平成22年7月


7月31日(土)

●独居高齢者が増え、誰にもみとられず亡くなる孤独死。しかし、東京のど真ん中で家族と同居していても、独り寂しく死にミイラ化した遺体が先日、発見された。しかも東京で最高齢とされた111歳の男性▼長女夫婦と孫娘の4人暮らし。30数年前から6畳間に閉じこもり、部屋には32年前の新聞が残っていた。民生委員らが訪ねるも、家族は「家の中で寝ている」「岐阜のお寺で説教している」と言い、安否が確認できなかったという▼孫娘は「(祖父は)『即身成仏したい』と30年ほど前から食事や水を一切取らなかった」と説明。即身成仏—木の実くらいしか口にせず、生きているうちに修行によってミイラ化する…。かつて空海をはじめ、僧侶、武士たちが土の中に入って即身仏に▼即身成仏は明治以降は法令で禁止されており、法律上では「自殺」となる。食を断つなどして即身仏になろうとする者に協力すれば自殺幇助(ほうじょ)罪に問われる。同じ屋根の下に住んでいながら、家族が生死を確認しなかったとは…▼「3月に部屋をのぞいたら頭がい骨が見えた」—。最高齢者の口座には、ずっと妻の年金が振り込まれており、今月6回にわたって270万円が引き出されていた。昨年、一昨年と健康高齢者として表彰されている。『見守り隊』などで高齢者に手を差し伸べる活動が展開されている中、家族に見捨てられた今回の「即身仏」が哀れだ。(M)


7月30日(金)

●例えば衆議院が解散し、総選挙に突入する。自治体は補正予算で選挙経費を組むが、承認を得る議会が急には開けない。そこで知事や市長が議会に代わって予算の支出を決定する。専決処分はそのような場合に用いられる▼議会を開かず専決処分を繰り返している鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が、今度は副市長選任の人事案件を専決処分した。地方自治法は、副市長の選任には議会の同意が必要と定めているため、違法行為であるとの指摘がある▼なぜ議会を開かず専決処分を繰り返すのか。職員給与や議員報酬の削減など自身の公約に対し、議会は反対ばかりするから改革のスピードが上がらない。自分は市民の信任を得て当選し、公約を実現する義務がある。だから政策の妨害をする議会に対しては専決処分で対抗する、という考えのようだ▼竹原市長は現に専決処分で条例を変え、職員のボーナスを半分以下にした。民間は不景気で賃金が下がり続けており、支持する市民も多い。事実、昨年は反発する議会を解散、返り咲いた議員たちから2度目の不信任を突きつけられて失職しても再選された▼そこに阿久根市の民意はあろう。ただし、市民は全権を委任したわけではないし、議会を無視して勝手に予算や副市長を決めていいはずがない。民主主義の手順を踏まず、自身の信条や権限のみを「善」として突き進んでいく様は独裁にも通ずる。非常に危険だ。(P)


7月29日(木)

●中国人観光客の人気スポットは、電気炊飯器が並ぶ東京・秋葉原だけではない。阿寒湖や知床などを有する道東もその一つ。中国で記録的なヒットとなった映画「狙った恋の落とし方」(原題・フェイチェンウーラオ)がブームのきっかけという▼道東の美しい風景が映画を彩り、中国人の旅行願望を刺激する。統計によると、道内の圏域別外国人宿泊延べ人数は、道央、道東を中心に増加している。一方で函館・道南は下から2番目の低さ。映画の恩恵はないに等しい▼こうした逆境の中、観光庁が認定する「はこだて観光圏」の整備事業が始動した。道南2市16町が一体で観光振興を図る、広域的なチャレンジだ。正式計画名は「はこだて観光圏 食は“函館・南北海道”に在り 今だけ、ここだけの旅三昧・食三昧」と少し長いが、着眼点は悪くない▼最大のターゲットは「アジアの富裕層」という。広域観光圏を所管する道運輸局函館運輸支局によると、成否の鍵を握るのは①市民の意識改革②情報発信③中国語表示の充実—。特に、①については「温かく迎える心を」と期待する▼セールスポイントが“食”である限りホスピタリティー(もてなし)は重要だが、言うはやすし。仮に飲食店が中国人観光客を冷遇するようなことがあれば、その時点で計画は頓挫する。「日本1の観光地」から「アジア1の観光地」へ。その成長過程は市民にとっての試金石でもある。(K)


7月28日(水)

●「厳しい状況にあるものの、緩やかながら着実に持ち直してきている」。先日の全国財務局長会議(財務省)で示された今年4−6月期の経済情勢の総括判断だが、解釈が難しい。重きが置かれているのは「厳しい状況…」なのか「緩やかながら…」なのか▼裏づけの基礎データはあるにせよ、集約した的確な表現となると簡単でないのも分かる。日本語の機微を巧みに駆使した言い回しになる背景はそこにあるし、景気(経済情勢)判断用語なるものが存在する背景も▼例えば景気悪化時の表現に減速や弱含み、低迷、調整局面など、変動がない状態の時には手痛い、足踏み、横ばいなどがある。減速や低迷などは分かりいいが、では弱含みと低迷の違い、足踏みと横ばいの違いとなると、専門家でなければ理解の域を超える▼最新(4−6月期)の判断だが、要は「少しは期待していい」というニュアンスか。ちなみに、過去1年、4回の判断はいずれも「厳しい状況にあるものの…」という枕詞付き。その上に立って昨年10−12月期は「…生産活動が上向くなど一部に持ち直しの動き…」▼さらに今年1−3月期は「…生産活動を中心として持ち直しの動き…」だった。好感を覚えるのは1−3月期の方だが、あくまで枕詞付きであり、誰もが認識を共有できる明快な表現というにはほど遠い。そう考えると、冒頭の答えは「厳しい状況…」の方ではないかと思えてくる。(A)


