平成24年10月


10月31日(水)

●南仏の田園地帯を急ぐ避難民の列に敵機が機銃掃射、5歳の娘をかばった母親は息絶える。死の意味が理解できない少女は死んだ愛犬の墓をつくり、十字架を立てる…▼孤児院に連れて行かれる少女は十字架で一緒に遊んだ少年の名前を聞く。少女も呼び続け、不意に「ママ、ママ」とつぶやき、雑踏に消えていく…。少女の目を通して戦争が引き起こす悲劇を描いた仏映画「禁じられた遊び」▼2度にわたる世界大戦の舞台となった欧州。その悲劇を教訓に、ドイツの経済力を借りて新欧州を建設、EU(欧州連合)の結成にこぎつけ、まず通貨を統合「ユーロ圏」としてスタート。しかし、債務超過などで揺れている▼そのEUが今年のノーベル平和賞に決まった。ノルウェーの委員会は授賞理由に「欧州の平和と和解、民主主義への貢献」を挙げている。核保有国あり、貧困や飢餓、宗教の対立などが渦巻いており、国境の壁が厚い…▼「お墓って、死んだ人を集めておくところ、子犬も埋めなきゃ寂しがるわ」と少女は叫ぶ。戦争という過酷な運命を繰り返さないためのノーベル賞。式典などで使っているベートベンの「歓喜の歌」が欧州に響きわたるよう期待したい。(M)


10月30日(火)

●10月最後の日はハロウィーン。すっかり日本にも定着。どこも「お菓子ちょうだい。くれなきゃいたずらするぞ」と、おねだりする「お化けカボチャ」のオンパレード▼鬼のようなジャックランタンがシンボル。カボチャをくり抜き、刻み目を入れ、ロウソクで内側から照らす。怖い顔を刻み、悪霊を追い払うため、ハロウィーンの晩に戸口の上り段に置き、仮装した子供たちがガード▼その仮装姿が事件を呼ぶことも。先日、米国でハロウィーンで仮装の8歳の少女がスカンクと間違われ、親戚の男性にショットガンで首などを撃たれた。少女は全身が黒い衣装で、白い毛のついた帽子をかぶっていた▼20年前には名古屋市からルイジアナ州の高校に留学していた学生(当時16歳)が不審者に射殺されている。米国では毒など混入していないか心配で、もらったお菓子は子供に食べさせない親が増えているという▼下校時に連れ出されるなど子供の犯罪被害も年々増えている。無慈悲で残酷な心を持った鬼が、うわべだけ慈悲深そうにふるまう“残忍な事件”がいつ起こるか分からない。地域のイベントになったハロウィーンの夜、みんなで仮装の子供たちを見守ろう。(M)


10月29日(月)

●イタリア中部で300人超が死亡した3年前の地震予知をめぐり、現地の裁判所が事前に「安全宣言」を出した地震学者ら7人に禁固6年の実刑判決を下した。罪状は過失致死。世界中の地震学者らの間で波紋が広がっている▼今月、函館市内で開かれた日本地震学会では、学会内の「地震予知検討委員会」の名称を含め、「予知」という用語の使い方を見直す方針を決めた▼「(予知が)実用化につながると誤解を招く」というのが理由。東日本大震災を経て、地震に対する社会の関心がかつてなく高いことも見直しの背景にありそう▼発生の時間、場所、規模を正確に予知するのは、現在の地震学では困難だ。天気予報のようにはいかない。だが、過去の発生例を詳しく調べ、災害に備えることはできる▼東北の三陸沿岸は、数百年間隔で巨大地震・津波に襲われていた。これは何人もの学者が震災前に指摘していた。だが、その研究内容は軽視された。結果、昨年の大震災で多くの人が犠牲になり、福島第1原発の事故が起こった。むしろ反省すべきは「予知」の精度ではなく、そうした研究を防災思想に生かせなかったこと。これは科学者だけに責めを負わせられる問題ではない。(T)


10月28日(日)

●臨時国会という名の永田町劇場が1カ月あまりの休演を挟んで、29日から再び上演される。「近いうち」を巡り、舞台裏が忙しかったが、事前協議という最終稽古もすんなりといかないまま本番に▼与野党の台本と演技は、時代が変わり、立場が代わっても同じ。与党は守るに窮し、野党は攻めるだけ…口では国民のためと言いながら、実は政権争い。解散したくない、解散させたい、は典型的な例▼そのつけの行き先は常に国民という名の観客に。赤字国債発行のために必要な特例公債法案にしても、臨時国会で成立させるなら、先の通常国会でも出来たはず。いたずらに無駄な時間を費やされた感は否めない▼当然と言えば当然、業を煮やした動きが表面化した。台風の目とささやかれる日本維新の会に加えて、これまた注目の石原新党が満を持して登場。もはや焦点は新たな役者を選ぶ解散総選挙という次の舞台に移った感▼ただ、その前に…託す役者を選ぶ「近いうち」のため、29日からの永田町劇場は、しっかり見ておく必要がある。与野党それぞれの台本がどう書かれていくか、その答えが透けてくるから。厳しい視線を浴びての舞台になるのに変わりはない。(A)


