平成24年9月


9月30日(日)

●58年前の1954(昭和29)年の9月26日、函館港内で台風15号による巨大海難事故が発生した。言わずと知れた青函連絡船の「洞爺丸事故」。命日の26日、北斗市七重浜で慰霊祭が開かれた▼死者・行方不明者は洞爺丸だけで1155人、同じ台風で沈没した貨物船、連絡船も合わせると1430人にも上る。戦争による爆撃を除くと、海難事故としてはタイタニック号沈没などに次ぐ世界3番目の規模という▼事故発生時はまだ生まれていなかったが、「洞爺丸」という名前はもちろん知っている。七重浜に遺体が打ち上げられた報道写真を見て、幼心に大きな恐怖を感じた記憶もある▼学生時代には帰省で何度も連絡船に乗った。特に冬は海が荒れることが多く、船が大きく揺れるたびに、頭の中に「洞爺丸」という名前が浮かび上がり、いい気持ちはしなかった▼事故当時、本道と本州を結ぶ唯一の「道」が青函航路。今は海路のほかに、青函トンネルがあるし、航空路も多地点と結ばれている。選択肢が増え、便利になったのは確かだが、交通機関に事故の危険はつきもの。「洞爺丸」の事故を風化させず、「安全第一」の教訓を徹底することが犠牲に報いる唯一の道になる。(T)


9月29日(土)

●プロ野球のペナントレースも、いよいよ残り10試合を切ってきた。セ・リーグは巨人が早々と優勝を決めたが、日ハムと西武がデッドヒートを続けるパ・リーグは、最終戦までもつれ込む可能性も出てきた▼一方で、来季の選手たちの去就が早くも取りざたされている。大リーグへの挑戦などの頼もしいニュースは歓迎すべきものだが、戦力外通告や引退などの話題からは、無念さや寂しさが伝わってくる▼1492試合フルイニング出場の世界記録を持つ阪神の金本知憲外野手(44)の引退発表に続き、同じく阪神の城島健司捕手も現役を退くことを決断。まだ36歳の城島だが、昨年の右ひじじん帯損傷などが選手生命を縮めてしまったようだ▼その一方で、現役最年長、47歳の中日の山本昌投手が来期も現役でプレーすることを宣言した。「KOされたら引退するつもりだった」という9月8日の対阪神戦に先発し、5回1/3を5安打無失点と結果を残しての納得の決断だった▼首脳陣からも「大事な戦力」と評価されており、中年世代にとってはまさに希望の星的存在。CSシリーズでの先発も予想され、強敵・巨人に立ち向かう最年長投手の雄姿を目に焼き付けたい。(U)


9月28日(金)

●ギリシャ神話の「プロメテウスの火」。プロメテウスが天界から火を盗んで人間に与えたお陰で文明を発展させることができた。「原子力の火」は現代版「プロメテウスの火」だろうか▼自民党総裁選では領土問題で勇ましい発言が飛び交ったが、原発問題になると「ゼロは無責任」という程度で盛り上がりを欠いた。民主党も「30年代に原発稼動ゼロ」の閣議決定を朝令暮改で見送った▼それに「放射能を浴びた土の表面を取り除いて、山のように(校庭の)隅に置いている。それを運ぶところは福島原発の第1サティアンしかない」という自民党の石原伸晃幹事長の発言(TBS番組)に耳を疑った▼サティアン(サンスクリット語で「真理」)は、オウム真理教がサリンを製造した施設の名称。原発事故の汚染土を埋め立てて保管する中間貯蔵施設の候補地の一つに挙がっているが…▼こんな無神経な発言は当然、「オウム真理教を連想させ、被災者の感情を逆なでする表現」と抗議殺到。石原氏は「単なる勘違いだった」と釈明しているが…。「放射能をつけちゃうぞ」とすり寄って大臣を辞めた議員もいた。「プロメテウスの火」を扱う政治家の資質が問われる。(M)


9月27日(木)

●自民党の新総裁が決まった。正規の党内手続きを経て。それにとやかく言うつもりはないが、ちょっと違和感を覚えた一人。というのも、党員と国会議員の意思がかみ合わない結果だったから▼選出されたのは党員票で過半数を超す、大差の支持を得た候補ではなかった。それが違和感のもと。「民意」は政治家の常套(じょうとう)句だが、限定された中でのこととはいえ、党員投票も一つの民意と考えられなくもない▼党意と言った方がしっくりくるのかもしれないが、議員の意思との間に、これほどの開きが出てくると…。投票した議員が事前に解(わか)った党意(党員投票結果)をどう認識し、決選投票に臨んだか問いたくもなる▼それでなくても政治不信は高まるばかり。先の国会が助長させた感が無きにしもあらずだが、その中で自民党総裁選が注目されたのは、衆院の解散総選挙を控え、結果次第で第一党になる可能性もあるから▼そのために不可欠なのが民意の把握。国政で実績のない日本維新の会の支持率が高いのは民意に敏感だから。その比較で総裁選の結果を振り返ると、党意とのねじれ結果が頭をもたげて、離れない。党員票が僅差だったのなら理解のしようもあるのだが。(A)


