平成24年11月


11月30日(金)

●2週間ほど前、北海道で滅多に機会のない「薪能」を観賞する機会を得た。文化庁の地域文化活性化事業で、誘致したのが上川管内の占冠村。会場はリゾート観光地・トマムのレストランの特設会場▼舞台裏手と右手のガラス張り越しには背景となる松林、そして4カ所から燃え上がる炎、うっすらと雪も舞っていて…。演じられる狂言と能の舞台は素晴らしいの一言。舞台に魅了された2時間だった▼文化庁の支援事業を村が名乗りを上げての実現だったが、来年も北海道で行われるという話も聞いている。狙いは文学、芸能を問わず「古典」に対する理解の醸成。その時「古典の日」があることも教えられた▼それも今年、しかも9月に法律が公布、施行されたばかり。その日は11月1日。謂われは紫式部日記に「源氏物語」に関する記述が初めて登場したのが1008(寛弘5)年のこの日ということから▼理解は生に触れることから始まる。歌舞伎、浄瑠璃、神楽、能楽、狂言、雅楽、邦楽、長唄…古典芸能は数多い。だが、東京などは別として地方では、函館・道南でもまず触れる機会はない。せめて年に一回でも二回でも…。政治の後押しがあれば難しいことではない。(A)


11月29日(木)

●ある小学6年生に「A君とB君がじゃんけんをしてA君が勝つ確率は」という宿題が出た。クラスの大半が2分の1と答えたが、Cさんだけが3分の1と答えた。「あいこの場合があるから」というのが言い分…▼「じゃんけん」の語源は仏教語の「料間法意(りゃけんほうい)」。迷ったら人知を越えた宇宙の根源を流れる天の意向を推し量るという意味。仏さまの判断に任せるしかないこと。この「料間法意」が「じゃんけん」に転じたという▼衆院選の選挙区調整について維新の会の橋下徹氏の「最後はじゃんけんで決めていい」との発言に対し、みんなの党の渡辺喜美氏は「そんなばかなことが許されるのか」と反発し、じゃんけん論争▼橋下氏は「最後はまとまりましょうという強烈なメッセージ。どっちを取るかという政治決断を『じゃんけん』と表現した」と反論。今度の選挙には政党が乱立し、合流も続きそう▼争点は消費税、原発、TPP…。自民、民主、第三極の「三つどもえ」になりそうだが、公約にだまされないようにしたい。冒頭の「じゃんけんの確率」は「どちらかが勝つまでやる」という条件がつけば2分の1が正解…。選挙は仏さま、神さまにお任せするしかないのか。(M)


11月28日(水)

●12月1日が「いのちの日」であることを知っているだろうか。自殺予防対策の一環として、厚労省が2001(平成13)年に制定して、すでに10年余。「いのちの電話」などの活動も生まれている▼自ら命を絶つ人は年間3万人超。こんな事態になったのは1998(平成10)年のこと。この年は前年比で一気に8千人も増え、2003(平成15)年の3万4千人台を最高に、昨年まで3万人を割っていない▼ここ数年、生活問題が多く、年代別でも中高年が増えているのは看過できない。仕事がない、生活が苦しい…その現実を教えるかのように生活保護の受給者は増える一途▼長引く経済の低迷は経営の効率化をうながし、雇用環境は厳しいまま。リストラという言葉が象徴するように「働き続ける」ことへの不安は広がるばかり。雇用不安は生活不安、その解決に当たれるのは政治を除いてない▼雇用を安定させて、所得を上げる、そのためには経済の立て直しが急務。迎える総選挙では原発、TPP問題にスポットが当たっているが、経済対策を埋没させてはならない。世をはかなむ人をこれ以上増やさないためにも、政治の信頼を取り戻すためにも。(A)


11月27日(火)

●本格的な冬の到来を間近に感じる季節に恋しくなるのが“鍋”。家庭でも飲み会でも、旬の具材がたっぷり入った鍋がテーブルの中心にあるだけで、なんだか幸せな気持ちになってしまう▼北海道における鍋の定番といえば、「タラチリ」や「石狩鍋」などが浮かぶが、全国各地にも「カキ鍋」「フグちり」「きりたんぽ鍋」「水炊き」「あんこう鍋」など、その土地ならではの特徴的な味が数多く存在する▼しかし最近は、地域色のまったくない変わり種が注目を集めている。「カレー鍋」「トマト鍋」「豆乳鍋」などはすでに定番になりつつある。今や当たり前となっている「キムチ鍋」も、当初は変わり種のひとつだった▼さて今年は「レモン鍋」がブームになるかもしれないそうだ。カキと豚肉、野菜をたっぷり入れた中に、最後にレモン果汁とレモンスライスで味付けするもの。カキの生臭さが消えてさっぱりとした味わいが好評だそうだ▼カキの消費拡大のために広島県が考案し、都内のアンテナショップを通じて周知を図っているという。この気合いの入れようは北海道も見習いたい。例えば道南のゴッコをイカ墨仕立ての鍋で食すなんていかがだろう……(U)


