平成25年5月


5月31日(金)

●道南近海のマイカ(スルメイカ)漁が6月から解禁され、また活きのいいイカ刺しが食べられる。そのイカが海中からジャンプし、30㍍も飛行したというから、朝ドラのあまちゃんも「じぇじぇじぇ」▼北大大学院生らのグループが2年前の夏、東京の東方沖600㌔で、海中から飛び出す約100匹のイカの群れを撮影。アカイカかトビイカとみられる。飛び出し、噴射、滑空、着水の4段階▼ヒレを胴体に巻き付け、腕も畳んで水の抵抗を受けにくくし、墨をはく口から水を噴射、空中で加速。ヒレや保護膜も広げて翼の形に。水面から2、3㍍の上、時速は約40㌔。スルメイカも飛ぶ可能性はあるという▼別の研究グループは22年前に羅臼沖で発見された体長1㍍の抱卵イカは「ササキテカギイカ」であることを突き止めた。足に黒い膜状の卵塊が付いており、世界に2例だけ。普通は岩場や海中で卵を産むのに、大きな抱卵にイカール星人も「じぇじぇじぇ」▼今期は来遊量も漁体も平年並みとか。ただ、円安による燃料価格の高騰が影を落としている。「燃料のアップ分を補うほどの大漁」を祈願。“編隊飛行”で津軽海峡を飛んで来てほしい。3日の初水揚げが待ち遠しい。(M)


5月30日(木)

●入湯税は聞いたことがあるが、恥ずかしながら入島税は初耳。沖縄の三つの離島では数年前から採り入れているとのこと。それが一つの参考になったのだろう、奥尻町が検討を始めようとしている▼悪夢の北海道南西沖地震から20年。何とか復興を果たし、特に夏場の食観光の人気は高い。とはいえ、訪れる観光客は減少気味で、2003(平成15)年度の5万8千人から、近年は約3万人レベル。このままでは…▼対策を講じなければならない。観光振興の一方で、自然環境の保全策も求められる。そのための財源をどう確保するか、事例は沖縄にあった。島に入る人からその都度、一定金額を徴収する入島税である▼先陣を切ったのは伊是名島で、2005(平成17)年4月から。その後、伊平屋島(08年7月から)、慶良間島(11年4月から)が。反対運動が起きたという話も聞こえてもこなかった▼ただ、この税の新設には町民の理解が不可欠。低額であっても、徴収対象が町民や里帰りの人にも及ぶためだが、大事なことは、この財源でどんな振興策を進めるかという具体策。奥尻町は検討段階であり、最終判断もさることながら、今後の町内議論が注目される。(A)


5月29日(水)

●文部科学省の有識者会議が運動部指導に関するガイドライン(指針)をまとめた。スポーツ指導での体罰は「フェアプレーの精神、ルール遵守(じゅんしゅ)を前提として行われるスポーツと相いれない」と明記した▼大阪の高校生が自殺した事件を機に、スポーツと体罰が改めて論議された。指針では「許されない指導」の例として、「殴る、蹴る」「長時間にわたる無意味な直立・正座」「人格否定的な発言」などを挙げた▼一方、「顧問の教員だけに運営、指導を任せない」ことや「勝つことのみを目的としない」ことを示し、指導者に「指導の内容や方法を習得する機会を提供」することや手当て(処遇)の充実が必要と指摘▼全17㌻を読んだ感想は「当たり前」。明文化した意義は認めるが、これでスポーツ指導の現場が劇的に変わるとは正直思えない。たった2行しか記述がなかった項目も気になる。「保護者に対して(目的や方針を)積極的に説明し、理解を得ることが望まれます」▼スポーツは基本的に勝つことを目標にする。「勝利至上主義」の芽は今や少年団でも見て取れる。この克服には部活や学校だけではなく、保護者を含め社会全体の共通認識が欠かせない。(T)


5月28日(火)

