平成22年6月


6月30日(水)

●サッカーの優勝チームはどこか、皇室の離婚はあるか、クリスマスに雪が降るか…。何でも賭けることが好きなイギリス人。「賭けるかい」「いいとも」「何を」「ビール1杯」…。そんな会話が人間関係の潤滑油にもなっている▼角界を揺るがしている野球賭博。ブックメーカーを胴元、ギャンブルを賭博、手数料を寺銭と言えば、明るい紳士たちのゲームも後ろ暗い印象になる。いわくありげな行為は裏社会の人たちに弱みとして握られ、恐喝事件に発展した。しかし、当の力士たちは仲間内の賭けごとで、悪いことをしているという認識が薄かったようだ▼今回の事件で問題なのは、胴元に暴力団が関与し、寺銭が資金源として渡っていたことだ。友人同士でビール1杯を賭けるのと、暴力団に間接的に金を渡すのとでは本質的に違う▼相撲協会は財団法人、つまり社会の役に立つ公益法人だ。一部の協会幹部や力士たちがその本分を否定する行為をしたものだから、NHKには相撲中継の中止を求める電話や意見が殺到した。力士暴行死事件であれだけ批判され、外部から理事を入れるなど改革をしたにもかかわらず、また信用が失墜した▼親方の追放や関係した力士、理事を含む親方の謹慎など、外部委員会による勧告を相撲協会が受け入れ、名古屋場所の開催が決まった。しかし、角界を覆う霧や闇が晴れたわけではない。自浄能力が問われるが、先は全く見えない。(P)


6月29日(火)

●W杯の侍イレブンを応援しようとテレビをつけたら、「ブブー」と1億匹のハエの羽音のような重低音。そう、南アフリカの民族楽器「ブブゼラ」の音。昔は人を集める時や動物よけのために鳴らしていたという▼それがスタンドを埋めた4万人の観衆が一挙に鳴らしたら、ジェット機のエンジン音を超える大音量。長時間さらされると一過性難聴が懸念され、選手からは「監督の指示が聞こえない」という不満も出た。ブブゼラの音だけカットする技術も開発されたが…▼ブブゼラは現地語で「おいで」という意味。ブブゼラを鳴らし、歌い踊りながら応援するのが南ア流。開催国の伝統を封鎖すべきことでもない。侍イレブンは冷静に「ハエがたかるように何度もチャレンジ」(岡田監督)。追い払われても、すぐ別の仲間が群れをなして攻撃▼決勝トーナメントでは、まず強豪・パラグアイと対戦する。ブブゼラに加えて、もう一つの敵は「美人過ぎるサポーター」だ。自国旗をイメージしたカラーリングのセクシーな衣装を身にまとい、強烈な色香を放つモデルに“求愛”が殺到しているという▼侍イレブンにとって、世の男性を味方につけたセクシーな“女神”は脅威?だが、再び芸術的なフリーキックや絶妙なアシストを見せてほしい。チームが一つの生き物のように動き回る「チームフロー」で4強へ奇跡を起こせ。今夜も熱狂しよう。午後11時キックオフ。(M)


6月28日(月)

●サッカーW杯で日本代表が世界の16強入りし、国内はすっかりお祭り騒ぎだが、同時期に世界のトップの座に躍り出た日本人女性アスリートのニュースは、思いのほか扱いが小さい▼20日に最終ラウンドを迎えた米女子ゴルフツアーのショップライト・クラシックで、宮里藍が逆転で今季4勝目を挙げた。これにより、日本選手としては男女通じて初めての世界ランキング1位に輝いたのだ▼この日は、男子ゴルフの石川遼にも全米オープン上位入賞の期待がかかっていたが、こちらは最終日に大崩れし、前日の7位から33位に後退。宮里に比べればまだまだ経験不足であることが露呈した▼もちろん、宮里も最初から世界レベルの選手と対等に渡り合えたわけではない。日本女王の看板を掲げて2006年に米ツアーに乗り込むと、1年目こそ年間賞金ランキング22位と健闘したが、続く2年間は予選落ちの連続。しかし09年度に見事に復活を果たしランキング3位に躍進。今年度はすでに独走状態で、1987年の岡本綾子以来の米ツアー日本人女王誕生も夢ではない▼どんなに苦しい状況でも、日本に戻ることを選択せず自分が信じた道を進んだ宮里。サッカーや野球でも、国内でのスターの座を捨てて海外に渡る選手は少なくない。W杯で日本代表を引っ張る本田圭佑もその一人。宮里の活躍が彼の闘争心をさらに燃え上がらせてくれることに期待したい。(U)


6月27日(日)

●「函館市事業レビュー」と聞いて、「函館版事業仕分け」を連想できる人はそう多くはないだろう。「レビュー」には批評、論評の意味があり、この場合はむしろ日本語の「仕分け」のほうが通じがいい▼ともあれ、同市の事業レビューが7月下旬にスタートする。ここでは、市の内部検討で民間実施や業務委託、改善が必要とされた事業を中心に20事業を選び、その必要性について話し合う。学識経験者や経営の専門家のほか、2人の市民委員も公募するという▼事業仕分けといえば、政府の行政刷新会議による取り組みが知られる。次世代スーパーコンピューターの研究開発費をめぐり、仕分け人の1人が「世界1になる理由は何があるんでしょうか」「2位じゃダメなんでしょうか」とかみついたあれである。「劇場型」との批判をよそに、事業仕分けに対する国民人気は依然高い▼そもそも行政の事業仕分けは、政策シンクタンク「構想日本」が2002年から始めた。同シンクタンクのホームページによると、事業仕分けを予算編成に反映させた結果、「約1割の予算を削減できた」という自治体もある▼函館市の事業レビューも、この構想日本の手法を取り入れている。ここでは「前例踏襲主義」や「あれもこれも」という発想は通用しない。仕分けの成果は未知数だが、「無駄をなくそう」という市側の決意がどの程度のものか。すべてはそれにかかっている。(K)