7月27日(火)

●もし函館に「市のスポーツ」を制定するとしたら、間違いなく「野球」が選ばれるだろう。小学生から一般まで数多くの野球チームが存在するが、中でも目立つのが社会人チーム。毎年行われている軟式野球連盟函館支部主催の朝野球大会では、実に100チーム以上が熱戦を繰り広げているという▼寝る間も惜しんで球場に足を運ぶプレーヤーの中には、元高校球児も少なくない。学生時代には厳しい練習に悲鳴を上げていた選手も、いざ現役を離れるとボールとバットが恋しくなるようだ▼その元球児らも熱狂させたのが、26日に札幌円山球場で行われた高校野球南北海道大会の決勝戦。13年ぶりの甲子園出場を目指した函大有斗は1点差で涙を飲んだが、その奮闘ぶりにかつての自分の姿を重ね合わせた人も少なくないだろう▼道民にとっての甲子園といえば、駒大苫小牧の活躍が記憶に新しい。この栄光にけちをつけるつもりはないが、エース田中将大をはじめ中心メンバーの多くは道外からの“留学生”。駒苫に限らず強豪校のほとんどが留学生の力を借りて実力を高めているのが現状▼しかし函大有斗の場合はほとんどが道南出身者であり、地元民の思い入れがより深くなるのは当然のこと。早くも2か月後には、来年のセンバツ大会出場につながる秋季大会が開幕する。函館地区の高校生が夢の舞台を目指して戦う姿に再びエールを送りたい。(U)


7月26日(月)

●知っていましたか。イナバウアーで金メダルを取ったフィギュアスケートの荒川静香選手は、決勝前日に50センチもあるウナギをぺろりと食べたそうです。かば焼きを山椒たっぷりのタレご飯で巻いた“うなバウアー”も大人気でした▼神がかり的なスタミナ料理。紀元前のギリシャの詩人・ピレタエロスが「死を恐れよ。死んでしまえば、ウナギを食せなくなる」というほど、ギリシャ人はウナギを愛したという。ウナギを神として礼拝し、池で飼ってチーズなどを食べさせていた▼アテナイではウナギのにおいをかぐために1、2枚の銀貨を払わなければならなかったというから驚く。ウナギが高根の花だった頃、かば焼きの前を何回も通って、においだけをかぐという落語も。最近は稚魚の漁獲量が激減▼ウナギは神秘な魚。生態がはっきりせず、謎が多いが、このところ産卵地が特定され、第二世代を育てる完全養殖に成功したというニュースも流れた。親ウナギにホルモン処理をして性成熟を促して…▼26日は土用の丑。この日が近づくと「ウナギ偽装」が出てくる。先日も台湾産や中国産のかば焼きを愛知県産として偽装して販売し、警察の捜査を受けた。くし打ち3年、裂き8年、焼き一生。心込めて作ったおいしいかば焼きを疑心暗鬼で口にしたくはない。でも、人並みに奮発してかば焼きを食したい。日本の食文化を守るため完全養殖の実用化を待ちながら。(M)


7月25日(日)

●函館市内の総合病院でのこと。関連する症状で複数の診療科目を受診したが、診察の流れがスムーズなことに驚かされた。医師間の意思疎通、看護師の機転などがなければ、こうはいかない。病院は本当に患者と正面から向き合っているのか、と思わされることが少なくなかっただけに、そのマイナスイメージを減じるのに足る出来事だった▼同じく函館市内の百貨店での話。遣い物を買おうとしたが、適当な品が見つからない。あきらめて別の買い物をすること約15分。最初に対応してくれた女性店員が追いかけるように声をかけ、「これはいかがですか」。店内を駆け回り、ほかの店員とともに希望に近い品を探し出してくれたらしい▼二つの出来事に共通するキーワードは「誠意」と「連携」。特に後者は、物事を円滑に進める上で不可欠な要素となる場面が多い。組織の中の連携不足。それは、サービスを受ける側の“不満足”に直結する▼いい例が、宮崎県の口蹄疫問題。3月とされる最初の感染例を見逃していたことに加え、その後の県と国の対応にも疑問が残る。初動の遅れや殺処分をめぐる双方の連携不足は明らかで、両トップによる互いの批判合戦は責任逃れの茶番としか映らない▼医療に限らず、住民には国や都道府県、市町村から各種の行政サービスを受ける権利がある。口蹄疫への適切な対応もその一つ。住民不在の施策に希望はない。(K)


7月24日(土)

●五稜郭と孤立し箱館戦争の激戦場となった弁天台場。新政府軍の軍艦に砲弾を撃ち込もうとしたが、弾が飛ばない。台場の大砲の火門に釘が打ち込まれていたからだ。新政府軍が送り込んだスパイの仕業だった…▼先ごろ、映画「007」に出てくるボンドガールのようなロシアの「美人すぎる女性スパイ」ら10人が米国で逮捕された。28歳の女性はニューヨークのコーヒーショップや書店で手持ちのパソコンからロシア当局とデータ通信▼実業家として活躍する傍ら米国の政策立案グループに接近、関係を構築し、核弾頭開発計画などの情報を収集していたという。他のメンバーも90年代から米国に入り、スパイ同士で夫婦を装ったり、新聞記者や会社員、学生として生活していた▼対立が深刻だった冷戦時代ならいざ知らず、核軍縮などで米ロが接近している時代に…。美女をからめた古典的な事件は米欧メディアをにぎわせた。一説によると、ウィーンがスパイ活動の拠点になっており、現在でも2000人超が経済や技術の情報収集に奔走している▼そのウィーンで、逮捕されたロシアのスパイ10人とロシアで収監された「米国側ロシア人スパイ」の身柄が交換された。冷戦時代なら抹殺されていただろう。弁天台場に砲兵として送り込まれ、大砲の火門に釘を打ち込んだスパイは逃げそこなって捕まり、斬首刑になった。米ロのスパイ事件で五稜郭の野外劇がよぎった。(M)