11月26日(月)

●ごみは持ち帰り、不法な投棄はしない。公徳心や公共心と言うまでもなく、それは今や社会生活の常識。山や公園、街中など場所に関係なく求められる行動だが、残念ながら現実には…▼ごみ問題が問われて久しい。その処理の労力と費用、加えて損なわれる美観、環境への影響も指摘され、あらゆるケースで有料化は当たり前の時代。それでも守られず、残念ながら意識に欠ける光景は珍しくない▼良識に委ねるのにも自ずと限界がある。函館市は今年度末で、西部地区など市内26カ所に残してきた公衆ごみ箱をすべて撤去するという。多くの都市が撤去してきた中で、観光都市としての配慮もあったのだろうが▼公衆ごみ箱の設置は「路上などに投げ捨てないように」が発想の原点。30年以上も前のことで、函館市でも236カ所も置かれた時期があったが、ポイ捨て防止の運動など社会の取り組みは、設置から撤去へと転じて今日に▼それにしても悲しいのは、家庭ごみが持ち込まれるという現実である。観光客のマナーというのならまだしも、問題を起こしているのが市民というのでは。あるから捨てる、なければ捨てない、だからない方がいい…現実が出した答えにほかならない。(A)


11月25日(日)

●誰のため 何のため 君のため いや僕はママのために ポストで眠るのさ… 気づきもせず 息もせずに 生まれたことを覚えていない〜 多賀谷友樹さんが作詞した「赤ちゃんポスト」の歌▼札幌で17歳の女子高生が公共施設の女性用トイレで男児を出産、窒息死させたとして逮捕された。鍵のかかった個室から赤ちゃんの泣き声。施設の職員が駆けつけたが、呼吸はなかった▼かつてレイプされた17歳の女子高生が自宅のトイレで産んだ赤ちゃんを刺殺、近くに投げ捨てた。赤ちゃんがレイプした男に似ているから刺したという。両親は妊娠に気づいていなかった。札幌のケースも家族や学校は気づいていなかった▼熊本の「赤ちゃんポスト」が開設されて5年。小さな命を守る避難場所に預けられた赤ちゃんは80人を超す。仕事をする上で預ける施設がなかった…、不倫で妊娠したから…母性愛のかけらもない…▼子供のころ、産んだ母ヤギが赤ちゃんをベロベロとなめる姿を何度も見た。中高生らが妊娠、出産、母性愛などを気軽に相談できる場所がほしい。「心臓の音しか聞こえてこない捨て子ポスト 僕は目を開けていた」—赤ちゃんは叫びながら…。(M)


11月24日(土)

●短期決戦の総選挙は、実質的には既に本番。これまでの総選挙と違って特徴的なのは、新党が林立の中で迎える選挙ということ。また、政権政党から10人を超える離党者が出たのも稀(まれ)▼背景にあるのは有権者の既成政党に対する厳しい距離感。それはマスコミ各社の世論調査で30%の支持を集める政党がないことが物語っているが、さらに…。理念や綱領より個別政策で行動する傾向が拍車をかけている▼新党の模索はその延長線上の動きで、象徴的な存在が橋下新党(大阪維新の会)と石原新党(太陽の党)が合流した日本維新の会。早速、既成政党の一部から上がったのが「野合」という表現の批判の声▼「野合」の意味が「共通するものもばらばらの集団がまとまりなく集まること」と解すると、幾つかの政党が結びつく時は、大なり小なり「野合」。今に始まった現象ではない。政治は力、力は数、は永田町の常識だから▼もちろん、その認識には個人差がある。ただ、ここで一つはっきりさせておく必要があるのは…。政党の結びつきが「野合」かどうか、容認できるかどうか、を判断するのは有権者だということ。黙っていても、それを含めた答えはあと3週間ほどで出される。(A)


11月23日(金)

