平成23年2月


2月28日(月)

●時ならぬパンダフィーバーの様相である。2頭のパンダが中国出発時から、成田空港に到着し上野動物園に移送されるまでを、マスコミ各社がリアルタイムでリポートする様子は、まるで海外の要人が来日するかのような騒ぎだった▼現在、日本国内には今回来日した2頭以外に、和歌山で8頭、神戸で1頭のパンダが飼育されていて、いつでも観賞することができる。しかし首都東京に3年ぶりにパンダが復帰したことが需要らしい▼パンダ(正確にはジャイアントパンダ)は日中国交正常化のシンボル的存在として、1972年に初来日。カンカンとランランのペアをひと目見ようと、連日のように長蛇の列ができていたことを覚えている人も多いだろう。「パンダ外交」は見事に中国のイメージアップを成功させた▼ところで88年に函館で行われた青函トンネル開通記念博覧会にもパンダが訪れている。「人寄せパンダ」効果に期待した主催者だったが、予想の60万人を大きく下回る26万人の見学者に終わり、博覧会自体も大幅な赤字となった。すでにこの時点でパンダの神通力は消えていたのだ▼今回のパンダ来日に対して、尖閣諸島問題をはじめ、数多くの外交問題によって緊張が高まっている日本と中国の関係を修復してくれることを期待している楽観的な政治家もいるようだ。そういう人種こそ檻に入れて見世物にしてはいかがだろうか。(U)


2月27日(日)

●コカ・コーラを初めて飲んだ子どもの頃。薬のような味が口中に広がり、飲み慣れたサイダーの方がおいしいと思った。それでも人の味覚は変化する。やがてコーラ独特のくせのある味が好きになり、一時は手放せなくなった▼コカ・コーラは125年ほど前にアメリカで誕生した。作り方は今も「企業秘密」という。そのレシピが突然、暴露された。原料などが手書きされた古いノートの写真から解析した、と米ラジオ番組が主張。これに対し、コカ・コーラ側は「本物と違う」と反論した▼同番組によると、コカ・コーラの原料は砂糖、ライムジュース、バニラ、シナモン、コリアンダー、ナツメグ、オレンジのオイルなど。これらが“偽物”とすれば、本物を知りたいと思うのが人情だが、肝心のレシピは今、アトランタの銀行の金庫で厳重に保管されている▼コカ・コーラと似て非なるものにガラナがある。コーラが日本に上陸した昭和30年台前半、これに対抗するため全国の関係メーカーが統一銘柄として商品化したのが「コアップガラナ」だった。函館の飲料品製造業「小原」では、半世紀を経た今も不動の人気商品だ▼ガラナの主原料は、ブラジルで取れるツル性植物の果実。天然素材を使った健康飲料として、人気の再燃も期待される。長く残っていてほしい味の一つである。久しぶりにガラナを一口。懐かしさと一緒に、“秘密の味”が少しした。(K)


2月26日(土)

●ニュージーランドを襲った地震。一報を受けた段階ではマグニチュード(M)6・3の地震と聞いて、被害はそれほどでも、と早合点していたが…。夜空に輝くオリオン座の南の方向にあるクライストチャーチ市から悲報が続く▼市民が浄財を出し合って、40年がかりで築いた市のシンボル・大聖堂が中心の花と緑のガーデンシティー。学園都市でもあり、語学研修生の誘致に力を入れている。今回の地震には研修生や留学生など多くの日本人が巻き込まれた▼真っ暗ながれきの下から9時間後に救出された19歳の女子学生は「先生が6、7人の名前を呼んだら何人かは返事したけれど、何人かは返事がなくて…」と話し、右足を切断する手術を受けた19歳の男子学生は「生きているだけでいい」と自らに言い聞かせたという▼日本と同じように島国であり、火山国であり、地震の多い国。耐震設計の建造物は少ないともいわれ、研修生らが通う学校が入っているビルが瞬時に崩壊するなど、直下型地震の恐ろしさをまざまざ見せつけた。200人ほどががれきの下敷きになっている▼日本からも精鋭の緊急救助隊が駆けつけた。まだ、先生の呼び掛けに返事した学生がいる。阪神大震災など時間との闘いを何度も見てきたが、「発生から72時間が限度…」なんて言わないで、国際協力で何日でも救助作業を続けてほしい。ガーデンシティーに早く花をめでられる日が戻ってくるように。(M)


2月25日(金)