7月23日(金)

●十五夜のゆうくれに仏のおまえ… 源氏がいつものようにお越しになって「虫の声がしげく鳴き乱れる夕べですね」と…。今月で丸10年を迎えた「弐千円」札に引用の源氏物語『鈴虫』の詞書▼2000年のミレニアムと沖縄サミットを記念して発行。沖縄のシンボル首里城の守礼門と源氏物語絵巻などをデザイン。源氏や冷泉院のほか、紫式部も描かれている。お札に源氏物語が登場するのは珍しく、多くの人が源氏物語に興味を持ったと聞く▼残念なことに最近、見かけなくなった2000円札。流通量は現在1億1000万枚といわれ、1人1枚にも満たない。発行された8億8000万枚の大半は日銀に眠っているようだ。ATM(現金自動預払機)や券売機に使えないことも普及を妨げている▼1万円札と1000円札で事足りてしまうのか。沖縄だけが地元銀行や行政が音頭を取って需要を促し、県民1人当たり2.5枚使っていると言い、沖縄の“ご当地通貨”になりかねない。「42年ぶりの新しい額面の紙幣」という鳴り物入りと裏腹に消えてしまうのか▼先の大戦で焼失した守礼門は戦後再建されたことから、沖縄では「平和を希求する紙幣」と位置づけている。普天間基地で大揺れの沖縄。「弐千円」札を使って平和を訴えたいもの。『鈴虫』の「奏楽をかなで、庭にはさえた月光、爽やかな白銀…」に涼を求め、猛暑を乗り切りたい。きょうは「大暑」。(M)


7月22日(木)

●「帽子をかぶらないと日射病になるよ」。子どものころ、親や学校の先生に注意された。素直に解釈すれば、太陽光を直接頭に浴びることさえなければ、猛暑の屋外でも大丈夫—と取れないこともない。病気に関する情報量の少ない、ある意味でおおらかな時代だった▼日本列島が高温のサウナ状態になっている。うだるような暑さである。東京都心では21日、7月としては4年ぶりに最高気温35度以上の猛暑日を記録。道内、そして函館・道南も例外ではない。冬の寒さには覚悟をもって乗り切る道産子だが、厳しい暑さにはついつい弱音も▼先に触れた日射病を含め、高温や多湿によって引き起こされる障害の総称が「熱中症」。気をつけるべきは太陽光や屋外の高温ばかりではない。家の中も常にその脅威にさらされている。特に、高齢者は重症化しやすいというから、注意が必要だ▼60歳以上で熱中症になった人の6割が日常生活の中で発症—。日本救急医学会がまとめたこの調査結果に基づき、専門家はエアコンや扇風機による室温管理、十分な水分補給を呼び掛けている▼初期症状は、平常時でも起こり得る頭痛やめまいなど。単なる夏バテ、と見過ごされるケースも少なくない。盛夏でも比較的涼しい日の多い函館は、一般家庭のエアコン普及率が低いとされる。扇風機でもうちわでも構わない。函館の夏を侮らず、暑い日にはそれなりの対処を。(K)


7月21日(水)

●当社が主催する函館港花火大会は18日、無事に14回目の開催を終えた。毎年、心配の種の天候も、雨マークがついた予報を裏切ってまずまず。風も適度の“花火コンディション”に恵まれ、多くの市民、観光客に喜んでいただいた▼この「喜んでもらうことができた」は、どんなイベントにも通じる主催者の喜び。というのも「成功」というプレッシャーを伴い、実際に資金集めや人の確保に始まり、会場設営などの苦労があるから。その疲れを吹き飛ばしてくれるのが「成功」の二文字▼さらに規模が大きくなればなるほど、多数の人が集まるイベントになればなるほど、かかわる人は増え、各関係機関の手を煩わせる。花火大会は警察、海保、消防などの協力なしには難しい。その一方で、市民の協力を得られたら…▼確かにイベントはプログラムの完了をもって終わるが、主催者にとっては、大変さはその前後も同じ。後片付けも大仕事で、花火の殻拾いもその一つ。打ち上げ現場では広範に殻が飛び散るため、事後作業の最初は、翌朝の殻拾い清掃となる▼実はその作業を手伝ってくれる市民がいる。本紙が報じていたが、今年も「アースデイ函館」の呼びかけに応じた人たちが加わってくれた。いわば「喜んでもらいたい」という思いに対する「楽しませてもらったから」というお返し。それも朝早くからの行動で。こうした協力も主催者にはうれしいものだ。(A)


7月20日(火)

●「アナログからデジタルへ」。テレビ放送は、あと1年で新時代を迎える。わが国でテレビの本放送が開始されたのは、戦後復興期の1953(昭和28)年2月のこと。NHKの舞台劇(尾上松緑さんら)が初番組だったと言われる▼もちろん白黒映像で、砂嵐状態はしょっちゅう。それでも画面に映る動画は感動を与えるに十分だった。当時の受信機は高価で、一般家庭では手が出ず、大相撲中継などはテレビのある家に近所の人が集まって観戦といった光景は記憶に新しい▼それから17年。東京オリンピック4年前の1960(昭和35)年には、総天然色(カラー)が登場した。それはテレビ全盛時代の幕開けであり、以来、技術的な進歩を遂げながら今日に至ったが、地上波は限界となって地上デジタル放送への移行に▼テレビ放送が開始されて50有余年、その中で最大の変革である。その前段としてBSデジタル放送に続き、2003(平成15)年には東京や大阪などから地上デジタル放送がスタート、全国に広がって迎える完全切り替え日は「来年の7月24日」▼画像もよく、多チャンネル化に道が開かれ、データー放送や双方向機能なども実現する。その一方で、これまでのアナログ受信機は対応しなくなるため、総務省、テレビ局はPRに努め、問い合わせに応じている。3月時点の地デジ対応受信機の世帯普及率は84%。「準備を怠りなく」。残り1年である。(A)