●妊娠している女性が職場などでマタニティーハラスメント(マタハラ)に遭っている被害の一つに「目の前でたばこを吸われた」というのがあった。副流煙が胎児に影響するからだ▼そういえば喫煙していた娘が妊娠した際、女房が「たばこは止めなさい。未熟児で生まれたり、奇形児になるよ」と言い聞かせていた。パソコンで「妊娠 喫煙 影響」と検索すれば、胎児に悪い影響がずらり▼「1日20本以上吸う妊婦は非喫煙の妊婦より自然流産の発生率が2倍高くなる。未熟児も多い」とか「喫煙妊婦(夫の受動喫煙の含め)の胎盤は黒く、赤ちゃんは苦しがっている」「アレルギーやアトピーになる」とか…▼今、高齢出産が増えているが、アラフォー女性の心筋梗塞も懸念されている。原因は喫煙、糖尿病、高血圧。特に喫煙は男性の2倍以上。禁煙すれば2年で心筋梗塞のリスクは半減、5年で非喫煙者と同じになるという▼妊娠16週目までに禁煙した場合、死産の約25%、乳児死亡の20%が防げるとも。31日は「世界禁煙デー」で、今年のテーマは「たばこの宣伝などの禁止」。せっかく授かった命。女性と子どもをたばこの害から守って、元気な赤ちゃんを産もう。(M)


5月27日(月)

●昨年末の衆院解散でいったん廃案になった「共通番号制度」の関連法案(マイナンバー法案)が参院で可決、成立した。国民一人ずつに番号を割り振り、年金などの社会保障や納税を一括管理する制度。2016年1月から始まる▼15年の秋ごろには、全国民に11桁以上の番号が届く。番号制を導入する目的は大きく分けて2つ。「公平な社会保障・税制の基盤」と「行政の効率化」だ▼「公平な」の部分は、社会保障関連で期待できそう。年金記録の散逸は起こりづらくなる。納税については、サラリーマンの所得は把握できるが、自営業者の過少申告は防げないとの指摘も。こちらの公平性は少々期待薄だ▼行政の効率化はどうか。確かに導入後は調査、管理がしやすくなる。だが、システムの導入・維持費はばく大だ。費用対効果もきちんと見定めたい。大きなトラブルも不安だ▼何より心配なのは、個人情報の悪用や漏えい。番号制の“先輩”アメリカでは、番号を使った「なりすまし」による犯罪が絶えないという。韓国でも番号がインターネット上に流出し、問題となった。便利には必ず“副作用”がある。法は成立したが、運用開始までに解決すべき課題は数多い。(T)


5月26日(日)

●スイスに本社を置く、世界最大の食品・飲料会社「ネスレ」のチョコレート菓子「キットカット」。最近は受験シーズンに「きっと勝つ」の語呂合わせで売り上げが伸びるという▼円安効果で来日した外国人旅行客が土産として、かばんにたくさんのキットカットを持っているという話題をテレビで見た。世界中で売られているものは味が同じで、日本では、各地の名物を使用した多くの味があり、珍しいので買うという▼インターネットで調べると、東北は「ずんだ風味」、静岡は「田丸屋本店わさび」、信州の「八幡屋礒五郎一味」、関西ではさまざまな茶を使用し、九州ではあまおう苺(いちご)、沖縄は紅イモが登場する。北海道は夕張メロンだ▼函館駅や空港で、漫画の人気キャラクターがイカの格好をしたストラップや、夜景と一緒に描かれたハンカチなどを土産として買っていくと幅広い世代で喜ばれる。いわゆる「ご当地もの」効果は大きい▼函館には全国に誇れる名産品は多いが、土産では北海道名産を多く選んでしまう。来函者を連れていく人気の飲食店は多く、この中からでも、菓子に結びつくアイデアが増えてほしい。カレー味のおかきも好評だが、一通り行き渡った。(R)  


5月25日(土)

●♪夢の向こう側に狙いさだめて跳べ 投手に輝き放す星をつかみとれ 大谷! 大歓声の札幌ドームに駆けつけた。日本ハムの二刀流の大谷翔平選手が投手デビューしたからだ▼大リーグへの夢をいったん捨て、日本のプロ野球で投手と野手の二刀流に挑戦。ルーキー大谷選手は開幕戦でいきなり2安打。新聞の見出し「鮮烈2安打」「鮮烈デビュー」は18歳ヒーローにぴったり▼二刀流といえば本家は剣豪の宮本武蔵。関門海峡に浮かぶ巌流島で佐々木小次郎と決闘した。右手で大太刀、左手で小太刀を操る「二天一流」の兵法。ふりかぶった二刀のタイミングと気迫が合わないと…▼「初球にはその日の一番いい球、自信のある球を投げたい」とヤクルト戦で初登板。応援歌を背に最速157㌔の直球“大太刀”を見せたが、回を重ねることに、置きにいく“小太刀”の振るまい。投手として練習不足だったのか…▼札幌ドームは稲葉選手が打席に入ると、総立ちの観客が飛び跳ねる。ロッテの本拠地ではジャンプして床発電の計画も。試合が白熱するほど発電量が増える。大谷選手が投げたり、打ったら、ジャンプして「発電応援」だ。♪迷わず駆け抜けろ伝説の幕が開いた〜(M)  