10月27日(土)

●「エコドライブ」という言葉をあまり耳にしなくなった。迎える11月が環境省などの提唱する推進月間であることも、ほとんど知られていない。啓蒙の動きが始まって、そう時間が経っていないのに▼地球の温暖化対策として、二酸化炭素排出量の削減は国際的テーマ。目標達成への実践は産業界のみならず、個人にも求められている。その一つが地球にも、財布にも優しい、と勧める「エコドライブ」▼改めて、どうすればいいか、の説明は不要だろうが、アクションプランなるものが策定された6年前に「…10のすすめ」が提示されている。既にやっているよ、という人が多かろうが、参考までに幾つか拾うと…▼まずは「加減速の少ない運転」。そして「ゆっくりスタート」「アイドリングストップ」「タイヤ空気圧チェック」など。特に求められるのは加減速に関連し、事故防止、燃費面でプラスでもある経済速度での運転▼北海道は間もなく冬タイヤの季節。運転前に暖気もしたくなるし、短時間駐車の際にはアイドリングも。走行安全上、支障が出るようでは困るが、そうでなければ出来る範囲で実践を…推進月間の呼びかけ趣旨は、その一点。環境へのちょっとした気遣いである。(A)


10月26日(金)

●北電泊原発の事故を想定した道の原子力防災訓練が24日、行われた。10代の大半を過ごした後志管内仁木町などがニュースに映り、複雑な心境だった▼30㌔圏には仁木の隣の余市町も含まれる。余市から小樽にかけては、山側を迂回する広域農道を除くと、海岸線の国道5号が唯一無二の幹線道路。夏の海水浴シーズンにはよく渋滞したし、冬には吹雪で通行止めにもなった。住んでいた者の実感として、全員の避難は、どう考えても無理だ▼泊の30㌔圏人口は9町村合わせて約7万8千人。一方、建設を再開した大間原発を間近に見る函館は28万人、北斗、七飯や海岸の町も含めたら30万を軽く超す。避難は後志より格段に難しくなる▼同日、国の原子力規制委員会が放射性物質の拡散予測を公表した。全国16原発のうち、4カ所では30㌔超でも即時避難が必要な週100㍉シーベルトを超える地点があると試算した▼地図に線を引くように、安全な地域を明確に示すことなどできない。たとえ事故直後のパニックや緊急避難を乗り切ったとしても、その後の地域崩壊は福島の例を見るまでもなく悲惨—。不安は募るばかりだが、その解消にめどが立たないのがもどかしい。(T)


10月25日(木)

●アメリカからちょっとショックなニュース—。スーパーマンことクラーク・ケントが勤めていた新聞社を辞めるというのだ。漫画での話だが、USAトゥデー紙が報じた▼ケントはコミックの中でずっと新聞記者。新聞社には重大な情報が真っ先に集まる。出先で事件、事故に出くわすことも多い。記者は常に情報の最前線にいるというイメージがあればこその設定▼そのケントは「ジャーナリズムは娯楽に取って変わられた」と“抗議”して辞めるらしい。記事の中で作者が、新聞記者を「保守的」と断じ、現代ジャーナリズムと区別していたのも残念▼米国では2007年からの3年間で、31の日刊紙が廃刊となり、発行総部数も約520万部(9・8%)減少。日本でも01〜11年で、総部数は530万部(9・9%)減った(日本新聞協会調べ)。背景にはインターネットの台頭がある▼新聞に限らず紙媒体は劣勢だが、痩(や)せ我慢で言わせてもらうと、肝心なのは情報の中身。時代がどう変わろうと、媒体の主力が何になろうと、記者の仕事の重要性は変わらないと信じたい。それを認めてもらうには、我々の研さんが今まで以上に必要なのは言うまでもない。(T)


10月24日(水)

●駅伝の季節がやって来た。20日に北斗市内で道高校大会が開かれ、男子47校、女子21校が熱い走りを見せた。優勝した大谷室蘭(男子)と旭川龍谷(女子)は12月23日、京都市で開かれる全国大会に出場する▼都大路を舞台に繰り広げられる全国高校駅伝は、クリスマス直前の慌ただしい中で行われ、師走を代表するスポーツイベントとして定着した▼同じ20日には、東京で大学駅伝の予選会も開かれた。本大会は1月2〜3日の箱根駅伝。こちらも正月の風物詩で、「これを見ないと年が始まらない」というファンは多い。この大会を目標に大学に進学する選手もたくさんいる▼かつての道南勢、特に高校男子には駅伝の強豪校が多かった。大野農業は1954年からと60年からの2度、3連覇を達成。函館有斗(現函大有斗)は優勝5回、函館工も3回頂点に立っている。だが、78年の第36回大会以降、優勝から遠ざかっている▼65回目の今年、男子は函大有斗、女子は大妻がともに13位に入ったのが最高。だが、優勝校、準優勝校で道南出身選手が活躍した。優れたランナーを輩出していることは今も昔も変わらない。道南の高校が都大路を快走する姿を見てみたい。(T)