7月19日(月)

●夏本番を迎え、全国各地で野外音楽フェスティバルが盛んに行われる季節がやってきた。特にここ最近は、雄大な敷地を有し、観光と合わせて楽しむことができる北海道を舞台としたフェスが大きな注目を集めている▼中でも、2000年から石狩湾新港内の特設会場で開催されている「ライジング・サン・ロック・フェスティバル」は、今では8万人を集める大イベントとなり、国内4大ロックフェスに数えられるまでに成長した▼さらに今年スタートの、岩見沢市で7月¥17¥、¥18¥両日に行われた「ジョイン・アライブ」にも、スーパーフライ、スキマスイッチ、山崎まさよしなど超豪華なアーティストが顔をそろえ、全国から音楽ファンが殺到した▼ここ函館でも、開港150周年に沸いた1年前の夏には、緑の島を会場に様々なライブイベントが繰り広げられた。この時の熱気をもう一度と、今年の6月には道南四季の杜公園で人気レゲエグループ「湘南乃風」などを呼んだ野外ライブで盛り上がったが、肝心の夏本番を迎えたこの時期には、緑の島は静かなままだ▼かつて、函館出身の人気グループ「グレイ」のライブを緑の島で開催しようという動きがあったが、諸事情から実現に至らなかった。しかし、150周年イベントでのノウハウが蓄積された今こそ、そのリベンジのチャンス。来年の夏には、緑の島がグレイサウンドで熱く燃え上がることを期待したい。(U)


7月18日(日)

●関西の大学教授が酒気帯び運転の容疑で現行犯逮捕された。教授は「栄養ドリンクを40本飲んだ」と容疑を否認。確かに栄養ドリンクには微量のアルコールが含まれているが、短時間に数十本も飲む人の話など聞いたことがない▼案の定、この教授は後の調べに対し「栄養ドリンクは飲んだが、缶ビールも5本飲んだ」と一転して飲酒を認めた。飲酒の事実を隠そうとする心理が、うそを生む。とっさに思いついた逃げ口上で、しらふの捜査員をだませる。こう思うこと自体が、すでに酔っ払っている証拠だ▼過去には、酒気帯び運転で逮捕された小学校教員が「酒かす汁2杯を食べた」と主張した例も。酒かすにはアルコールが含まれるが、汁ものとして煮立てる過程でアルコール分のほとんどは飛んでしまう。「うそをつくな」と子どもたちを指導する教員の言い訳としては、どこかむなしい▼ノンアルコール飲料の市場が拡大している。ビール風味に加え、カクテルを模した商品も近く発売される。これがなかなかよくできているらしい。メーカー側は、香料などを使いアルコールに近い味わいを再現した、と胸を張る▼全国一斉の夏の交通安全運動が16日にスタートした。なんとその初日に、函館市内の男が酒気帯び運転の容疑で現行犯逮捕された。どうしても飲みたいのならノンアルコール。左党には物足りないだろうが、これで飲んだ気になるなら試す価値はありそう。(K)


7月17日(土)

●市民有志の熱い思いが結実し、映画製作が実現した「海炭市叙景」が、映画関係者から高い評価を得たという。東京で行われた完成披露試写会の情報だが、地元としてはうれしい限り。11月下旬に予定の上映開始が待たれる▼「海炭市叙景」は28歳で文壇にデビューし、芥川賞候補に選ばれるなど将来を嘱望された函館出身の作家、佐藤泰志の遺作。函館の街をモデルにした未完の作だが、その作品に感嘆した有志が「映画にして後世に残したい」と奔走し、製作を後押しした▼メガホンを握ったのは熊切和嘉監督。加瀬亮、小林薫、南果歩、谷村美月さんらが出演。市民エキストラも参加したロケは、2、3月を中心に行われた。その後の編集で「原作に忠実に、かつ現代にもリンクするメッセージ性のある作品に仕上がった」という▼本紙によると、熊切監督自身も「今まで撮った作品の中で最高傑作」と話しているそう。そんな話を聞くと、すぐにも観たいという衝動にかられるが、地元での第一号上映は3カ月後の地元協力者を対象にした試写会が行われる10月26日▼その1カ月ほど後に函館で先行上映に入り、12月下旬から東京、札幌などで順次公開に。函館は映画の舞台になることの多い街だが、市民の熱い思いがこもったという点で「海炭市叙景」は別格。しかも「海外の映画祭へのエントリーも決定した」(本紙)とあっては、期待が膨らまないはずがない。(A)


7月16日(金)