6月26日(土)

●サッカー日本代表のユニホームに身を包んだ若者が、テレビカメラに向かって叫んだ。「これで景気も良くなりますよ」。ワールドカップで日本がデンマークを下し、決勝トーナメント進出を決めた後のテレビ映像だ。日本代表の健闘をたたえるファンが多い中、景気との関係に触れるコメントが印象に残った▼サッカーの勝敗が景気を左右するはずがない—と言うなかれ。自国開催ほどではないにせよ、経済効果は着実に表れている。深夜や未明の中継で寝不足が続けば栄養ドリンクなどがよく売れるだろうし、応援グッズも活発に動く▼日本—デンマーク戦があった25日未明の水道使用量が、ある地域で異常に跳ね上がったというニュースも。この試合のテレビ中継は平均視聴率が30%を超えた。日本代表が勝てば、いつもよりちょっといい肉を—と財布のひもが緩むことだってあるかもしれない▼連敗に対するバッシングから一転、明日を照らす期待の星に。日本代表の躍進は、民主党の支持率をV字回復させた菅直人首相の存在に似ている。評価が180度変わる集団心理の表れとする論評もあるが、その力は国勢をも動かす▼殺伐とした事件・事故が多い中、日本代表の頑張りは国民に元気を与えている。眠い目をこすりながらサッカー談議に興じる周囲を見ていてそう思う。このパワーを景気回復のカンフル剤に—と期待するのは欲張りすぎか。(K)


6月25日(金)

●マニフェスト(選挙公約)を本当に信用してもいいものか。不安は残るが、国民はこれを参考に1票を投じるしかない。少なくともテレビの政治ショーや街頭演説での“口約束”よりは拘束力があるはずだし、そう信じるに足るものであってほしい▼参院選が幕を開けた。数カ月前までは予想すらできなかった、消費税の増税問題が最大の争点に浮上している。各党のマニフェストもしかり。税制に関しては具体的な方向性を打ち出し、他党との違いを模索する意図が見て取れる▼しかし、二大政党としての対決軸が期待された民主、自民の両党がそろって消費税の増税を主張。有権者による選択の幅が狭まったこともそうだが、それ以上に具体的な税制論議がなぜ今まで置き去りにされてきたのかという疑問が残る▼マニフェストに関する気掛かりな点はほかにも。その一つが雇用問題。「求職者支援制度を法制化」(民主)、「職能別検定制度の活用」(自民)などの公約が並ぶが、いまさらといった感は否めない▼雇用問題は単独ではなく、経済対策との両輪で論議、解決されるべきものであることは分かる。が、そのことを差し引いても、雇用問題の改善に向けた国の対応の鈍さは目に余る。「働く貧困層」とも称されるワーキング・プアや失業者の増加は今に始まったわけではない。景気が良くなれば雇用問題も解消されると考えているとすれば、それは政治の傲慢である。(K)


6月24日(木)

●ヘレン・ケラーの名前はあまりに有名だが、その活動や生涯については意外と知られていない。三度の来日を果たしていることもその一つ。このうち1937年と48年の二回は、函館にも足を運んだ▼ヘレンはアメリカの教育家、社会福祉事業家。わずか1歳で耳と目を侵され、音、そして光を失った。言葉の存在すら知らないという三重の障害に立ち向かい、これを克服した後は世界各地で身体障害者の教育・福祉に尽くした▼函館を訪問した際のゆかりの品などを公開する「ヘレン・ケラー展」が28日まで、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町)で開かれている。ヘレンが伝えようとした障害福祉発展の理念を再確認するのが目的という▼同展開幕を伝える23日付本紙記事によると、当時の函館盲唖学院の生徒らがヘレンに日本文化を伝えようと作った神社・仏閣模型、ヘレンの直筆サイン色紙、写真などが会場に並ぶ。和服のプレゼントに大喜びする写真からはヘレンの人柄の一端がのぞく▼今年はちょうど、ヘレン生誕130年の記念すべき年。この間、日本の障害福祉は目覚ましい進展を遂げたが、残念ながら十分といえるものにはなっていない。「盲目であることは悲しいこと。けれど、目が見えるのに見ようとしないのはもっと悲しいこと」。現実を正視することの大切さを訴えたヘレンの言葉は、今後の障害福祉の在り方を示唆している。(K)


6月23日(水)