●毎度のお騒がせであるが、それなりに筋の通った身の処し方だと思う。鳩山由紀夫元首相の政界引退である。民主党の方針に従うことを公認の条件とした執行部に、従わない選択をした▼政策の実現に向けて同志が結束して、政治権力の獲得を目指すのが政党の姿。だから政党人は、自分たちで選んだ代表と、党内議論を経て決めた方針に従うべきだ。元代表や元首相であれば調整役の働きが求められよう▼それができない党内事情が、民主党最大の問題である。原因としてついて回る「寄せ集め集団」からの脱皮を図ろうと、執行部は「純化路線」を強めている▼この路線は強硬すぎると党内分裂をさらに招く。ただ、民主に限らず各党では離党者が相次ぎ、覚えきれないほどの多党化が進んでいる。これで政策を実現する政治権力や勢力の結集が図られるか、並んだ小さな政党名を見て疑問に思う▼環太平洋連携協定(TPP)、原発問題、消費増税…これらについて考えが違うからといって、すぐ政党を立ち上げることが政治の安定につながるのか。無責任な発言で国民の政治不信を増幅させた元首相の引退劇と政界の離合を見て、疑問ばかりが深まる。(P)


11月22日(木)

●札幌の街は歩きにくい。昨年3月に開通したJR札幌駅からススキノまでの札幌駅前通地下歩行空間は、左側を歩いても、右側を歩いても、前から人がやってくる。真ん中を歩いても同じ▼大通駅付近は通路幅が狭く、十字に交差する場所もあり、よく前を見なければ人とぶつかる危険がある。さらに、ビジネスで先を急ぐ人、ゆっくり進む観光客もいて、歩くスピードもまちまち。慣れていないと、この中を歩くのは本当に疲れる▼先日、この地下道を歩いていたら、若いカップルの女性同士が正面衝突して倒れた。男性同士がすぐに「どこ見とるんだ」とけんか。私が一人の女性の具合を見て「まず君を心配しない彼は考え直しなさい」と声を掛けた▼大雪だった昨冬の函館。車で市内を走行中、わだちを嫌い道路の真ん中を走る車を何度か見た。信号が変わるのに交差点に入り、左右から来る車をふさいだ場面の遭遇も一度ではない▼「対向車が避けるだろう」「どの方向も渋滞だから、交差点の中で停まっても構わない」の考えは、いずれ大事故につながる。札幌で介抱していた女性が「なんでこうなるの」と泣いた時、昨冬に道路の真ん中を走ってきた車を思い出した。(R)


11月21日(水)

●想定内だったとはいえ、突然の年内解散。各政党、立候補予定者は戸惑いながらも、時間との勝負に入っているが、その一方、好対照なのが政界から身を引く総理や閣僚経験のベテラン議員▼さまざまな思いが去来するのだろう、引き際に残した言葉に共通するのは今の政治への苦言だった。森喜朗元首相(自民)は、安倍総裁が総理時代に掲げた「美しい国日本」を引き合いに、手厳しくこう語った▼「美しい日本を取り戻すなら、政治家も美しい気持ちにならなければいけない。くだらないことや、つまらないことで言い合って、子どものけんかみたいだ」。確かにそう映る。坂口力元厚労相(公明)はさらに厳しい▼「自民党政権時代を含め、国会は政策でなく、政局で動きすぎる。それを直さないといけない」。政策通の閣僚経験者として、政局優先の国会の現状に我慢ならないと。さらに、渡部恒三元衆院副議長(民主)は…▼「あのとき、先輩みんなが覚悟してくれたから、こんなに素晴らしい日本がある、ということになってほしい。日本の将来に希望が持てるように」。これまでも引退の弁を数々聞いてきたが、「今の国会は理想の姿」と胸を張った話は聞いたことがない。今回も…。(A)


11月20日(火)

●なぜ衆院解散で万歳を三唱するのだろう。解散書に署名された天皇への儀礼や景気付け、やけっぱちなど諸説あるが…。でも、当選の万歳三唱は悪くはない。この人も万歳三唱で初当選に感激したはず…▼前森町長の佐藤克男容疑者(62)。先月行われた2選を目指す町長選挙で、役場の電子メールで職員330人に自分への投票を依頼していた疑いで逮捕された。業務用パソコンで一斉メールを送っていたという▼メール本文で「職員からこのような手紙が届きました」「コメントは避けます」と断った上で「佐藤町長頑張って下さい」などと書かれた手紙をスキャナーで読み取って添付。公務員の地位利用の公選法違反の疑い▼「メールは町長として、職員の違法行為を糺(●ただ)す目的で送った」と否定しているが…。ネット上で何でも対処する昨今。先月は、なんと中学生が偽サイトを作ってパスワードを不正取得して検挙された▼衆院の“やけっぱち選挙”で先生たちが寒風を受けて走る師走。領土問題、原発ゼロなど、違法メールではなく、生の声を響かせてほしい。実現できない公約はご免。まして選挙違反は。道警は各署に違反取締本部を設置、不正に目を光らす。(M)