10月23日(火)

●「何でこうなるの」。思わず怒りが込み上げてくる。それは東日本大震災復興予算の使い方。復興というのだから、被災地の再建に寄与するため、と認識して当然なのに、そうでないというのだから▼あの悪夢の大地震、大津波から1年半余り。原発事故も誘発して、被災地では仮設住宅暮らしを強いられている人が多数。地域産業も立ち直りの緒についたばかりで、「1年でも早く」は誰しもの願い▼政府が復興予算として「5年間に19兆円」を打ち出したのもそれ故。十分か否か、定かでない中で、拡大解釈をした使い方…不当使用というか、流用というか、そんな使い方をされているとは。疑念を持たれても仕方ない▼例えば、愛知県東部の農業用水(水路造り直し)事業。どう考えても、復興との整合性を覚えない地域、事業である。しかも、その事業団体が「仕分け」で縮小を求められた独立行政法人ときては、理解を超える▼ところが、中央官庁は、その認識が逆に不思議なようで。日本を再生するという趣旨の予算だから、目的外使用には当たらない、のだと。こじつければ何にでも使えるとことになる。詭弁(きべん)と言うしかない。これでは…政治不信に行政不信も加わりかねない。(A)


10月22日(月)

●「大臣を覚えた頃は次の人」というサラリーマン川柳があった。民主党として8人目の法相、7人目の拉致担当相の田中慶秋氏が「職場放棄」や「暴力団との関係」などを巡って醜態をさらけ出した▼参院決算委員会に野党側から出席要望があったにもかかわらず欠席、体調不良を理由に閣議を欠席、都内の病院に入院した。海外出張などを除いて閣議欠席は異常とか。「病状」の経過を見て進退を決めるという例のパターン▼それ以上に許せないのは、暴力団対策や犯罪取り締まりを司る立場の法相が、暴力団関係者の宴席に出たり、仲人を務めたともいわれ、反社会的勢力との交際だ。外国人から政治献金を受けていたことも発覚した▼党代表選で野田首相をいちはやく支持した論功行賞で入閣して1カ月も経たないのに。拉致問題担当相も兼ねており、資質を欠く田中法相の“裏切り”で横田めぐみさんらの救出はさらに遠のいた…▼子供のころ、ろくろく首や蛇女などが出てくる見世物小屋での「親の因果が子に報い」の口上は「悪い行いは子供の不幸につながること」と教えられた。先生たちは「悪い政治家は国民の不幸につながる」を肝に銘じてほしい。深まる秋、吹くか解散風。(M)


10月21日(日)

●多くの仏像の目は、半分開いて半分閉じている。見るわけでもなく、見ないわけでもない。意識するわけでもなく、しないわけでもない。無のようで無ではない…。そんな境地だが、唐招提寺を開いた鑑真和上(がんじんわじょう)像の目は閉じている。失明しているためだ▼日本に戒律を伝え、仏教興隆に尽くそうと、鑑真は6度目の渡航で中国から九州にたどり着いた。その才能を惜しんだ玄宗皇帝は渡日を許さず、最後は密航の形で出国。日本に着いた時には苦労で視力を失っていたという▼国宝・鑑真和上坐像の模像「お身代わりの像」の造形がほぼ完成し、奈良の唐招提寺で公開された。没後1250年にあたる来年に向け、本物と同じ技法で制作が進んでいる▼鑑真は朝野を上げて歓迎され、仏教に深く帰依した聖武天皇や僧侶に戒律を授けた。当時は税金逃れのため、自分で髪をそる偽物の僧が多く、鑑真が伝えた戒律を受けた者を正式な僧とする制度も築かれた▼鑑真像はこれまでも、日中友好の証しとして何度か中国に里帰りしている。東シナ海の荒波の中で目をつむり、正しい教えを伝えようと命を賭して渡航した和上の願いを確認し、現代に生かしたい。(P)


10月20日(土)