●チュニジア、エジプトに続き、独裁政権に民衆の怒りが爆発したリビア。命をかけて民主化を求める国民に、カダフィ氏は銃口を向け、最後まで戦う構えを崩さない▼政権崩壊劇を国際社会は注視する。飛び火を恐れる中国はインターネット規制を強化し、反政府的な情報を遮断。デモ参加者を容赦なく拘束した。国際政治の均衡が変わる事態に、アメリカも神経をとがらせる。中東原油の先物価格は急騰し、株安の動きも出た▼大変革の嵐が吹き荒れ、流血の惨が広がる中、民主化を果たしたはずのわが国も“内戦”が続く。いわく、民主党元代表の党員資格を停止するが、元代表側は従えない。その対応に抗議して政務官を辞任する。政党の票で当選し、政権交代を果たしたのに、マニフェストを守れないから会派を離脱する…▼対する野党。子ども手当に反対だ、首相が退陣しても予算案は否決する、内輪もめの民主党に政権は任せられず、早期に衆院解散に追い込む…。国会戦術は多様で結構だが、今、政治空白を作るような争いをしている余裕は本当にあるのか▼今の国際情勢では、仮に独裁政権、いや大連立政権があっても国難の時代だ。中東の混乱が続けば、日本はどうなるか。間もなく予想されるガソリン高騰の対応ひとつできていないのでないか。民主党に反省材料は多いが、政治全体で内紛を起こしている時ではない。早く国際的な臨戦態勢を築くべきだ。(P)


2月24日(木)

●山岳遭難が減らない中、計画書を出さないまま入山する登山者が後を絶たない。北海道では昨年1年間で49件の遭難(死亡9人など)が発生しているが、うち道警に登山計画書が提出されていたのは7件だった▼中央アルプスとはいかないまでも、愛好者にとって縦走の幅もある大雪、日高山系は魅力の山々。正確な把握は難しいが、個人や少数から10人レベルのパーティーまで含め、推測される入山者はかなりの人数。技術レベルも様々で、常に危険と隣り合わせ▼「山を甘く見ていけない」。何度も聞く言葉だが、実際に山の天候は変わりやすく、気温や風の変化も激しい。霧に包まれればルートを見失い、滑落しかねない。余裕を持った日程と十分な装備を指導されるのもそれ故だが、同時に求められるのが万が一の際の対応策▼その基本が登山計画書。家族や職場などに伝えておくことであり、当該警察への届け。確かに基本的には任意(条例で義務づけている一部自治体がある)だが、毎年これだけ遭難事故が起きている現実、その際に煩わせる迷惑を考えると、任意だから、では済まされない▼もちろん自分のためでもある。なのに、軽んじられている。「ならば提出しやすくしよう」。窓口まで足を運ばなくてもいいように、道警は今月からメールでの受け付けを始めた。これで提出率が上がらないなら、登山者のモラルは相当に低いということになる。(A)


2月23日(水)

●「度々、親子の鯨も捕獲をせざるを得ず、その生命を奪ってきた…」—函館の鯨族供養塔のように、全国各地でクジラに感謝する鯨墓などがある。人は生きていくため、やむにやまれず殺生しなければならない…▼その道理を悟った上で生き物を捕らえ、ありがたく食するのだ。日本人が古代から食べてきた“鯨の食文化”は代表格。クジラ汁、竜田揚げなど、学校給食にも導入され、喜ばれている。その捕鯨に赤信号が出た▼南極海の調査捕鯨船が反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の執拗な妨害行為で中止に追い込まれたのだ。捕鯨船に薬品の瓶を投げ込むなど、SSの行為は危険極まりなく、野蛮なテロ行為だ。IWC(国際捕鯨委員会)が公認した調査捕鯨なのに▼「利用できる生物資源」と「貴重な野生動物」の二つの主張は平行線。妨害行為が過激になるため、日本人乗組員の安全を優先せざるを得ず、政府は今季は予定より早く南極海から引き揚げさせることにした。妨害による捕鯨中止は初めて。暴力に屈した形で腹立たしい…▼ただ、給食に出た竜田揚げに郷愁を覚える者として、最近、クジラ肉の需要が減り、在庫がたぶついていることが心配。それなら南極海の捕鯨を縮小して、遠洋捕鯨から沿岸捕鯨に切り替えてはどうか。「母さん、こいし…」と泣く子クジラも少なくなる。それにしても、理不尽な「どくろマーク」の暴力は許せない。国際世論に強く訴えよう。(M)


2月22日(火)

●今年6月から、すべての住宅に火災報知器の設置が義務づけられる。消防法の改正で、新築住宅は一足早く適用されているが、既存住宅の設置期限もそこまで。だが、浸透は今一つで、昨年12月段階(消防庁まとめ)の全国平均設置率は63・6%▼火災は財産を奪い、人命をも犠牲にする。毎年1000人ほどの人が命を落としているが、その半数以上が「逃げ遅れ」と言われる。例えば2006(平成18)年の統計では、焼死者1009人のうち633人(62・7%)を数え、目立つのが高齢者▼何より大事なのは発生させないという火の管理だが、万一の場合でも被害を最小限に抑えるには、少しでも早い発見が必要。手遅れになるにしたがって犠牲の確率も高くなる。どう早く感知するか、その対策として自ずと火災報知器に行き当たる▼函館市消防本部はホーム㌻で住宅用火災報知器の奏功事例を紹介している。警報音で気づいて消し止めて大事に至らなかったケースなどだが、昨年は14件。「もし報知器がなかったら」と考えると、恐ろしくもなってくるが、いざ設置せよ、となると簡単でない▼北海道も66・7%というから全国平均レベル。さらに函館市は51・5%にとどまっている状況という。罰則のあるなしは関係ない。なぜなら火災の抑止は自分のため、家族のため、そして(近隣の)人のためだから。あと3カ月あるが、早めの設置に越したことはない。(A)