5月24日(金)

●個人的に注目していた裁判の判決が23日にあった。競馬の払戻金の所得申告に関する裁判だ。端的に言うと、払戻金は所得申告し、所得税を納めなければならないが、外れ馬券も必要経費とみなされるという内容だ▼被告の元会社員は3年間で、合計約28億7000万円の勝馬投票券(馬券)をインターネットで購入し、30億1000万円の払戻金を得た。検察側は払戻金を「一時所得」とし、約5億7000万円の所得を申告しなかったとした▼被告側は外れ馬券も「必要経費」だと訴え、純粋な利益(1億4000万円)にのみ課税すべきと主張。判決は所得税法違反(単純無申告)として懲役2月執行猶予2年を言い渡したが、税金額は約5200万円と認定。「必要経費」に関しては被告側の主張を取り入れた▼金額が一般離れしており、判決では「娯楽の範囲を超え、資産運用を目的としている」として、勝ち分を「雑所得」とみなした▼疑問も湧いてくる。「娯楽の範囲」という線はどこに引くのか—。たまたま大当たりしたときに、「娯楽」だからといって、外れ馬券分が考慮されなかったとしたら。「とらぬタヌキの…」なのだが、ちょっと考えてしまう。(T)  


5月23日(木)

●外から函館をみると「元気な街」に映る。確かにそれは表面的な印象に過ぎず、多々反論もあろうが、こうした光景を目にすれば…。他地域から羨ましがられて、少しもおかしくない▼先日、函館へ乗ってきたJRはさながら修学旅行列車。そして駅から降りるや、視界に入ったのも生徒たちの姿。さらに翌朝、五稜郭公園に行くと、9時前だというのに駐車場の観光バスからは続々と観光客が降りてくる▼函館では見慣れた光景だが、他地域ではそうじゃない。「来てくれる」。そうなりたいと苦労している地域の方が圧倒的に多い。脚光を浴び始めた旭川や富良野もかつてはそうだった▼函館と同様に北洋漁業の衰退を経験した釧路は、未だ模索を続けている。そう考えると、観光は紛れもない都市財産。しかも2年半余り経つと、北海道新幹線が開業し、新たな価値が付加される▼外部資本の進出という忸怩(じくじ)たる現実はあるが、開業後しばらく、訪れる観光客は増える。それを次にどうつなげるか。上向きの景気と新幹線開業頼みだけでは、答えとして十分ではない。「来て良かった」「また来たい」。函館・道南の大事なキーワードはここに凝縮されている。(A)  


5月22日(水)

●イチゴの花はミツバチがいないとどうなりますか(受粉できないからイチゴはできない)。北極グマの餌は何ですか(アザラシ)。1年で絶滅する数は(約4万種)…。生物多様性クイズに挑戦してみた▼約40億年前に誕生した地球上の生命。人類を中心にトラやパンダなどの動物、稲や小麦などの穀物に大腸菌、バクテリアまで、多様な生物が含まれる。この生き物たちの命のつながりを「生物多様性」と呼ぶ▼その生物多様性の危機が急激に迫ってきた。地球温暖化(気候変動)、自然環境の破壊と汚染、資源の過剰な利用、外来生物の急増で、この30年で自然の豊かさが3割近く失われた▼人間の活動に伴って、それまで生息していない場所に持ち込まれる外来生物。例えば、ブラックバスは13年前、北海道で初めて大沼で生息が確認され、在来種を脅かしている▼人類に恵みをもたらす多様な生き物は3000万種とも。アリはアリクイに食べられ、ウシは人に食べられ…。22日の「世界生物多様性の日」は21年前に定められた。一度、破壊されると人の力では元に戻すことは困難。里山復活、森林保護などで「みんな生かし、生かされている」という強い絆を守ろう。(M)  


5月21日(火)