9月26日(水)

●確かに実感する。読めるのだから忘れた訳ではないのだろうが、書くとなったら、これで良かったか、と戸惑うことが多々。漢字が書けなくなっている。自分だけかと思っていたら、そうでもないらしい▼文書を書くことを仕事にしていると、漢字は大きな意味を持つ。だから辞書やハンドブックは欠かせない。長かったそんな時代が様変わりしたのは、パソコンなどの文書入力機器が登場してから▼分からなかったり、迷ったりした場合でも、機器の方が教えてくれる。感覚的に「この字」と察しはつくから探すだけ。それまでは辞書などで探した後、書くという作業があったが、それも必要ない。書かないから忘れる▼単に一部の業界だけの話でなく、一般的な現象のよう。手書きが極端に減っている。通信もメール全盛時代、手紙やはがきからも文字に関する限り個性が消えた。誰の筆跡かすら分からない▼文化庁が行った国語力調査で「漢字を正確に書く力が衰えたと感じる」と答えた人が66・5%。社会人年代では70%を超えていたという。国語の危機と言うには少々大げさだが、このままいくと…時々でいい、手書きを試みるのは一考かもしれない。(A)


9月25日(火)

●介護保険法が施行されて15年が経つ。だが、細かい制度の中身などは知っているようで知らない。基本的な知識の被保険者になる年齢すらも。まさか「65歳」とは…臥牛子も知らなかった一人▼介護保険誕生には、そこに至るまでの歴史がある。端的に言うと、かつての老人福祉法や老人保健法が制度破たんした後の後継制度。高齢化時代の抜本的な制度として動き出したのは1997年である▼コンセプトは「みんなで支える」。保険料を払い、症状にあった必要な介護サービスを受ける。そのための介護施設が急速に増えている。それだけ需要があるということだが、いずれお世話になるのかな、と思いつつも…▼介護保険被保険者証が送られてきて実感する。65歳と言えば、定年となって、年金を受給する年齢ながら、今の時代は、まだまだ現役。だから受け取ると複雑な気持ちにかられるらしい▼返送を求められる元気生活チェックリストに接しては特に。そこには「一人で外出していますか」「イスからつかまらずに立てますか」などの質問項目が。これが65歳の人に聞く内容だろうかとも思うが、それはそれ。介護保険を認識するきっかけと思えば怒ることもない。(A)


9月24日(月)

●♪マンジューシャカ 恋する女は…罪作り 命すべてをもやし尽くすの〜 かつて山口百恵さんが歌った「曼珠紗華」。今年は記録的な猛暑が開花を遅らせている。25日は秋の彼岸明け▼サンスクリット語でマンジューシャカは「天界に咲く花」。墓地などに植えられるため「死人花」「地獄花」「幽霊花」、毒があるため「毒花」「痺れ花」、花の姿から「天蓋花」「狐の松明」など、見るからに妖しい花に多くの呼び名がある▼花が終わって葉が出る。花のある時期に葉はなく、葉のある時期に花がないことから「葉見ず花見ず」とも呼ぶ。花言葉は「悲しい思い出」で、彼岸に手を合わせると悲しみがよみがえる▼昔、中国大陸から渡ってきた。仏教では時空の分かれ目に咲き、めでたいことが起こる兆しに赤い花が天から降ってくるという。澱粉を含んでおり、食用にもなり、かつて飢餓に備えて植えたようだ▼尖閣諸島へ中国から1000隻の大船団が向かうと聞いて“赤壁の戦い”がよぎった。この時期、中国では一族が集まり月餅を食べながら月見をする。お互いに“罪作り”はやめて、十五夜に健康を願いたい。政界からも秋風が吹く。混迷からの脱却を願う「悲願花」を咲かせよう。(M)


9月23日(日)