2月21日(月)

●国際宇宙ステーション(ISS)のコマンダー(船長)として指揮を執ることになった若田光一さん。「和の心を大切にしたい」の言葉が印象的で、「和をもって貴しと為す」という聖徳太子の憲法を思い出す▼若田さんが宇宙に行くのは15年前の初飛行以来4回目。3年前には日本人初の長期滞在に臨んで4カ月も滞在。ロボットアームのスペシャリストでアームを使って日本の人工衛星を回収したり、実験棟「きぼう」を完成させるなど、高度な技術をこなしている▼若田さんは2013年末、ロシアのソユーズ宇宙船でISSへ。6カ月間ステーションで滞在し、最後の2カ月は船長の任務に当たる。これまでの船長は軍人のパイロット出身者が多かったが、元高校球児の若田さんは日本人で初めて▼6人の搭乗員が長期滞在する間、心身の健康管理やISSの安全確保に全責任を負う大役。飛行前でもチームの和を乱すと判断された場合は飛行士の交代を要求できるなど権限も大きい。若田船長の宇宙での活躍が楽しみだ▼聖徳太子の「和をもって」は「この世でまず大切なことは和であり、和がなければどんな仕事も為すことはできない」ということ。各国のえりすぐりと技術を競う若田さん。「和の精神でチームをまとめる」と抱負。かたや、「和の心」の一片もなく、四分五裂の政局の日本丸。ISSから眺めれば、ちっぽけなことなのに。(M)


2月20日(日)

●今シーズン、大雪に悩まされているのは北国だけではない。先日は首都圏が積雪に見舞われ交通が大混乱となり、慣れない雪道のため各地で交通事故が多発していた。中でも自転車に関連した痛ましい事故には胸が痛んだ▼東京都内で、前後の子供用座席に2人を乗せて自転車を運転していた母親が雪で滑って転倒。後ろに乗っていた5歳の女の子が車道に投げ出され、ワゴン車にはねられ重傷を負ったというのだ▼子供を前後に乗せる3人乗り自転車については、様々な危険性が指摘されながらも、2009年に全国でほぼ一斉に解禁された。もちろん安全に運転することが条件だが、今回のように雪道を走ることは、とても安全な状況とは思えない▼しかしながら日本の道路交通法では、人身事故を起こした場合、運転手に過失が認められる場合が圧倒的に多いのはご存知の通り。今回の事故の続報は流れていないが、運転手がなんらかの処分を受けた可能性は否定できない▼車は「動く凶器」であり、どんな状況であっても人の安全を優先して慎重に運転しなければならない。しかし、突然併走する自転車が転倒し、目の前に人が投げ出されたとしたら、果たして避けきれるだろうか。函館でも、雪道をふらつきながら自転車を運転する高齢者の姿をよく目にする。悲しい事故が起きる前に、雪道での自転車運転について、何らかの規制が必要ではないだろうか。(U)


2月19日(土)

●「私は宇宙人だ」「私はボケ、菅さんはツッコミの漫才」「四島返還では1000年たっても還らない」…。鳩山由紀夫前首相の語録に「抑止力は方便」が加わった。そう、格言「ウソも方便」の方便▼「最低でも県外」と沖縄県民に約束していた米軍普天間基地の県外移設断念をめぐって、地元紙などのインタビューに答えた。「学べば学ぶほど、米軍が抑止力を維持していることが分かった」との発言は「今、思えば方便だった」というもの▼一時しのぎの、便宜的な手段を方便という。仏教語で「近くにいく」という語源的な意味があり、「生きとし生きるもの(衆生=しゅじょう)を導くための便宜的な手段」をさす。県民(国民)に近づいて、安心安全な場所に導く仮の手法▼「辺野古しか残らなくなった時に理屈付けしなければならず、抑止力という言葉を使った。方便といえば方便だった」と、抑止力は後付けの理由だったことを認めた。沖縄に我慢を続けてもらうため後でつけた理屈。沖縄県民を完全に裏切った。県民の怒りは収まらない▼「腹案がある」と豪語したが、腹はからっぽ。首相を退いて今期限りの政界引退を明言したが、バッジへの未練が消えない。「北方領土返還は二島で…」など思慮を欠いた発言が続く。中高生の間には新語「鳩る」が交わされているという。考えや行動がブレることだ。「減らず口にこそ抑止力を」ではないか。菅政権はまた信頼を失った。(M)


2月18日(金)