●尖閣諸島問題で悪化した日中関係は、経済も直撃。日系企業の襲撃や日本製品の不買運動、観光旅行のキャンセルなどが続き、ビジネス界で言われてきた「チャイナリスク」が再浮上している▼リスクの分散は企業の鉄則。日系企業ではタイやベトナムなどに続き、民主化が進むミャンマーへの進出熱が高まっている。人件費が格段に安く、経済成長も進んでいることから市場としても着目されている▼検討段階を含め、伊藤園やスズキ自動車、ユニクロを展開するファーストリテイリングなどが名乗りを上げ、全日空は12年ぶりに、成田とミャンマーを結ぶ定期路線を就航した。週3往復で、まずはビジネス客の利用を狙っている▼こうした動きは今後も加速しそうだが、あくまで豊富な労働力や巨大市場を持つ中国が担ってきた機能を補完する場としての進出のようだ。チャイナリスクは大きいが、大きな取引相手であることに変わりはない▼現に、日本にとって中国は今や、アメリカを抜いて世界一の貿易相手国。経済交流は両国の共存と成長に欠かせない。企業にばかりリスクを負わせる時代に終止符を打ち、政治は冷静に関係改善に当たらなければならない。(P)


10月19日(金)

●ある保健士から聞いた病気に苦しむ44歳女性の話。あっちこっちが悪く、飲んでいる薬は8種類。若いのに認知症のように飲み忘れたり、飲みすぎたり…。身体の異変にノイローゼ状態▼18歳の時、ひと目惚れした男性の子供がほしくて同居。猛反対の親に逆らって男の子を産んだものの、男性と別離。親の援助は受けず、ミルク代のない日も。夜の世界で懸命に働いて育てた▼飲めない酒を飲みすぎたのか、まず糖尿病、腎臓がやられ、すい臓がやられ、秋から冬にかけて喘息に苦しみ、今年は卵管炎など婦人病で四苦八苦。いつも点滴、酸素ボンベの世話になっている▼胸を含め「女」を捨てるか苦もん。「なんにも悪いことはしていないのに、なんで私だけこんなに苦しむの」—保健士へのメールには必ずムンクの絵文字が4つ。しかし、22歳になる息子の「病気は誰も代われないんだ。笑顔を見せてよ」の呼びかけに目が覚めた▼薬の飲み忘れなどはノイローゼによるものか。精神科医の香山リカさんは「ストレスに悩む人は自分への評価を低くしている。自信と誇りを持って」と説いている(本紙)。17日から「薬と健康の週間」。各地で街頭相談などがある。正しい取り扱いを身につけよう。(M)


10月18日(木)

●プロ野球は、クライマックスシリーズ最終ステージに突入し、日本シリーズ出場へ向け熱い戦いが繰り広げられている。一方、25日にはドラフト会議が控えており、新戦力獲得に向けた各チームの水面下の戦いもヒートアップ▼昨年のドラフトでは、日ハムが1位指名した東海大の菅野智之投手が入団を拒否。当初から「巨人以外の指名は受けない」としていたため、強行指名は世間を驚かせたが、その信念が揺らぐことはなかった▼意中の球団でないという理由でのドラフト指名拒否といえば、元巨人の江川卓さんや元木大介さんの名前が真っ先に浮かぶ。しかし、日本球界復帰の可能性が高い福留孝介や、巨人のエース内海哲也など、同じ道をたどった選手は以外に多い▼ドラフトを受けての入団拒否は正当な権利であり、非難する理由はない。ただ菅野の場合、叔父である巨人の原監督や親族などが同情を誘うアピールを行ったのには首を傾げざるを得ない▼日ハムの担当者は17日、「1年のブランクを考えると力のある選手ではない」と菅野を指名しないことを明言。菅野の目的が巨人に入団することなのか、プロの舞台で光輝くことなのか、しっかり見極めたい。(U)


10月17日(水)

●ついにそこまで来たか—という事件が世間をにぎわせている。インターネット上の「なりすまし」だ。犯人は他人のパソコンにウイルスを仕込んで遠隔操作し、犯行予告を発信した。パソコンを乗っ取られた側の被害者が「冤罪」で逮捕されていたことも次々と判明した▼世界中と瞬時に連絡が取れるインターネット。世界を行きかう情報量はこのツール(道具)の登場で、飛躍的に増加した。確かに便利。ビジネスでも個人的にもインターネットなしの時代には戻れない▼匿名性を悪用した犯罪や名誉棄損、いたずらはこれまで何度も社会問題化した。だが、たとえ他人になりすましても、書き込みやメール送信をしたパソコン(IPアドレス)が特定できれば、容疑者特定は可能だった▼今回はそのパソコンが乗っ取られた。そうなると「誰がやったか」を突き止めるのは極めて難しくなる。犯行声明がマスコミなどに送られていて、不気味さは拡散している▼ネットにつながっている限り、誰でも被害者になる可能性がある。不明な添付ファイルを開かないという自衛策だけでは不安だ。ある日突然、身に覚えのない逮捕状を突きつけられてはたまらない。対策は急を要する。(T)


10月16日(火)

