平成24年2月


2月29日(水)

●歩道の手すりに寄りかかり、濃紺の闇に沈むフィヨルドとオスロの街を眺めると、上空に剣から滴る血のように、真っ赤な雲が垂れ込めていた。恐怖に震えていると、自然を貫く大きな叫び声がいつ果てるともなく続いた…▼ノルウェーの画家ムンクの代表作『叫び』。叫ぶ「大地」におののいて耳をふさぎ、目をむいて口を開けた男が身をよじる。真っ赤な背景は当時の火山の噴火だった可能性も指摘されている。かつて、美術館から2人組に盗まれた『叫び』は映画にもなった…▼そのムンクの恐怖『叫び』のグッズがブームだとか。キモカワイイところが受けているのか、そっくりのビニール人形が出現。ゴルフヘッドカバー、キーホルダー、3Dポストカード、雪像など続々。携帯の壁紙や絵文字・顔文字にも登場▼孤独や死への恐怖を表現しているとも言われ、その『叫び』が5月に米国でオークションにかけられる。ムンク生誕150周年に合わせたもので、同じ構図の4枚のうち、最も色合いの鮮やかな作品。競売は60億から100億円とも▼海底の『叫び』で原発が爆発した大震災から、もうすぐ1年。日本列島は見えない「放射能の恐怖」におののき、早期復興を叫んでいるのに、党利党略に走る国会で遅々として進まない。ムンクが描いた不安感は今ものしかかる。中3の孫娘は、いじわるな先輩へのメールに『叫び』の絵文字を打ち込んでいる…。(M)


2月28日(火)

●「高齢者」と呼ばれて喜ぶ人はいまい。そんな年寄りでないよ、まだ言われたくないな…年齢で一括りにされると反発したくもなる人は多いに違いない。それだけ健康寿命は伸びて、現役意識が高まっている証でもあるが▼かつての時代には、還暦といえば、リタイア年齢を意味した。赤いずきんやちゃんちゃんこを贈って祝う習慣も、生まれた時に帰るという意味からで、それが60歳。あとは年金でゆっくり余生を楽しんでください、という思いが込められていたのかもしれない▼60歳どころか今の時代、65歳でも若い。その65歳が区切りの年齢となって久しい。法的な扱いや統計などでも「高齢者」の定義は「65歳以上」。それに、どれだけ根拠があるかは定かでないが、その「65歳以上」も変わりそうな動きに▼内閣府の高齢社会対策の在り方等に関する検討会は先日、65歳という年齢で一律に区切るのは実態にそぐわない、として見直すよう提言した。確かに、なお働きたいと望む人は増え続け、一方で、社会は、というと、深刻な少子高齢化という時代背景を抱えている▼それでは高齢者の新定義は何歳に…。今後の議論なんだろうが、年金受給開始60歳時代に「65歳以上」になったのだから、単純には「70歳以上」か。理屈はどうあれ、気分的には、高齢者と扱われる年齢は遅くなるに越したことはない。その思いだけは誰もに共通している。(A)


2月27日(月)

●函館に暮らして十数年になるが、当たり前のように雪道を走る自転車の多さに毎年驚かされる。しかも、運転者のほとんどが年配から高齢者で、ふらつきながらも転倒することなく、すいすいとこぎ続ける姿はたくましい限り。ただし、ドライバーにとっては、いつ目の前に倒れこんでくるのではないかと冷や冷やものだ▼少なくとも筆者は、道南以外で一般の人たちが真冬に自転車に乗り続けている例を知らない。雪が少なく、道路状況が安定しているためだとは思うが、今年のような圧雪状態でも、相変わらずペダルをこぎ続ける人数は減ることがない▼学生などは、校則によって冬場の自転車利用が禁止されるケースがほとんどだが、一般の人たちを規制する法律は存在しない。危険であることは間違いないのだが、あくまでも本人の判断にまかせられているのが実情だ▼一方的に冬場の自転車利用を非難しているように思われるかもしれないが、これには函館ならではの交通事情も深く関わる。広い市街地に対し、市電は限られた地域にしか残っておらず、路線バスはルートが非常に複雑。自家用車を持たない人には移動が困難な街なのだ▼一時は過去の存在として縮小が進んだ路面電車が、環境に優しい存在として再注目されている。札幌では市電を延伸し環状化する計画が進んでいるという。函館でも本格的な延伸議論が進められることに期待したい。(U)


2月26日(日)