●今日も暮れゆく異国の丘に友よ辛かろ〜 インターネットでアニメ「うみねこのなく頃に」を検索していたら、なぜかシベリア抑留者が歌った「異国の丘」が流れていた。その抑留者に最大150万円の給付金が支給される▼先の大戦後、旧満州などからシベリアに連行された日本人は約60万人。北海道の北半分の占領を狙ったスターリンの要求を米国の大統領が拒否し、その代償として抑留を強行したと言われており、旧ソ連の極秘指令による犯罪行為▼極寒のシベリアでの森林伐採や鉄道建設など過酷な強制労働。飢えや寒さで約6万人が死亡し、生存している抑留者は約7万人。抑留は最長11年にもなる。しかも平均年齢88歳。強制労働の未払い賃金に相当する補償などを求めていた▼倒れちゃならない祖国の土に辿りつくまで その日まで〜 「異国の丘」で励まし合い、戦友に合掌して、“岸壁の母”が待つ京都の舞鶴港に降り立ったとき、支給されたのはたった1枚の毛布だったともいう。毛布1枚の命…。戦争が引き起こした拉致事件▼終戦から65年。やっと、先の国会でシベリア特別措置法が成立した。抑留期間に応じて1人当たり25万−150万円を現金支給するというが、強制労働の対価にはほ労働の対価にはほど遠い…。他界した遺族にも無念の思いが残る。措置法には抑留実態の調査と真相の解明も盛り込まれている。ようやくシベリア抑留者に陽が当たり始めた。(M)


6月22日(火)

●菅首相が消費税引き上げについて、10%にした際の増税分を「年金・医療・介護」の財源に充てる方針を示した。引き上げについては自民党も参院選の公約に掲げている▼昨年の衆院選で、予算の在り方を根本から改め、無駄をなくすと主張した民主党。子ども手当や高速道路無料化、農家への戸別所得補償などを約束した。しかし、道路特定財源の廃止や各種減税など、歳入の道筋を絶っての公約の実現は、当然ながら無理があった▼税収は落ち込むのに、2010年度一般会計予算の総額は過去最高の92兆円。「これ以上のバラマキは国家財政を破たんさせる」との声は、当の民主党内からも出た。そこで目を向けたのが消費税なら「安易」のそしりは免れないが、少子高齢化に伴う社会保障費の増大は勢いが止まらず、待ったなしの状態▼事業仕分けによる無駄遣いの削減には多くの国民が拍手を送ったが、言われたほどの財源は生まれなかった。しかし、消費税の増税分は10兆円。これで、年金・医療・介護の不足分が賄えるという。昨年と違い、財源を明確にした上で政策の充実を掲げたことは、入り口論では正しい▼増税分を社会保障費に充てれば、年金や医療に対する国民の不安が軽減されることが期待される。貯蓄に回るお金が消費に回ることにもなろう。ただし賛否は分かれる。一律10%にするのか、軽減税率をどうするのか。十分な議論が必要だ。(P)


6月21日(月)

●開幕前は驚くほど国民の期待度が低かったサッカーW杯のサムライジャパンが、今や日本中を熱狂の渦に巻き込んでいる。評価を一変させたのはカメルーン戦での勝利。本田圭佑のゴールがまさしく起死回生となった▼大会直前の強化試合でほとんど得点できない負け試合が続き、日本代表に対するファンのフラストレーションはピークに達していた。評論家と呼ばれる人たちの多くも「予選突破は不可能」と断言していた▼新ヒーローとなった本田だが、自信に満ちた大胆発言から「ビッグマウス」と呼ばれ一般的な人気は低かった。しかし同タイプの中田英寿やイチローが結果を出すことで評価を高めたように、本田の有言実行のスタイルは一気に支持を広げた▼続くオランダ戦で惜敗したものの、デンマークとの予選最終戦に勝つか引き分ければ決勝トーナメント進出が決まる日本代表。評論家のほとんどが絵空事として冷笑していた岡田監督が掲げた目標「ベスト4入り」も、組み合わせ次第では夢ではなくなってきた▼ところで、日本代表の活躍に今もっともあやかりたいと思っているのは、菅直人首相かもしれない。奇しくも参院選の投票日はW杯決勝戦と同じ日。ともに国民の支持率がどん底状態からスタートした点では共通するが、民主党にも本田のようなニューヒーローが現れ、7月11日に決勝ゴールを決めてくれるのだろうか。(U)


6月20日(日)

●ヒグマによる農業被害が後を絶たない。時には人がクマと遭遇するケースも。帯広市内では今月上旬、山菜採りの60代女性がクマに襲われて死亡した。桧山管内では過去に同様の事故が発生している。最近もヒグマの目撃情報が相次ぐなど、特に山間部では注意が必要だ▼そのヒグマの、高い学習能力に関する記事が本紙に載った(19日付15面)。有害鳥獣駆除に使われる「箱わな」の効果が薄れ、ヒグマの捕獲が難しくなっているという。わなを避けて農地に近づく。あるいは、わなをひっくり返して破壊する。いずれの例もヒグマの知能の高さを示すものだ▼「ほかのクマや子グマがわなにかかった様子を見て危険なものだと学習している」。地元対策協議会での現状報告は、クマの生態に詳しい関係者を納得させる内容だった▼翻って人間界では—。子どもたちが被害者となる犯罪の多発が社会問題化。危険予測・回避能力を子どもに身に付けてもらおうという活動が、学校や地域で広がりをみせている。内容としては「不審者対策」に主眼を置くものが多い▼ヒグマの場合は、人や農作物の被害やその危険性がない限り、駆除の対象とはならない。いわば人とクマの共存、すみ分けが前提となる。これが人間だと、子どもを不審者に近づけない徹底した対策が不可欠だ。ヒグマのように、危険な目に遭って初めて回避能力を身に付けていたのでは遅い。(K)


