平成24年12月


12月31日(月)

●「寒締め」。漁業に関する言葉と錯覚しそうだが、寒締め栽培と表現されると、農業にかかわる話ということが解る。道総研道南農試が「寒締めベビーリーフ」の技術研究をしている▼「寒締め」とは、冬に温室で育てた野菜を収穫前、寒さにさらすこと。それによって糖分やミネラルなどが濃縮する、とされる。つまり、うまみが増すということであり、商品価値も高い。冬場の産地化も期待される▼東北農業研究センター(旧東北農業試験場)による技術で、既にホウレンソウや小松菜で栽培が進んでいる。道南農試もさまざま技術開発を試みており、ベビーリーフの「寒締め」もその一つに▼昨冬の試作でも糖度やビタミンC含量が夏栽培ものに比べ上だったという。実際に食味もいいようで、21日付の本紙は、野菜ソムリエの話として「(寒締めは)味が濃くてドレッシングなしで食べられる」と伝えている▼道南農業が長年、背負っている課題に冬場対策がある。「寒締め」は時間も手間もかかるが、ハウスを遊ばせずに済むメリットも。市場の評価も期待できるとならば、野菜農家には待ちに待っていた朗報。先手で産地化を…今後の取り組みが注目される。(A)


12月30日(日)

●日本人にとって年末の定番といえば「紅白歌合戦」「年越しそば」「除夜の鐘」などが浮かぶが、それと並んでベートーベンの「第九交響曲」を挙げる人も少なくない。音楽に興味のない人にも「第九」の名称で通用してしまう人気曲。実は年末にこれほど頻繁に演奏しているのは日本独自の傾向らしい▼原因は諸説あるが、苦悩からスタートし歓喜が爆発するラストへ向かうドラマチックなスケール感と、合唱メンバーとして多くの人たちが演奏する喜びを分かち合えることにあるとみられる▼国内では、多くの都市でアマチュアの合唱愛好家を迎えた第九の演奏会が開かれていて、サントリーホール(東京)での「1万人の第九」には、毎年全国から応募者が殺到するという▼函館でも今年の12月15日にカトリック湯川教会で、オルガンとピアノの伴奏により終楽章を演奏。約150人の市民が「歓喜の歌」を堪能した▼かつては視聴率80%という人気を誇った紅白歌合戦が、今ではその半分程度まで落ち込む一方、200年も前のドイツ人の手による音楽が年越しの定番として根付いている不思議の国日本。天国のベートーベンさんはどのように見ているのだろうか。(U)


12月29日(土)

●大規模な景気対策や大胆な金融緩和を目指す「アベノミクス」が始動。自民党復活の衆院選で合点したのは「全日本おばちゃん党」の「はっさく」。果物のハッサクで維新八策をパロディー化▼「おばちゃんは日本の未来を真剣に考えています」の前文から始まり「税金はあるところから取ってや」「震災で大変な人が生活を立て直すために予算使ってな」「子育てや介護をみんなで助け合っていきたいねん」▼♪青い空ながめて故郷を想う時…泣き出しそうな魂〜 岩手県で大震災に遭った14歳の少女が生まれ育った地を思って熱唱する「故郷」。おばちゃんは「核のごみはいらん。放射能を子供に浴びせたくないからや」▼増加するネットカフェ難民。ひざを抱える18歳の少女。39度の熱が出ても金がなく病院に行けず、バイトもできず。おばちゃんは「働きたい人にはあんじよう(いい具合)してやって!」と叫ぶ▼オッサン政治に反発して大阪のおばちゃんがネット上に結成した市民団体。一番の政策は「うちの子もよその子も戦争に出さん!」。国民が求める最大の要求。ハッサクは栄養価が高い。新内閣も、おばちゃんの“ぼやき”に耳を傾け、温かい新年を迎えたい。(M)


12月28日(金)

●これほどあぜんとするニュースがあっただろうか。政治不信をまき散らしているとしか思えない話。解散総選挙で惨敗し、分党という表現で分裂した「日本未来の党」のことである▼選挙が終わってまだ10日ほど。民主から離れた小沢一郎氏が率い、勢力の強い「国民の生活が第一」が合流する形で結党したのは公示直前。政治理念の一致など基盤のない危うさから結党自体に首を傾げる向きがあった▼確かに原発の廃炉、卒炉では一致してはいたものの、他の政策では議論の時間もないまま本番に。それでも結果が良ければすべて良し、だったかもしれないが、保守から革新の人まで混じっていては…▼それにしても早すぎる。拠りどころを求めて馳せ参じたものの、この結果では「我慢してまで一緒にいる必要はない」ということなのだろうか。もし、そうだとしたら同党に一票を投じた人たちの気持ちは踏みにじられたことに▼その人数、全国でざっと340万人(票・比例)、道内で8万人。政党の得票数と当選者数に大きなズレが生じる今の選挙制度に欠陥はあるにせよ、それにも増して問題なのは政治家のこうした姿。有権者無視の行動と批判されても仕方ない。(A)