●是正が求められている衆院小選挙区の「1票の格差」は、25日で違憲状態に突入した。与野党の幹事長級協議で合意できず、法律に基づく期日までに首相へ勧告ができなかった。法律を作った立法府が、法律で定められた期限を守れないという事態▼1票の格差が最大で2・30倍となった2009年の衆院選で、最高裁は「違憲状態」と判断した。これを受け、格差是正が求められたが、問題をこじらせたのは定数削減に選挙制度改革の議論が絡んだため。政党間の利害が対立し、協議が進まない▼衆院選は、死票は多いが政権交代が起きやすい小選挙区制と、得票に応じた議席配分で多様な民意が反映される比例代表制の並立となっている。比例議席は80削減がベースになっているが、現行制度のまま減らせば、得票の少ない中小政党の大幅な議席減は避けられない▼だから、選挙制度も含めて見直そうという議論となり、中小政党に優先的に比例議席を配分する連用制が主張された。だが、これでは得票の少ない政党が大政党の何倍も議席を得る結果になるという。それでは大政党が黙っていない▼このままでは、次期衆院選で「選挙無効」との司法判断が下りる恐れがある。政党間の思惑で「何も決められない政治」を見せ続けられる国民はたまったものではない。猛省するとともに、違憲状態の解消へ、まずは小選挙区の格差是正を急ぐことだ。(P)


2月25日(土)

●地獄に棲む餓鬼の世界は常に飢えに苦しめられる。針のように細い喉。腹がへって物を食べたいけれど、食べ物が喉を通らない…。現世において、今年に入って老夫婦、親子、姉妹、母子の「悲しい餓死」が相次いで発覚…▼1年間に捨てる食べ物が東京ドーム80杯分も出る日本で、この10年間で625人が餓死しているなんて信じられない。住民登録をしていなかった、生活保護を申請していなかった、電気やガスが止められていた…。「悲しい理由」は何か…▼さいたま市の60代夫婦と30代の息子。部屋には1円玉が数枚、あめ玉が数個あったが、冷蔵庫は空で食べ物は見当たらなかった。ガスや電気は止まっていた。昨秋から家族の姿は見かけなかったという。息子は建設作業員だったのに…▼札幌では42歳の姉と知的障害のある妹が餓死。生活保護で市に相談していたというが…。東京では45歳の母親と4歳の知的障害の息子の遺体。母親が病死した後、助けを呼べなかった男児が10日ほど何も口にせず、死亡したと見られる…▼釧路では認知症の84歳の夫と介護していた72歳の妻が凍死…。自治体は福祉サービスを受けず行政の目の届かない知的障害者などの実態調査を始めた。町内会などによる『見守り』など「食べ物が喉を通る」仕組みも必要だが、公的救済の「悲しい死角」で懸命に生きている人々を救えないものか。痛ましい終末を迎える前に…。(M)


2月24日(金)

●北限のブナ林、京極のふきだし湧水、江別のれんが、霧多布湿原、静内二十間道路の桜並木、旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群…函館山と砲台跡、五稜郭と箱館戦争の遺構、姥神大神宮渡御祭と江差追分…全部で52あるという▼ほんの一部を挙げたにすぎないが、後世に残すべき地域財産として登録された北海道遺産。その中に異色な「北海道の馬文化」がある。対象は日高地方のサラブレッド生産とばんえい競馬だが、そのばんえい競馬に運営危機状態が続いている▼ばん馬は北海道の開拓を担い、その歴史の過程で生まれたのがばんえい。運営難から旭川や北見などが撤退し、帯広が単独開催するようになって3年が過ぎた。民間に運営を委託し、飲食と物産販売の新たな施設を設け、さらにはマスコミの注目も▼今月もテレビドラマ(NHK・大地のファンファーレ・24日に後編)が話題になっている。それでも厳しい。収入の柱となる売り上げは、20年ほど前のピーク時に比べ半額レベルまで落ちた。運営安定の道のりは未だ遠く、新年度からは委託先を代えての取り組みに▼何事もそうだが、やめるのは簡単。ただ「それでいいのか」と問われると、多くの人が「何とか残してほしい」と答えるに違いない。それだけ価値ある産業文化の遺産だから。だが、その継承は容易なことではない。喘ぐばんえい競馬はそう問いかけている。(A)


2月23日(木)

●「耳が痛い」。辞書には「他人の言葉が自分の弱点をついていて、聞くことがつらいこと」とある。的外れの言葉では意味がない。本人をも納得させるものであり、欲を言えばその指摘も相手を思う真心から出たものであってほしい▼「函館の高いブランドイメージは過大評価」「中心市街地は空き地の集まり」「函館のまちづくりは間違っていた」。函館の将来像を探る市主催の第22回「まちづくり講座」で、日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介さんから厳しい意見があった▼それぞれの発言がきついイメージを与えるのは前後の文脈を省略したせいもある。それでもなお、聞く側に「耳が痛い」と思わせるのは、弱点を的確にとらえているからだろう。郊外偏重の開発から市街地への人口・機能再集中が「生き残りの鍵」と藻谷さんは言う▼市は「中心市街地活性化基本計画」の策定も進めている。素案によると、旧グルメシティ五稜郭店(本町)やWAKOビル(若松町)の再開発、朝市ドーム改築など43事業を展開。両地区での居住促進と空き店舗活用も重点に据えた▼地元関係者など“身内”に偏ると、どんな論議も近視眼的になりやすい。「よそ者」の客観的な意見が尊重されるのはそのためだ。藻谷さんらの具体的な指摘を同計画に反映させる度量が関係者にほしい。耳が痛い話にもしっかりと耳を傾ける。そこから始めよう。(K)


2月22日(水)