●バブル崩壊以降、下がり続ける土地の価格に若干の落ち着きが見え始めた。7月1日現在の基準地価で、全国平均の下落率は、住宅地が2・5%、商業地は3・1%。ともに前年より下げ幅が縮小している▼函館市の住宅地、商業地も3〜4%台の下落率だが、郊外の住宅地では下げ幅が縮小傾向という。「下げ止まり感はないが、今後、大幅な下落とはならないのではないか」と市内の不動産鑑定士は語る▼土地の下落に歯止めが掛からないと、まだ下がる、との見通しから土地取引が進まない。住宅着工や投資、関連する消費も手控えられ、経済はさらに冷え込む。だから下落が続いた土地には底打ちや上昇が望まれる。その期待を担うのが商業施設の開業や再開発だ▼東京スカイツリーが開業した東京・墨田区では、近隣の土地が9・8%も上昇した。商業地で全国2位の上昇率となり、集客施設の開業が地価を押し上げたケースだ▼函館も駅前地区や本町地区などの中心市街地で、商業ビル建て替えなどの再開発計画がある。3年後には新幹線の開業もある。実体以上のバブルはいらないが、土地取引の活性は必要だ。地域経済が上向くような土地価格の安定を願う。(P)


9月22日(土)

●長年続いた「紙と鉛筆の時代」が「ワープロの時代」となり、あっという間に「パソコンの時代」に。こうも変わるか、というほど飛躍的な変化だが、デジタル機器は今や生活の必需品▼日本語のワープロが誕生したのは、1979(昭和54)年のこと。東芝の「JW—10」。前年の9月26日に東芝が発表し、この年の2月に発売された。価格は何と630万円だったという。わずか33年前の話である▼その後、機能アップした新機種が次々登場して普及、価格も下がった。とはいえ、20年ほど前に在籍した新聞社で導入に携わった際の記憶からすると、かなりの投資だった。その「ワープロ時代」は短期間で終わる▼情報通信の進歩と相まった「パソコン時代」が到来。ワープロとは、有する機能が桁外れに違う。それも年々進化して企業の経営、生産ばかりか、社会生活面にも深く浸透。パソコン1台あれば…▼通信はできる、情報はとれる、買い物はできる…ワープロが登場した時、抵抗した団塊世代にも違和感がない。まさしくデジタル革命だが、その意識原点はワープロ。つい最近「ワープロの日」(9月26日)があったのを知った。初めて触った時の感触が何とも懐かしい。(A)


9月21日(金)

●テレビ局がゴールデンタイムに3時間の特別番組を放送するには、充実したキャストと内容が要求される。国民的アイドルのAKB48を主役にすれば、キャストの問題はクリア。しかしその内容が「じゃんけん大会」となれば、「いくらAKBでも視聴率が取れるのか?」という疑問が沸く▼彼女たちの人気を押し上げたのが、ファンの投票で序列を決める「選抜総選挙」というイベント。一方、じゃんけん選抜という試みは、運に左右されるギャンブル的要素が受けている▼それを当て込んで、今回の3時間放送を決断したと思われるが、案の定、視聴率は10%に届かず国民的アイドルとしては期待はずれに終わった▼ただ、翌日のスポーツ新聞がこの話題を1面で取り上げていたのには驚いた。激しい優勝争いを繰り広げているプロ野球も、じゃんけんの前には形無しだった▼「中国との緊張状況の中で、アイドルのお祭り騒ぎを放送するなんて不謹慎だ」との声も挙がる。しかし娯楽の王道であるテレビが、話題のイベントを取り上げることに何の問題もない。むしろ近い将来、本当に有事が起こり「あんな平和な時代もあったなあ」などと懐かしむ状況になるのが怖い。(U)


9月20日(木)

●今の時代、売り込みに欠かせないのがキャッチフレーズ。新商品の発売ではネーミングが鍵を握るとされるが、幅広く広告や宣伝の決め手となるのがキャッチコピーとも言われるアピール表現▼辞書はこう解説している。「感覚に訴え、強い印象を与えるよう工夫された文句」。端的に言うと「うたい文句」。流行語にでもなれば万々歳だが、いかに知ってもらうか、覚えてもらうか…その大事な要素はインパクト▼函館市の観光客誘致キャンペーンの新たなキャッチフレーズが決まった。「まっすぐ!函館」。そして副題が「近くなる。好きになる。」。3年後の新幹線開業を控え、東京と乗り換えなしで結ばれる速度感…▼「来て下さい」という思いも伝わってくる。この2年間使ったのは「いか。ないと。函館」だった。イカのまちで、夜景のまち、だから「行かないと」と。分かるが、捻(ひね)り過ぎというか、言葉遊びに過ぎた感がなきにしもあらず▼その点、新キャッチフレーズは、本紙が見出しでうたったように直球勝負。「まっすぐ」の4文字がインパクトを放つ。問題は「まっすぐ」をどうアピールしていくか。欲しいのは市民の意識。口コミで伝えていきたい「まっすぐ!函館」を、広く。(A)