●悩みを抱える子どもが少なくないことは、様々な相談窓口や調査の結果が教えている。函館・道南も例外ではない。チャイルドラインの電話相談だけで年間400件以上というのだから▼今の時代、一億総ストレス社会、という表現が陳腐化しているほど、悩み多き姿は社会の課題。話を聞いてあげるよ、話せば楽になるから…子どもの受け皿になっているのが、電話がつなぐチャイルドライン▼函館でも2004(平成16)年に常設化された。と言っても、あくまでボランティア。養成講座を受けた14人が交代で相談に応じているそうだが、10年ほど経った今も、かかってくる電話は減る気配がない▼先日の本紙は「子どもの悩み 受け止め10年」という特集記事を掲載していた。苦労をいとわず、その灯を消さないためスタッフがいかに努力しているか…その姿が伝わってきたが、同時に教えられたのが社会的意義▼件数の多さもさることながら、相談内容の6割が不安や憂うつ、精神的疲労、無気力が6割を占める現実が物語っている。まさに駆け込み寺だが、経費面など運営は楽でない。もっとあって然るべきは公的な支援。本来、公的であっていい取り組みなのだから(A)  


5月20日(月)

●AKB48の高橋みなみさんは、歌手を目指してオーディションを受け続けたが、7回落ちた。「努力しても報われない」とのファンの相談に「3年はやらないと、何も見えてこないよ」とインタビューで語っている▼宇宙開発に取り組む植松電機(赤平市)専務の植松努さんも、努力で夢を実現した。幼少期にとりこになった紙飛行機から始まった夢だったが、高校時代の先生からは「大学に行ったってお前の好きな仕事はできない。駄目だね」と言われたという▼植松さんはその言葉を発奮材料に、旅客機や宇宙船を開発する会社に就職。その後、家業を継ぎ、社員20人の会社で北大などとロケットの研究にあたっている▼努力で必ずしも夢がかなうものではない。運も確かに必要だ。努力が敬遠され、あまり苦労をしないで成功を収める生き方がかっこいいような風潮もある。しかし、夢に向かって努力する姿は、いつの世も尊い▼それでも夢がかなわなかった場合は…。高橋さんも植松さんも訴えているのは、仮に失敗しても頑張り続けた先には、将来を生きる力が残るということ。作家の井上靖氏も言っている。「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」と。(P)  


5月19日(日)

●書類や画像を複写するコピー機は今や必需品。家庭でも手軽に印刷できるプリンターが安価で入手できる時代になった。だが、3Dコピー機となると目にした人は少ないのでは…▼通常のコピー機は平面を写すが、3Dは「3次元」、つまり立体をコピーする。コピーというのも若干不正確で、設計図から実物を作ってしまう驚くべき機械だ。今、アメリカを中心に、この3Dプリンターの思わぬ“用途”が話題になっている。作れてしまうのは「銃」だ。▼設計図をインターネット上で公開したところ、2日間で10万ダウンロードされたという。早い話、設計図を手に入れた人たちは、3Dプリンターさえあれば、銃が作れる▼銃に甘いアメリカでもさすがに問題視された。政府は発信元の非営利団体に公開中止命令をだしたが、世界中に拡散した設計図は今もネット上にさらされている▼その昔、といっても20年ほど前まで、複写はガリ版や青焼(ジアゾ式)が主流だった。技術の急速な進歩に驚くばかりだが、1台数十万円から手に入るというから、3Dの普及は案外早いかも…。銃製造の問題は、新たな技術の普及が新たな課題を社会に提起する一例かもしれない。(T)  


5月18日(土)

●外人部隊の出発を告げる太鼓の音が響くなか、荒漠たる砂漠に歩み出す兵士たち。突然、アミーはハイヒールを脱ぎ捨て、熱砂のなかを兵士のあとを追う…(映画「モロッコ」)▼パレスチナの砂漠をさまようレジスタンスの男の背に息絶えた女が逆さまにかつがれている。ドイツ兵を相手に売春をしたとして逮捕されたマノン。逃亡先のパリでも売春…(映画「情婦マノン」)▼日本維新の会の橋下徹共同代表が従軍慰安婦制度について「歴史を調べるといろんな軍で活用されていた」「銃弾が飛び交うなか、猛者集団を休息させるためにも必要」と発言したことに怒りと反発の声が上がった▼沖縄の米軍基地を視察した際、司令官に「もっと風俗業を活用してほしい」と持ちかけた。沖縄では少女暴行事件などが多発し、米軍への不信感が根強い。活用したら暴行事件が減るとでも言いたいのか。米司令官は苦笑したという▼ベトナム戦争で米軍が慰安所を利用していたが…。戦時下の修羅場に必要な存在だったとしても、現代にそれを正当化することは容赦されない。女性を慰安の対象としかとらえない男性の差別意識で人権侵害。「情婦マノン」のような悲劇はご免だ。(M)  