●「被災者の苦境を見れば、援助できる者が援助するのは当たり前。自治体のトップは腹をくくって受け入れるべき。必要なのは気持ちだ」。お茶の産地であり、風評被害を懸念しながらも、静岡県島田市の桜井勝郎市長は決断した▼あの悪夢の日から間もなく1年を迎える。東日本大震災。想像を絶する津波の被害に原発事故…死亡者は1万5850人、行方不明者は3287人。なお多くの人が仮設住宅での生活や汚染からの避難生活を強いられ、復興はまだまだ名ばかり▼何より第一歩となる膨大な量の瓦礫(がれき)の広域処理が遅々として進まない。その量たるや岩手、宮城の2つの県だけで通常の20年分とも言われている。冒頭の桜井市長の話は、その瓦礫処理の受け入れに当たってだが、反論の余地はない▼東京都や山形県など、ほんの一部でしかないのだから。大震災後の合言葉に「絆」があった。昨年の漢字にも選ばれ、金銭的な支援、ボランティア活動など「絆」の輪は大きく広がった。「この国もまだ捨てたもんじゃない」と実感した人も多かったに違いない▼ただ、瓦礫ばかりは例外ということか。背景にあるのは放射能に対する不安だが、だからと言って…。「みんな自分のことしか考えない」。東京都の石原慎太郎知事はこう言ったが、被災地もそんな思いとしたら。瓦礫の山が改めて「絆」を問いかけている。(A)


2月21日(火)

●個人的な好き嫌いや音楽性の良しあしを超越した、圧倒的な存在感である。「AKB48」。その人気アイドルグループが東日本大震災後に寄付した義援金の総額が、12億5000万円を突破したという。これにはアイドルに縁のないおじさんも、素直に「すごい」とうなるしかない▼チャリティーを目的にした「誰かのために」プロジェクトは震災直後に発足した。AKBのメンバーは募金活動のほか、東北各地を訪問して被災者を励ました。新学期のスタートに合わせて計30台の車両も各県に寄贈し、不便解消に役立ててもらう▼一方で、国政や経済を動かす有力者の中には私利私欲に走るやからも多く、新聞やテレビを連日にぎわせている。なぜかこれらの人々からは「震災は人ごと」いう雰囲気が漂う。「AKBを見習って」とは言わないが、せめて被災者の神経を逆なでしないでと願いたい▼震災から間もなく1年。この間に未曾有の大災害に対する検証、再発への備えはどこまで進んだか。報道機関に身を置く立場からそれは十分とは言えず、反省点も少なくない。これを機に、より住民に役立つ震災報道を心掛けたい▼義援金などが全国的にやや低調という。1年がたち、あの衝撃は日常の中に埋もれつつある。被災地の復旧・復興は緒に就いたばかり。3・11を風化させない—。アイドルたちの息の長い活動が、その大切さを教えている。(K)


2月20日(月)

●♪一円玉の旅がらす ひとりぼっちでどこへゆく〜 落ちていても拾われない気の毒な硬貨。たかが一円玉、されど一円玉。小さいころ、粗末にすると「一円を笑うものは一円に泣く」と親から叱られた…▼新聞に「流通を目的とした一円玉の製造が、昨年は43年ぶりに1枚もなかった」という小さな記事。背景には在庫に余裕があることに加えて、最近は「スイカ」などの電子マネーが普及して小銭を使わない人が増え需要が減っていることもある▼表にはすくすく育つ「若木」のデザイン。脚光を浴びたのは23年前に竹下内閣が消費税を導入したのがきっかけ。見向きもされなかった一円玉が買い物のつり銭に必要になったから。半端な1円、2円のために1000円札を出すことも…▼♪一円だって 生まれ故郷にゃ母がいる〜 消費税の導入ではやったのが一円玉の夢と哀愁を歌った「一円玉の旅がらす」。社会保障と税の一体改革大綱決定の前日に流れたのが「一円玉製造ゼロ」のニュース。次の消費税アップが待っている…▼五円硬貨と五十円硬貨も流通向けは製造されず、十円硬貨と五百円硬貨も枚数が減った。一円玉1枚を製造するのにかかるコストは額面を上回り、1枚当たり十数倍の赤字だという。小銭は年々少なくなるが、消費税アップのたびに脚光を浴び、存在感を高めるのが一円玉。財布から落ちた「一円玉の音」は決して軽くはない。(M)


2月19日(日)