●生まれ変わりたい海の生き物の第1位は「イルカ」。理由はかわいい、賢い、人懐っこい。男女別では、男性が「シャチ」「サメ」「マグロ」など強い、速い、大きいといったイメージの生物を支持。女性の人気は「サンゴ」「クリオネ」「ペンギン」などのきれい、かわいい系だった▼自然体験などを推進する「B&G財団」(東京)が、19日の海の日に合わせてアンケート調査を実施。2600人を超す回答があったという。前述の生き物たちは、「なるほど」とうなずかさせる顔ぶれだ▼一方で、おやっと思う異色の存在も。総合の「クラゲ」(3位)、「ウミガメ」(4位)、「マンボウ」(9位)で、理由はふわふわ、ゆったり、のんびりなど。クラゲは嫌われ者のイメージがあるが、観賞用が人気というから、ウミガメなどと並んで“癒やし系”に昇格か▼こうした結果からは、仕事や生活に疲れた現代人像が浮き彫りに。20代男性は「カニ」と答えた。理由は「まっすぐ前を向いて生きなきゃならないことに疲れた」。若いくせに—と言うのは簡単だが、理解できないこともない▼ストレスから逃れるすべを見つけることが難しい時代になった。「コバンザメのように他力本願生活を」は極端としても、「タコと同じ8本足があれば仕事がはかどる」というのも疲れそう。陸でも海でも、要は自分らしさを忘れずに—。それが現代を生き抜く特効薬かもしれない。(K)


7月15日(木)

●「土用の蛸は親にも食わすな」。低カロリーでタンパク質の豊富なタコ。抱卵期の夏のタコはおいしく、親に食べさせるのさえ惜しいというわけ。そのタコがサッカーW杯で占った8戦の勝敗を当ててしまったというから驚き▼ドイツの水族館の「パウル君」。水槽に入れた対戦2チームの国旗(エサ付き)を選ぶもの。タコは特定の色を識別することはできないが、色調や明度の違いは分かるという。決勝のスペイン—オランダ戦では赤色の多い国旗に触手を伸ばした▼ベスト8に進んだ国旗は赤系がほとんど。タコの好む色は昔から赤。漁師が使うタコ壺も大半が赤系。白い壺だと入ってこないという。子どもの頃、竹の枝先に真っ赤なホオズキを付けて岩場に垂らすと、ホオズキに食らいついてきた▼演出などが証明されない限りパウル君の占いを信用するしかないが、タコには予言力があるということか。戸井ではシンボルのタコ「トーパスちゃん」がマチ興しに活躍。交通安全旗やマンホールのふたに登場。タコしゃぶも大人気▼恵山のタコも決勝戦を予想したが、ぴくりともせず「引き分け」。相撲界では親方や兄弟子の言うことを聞かない「タコになる」力士もいる。今度の選挙で落選のレッドカードを突きつけられた議員が閣僚に残った…。こんな政権でいいのか、大相撲はどうなるのか、日本経済は回復するのか、戸井のトーパスはどう占うだろうか…。(M)


7月14日(水)

●「与党、過半数割れ」「民主大敗」「自民改選第一党に」。12日朝刊各紙の1面には、こんな見出しが躍った。政界は荒れ模様で先行きは不透明、国民の間には余韻が残るが、幾つかの教訓を提起した▼詳細な分析は専門家に委ねるしかないが、素人目に映ったキーワードは、約束を守ったか、筋を通したか、手順を踏んだか、といった極めて常識的なこと。マニフェストの不履行、普天間の移設問題、消費税の問題…。懸案がすべてそこに当てはまる▼そして、もう一つが「有名人頼み」の限界である。参院選に全国区があった時代、知名度勝負とばかり、アナウンサーや芸能人、スポーツ選手らが擁立されてきた。その流れは非拘束名簿式になった現在も変わらずに、今回も民主を中心に十数人▼そのうち当選したのは選挙区、比例代表合わせても5人程度。知名度ではかなりのレベルと思われる堀内恒夫さん、中畑清さん(プロ野球)、岡崎友紀さん(タレント)、庄野真代さん(歌手)、桂きん枝さん(落語家)、池谷幸雄さん(体操)らは落選の憂き目に▼「本当に(政治を)任せられるかといった思いの表れ」との見方がある一方、政党に投票する割合が高いことも背景に。実際に比例代表では公明を除き政党名が圧倒的。個人名の得票割合は民主21%、自民24%でしかない。「有名人にも甘くはないぞ」。この数字は、そんなメッセージを政党に伝えている。(A)


7月13日(火)

●首相の座 回転率は世界一(サラリーマン川柳)。今回の参院選で菅直人首相や民主党に異常気象の強風が、きついお灸(きゅう)をすえた。右肩下がりの支持率の菅首相は、敗北の要因を認めた上で“首相継投”に執念…▼その敗北の要因は「自民党の10%を参考に」という消費税をめぐる発言。民主党の党首でもある首相が、なぜ自民党の税率を参考にしなければならないのか。増税で日本をどう変えるのか、党内の合意がないまま見切り発車▼他党に頼るのなら「強い経済、財政、社会保障」が縮んでしまう。強烈な政権交代から10カ月。政治とカネ、普天間問題で迷走、平気でマニフェストを変更する鳩山政権に幻滅。菅首相も「成長と増税は両立する」という不思議な理屈で消費税を打ち出したが、批判を浴びると発言内容が二転三転した▼こんなに発言にブレがあっては国民は付いて行けず、当然「ノー」を付き付けた。膨れる国の借金に「子どもや孫たちにツケを回してはいけない」と一番心配しているのは国民。どの政党が政権を取っても「国民の生活が第一」だ▼ケネディ米大統領は「言葉だけではなく、行為で示さなければならない」と言った。一度発言した言葉が次から次へとブレると、混乱と不信を深めるだけ。再び“ねじれ国会”だが、超党派で「元気な日本」を復活させよう。今度の選挙で函館市の投票率が低調だったことが残念…。(M)


7月12日(月)