●映画「七人の侍」が、「最後の劇場公開」と銘打って上映された。四半世紀も前の話だ。それまでも何度かビデオで見ていたが、印象がまるで違った。合戦シーンの迫力は雲泥の差で、叙情的な描写もスクリーンの素晴らしさが際立った▼映画が斜陽産業と言われて久しい。古くからの単館劇場はとうに姿を消し、今は辛うじてシネマコンプレックス(シネコン、複合型映画館)が地域の映画ファンの欲求に応えている。「そういえば何年も映画館に行っていないなぁ」と思い当たる人も少なくないのでは▼画面の大きさにこだわらなければ、映画は家庭でも十分に楽しめる。テレビやオーディオが進化し、何よりDVDが安くレンタルされている。刊行が始まった「男はつらいよ 寅さんDVDマガジン」(講談社)など、書店でも名作が手に入る時代だ▼そんな折、ついに映画業界が動き始めた。シネコン最大手のTOHOシネマズが今春、映画の新料金を一部でテスト導入する。18歳以上を1800円から一律1500円とし、18歳未満は1000円に統一。来春の全国一斉値下げが期待される▼デフレによる低価格商品に慣れると、1800円はやはり「高い」と感じてしまう。それが映画館離れの一因とすれば、今回の値下げの動きは的を射た対応といえそう。映画館に人を呼び戻すチャンスだ。同じ作品が違って見える。その映画館の不思議をぜひ味わってほしい。(K)


2月17日(木)

●9日付に続いて道産米の話。喜ばずにはいられない。道産米がついに一級品のお墨付きをもらったのだから。日本穀物検定協会の2010年産米食味試験で「ななつぼし」が最高の特Aの評価を得たという。待ち望んだ勲章で、持つ意味は極めて大きい▼北海道の米は長年、厳しい扱いを余儀なくされてきた。冷害との戦いに加え、収量は低く、食味も劣るとして農政の矢面に。他府県に比べ格段の規模で強いられた減反(作付制限)が物語っているが、その中でも関係者の努力が続けられた▼まずは試験研究機関。北海道の気候に適した品種改良への取り組みが「きらら397」や「ほしのゆめ」を創出。生産者の熱意がさらなる可能性を導き出した。確かに温暖化気象も少なからず幸いしているが、今日まで支えた鍵は何と言っても関係者の努力と熱意▼「道産米は…」という消費者に抱かれたイメージの払しょくは、苦労の連続だった。府県産米の壁が厚く立ちはだかる中で、最終的な決め手は食味。徐々に見直されるようになり、今や府県産米とそん色ないまでに。あと欲しかったのが公的評価だったが…▼その一つが食味試験。味、香り、粘りなどを基準米(複数産地ブレンドの「コシヒカリ」)と比較で、特Aは基準米より特に良好の評価。新登場の「ゆめぴりか」も参考対象ながら特Aだった。遠慮なく、胸を張ってこう言える。「北海道産米はおいしいんだ」。(A)


2月16日(水)

●先日の日露外相会談でラブロフ外相は、メドベージェフ大統領の北方領土訪問を「許し難い暴挙」とした菅首相の発言に対し、著しい不快感を示した。前原外相は日本固有の領土であることを主張。協議の継続で合意したが、領土問題が後退した感は否めない▼ラブロフ外相は、日露関係の悪化は菅首相の発言が原因であるとしたが、そもそも原因を作ったのはロシア側だろう。国家元首として昨年11月に初めて国後島を訪問。島民に一層の経済支援やインフラ整備を約束し、果ては軍の増強まで打ち出した▼菅首相の発言は、日露関係に与えた影響を考慮すれば否定的な意見が多い。ロシア側に格好の反発材料を与えたためだ。ただ、前原外相も言ったように、多くの日本人の気持ちではあろう。毅然とした態度は必要だし、効果的な牽制や警告を送ることは欠かせない▼領土問題は、主権にかかわる問題だ。中東や中国、当のロシアでも戦争や暴動が起こるのは、民族の地や自分たちの国は自分たちで治めたいという自然な欲求に基づく。北方4島も、日本の主権を侵害され、ロシアの実効支配が続いている▼戦後の両国は、未解決問題に4島の問題が含まれることを確認したり、帰属問題解決後の平和条約締結などで合意してきた。外交交渉を粘り強く進め、交渉を後押しするために、国民も署名運動などで世論を高めている。その努力や成果を無にしてはならない。(P)


2月15日(火)