●冬の北海道は予定を立てにくい。移動中のトラブルで大事な約束に遅れ、相手に平謝りなんてことも。大雪後の悪路も原因の一つ。車の渋滞が解消されない、今の函館がまさにそのケースだ▼その点、列車での移動は安心できる。特に長距離の場合は、定刻に目的地に着くことが多い。少なくとも数年前までは本気でそう思っていた。最近は事情が違うようだ。事故の多発に伴い、列車の“安全・安心神話”は過去のものになった▼10日ほど前、JR石勝線の特急列車で道東に行った。悪天候が続いていたころで、列車の遅れは覚悟していた。案の定、冬季はトンネル内を徐行運転するため、到着が10〜20分遅れるという。その時は最少の遅れで済んだが、場合によっては1本の遅れが次々と後続列車に影響することも珍しくない▼それから数日経った16日夜、同じ石勝線の東追分駅構内で貨物列車が脱線する事故が起きた。以来、札幌—釧路間の特急などは多くが運休し、全面復旧は数日後になる見通し。主要都市間を結ぶ大動脈だけに、市民生活や物流に与える影響の大きさは計り知れない▼今回の事故は、ブレーキの不具合が原因との見方が強まっている。石勝線では昨年5月、特急列車の脱線炎上事故が起きたばかり。函館発着の列車だって安心はできない。道内全線、全列車で徹底点検を。それは公共交通機関としての最低限の責務である。(K)


2月18日(土)

●スキー人口の減少が叫ばれて久しい。20年ほど前の1990年代前半は1700万人と推定されたが、今や半減の800万人とも。こうなった理由として、よく言われるのはレジャーの多様化と財布にゆとりがなくなったこと▼バブルがはじけ、経済、生活環境は一変し、一方でネットや携帯などが一般化した。その中で、スキーは、というと、金がかかる部類のレジャー。用具一式、ウエアを揃えるだけで最低でも5万円は要し、それに毎回、交通費やリフト代がかかる▼子供に経験させたいと思っても、おいそれとは。揃えるのは大変だからレンタルを考えても、お手頃でない。道央のリゾートスキー場などでは、すべて借りると大人1日7千円、子供で5千円ほど。リフト代は1日4千円を超える。親子でとなると…▼これでは「家族で試しに」と思っても、躊躇(ちゅうちょ)しかねない。子供は将来につながるお客さん、せめて家族連れだけでも格安な料金設定はできないのだろうか。そう考えていたら、出来るんじゃないの、と思わせるパック商品が目に止まった▼交通費も含めた金額から推して、レンタルとリフト代は正規の半額以下。こうしたパックも誘導策なら、正規料金をこの程度に抑えることもさらなる誘導策。ここまでは一般論だが、函館・道南に目をむけると、幸いにもリーズナブルで、素晴らしいスキー場がある。(A)


2月17日(金)

●どこをどう捻ればこういう発想に行き着くのか。政府はとうとう国民の「休眠預金」にまで目をつけた。眠ってはいても、そのお金の持ち主は存在する。「人の財布に手を突っ込むような所業」。銀行業界が一斉にかみついたというが、無理もない▼政府の言い分は以下の通り。金融機関の口座に預けられたまま10年以上お金の出し入れがない休眠預金は毎年850億円に上る。預金者への払い戻しなどを除く300億円程度が活用可能で、それに手をつけるのも「動いていないお金を動かす」という経済活性化の理由から▼お金を金融機関に預けず、手元に置くことを「タンス預金」と言う。政府はこれまでも、社会保障と税の一体改革案の中で「安心して消費ができる社会の実現」を唱えてきた。「お金を使って」というこの訴えも、お金の所有者に主体性があるだけまだ救いがある。国民不在の休眠預金活用策との決定的な違いだ▼「国が預金を勝手に使ったり、取り上げるということではない」。担当大臣の弁明はいかにも苦しい。20年以上取り引きのない休眠預金でも、突然引き出されるケースがあるという。“捨て金”と勘違いされては困る▼休眠預金の一部を福祉向上などに役立てている国もある。ただ、日本の場合は過去の失政の穴埋め策との印象が強い。まずは十分な論議を。国政を信じることができなくなった国民へのせめてもの礼儀である。(K)


2月16日(木)

●函館市民のイライラが募っている。大雪後の除排雪が進まないからだ。生活道路ならまだあきらめもつくが、交通量の多い幹線道路も一緒となると話は別。朝夕の大渋滞による悪影響が各方面に出始めている▼車の物損事故は昨年同期の3倍にもなった。物流が滞ることで地元経済も打撃を受ける。渋滞による時間の浪費は金に換算できないほど深刻—という人だって多いはずだ。車の移動があって初めて仕事が成り立つ業種の関係者からは「何とかして」といった悲鳴も聞かれる▼除排雪の遅れを一方的に批判するつもりはない。道路を管理する市、道、国にもそれぞれの事情があるだろう。ただ、単に作業が追いつかないのか、あるいは予算不足が原因なのか、そのメッセージが届かないから、なおのこと市民のイライラが高じる▼札幌市には雪対策室という部署がある。大雪時の除雪はもとより、道路わきにできた雪山の排雪にも陣頭指揮を執る。その対応は見事だ。深夜に作業する除雪車とダンプカーの連携など、技術面にも目を見張るものがある▼降雪量に大きな差がある函館と札幌を比較すること自体、無理があることは分かっている。それでもなお函館の手際の悪さが目について仕方がない。市は本年度補正予算で除雪費を4000万円増額する。これだけで悪路が改善されるとは思わないが、少しでも渋滞の緩和につながることを切に願いたい。(K)


2月15日(水)