12月27日(木)

●下痢やおう吐などの症状を伴い、悪化すると死に至る可能性もあるノロウイルスの感染性胃腸炎が猛威を振るっている。全国的な定点調査によると、過去10年で2番目の患者数。道南も高齢者施設などで集団感染が頻発しており、油断できない▼ノロウイルスは強い感染力が特徴。拡散スピードを高級車に例えて「ウイルス界のフェラーリ」と呼ぶ研究者も。何より大事なのは予防だ▼一般的なアルコール系消毒薬の効果が不十分ということもあり、対策は単純だが難しい。流水・せっけんによる手洗いの徹底、タオルやエプロンのまめな交換…。飛沫感染もあり得るので換気も大切。効果的なのは市販の家庭用塩素系消毒薬に含まれる「次亜塩素酸ナトリウム」。予防ポイントで適切に使いたい▼流行は日本だけではなく、世界的らしい。イタリアやイギリスなどでも例年に増して患者数が増えているとの報告も。年末年始に海外に出掛ける際には注意が必要だ▼市立函館保健所のホームページによると、感染経路は3つ。「人から人へ」「人から食品を介して」「食品から人へ」。年末年始は人混みの中に出掛ける機会が多くなる。休みを台無しにしないよう、予防策は万全に—。(T)


12月26日(水)

●後期高齢者になった高校同期会の忘年会に出た。不況とはいえ、夜の繁華街は忘年会のピーク。小路に若い女性がしゃがみ込んでいた。1人は大声を出して暴れていた…▼酒を飲んで最悪の状態は「昏睡期」。ゆり動かしても起きない、大小便はたれ流しになる、呼吸はゆっくりと深く、死亡も…(アルコール健康医学協会)。パワハラなどで無理やり飲まされたり、学生の一気飲みがそれ。狂乱の果てに▼酒のわなを仕掛けた小悪魔が大悪魔に「あの酒を飲みさえすれば、いつでも野獣になってしまうのです」と言う(トルストイの短編)。さわやかな気分になる「爽快期」の談笑も飲み過ぎると、自制がきかなくなり、悲惨な結果になる▼ほろ酔い気分になり、手の動きも活発になる「ほろ酔い期」を満喫しよう。周囲に怒りぽっくなったり、吐き気や嘔吐したり、迷惑をかけないように。野獣になって車のアクセルを踏むなんてもってのほか▼同期が「女房がノロウイルスにかかった」と言うように新型のノロウイルスが世界に蔓延。感染に用心しよう。酒の強さは人それぞれだが、適度な量で切り上げたほうが賢明かも。「酒は百薬の長」も節度があってこそ…。(M)


12月25日(火)

●「204万票」。これ、何の数字かおわかりだろうか。朝日新聞が独自にまとめたデータとして報じた今総選挙で投じられた「白票」など無効票の数。投票者の3・3%。今の選挙制度になって最高率という▼小選挙区比例代表並立制は、全国300の選挙区でそれぞれ1人を選ぶ。だから、自ずと候補者が絞られ、政党選挙の色合いが濃いが、有権者の側に立つと、投票したい政党や候補がいない、という確率も高くなる▼棄権も、無効票も起きやすいということだが、棄権と「白票」などは同一視できない。投票所へ足を運んだか否かの差は大きいからだが、少なくとも「白票」は一つの意思表示。そうした数が今回は特に…▼大幅に増えた。投票したい候補が選挙区にいなかった、は容易に想像がつく理由だが、単にそれだけだったろうか。混乱する政治に対する嫌気から抗議の意味で、という無効票もあったのではないか▼投票率も低かった。この低投票率と「白票」など無効数は、諦めの姿でない、と思いたいが、残念ながら否定する何ものもない。総選挙によって政治不信が解消されたわけではない。信頼を取り戻せるかどうか、その鍵は当選した議員が握っている。(A)


12月24日(月)