9月19日(水)

●函館の18日の最高気温は32・6度で、今年最も高く、真夏日の最遅記録も更新した。「今夏」と書けない時期の猛暑は、さすがに異常と言いたくなる▼宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用している水循環変動観測衛星「しずく」が、北極海の海氷面積が史上最少になったことを確認した。地球温暖化は確実に進行していて、それが「異常残暑」と根っこでは関係がありそうだ▼昨年の東日本大震災で、温暖化対策は一時的に足踏みした。原発停止で火力発電所をフル稼働したので、温暖化ガスの排出は大幅に増えたが、日本全体で節電、省エネが進んだのでトータルの増減はどうだったのだろうか▼台風、大雨など気象災害の大型化も温暖化と無縁ではない。対策は地球全体の難題だが、やってできないことはない。一つの先例は1987年からのフロンガス使用規制。国連は14日、「南極のオゾン層に回復の兆しがある」と発表した▼温暖化はオゾンより複雑な問題。一律禁止ができず、対策は遅々として進まない。「残暑」ですまない事態になる前に、温暖化対策を軌道に乗せなければ…。近年の異常気象を見る限り「のど元過ぎれば」でやり過ごせる問題ではなさそうだ。(T)


9月18日(火)

●いちじく、にんじん、さんしょに〜 低学年に教える“かずかぞえうた”。給食でニンジンを食べない子が多い。「ニンジン好きだなんて、馬じゃないの」「ピーマン食べるの、バッタじゃないの」…▼今月は給食月間。19日は「給食の日」。7年前に制定され、特に子供には給食の時間などで「健康を維持するためにバランスのよい食事をおろそかにしてはいけない」と教えている▼ある市では毎月19日を「わ食の日」と決めて、和、輪、環の字を当て、和食を見直し、輪になって食卓を囲む。学校と家庭で「3つの和食」を実践。先生も親も「食が体を命をつくるのだよ」と教えているという▼「健全な食生活を実践する人間を育てる」「栄養バランスのとれた食生活」「食の安全に対する意識を高める」—食生活の定義だが、農家や生産者に対する「感謝の気持ち」を持つように育てなければならない▼「人」に「良い」と書いて「食」。元気に学校に行けるのも食のおかげ。冒頭のように「あんた馬じゃないの」などと、からかうのは度が過ぎると「いじめ」になる。アレルギーを持つ人に無理やり食べさせてはいけないけど、楽しく食卓を囲む「共食」が大事。(M)


9月17日(月)

●福島空港に15日、昨年の東日本大震災以降初めての外国チャーター機が到着した。出発地は韓国。竹島問題でギスギスした関係にあった韓国から「再開第1便」が来たことに、とても温かい気持ちになった▼最近の日本周辺では領有権問題が噴出している。韓国とは竹島問題。首相親書を韓国側が送り返すなど一時は険悪な状況になった。韓流ドラマやK—POPのブームにも冷や水を浴びせた▼中国とは尖閣諸島。日本の国有化を受けて、中国では今、反日デモが頻発中だ。現地では多くの日系企業が工場や店舗を運営している。冷静さを欠いた暴徒は両国の関係を危うくする▼1980年代には、フォークランド(マルビナス)諸島の領有権をめぐってイギリスとアルゼンチンが3カ月にわたって戦った。両国合わせて2700人が死傷した。一説では、当時のアルゼンチン軍事政権が民衆の不満をそらすために領有権問題に目を向けさせたとの見方もある▼国と国がぎくしゃくしたとき、大事なのは民間の交流。中国にも韓国にも、もちろん日本にも、相手国に敬意を持ちつつ友好関係を永続させたいと考えている人はたくさんいる。小さな交流を絶やさず積み重ねることが今こそ大切ではないか。(T)


9月16日(日)