●異常気象か否かは別として、今冬は雪も多ければ気温も低い。気象情報が伝える朝の気温には、氷点下20度以下の所がいつも数カ所…十勝の陸別町や上川の占冠村などが、寒さ日本一とばかりテレビのワイドショーで取り上げられている▼実際に道内の多くの地域が、連日、冷凍庫状態。改めて寒さ対策と聞かれても答えに窮するが、寝具の暖は欠かせない。電気の敷布や毛布が今流だが、にわかに「湯たんぽ」派が増える動き。それも単なる懐かしさからではないという▼「湯たんぽ」の歴史は中国の唐の時代に始まり、我が国で使われるようになったのは室町時代と言われる。陶器製から金属製になり、今はプラスチックやポリ塩化ビニール製が多い。素材は変わってはきたものの「体に優しい」という持ち味は昔も今も同じ▼電気類と違って皮膚が乾燥しづらい、徐々に温度が下がるので体への負担が少ないなど、さまざま良さは語られるが、自然の暖かさを感じ、電気代がかからないのだから、いいこと尽くめ。やかんが乗るストーブなら、わざわざ湯を沸かす必要もない▼ふたをあけておくことで部屋の湿度調整もでき、加湿器代わりにもなる。時代は常に新しく、便利なものを生み出す。今やハイテクが闊歩(かっぽ)し、アナログが肩身の狭い思いをする時代だが、でも先人の知恵には叶わないことがある。「湯たんぽ」も…異論はない。(A)


2月14日(火)

●焼き鳥屋の煙や臭いが流れ込み、受忍限度を超えているとして慰謝料を求めた裁判があった。騒音や震動などと比べ、臭いは客観的に測る基準がない。判決では原告の訴えが一部認められたり、控訴審で原告が逆転敗訴したりで、司法判断も難しいようだ▼景色や色、景観も、主観に左右される。函館市の二十間坂上に設置された「自由の女神像」。歴史的な建造物が立ち並び、異国情緒漂う雰囲気が破壊される、と近隣住民らが撤去を求め、市も勧告した。業者も一度は撤去したが…。函館では過去に、高層マンションや観覧車計画などでも景観論争や住民運動が起きたことがある▼市は西部地区の景観を守るため、改正都市景観条例の素案をまとめた。規制を強化し、これまでなかった罰則も盛り込み、建造物や工作物の高さや色、素材などの基準も定める考えだ。秩序ある街並みづくりと維持には、一定の厳格なルールが必要だろう▼ただ、条例でルールを決めても、互いの権利や主張、主観と価値観がぶつかり合うこともあろう。誰が見ても美しい景観は“時間”というフィルターを通ってから明らかになるものなのかもしれない▼しかし、函館山からの夜景や西部地区の街並みは、国際観光都市・函館の財産だ。景観が損なわれるかどうかの客観的な判断は難しいが、景観はみんなの利益と財産。問題の芽を未然に摘み取る抑止力にも期待したい。(P)


2月12日(日)

●リーグ最終戦に勝利し劇的な4年ぶりのJ1昇格を決めたコンサドーレ札幌。今年は函館でも久しぶりに国内トップチームとの熱い戦いを応援できると楽しみにしていた地元サポーターにとって、残念なニュースが飛び込んできた▼2000年から毎年行われてきた函館でのゲームが、今年は行われないことになったのだ。会場となる千代台公園陸上競技場の観客数が、J1開催の規定である1万5000人に達していないのがその理由▼同競技場の収容人数は、芝生席も含めれば規定をクリアするのだが、Jリーグは固定席のみの数を求めている。これまでは例外措置として開催が許されていたのだが、来年度から導入される新たなライセンス制度に伴い、この基準を厳格に守る必要性が出てきたたという▼もちろんルールを守ることは大切だが、Jリーグの発足理念のひとつが地域に根ざしたチーム作りだったはず。地方都市の厳しい財政事情を考えると、年1回の試合開催のために大人数を収容できるスタジアムを整備することは難しい。かといって広大な北海道を地盤としたチームが、札幌だけでホームゲームを行うのは、地方のサポーターにとって納得がいかない▼コンサドーレが誕生してから今年で16年。浮き沈みを繰り返しながらも道民球団として着実に広げてきたサポーターの輪を狭めないためにも、函館での公式戦再開を切に願う。(U)


2月11日(土)

●我が子の突然の死を受け入れられなかったゴータミーは釈迦に「子どもを助けて」と頼んだ。釈迦は「これまで葬式を出したことがない家からケシの実をもらってきたら、子どもを治してあげよう」と言った▼ゴータミーは我が子を抱いて数カ月、葬式を出したことのない家を探した。大家族が当たり前だった時代、葬式を出したことのない家などなく、生老病死は避けられないと気づく。我が子を弔い、苦しい運命に耐えた…(仏教説話)▼大分県で2歳の幼児が行方不明になった事件。死体遺棄容疑で逮捕された35歳の母親は4カ月前、死んだ我が子を抱いて自宅から3㌔ほど離れた墓地付近の斜面に捨てた。枯葉や雑草の下から白骨化した幼児の遺体が見つかった…▼スーパーマーケットの駐車場で車内に幼女を残し、買い物をして戻ると幼女がいなくなっていたと110番していたが、不審な点が多く、「自宅でぐったり、人工呼吸をしたが助からなかった。気が動転して捨てた」と話しており、幼児の行方不明は自作自演だった▼幼女は足が不自由だった。発達障害医療センターに通院したり、同じ子どもを持つ親の会にも入っていたのに、何が我が子を捨てるまでに追い込んだのか。ゴータミーのように親類などに相談しなかったのか。幼児には毛布がかけられており「人工呼吸したら…」と思ったのなら、救急車を呼んで運命に耐えるべきだった。(M)