●世界で最も有名なツリーの一つとされる、米国ニューヨーク、ロックフェラーセンターのクリスマスツリー。今年はハリケーンの暴風に耐えた針葉樹が選ばれた。10月末に米東部を襲った「サンディ」の被害を生き延びた木で、「奇跡の木」と話題になった▼はこだてクリスマスファンタジーのツリーも、12月上旬の暴風雪で先端が折れ、点灯が一時中止された。しかし修復を済ませ、再度、まばゆい明かりをともした。ツリーに針葉樹が用いられるのは、冬でも緑を保つ生命力の象徴からという▼函館の姉妹都市、カナダ・ハリファクス市から毎年届けられる「友好の木」で、映像で比較する限り、輝きはロックフェラーセンターのツリーに負けない。金森倉庫をはじめとするベイエリアのイルミネーションが情緒を高める▼何度見ても、掛け値なしに世界に誇れるツリーだと思う。息も凍る冬の港町に、温かい明かりをともし、冬の函館観光を盛り上げる。ここは夜景の街なのだと、あらためて感じる▼12月1日の開幕からさまざまなイベントを繰り広げてきたクリスマスファンタジーは、25日まで。函館も困難に負けず、いつまでも輝いてと、ツリーに願いを託した。(P)


12月23日(日)

●年がハツル、トシハツル、年の終わりの義なのに、師走という字をあてたものだから、師が駆けずり回る月に…。正月準備でスーパーなどで赤ちゃんを抱っこした若い夫婦の姿が目立ってきた▼でも、「ホントかな…」と思いたくなる調査分析があった。新聞の見出しは「妻は家庭を守るべき」「20歳代男女で大幅増」という内閣府の男女共同参画調査。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」が51・6%と半数を超えた▼特に20歳代を見ると「妻は家庭を守るべき」と考える男性は55・7%、女性は43・7%。20年前の調査以来初めて増加に転じた。女性にとって仕事と育児の両立が難しいからなのか…▼「夫は仕事、妻は家庭」は死語と言われてきた。ある調査では男性が家事・育児にとる時間は週平均1時間で、米国やドイツの3分の1。男女共同参画が叫ばれてから、男性にも育児をと「イクメン」ブーム▼「経済情勢の悪化で働かざるを得ない事情」などと分析しているが、正直なところ分からない。「男女の地位の平等」では69・8%が「男性が優遇」とみる。どちらにせよ、若い夫婦が師走のマチを子供を連れてかっぽする光景はほほえましい。(M)


12月22日(土)

●日銀が20日、10兆円規模の追加金融緩和を決定した。自公政権の正式発足を前に、デフレ対策が本格始動する兆しかと思ったが、株や為替の反応は今ひとつ。市場はそれほど好感しなかった▼経済・金融は複雑怪奇。お札をいっぱい刷れば、市中にお金がたくさん出回るので、お金の相対価値は下がり、物価は上昇する。理屈は分かるが、少なくとも日本は定石通りに推移せず、デフレが続いてきた▼輸出不振、産業空洞化、内需減少、少子高齢化、欧州金融危機などが複雑にからみ合う現状。日本経済の“収縮”を止めるために一層の金融緩和を—との期待はあったと思うのだが…▼いろいろな対策が国民の「心理」に届かないのも心配。「物価目標(インフレ・ターゲット)」という言葉が一例。石油危機の「狂乱物価」を知る年代にとって「インフレ」は「生活が苦しくなる」という悪印象▼日本経団連は同日、「定期昇給は“聖域”ではない」と賃上げをけん制した。物価が上がるのに給料は上がらない。消費増税も近い。こう感じたら、節約心理が高まるのは当然だ。経済対策の効果はすぐには実感できない。マインドが高まるような、分かりやすい説明がほしい。(T)


12月21日(金)

●北海道の交通事故死者数が昨年一年間(190人)を上回った。19日には知内町で2人が死亡する事故が発生するなど12月に入って多発、19日現在、昨年同期を9人上回る196人▼交通事故に「自分は大丈夫」はない、と言われる。それほどに「事故は起きうる」ということだが、道路環境が良くなった、防止の啓蒙も進んだ、こともあって、ここ数年、急速に減少へ転じているのも事実▼発生件数の推移がそれを物語っている。まだまだ多い現実に変わりはないが、北海道でも同日現在、発生は昨年同期より1419件少なく、傷者も1645人減っている。だが、死者は…そこが交通事故の恐ろしさ▼けがで済むか亡くなるかは紙一重。さらに死者は減らせるはず、というより、減らさなければならない。それが社会の課題だが、その前提は発生を抑えることであり、必要なのは一人ひとりの安全意識▼「市街地では午後4時から6時にかけ高齢歩行者が絡む事故、郊外地では午前6時から8時と正午から午後4時にかけ衝突や単独事故が多い」。道警は12月の事故傾向をこう分析している。路面状態も悪い、年末で気ぜわしい。だから…いつにも増して注意が求められる。(A)


