「ナンバー1」の折り紙つき。30回の歴史を誇る札幌市の「さっぽろホワイトイルミネーション」も、幻想的なライトアップが観光客らの支持を集める▼これら人気スポットの多くは大都市に集中している。飾り付けられる電球も半端な数ではない。いわば“物量作戦”で多くの人目を引くことにあり、巨大ツリーによる“豪華一点主義”の函館方式とは発想自体が異なる▼小都市の函館に分があるとすれば、街並みに対する美の意識が市民の間に根付いていることだろう。五稜郭の堀を電球で飾る「五稜星の夢」もその一つ。ビルをイルミネーションで飾る取り組みも盛んだ。点から線、そして面へ。東京や札幌に負けない函館の強みである。(K)


12月21日(火)

●ヒ素という原子を知ったのは高校生のころ、ヒ素の恐ろしさを知ったのは和歌山毒物カレー事件。カレーが入った鍋にひそかにヒ素を混入、4人が死亡した。無味無臭のヒ素は5〜7ミリグラムで死に至るという猛毒だ▼先ほど、米航空宇宙局(NASA)が「そのヒ素を食べて成長する細菌がいる」と発表した。ヒ素濃度の高い塩水湖「モノ湖」に生息する細菌を培養液で培養すると、細胞数が6日間で20倍以上に増え、ヒ素をDNAに取り組んで成長していることが確認された▼人間を含めた生命体は炭素、酸素、水素、リン、窒素、硫黄の6つの元素から成り立っているが、モノ湖の細菌はリンをヒ素に置き換えても生きることができるという。ヒ素を使う生物がいてもおかしくはないわけで、地球外の環境でも生命体存在の可能性が出てきた▼子どものころ、異星人が街を襲う迫力満点のラジオドラマ「宇宙戦争」(ウェルズ原作)にクギ付けになった。この時からか、タコのような形の火星人のイメージが広まって、地球外の生命体への関心が高まった▼リンの代わりに猛毒ヒ素を食べて成長する話は、生物の従来の常識を覆す「宇宙生物学上の発見」で、宇宙生命体へのロマンと夢を膨らませる。銀河系の惑星は億を超す。夜空の透き通った師走は、ふたご座流星群が見られた。21日には3年ぶりに皆既月食も見られる。知的生命体が“迷走する日本”を嘆いているかも。(M)


12月20日(月)

●「私を怒らないでください」。先輩社員が後輩からこう直訴されたという。ある大手メーカーの営業現場での話として新聞で報じられていたが、これは極端としても、似たような話は少なくない。優し過ぎず、厳し過ぎず、その加減は本当に難しい▼企業にとって、人は「人財」であり、育てたい、育ってほしいは共通の思い。「早く一人前に」。その思いが強いほど、上司や先輩の“指導”にも力が入ることになるが、子供の頃から怒られることに免疫を持たない若い人たちにとっては…▼「厳しく教える」のは、憎いからというより、期待をしているから。その裏にあるのは親心なのだが、必ずしも通じないのは、厳しさの受け止め方が世代によって異なる故。「昔と比べて今は…」という言い方が意味を持たなくなっていることが、端的に物語っている▼「ばかもの!」「この間、教えたばかりだろう!」「同じことを何度言わせるんだ!」。荒っぽい言葉、しかも大きな声での“指導”は、つい30年ほど前までなら普通だった。今の時代、同じことをやったら紛れもないパワハラの範ちゅう▼それにしても「怒らないでください」とは、正直というか、ストレートというか。言われた先輩は言葉に詰まったに違いない。自分だったらどう答えるか、思わず考えてしまうが、そこに普遍の正解はない。「人を育てる」というテーマは、それほどに難しいということなのだろう。(A)


12月19日(日)