2月10日(金)

●「この状況はしばらく続くね。グローバルな構造的問題が絡んでいるから。へたしたら10年先まで心配しなきゃ駄目かも」「輸出型の産業は本当に大変。円高がここまできては海外に生産拠点を移さざるをえない、止められないね」▼神奈川県で中堅の会社を経営する友人の現状認識である。電話で、わずか15分ほどの会話だったが、近況報告はさっさと済ませ、経済談義となったのは、それだけ企業経営が大変だという現実の証。聞きながら、昨今の経済ニュースが頭を過っていた▼大手家電業界がこぞって数千億円レベルの赤字決算を発表したことなど。その会見で、さらに生産拠点を海外に、という話もあった。円高基調が長期化するとの判断からだが、そうか、仕方ないな、と受け止めはしたものの、納得してもいられない▼海外への流れが加速すると、法人税は落ち込み、国の財政に影響する。さらに働く場所が減って失業者が増えかねない。雇用環境の悪化は気持ちを冷えさせたままにし、それでなくとも懸念される年金財源にも響いてくる。医療、福祉の社会保障だって…▼この悪い状況の連鎖こそ深刻。政治への信頼があればまだしも、それも欠けている。この先、どうなるのか、その的確な答えは聞こえてこない。「滅入ってくるよ」。彼の口から何度か出てきた言葉だが、実は…彼だけの思いではないのかもしれない。(A)


2月9日(木)

●今冬は全道的に冷え込みが強い上に雪が多い。昼間は気温が上がり雪は緩み、日陰の場所や、夜間はそれが凍って滑りやすくなる。とりわけ函館など道南で顕著な現象だが、そのために車のスリップや歩行者の転倒が起きやすい▼ケガはしないまでも、滑って転んだ経験を持つ人は、結構いるはず。3日の本紙が取り上げた冬道歩行対策の記事が教えていたように、転倒事故が少なくない。高齢者が多いが、函館市だけで1月末現在、86人が転倒して救急搬送されているという▼そう言えば、先日、函館を訪れた知人が、こう語っていた。「せめて駅の周辺は氷割りをしておくとかしてほしい。滑って危ないのでは」。確かに転ばないよう、おっかなびっくり歩く人の姿を見かける。実際に搬送者の1割が駅の周辺での転倒というデータもある▼としたら、対策が求められる。函館は観光を標榜している都市であり、冬の誘致は長年の懸案事項。なのに、とりわけ観光客の通行が多い駅周辺が転倒しやすいとは。歩き方など注意をうながすことも必要だが、慣れていない人には簡単なことでない▼最も大事なことは、滑りやすい状態を排除することである。少なくとも観光にきて、滑ってけがをしたという人を出さないように。「函館の駅周辺は滑る心配はありません」。これこそ観光客に優しい、迎える心の一つ…そう難しく考えることではない。(A)


2月8日(水)

●ダンディーな二谷英明さんほど、たばこが似合う俳優はいなかった。「ALWAYS三丁目の夕日」の時代、羽田空港でポケットから缶ピース(50本入り)をとり出すCMに刺激されて喫煙を始めた…▼喫煙人口は年々減り、成人男子の3人に1人、男女合わせて4人に1人の割合で、ざっと2200万人。嫌煙権や受動喫煙、健康のため「全成人が禁煙すると平均寿命は男子で1・8年、女子で0・6年延びる」という推定も▼東日本大震災の復興財源として政府案に、たばこ増税(1本当たり2円)が盛り込まれた。2年前に値上げしたばかりなのに、今度は1箱700円になるのか、1000円になるのか…。愛煙家は一段とつらくなるが、災害復興のためなら…▼新銘柄はもう出ないと思っていたが、今月から「ザ・ピース」(20本入り)が発売。メタリック紺の平たい缶。価格は従来の約2倍の1箱1000円。昭和21年発売のピース(平和)のリニューアル。タールは10㍉で、缶をあけると芳しいバニラ臭が広がるという。こう書くと嫌煙家にお叱りを受けそう…▼「ニコチン中毒」という病気と認定され、がんをひき起こし「百害あって一利なし」と敬遠されるのは認める。厚労省は成人の喫煙率を現状の19・5%から4割減の12・2%にする計画。それでもヘビースモーカーの友人は「ザ・ピースも吸ってストレスを吹き飛ばす」と豪語している…。(M)


2月7日(火)