12月20日(木)

●「労働者の4人に1人が過去3年間にパワハラを受けた」。厚生労働省が今年7月から9月にかけて行った全国調査の答えだが、余りの高率に一瞬、驚きを覚えた人がいたのではないか▼パワハラ、正確にはパワーハラスメント…立場や権力を利用した人権侵害に当たるような嫌がらせ。必要以上の激しい叱責、雇用の不安をあおる言動などが該当するが、悩み多いのはその認定基準▼厚労省でも定義は示しているものの、程度によって見解が分かれる要素があり、一律に当てはめられないから。さらに、同じ行為でもパワハラと感じるか否か、受ける側の心理に個人差がある。ゆえに判断が難しい▼だからと言って現実を否定する理由にはならないが、それにしても、ここまでとは。25・3%。この人たちの間にも温度差があろうが、従業員100人の職場で被害認識者が25人もいるということである▼大事なのは、職場全体で注意し合うことなど、そうならないための対策。この調査でも起こりうる背景として、上司と部下など職場でのコミュニケーション、信頼感の欠如が挙げられている。いつの間にそうなったのか、かつての時代…厳しい中にもあったはずなのに。(A)


12月19日(水)

●福島県の別の地域に避難した際、他校の生徒から「放射能がうつる。帰れよ」と言われた。「何気なく言った言葉だったかもしれませんが、非常に悔しくて悲しいものでした」(中3女子)▼今度の衆院選の争点の一つは消費税増税。箱館戦争で五稜郭に入った榎本武揚は日本で初の「選挙(入札)」を実地。榎本が156票で総裁に。土方歳三は73票。財政再建のため各種に税金をかけた▼女子や子供からも通行税を取った。豪商から金品を徴収しようとしたが、土方が反対し、見送られたという。三党合意で決めた消費税増税は、生活必需品は除外するなど弱者対策が不可欠▼敵失で大勝した安倍晋三総裁は「原発ゼロ」には言及せず「原子力に依存しなくてもよい経済・社会」を掲げ、50基の再稼働には「原子力規制委員会の専門的判断を優先する」とし、脱原発依存の足取りは一歩遅れそう▼冒頭は全国中学生人権作文で大臣賞を受けた文章。子供たちを悲しませてはいけない。2度目のファーストレディーとなる妻の昭恵さんは「原発がこうなるのなら造るべきではない。日本の技術があれば(新エネルギーに)移行していける」(毎日新聞)と話している。同感だ。(M)


12月18日(火)

●予想通りというか、下馬評通りというか、国民の審判は下った。民主が駄目だったから、もう一度自民にやってもらうしかない…言葉は悪いが、消極的な、消去法の選択結果と言えなくもない▼大震災からの復興、消費増税や原発、TPPへの対処などが争点としてクローズアップされたものの、最大の焦点はあくまで民主政権に対する評価。それにしても、これほどまでの結果になるとは…▼総選挙は常に政権を委ねる政党を選ぶ選挙だが、今回、その色彩がより強かったのは、与野党逆転、いわば政権交代の可能性を秘めていたから。「自民はだめ」と烙印を押されたのが前回なら、今回は「民主はだめ」と▼政権側が交互にこけたということであり、もっと言うなら、民主が自民のために風を起こしてやった、とも。とはいえ結果は結果、厳粛な審判だが、その一方で、もう一つ浮き彫りにされた現実がある。全国的な投票率の低さ▼現在の選挙制度になって6回目だが、郵政解散の前々回、そしてマニフェスト選挙となった前回は67%、69%。今回は政権の枠組みが問われた選挙だったのに60%割れ。これが有権者の最大の意思表示だったとしたら、政治不信は深刻というほかない。(A)


12月17日(月)