●24歳のアフマドさんはネットの呼びかけで反政府デモの初日から参加。翌日は治安部隊のゴム弾を受けて足に負傷、2日後には銃弾を受けて死亡。この日、17人が犠牲に。催涙弾で死んだ子どもも…▼ムバラク政権が崩壊したエジプト。チュニジアの「ジャスミン革命」に触発されて大規模なデモが始まって18日目。ムバラク氏は首都カイロを離れ、大統領別荘がある保養地に脱出。スイスには推計5兆8400億円の資産があるという。30年間にわたって貯めた膨大な資産▼「大学を出ても仕事がない」「給料が安い」など若者層に広がる不満。公務員の最低賃金は月約4200円。高失業率(若者で3割以上)、年率10%という高インフレで、貧困の格差が拡大。国の富を独り占めにした実業家たちは私有ジェット機で出国したとも▼欧米ではファラオ(独裁者)を市民の連帯で倒した政変劇を、さわやかな白色をイメージし「ホワイト革命」と呼ぶ。アルジェリアやイエメンでも反政府デモが続く。イランでもデモ計画。バーレーンではデモを前に各世帯に約22万円の現金を支給するとか▼アラブ諸国の“崩壊ドミノ”は、どこまで広がるのか。中国のネット上では「次は中国の番だ」との書き込み。食糧難の北朝鮮では軍部隊が作業命令を拒否する騒動も。「自由とパン」を求める革命に、子どもなど弱者を巻き込んではいけない。日本でも就職難など若者の苦悩は小さくない。(M)


2月13日(日)

●インターネットの無限の可能性を暗示する、そんな数日間だった。ムバラク・エジプト大統領辞任のニュースが伝わった瞬間、広場に集まった民衆が歓喜を爆発させた。「私たちは自由だ」。その頬に涙が伝わる▼反政府デモの参加者の多くは、インターネットでの呼び掛けに応じた一般市民。“エジプト革命”の小さな火は一瞬で国内外に四散し、やがて勢いを増した。デモを扇動したネットの使い手たちが、一部で「維新の志士」とたたえられる理由だ▼「命を投げ出して国家・民族のために尽くそうという高い志をもつ人」(岩波国語辞典)を志士と呼ぶ。反政府側の拠点がパソコンの置かれた机上とみれば、革命自体が何やらゲームのようにも映るが、国や軍といった巨大な存在を相手に命を賭することに変わりはない。市民革命にかかわった、その一人ひとりが志士である▼日本における明治維新では、多くの志士が憂国の情をもって変革に当たった。大久保利通、西郷隆盛、木戸孝允、坂本龍馬ら諸国を駆け巡った志士たちの目に、情報を自在に繰る非武装のエジプト革命はどのように映っているだろうか▼長期独裁政権はいつか崩れ去る。このことは世界の歴史が証明している。独裁から解放された国民の新たな宿題は、国づくりに対する創建の気風と将来設計だ。アラブ諸国の政権が連鎖的に倒れる可能性もある中、その鍵はエジプト国民の“今後”が握っている。(K)


2月12日(土)

●またも芸能人による覚せい剤の再犯である。しかも本人はシンガポールに高飛びしたというのだから、同情の余地はない。何度もテレビに流される「二度としません」と涙ながらに語る姿からも、空しさしか伝わってこない▼今回の小向美奈子容疑者はまだ2度目だが、昨年5度目の逮捕となった俳優の清水健太郎をはじめ、こりずに薬物犯罪を繰り返す芸能人は後を絶たない。芸能人は「反省する」ということを知らない人種、と手厳しく指摘するコメンテーターも▼薬物犯罪者を早期に復帰させる芸能界の甘さが原因と言われることもあるが、実は一般社会においても覚せい剤事件の再犯率は約50%と極めて高い。反省できない人種は、一般社会にもはびこっているということなのだろうか▼もちろん薬物犯罪者のほとんどは、二度と手を出さないと誓って再出発する。しかし負い目を背負いながら生活していく辛さから逃れるために、つい魔が差してしまうことが少なくないという。生来的な意志の強さや弱さと関係なく、気がつけば再び手を出してしまっているのが、薬物依存症の怖さなのだ▼海外には依存症から脱却するためのセミナーやプログラムが数多く存在するが、日本ではまだまだ未発達。小学生から主婦やお年寄りまで、薬物汚染の拡大がとどまることを知らない今こそ、防止対策だけでなく、万全なアフターケアシステムの整備が必要不可欠だ。 (U)


2月11日(金)

●まだ2月中旬だというのに、年明けから大きなニュースが続いている。言われてみると「確かに」と思えるはずだが、自然災害に疑惑…。しかも尾を引いている話ばかりだが、その始まりは新年早々飛び込んできた「山陰・北陸地方の豪雪」▼その後も断続的に降って、国道などで数百台の車が立ち往生したほか、雪下ろしなどでは犠牲者も。そして「霧島連山の新燃岳の噴火」である。大量の降灰が農業はもとより住民生活を直撃、二次災害が懸念される状況。「鳥インフルエンザの発生」も今後に不安を残している▼疑惑では「大相撲の八百長」が発覚した。これまでは裁判で否定され、協会も「ない」と強弁してきたが、確固たる証拠としてメール歴が出てきては万事休す。3月の春場所と年内の巡業の中止を余儀なくされ、危機に直面している▼もう一つは「民主党の小沢元代表の強制起訴」。法的な白黒は今後の裁判に委ねられるが、政治家として金の問題で疑惑を持たれた事実は重く、同時にその認識も問われている。同じ政治では「河村派圧勝の名古屋トリプル選挙」が、既成政党に与えた影響も大きい▼国外に目を向けると「エジプトの反政府運動」である。なお混乱するか、安定に向かうか目が離せない。取り上げた七つの出来事は、いずれも年末の“重大ニュース”に挙げられる出来事だが、一方で唯一明るい話が「サッカーアジア杯の優勝」というのも気にかかる。(A)