●「6000」という、見方によっては気の遠くなるような数字は、地道な積み重ねによって初めて生まれる。オホーツク管内西興部村は、交通死亡事故ゼロの日の継続が、17日午前零時で5800日となった。同村では来夏の「6000」日達成を目指す▼道内の市町村では、過去に後志管内泊村で続いた8300日余りに次ぐ長い記録。西興部村では、ほぼ15年をかけて今の記録をつくった。道南の各市町もこれに負けずに、交通死亡事故撲滅に取り組んでほしい▼「6000」は、テレビ界でも重い意味を持つ。フジテレビ系列のバラエティー番組「笑っていいとも!」は、2006年に放送「6000」回を達成した。放送開始28年目の今年2月には、7000回に記録を更新。ギネスブックの認定を受けた経緯もある▼「6000」に迫る記録は函館にもある。その一つが、「たつみ食堂」(市内東川町6)の無休営業連続6000日。一時休業もあったが、再開後16年目でようやく大台がみえてきた。記録達成は30日の予定▼「たつみ食堂」はその名の通り、ラーメンや定食、丼ものなどを扱う正真正銘の「食堂」だ。おしゃれなレストランや洋風居酒屋などが台頭する中、街中で硬派な存在感を示す。本紙18日付の記事に載った店長・山田征勝さんの写真。「食堂のおやじさん」を地で行く人懐っこい笑顔には、「これからも頑張って」とつい声を掛けたくなる。(K)


12月18日(土)

●函館市の万代町に地域の人たちが気軽に集える「交流サロン」が開設されたという。改めて社会が抱える課題を知らされる思いだが、それは地域活動がかつてのように住民の自主性に頼るだけでは成り立たなくなった現実を物語っている▼人間関係の希薄化が叫ばれて久しい。職場もさることながら隣近所、地域は特に。少なくても30年ほど前までは違った。自宅の周辺なら、それぞれ家族構成などは分かっていたし、あいさつなどは当然のこと。そこにあったのは助け合いの精神だった▼おのずと連帯感が生まれ、リード役を担ったのが町会(町内会)。その根底は今も変わってはいないのに、社会環境や人間関係の価値観の変化は、微妙に狂っていって…。若い層ばかりか、高齢者もそんな世の流れの中に身を置き始めている▼函館には町内会運営のモデルと言われた時代がある。実際に加入率は高く、活気もあって、それに値する活動も伴っていた。町会ごとに持つ活動拠点の会館は、そのシンボルであり、今も他都市から来た人に感心されているが、近年は人の出入りなどでかつての姿はない▼「交流サロン」は町会会館に新たな息吹を送り込む試みでもある。独居の人が増えた今、地域の触れ合い、付き合いが大事と言われるが、そこに必要なのは誘い水。たとえ時間がかかろうとも、取り組みの一つひとつが他への広がりを導くとしたら、期待せずにいられない。(A)


12月17日(金)

●「性犯罪が目につく。特に女子は異性交遊に積極的」「好ましくない雑誌、映画、劇などの影響を受けやすい」…。半世紀前の青少年の非行化傾向の要因。とりわけ性的な知識は雑誌に頼る傾向にある▼20年ほど前、ある少女雑誌が付録にコンドームを付けたが「性交を奨励している…」と大問題になったことがある。先日、過激な性描写の漫画やアニメなどを、次のように規制した東京都の青少年健全育成条例の改正案が可決された▼刑罰法規に触れる性的行為の中でも、反社会性が強い強姦、児童買春や、民法で婚姻が禁止されている近親者間の性交などを、極めて当然なことのように描いたり、全編のほぼすべてをこうした描写に費やしたもの▼出版社は「成人マーク」を付け、書店はビニールなどで包装して成人コーナー(18歳以上)で販売するよう求めている。マークを付けなかったら、不健全図書に指定、警告を無視したら30万円以下の罰金が科せられる。当然、漫画家や出版業界は「表現の自由を侵害される」と猛反発▼漫画などが青少年に悪影響を及ぼすのは昔と何ら変わらない。もちろん、強姦などを「不当に賛美または誇張」した漫画を規制するのは結構なことだが、今はインターネットの時代。中学から高校生になると、サイトに規制をかけても“見てはならないシーン”を見ている。映像も含めて漫画、アニメのアングラ化の歯止めも必要ではないか。(M)


12月16日(木)