●衆院選が終わった。ほぼ事前の世論調査の結果通り、自民・公明が過半数を大きく上回り、3年3カ月ぶりに政権を奪還した。道8区でも、自民の前田一男さんが8区の同党としては小選挙区初勝利を飾った▼小選挙区制は二大政党制になりやすいということは中学の社会科でも習う。だが、今回のように12の党が入り乱れる状況は、教科書と随分違っている。各党の主張を見る限り、党派乱立は国民の多様なニーズの反映とは言い切れない▼8区を例にとっても、争点となった大間原発やTPP(環太平洋連携協定)への対応は、程度の差こそあれ4候補とも「反対」の姿勢。地域活性化への主張も大同小異。明確な差は見出しづらかった。乱暴に言えば選択が難しい選挙▼個別の争点が似通ってくると、投票基準は勢い「政権選択」に集約される。このムードが強くなればなるほど、個別の政策や小政党の主張は埋没しがち。政策ではなく、政権枠組みで選ぶ傾向が強くなる▼そして今回、国民は政権交代を選択した。当然のことだが、国民は政権与党に「白紙委任」したわけではない。国民と約束した個別政策を真摯(しんし)に実行できるのか—。有権者は目を光らせなければならない。(T)


12月16日(日)

●衆院総選挙は16日、いよいよ投票日を迎えた。12の政党が乱立する中、政権選択や景気対策、原発を含むエネルギー政策、TPP(環太平洋連携協定)の協議参加など数多くの争点に対する有権者の審判が下る▼選挙の結果は別として、気になるのは投票率だ。函館市を含む渡島管内は、国政選挙の投票率が道内最低レベル。前回衆院選だと、函館市の67・10%は道内35市で最低。この不名誉記録は12回連続だった。渡島全体でも69・34%は5回連続で道選管支所のワースト▼道南は人口減少率が高く、経済の停滞が道内他地域より深刻だと言われる。ひとり気を吐く観光産業も、東日本大震災で甚大な影響を受けた。観光を軸としつつも、足腰の強い産業構造に転換していくことが人口減少の歯止めや若者定着、ひいては少子高齢化の減速につながる▼分かってはいるが、一地域の対策には限界がある。そこでこの選挙だ。争点の多くは国に関わる事項。我々は選挙でしか「イエス」「ノー」を直接回答できない▼選挙で意思表示をせずに、文句だけ言っていても世の中は変わらない。身の周りのこと、国や古里のこと。候補者の主張をじっくり吟味して、さあ投票所に行こう!(T)


12月15日(土)

●横田めぐみさんは拉致された年の誕生日に両親が贈った毛皮の小さなポーチをまだ持っているだろうか。拉致被害者の家族が「また1年過ぎた…」と嘆く「救出」は遠のくばかり▼「宇宙開発」の名の下で米国本土をターゲットにした長距離弾道ミサイルを発射した。「延期」の観測から一転、テレビの女性アナが「衛星打ち上げ成功」と声高らかに読み上げ、平壌では市民が歓喜の踊り▼22日までとしていた打ち上げ日程を「第1段階に技術的欠陥が見つかり、発射を29日まで延長する」と発表したが、日本などの迎撃・観測体制を把握するための不意打ちか。全くフェイク(まやかし)のシナリオ▼弾道ミサイル1基打ち上げるのに700億円ほどかかる。北朝鮮は貧しい人民は多いが、意外と資源は豊富。特に金は4兆円を超すともいわれ、中国などに輸出している。大半は先軍政治でミサイル開発に回している▼今年の世相を映す漢字に「金」が選ばれた。ロンドン五輪での日本選手の活躍ぶりが理由。皮肉にも3代世襲の独裁者の名も「金」。漢字発表の朝、「キム」と読めといわんばかりに強行発射した。拉致被害者も“不意打ち”で帰してほしい。(M)


12月14日(金)

●判明しているだけで周辺に死者6人、行方不明者3人。兵庫県尼崎市の連続変死事件で、真相を知るとみられる角田美代子容疑者が兵庫県警の留置場で自殺した▼衣類を首に巻き付けた状態で看守に発見された。県警は「落ち度や規定違反はない」と説明したが、角田容疑者は以前から自殺をほのめかす発言をしていたという。このため3人部屋の監視回数を増やしたが、1人部屋に移すとか、監視カメラを用意するとかできなかったものか▼養子縁組を重ねた親族の中で広がった、複雑怪奇、前代未聞の殺人事件。入り乱れた人間関係の中で、被害はさらに広がる様相もみせていたが、事件の中心にいた容疑者の死亡で、全容解明に大きな影響が出ることは避けられない▼角田容疑者は「すべて自分が悪い」と供述していたが、一通の調書にも署名していなかった。本当に責任を感じているならば、罪を告白して、裁きを受けるのが正しい道だ。自殺して口をつぐむことではない▼真相解明を願っていた被害者の親族の悲嘆はいかばかりか。二度とこうした事態を招かないよう、県警は監視態勢の検証を進め、逮捕した他の関係者から事件の立証を目指すべきだ。(P)


12月13日(木)