5月17日(金)

●北海道の5月は、一年の中で最も躍動感を感じる季節。寒く、長い冬から解放され、朝は早く、夕暮れは日々遅くなり…野花は咲き乱れ、木々はすっかり芽吹き、一気に葉を大きく、濃くしていく▼新しい人生が始まって1カ月、心浮き浮きしておかしくないのだが、残念ながら「五月病」に悩む人も。新入社員や新入生などが新しい環境に適応できずに生じる精神的に不安定な状態。いわゆる社会病である▼研修やガイダンスなど4月は緊張を強いられ、ただでさえ精神的に疲れる。その一方で、自分の描いていた現実との違いも多少見えてくる。抱いた期待が大きければ大きいほど、ギャップも大きい▼そこに待ち受けているのがゴールデンウイーク。張りつめていた緊張の糸が緩み、休み明けには気持ちがついていかない。休みたい、辞めたい、と。「気分転換を」「ストレスをためない」。言うのは簡単である▼それが出来るなら苦労はないし、こんな現実もない。現代社会の悩める姿だが、その先にあるのは早期の離職。大卒者でも3年以内に3割が最初の仕事を離れると言われる。置かれた現実とどう向き合っていくか…今年は「五月病」に悩む人が少ないことを祈りたい。(A)  


5月16日(木)

●知り合いが「同僚の女性が22歳の若さで結婚する。早いねえ」と話した。わが姉は28年前、24歳で結婚。母は「何とか人並みの時期で嫁に行ってくれた」と喜んでいた▼先月の国会で安倍首相が少子化の原因の一つとして「晩婚化」を挙げ、対策を検討する考えを示した。その論議で「サザエさん」が話題となった。原作漫画は昭和21年に始まった。波平さん54歳、サザエさん24歳、タラちゃん3歳という若い3世代は、現代では珍しい設定かも知れない▼サザエさん一家は食事時に正座している。先日、ある女性モデルがテレビで、母が3人の娘をモデルにしたく、外国ではいすに座る生活なので足は長くて真っすぐになると思い、正座を禁止していたと話していた▼確かに、今の子どもたちは背が高く足も長い。時代とともに生活スタイルも変化したためだろうか。あくまでもモデルの母の持論だが、そう思ってしまう。時代を感じるものといえば子供の名前も一つ▼本紙掲載の赤ちゃんの名前で、今年に入り女の子に「子」の付く名前は5人だった。「減ったなあ」と感じる人たちの世代は、結婚は早かったと思う。函館で出産を待ちわびる若い夫婦が増えてほしい。(R)  


5月15日(水)

●手口が多様化している「振り込め詐欺」。警視庁が新たな名称を公募し、最優秀作に「母さん助けて詐欺」が選ばれた。この犯罪の悪質性を端的に表している▼かつては「オレオレ詐欺」と呼ばれた。「俺、俺…」と息子を名乗って親に信じ込ませ、金を無心する。だが、架空請求など多様な手口が登場し、警察庁が2004年に「振り込め詐欺」と名付けた▼金を金融機関に振り込ませ、すぐに引き出すのが犯人のやり方。だから「振り込め」なのだが、警察庁のホームページによると、最近は現金やキャッシュカードを直接自宅などに取りにくる「振り込ませない振り込め詐欺(受取型)」が増えている。そうなると「振り込め」という名称は誤ったイメージを与えかねない▼優秀作には「ニセ電話詐欺」「親心利用詐欺」も選ばれた。どの名称もイメージはぴったり。犯罪形態ごとに使い分けても良さそうだ▼3月の「振り込め詐欺」被害額は全国で約22億円。子を思い、老後の蓄えを差し出してしまった被害者の悔しさは想像に余りある。この卑劣な犯罪を減らすために、何より必要なのは手口を知って防衛すること。だまされないために、まずは家族で意識を高めよう。(T)  


5月14日(火)