●函館の中心部を流れる亀田川の環境が、かなり改善された。そう実感している市民は多いはずだが、実際に十数年前の姿と今を重ね合わせると、その差は歴然。目についたゴミは消え、緑もまぶしく生まれ変わった▼その裏には市民有志のねばり強い、地道なボランティア活動があった。「亀田川をきれいにする市民の会」。親しむにふさわしい環境にしなければ、と立ち上がったのは15年前。当時の亀田川は不法投棄のゴミが散乱し、水質の悪化も招いていた▼ゴミの除去から始め、富岡付近を中心に幅広く見回り、草刈りや清掃などへと取り組みを拡大。その努力は見違えるように変わった姿で結実し、サケのそ上も話題になるまでに。さらに取り組みを一歩進めたのが啓蒙で、今や浄化と愛護は活動の両輪…▼「大事なのは(亀田川を)身近に感じてもらうこと」。そこから治水など地域に果たしている役割への理解が広がってくれれば、という思いを現実にしたのが、主に小中学生を対象にした「亀田川のいきものをさがそう」。今年も8月21日に開催される▼どうなん「学び」サポートセンターの協力を得て、生息する生物の観察、水質の検査やボートでの川下りなどが行われる。まさしく住民による環境改善活動の見本例だが、こうした取り組みが評価され今年3月、北海道社会貢献賞(2009年度)に輝いた。「さらなる都市財産に」。市民の会の活動は続く。(A)


7月11日(日)

●相撲協会や力士の不祥事は今に始まったことではない。八百長は「疑惑」で済んだが、車を運転しての交通事故はたびたびあり、付き人を空気銃で撃って“かわいがった”元横綱、年寄名跡を担保に借金した親方までいた▼その都度問題となり、厳正な処分や綱紀粛正が図られたが、仏の顔も続かない。力士暴行死、大麻、暴力団観戦、そして賭博とくれば、さすがの国技もファンに見放される。テレビ中継が中止され、理事長代行に民間人を受け入れた▼上に立つ親方衆も関取上がりだから、相撲界以外のことはあまり知らないだろう。魅力ある力士とファンがいれば、慣例を踏まえた協会運営はできる。しかし今、心技体が充実し、心から応援したくなる力士がどれだけいるか疑問だ▼暴行死や賭博事件が表面化した際の協会の対応は、世間の常識とかけ離れたものだった。強すぎて憎まれた北の湖、耳が変形するほどけいこに明け暮れた遅咲きの三重ノ海は、ともに立派な横綱だった。しかし、理事長となり事件の渦中で怒鳴る映像などを見ると、やはりその器でないと思わざるを得ない▼人はみな、一般社会に通用する常識や礼節を持たねばならない。その世界だけで通る論理や人間関係をよすがにしているのは、例えば裏社会やカルト教団の中にいるようなものだ。相撲協会はそれでは駄目なのだ。だから改革が必要なのだ。そんな思いで名古屋場所を迎える。(P)


7月10日(土)

●選挙があるたびに、苦い思いにさせられる。函館・道南の投票率の低さだ。函館市の国政選挙投票率は、昨夏の衆院選まで、道内市で連続12回の最下位。町村平均でも、渡島は連続5回、14管内のワーストだった▼最大の課題は、若者層の投票率をいかにして上げるか。若い男性がテレビのインタビューに応えていた。「候補者について知らないことが多い。それで投票したら、むしろ無責任かなと思って…」。そんなことはない。それは詭弁(きべん)であり、棄権への言い訳にしか聞こえない▼知らないことが多いのなら、知るための努力をすればいい。候補者に関する情報は社会にあふれている。選挙に対する無関心層は投票所に足を運ばない。その割に政治には批判的で、論評好き—。こう言えば言い過ぎか▼むろん関係機関は、投票率の凋落に手をこまねいているわけではない。道選管渡島支所は、若者の利用が多いコンビニエンスストアで投票を呼び掛けるチラシを配布。9日に始まった函館野外劇でも会場放送を行い、来場者に投票を訴えている▼森町が取り組む、電話によるローラー作戦は昨年の衆院選に続いて2回目。町内の有権者に投票を呼び掛けることで、前回は棄権者が減った。11日は参院選の投票日。行楽や仕事で都合がつかない人は、10日まで期日前投票もできる。「政治に無関心な街」という不名誉なレッテルは、そろそろ返上したい。(K)


7月9日(金)

●「働く」には、年齢に関係なく「生きがい」と「生活のため」という側面がある。現役時代はこの二つが重なりあっているが、60歳を過ぎると、次第にそれが両極化していく。「働きたい」という派と「働かざるを得ない」派に▼わが国では40年後に、65歳以上の人口が40%に達すると推計されている。押し寄せる高齢化、遅れる社会保障、と揶揄される中で重要となっているキーワードが「働く」。定年延長や再雇用の制度化も進んではいるが、まだまだ十分の域にない▼現行では65歳以上なら年金も満額支給の対象だが、それと「働く」という思いは別。勤勉な国民性から労働意識は高いと言われてきたが、労働政策研究・研修機構の調査結果(55歳|69歳)も裏付けている。理由はともかく、年齢に関係なく働きたい、と▼「老後は年金でのんびり暮らしたい」。現役時代にそんな思いを抱いた人は多かったはず。なのに、いざ直面すると思いや事情も複雑に絡み合って。「65歳以上になっても働きたい」と答えた人が男女で58%(男性では69%)だったという▼ここで注視しなければならないのは、その理由である。72%が「経済的」を挙げ、うち88%が「生活を維持するため」と答えている。生きがいのため、生活水準を上げるため、というなら救いはあるものの、浮かび上がるのは「年金だけで生活は…」という現実。ぬぐえない不安、ため息だけが聞こえてくる。(A)


7月8日(木)