●今年も残すところ20日ほど。多忙な年の瀬であり、この時期に一年を総括するには早すぎるかもしれないが、敢えて言わせてもらうなら「来年に期待」。昨年も、一昨年もそうだった▼不安と混乱が渦巻いたまま終ろうとしている。政治はどたばた続きで信頼を損ない、円高基調も加わって経済はなおトンネルの中。外交は課題が山積し、大震災からの復興も遅れている。明るい話題もあったが、どちらかというと…▼間もなくマスコミ各社が選んだ十大ニュースが発表される。「明」の分野では、ロンドン五輪での日本選手の活躍や東京スカイツリーの開業、山中伸弥氏のノーベル生理学・医学賞の受賞など▼逆に「暗」の方では関越道での夜間バス事故(7人死亡)や中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故(9人死亡)に、尼崎監禁連続変死事件など。その他では金環食やLCC(格安航空会社)の就航…▼世界に目を向けると、ギリシャなどユーロ圏諸国で経済危機が表面化。国内外でいろいろな出来事があった。だが、これで終わりでない。今、北朝鮮のミサイル発射懸念されている。そして何より、政権の継続か交代か…新たな枠組みが焦点の総選挙の結果である。(A)


12月12日(水)

●今年も残すところ20日ほど。多忙な年の瀬であり、この時期に一年を総括するには早すぎるかもしれないが、敢えて言わせてもらうなら「来年に期待」。昨年も、一昨年もそうだった▼不安と混乱が渦巻いたまま終ろうとしている。政治はどたばた続きで信頼を損ない、円高基調も加わって経済はなおトンネルの中。外交は課題が山積し、大震災からの復興も遅れている。明るい話題もあったが、どちらかというと…▼間もなくマスコミ各社が選んだ十大ニュースが発表される。「明」の分野では、ロンドン五輪での日本選手の活躍や東京スカイツリーの開業、山中伸弥氏のノーベル生理学・医学賞の受賞など▼逆に「暗」の方では関越道での夜間バス事故(7人死亡)や中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故(9人死亡)に、尼崎監禁連続変死事件など。その他では金環食やLCC(格安航空会社)の就航…▼世界に目を向けると、ギリシャなどユーロ圏諸国で経済危機が表面化。国内外でいろいろな出来事があった。だが、これで終わりでない。今、北朝鮮のミサイル発射懸念されている。そして何より、政権の継続か交代か…新たな枠組みが焦点の総選挙の結果である。(A)


12月11日(火)

●「いつもいごをおしえてくれてどうもありがとうございました。せんせいもいごをがんばってください。せんせいがわらうところがすごくおもしろかったです。これからもげんきでいてください」▼小1男児の手紙。平仮名で書く子供の文章はふっくらとした感じ。最近の名前は読めない漢字が多く、先生は名簿に颯太には「そうた」「ふうた」、陽衣に「ひな」「はるな」「ひなた」などと平仮名を付けている…▼京都市の平安貴族の邸宅跡から出土した土器片に、和歌とみられる平仮名が確認された。9世紀後半の土器片で、平仮名が確立された「古今和歌集」を約50年も遡(さかのぼ)り「最古級の平仮名」という▼判読できない字もあるが、「ひとにくしと…」という記述もあった。「ひとにくし」には「うっとうしくもあるが、かわいい」という意味もあるといい、平安貴族が宴を楽しみながら詠んだのだろう▼小学校で最初に覚えるのは平仮名。冒頭の文章が書けるようになったら漢字を習う。文章は平仮名と漢字が融合してこそ味がでる。選挙戦で飛び交う「マニフェスト」や「アジェンダ」など直輸入語には温かみがなく、美しい千年の和風文化の流れが止まってしまう。(M)


12月9日(日)

●「政治と金」は解決することのない永遠の課題なのだろう。政治資金の実態を知るたびに込み上げてくる思いだが、今年もその時期に。昨年の政治資金収支報告書の概要が総務省から発表された▼無秩序な献金が政治を歪める、まず企業や団体からの献金を制限すべき、と議論があって久しい。その代償として政党交付金が制度化された。年間300億円超になるが、いわゆる献金が無くなった訳ではない▼確かに減ってはいる。ただ、それは経済情勢や公共事業の抑制という時代背景が影響してのことで、根っこは旧態依然。昨年、全体で収入、献金とも減ったのは全国規模の国政選挙がなかったから▼同省が所管する3312の政党・政治団体から報告された収入総額は1011億4500万円(前年比13%減)。うち個人や企業などからの献金は115億5500万円。24%減ったとはいえ、100億円以上▼政党交付金の依存割合は43%と高まったが、あくまで一時的なこと。今まさに選挙中だが、前記のように増える年になるであろうことは想像に難くないから。せめて願いたい…内々に処理した献金がないことを。あわせて、ごまかしのない報告も。(A)