●インターネットのグルメサイトを検索すれば、目的地周辺の料理店がすぐ出てくる。よく利用するが、口コミ評価が当たる場合もあれば、そうでないことも。そんなものだと割り切っている▼口コミサイトに掲載された店舗情報の削除依頼に応じないのは営業権を侵害しているとして、札幌の飲食店経営者がサイトの運営会社に情報の削除と損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。批判的な投稿によって来店者が激減したという▼このサイトに限らないが、ネットに辛口の意見を寄せる人は少なくない。これ以上ない安い料金で温泉に宿泊しても「料理がまずい」「部屋が汚かった」などの厳しいコメントをする人は結構いる▼オリンピックの採点競技では、最高と最低を除いた平均値を採用する種目もある。評価が分かれる演技や芸術性の相違などのほか、競り合いの中で、自国選手や友好国に有利に働く採点をカットするためだ▼ネットの情報も、両極端の評価は軽く受け流した方がいい。万人に有益な情報などないし、自分の価値観に合致した情報を見つけ出すのも大変な作業だ。ど真ん中や主流の声を参考にすることが案外、能動的な情報選択をするカギかもしれない。(P)  


5月13日(月)

●JR九州の寝台列車「ななつ星」が人気を集めている。「移動」ではなく、「観光」に特化した特別車両は、総額30億円の豪華版。運行開始は10月だが、3泊4日で九州を一周するツアーには応募者が殺到している▼最も高価なデラックススイートは2人1室で110万円。それでも競争率は約60倍というから驚く。高速な新幹線や便利な空路とは違った寝台列車の旅情に引き寄せられる人はたくさんいるのだ▼駅には専用ラウンジ、停車駅で乗客を観光ツアーに導くバスも専用の豪華車両と、“セレブ気分”をくすぐる仕掛けが随所に。鉄道マニアならずとも、「一度は乗ってみたい」とあこがれさせるイメージ戦略は秀逸▼しかし、ここで疑問。なぜ九州なのか。北海道ではないのか。道産子としては、九州より北海道の旅の方が充実の予感。本道なら7泊8日でも足りない。見どころは山ほどあるし、食や温泉も九州に負けず劣らず豊富だ▼3年後には北海道新幹線が開業する。東京—函館は4時間を切るかもしれない。今以上に本州から大勢の観光客がやって来る。だが、課題はそのあとの観光オプション。そのひとつとして、北海道一周豪華寝台列車は有望だと思うのだが…。(T)  


5月12日(日)

●摩耶夫人は白象が胎内に入った夢を見て懐妊。実家に帰る途中、ルンビニー苑で突然産気を感じ、白象から降りて右脇から釈迦を出生した。ルンビニー苑の花は満開だった▼苦しい難産で帝王切開だった。母胎の肋骨を切開手術して取り外し、外した脇部から胎盤の赤子を医師が取り出した。釈迦は右脇から「生まれた」のではなく「取り出された」のだという▼今、妊婦から採取した血液でダウン症など染色体異常が分かる「出生前診断」をめぐり医療現場が揺れている。「結果は陰性(異常なし)です」と告げられると安堵するが、逆に「陽性なら産まない」と苦悩。「生まれてくる子は本当に幸せなのか」と▼障害のある命をどうするのか。羊水検査でも胎児に異常が見つかったら、9割が中絶していると聞く。念願だったわが子を授かったのに闇に葬るという『命の選別』は倫理的にも容認できないとの声も。指針作りは難航している▼釈迦を産んだ摩耶夫人は、7日後に感染症で息を引き取った。生まれて、病んで…母親は見守る。《十億の人に十億の母あらむも わが母にまさる母ありなむや》(暁烏敏)。母の恩愛に感謝するのみ。きょうは「母の日」。(M)  


5月11日(土)

●仕事を離れ、65歳になると、それまで手にしたことのない書類が役所から送られてくる。税金、健康保険などに介護保険に関するものが加わって。その介護関係だが、中にはこんなの必要か、と思うものも▼全国統一と説明書きがあるから、臥牛子が住む市だけではないのだろう。その一つが「元気生活チェックリスト」なるもの。介護予防に役立たせるという趣旨は理解するにしても、65歳の人に…▼「15分位続けて歩いていますか」「今日が何月何日かわからない時がありますか」「椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか」などの質問は妥当なのかどうか▼もちろん、心の健康面などの項目もある。だから一概に否定しては行き過ぎだが、もっと年齢に見合った調査があるのではないだろうか。例えば、70歳未満、70歳代、80歳代など年齢層を何段階かに分けて変えるとか▼思いはともかく、多くの人は素直に応じているに違いない。記入して返送すると、回答に基づく診断結果を郵送してくるそうだが、だとしたら、なおさらきめ細かさが求められるのではないか。当然だが、郵送や印刷などの事務処理に多額の経費がかかっている。(A)  