●驚かせるつもりはなかったが、ある読者は新聞をめくる手が思わず止まったという。無理もない。金髪に長さ3センチのまつげ、青々としたひげそりあと…。本紙12日付(14面)に載ったカラー写真は、ある意味で今年有数の衝撃度だったかもしれない▼「斬新な仮装 世の中明るく」の見出しで、丘の上温泉富士(函館市高松町)の番台に座る田原重子さん(57)を紹介した。この日の仮装は「オカマ」。気合の入った見事な化けっぷりが、訪れる人の笑いを誘う▼田原さんは同温泉のれっきとした支配人。日替わりの仮装にも理由がある。「みんなに明るくなってほしい」という顧客への強い思いがそれだ。本物の笑いは、リラックスした心にしか宿らない。つぼを心得た田原さんのパフォーマンスが、特にお年寄りに人気ということにも、素直にうなずかされる▼同じ日の紙面(1面)には、「悩み事聞きます」の記事も掲載された。傾聴ボランティアに取り組む北海道メンタル評議会が「メンタルカフェつどい」(同市北美原)を開設。専門職の「傾聴アソシエ」が悩みを抱える来店者の話に耳を傾けている▼「気持ちがすっきりして帰っていただければ」と関係者。この点、仮装して番台に座る田原さんの住民への思いと共通する。笑いを提供してくれたり、悩みを聞いてくれたりする場は、意外と身近に少ない。民間による地道な活動が長く続くよう祈りたい。(K)


12月15日(水)

●三井辨雄国土交通副大臣が注目される発言を繰り返している。国交省内で他局との統合論が浮上している北海道局について「自分の目の黒いうちは廃止しない」と明言した▼社会資本整備が遅れている本道にとって、北海道局の存廃問題は気をもむところだ。同局は開発予算の一括計上などを担っており、それが揺らぐと本道の公共工事や経済、雇用情勢はさらに深刻な状態になるだろう。もちろん、公共工事に頼らない産業基盤づくりが必要ではあるが▼三井氏は、民主党の小沢一郎元代表の国会招致問題についても言及。岡田克也幹事長が衆院政治倫理審査会での招致議決を求めたのに対し、「幹事長失格だ。今は党内融和が大事。近親憎悪みたいなことをやっていれば、国民が不幸だ」と強く批判した▼政倫審招致は、小沢氏の証人喚問を求める野党や世論に配慮したものとされるが、やはり根底には党内の勢力争いや問題のすりかえが見え隠れする。小沢氏の説明はもちろん大事だ。しかし、国民が今求めているのはマニフェストの実行、尖閣諸島や北方領土問題で中国やロシアに毅然とした態度を貫く外交、国民の生活を守る政治だ▼小沢氏の政倫審招致は結局、岡田幹事長に一任された。そして国民のための政治よりも党分裂や政界再編の動きに焦点が移った。「喫緊の課題は予算を通すことで、小沢さんの問題ではない」とする三井氏の主張は、説得力がある。(P)


12月14日(火)

●この1年の世相を反映した漢字に「暑」が選ばれた。記録的な猛暑が理由。菅直人首相は修行、苦行の「行」と書いた。大学生では就職で迷っている「迷」が1位に。国際学力テストでは日本の読解力が改善された「改」だろうか▼読解力の問題に挑戦。「在宅勤務」の説明文の中で「未来のやりかた」と「待ち受ける災難」という二つの文章はどのような関係ですか(答えは「対立した考えを述べている」)。数学力では「為替レート」など、高齢者には難解だ▼国際協力開発機構が3年ごと15歳を対象にした国際学力調査。知識が実生活に生かされているかを測る応用力調査で読解、数学、科学の3分野。昨年は65の国と地域が参加。日本は前回に比べ、読解で15位から8位、数学で10位から9位、科学は6位から5位に順位を上げた▼初回の10年前は数学が1位、科学が2位、読解力が8位。その後、順位を下げ続けた。文章や資料を読み取り、理由を記述する思考力を問う読解力は初回並みに改善された。全国的に学力テストを復活させたためか▼小説や新聞を読む生徒の得点が、読まない生徒より高いことも分かった。考えをまとめたり、企画書を作ったり、発表する力をつけたり。日常生活に必要な能力を身につけさせることが必要。どんな舞台でも通用する創造的な学力を養って、次回の国際テストでは「ナンバーワン」を目指して「頂」の漢字を選びたい。(M)


12月12日(日)