●かつて食糧や石炭、兵隊も運んだ青函連絡船。物資輸送の大動脈で、これを断つことは、国の生命線を切ること。だから米軍は連絡船や国鉄函館駅、函館ドックなどを空襲した▼青函の往来風景の主役は船から鉄道に代わったが、貨物輸送が生活や経済を支えている現実は変わらない。JR江差線の貨物脱線事故で、海峡を結ぶ鉄路は3日間、寸断された▼運休による旅客の影響人員は1万6500人。列車通学の生徒が多い上磯高校は、下校時間を早めた。観光客は飛行機やフェリーに切り替え。物流も混乱し、農作物の出荷を鉄道から海上輸送に変更したケースも。ただでさえ首都圏より発売日が遅い雑誌や週刊誌の入荷も滞った▼運輸安全委員会の調査が始まったばかりだが、4月の貨物脱線と同じ場所で事故が起きていることは、ただの偶然とは思えない。道民の不信感も広がっており、あらゆる可能性から原因を究明し、対策を講じてほしい▼世界に誇る新幹線は、1964年の開業以来、死亡事故がない。百点の運行は1件の事故でゼロにもなる。海峡の鉄路には3年後、新幹線が走る。相当な覚悟を持って、本州からの無事故の記録を続けなければならない。(P)


9月15日(土)

●白菜の浅漬けを嫌いな人は少ない。「塩分は3%まで」…ブログでも作り方を紹介。浅漬けに目がない知人は炊き立てのご飯に白菜を乗せ、玉子かけの“浅漬け丼”を食べている▼白菜の浅漬けを食べて病原性大腸菌O157による集団食中毒。高齢者施設などで7人が死亡。生野菜の洗浄に使う塩素溶液の濃度など具体的に決められておらず、水洗いだけで、殺菌していないことが原因のようだ▼道の浅漬け製造施設の立ち入り検査でも大半が消毒していないことが分かり、業者は「水洗いをすれば大丈夫だと思った」「(消毒すれば)浅漬けの風味が損なわれる」と話し、食感もよくないと加熱もされていない▼白菜を水洗いする前に同じ水槽で別の浅漬け用のキャベツも大量に消毒していたという。一連の食中毒で白菜の値段は25%も下落。道などは漬物需要回復キャンペーンを展開、道産の白菜や漬物の安全性をアピール▼基本的には塩分が低いと菌が繁殖する。徹底的に水洗いし、消毒液で殺菌し、消費期限もがっちり規定することが大事。高齢者や子どもは要注意。“浅漬け丼”も気をつけて。生レバーのように販売禁止までとは言わないが…。(M)


9月14日(金)

●米アップル社が13日、スマートフォン(多機能携帯電話)の新製品「アイフォーン5」を発表した。発売は21日。米金融大手のJPモルガン・チェースのエコノミストは、このスマホが米GDPを0・25〜0・5ポイント押し上げると予測する▼たかがスマホの新モデルが超大国の経済を動かすとは…。大学時代、社会学の教科書として読んだ「第3の波」(アルビン・トフラー)の世界が現実化したことを改めて痛感した▼トフラーによると、第1の波は農業革命で1万5000年ほど前からの農耕の確立。第2は産業革命。工業化により大量生産、大量流通、マスメディアが発展した。そして、第3は「脱産業化」で、キーワードは「情報化」だった▼発表された1980年代にはパソコンが普及しておらず、携帯電話も一般化していない。当時は本を読んでいても、近未来の姿がピンと来なかった。だが、現在の情報化やグローバル化はそのころに予見されていた▼トフラーは宇宙開発の生み出す富が現代の転換点になると「SF的」な“予言”している。携帯だって30年前はSF的だった。10年後に何が社会を動かしていくのか—。想像を超えた未来が展開されても不思議ではない。(T)


9月13日(木)

●大型量販店の台頭の前に、小売店は立ち行かず、小回りが利く身近な店が減っている。今に始まった現象ではないが、日常生活の中で問題を抱えると、改めて分かることが。「助けはどこへ」▼私事で恐縮だが、一つの例として…。つい先日、我が家で部屋の蛍光灯が突如、点灯しなくなった。壁のスイッチは通常音であり、蛍光管が切れたのだろうと換えても点かない。門外漢にとってはお手上げ…▼もはや業者に頼むしかない。ところが、頼める電器屋さんが思い浮かんでこない。大型量販店に問うも、そうしたサービスはない、とそっけない。仕方なく電話帳で探すはめに。高齢者世帯なら困り果てるに違いない▼かつての時代、どこの街にも、地域にも電器屋さんがあった。普段から付き合いがあり、困ったことがあれば電話一本で飛んできてくれた。直面して分かっても遅いのだが、これも大量消費、使い捨ての風潮に乗った一つのつけ▼ここ数年、そこに気づき始めた動きがある。スーパーなどの宅配も、修理など何でも請け負う便利屋さんが商売になっているのは、その表れ。高齢化社会を加速している。となれば「身近かな」「小回りが効く」は、今後さらに意味を持ってくる。(A)


9月12日(水)