●国会が機能不全に陥っている。休会中だから、この表現には違和感もあるが、敢えて言うからには、それなりの理由が。先の通常国会で積み残した重要法案や外交など懸案が多々あるから▼民主党の代表選挙、自民党の総裁選挙が終わり、両党が新しい執行体制を整えて3週間になろうといる。国会に求められている現実を考えると、速やかに臨時会が召集されていておかしくない▼民主党の輿石幹事長が14日のテレビ討論で「月内に」と口にしたものの、15日の3党幹事長会談でも展望は見えず。懸案の審議が先か、解散(衆院)の時期確約が先か…召集を阻害しているのは毎度の党利党略▼政治不信が叫ばれて久しい。それは世論調査の支持政党なし(無党派)の率に表われているが、理由は駆け引きの政治劇が多いから。赤字国債発行を可能にする特例公債法案は“緊急上演”の必要があるのに、役者不足を理由に休演中▼この間に無理矢理見せられているのが、党利党略の幕。そうじゃなくて…見たいと求められているのは山積みの本来の演目なのに、この有り様では…ファンが減って当たり前。さっさと開演して役者の入れ替えを。休演期間はとうに過ぎている。(A)


10月14日(日)

●西カムチャツカのカニ漁に出漁していた日本水産のカニ母船、洋光丸(5763㌧)が今年の北洋船団のトップを切って、3カ月ぶり朝モヤたちこめる函館港に帰港した▼今年は日ソ漁業交渉でカニ缶詰は六万五千箱と昨年より五千箱も減らされたが、豊漁に恵まれた。うち振る小旗や五段雷の花火に迎えられ、真っ黒に潮やけした乗組員たちは、岩壁に詰めかけた家族と大漁と無事を喜び合った(昭和35年7月16日付、毎日新聞)▼毎年5月1日に沖合の5〜6隻の母船、西浜岩壁などから大漁旗の350〜400隻の独航船が一斉に出漁。2、3日は大門の屋台やキャバレーは北洋漁船員でにぎわった▼記者の駆け出しの5年間、母船式サケ・マス・カニ船団の光景を取材。19人乗りの独航船が函館山を回った海峡で転覆した惨事もあった。市北洋資料館で開かれている北洋漁業出航風景写真展を観てきた▼荒波に向かっていく乗組員を涙で見送る7000人を超す家族の顔…懐かしい昭和の風物詩。今、ロシア水域でとれるサケ・マスはごくわずか。しかも数十億円の入漁料を払って。ベーリング海まで出かけた北洋漁業のバイタリティーは、もう再現できないのだろうか。(M)


10月13日(土)

●ノーベル文学賞が発表された。毎年下馬評の高い村上春樹氏は今年も選ばれなかった。ファンの一人として複雑な気持ちだ▼高校生の頃、「1973年のピンボール」で初めて村上作品に触れた。独特な世界観と読者の感性に訴えかける効果的な比喩が、さわやかとは言えないが、味わい深い読後感をもたらした▼当時その呼び名はなかったが、「ノルウェイの森」で決定的な「ハルキスト」となった。主人公の年齢と近かったこともあり、言葉の一つひとつが体に染み込むような共感を味わい、何度も読んだ▼「ねじまき鳥クロニクル」では「ノモンハン事件」を取り上げて人間の暴力や悪を描き、「アンダーグラウンド」では地下鉄サリン事件被害者のインタビューを活字にするなど、作風は徐々に変化。ブームになった「1Q84」も、暴力や不条理が全編の底流にある▼村上作品に揺さぶられるツボや感情の振幅は読者ごとに異なる。「ハルキスト」は皆、自分の内にあるそれぞれの「ハルキ」に触発されている。大作家だから読み続けてきたわけではない。冒頭で複雑と書いたのは、「ハルキ」がノーベル賞作家という遠い存在にならずに済んだ「安堵」の気持ちもあるからだ。(T)


10月12日(金)

●世界保健機関(WHO)が先日、発表した推計値は、あまりに衝撃的というほかない。うつ病などの精神疾患で苦しんでいる人が、世界で3億5000万人を超えるというのだから▼さらに年間の自殺者は100万人を数え、その半数にうつ病の兆候が見られたとも。医学の診断レベルが進んだこともあろうが、我が国もうつ病患者は急増し、この10年ほどで2倍以上に増えて4年前で104万人(厚労省発表)▼紛れもない現実である。現代の技術開発はあまりにハイテンポ。そこからもたらされたのは、機器支配と競争社会。いわゆるアナログの人が主役の時代は揺るがされ、経済発展の一方で、人は必要されなくなって▼失業者は増えるばかり。生活の不安は精神面に影響し、アルコールや薬物に…自殺の増加要因とも指摘されている。このままでは…雇用もうつ病も、対策は今や世界共通の課題。WHOの提起もそこに尽きる▼子どもから大人まで総ストレス社会と言われる。裏返すと、誰もが罹(●かか)る可能性があるということ。世界で大人20人に1人がうつ病という現実…。究極の予防薬は「気持ちの余裕」なのだが、悲しいかな社会の側にその余裕がない。(A)