●函館の新グルメとして登場した「イカ塩辛コロッケ」が、話題を集めている。「イカが生臭くなくておいしい」「お酒に合いそう」「観光客にヒットするのでは」。報じた本紙によると、味わった人たちの感想は総じて好評という▼イカの塩辛といえば函館。15年ほど前、函館に赴任して間もなく、そのイカの塩辛で驚きと感動を経験した。バーベキューで、地元の人たちが焼けたジャガイモに塩辛を乗せて食べ始めたのである。ミスマッチだろう、と思いながら薦められるまま口に運んで見ると…▼これが何とも美味。どの塩辛が合うか、といった話まで聞いて、家でも結構食べることに。以来、ジャガイモにはバターでなく塩辛派になって、知人への宣伝役を担ったほど。まさに函館メニューだが、疑問だったのは、飲食店のメニューにほとんどなかったこと▼そんな経験があるから、この「イカ塩辛コロッケ」への期待は個人的にも大。「バターの風味とイカの食感がさくさくのコロッケを同時に楽しめる」というからなおさら。揚げたてはさぞや、と考えると、早く食してみたいという衝動がこみ上げてくる▼開発したスマートグルメマネジメントは現在、商品登録を出願中で、試行錯誤を重ね年明けに商品化したい考えという。現代は食に対する関心が高く、それだけに競争も激しいが、成否の鍵は地域の人たちの後押し。口コミでどう発信していくか、地元も試されている。(A)


12月11日(土)

●今年も残りわずかとなり、何かと気ぜわしい日々。「年末」という言葉から連想される一つに、恒例のジャンボ宝くじがあるが、発売が開始されて2週間余り。大晦日に吉報を運んできてくれるか否か、祈る気持ちで待つ人が多い▼「今年こそは」と迎えた2010年も、経済情勢は好転の兆しが伝わらずじまい。企業経営の現実は収入を減らし、就職すらままならない。そんな心理も加わってか、庶民の足を宝くじへと向けさせる。確率が低いとはいえ、常に誰かが当たっているのは事実。としたら…▼「たら」「れば」の話だが、何せ当選金の上は千万、億の単位。1等2億円(74本)と前後賞5千万円で3億円、2等1億円(370本)、その当選億万長者は444人(本)というから、まさしく夢の世界。年忘れラッキー賞(3万円・7万4千本)なら確率はなお高い▼こみ上げてくるのは「もしかしたら…」の思い。購入窓口や購入日などにこだわる気持ちにもなってこようというものだが、そんな中、先日の紙面にこんな記事が載っていた。「高額当選くじ26億円未換金」。それも過去の累積ではない▼昨年の年末ジャンボの話である。1等5本、2等4本、1等前後賞25本が、支払期限が1カ月後に迫った今もどこかで眠っているという。なんと、もったいない話か。「確認もれはありませんか」。ため息の一方で、そんな声をかけたくなってくる。ちなみに今年の発売は24日まで。(A)


12月10日(金)

●「賀状うづたかしかのひとよりは来ず」(桂信子)。山積みの年賀状の中に「かのひと」からのものがないことに気づく—。作者の心情がいろいろと想像される名句だ。意中の一枚があるかどうかはともかく、年賀状のやり取りはいつの世もやはり楽しい▼印刷業の「フタバ」(本社名古屋)は、ウェブサイトで「年賀状博物館」を展開している。歴史に詳しく、見応えがある。年賀状の取扱量は昭和初期に7億通を超すが、太平洋戦争以降の一時期には「お互に年賀状はよしませう」と書かれた自粛のポスターが張り出されたという▼自粛といえば、最近は「虚礼廃止」という“号令”を聞かなくなった。そもそも「虚礼」の定義自体があいまいであり、そんなことまで他人の指図は受けたくないというのが本音だ。「かのひと」の存在があればなおさらだろう▼一方では長引く不況の影響か、年賀状を出す1人当たりの枚数が年々減少している現実も。「パイロットコーポレーション」(本社東京)がビジネスマン・OLを対象に実施しているアンケートでは、今年出す枚数の平均は2000年台で最少の57枚(最多は2000年の81枚)だった▼住所・宛名は登録済みのデータを基に自動的に印刷され、デザインや写真の取り込みも自在。パソコン時代における年賀状の主流だが、一言ぐらいは手書きで—と買ったままの年賀状の山を横目に思う。差し出し受け付けは15日から。(K)


12月9日(木)