12月8日(土)

●漢字は読めるけど、書くとなると戸惑うことがたびたび。そんな一人だが、それもこれも便利なパソコン時代になったから。漢字は表記された中から選ぶといいだけ…書く機会がないのだから忘れもする▼弊害と言えば弊害。大げさではなく、日本の最も基礎的な固有文化の危機と言って過言でない。大人はともかく子どもの国語力も懸念されている。このままでは大変…そうならないように▼そんな願いから設けられたのが「漢字の日」(日本漢字能力検定協会)。その日は12月12日。「いい(1)じ(2)いい(1)じ(2)」が謂(い)われだが、制定以来、毎年注目を集めている取り組みに「今年の漢字」がある▼その年の世相を表現する一文字をみんなで選ぼうという趣旨。40万通余の応募の中から選ばれた漢字はこの日、清水寺(京都)で管主の揮毫で披露される。昨年は「絆」(東日本大震災など)だった▼ちなみに2010年は「暑」(猛暑)、2009年は「新」(政権交代)。そして今年だが、政治の混乱、尖閣や竹島の領土問題、原発や増税論議など、候補材料となる出来事が多々。果たしてどの「字」が選ばれるか。確かに…この時ばかりは多くの人の目は漢字に注がれる。(A)


12月6日(木)

●いつかこの日が来るのは分かっていたが、実際にその一報に接し、寂しさを禁じ得ない。サッカー・コンサドーレ札幌の中山雅史選手の引退だ▼「ゴン」の愛称で親しまれるスーパースターで、J1最多得点(157)、J1最年長出場(45歳2カ月)の記録保持者。1993年のW杯最終予選、ロスタイムに失点し初出場を逃した「ドーハの悲劇」でベンチ前に崩れ落ちた姿や98年W杯ジャマイカ戦での日本人初ゴールが印象に残る▼サッカー王国・静岡の出身で、進学校の藤枝東高から筑波大に進んだ。J1ではジュビロ磐田で長くプレー。4試合連続ハットトリックという大記録を達成した98年にはリーグ戦27試合で36点という驚異的なペースで得点王。記憶と記録に残る大選手だ▼明るい人柄で、サポーターを大切にする。闘志あふれる「ゴンゴール」はもちろん、観客席と一緒に飛び跳ねる「ゴンダンス」がその象徴。ピッチの中でも外でも真のプロフェッショナルだった▼札幌に移籍した後は両膝の持病との戦いに苦しんだ。3年間の出場はリーグ戦など14試合。引退会見からは悔しさも漏れたが、たとえ試合に出ていなくても「ゴンの魂」はサポーターに伝わった。(T)


12月5日(水)

●師走の総選挙が本番に入った。街中のポスター掲示板には、にこやかな表情の候補者の顔が並び、選挙カーはスピーカーのボリュームを上げて名前の連呼。見慣れ過ぎた光景である▼いつから続いているパターンか、と思ってしまう。時代は次々、新たな価値観を生み出していく。その中で、変わっていくものとそうでないものがあるが、選挙運動はさしずめ後者…その責任は公職選挙法に▼ポスターと選挙カー、確かにかつての時代は、最良の手段だった。以来、今日までの間、選挙制度が変わって、覚えきれない候補者の中から選ぶ訳でもない。新しい伝達手段も生まれている。だとしたら…▼ポスター掲示板にしても、設置に多額の税金が使われ、貼って歩くには多数の支持者がいる。新聞やテレビに加え、インターネットなどの活用が考えられるし、選挙カーも名前の連呼が中心なら必要かどうか▼代わりに演説会を重視すべきという主張も聞く。例えばだが、選管が演説を認める場所を指定して、そこでじっくりと政策を訴えてもらってはどうか。ともかく選挙運動が「政策二の次」とはならないように。今のままでいいのかどうか、今後、議論があっていい。(A)


12月4日(火)