6月19日(土)

●好きな子が隣だとハッピーになり勉強もするようになる。嫌いな子が隣だと顔を見るのもいやで不登校になる…。多情多感な高校生の席替えは難しい。15歳の女高生が隣席の同級生を刺すという事件が起きた▼横浜の私立女子高校。国語の授業中に、おとなしい生徒が左席の活発な生徒のわき腹を刃物で刺した。2人の席は教室最後部の窓際。女性教員は黒板に向かっており、周りの生徒が「痛い」という声で振り返るまで気付かなかったという▼「机の上に勝手に荷物を置いたり、うるさくて先生の声が聞こえなかったり、友だちの悪口を言ったり…。憎くなってケガさせようと思った」と話している。2人は入学時から隣席で5月末の席替えでも隣同士になった▼一般的に席替えは、抽選方式、話し合い方式、担任が決めるの3タイプ。身長の高さ順、成績順も。いずれも視力や聴力などの関係で前の席が必要な生徒を優先させることが必要。大半は学期ごとに席替えしているが、なぜか窓側の一番後ろが人気だ▼今回、刺された生徒が「もう一度、席替えしてほしい」と訴えていたという。席替えする時は、次回の席替えの時期を決めておく、今回席替えが納得できない生徒への対応もはっきりさせておくことが大事。先生が生徒の喜怒哀楽を把握できるような席替えはないものか。アメリカは席替えなどなく、自由。月に一度“フリーシートの日”ぐらいあってもいいのでは。(M)


6月18日(金)

●中央競馬の函館シリーズが19日、開幕する。今年は函館競馬場が1年余をかけた建て替えを終え、優美に新装なっての開催であるほか、イベントも初日から多彩。レースでは注目の種牡馬が送り出した初産駒の登場など話題が多い▼美しい建物の景観は目を見張るばかり。電車通から見ると、まず整然としたたたずまいの前庭が目に飛び込んでくる。さらに足を運んで入った内部は明るくゆったり感にあふれ機能的。スタンドもきれいになるなど新しい競馬場の雰囲気は随所に▼そのコンセプトは「リゾート地の開放感あふれる競馬場」「人と馬の距離が近い競馬場」という。今年の開催は8月8日までの土日延べ16日間。初日の19日に大泉洋、フリーパスの日の20日はお笑いコンビのオードリーが登場して盛り上げる▼メジロライアンやウイニングチケットなど、かつての名馬もGⅢ(函館スプリングステークスなど)の開催日に再来する。一方、レースでは、2歳馬からも目が離せない。ディープインパクトやハーツクライの初産駒がどう走るか、競馬ファンの楽しみは広がる▼一流ジョッキーもやってくる。横山典弘騎手が函館市の観光大使に就任したが、競馬場が取り持った縁であり、中央競馬が函館観光に寄与していることの証し。特に今年は観光面で寄せられる期待は大きい。まばゆい緑の芝、砂煙をあげてダートを疾走する…その雄姿は、あす函館に戻ってくる。(A)


6月17日(木)

●先日、函館市芸術ホールで開かれたリサイタルで、前半の途中で客席からカメラのストロボが光ったという。休憩時間に観客が怒号を上げ、ホール職員も心無い観客を探したが不明だったいう▼この日は東京出張から帰った日。羽田で函館に向かう飛行機内で全乗客が席に着いた時、前の列から携帯電話のベルが聞こえた。持ち主は慌てる様子もなくかばんから電話を取り出し、ベルが機内で大きく鳴り響いた▼次の瞬間、「もしもし、今、飛行機の中」と女性の声。電話を掛けた人はさぞ驚いたろう。客室乗務員が電話を止めるように注意するも約30秒の通話。今どき携帯電話の電源を確認せずに乗るとは…と思っていたら、その夜に公演中の“事件”を聞かされた▼ストロボを使用せずとも、デジタルカメラは背面のモニターで周辺の客席を照らす。オートフォーカスの補助光点滅はステージ上の演奏者の気を紛らわす。携帯電話の時計を見るため画面を開くと前述通りモニターが暗やみで光る。光害である。マナーモードも振動音は静かではない▼市文化・スポーツ振興財団が発行した「ざいだんポケットガイド」では「出演者とスタッフが一丸となり、お客様に楽しんでいただくため力を合わせています。皆さんも素晴らしい瞬間を作る一員になってください」と訴える。マナーは観客同士のためではなく出演者への礼儀。感動を頂くのだから守るべきである。(R)


6月16日(水)

●「ブブゼラ」は、アフリカ諸国を除く世界中を敵に回した—。大げさかもしれないが、こう思われても仕方がないほど、ブブゼラに対する風当たりが強まっている▼ブブゼラは南アフリカの民族楽器。長さ1メートルほどのラッパの一種で、よく響く重低音が特徴だ。同国ではサッカー応援の必須アイテムであり、開催中のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で一躍、世界中に知られるようになった▼悪評の理由は、競技場を揺るがす大音響に尽きる。選手間の連携や監督の指示がかき消されるといった試合進行上の問題点のほか、その影響は観客の健康被害にも及ぶ。現地では、防音対策の耳栓が品薄状態という▼日本が勝利を収めた14日のW杯初戦でも、対戦相手のカメルーンを応援するブブゼラの音が鳴り響いた。ただし、両国の国歌が流れるときには、この音がぴたりと止む。アフリカ各国のサポーターが、世界基準の応援マナーを順守していることは最低限認めるべきだろう。ブブゼラの音が耳触り、というのとは別次元の話である▼中国の二胡、インドのシタール、中南米のケーナなど、民族楽器は世界中にある。尺八などは日本特有の楽器だし、民族的なものではアイヌ民族のムックリも現代に受け継がれている。ブブゼラのようにサッカーの応援に使われる民族楽器は少ないが、これも文化の一つ。そう割り切れば大音響もさほど気にならなくなる。(K)