●「弁慶」は、強い者の比喩に使われる。一方で暴れん坊のイメージもあるから、その正体はなかなかつかみにくい。幼名は鬼若。“鬼の子”と恐れられるほどの巨体で生まれ、少年時代にはその名に見合う数々の武勇伝を残した▼成長後の武蔵坊弁慶は歌舞伎の「勧進帳」に登場する。飲酒をめぐるトラブルの渦中にある歌舞伎俳優の市川海老蔵さんも、弁慶役を経験している1人だ。初の歌舞伎公演となったパリ・オペラ座で、その演技が絶賛されたことは記憶に新しい▼トラブルでけがを負った海老蔵さんが記者会見に臨んだ。テレビに映し出される姿を見る限り、勇ましい弁慶のイメージはみじんもない。丁寧すぎるほどの受け答えを深い反省の表れと取るか、身に付いた演技の延長とみるか、その印象は受け手によって異なるところだ▼大相撲の元横綱・朝青龍は、その過激な言動でたびたび批判を浴びた。伝統、格式という意味においては歌舞伎の世界も同様で、海老蔵さんは歌舞伎出演の無期限謹慎という厳しい立場に追い込まれた。異例の展開に「歌舞伎400年の歴史に汚点を残した」という論調もある▼33歳という海老蔵さんの年齢に対して、社会は相応の分別を求める。一般常識を無視する行為は、本人も認める「おごり」以外の何物でもない。飲酒が“弁慶の泣き所”であれば、それを改めればいい。“鬼の子”のままでいられるほど、社会は寛容ではない。(K)


12月8日(水)

●情けの壺に咲いた花 涙の庭に散った花〜 淡谷のり子が若いころ、恋の憂いを歌った「私、此頃憂鬱よ」。木の中に缶詰があって…。残念ながら「鬱(うつ)」をちゃんと書けたためしはない。昔の人は「憂鬱よ」を口ずさみ書いたのだろうか▼ネット上では「リン(林)カーン(缶)は(ワ)アメリカン(※)コーヒー三杯…」とある。「鬱」は新しく常用漢字に入った196文字の一つ。部首は「鬯(ちょう)」で、酒の香りが立ちこめる様子。そこから憂鬱や鬱蒼(うっそう)の語ができた▼常用漢字の大幅な改定は29年ぶり。パソコンや携帯電話などの変換機能で漢字使用が容易になったことを受けて「書くのは難しいが打てる」漢字が選ばれている。語彙の「彙」、緻密の「緻」、嫉妬の「嫉」など▼学習指導要領では、中学生は常用漢字の「大体」が読めることが求められ、高校生は常用漢字の読みに「慣れる」と決められている。12年度から指導されるが、脱ゆとり教育で授業内容が全体に増えるのに、さらに「覚えなければならない漢字」が1割増えたら、どうなるのか心配…▼すでに使っている都道府県名の岡、茨、栃、埼などもようやく入った。私を「わたし」とも読めるようになった。ヒグマの熊、タンチョウの鶴も追加された。挨拶の追加も大歓迎。でも「おれおれ詐欺」の「俺俺」は追加しないで削除したいものだ。「罵る」もあまり使いたくない。(M)


12月7日(火)

●筆者が洋楽の世界に目覚めたのは中学1年の冬。当時は高額品だったレコードをひんぱんに買う余裕はなく、もっぱらFM番組を録音して楽しんでいたため、2週間の番組表が掲載されているFM雑誌は必需品だった▼初めて購入したFM雑誌の表紙を飾っていたのが、ジョン・レノン&ヨーコ・オノの「ダブルファンタジー」のジャケットだった。そのアーティストがとんでもない有名人であることを知ったのは、数日後のテレビニュースを通じてだった▼「ジョン・レノン凶弾に倒れる」。この事実に世界中の人々が打ちひしがれる姿は、昨年のマイケル・ジャクソンの衝撃をも上回っていた。筆者も彼の偉大さを知っていくなかで、存命中にその音楽に触れられなかったことを悔やんだ▼それから30年目の12月8日が巡ってくる。その間にジョージ・ハリスンも亡くなり、残された元ビートルズは2人になったが、いまだに復刻されたCDはベストセラーを続けている。最近ではジョンの青年時代を描いた映画「ノーウェアーボーイ ひとりぼっちのあいつ」も上映されるなど、人気は衰えることを知らない▼今年も「ハッピー・クリスマス」が街角から流れてくる季節になった。副題の「戦争は終わった」に象徴されるように、世界中の人々が平和の中でクリスマスを祝うことができることを願った作品だ。しかし没後30年を迎えても、ジョンの思いはまだ届いていない。(U)


12月6日(月)