11月19日(月)

●年内か年明けか、「近いうち」とされていた解散総選挙が急転直下、現実となった。あの党首討論の勝ち負けは一概に決められないが、野田首相が損を覚悟で実をとった感が無きにしも非ず▼抽象的ながら議員定数の削減と歳費の削減を飲ませたのだから。ただ、あれで十分だったかどうかは議論のあるところ。定数削減で具体的数字を約束させていれば…最高の解散パフォーマンスとなったはず▼というのも、実現の可否が懸念されるから。常に建前論に終わってきた経緯があるのは事実。民主は前回選挙で比例80削減を公約、近々は40削減提案に修正してきたが、今回の首相の提起にも、3党合意にも、その担保すらない▼「来年1月召集の通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行う」。まったくの玉虫色であり、通常国会の終了までとなると半年以上も先送りも可能。しかも選挙後の政党間の枠組みは不透明ときている▼今となっては知る術はないが、是非とも聞いておきたい。あの時…野田首相はなぜ削減数を提示して求めなかったのか、示して迫っていたら安倍総裁はどう応じていたのだろうか。本当にやる気なら、改めて聞くまでもなく、公約の中に明記するとは思うけど。(A)


11月18日(日)

●衆院が解散された。野田佳彦首相が「近いうち」と宣言してから約3カ月、やっと国民に「信を問う」ことになった▼現日本国憲法下では23回目の解散。有名なのは吉田茂首相の「バカヤロー解散」(1953年3月)。80年5月の大平正芳首相は与党の一部が不信任案に賛成して進退が行き詰まり「ハプニング解散」を選択。93年6月の宮沢喜一首相も不信任案可決後に「ウソつき解散」に打ってでた▼さて、野田首相の解散は…。識者の評は「暴走解散」「やけっぱち解散」。面白いところでは「ハーメルンの笛吹き解散」というのもあるらしい。呼称はともかく、肝心なのは「大義」。経済、外交、震災復興などの問題が山積し、まさに内憂外患の中、総選挙にたどり着いてしまった理由は何か▼解散までの経緯を見る限り、「永田町の論理」が目立つばかりで、国民には分かりづらい。来月4日公示、16日投開票の総選挙では、各候補、政党が何を訴え、何を約束するかを、有権者の私たちはじっくりと見極めなければ…▼道8区の各陣営も慌ただしく臨戦態勢に入った。混乱の時代だけに、有権者側にも「眼力」が問われる。この「国」と「地方」を明るくしてくれる人に一票を—。(T)


11月17日(土)

●頭の中で念じただけで、家電のスイッチを入れ、車いすを移動させる—。こんな夢のような技術を研究するモデルハウスが京都府で公開された▼BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)と呼ばれる技術。頭皮の上から近赤外光を投射して、言語、視覚、聴覚、運動に関する脳活動をリアルタイムで観測、そのデータをコンピュータで処理して機器を操作する仕組み。少し乱暴に言えば、頭で考えて機械を動かすのだ▼逆もあり得る。センサーの情報を、人間の脳に送り込むことも可能。慶応大のグループは、人型ロボットがつかんだガラスや布の質感を人に伝えることに成功した。高放射線下や災害など危険な現場での活用法がまず浮かぶ。一般でも遠隔ショッピングなどに応用できそう▼京都の実験は、総務省の委託を受けて、国際電気通信基礎技術研究所やNTT、島津製作所、積水ハウス、慶應大が取り組んでいる。頭に特殊装置をかぶった被験者が、手を使わずにカーテンを閉め、車いすを動かしたという▼研究期間は2016年まで。脳情報の解読精度など実用化への課題は多く残されているが、この技術が一般化すれば、高齢者や障害者など多くの人の活動範囲は大幅に広がる。(T)


11月16日(金)