6月15日(火)

●石川県民はさぞかしむなしい気持ちに違いない。自らの高額退職金を巡る県知事の言動(7日)で。読売新聞などが報じていたが、今の時代にあまりにも不見識というか。「選挙期間中、退職手当の話は全く出なかった」から当然の権利だと▼それに黙っていられないのは、その額が半端でないから。4056万円である。厳しい経済情勢は変わらず、地方では官民の給与や退職金格差が指摘され、首長の報酬や退職金の見直しは時代の流れ。報酬一部返上、退職金減額は常識の域にある▼中小企業の退職金は新卒で定年まで働いても、せいぜい1000万円。選挙を経ての要職である知事と同一の物差しで比較するのは的を射ていないが、それにしても1期(4年)で4000万円である。ちなみに4期での退職金総額は1億7472万円という▼確かに条例の規定に則っている、法的に問題があるわけでない。選挙中に約束したか否か、が問題の本質ではない。問われているのは知事としての見識であり良識。少なくとも疑問を持たれ、ひんしゅくを買う発言だった。さらに…▼「(選挙の際に)政策協定にも(退職金問題は)入っていない」とも発言しているという。それは今年3月に行われ、新人3人を大差で退けた知事選のことだが、謙虚さもなければ説得力もない。伝わってくるのは開き直りの姿勢と5期目のおごり。俗に言う多選の弊害の一片が透けて見えてくる。(A)


6月14日(月)

●ツチクジラの赤肉を盛り込んだ和風竜田揚げ弁当。松前沖で獲れた体長10メートル、重さ9トンのクジラ。ショウガじょうゆに漬け込んで臭みを取り、水でといたカタクリ粉で肉も柔らかく。市役所食堂の自慢の一品▼函館と捕鯨の縁は古い。開港時、アメリカの捕鯨船がひんぱんに入港。アメリカ式捕鯨を経験したジョン万次郎が指導した。西部地区の千歳坂には捕鯨を続けた、船長兼砲手の天野太輔が83歳で世の無常を感じて建てた鯨族供養塔がある▼碑には「度々、親子の鯨も捕獲せざるを得ず、その生命を奪ってきた。妻や3人の子を亡くし、老いるこの頃、痛切に世の無常を感じ…」刻まれる。山口県にある鯨墓の供養の詩にも「沖で鯨の子が鳴る鐘を聞きながら、死んだ父さん、母さんこいしと、泣いている…」▼今は南の海から子クジラを連れて北上。津軽海峡や渡島半島沖に来ている。先ほど、松前沖で獲れたツチクジラにも子どもがいたかも知れない。「父さん、母さん、恋いし…」と泣いているかな。人は他の動物の犠牲があって生きている。調査捕鯨は国際法違反ではない▼調査捕鯨船に酪酸入りビンを投げ込んだ反捕鯨団体の船長に「危険かつ悪質」と懲役2年が求刑された。当然だ。クジラ汁、竜田揚げ、刺し身…函館の食文化の代表格。15日には供養塔で慰霊祭。近くの函館西中学校の生徒たちが「クジラさん、ありがとう」と清掃した。(M)


6月13日(日)

●泣くな小鳩よ心の〜 昔、こんな歌謡曲があった。最低限でも県外、クリーンな国づくり、自分の言葉に酔って漂流した「宇宙人」は政治とカネの責任を取って退散。後を引き継いだ短気な性格の「イラカン星人」の航海も前途多難だ▼下界のみにくい政争をよそに、金星探査機「あかつき」は毎日、約40万㌔ずつ地球から遠ざかっている。「去りゆく地球」をどうとらえているのか。かたや、地球と火星の間を回る小惑星・イトカワの岩石採集を目指した探査機「はやぶさ」が13日に帰還する▼7年前に打ち上げられた「はやぶさ」。新型イオンエンジンなど米国ですら成功していない宇宙開発に挑戦。行方不明になったり、エンジンが止まったり、何度も致命的なトラブルに見舞われても不死鳥のようによみがえった▼あきらめず、あらゆる可能性に挑んだ姿勢は、宇宙ファンのみならず、国民を感動させた。刻々と帰還する「はやぶさ」に「近づく地球」はどう映っているだろうか。相変わらず「政治とカネ」。事務所費を巡る問題で公開された領収書を見て、ただあきれるばかり▼少女コミックや音楽CD、靴下、キャミソール…。事務所費は「家賃、保険料、電話代など事務所の維持に必要とされるもの」と定義されている。庶民は稼いだ自分の金で生活用品を買っている。それを税金で買うなんて許されない。「あかつき」や「はやぶさ」を見習え。「情けない」と怒っている。(M)