●願わくば花のしたにて春死なむ その如月の望月のころ〜 相撲甚句に花月を愛し放浪の旅を続けた「西行法師」が出てくるという。野球賭博で大激震の大相撲。NHKは名古屋場所のテレビ中継の中止を決めた▼三河が生んだ快男児 郷里の誇り琴光喜〜 愛嬌たっぷりの相撲で大人気だった快男児。暴力団がからんだと見られる野球好きの“怪男児”になって、相撲甚句が泣いている。江戸時代の相撲興行を支えていたのが賭博というが…▼力士の賭け方は派手。1回の勝負に1000万円を張ることもザラだという。大嶽親方の最終的な負け金は3000万円に膨らんだ。「光喜を隠れみのにして野球賭博をしていた」と言い、先輩から「バクチは勝負勘を養う」と間違った知識を植えつけられたとも…▼1週間遅れの番付には解雇された琴光喜や謹慎処分、退職予定の力士名も載っており、お粗末な対応。NHKが57年間続けたテレビ中継を中止する理由は「100年に1度の危機との緊張感をもって改革に取り組んでほしい」。でも「生の迫力」という受信料の対価が失われる▼若い力士が“ごっつぁん体質”から脱皮しようとしている真剣勝負の臨場感はテレビ中継でしか伝わらない。「西を向いても風が来る 東を向いても風が来る」〜 「名古屋場所で死なむ」なんてならないように。警視庁の捜査も始まった。思い切って改革し、国技・大相撲の再生を望む。(M)


7月7日(水)

●流行(はやり)の裏には仕掛けあり。料飲界で人気上昇の「ハイボール」も、その一例。ウイスキーの販売対策としてサントリーが推奨して大当たり。昨年あたりから気配を強めて、今や出荷調整というのだから▼「ハイボール」は適量のウイスキーを、ソーダで割っただけの極めてシンプルな飲みもの。昭和30、40年代、ウイスキーの一般的な飲み方だった。それが次第に水割りになって、さらには焼酎ブームなどに押されて、表舞台から姿を消していった▼実際にウイスキーの消費量は20年間で4分の1程度まで落ちたという報告があるほど。その現状に同社が起死回生策とひねり出したのが「ハイボール」の勧め。60歳以上の人たちには青春時代の郷愁を誘い、若い人たちには新鮮だった▼「冷えたハイボールはウイスキー本来のコクや味わいを引き立たせます」。そんな宣伝文句もあるが、ブームに火がついて、人気は今や全国区。その裏づけは「角瓶」などの売り上げに表れ、同社はついにウイスキー8品目の出荷調整を発表した▼同社の今年上半期の出荷量は前年同期の1.7倍という。その結果、熟成に時間のかかる原酒の確保が難しくなっているのだと。ただし流行は流行、これを持ってウイスキーの復権と言い切るのは早計だが、紛れもない特需。ここまで当たるとは…。ウイスキー業界からうれしい悲鳴が聞こえてくる。(A)


7月6日(火)

●函館観光協会(吉谷一次会長)はオランダふう築造の国の特別史跡「五稜郭城」を復元する方針で、来年1月に五稜郭城再建期成会(仮称)を結成することになった(1963年12月8日付け、毎日新聞道南版)▼五稜郭城とはいうまでもなく箱館奉行所。産業の育成や開拓を進めると同時に箱館の防備強化を図るため建てられたが、箱館戦争の大舞台となり、政府軍の鉄艦からの砲弾が命中して一部が破壊したため、解体された▼その箱館奉行所がようやく復元され、29日の「復活祭」が待ち遠しい。復活祭には五稜郭祭の出演者が箱館戦争の殺陣を繰り広げるほか、鉄砲隊によるアトラクション、記念講演会、記念フォーラムなどが開催される▼もう一つ。当時のレシピを基にした“薬用珈琲”や、奉行所をモチーフにしたモナカなど、飲食が楽しめることだ。また、当時の文献に「糖度が高く、苦味が強い」と書かれている英国ふうのビール「箱館奉行所」(赤褐色、アルコール5・7%)も再現された▼47年前に書いた冒頭の記事は続く。「観光アンケートでも『オランダふうのお城を再現したら』という意見が多く、函館山からの夜景と並んで観光函館のシンボルにしようと、お城の再建に乗り出した」。明治維新へ国を動かした、新しい観光施設「お城」が登場した。「奉行所ビール」で乾杯だ。これを核に道南一帯を全国にPR、観光客を呼び込もう。(M)


7月5日(月)

●先日、超大型ショッピングモール「三井アウトレットパーク札幌北広島」へ初めて足を運んだ。オープンから1か月以上が過ぎた平日の午後3時ごろにも関わらず、2700台を収容する駐車場は満杯で、30分ほどしてようやく止めることができた▼混雑ぶりは、店内に入っても変わらず。遅い昼食のために入ったフードコートでは、500人以上は座れると思われるテーブル席がほとんど埋まっている状況。これが正午前後なら、数十分待ちは免れなかっただろう▼全国各地に続々と誕生する、超大型ショッピングモール。深刻な消費不況の中でも集客効果が高いことから、今後も増え続けることは間違いない。その影響は小規模な商店はもちろん、スーパーなどにも及び、昔ながらの商店街は寂れる一方だという▼そんな中、神奈川の小さな電気店は、月に何度も顧客の家に足を運び、ささいな相談ごとも親身に対応する「御用聞き」の立場に徹して、売り上げを伸ばしている。値段や商品のラインアップでは大型店に対抗できない分、「人間力」を活用して生き残りを図る▼特にお年寄りからの信頼は絶大で、日常のささいなトラブルについても親身に相談に乗るという。少子化や核家族化が進む中、この営業方針は正解かもしれない。大型店と小型店が生き残りをかけて争うのではなく、それぞれが長所を生かして共存していくのがベストではないのだろうか。(U)