●野田佳彦首相がついに抜いた、衆院解散の「伝家の宝刀」。抜きっぷりは鮮やかだが、返り血を浴びるか、肉を切らせて骨を断つことができるか、その切れ味に注目だ▼「うそつき」との攻撃は確かに身に応えたろうが、首相が野党の挑発に乗って捨て鉢になったとは思えない。第三極の結集を制し、民主党の影響力を保つなど、独自の読みで党内の反対論を押し切ったのだろう▼これから始まる選挙は、政策本位でなければならない。郵政民営化さえ実現したら…(2005年)、政権交代さえ果たせれば…(09年)と多くの有権者は一票を投じ、その結果は今を見れば明らかだ。マニフェストや争点が耳障りのいいだけのものであってはならない▼8区道南も課題が山積している。地域経済をどう立て直すか、医療・福祉をどう充実させるか、一次産業の振興は、大間原発をはじめエネルギー問題にどう対処するか…。各候補は明確な主張と政策を示してほしい▼各陣営は、静かに選挙モードに入った。いずれ選挙カーや候補の訴えが師走のまちに響き渡るだろう。各候補の主張にじっくりと耳を傾け、あすの日本を託す候補と政党を選ぶ1カ月としたい。(P)


11月15日(木)

●そうなっていて当然なのに、特に支障がないため、なかったため、黙認していること、してきたことは多々ある。ただ、その舞台が政治の場となると、影響力からして看過はできない▼問題となった特例公債法案の扱いは典型的な事例。我が国の歳出予算は税収で賄い切れない。だから不足分を国債の発行で補てんするわけだが、それを認める法案が成立しなければ、歳入に保証がない予算となってしまう▼つまり予算案と国債の発行法案は、切っても切れない関係ということである。ならば国会の審議も一体であるべき、となるが、何故かそうはなってない。理由は簡単、これまでは許容期間内に成立し、支障がなかったから▼ところが、今年度は…。国民生活に関わるにも関わらず、人質法案とされ、予算の執行を抑制せざるを得ない状況に。厳しい批判が民主ばかりか自民にも向けられるや一転、超迅速の審議である▼政争の具にしたことを自ら認めたに等しいが、さらに裏付ける動きまで。民主、自民などで来年度から3年間、国債の発行を認める旨の法案修正でも合意した。百歩譲ってそれを陳謝の証としても、この法案処理で生じさせた政治空白の責任は帳消しされるものではない。(A)


11月14日(水)

●庭を彩る菊、野山を染める紅葉…物思いにふける間もなく、夏から秋を飛んで初冬へ。本紙社会面の四コマ漫画「函館ルネッサンス」の「スズメ一家」も今年の異常気象などを嘆く▼先月は「あ、空が暗くなってきた」「カミナリがきこえるね」「ゴロゴロ」「竜巻でも現れちゃいそう」「んだねゴロゴロ」「最近の天気ってなんかブキミだよね」「地球がおこってんだべな…」。直後に江差沖で2本の竜巻▼今月は「寒くなってきたね」「いがったね〜」「函館山も紅葉してきたね」「いがったね〜」「なんでいがったの?」「あったらに夏あったかかったら、秋も冬もこねぐなるかと思ったっけ」そうか…▼大間原発問題では「いぐ晴れたで」「んだからホレ見えるべや」「こっつさ大間原発見えるっけさ」「へ〜ホントだ」「近いんだね」。23㌔しか離れていない函館市は大間原発工事が再開されたら建設差し止め訴訟に踏み切る▼スズメは人間社会に一番身近な鳥。晩秋になると羽毛を膨らませ、寒さに耐える「ふっくら雀」に。童謡「雀の学校」の先生は天気や原発、穀物のことなど、ムチを振り振り教えているかも。「大学なんか認めない」と言った先生たちをムチでこらしめてね。(M)


11月13日(火)

●田中真紀子文部科学相の発言に端を発した大学不認可問題は、道内を含む3大学が認可される方向で一応の決着を見た。大学はもちろんだが、騒動に巻き込まれた形の受験生が最大の被害者だ▼大臣は大きな権限を持っている。発言には慎重であらねばならないのは無論。だが、この騒動は大臣の個人的な“暴走”に矮小(わいしょう)化できない重大な問題を含む▼文科省の調査によると、2012年の全国大学数は783。最近20年で1・5倍に急増した。小泉内閣の規制緩和を受け、設置抑制が03年審査から撤廃されたことが影響した▼大学の運営は国費補助なしでは難しい。10年度だと、日大102億円、慶應93億円、早稲田92億円など上位の私大は自治体並みの補助を受けている。だが、国全体でみると、ここ十年間、私大補助金の総額はほぼ横ばい。校数、定員が増えた中なので、パイの奪い合いは激しくなる。学費負担も厳しさを増す一方だ▼私立の4割強は定員割れというデータもある。地域や学部の偏在、学生の質(学力)の低下などの課題も相変わらず。大学に関する“宿題”は数多く残っている。その解決に一歩を踏み出す契機となるなら、今回の騒動は意義あるのだが…。(T)