●がん(癌)の死亡率は高い。2年前の統計(国立がん研究センター)で、北海道は全国で5番目に死亡率が高いと報告されている。それは検診の受診率が低いことの裏返し。実際に低い▼定かではないが、日本人の半数はがんに罹(かか)るという説がある。罹ったら最後、と受け止められた時代が長かったが、医学と医療機器・技術が進歩した今は…早期に発見できれば不治の病ではなくなっている▼ただ死因別死亡率は他の病気に比べて高いことは事実であり、なお30%ほど。だから対策が必要なわけで、その鍵を握るのが定期的な受診。男性では胃、肺、大腸がん、女性はそれに乳がん、子宮がんを加えて▼そのための体制はとられている。北海道だけが例外なわけはないのだが、残念ながら実態は全国平均を下回るレベル。男女の平均で胃は27%、大腸が22%、肺が19%。厚労省が掲げる受診率50%の目標にはほど遠い▼このままでは…北海道は今年4月、北海道がん対策推進条例を施行させた。そして9、10月の2カ月間を「北海道がん征圧・がん検診受診促進月間」と定め、現在、全道的に啓蒙行事を展開中。「がん対策は受診から」。ほかでもない自分のため、そして家族のために。(A)


9月11日(火)

●波間に低く鴎(かもめ)飛び…誰が唄うか追分の〜 ニシン漁や北前船による交易とヒノキ材で繁栄した江差。江差駅に降りると、全国の「美しい夕日」リスト上位のパノラマが広がる▼50年前、駆け出し記者のころ、江差線のルポで「青函トンネルができたら、松前から江差へ、さらに瀬棚へ、福島から長万部への3つの新路線が考えられる。檜山は屈指の観光地になる」と書いた(毎日新聞社編「日本の鉄道」)▼52年前にはローカル線では初の函館—江差間ノンストップの準急「えさし」が走った。京都の学校へ行く時、乗車券を利用して手荷物が送れるチッキがあり助かった。布団袋に本や衣類も詰め込んで…▼3つの新路線どころか、江差線そのものが14年度頭に77年の歴史に幕を降ろす。先ほど、JR北海道が「路線設備などの老朽化により、今後、ばく大な経費が必要で維持は困難」と沿線3町の首長に廃止を宣言した▼営業収入に対して20倍以上の経費がかかる赤字路線。3首長は「反対、賛成は議会や町民の声を聞いてから」としているが、観光に力を入れている江差などは大打撃。郷愁だけで廃止反対とは言わないが、蝦夷興亡の歴史を秘めた沿線を走る鉄道には夢がある。(M)


9月9日(日)

●日ハムの中田翔選手が、7日に今季19本目となる本塁打を放ち、昨年の自己記録を更新した。打率は相変わらず2割台前半の低空飛行だが、8月以降だけみると3割3分と、着実にチームの主軸として成長している▼就任1年目の栗山英樹監督が特に期待を寄せていたのは、斎藤祐樹投手と中田だった。斎藤は、初の開幕投手の役割をこなすと、その後も勝ち星を重ね、5月4日の時点で4勝1敗、防御率1・84。プロ2年目にしてエースの貫禄も漂い始めていた▼一方、プロ4年目の中田翔は、4番の大役を任されながら、開幕から24打席ノーヒットの絶不調。その後も浮上の兆しは見えず、2割前後の打率をいったりきたりの状態。それでも栗山監督は彼を4番から外そうとしなかった▼それから4か月。西武と激しい首位争いを繰り広げている日本ハムの1軍に斎藤の姿はない。一方の中田は、苦しみながらもその潜在能力の高さの片鱗(へんりん)を見せ始めている▼現時点では栗山監督の期待を裏切った形の斎藤と、ようやく4番らしさが出てきた中田とが明暗を分ける形になっているが、この二人がそろって真の実力を花咲かせた時こそ、日ハムの黄金時代が幕を開ける。(U)


9月8日(土)

●先日、福岡市の「カワイイ区」に大きな反響があると書いたが、川崎市のドラえもん住民登録はもっとすごい。市のホームページ(HP)へのアクセスが2日で100万を超えたという▼函館新聞など道内9新聞社が共同運営する「北海道ニュースリンク」のページビュー(PV)は年に140万。先の2市の足元にも及ばないが、訪問者は2009年の開設からほぼ一貫して増加中だ▼検索サイトのサービスでページ閲覧の状況を調べてみると、8月は「GLAYコンサートに合わせ緑の島暫定整備へ」(20日)が約4000PVで函館関係のトップ。2番目も「GLAYが来夏凱旋野外ライブ」(7月31日)だった▼記事の反響が数字で分かるほか、閲覧市町村や経由サイトも分析できる。開設直後に函館のゴライアスクレーン記事のPVが急伸した。調べてみると、万単位の訪問者は全国各地に散らばっており、函館の「全国区」ぶりを再確認した▼HPは不特定多数に一方的に情報を伝達する手段と考えがちだが、このサービスを使えば、ほぼリアルタイムで“顧客”の動向がつかめ、即時に対策を打てる。HPを作ったあとの管理こそが大事なのだと痛感している。(T)