2月10日(木)

●昔から新月などの大潮の時期に出産が多いと聞いている。雪かきなどの“冬バテ”にも効くウナギ。脂の乗った冬が本当の旬ともいわれている。そのウナギが新月パワーをもらって、新月のころ一斉に産卵するという▼日本列島から2000キロも離れた南のマリアナ諸島西方で天然ニホンウナギの卵が採集された。東大などの研究グループが水深160メートルの海底山脈で網にかかった31個の卵をDNA解析したところ、ニホンウナギと判明した。産卵場所を特定、卵を採集したのは世界で初めて▼直径わずか1・6ミリ。網にかかったさまざまな採集物のなかで虹色に輝いていた。この快挙のニュースが報じられたのは今月3日の新月の前日。「新月のころ産卵するウナギの生態」が証明されたのではないか▼海底で生まれ、黒潮に乗って日本列島の川や湖で大きくなり、産卵のためまた海に帰っていく。でも、ニホンウナギの養殖に使う稚魚のシラスウナギの漁獲量は年々減っている。しかも、卵からシラスウナギまで育つ確率は1000分の1▼謎が多くつかみにくいウナギだが、海底山脈で新月に誕生した卵たちは、たくましくふ化し太平洋を元気に泳ぎ回っているだろうか。産卵環境が詳しく分かれば完全養殖に弾みがつき、大量生産につながると期待されている。日本は世界の消費量の7割を占めるウナギ大国。今晩は脂たっぷりの“寒ウナギ”といきますか。(M)


2月9日(水)

●北海道米が元気だ。味の悪さから、かつては「スズメまたぎ」「やっかいどう米」とやゆされていたことを思うと、隔世の感がある。きらら397、ほしのゆめ、ななつぼし、ふっくりんこ、おぼろづき、ゆめぴりか…。多彩な顔ぶれに、首都圏など道外のファンも多い▼「いま、北海道のお米がとてもおいしいんです」。テレビ番組で交わされたタレント同士の会話。そこまではよかったが、おいしさの理由が「温暖化のおかげ」の一言で片付けられていたのは、少し残念だった。ここでは、味の向上を目指す関係者の努力を忘れるわけにはいかない▼第40回日本農業賞の集団組織の部で、「函館育ちふっくりんこ蔵部(くらぶ)」が特別賞を受賞した。ふっくりんこを道南生まれのブランド米に育て上げた生産者にとって朗報であり、何よりもこれからの励みになる▼米の良しあしは、甘み、粘り、食感などで決まる。ふっくりんこはその名の通り、ふっくらとした食感が特徴で、生産者は最適なタンパク値の維持といった苦労をいとわない。地道な試行錯誤の末にたどり着いた「おいしさの秘訣(ひけつ)」だ▼将来に不安がないわけではない。不況の影響で、量販店などでは低価格米がよく売れる。高級米のふっくりんこには、逆風である。舌の肥えた消費者にアピールする、攻めの戦略が求められる。食べてさえもらえれば、そのおいしさは折り紙つきなのだから。(K)


2月8日(火)

●「議員」に対する有権者の監視の目が厳しくなっている。逆の見方をすると、これまでが甘かった、ということであり、厳しいのは正常な姿。先日の読売新聞にこんな見出しの記事が載っていた。「市民団体の市議通信簿、不合格14人」▼神奈川県相模原市での話。市議会監視市民グループが議会(委員会を含め)を傍聴するなどして市議52人を個々にチェックし「改革の意欲」「政務調査費の使用方法や公開度」「議場での居眠り」など25項目で採点し、その結果を通信簿の形で実名公表したという▼6段階設けた総合評価で、最高ランクはゼロで、最低の「落第」が一人、その一つ上の「不可」が13人。これほどまでに徹底的な調査をされると、議員は高をくくっていられないし、無視もできない。当選すればひとまず安心という風潮を払拭させる▼「議員は期待に応え切っているか」。その質問に対する有権者の答えは甘くはない。国会議員には最も厳しい視線が向けられるが、都道府県議会議員、市町村議員も含め、その矛先として定数削減の要求が強まっている。確かに昨今の財政事情もあるが、議員側の責任も免れない▼全国的な政務調査費の乱用など、指摘される問題は多々。函館も含め市民オンブズマンが監視役として役割を果たしているが、有権者の目に勝る決め手はない。目を光らす最初の機会が選挙。今年は統一地方選挙の年。函館、北斗市などで議員選挙が行われる。(A)


2月7日(月)