11月11日(日)

●労働環境が改善されている、と言われる。かつての時代との比較では確かにそうだが、欧米各国と比べるとまだまだの域。その差は依然として大きく、有給休暇の問題一つとっても然り▼先日、厚生労働省が発表した就労条件総合調査の結果も物語っている。企業の有給休暇の取得率(消化率)は49・3%。従業員30人以上の4300社余りの実態だが、12年連続して50%を超えられないでいる▼従業員30人以下の企業も対象とすると、取得率はさらに下がるはず。低い理由として挙げられるのが「仕事が多忙」「病気の時などのための確保」「上司や同僚への配慮」「取りづらい職場の雰囲気」など▼一方、欧米主要国の実態をみると、軒並み80%以上。2年前のある統計だが、フランスの93%をはじめとしてイギリスやデンマークなどは90%台。支給日数も我が国の年間平均16日に対し、25日前後と多いのに、である▼雇用情勢が影響しているという指摘もあるが、それは我が国だけが抱える事情でない。とすると、考えられるのは精神文化の違いであり、企業風土の違い。余裕がない、企業経営も、働く人の気持ちも。49・3%という数字は、そんな現実の証しにも聞こえてくる。(A)


11月10日(土)

●長野県が「入山税」導入の検討を始めるという。昨今の登山ブームを考えると、導入されて当然…登山者の理解が得られる範囲ならだが、背景にあるのは、そうせざるを得ない人気の山の現実▼必ずしも定かでないが、我が国の登山人口というか登山愛好者は1200万人とも言われる。その半数近くは高齢者の愛好者と言われ、最近は若い女性にも浸透し、山ガールという呼び名まで登場している▼北海道の大雪や日高山系の山々も人気はあるが、日本アルプスを訪れる登山者の数は桁が違うレベル。長野県の統計によると、昨年、長野県の山を訪れた登山者は63万8000人といい、前年比で4万人余もの増加▼山の自然体系は、人が入り込むほど負荷がかかる。ゴミの持ち帰りはかなり進んだとは言われるが、し尿処理の問題や救助体制の確保など「登山」を維持させていくために要する経費はかなりの額に▼日本アルプスの山々は、その筆頭格。任意の協力金では限界がある。全員から等しく、と考えると、一定額の税方式を否定すべき理由はない。金額や徴収方途など難しい判断も強いられるが、自然を守る…そこには何より入山者の意識をうながす意味合いもある。(A)


11月9日(金)

●生活の“足”がなく、日々の買い物に困っている人が増えている。「買い物難民」とも称され、その数は全国で約600万人とも。今や地方だけでなく、大都会でも発生している社会問題だ▼郊外型店舗の台頭による商店街の衰退、人口減、高齢化などが招いた現象。郊外型ショッピングセンターは便利だが、足のない人にとっては地域の商店がひとつふたつと消え、不便さは増すばかりだ▼足腰が丈夫な人は片道2㌔でも大丈夫だが、弱ればそうもいかない。車を運転できる人はたとえスーパーまで10㌔あっても買い物難民にはならない…。つまり、地域にスーパーがなくなっても、住民全体が難民になるわけではない▼こうした点からも事業化や対策は難しいが、流通業界では宅配サービスや移動販売の充実に力を入れている。道南でもコープさっぽろが移動販売車を増やし、鹿部町ではコンビニのセブンイレブンが同様の取り組みを始め、好評のようだ▼過疎化や高齢化が一層進み、買い物難民はさらに増えることが予想される。まずは健康と足腰の維持。そして多様な販売形態で買い物ができる環境を整備していけるよう、企業と行政、住民が連携して知恵を集めたい。(P)


11月8日(木)

●「鬼の餌食を餓鬼が取る」の格言は不可解なことのたとえ。これ以上ひどいことはないと思っていたのに、もっとひどいことがあるという意味。極限の危機に身の毛がよだち、絶命へ追い込むことも▼今、世間を騒がしている尼崎市の連続変死事件。死体遺棄で起訴された女(64)の豪華なマンションには家族や縁者など12人が集団生活をしていた。8階建ての最上階にあり、バルコニーには監禁、暴行するための小屋▼暴力でマインドコントロールされたのか、介入された家族は次々と崩壊、資産が消えた。民家の床下から3人の遺体が発見され、2人がドラム缶にコンクリート詰めにされ、海などに捨てられた▼事件では8人が死亡・行方不明に。ドラム缶詰めの男性らは小屋で手錠をかけられて監禁。死亡した男性の約6000万円の保険金を受け取り、遠縁の家からも大金を巻き上げていた。自殺も強要されたという▼水やトイレを制限し、1食も与えない日も。ドラム缶の遺棄に関与した8人が逮捕された。女が首謀者なら、まさに「鬼の所業」。家族など私的な人間関係がからんだ奇怪な事件。動機など全容を徹底解明して、残忍な事件の再発を防いでほしい。(M)