10月11日(木)

●電気と水の供給が長期間ストップしたら—。昨年の東日本大震災以降、主に災害による停電、断水への備えは声高に叫ばれている。しかし、その中断が1週間、10日と続いたら…▼オーストリアの作家マルク・エルスベルグの「ブラックアウト」(角川文庫)を読んだ。ヨーロッパ大停電をモチーフにしたパニック小説。架空の話とはいえ身につまされる内容だ▼停電はイタリアとスウェーデンで始まる。原因は発電所や送電網に対する破壊工作だが、何が原因か分からないまま、停電域はドイツやフランスなど欧州全域に拡大する。季節は冬。こごえた人が街にあふれ、やがて原子力発電所が次々とメルトダウンを起こす▼最初の数日は、避難所や店に食料や水があったが、備蓄が尽きる一週間過ぎあたりから、暴動や略奪、デモが頻発する。停電で上下水道や給油も止まる。逃げたくても逃げられなくなる。そうなると、被災地どころか国全体が機能不全に陥り、孤立する▼送電網は高度にネットワークされた現代社会の象徴だ。大半の人はその安定性を信頼している。だが、その“命綱”に落とし穴はないのか—。作者はフィクションを通じて警告を送っている気がした。(T)


10月10日(水)

●食欲の秋はメタボ馬を連想するが、芸術の秋といえば美しい女性が浮かぶ。高校の美術部で青春していたころ、よく二つの油絵を模写した。一つはルノワールの「少女」▼もう一つはレオナルド・ダビンチの「モナリザ」。かれんな笑み、わずかに緩んだ口元…なんとスイスの財団が「若き日のモナリザ」を公開した。パリ・ルーブル美術館の絵と同じモデルで10歳ほど若いという▼模写で複製品だとの異論もあり、真贋(しんがん)の決着はついていない。500年前に死亡し、イタリアではモデルとして有力視される商人夫人の顔の骨を発掘、復元する話もある。天国で微笑んでおれない論争が始まった▼アンチエイジング、抗老化、抗加齢…。皮膚の手入れや治療で、みずみずしさを取り戻し“美魔女”へ。特に美顔への若返り願望は古今を問わない。「若き日のモナリザ」も美しさの持続に懸命だったかも▼ダビンチは「顔の美しさは善良な人々の中に存在するようだ」と言っているという。いつまでも若々しさを保つ女性になるのは「善良な心」を磨くことか。ノーベル賞を受けた、臓器や筋肉、神経などの再生に道を開く「iPS細胞」によって「20歳も若いモナリザ」に会えるのも夢ではない。(M)


10月9日(火)

●資源には限りがある。誰しも分かっていることだが、実践しているかとなると、必ずしもそうでない。使い捨てはその最たる事例で、結果としてゴミが増え続けるなど環境問題を招いて久しい▼その対策は今、産業界はもとより家庭にも求められる。例えば、ゴミを減らす(リデュース)、使える物は繰り返し使う(リユース)、または再生する(リサイクル)…▼循環型社会を築き上げる上でのキーワードだが、そのローマ字の頭(R)をとった啓蒙が3R運動。一度や二度、聞いたことがあろうかと思うが、10月がその3R推進月間であることは意外と知られていない▼かつてのリサイクル推進月間から衣替えして10年。不要な物は買わない(リフューズ)、修理して長く使う(リペア)を加えて5R運動も唱えられている。3R、5Rにせよ、その根底に共通しているのは物を大事にする意識▼それは環境を考えた生活につながる意識でもある。直面している電力問題も然り。これまでの慣れで無駄な点灯や使用をしていては、いつまでも解決への道は見えてこない。求められているのはちょっとした気遣いであり、生活の見直し。難しく考えることはない。(A)


10月8日(月)

●露が冷気によって凍りそうな時季。8日は二十四節気の一つ「寒露」。菊が咲き始め、紅葉が深まり、オオハクチョウ、コハクチョウ、マガンなど渡り鳥が北海道にやってくる▼ユーラシア大陸のタイガから本州へ渡るハクチョウなどの中継地点が北海道。3000キロも飛んでくる。尾岱沼、厚岸湖、大沼、クッチャロ湖などで餌をもらい、人懐こい姿は風物詩▼同じ渡り鳥でも気になる鳥がいる。旭山動物園から逃走したフラミンゴ。脱走して2カ月半。最初は約120キロ離れた小樽市の海岸にいたが、2日後には約220キロ離れた紋別市のコムケ湖まで飛んだ▼数回、捕獲作戦に挑戦したが、おとりのフラミンゴが死ぬなど失敗。コムケ湖で藻や微生物を食べて生息していることが確認されており、雪が降らない前の捕獲を計画している。ちなみに長野の脱走ペンギンは3回目に捕獲された▼やっかいなのは鉄製の冷たい「オスプレイ」という渡り鳥。「事故原因は操縦ミス。機体は安全」と岩国基地から沖縄の基地へ南下、飛び回っている。「いつ落ちてくるか」。沖縄の人々は恐怖の日々。渡り鳥の中継基地は大歓迎だが、オスプレイの駐留基地には再考を願いたい。(M)