●12の政党が乱立した師走の衆院選スタート。夏に親戚を頼って福島から避難してきた高齢の夫妻は「見えない原発の放射能に脅かされた。政治家の原発ゼロは虚しく聞こえる」と嘆く▼政策の一点を強く印象づけると他の争点は埋没してしまう。自分たちに有利な争点だけが浮くように国民の判断基準を変えるのがプライミング効果。今回の選挙マニフェストは「原発・エネルギー」に絞られた▼「30年代の原発ゼロ」「22年をめどに全50基をなくす」「原子力に依存しない社会構築」…。核のゴミや核燃料サイクルを含め、原発依存度を下げていく工定表がない。その前に故郷に戻れない被災者をどうするのか…▼28年前に建設された米国のショーラム原発は住民が納得する避難計画が立案されず、激しい反対で一度も稼動することなく、10年後に閉鎖された。しかも廃炉には建設費とかわらぬ費用を投じて▼10年で廃炉できれば何にも言うことはない。でも“砂上の原発”でないことは子供だって知っている。冒頭の夫妻は「いつ帰れるのか、息子も生活設計が立てられない」。各政党は福島など震災被災地で第一声を上げるが、人影のない静寂の地の叫びにも耳を傾けよ。(M)


12月3日(月)

●クリスマスファンタジーが開幕した。この冬で最も“しばれた”にもかかわらず、大勢の人が繰り出して、会場はにぎわった▼赤れんが倉庫群にそびえ立つイルミネーションのツリーは、見る角度によって色合いが異なる。初日の1日は、時折雪模様だったが、点灯後には晴れて漆黒の夜空をバックにツリーが実に映えた。周囲の観光客も「きれい」を連発していた▼函館観光は今年上半期(4〜9月)、入り込み数が前年同期を13%も上回り303万人となった。東日本大震災による落ち込みからほぼ回復したが、これからは観光業界にとって客足が落ちる時期。冬の観光客誘致は重要課題だ▼「函館の冬には何もない」との自嘲を耳にすることが多い。だが、「クリファン」の素晴らしいツリーを眺め、会場の雑踏に身を置きながら、ふと思った。「ないなら、つくるしかない」—▼節電の冬には不謹慎かもしれないが、札幌の大通公園規模のイルミネーションが、函館でも実現できたら素晴らしい。函館は夜景という光の景色を最大の売りものにしている。冬は街路の輝きも「世界級」—。この響きは実に魅力的だ。逆に冬こそがチャンスと思えてくる。(T)


12月2日(日)

●国民的な関心事は多々あるが、当せん金が高額な「宝くじ」は、ファンの多さで追随を許さない。5千万とも7千万とも言われる人に夢を追わせている。今年も年末ジャンボの販売が始まった▼すでに購入した人もいよう、購入する日を選んでいる人もいよう、どの窓口にしようか、いくら投じようかと思案している人もいよう。なにせ過去最高の当せん金設定とあっては、気持ちがくすぐられる▼68本ある一等は4億円で、その前後賞が1億円(136本)。一等と前後賞を合わせると何と6億円というのだから。庶民には浮き世離れを実感する金額…まさに夢の金額である▼2等の3000万円(204本)でも御の字。これでも夢の範ちゅうに入る。そこまではともかく3等(100万円)でも…6800本もあるのだ。これだけの当せん数があるなら「もしかして」と期待を抱いて不思議はない▼所得は減る、景気はトンネルに入ったままで、募る生活不安。「ジャンボで当てて」の思いはある意味、庶民の自己主張。夢を託す先…本来なら政治、となるところだが、今の姿を見ていると軍配は明らかに宝くじ。なによりかにより政治と違って空手形がない。(A)


12月1日(土)

●室蘭、登別を中心とした大規模停電は、発生から4日後の11月30日、全面復旧した。冬季の長時間停電の恐ろしさを見せつけられた▼道内ではこの冬、節電対策をとらなければならない。最悪のケースとして「計画停電」が論じられた際、決まって言われたのが「冬だから大変なことになる」。それが図らずも現実になった▼大きな公立病院には自家発電装置があったが、入院患者への対応が精いっぱいで、外来は休診。登別温泉のホテルは休業し、被害額が数億円との試算もある。マンションやビルでは水をくみ上げるポンプが止まり、事実上の断水状態。コンビニやスーパーは、食料品や水を買い求める客で長蛇の列…▼家ではストーブが使えない。信号や街灯も消えた。住民はさぞかし心細い夜を過ごしたことだろう。道南に大きな被害はなかったが、とても他人ごととは思えない▼今回は送電網のダメージが停電の原因。設備被害の個所がもっと多ければ、復旧はさらに遅れたかもしれない。発電所のトラブルだと、もっと深刻になる。電気は日ごろ当たり前に届いているが、天災の前にはかくも脆(もろ)い。万一に備えた対策、準備の重要性をあらためて痛感させられた。(T)