●〈格子戸をくぐりぬけ 見あげる夕焼けの空に〉 小柳ルミ子のヒット曲「わたしの城下町」には、特別なモデルはないという。「格子戸」は京都の家並みをイメージさせるが、ほかのまちでも通用する。城下町が多彩な表情を持つことの一つの証左である▼城下町は「諸侯の居城を中心として、まわりに発達した町」(岩波国語辞典)のこと。城自体は敵に攻め込まれた時の防衛拠点であり、堅牢な高層建造物をまず連想させる。名立たる戦国武将たちが躍動した時代には、それに合わせて城下町も栄えた▼31回目を数える「全国城下町シンポジウム」が、6月に函館市で開かれることが決まった。主催は66地域の青年会議所(JC)が加盟する全国城下町連絡協議会。地元では初開催となる▼函館の特別史跡五稜郭跡は国内では珍しい星形の城郭。建造時期も江戸時代末期と比較的新しい。このため「格子戸を—」という歌のイメージからは遠い半面、新旧が混在する独特な町並みが形成されるきっかけともなった。特異性のある地に全国の関係者が集う意義は大きい▼函館での大会テーマは「輝け! 五稜郭の星 未来へ繋(つな)ぐ開拓魂」。分科会では、城下町を核とした地域活性化や観光振興などについても語り合うという。若いJC会員ならではの斬新な発想が楽しみだ。市民が一緒にまちづくりについて考える、そんな機会にもしたい。(K)


2月6日(月)

●「ラクトバチルス・ブルガリスク OLL1073R—1」。これが何の正式名称か分かる人はかなりの情報通だ。略して「R—1」。乳酸菌の一種であり、これを含むヨーグルト商品がいま爆発的に売れている▼ブームになる前にこのヨーグルトを口にする機会があった。見た目も味も極めて普通だが、不思議と「インフルエンザの予防効果がある」という。テレビの情報番組で繰り返し紹介され、人気に火が付いた。以来、品薄状態が続き、函館市内でも入手することが難しい▼人気が高じて店頭から姿を消す商品はこれまでもあった。ただし、その多くは納豆やバナナといったたぐいの“ダイエット代用食品”であり、インフルエンザ対策として身近な商品が脚光を浴びるケースは珍しい。試す、試さないは人の自由だが、その効果に「科学・医学的な裏付けはない」という。何事も過信は禁物だ▼厳しい冬を象徴し、インフルエンザが全国で流行期に入った。今年はA香港型がそのほとんどを占め、2年ほど前に大流行した「新型」はごくわずか。函館・道南でも発症する患者が増え、関係機関が警戒を呼び掛けている▼インフルエンザ予防で専門家が口をそろえるのが手洗い、うがい、マスク着用の“三原則”。これを無視してブームの食品などに頼るのは本末転倒だ。まずは予防の基本を徹底する。その上でヨーグルトとのW効果があれば、それもいい。(K)


2月5日(日)

●今、講ずる手だてすらなく、困っている人がいたら、今、手を差し伸べる。それは政治の原点とも言えるが、現実はどうも鈍い。1月末から記録的な豪雪に見舞われた北陸から北の日本海側の地域…そこに悲鳴を上げている人たちがいる▼道路はふさがり、屋根には家を潰しかねないほどの雪。その量は平年の2倍から3倍、新潟や青森県では3メートルを超えている所も。除雪するにも、屋根の雪を降ろすにも、捨てる場所がない。出来るのは雪がやむのを祈り、じっと待つだけ▼「ともかく排雪を」。テレビから流れる映像が、そう語りかけている。高齢者世帯から伝わってくるのは「助けてほしい」という叫びであり、求められていたのは現地での作業行動。誰の目にも国の出番と映ったはずだが、対応はいつもの通りで▼そのさなかにあった国会議論…。野田総理の答弁からは、今、が欠けていた。「今年度の予備費や3月に配分する特別交付税の活用などを念頭におきながら、しっかり(対策を)講じていきたい」。現地の人は今、何とかしてほしい、と求めているはずなのに▼天候が回復して、気温が上がったら落雪や雪崩の心配がある。金の面倒は後からの話。早く排雪して、屋根の雪を降ろさなければ、二次災害を起こしかねない。市町村任せのレベルはすでに超えている。急ぎ現地対応を。今も、国の出動を待っている人たちがいる。(A)


2月4日(土)