6月12日(土)

●夢を描くことは政治に必要な要件だが、実感とかけ離れていると、逆に冷ややかになってしまう。つい最近もそんな思いを抱かせる話があった。そう目くじらをたてるなよ、と言われれば返す言葉もないが、何故か気にかかった▼「最低賃金、目標1000円」「政府 20年までの達成目指す」。その記事には、こんな見出しがついていた。確かに「目標」で、10年後のことではあるが、だからと言って「そうか」と聞き流すわけにはいかない。なにせ生活にかかわる話である▼経済情勢をどう見通したか、素朴な疑問だった。改めて説明するまでもなく、最低賃金(時間額)は労働者の利益を保護する大事な公的規制。都道府県別に定められ、北海道は現在678円。ちなみに10年前の2000(平成12)年は633円だった▼アップ額は10年かかって45円。かつて1年で20円強上がった例もあるが、それは経済情勢の良かった時代。この先はどうか、識者の間の見解も分かれるところだが、そんな中で経済戦略対話(政府・経済界)が打ち出した。「10年後の1000円」▼その達成の前提が実質2%の経済成長率と聞くと、疑問符はさらに。企業がついていけない最低賃金では意味がない。雇用情勢は厳しいまま、非正規労働者の増加傾向も続いている。夢を描くのは結構だが、裏づけをしっかり描いてからでなければ。今、政府に求められているのは1年、2年後の目標である。(A)


6月11日(金)

●20数年前に「おニャン子クラブ」で社会現象を巻き起こしたプロデューサーの秋元康氏が、アイドル不毛の時代に新たに仕掛けた「AKB48」。当初はおニャン子の二番煎じと冷ややかな見方もされていたが、気がつけば芸能ニュースのトップを飾る存在にまで成長した▼9日に行われた第2回「AKB選抜総選挙」。かわいい女の子たちが集合した一見華やかなステージ上では、生き残りをかけた壮絶なバトルが繰り広げられた▼この選挙は単に各メンバーの人気をランク付けすることだけが目的ではない。上位12人までがテレビや雑誌などのプロモーション活動に参加でき、24人までに次回シングル曲、40人までにカップリング曲を歌う権利が与えられるなど、その結果が活動内容に大きな格差をもたらすのだ▼そのためお気に入りメンバーを抱えるファンが選挙にかける意気込みもすさまじい。シングル1枚購入ごとに与えられる投票権を求め、一人で700枚購入したつわ者もいたという。そして注目の選挙結果は、前回2位の大島優子(21)が同1位の前田敦子(18)を破る“政権交代”が起こった▼敗れた前田のコメントが印象深かった。「正直悔しいけど、まだまだ認められていないという事実を受け止めながら精一杯がんばっていきます」。この謙虚な態度こそが“政権奪回”への第一歩。かつての政権与党も18歳のアイドルから見習う部分があるのでは。(U)


6月10日(木)

●「共進会」といえば、家畜の品評会が一般的だ。牛馬の体型や毛並みの美しさを審査して競りにかける。もともとは明治政府が産業振興のため、茶や生糸などの展示会を各地で開いたのが始まり▼以前、共進会を取材したとき、和牛の審査のポイントを関係者に聞いた。答えは「サシ(霜降り)の混入と歩留まり(枝肉が残る割合)」。肉のうまみがとろける霜降りは芸術品で、それを含めた肉が多く取れればいい牛に違いない▼家畜伝染病の口蹄疫に揺れる宮崎県で。殺処分された「忠富士」の場合、子の肉質は良く、サシの入りも上々だったという。唯一関係者をほっとさせたのは、最後に残ったエース級種牛5頭の検査結果がシロだったこと。宮崎だけでなく、松阪や近江など全国のブランド和牛の供給源が守られそうだ▼牛でも豚でも、口蹄疫は発症しても死なない確率が高い。なぜ殺されるのか。被害の拡大防止はもちろんだが、感染牛は乳や肉の量が落ちるためだ。生産量や歩留まりの高さが常に優先される家畜の悲しさがある▼口蹄疫の余波で、函館・道南でも国内屈指のオフロードバイクレースや、感染しないとされるどさんこ馬のイベントなどの中止が決まった。そして政治の舞台では、被害を拡大させた責任論も出ている。もちろん、その不手際は大きいが、いま大事なことは、これ以上被害を広げずに終息させることだ。“犯人探し”はその後でいい。(P)


6月9日(水)

●旅行先で土産のまんじゅうを買う。おいしそうなので自宅用にもう一箱。帰宅後、期待しながら口へ。何のことはない。駄菓子屋でも売っているような味ではないか。包装紙を替えれば、同じ中身でも目には違って映る。しまったと思った時にはもう遅い▼同じようなことは書店でも。古い小説の文庫本が、新装版をうたって店頭に並ぶ。活字が大きくなるなど、変化があるものはまだいい。人気アイドルの写真や漫画を使い、表紙だけを替えたものがいかに多いことか。これだけで売り上げが伸びるというから不思議だ▼菅内閣が8日に発足した。新閣僚の顔ぶれからは、若さと清新さを前面に打ち出すための腐心の跡が見て取れる。スタート当初のつまずきは許されない—。この命題への緊張感が、常に民主党関係者の間にあるという▼報道各社の世論調査では、菅直人新首相に「期待する」との声が6割前後と高かった。鳩山内閣末期の低迷からは、にわかに信じられない高支持率である。野党が批判する「表紙のすげ替え」だけでこれほどの激変を生むのだから、組閣後の調査結果もある程度の予測はつく▼ただし、政府・民主党の政策は根幹部分で何ら変わらないし、大きく変えるべきものでもない。党内部の一部にはマニフェスト(政権公約)の見直しを示唆する意見もあるが、言えることは一つ。中身のまんじゅうがおいしくなければ、すぐに捨てられる。(K)