7月4日(日)

●純白に近い色で、粘り気のある食感。イカ刺しとはそういうものだと思っていた。函館に赴任する十数年前までの話である。今は違う。新鮮なイカは茶色がかっていて、コリコリとした歯ごたえがある。活イカだと、ゴロ(内臓)は生のままがいい。来函した知人にこう言い、通を気取っている▼ところが、イカ料理はさらに奥が深かった。先日足を運んだ居酒屋でのこと。イカ刺しの薬味に大根おろしが付いてきた。函館ではこれが定番という。わさび、しょうがに慣れた舌には、イカと大根の組み合わせが新鮮で、不明を恥じるとともにその味に脱帽▼念のため、函館育ちの数人に聞くと、やはりイカ刺しに大根おろしは「スタンダード」とのこと。一見単純な組み合わせではあるが、その地の名産をおいしく食べるには、その地の人たちに尋ねるのが一番いい▼前置きが長くなった。ここで言いたいのは、函館・道南産イカの販路拡大について。自分も含め、新鮮なイカだけが持つ本当のおいしさを知らない人がいかに多いことか。このままではもったいない▼函館市内の旅館・ホテルでは朝イカを提供するところがある。宅配便で新鮮なイカを送る方法もあるが、この味をさらに全国に広げるにはもう一工夫が必要だ。首都圏で主婦を対象にした活イカ試食会を行う。酔客への無料提供も受けそうだ。理屈を排し、とにかく食してもらう。そこから始めたい。(K)


7月3日(土)

●高速道路の無料化実験が始まってほぼ1週間。対象路線・区間の利用が有料時代に比べ総じて増えているという。通行量の少なかった路線ばかりなのだから当然といえば当然。誰もが容易に予測できた現象である▼交差点も信号もない、高低差も緩い、速度も出せる。どう考えたって高速道路の方が走りやすい。でも通行料金が高い。ということで対象路線・区間も敬遠され利用が少なかっただけ。無料というなら話は別。高速道路が選ばれ、故に利用は増える▼社会実験で産業界への効果や環境面への影響を把握したいのなら、主要路線で試みなければ意味がない。なのに、そこを避けて実験は、全線無料化の公約と、無理だという現実の狭間で悩み出た苦肉の策…。つまり実績づくりの策とも映る▼少し穿った見方ではないかという議論もあろうが、どう頭をひねっても真の意図が伝わってこない。改めて言うまでもなく、全線無料化は混雑を助長する愚策でしかない。高速道路に集中するのは明らかなのだから。大事な視点は利用の分散化である▼それには現行の通行料金は高すぎる。無料も極端なら、高い現行料金も極端の域。だから有料なら少なく、無料なら増える。そもそも高速道路と一般道には線引きがあって当たり前。それが分散化への道であり、無料化には財源の問題も。そう考えると答えは一つ、現行料金を下げることである。(A)


7月2日(金)

●全国的に知られるまでに成長した「函館野外劇」。一方で、その来場者数は思うように伸びていない。実際、函館観光の知人を迎えても、夜景や街並みを案内するだけで滞在時間は過ぎていく。ダイナミックな函館の歴史を伝えるために必要な長い上演時間が、ここでは客足を遠ざける一因にもなっているという▼「まずはクライマックスやハイライトシーンを観てもらうという案はどうでしょうね」「歌でいえば聞かせどころ、『サビ』のところを取り出すわけですね」。タウン誌「街」(527号)の座談会「五稜郭に青葉が光る」で、出席者が縦横に持論を展開している▼前の発言は岸部悟司さん(ガッツ社長)、後は中野晋さん(五稜郭タワー常務)。もう一人の出席者、住山省悟さん(函館野外劇の会理事)も別の観点から、「小中学生の体験出演の機会を広げていきたい」と提言する▼三氏に共通するのは、観光にとどまらない函館発展への熱い思い。以心伝心、こうした発言は当事者の向上心を揺さぶる。同野外劇の会はゆかりの地を巡るツアーを3日から初めて実施する。歴史への理解が、野外劇への興味につながるという発想だ▼観光客はもとより地元民の来場者増が、同野外劇の課題という。一度も観劇したことがないという人は、ぜひ足を運んでほしい。市民が一体となった勇壮な歴史絵巻に驚かされることだろう。今年の本公演は9日から。(K)


7月1日(木)

●新町長は得票で決まらず、くじ引きで。可能性としてあり得るとはいえ、町長選挙の規模で現実に起きるとは驚き。お隣り青森県の大鰐町の話である。現職と新人の争いは、開票してみると、何と両者そろって3524票▼小さな町村の議員選挙では、最下位当選者と次点者が同数というのはよくあるが、首長選挙となると珍しい。読売新聞によると、2001年に新潟県小木町長選で上位2人が同数というケースがあったそうだが、とすれば10年に一度の珍事▼同数の場合の対応は公職選挙法(第95条)に規定されている。その方法はくじ引き。「当選人を定めるに当たり、得票数が同じであるときは選挙会において選挙長がくじで定める」と。ちょっと軽くはないか、とも思えるが、その定めは重い▼再選挙としないのは、同数だから有権者はどちらでも認める、という意味合いなのか。その規定の確かな背景もまた定かではないが、規定は規定。とはいえ、くじ引きの落選は心の整理が付きにくい。「票の確認」を求め異議申し立てとなったという▼一方で棄権した2800人ほどの町民の思いも複雑に違いない。自分が投票していれば、と思うはずだから。たら、れば、の話は言っても始まらないが、あと何人かでも投票していたら。改めて1票の重さを教えられる。参院議員選挙(11日投開票)は既に期日前投票で始まっている。(A)