●さすが京都、人を魅きつける地域力はけた違い。11月下旬、所用もあって訪れ、改めて教えられた。紅葉の時期ということもあるが、それにしても驚きの連続。ホテルはとれない。何とか確保できたが、訪れる先々では酔うほどの人の多さ▼どこも半端な混みようでない。嵐山・嵯峨野はレンタサイクルを決め込んだものの、危なくて半分以上は押して歩く始末。東福寺では午前8時半の開門時に数百人が並んでいた。その状態で夕方まで続くのだという。もちろん年がら年中そうではない▼3月中旬からの桜の季節と11月の紅葉の時期が特に、ということだが、共通しているのは金を使い、足を運んで、人混みを苦にしながらも、桜や紅葉を愛でる価値があること。全国から続々と訪れる理由はそこにある。函館の香雪園の紅葉も京都と比べてそん色ない▼今年のもみじフェスも2万人が訪れ、好評だったという。笹流公園などもライトアップすると紅葉観光の夢も広がる。京都の今日は、まさに「見せる」を意識した長年の取り組みが培ってきた成果であり、放っておいて出来上がったものではない▼訪れる人に対する気配りも優れている。一例だが、大原では10カ所ほど主な社寺へ向かう交通の便、乗り換え、所要時間を記したチラシが用意されていた。ガイドブックの案内基点はほとんど京都駅だけに、観光客にはうれしい限り。京都から学ぶことは函館にも多い。(A)


12月5日(日)

●函館の小学校でも給食に鯨肉メニューが加わった。33年前まで人気メニューだった「竜田揚げ」と「くじらの酢豚風」。当時のレシピを使って調理。児童たちは高タンパク、低脂肪でヘルシーな給食に大満足▼文科省の調査によると、相変わらず給食費を払わない保護者が多い。昨年度の公立小中学校の未納額は推計で26億円。未納の原因は「保護者としての責任感や規範意識の問題」が53・4%、「保護者の経済的な問題」が43・7%だった▼学校給食法は給食設備は自治体負担、食材は保護者負担と定めており、特に親の「責任感と規範意識」の希薄さが問題なのだ。塾に行かせる余裕があるのなら、高級車を乗り回す余裕があるのなら、給食費は払える▼経済的に苦しい家庭には補助を出す制度もある。三笠市のように少子化対策で無料にしている自治体もある。全国の小中学校が給食を無償化にしたら4800億円はかかる計算だが、子ども手当の数分の1で済むという。3歳未満の子ども手当が7000円増の2万円に決まった…▼子ども手当が大人手当にならないように、子ども手当の受給と給食費の引き落としを同一口座にするのも一考。1食200円足らずで栄養士は苦労している。児童たちは給食が一番の楽しみ。未納している保護者は一度、安価でおいしい給食のありがたさを体験してほしい。それとも、昔のように弁当を持たせてやりますか。(M)


12月4日(土)

●臨時国会が閉幕した。景気対策の補正予算こそ、なんとか成立したものの政治と金の問題をはじめ、あとは積み残したまま。衆参ねじれとはいえ、あまりに混迷した姿だけが浮かび上がり、政治に対する失望感をさらに助長させた印象▼民主党が政権を担って1年3カ月あまり。政治主導を掲げ、政治を変えると意気込んではみたものの、早くも空回り。御旗のマニフェストは影が薄くなるばかり。国民生活も改善されず、沖縄の米軍基地移設問題、尖閣での中国漁船事件の対応も疑問符付き▼さらに小沢元幹事長の資金疑惑は何も進ませることができず、閣僚の失言辞任というおまけまでつく始末。これでは内閣や政党の支持率を維持出来るはずがない。国民の疑問に答えていないのだから。この政府の右往左往ぶりが国会にも波及したか…▼閉幕段階には国会議員としての自覚の欠如、品格が問われる行動が表面に。議場での式典で5分ほどもおとなしくいられない、携帯電話を切っておくマナーも守れない、あまりに低レベルの行動であ然とするが、それが国会議員というのだから言葉がない▼政治の信頼回復が叫ばれて久しい。掛け声先行で一向に実現しないばかりか、逆に後退感すら覚える。政治不信を生み出しているのは政治家自身である。行動や言動に責任を持つのは、その原点。「国民が信じられる政府、国会に」。そんな思いが改めて、強くこみ上げてくる。(A)


12月3日(金)