6月8日(火)

●求人情報を見ていると、自分がこの求人に該当するのか、判断しかねることがある。そう男女の区別と年齢の記載がないから。年齢はあっても大まかであり、結局、職種や勤務条件などから求人側の本音を推し量るしかない▼だからと言って、法律の規制がある以上、求人側を責めることはできない。誰もが知るように男女別記載の禁止は男女雇用均等法で。配置、昇進、福利等で男女の差別的扱いはしてならず、採用に当たっても男性のみ、女性のみの求人は禁止…▼年齢については改正雇用対策法(2001年)と改正高齢者雇用安定法(2004年)で。まま認められるケースはあるが、あくまで例外的。その結果、例えば職種が「経理事務」とすると、求職者はどう判断すればいいのか思い悩む▼求めているのは男性なのか女性なのか、また若い人なのか年配者なのか。それでも、この業種、この会社なら、と応募しても、隠されている求人側の採用像と違うと、書類で門前払いのごとくはじかれることに。それなら最初から言ってくれよ、とも言いたくなる▼実態的には、本音が隠された求人、なのである。履歴書に記された男女や年齢はいわば第一次選考。募集に当たって求人側には、男女や年齢を含め“求める人材像”があるのだから。法律の精神は当然だが、この規制がなければ成り立たない精神ではない。求人側の腹積もりを規制できるなら別だが。(A)


6月6日(日)

●子ども手当の支給が、道南各地でも始まる。受け取った側は、手当を何に使うのか。他人の財布とはいえ、気になるところだ。7日に支給予定の函館市で、支給対象者などに聞いた(15面に詳細記事)。その答えからは、子ども手当の明暗が浮かび上がる▼使い道で多かったのは「貯金」だが、これは全国的な傾向と合致するから特に驚かない。習い事や塾の費用に充てるという家庭もあるだろう。「子どもと一緒のレジャーに」、あるいは「きょう、あすの食費に困っていた」とスーパーに直行する親がいても不思議はない▼要は家庭の事情は千差万別ということだ。支給される現金に色は付いていない。「子育て支援」という支給目的も、その意味合いをどう取るかは人さまざま。どんな使い方をしようと本来は、他人からの批判の対象にはなり得ないはずである▼東京・日の出町による独自の政策が注目されている。ここでは現金ではなく、「次世代育成クーポン」を発行。用途が限られているため、確実に子育てを目的にクーポンは消費される。同町への転居家庭が多く、少子化対策の一助にもなっているという▼だからといって、国の子ども手当を全面否定することにはならない。支給を心待ちにする家庭は多いし、仮に支給方法などに問題があるとすればそのつど改善していけばいい。ただし、手当を発案した民主党政権がそれまで持つかどうかは保証の限りでない。(K)


6月5日(土)

●平成に入って16人目、新しい総理大臣に菅直人氏が就任した。諸外国から代わり過ぎ、信頼関係を築けないと指摘されても返す言葉もないほどだが、超駆け足の選任劇も然り。しかも自民党と同じ形式とあっては新鮮さもない▼自民党が批判された一面に「派閥」があり、よく派閥政治と糾弾されたが、民主党は違うかといえばそうではない。今風に「グループ」と呼んでいるだけで、今回の代表選で国民に目に映ったのもグループという名の「派閥」間の駆け引きだった▼政治空白は許されないとはいえ、せめて公開討論とか、開かれた形にすべきだったという意見があるのは当然。候補2人は理念というか思いを披瀝したに過ぎず、まさに国民不在。せめて当面する政治課題への考え方や対処姿勢ぐらい語らせなければ▼鳩山前総理退陣の引き金になった米軍普天間飛行場の移設問題、小沢前幹事長らの政治とカネの問題をどう考え、どう対処しようとするのか。さらに経済対策、財政再建や積み残されている高速道路料金問題…。外交では諸外国との信頼関係構築もある▼総理大臣となる人を実質的に選ぶ代表選だから言うのだが、残念ながら踏み込んだ政策論議は聞けなかった。就任してからの話、というのでは後出しジャンケンみたいなもの。スケジュール一つとっても国会対策の駆け引き優先。悲しいかな、それも自民党政権時代と少しも変わっていなかった。(A)


6月4日(金)