11月7日(水)

●臨時国会が開会して一週間が経った。現状は、と言えば、相も変わらずの体たらく。重要法案の審議にすら入らず、伝わってくるのは民主と自民の主導権争いというか、駆け引きだけ▼政権政党の民主も民主なら、野党第一党の自民も自民。民主が守り一色なら、自民は対決一色。いたずらに時間だけが過ぎゆくばかりで、国債の発行に必要な特例公債法案も入り口で待機させたまま▼結果として予算の執行抑制が現実となり、地方交付税の交付も先送り。本来なら先の通常国会で成立させるべきだったのだから、速やかに、とならなければおかしいのだが、その責任を感じている姿は少しもない▼自民にしても、同法案を容認する方針を決めたのなら、さっさと審議に応じると爽やかなのに。解散の約束がどうだとか、内閣の姿勢を正すことが先だとか、国会運営優先の動きばかり。一方の民主も精彩がない▼イタリア・シチリア島の知事選挙(10月末)で、こんな話が。政治家に失望した住民が犬を“擁立”し、投票を呼びかけたという。もちろん無効だが、犬に任せた方がまし、という強烈な皮肉。そこまでさせないように…外国の話と笑ってはいられない。(A)


11月6日(火)

●20世紀最大のヒット映画「タイタニック」。もしこれから観賞する予定の人がいたら、この先でクライマックスのストーリーを明かしているので、このコラムは読まないほうがいいかもしれない▼映画は1912年に実際に起きた史上最大の海難事故をモデルにしているが、主人公のジャックとローズの恋物語は、あくまでもフィクション▼しかし監督のジェームズ・キャメロンは可能な限りリアリティーにこだわった。例えば、タイタニックの航行シーンにわずからながら映り込む夜空にも、その当時とまったく同じ星を配列させたという▼映画の最大のクライマックスが、沈没していくタイタニックから二人が脱出してからのシーン。船の破片の木板を発見したジャックは、ローズを板の上に乗せると、自らは海の底に沈んでしまう▼このほどアメリカのテレビ番組がある実験を行った。映画と同じ条件でローズの救命ジャケットを板の下に入れれば、2人ともその上に乗ることができ、捜索隊に無事救出されたというのだ。「せっかくの感動に水を差すな」と怒るファンもいるかもしれないが、このように細部にこだわるのも、映画の楽しみ方のひとつかもしれない。(U)


11月5日(月)

●北海道に来た中学生のころ、一つのストーブで石炭と薪をたいていたのに驚き、石炭の燃えカスを捨てるのが日課だった。顔や手が煙突のススで真っ黒になった…▼家庭で電気を使うのは照明用とラジオを聴くくらい。市電は電気で走っていた。現在は、テレビに冷蔵庫、炊飯器、レンジ、トースター、ストーブをつけるのにも電気がいる。ロード・ルーフヒーティングも。オール電化の家庭が増えた▼すっかり電気は空気や水のように「有って当たり前」の暮らし。しかし、当然ながら北海道の電力需要のピークは冬期間。夏に比べ使用量は25%も増える。うち家庭用は全体の4割を占めている▼厳寒に突発的な大停電が発生したら北海道は“冷凍庫”になってしまう。火発はたびたび休止し、泊原発の再稼働も見込めず、綱渡りの電力需給。このため、政府は一般家庭に厳冬だった10年度冬に比べ7%以上の節電を要請した▼期間は正月の4日間を除き、来月10日から来年3月8日まで。需給が逼迫(ひっぱく)したら大口利用者に計画停電を要請するという。短時間の停電でも生命を脅かす。半世紀前は厚着して石炭・薪ストーブにしがみついていた。ウオームビズで頑張りますか。(M)


11月4日(日)