●夢を買い続けて40余年。震災復興宝くじが当たって億万長者になった夢を見た…。福を呼ぶ宝くじが当たる確率は「上空から北海道に1円玉を落とし誰かの頭に当たる確率」というマニアも…▼1000万円以上の当選者に渡される冊子には「興奮状態にあるから、とにかく落ち着くこと」や「以前とかけ離れた言動をとれば、マイナスの結果につながる」などが書かれているという。かつて当選の噂が流れ、暴力団に巻き上げられたと聞く▼昨夏の東日本震災復興宝くじ(前後賞合わせて5000万円)に続いて、今月14日には前後賞合わせて1等5億円という「支援ジャンボ宝くじ」が発売される。賞金の上限額は1枚の販売金額の20万倍だが、震災復興のため例外措置が認められた▼さらにサッカーくじなどに押され、低迷する売り上げ回復に向けて、1等賞金の上限を250万倍に引き上げる改正案が今国会に出される。前後賞合わせて10億円を突破するのか、一獲千金の夢も1桁も2桁も膨らみそう…▼復興宝くじは阪神淡路大震災、新潟中越地震に続き今回で3例目。被災地の復興支援に投入される。節分の3日には縁起物の恵方巻きを丸かじりして、願い事を託した人も多かったのでは。今度は、人助けになると言い聞かせて「大震災支援ジャンボ」を買おう。マイナスの結果につながらないように、買わなきゃ当たらぬ宝くじ。(M)


2月3日(金)

●ギリシャ神話の不死身の英雄アキレスにも弱点があった。人体中最大の腱(けん)を有する、かかとである。アキレスはそこを射られて死んだ。よって致命的な弱点のことを「アキレス腱」と呼ぶ▼民主党政権にとってのアキレス腱は安保・防衛政策だ。以前から野党にやゆされながら、また沖縄問題でつまずいた。米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市の市長選(5日告示、12日投開票)で、防衛省沖縄防衛局の現職局長が職員らに投票を呼び掛ける講話をした▼政治的中立性が疑われる行為は許容できない—。野党からの一斉放火を浴びた田中防衛相は、同局長を更迭する方向で調整に入った。つい2カ月前には、前局長が普天間移設問題に絡む不適切発言で更迭されたばかり。まさにアキレス腱を無防備にさらす、綱渡り人事の連続である▼歴史をさかのぼれば、自民党政権もまた沖縄問題で失点を繰り返した。その一つが、沖縄返還協定に絡む外務省機密漏えい事件。この出来事は、テレビドラマにもなった山崎豊子の小説「運命の人」、澤地久枝のノンフィクション「密約」などの基になった▼アキレス腱はどの政党にもある。政権を握れば、そこを突かれるのは当然。分かってはいるが、政府のかじ取りが単なるドタバタ劇としか映らないのはなぜか。目先の些事にこだわり、かかとへの注意を怠ると、深い傷を負う。一度切った腱は元には戻らない。(K)


2月2日(木)

●覚悟はしていても、気まぐれな冬の天気には閉口させられる。まるで列島全体が冷凍庫の中に放り込まれたようだ。2月の声を聞いた途端、日本海側を中心に暴風雪に見舞われた。数日は大荒れの天気に警戒が必要という▼激しい雪と風は1日、道南を直撃した。列車の遅れや幹線道路の通行止めが相次ぎ、函館では今季初めて除雪の「ササラ電車」が出動。西部地区では身を縮めて歩く観光客の姿も目立った▼事故が起こるのは降雪時とは限らない。関係者は「むしろ雪がやんだ時が怖い」と注意を促す。降り積もった屋根の雪を下ろす際の事故も後を絶たない。雪に関係する事故(交通事故を除く)で亡くなった人は、1月31日までに全国で50人を超えた。このうち除雪作業中の事故によるものが9割近くを占めた▼同30日には知内町内の公営住宅で、屋根からの落雪に巻き込まれた女性が死亡した。屋根の雪を下から突いて落とす作業中だった。同じ公営住宅では、前日にも除雪作業中の重傷事故が起きている▼では、雪下ろしの事故はどう防いだらいいのか。命綱やヘルメットの着用に加え、複数で作業を行うことが望ましいという。“慣れ”には危険が潜む。こうした準備を「大げさ」と思わないことが肝心だ。やむを得ず一人で作業する場合は、隣近所に一声かけてほしい。その労力を惜しまないことが、自らの命を守ることにつながる。(K)


2月1日(水)

●児童会でも、生徒会でも書記がいて、会議を開くと、記録に残す。何時どこで、誰々が出席して、議題は何で、どんな報告内容があり、出された意見はこれこれ、そして決定事項は…。それは町会に始まり、企業など大人社会でも同じ▼記録がないとすれば、時間とともに、会議自体、議論自体がなかったことになりかねない。極端な話が、報告したしない、議論したしない、言った言わない、だって起こりうる。大事な議題になればなるほど、記録が持つ意味は大きくなる▼それが国政の場で欠けていた事態が表面化した。それも東日本大震災と原発事故の会議関連と言われては、驚きを通り越して開いた口が塞がらない。対応に謀殺されていたことは確かだろうが、だからと言って、議事録はありません、は通用しない▼これだけの歴史的大災害である。だからこそ必要不可欠なのに、と糾弾されて当然。例え拙さを認めたことを可としても、それで免責される性格の話ではない。なにせ15会議のうち、議事録を作成していたのは三分の一の5会議でしかなかったのだから▼しかも肝心の原子力災害、緊急災害対策本部などは議事概要さえ残していないという。国がどう対応したかの検証が必要になった時…そう考えると、歴史への背信行為とする指摘もあながち外れてはいない。「基本的なことなのに」。そんなため息すら聞こえてくる。(A)