10月7日(日)

●陸上競技、野球、サッカーなど夏場のスポーツシーズンは、いよいよ終盤。児童生徒や学生の屋外競技者は、間もなく来シーズンに向けた体力づくりの期間となるが、それは一般の人とて同じ▼ゴルフやパークゴルフは冬ごもりに入り、雪や寒さが運動への関わりを希薄にさせる。その前に…存分に屋外での運動を楽しんでおこう、そんな思いが伝わる光景があちこちに。どう見ても、あと1カ月ほどである▼「健康の維持に適度な運動を」。よく聞く話であり、特に運動不足の中高年にとっては実感させられる指摘。その啓蒙(けいもう)効果であろう、近年は運動に親しむ人が増え、確かにウオーキングやジョギングする人も▼大事と言われるのは継続。だが、それが難しい。いわゆる三日坊主で終わったり、いつの間にか…となりがち。だからと言って、悔いる必要もなければ、他人からとやかく言われる筋合いもない。また始めればいいだけのこと▼きっかけはいくらでもある。誘いを受けて、春の陽気に誘われて…当然ながら「体育の日」も。競技ばかりが運動ではない。歩くことも運動。始めよう、もう一度やろう、大げさに考えることはない。あす8日は「体育の日」。(A)


10月6日(土)

●秋田県の油田から、新たな資源として注目されているシェールオイルが試験採取された。シェール層と呼ばれる岩盤に含まれる原油の一種で、岩盤を酸で溶かし、地下1800㍍からくみ上げた▼秋田から新潟にかけては昔から油が産出し、日本書紀によると7世紀には越の国(新潟)から「燃ゆる水」が朝廷に献上されたとある▼時を経て現代、わが国では地下資源の発見が続いている。近海の大陸棚には氷のような天然ガス、メタンハイドレートが確認され、世界有数の埋蔵量という。太平洋の海底にはレアアース(希土類)を含む泥が堆積し、日本の排他的経済水域にも分布しているようだ▼国の将来を左右するのは資源である。北方領土や尖閣諸島、竹島は、版図や経済水域の拡大に加え、地下資源の存在が領有問題を大きくし、緊張と対立を招いている▼震災以降、わが国は多様なエネルギー源の確保が課題となっており、国土や近海に眠る未利用資源の活用に期待がかかる。採掘技術の確立や採算など、さまざまな調査や研究が必要だ。まずは足元にあるシェールオイルについて研究を進め、未来を開くエネルギーの自給に一歩でも近づいてほしい。(P)


10月5日(金)

●10月5日は「時刻表の日」。1894(明治27)年、日本最初の本格的な時刻表「汽車汽船旅行案内」が発刊された日にちなんだ記念日だ▼熱心な鉄道ファン、いわゆる「鉄」には、「時刻表鉄」という人たちがいる。机上で鉄道の旅を満喫するだけで飽き足らず、時刻表を読んでダイヤグラム(運行計画を表現した線図)を推測し、列車のすれ違いや追い抜く場所を予測する人もいるらしい。貨物列車の「時刻表鉄」も存在する。なかなか奥が深い▼「鉄」のスタイルは多彩。機関車・客車の型番や構造、性能を調べる「車両鉄」、撮影が専門の「撮り鉄」、発車ベルや車内放送などを録音する「音鉄(録り鉄)」、旅行を楽しむ「乗り鉄」。切符などを集める「収集鉄」や「駅弁鉄」も。何だか楽しそうだ▼筆者はいずれの「鉄」でもないが、幼少時の長距離移動はもっぱら鉄路。高校への通学や大学時の帰省も鉄道だった。今も列車の旅は大好きだ▼その時刻表は様変わりした。インターネットで検索すれば、出発から到着までの時刻や料金が瞬時に調べられる。便利なのは確かだが、旅への期待を膨らませながら紙の時刻表をペラペラとめくる至福のときがなくなったのは少々寂しい。(T)


10月4日(木)