9月7日(金)

●絶滅の恐れのある野生生物をまとめた環境省の「レッドリスト」の見直しで、ニホンカワウソが絶滅種に指定された。高知県の川で1979年に確認されたのが最後。目撃情報が長期間ないことから、絶滅と判断した▼イタチ科の哺乳類で、かつては北海道から九州まで、広い範囲で生息していた。絶滅の原因となったのは乱獲。毛皮目当てに大正から昭和にかけて次々と狙われた▼わが国ではトキやコウノトリも野生種が絶滅している。トキは中国から移入されて繁殖に成功し、再び自然界に戻す試みが続けられている。乱獲や乱開発が招いた悲劇だが、それを再び人間の手で回復させようとしている▼絶滅種が自然界で生きていたケースもある。70年前に絶滅したと思われていた秋田県・田沢湖のクニマスは、2010年に山梨県・西湖で確認された。戦前に田沢湖から運ばれた卵が命をつないでいた▼移植や繁殖で、トキやクニマスの種は守られた。ただ、本来、種を守るということは、その動植物が生息する自然環境を保全していくことが先になければならない。なくなった動植物に自然破壊や乱獲をわびたい。そして願う。ニホンカワウソもどこかで生き残っていて、と。(P)


9月6日(木)

●ドラえもんは100年後の今月に誕生したという設定。22世紀からタイムマシンで現代へ。ひみつの道具に「ポータブル国会」がある。国会議事堂の形で自分の考えた法律を入れると全国で施行される▼先日に続いて国会の話。赤字国債を発行するための特例公債法案の今国会成立が難しくなり、来月末に底を突く恐れが出てきた。今年度予算の4割強に当たる38兆3000億円分の財源を赤字国債で賄う予定だった▼ない袖は振れず、予算執行を初めて抑制。まず4日に配分する予定だった約4兆円の地方交付税の一部を先送り。地方自治体は「交付税が滞れば行政サービスに影響が出る」(高橋はるみ知事)と反発▼庁舎運営費、出張旅費などの行政経費、国立大や独立行政法人の交付金も半減。政党交付金や国会議員歳費にもメスを入れよ。政治家も痛みを負ってこそ「究極の行政改革」と言える。国民は消費税アップなど受け入れた▼ドラえもんの「ポータブル国会」は特定の人に有利な法律を入れると自爆する。首相への問責決議からシャッター国会。国民に背を向けて党利党略の選挙に走る。ドラえもんが「決められない政治に終止符を打て」と叫びそうだ。(M)


9月5日(水)

●国会はどこへいったか、永田町の関心事は民主、自民の代表、総裁選に。会期は残っているのに党利党略で国民生活そっちのけ。これでは世論調査で大阪維新の会が比例投票でトップになるのも当たり前▼予算は成立させておきながら、その執行の前提となる特例公債法案を解散要求の人質にして…。最終的に同意しないのならともかく、そうでもないのだから不可解。責任を感じている姿勢もない▼道府県への地方交付金など、結果として予算執行を抑制せざるを得ない事態に。つけは地方に、民間に、という問題だけに、知らん顔などできる話でない。政府・民主党は政党交付金も支出凍結の対象に上げた▼野党への牽制といった論評もあるが、その背景はどうでもいいこと。本来ならば政党自ら受領の先送りを申し出ておかしくない。国民一人当たり年250円負担し、一年に300億円を超える金額にもなるのだから▼年4回の交付で、当面は10月交付分だが、各党とも反対はできまい。それでなくとも既成政党に向けられている目は厳しく、選挙に影響しかねないから。いわば自らまいた種である。できれば「議員歳費の凍結も」と願いたいところだが。(A)


9月4日(火)