●碁を打ちながらコーヒーを飲む。きょう3杯目。仕事中に睡魔に襲われたらチョコをつまむ。チョコレート中毒かな…。子どもたちはチョコ大好きだが、今や大人の嗜好品。商戦に乗せられたバレンタインデー(14日)の主役▼バレンタインデーは3世紀のローマの教聖職者、聖バレンティヌスが兵士の結婚を禁じる皇帝の命令に背いて兵士を結婚させ、処刑されたのが有力な起源。この教聖職者をしのぶ日が、愛の告白の日となったという▼先ほど、イスラム教シーア派を国教としているイランで「バレンタインデーのお祝いはさせません」というバレンタイン禁止の通達が出た。ハートをあしらったカードやポスター、関連商品の製造が禁止されたのだ。規制に従わない業者は処分される▼サウジアラビアでも関連商品の販売は好ましくないとして取り締まりを強化しているという。それに、カカオ豆の最大の産地になっているコートジボワールで1カ月間の輸出禁止の措置がとられた。このため、チョコやコーヒーの価格高騰が予測されている▼義理チョコ、友チョコ、自分チョコ、ファミチョコ…。試食買い…。国の宗教や経済に関係なく「愛のチョコ」に踊らされているのは無宗教(?)の日本列島だけか…。せめて、売上金の一部が原料生産国の子どもたちの教育支援に使われる「チャリチョコ(寄付チョコ)」を買いたいものだ。「バレンタイン・キッス」を聴きながら…。(M)


2月6日(日)

●新聞記事を書く際には、意外と面倒な取り決めがある。例えば、登録商標済みの商品は、広義の一般名称に言い換える。記事の内容によっては商標権者の信用に傷を付けることになるし、逆にその商品を意味なく宣伝することにもつながる▼「記者ハンドブック」(共同通信社)に具体例がある。前述するのが登録商標で、その後のカッコ内が言い換え例だ。アイスノン(保冷枕)、エレクトーン(電子オルガン)、ジープ(小型四輪駆動車)、着うた・着メロ(着信メロディー)、マジック(フェルトペン)…▼TOTOの「ウォシュレット」が、発売30周年で累計出荷台数3000万台を突破した。社会現象として多くのメディアが取り上げたことから、ここではあえて「ウォシュレット」の名称を使うが、記事によっては「温水洗浄便座」への言い換えが必要になる▼もちろん他社による同種の商品にも優れたものはある。それでもなお、ウォシュレットの商品名が温水洗浄便座の代名詞になっているのは、その先駆的な業績に対するご褒美と取れなくもない▼日本には「水に流す文化」がある。温水洗浄便座の浸透がそれに関係しているという論評を目にしたが、発想に強引さを感じる。その証拠に、同種の便座は海外にも広がりつつある。万国共通、おしりは正直である。何よりも、開発の独創性によって「ものまね日本」の批判から抜け出しているところがいい。(K)


2月5日(土)

●「函館野外劇」が第6回JTB交流文化賞(交流文化賞・選考委員特別賞)を受賞したという。「100人以上のボランティアスタッフと400人以上の(市民)出演者が支え、地域に根づいた交流事業になっている」。受賞理由がその重みを語っている▼野外劇の創出は難しい。試みては続かずに消えた幾つかの国内事例が物語っているが、残っているのは、それだけ価値があるということ。確かに五稜郭という格好の舞台があり、題材となり得る史実もあったが、それより何より大きいのは人である▼努力の積み重ねは、全国的な評価を得る原動力に。続けることで紛れもなく函館が誇れる文化財産へと導いた。それは過去の幾つかの受賞歴(北海道ふるさと大賞など)が教えているが、将来を見据えて大事なことはさらなる情報発信▼その意味で、以前から着目してくれていたJTBの表彰を受けた意味は大きい。全国的な知名度も上がるはずだが、同時に忘れてならないのは行政、経済界も含めた地域の支え。以前にも本欄で触れたが、野外劇も目的にした観光客をより増やす誘導策も一つ▼例えば野外劇公演の日は、鑑賞の直前に見学できるよう奉行所は公開時間を延長し、鑑賞後は時間の心配なく夜景見学が可能な体制を考えるとか。それによって観光客は夕方から奉行所、野外劇、夜景を一挙に楽しめる。JTBの賞はそんなアドバイスにも聞こえてくる。(A)


2月4日(金)

●2月は如月、初花月、小草生月などと呼ぶが、雪が融け出すことから雪消月ともいう。でも、北方領土の雪は国土地理院が作成した地形図から消えるのではないかと危惧。7日は「北方領土の日」。今月は返還運動強調月間▼昨秋、ロシア大統領が北方領土の国後島に上陸、「わが国の非常に重要な地域」と宣言。軍要人や漁業、運輸、エネルギー省の幹部らも次々と視察し、実行支配をアピール。特に四島の「戦闘態勢の強化」を指示し、大規模な軍事演習も実施▼四島への経済協力や投資プロジェクトにも意欲的で、まず韓国企業にリストを提示。韓国側は建設、石炭、水産加工、ホテル事業に関心を示しているという。第三国が投資すれば当然、領土返還の障害になる。指をくわえて見ているだけでいいのか▼日本政府はロシアの一連の行動に「遺憾に思う」「領土紛争は存在しない」と繰り返すだけ。先ほど、ロシアのビザを取得して国後に渡った日本人に「ロシアの管轄権を認めることになる」と自粛を求めたが…▼22日は島根県が制定した「竹島の日」、1月14日は石垣市が決めた「尖閣諸島開拓の日」。道民としては「日本固有の領土であり、ロシアが不法占拠した」(前原誠司外相)と発信を続けたい。雪まつり会場で返還署名を募るのも大事だが、首相や閣僚は北方領土に上陸し日章旗を立てる意気込みが必要だ。“島消月”はご免だ。(M)