●北海道日本ハムファイターズが3年ぶりにパ・リーグを制した。道内が祝福ムードに包まれている。一方、サッカーのコンサドーレ札幌は来季のJ2降格を史上最速で決め、明暗を分けた▼フェルナンデス監督の下、初めてJ昇格を決めた15年ほど前からコンサを応援してきた。だが、今年ほど「残念」が続いた年は記憶にない。主力の相次ぐけが。1点差での惜敗続き。大量失点での敗戦。見せ場なく、1季でJ1の舞台から去る。悔しい限りだ▼過去を振り返っても空しいが、バルデス、マラドーナ、エメルソン、ウイル、フッキ、ダニルソンらすさまじい助っ人が輝きを放った。生え抜きでも吉原宏太、山瀬功治、今野泰幸ら日本代表を輩出した▼J1に定着できないのは、資金力不足が一因だ。優秀な選手を発掘、育成しても、活躍したらすぐに移籍される。J1常連には元札幌の選手がたくさんいる。だが、同じ昇格組の鳥栖は、同程度の予算で上位定着している。方法はあるはずだ▼札幌は根本から運営の“哲学”を見直し、「道民球団」として再生してほしい。日本ハムは、ダルビッシュというエースが抜けた翌年、しかも新監督という難しい環境下で結果を残した。手本は身近にある。(T)


10月3日(水)

●「景観」は、まち(都市)づくりに欠かせないコンセプト。欧州などを訪れると、その美しさに感動を覚えるまちが少なくない。統一された建物や屋根の色、豊富な緑や花、おしゃれな看板類…▼それは長い歴史の中で培われた都市財産。もちろん我が国にも「景観」で人を惹(ひ)きつけて止まないまちがある。ただ、その域を築くには時間もかかれば、維持するには苦労も伴うが、それだけの価値があるということ▼それは単に観光スポットだけにとどまらない。観光都市は常にまちのイメージが問われるから。「景観」に優れていたところで、街の中に派手な看板類が氾濫していたら。美観は「景観」の大きな要素である▼先月中旬の本紙にこんな記事が載っていた。「函館市が屋外広告物の是正指導に乗り出す」。昨年行った調査で、中心部だけで1500件以上の無許可看板があったそう。条例基準外まで含めると、その数たるや…▼函館が将来的に観光都市として生きていくなら、建物規制とともに、こうした看板類の規制は不可欠。10月4日は「都市景観の日」。都市美の語呂合わせだが、観光都市にとって都市美は絶対条件。函館でも「景観」議論は、もっとあっていい。(A)


10月2日(火)

●日本地図を見る。福島第一原発事故による高放射線量に苦しむ福島県飯舘村と原発の場所を見ていると、ある事実に気がつく。青森県大間原発と函館の位置関係と方角などが良く似ている▼電源開発が大間原発の建設を再開した。国の原子力規制委員会が、原発の新しい安全基準を定めている途中に、旧基準ベースの施設を造るのは筋が通らない▼原子力規制委の田中俊一委員長は「新基準を満たさなければ操業は許可しない」と言い切っている。稼働できるか分からない施設の工事を続けることは、企業にとって大きなリスクのはず。再開には「ウラ」があるのでは…と勘繰られても仕方がない▼飯舘村の菅野典雄村長は帯広畜産大卒業で、北海道と縁がある。「手間暇かけて」「真心を込めて」などを意味する方言「までい」を基本とした村づくりを地道に進めてきた。事故はそれを粉砕した▼大間原発の大事故は、地理的理由からして函館を飯舘のようにする可能性がある。安全性が不透明のまま、建設再開するのは工藤寿樹市長の言葉を借りれば「とんでもない話」だ。いったん事故が起きたら取り返しがつかない。「までい」の対応が何より求められるはずなのだが…。(T)


10月1日(月)

●記録的な残暑で季節感がピンとこないうちに10月入り。出雲の国に集まった神々に新しい稲を捧げる水無月は、心身とも夏物から秋物へと移行する「衣替えの月」でもある▼企業や学生らが6月と10月に衣替えするルーツは「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける…」とあるように源氏物語。中国の風習にならって夏服と冬服を着替える「更衣」を定めたという▼天皇の着替えの役目を持つ桐壺ら女官が集まるところを「更衣室」といい、この更衣が衣更え、衣替えになり、衣を替えるごと、気持ちを新たに引き締めたという。扇も冬は桧扇(ヒノキ製)、夏は紙と竹製だった▼民主党も自民党も体制を“衣替え”。野田佳彦首相は赤いベベ着た金魚になれなくても「ドジョウのように泥臭く、国民のため汗をかきたい」という1年前の約束を忘れないで。「鬼こ来たなと思うべな」と思われないように▼小麦色した可愛い頬 忘れはしない〜 安倍晋三総裁の持ち歌はワイルドワンズの「思い出の渚」。座右の銘は「初心忘れるべからず」。米国の干ばつで小麦など穀物が値上がりした。経済安定と、領土問題では「波に向かって叫んで」ほしい。国民の目線で衣替えして。(M)