●68年前の12月3日。シカゴ大学で核分裂の研究に当たっていたエリンコ・フェルミ教授(ノーベル物理学賞受賞)は、ガイガー計数管を助手に見せながら、核分裂装置のカドミウム棒を1本また1本と引き抜いていった▼ガイガー計数管の数値は上昇を続け、何本目かのカドミウム棒を抜いた時、臨界量に達し、緑色の原子の火がともった。正午を少し過ぎたころだった。原子力元年といわれ、3年後には広島、長崎に悲劇をもたらした原子爆弾が作られた…▼「イランが北朝鮮から中距離ミサイル『ムスダン』を19基入手。欧州主要国が射程に」「北朝鮮は『駄々っ子』だ」…。米国の内部告発サイトが暴露した米外交公電の北朝鮮に関する秘密文章。「(北の)独裁者は体がたるんだ年寄り」とも▼その北朝鮮は国民の窮乏をよそにウラン濃縮施設を建設中。米国の科学者に核燃料加工施設内で何と2000基の遠心分離機を備えた建物を公開した。グレープフルーツ大の高濃縮ウランがあれば原爆1個作れるといわれる▼フェルミ教授の妻はユダヤ人で夫妻がイタリアにいた時、ファシスト政権下で迫害を受けていた。米国に亡命したのは平和利用の原子力を開発したかったはず。核拡散防止条約の「非保有国には原子力の平和利用を認める」を守り、直ちにウラン濃縮施設を止めるべきだ。核物質の流出や密輸がはびこったら「ゼロになるのは核ではなく、人類」だ。(M)


12月2日(木)

●従来とは違う、新しいタイプのうつ病が広がりを見せているという。心身の不調を訴え、診断書を提出して休職。「気分転換が必要」として、医師の許可を得て海外旅行やサーフィンをするが、復職の日には具合が悪くて出社できない▼従来のうつは自分を責めるが、新しいうつは他人や社会を責めるという。従来の人たちは病気を隠し、少し前であれば、周囲に「気の持ちようの問題だ」としかられることもあった。時代が進み「従来のうつ」に対して理解が進んだためか、新しいうつの人たちは「自分はうつである」と語りたがるらしい▼患者が急増する中、最近は「うつ病」の診断書をもとにした、傷病手当などの不正受給が後を絶たない。うつは本来、自殺など命にかかわる病気で、基本的に周囲の理解が何より大切。詐病も含め、医師には的確な診断をしてほしいが、難しいケースもあるだろう▼企業や団体でも心の病の対策が進んでいるが、患者の増加は職場に深刻な影響を与える。もし「遊びは元気だが仕事はできない」とも受け取れる新しいうつがまん延すれば、残った社員はさらに仕事量が増え、過労状態になる▼新しいうつを甘えだと断言するのは乱暴だ。しかし、急増しているとなれば、ちゃっかり流行に乗った輩もいるのではないかと勘ぐりたくなる。一方で、これまで築いた「うつへの理解」を後退させてはならない。非常にデリケートで難しい問題だ。(P)


12月1日(水)

●昨年から本道を訪れる中国の観光客が増えている。一作年末に上映された正月映画「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」のロケが美しい自然景観を誇る釧路市などで行われ、多くの中国人を魅了し、本道ブームが起きているという▼函館を舞台にした映画やテレビ番組は年に数作品は見られる。自然やグルメばかりでなく、函館市電を特集する番組もある。これらが海外でも上映、放送されれば▼現在、函館で公開中の、佐藤泰志の遺作を市民が映画化した「海炭市叙景」が来年3月、フランスでドービル・アジア映画祭に出品される。函館のPRにもひと役買ってくれるだろう。その前に多くの市民が鑑賞し、全国に発信しなければならない▼先に函館で開かれた、中国人富裕層旅行者を本道・函館に誘致するための研修会でも、講師はプロモーションの大切さを話した。それに加え、来た以上は買い物をしてもらうため、土産品の充実さも説いた▼福岡では博多人形に100万円以上を使う中国人もいるとのこと。東京・浅草で外国人に人気のあるのは足袋(たび)やちょうちん。確かにそんな土産店が多い▼函館で海産物は外国人の目に止まらない。アクセサリーは漫画のキャラクターのものばかり。そういえば、木彫りのクマは八雲町が発祥。売店の片隅から中央に置けば、多くの外国人が手にするかもしれない。イカール星人グッズも頑張ってほしい。(R)