2月3日(木)

●なんとも豪快な食べ方である。豆まきとともに、節分の定番となった恵方巻き。丸かぶりずし、招福巻きなどの別称もある。基本的な食べ方は、太い巻きずしを頭からガブリ。1人だと寂しいが、家族でやると結構楽しい▼普通の太巻きずしという外見に似合わず、食べ方には意外と細かい“作法”がある。まず、その年の縁起の良い方向(恵方)に体を向ける。目をつぶる。願い事を思い浮かべる。手に持った恵方巻きを丸かじりする。大事なポイントは「喋らないこと」▼大阪の商人が商売繁盛を願ったことが恵方巻きの始まりとの説もあるが、確かなことは分かっていない。その一風変わった商品が、なぜ全国に広がったのか。一番の理由は、コンビニやスーパーなどの戦略が見事に当たったということだろう。最近ではスイーツ系の恵方巻きも人気というから、商魂のたくましさに驚かされる▼全国的なイベントが特定の業界を潤すケースは他にも多い。クリスマスを代表格に、バレンタインデー、ホワイトデー、サン・ジョルディの日…。最近ではオレンジデーといった変わり種もある▼まんまと商戦に乗せられている、といった苦い思いがないわけではない。一方で、家族や知人とのコミュニケーションツールと割り切ることもできる。景気回復の遅れが商戦にどう影響するか。庶民のささやかな楽しみさえ奪ってしまうような、国の失政だけは遠慮したい。(K)


2月2日(水)

●サービスエリアで休憩後に出口を間違えて高速道を逆走…、69歳女性が逆走、トラックと衝突し死亡…。高齢者ドライバーが増えるに比例して、高齢者の死亡事故も増えている。特に75歳以上の判断力が低下しているという▼先日、いわゆる後期高齢者になって運転免許証更新の講習会で初の認知機能テストを受けてきた。年、月、日、曜日、時刻などを答えたり、何時何分の時計を描かせられたり…。一番大事なことはイラストや絵を思い出せるかどうかだ▼動物、植物、楽器、果物、乗り物など16種類の絵を見て覚え、どれだけ覚えているか記憶力を問うものだが、100点満点で0点でもパスで、更新後に交通違反があった場合、専門医の判断を受けるという▼ということは事故を起こしてから「認知症」と判断されることになるが、それはちょっと疑問。認知機能検査の0点の段階で専門医に診断してもらうのが筋ではないか。高速道の逆走の原因の約7割は「認知症の疑いあり」と分析されている▼逆走車は正規の進行方向右側の追い越し車線を走ることが多く、悲惨な事故につながる。一般道でも前方注意を怠り、車間距離をとらず、それに認知症が加わったら事故を起こすのは当然。ブレーキとアクセルを踏み間違えたり、信号無視したり…。衝突を察知し自動停止するような新車も出ているようだが、危険を判断するのは高齢ドライバーだ。(M)


2月1日(火)

●テレビ放送記念日が2月1日ということを知っている人は、関係者ぐらいだろう。そう、わが国で初めてテレビの本放送が開始されたのが1953(昭和28)年の2月1日。もっと厳密に言うと、第一声が東京で流れたのは、この日の午後2時…▼資料によると、受信料は月額200円で、受信契約数約900台でのスタートだったという。それから半世紀余りしかたっていないが、科学技術は進んで、テレビ放送はアナログからデジタルの時代へ。地上デジタル完全移行の年を迎えている▼「混乱無きように」。今まさに周知は最後の段階。その移行計画が決定したのは、かなり前。「アナログテレビ放送の周波数の使用は10年以内に停止する」。2001(平成13)年の電波法改正時にさかのぼる。理由はアナログ周波数の使用が限界にきたことである▼テレビ放送をデジタルに切り替えることでアナログの周波数が空く。その分、携帯電話や災害時の通信などへの利用枠が広がる。電波の使用が多様化し、増え続ける中で、デジタル化はいわば将来を見据えた時代の要請でもある。諸外国でも移行が進んでいる▼デジタル化は画面の質の向上、さらには機能や用途面で可能性を広げる。ただ、大変なのは視聴者側も対応しなければならないこと。昨年末現在、道内では12万世帯が未対応という報告もある。テレビ新時代の幕を開ける「7月24日」は半年後に迫っている。(A)