●青森は「12月4日」で盛り上がっている。そう、東北新幹線が八戸から延伸し、青森市内に乗り入れる新青森開業の日である。先日、ある会合で訪れた際、挨拶をする人はこぞって「12月4日」に対する期待感を口にした▼地域として長年、この日を待ち望んできたのだから当然といえば当然。これを機に何かが変わる、変える歴史的機会なのだから、気持ちは痛いほど分かる。その新青森駅は本体がほぼ出来上がって、駅舎前の外構工事が行われていたが、一帯は新時代の雰囲気▼一方の現青森駅前も「新青森駅に主役の座は渡さないぞ」と言わんばかりに、近代的な装いに一変した。外資のビジネスホテルが正面に建ち並び、懐かしいかつての市場の跡はコンクリートの広場となって、活気やリンゴの香りもいずこかへ▼ここまでしなくてもよかったのでは、という意見もあるそうだが、すでに完成の段階。たまたま重なったのか、この青森駅前の整備が新青森駅の建設や周辺開発と同時進行。いやおうなしに飛び込んでくる光景も、新幹線ムードの盛り上げに効果的だったよう▼新幹線開業により、地元に生み出される経済効果は計り知れない。当然ながら最速車両を投入するJR東日本もPRに相当の力を入れる。期待しない方がおかしいが、北東北は着々と広域連携の輪を広げている。函館道南はどう対処するか、新青森開業はちょうど半年後に迫っている。(A)


6月3日(木)

●「一寸先は闇」の例えをこれほど鮮明に体現したリーダーは珍しい。鳩山由紀夫首相(民主党代表)の突然の辞任劇は、内外に衝撃をもって受け止められた。前日には誰もが疑わなかった“鳩山続投”が、一夜にして急展開。若者言葉を借りれば、まさに「真逆(まぎゃく)」の結末である▼昨年の政権交代以降、多くの国民が民主党のかじ取りに期待した。このことを背景に、米CNNテレビは鳩山氏辞任を「ハネムーン期間はあまりにも短かった」と伝えた。ハネムーンを「物事がうまくいっている時」の意に解釈すれば、的を射た表現といえる▼今回の政変は、道南政治の将来にも少なからず影響を与えそうだ。鳩山内閣の下で初代地域主権室長、首相補佐官として活躍した逢坂誠二衆院議員(道8区、民主党)には、首相交代後、どのようなポストが待っているのか。地元有権者としては当面の関心事である▼さらに7月の参院選では、函館を地盤とする板倉一幸(民主党)、横山信一(公明党)の両氏が出馬を予定。逢坂氏を含め函館・道南の国会議員が3人となる可能性もあるだけに、今回の政変が参院選にどう影響するか、地元民の視線が集まる▼逢坂氏はたびたび「地域主権政策は鳩山内閣の一丁目一番地」と口にしてきた。本道初の首相が短命だったことは残念だが、後任が誰になろうと「地域主権」の精神は貫いてほしい。これが道南住民の共通の願いである。(K)


6月2日(水)

●わが子をおんぶしている父親、魚をいっぱい釣った父親、ビールを飲んでいる父親、ビデオで撮っている父親、新聞を読んでいる父親…。「父の日」が近づくと、本紙が募集した「お父さんの似顔絵コンクール」が楽しみ▼かつての父親は「しつけは厳しいが、いざという時には家族を守る」存在…。最近の子どもに対する父親像は「子どもと遊んだり、会話をする機会が少なく、子ども社会の変化とズレが生まれ、コミュニケーション不足」の状態(ある大学の調査)▼休日に父親と長く過ごした子どもは「我慢強く、集団行動がうまく、約束を守る子」に育つという(厚労省)。残念なことに6カ国の国際比較調査によると、一緒に過ごす時間は3・1時間で韓国に次いで低く、約4割が「時間が短い」と悩んでいる▼「最低でも県外」と言明していたのに約束を破った“宇宙人”は父親失格か…。いくら時間がたっぷりあると言っても、紫煙をくゆらせる2歳と5歳の男児と一緒にたばこを吸っている父親の映像は、さらに父親失格(インドネシア)▼優秀賞までの似顔絵を見ていると、真剣にしかも笑顔で汗を流して働いている姿が目に浮かぶ。愛情いっぱいで子どもと一緒にいる時間を懸命に創出している様子がうかがわれ、親子で大切な時間を共有すれば「約束を守る子」に成長するものだ。「父の日に香水ではなくファブリーズで」(サラ川)なんて言わないで。(M)


6月1日(火)

●久しぶりにスクリーンで見るのが待ち遠しいと思える日本映画が登場する。5日から公開となる「告白」だ。国内のサスペンス・ホラー系小説の映画化には、これまで何度も裏切られ続けてきたが、今作は前評判も高く期待は膨らむ▼原作は2009年本屋大賞に輝いた大ベストセラー。自分の娘の“事故死”の真相を女教師が淡々と“告発”する第一章「聖職者」に始まり、事件の関係者が順番に“自白”を重ねていくスタイルのため、映像化は難しいと言われていた▼その大役を買って出たのが、「嫌われ松子の一生」や「パコと魔法の絵本」などで強烈な個性を開花させた中島哲也監督。身も凍るような原作の強烈なインパクトが果たしてどこまで映像から伝わってくるのか、興味は尽きない▼ところで、前半に書いた「裏切られた…」作品に具体的に触れないのはひきょうなので、あくまでも個人的にがっかりさせられた例を。「模倣犯」と「パラサイト・イヴ」。どちらも原作は傑作中の傑作だが、映画化にあたり緻密に設定されたディティールがばっさり削られ、表面的こけおどしが目立つ内容になってしまった▼果たして中島監督はどのようにして、原作の持つ生々しい人間の醜さをどのように画面にぶつけてくれているのだろうか。莫大な費用をかけた海外の3D映像の波が押し寄せる中、日本ならではの真摯な作品作りに心から期待したい。(U)