●次世代のエネルギー源として期待されるメタンハイドレートが、網走沖や日本海側の海底で発見された。海底から数㍍という浅い場所での採取にも成功した▼メタンハイドレートはサッカーボールのような形をした水の分子内にメタンが閉じ込められた構造。見た目はシャーベットのようだが、火をつけると燃えるので「燃える氷」と呼ばれる。日本近海の埋蔵量は国内で消費される天然ガスの100年分とも言われている▼国の「開発計画」によると、2018(平成30)年までに、資源調査や経済性の検討、商業産出を可能にする技術開発などに取り組む。産官学共同のコンソーシアムが具体的な研究や試験を進めている▼研究の柱は産業化が可能かどうか。安全にかつコストが見合うように採取する手法は、世界中のどの国もまだ開発に成功していない▼扱うのがメタンガスだけに、採取時の漏洩による環境リスクがある。メタンガスの温室効果は二酸化炭素の約23倍。ハイドレート自体が崩壊した場合、大量の温室ガスが放出され、地球的な危機につながる。便利なエネルギーにはリスクが伴う。原発の反省を踏まえて、万全の安全策で開発されることを願う。(T)


11月3日(土)

●霜が盛んに降る11月は「古典の日」から始まった。古典を広辞苑で引けば、昔の典型・儀式、書物、古代ギリシアなどの代表的著述などとある。普段の生活で文学や音楽、美術などの古典に親しめということか▼「紫式部日記」の中で「源氏物語」について初めて触れた日が11月1日だったため「古典の日」と制定された。脚本家の中江有里さんは「古典文学に描かれているのは、人間のどうにもならない事象に対する心情」という▼平家物語にある「悲しかりけるは大地震なり。鳥にあらざれば空をも翔(かけ)りがたく、竜にあらざれば雲にも又上りがたし」や、鴨長明が方丈記で記した800年前の大地震の惨事は東日本大震災後に改めて読み返された▼平家物語はまた「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり…盛者必衰の理を顕す」と、愛別離苦などの無常観を嘆く。ただ、古典の文章は漢字が多く、漢字の音だけ使った仮名もあるのが難題▼ある市教委は小中生用に漢詩「国破れて山河あり」など美しい古典の言葉をハンドブックにまとめた。古典は現代の自然災害や戦争、自殺などの事象に対する知恵であり、心の拠りどころだ。古典を通じて、いにしえの人と接したい。(M)


11月2日(金)

●映画監督ジョージ・ルーカス氏率いる映像制作会社「ルーカスフィルム」が、ウォルト・ディズニー社に買収されることになった。人気SF「スター・ウォーズ」の7作目を制作中で、2015年に公開予定という▼ルーカスフィルムは、スター・ウォーズのほか、「インディー・ジョーンズ」のシリーズも手掛けた。日本でも、同社の作品を見たことのない人の方が少ないくらい有名だ▼買収金額は40億5000万㌦(3200億円)と途方もない。だが、これまでのヒット作の興行収入を考えると、妥当な規模なのかも。相手がディズニーというのも話題性たっぷりだ▼ルーカス氏が設立したコンピュータ・グラフィクス(CG)制作会社の「ピクサー」は既にディズニーの子会社。本体買収で、ディズニーの娯楽路線の“王道”を行く大作が制作されそう▼スター・ウォーズの映画第1作は今から35年も前の1977年に公開された。当時映画館で見て、特撮のリアルさに度肝を抜かれた。あの頃は模型撮影が主だったが、今はほとんどがCG。ストーリーの面白さは言うまでもなく、映像の迫力と精密さでも常に進化してきた。次作はどんな出来栄えに…。期待は膨らむ。(T)


11月1日(木)

●ちょっと気になるニュースは日々あるもので…。「国費で植えた3400本伐採」。10月末、本紙に載っていたこの記事も一例。国の補助金を受けて20年ほど前に植えられた樹木が無くなった▼名古屋での話。港内の緑地整備のためツツジやツバキなどが伐採され、捨てられた。会計検査院が国費の使い方として「不当」の判断をしたという視点からの記事だが、潜む問題は2点▼一つは植栽当時の金で投じられた3000万円もの国費が意味を持たなくなったこと。もう一つは、それにも関わらず…育てたこれほどの数の木をいとも簡単に伐採した感覚。国土交通省の了解があったことも驚きである▼遊歩道の造成などという伐採理由も説得力に欠ける上、近くに植え替え場所があったというのだからあきれるばかり。森林でも、街路樹でも同じだが、切るのは簡単、育てるのは大変。手間も時間もかかる▼20年はようやく一人前になろうかという頃である。帯広市が街を川と緑で囲む「帯広の森」構想を進めて40年余。ようやく森らしくなったが、緑化はこれほどに息の長い事業である。環境汚染が進み、緑化が叫ばれる今日…こんな軽率な判断を繰り返してはならない。(A)