●車で旅行する際、利用することの多い「道の駅」。トイレを使用し、食事や買い物をし、休憩するには願ったりの施設。道内には登録済みだけで114カ所あり、うち道南には森や恵山など12カ所▼今でこそ当たり前の存在だが、その歴史はまだ20年ほど。諸説があるが、1990年に広島市で開かれた地域づくり交流会での提案をきっかけに、広島や栃木県などで社会実験されたのは翌年…▼駐車帯やトイレがあるというだけという時代が長かった。比較するまでもないが、「道の駅」はトイレも清潔で、休憩施設としての機能を備えている。さらに特産品販売などによる地域活性や周辺案内の情報提供機能も▼地域色ある飲食のほか、特産品に加え、今の時期は新鮮な農産物や水産物などが格安で並んでいる。だから寄りたくもなるのだが、それは休息をもたらし、ひいては事故防止にもつながる▼その点で、物足りないのが高速道路のサービスエリア。交通量の問題もあるだろうから、本州の主要路線のレベルを求めはしないが、せめて「道の駅」を上回る規模ぐらいは。それは安全運転対策、魅力づくりであり、利用をうながす術…難しいことなのだろうか。(A)


9月3日(月)

●福岡市が8番目の行政区として設けた「カワイイ区」が注目を集めている。地図上にはない。インターネット上のバーチャルな「区」だ▼普通の市のホームページ(HP)の一角に、場違いな感じの「カワイイ区」入り口がある。区長に任命された篠田麻里子さん(AKB48)が目を引く。ファンならずともクリックしてみたくなる▼HPで登録すると誰でも区民になれる。その区民は現在急増中で、8月29日の設置から6時間後に1万人、3日後の31日に2万人を突破。タレントの知名度もあるのだろうが、反響は上々▼中味をみると、これがなかなか面白い。市のHPとは装いを異にするピンク基調のポップなつくり。区長のあいさつにも遊び心がある。「区の概要」は即ち「市のPR」で、「カワイくする仕事(美容業)の従事者が大都市では一番多い」「カワイイ(被服・履物)にかける1世帯当たりの年間支出額が大都市で一番多い」など福岡の意外な特徴がきちんと説明されている▼バーチャルだが、マチの魅力を知ってもらうには十分。観光や若者の定住など“リアル”な世界に訴えかける効果が期待できるだろう。行政らしからぬ柔軟な発想に感心した。(T)


9月2日(日)

●今さら気づいたわけではない。頭の中では解っていた。でも、一抹の期待を捨て切れないでいたが、もはや…。呆れるレベルを通り越している。と言えば、何の話か、誰もが同じ答えを出すに違いない▼そう、我が国の政治。というより、その政治を動かしている政治家である。大政党は党利党略に走り、議員の頭の中にあるのは自分の選挙…重要な法案があろうと、外交に問題があろうと▼政権を担う、それは政党の最大目標だが、その大前提は国民の支持。政策や議論で存在感を示す大事な部分は埋もれ、法案を人質にした駆け引きばかりでは…実際に今国会の法案成立は過去最低という▼首相の問責決議がされようが、されまいが、衆院の解散総選挙は時間の問題なのに、残る会期を無駄に。そこにあるのは政党の面子だけ。法案を処理し、議員定数の削減を実現させた上ならまだしも、それもない▼ここぞとばかり動いたのは、あの大阪維新の会。衆院の議員定数の半減を打ち出した。民意の反映に支障が出るという既成政党の言い訳が虚(むな)しいことは、政治家の姿が正直に語っているのに。違うと言うなら、残る会期、法案を一つでも多く成立させることである。(A)


9月1日(土)

●お盆が過ぎ100年ぶりに真夏日が続いた残暑のなか、9月入り。「一人暮らしを癒やしてくれるけど、この子(ネコ)は暑がりで…」と冷感アイテムを入れた服を着せて散歩させていた…▼福島町の水産加工の売店で人気の雄5歳の「天(てん)」が取締役広報部長に昇進。天井裏でか細く鳴いているのを保護、懸命に育てた。今では毎日、人懐っこく店番に精を出し、招き猫として店を盛り立てている▼宮津市の駐在所には「ネコ巡査」がいる。倉庫脇に生み捨てられていたのを若い巡査が引き取って、一緒に地域の高齢者宅をパトロールしている。奥さん手作りの制服を着る姿が愛らしく人気上昇▼多発する振り込め詐欺防止のPRにもなっているとか。また、和歌山電鉄の「たま駅長」は赤字で廃線寸前だったローカル線をなんと人気スポットに押し上げた。ネコは不可思議なパワーを持っている▼人には見えない悪事に目を光らせている。日光東照宮の「眠り猫」は眠っていると見せかけ、いつでも飛びかかる姿勢。ひこにゃん、ドラえもん、キティちゃん…活躍するネコが頼もしい。シャッターを降ろした国会。国民無視の無責任な先生たちは「猫の手も借りたい」かも…。(M)