5月10日(金)

●確認されただけで約1700件という。未確認の数もかなりあるだろうと考えると、あ然とせずにいられない。何の話かというと、函館市内で昨年度、身勝手に捨てられた、いわゆる不法投棄の数である▼ゴミ問題は経済、生活の繁栄の陰で生じた社会の課題。家庭ゴミから始まって耐久消費財の類いまで増え続けてきた。その対策として採り入れられた有料化も、すでに10数年が経つ▼だが、定着の域はまだまだのようで、不法投棄が後を絶たない。捨てる物にお金を払いたくない、その一方で後ろめたい気持ちもある。捨て場所が山林や郊外の河川に多い姿に表われている。4月29日付の本紙は函館の実態を報じた▼それによると、過去5年とも確認件数は年1500件以上。昨年度は1696件(1日平均4・64件)を数え、そのうち約4割の693件が家電製品だった。そして多いのが車のタイヤで1475本▼かつて市内を流れる亀田川で不法投棄が問題になったことがある。ただ、全市的に減っていないということは、それが場所を変えただけ。パトロールにも限界がある、回収には経費も要する。問われているのはモラルであり、解消の決め手もそのモラルに尽きる。(A)  


5月9日(木)

●これから函館山や五稜郭を見下ろす小高い斜面を切り開いて造成された「四稜郭」のサクラやツツジ、スズランが一斉に開花する。この国指定史跡を観光資源に加えようという動きが出ている▼四稜郭は箱館戦争で旧幕府軍が劣勢に追い込まれた144年前、五稜郭から北東約3キロの陣川に造られた野戦築城。建設を指揮したのは大鳥圭介あるいは箱館政権に加担したフランスのブリュネ大尉とも▼五稜郭を援護する支城として約300人で突貫工事、数日で完成させた。松岡四郎次郎ら旧幕府軍200人が死守したが、5月11日に新政府軍の総攻撃を受けて数時間で陥落。同じ日に土方歳三も市街戦で戦死している▼蝶が羽を広げたような四稜の突角形の要塞。修復される40年ほど前までは荒れ果てていたが、函館出身のGLAYが遊んだ場所ということもあり、脚光を浴びてきた▼地元の陣川町会が中心に、サクラを剪定(せんてい)したり、スズランを植えたり、ごみを拾ったり、整備保存に懸命。「八重の桜」の会津で奮戦の土方歳三も参戦した箱館の戦い。二つの史跡を結べば観光資源の魅力はさらに膨らむ。野外劇とも連動させて“脇役”を舞台の中央に引き出そう。(M)  


5月8日(水)

●日本の陸上短距離界に驚異的な新星が現れた。まだ弱冠17歳の桐生祥秀選手。京都洛南高校の3年生だ。連休中の織田記念陸上100㍍で、日本歴代2位の10秒01を叩き出した。日本人初の9秒台が期待されている▼人間の力だけで限界に挑む100㍍は、文句なくかっこいい。五輪や世界選手権などのビッグレースになると、思わず息を止めて見入ってしまう。国際レースで日本人が上位争いをする場面を見たいと思うファンは多いだろう▼ここ数年、日本の短距離界で気を吐いてきたのは女子の福島千里選手。十勝の幕別町出身。100分の1秒を争う競技で、何年もの間、トップを守り続けるのは並大抵のことではない▼中学時代の福島さんを取材した後輩記者が「すごい選手がいた」と語っていたのを思い出す。その記者は日体大出身。専門は100㍍で10秒台の記録を持つ。その彼が福島さんの走りを見て衝撃を受けたという。「土を蹴る音が尋常ではなかった」▼男子選手の9秒台、女子選手の10秒台。日本人の到達できなかった夢の世界がもう少しで見られるかもしれない。この大記録がでれば、陸上競技に携わる人たちに勇気と希望を与えることだろう。(T)  


5月6日(月)

●来年4月の消費増税に向けて「消費税転嫁法案」が論議されている。5%から8%になる増税分を価格へとスムーズに上乗せさせるための特別措置法案だ。論議の行方をみていて、「物価」について考えさせられた▼法案は「消費税還元セール」といった広告宣伝を禁止する内容。増税時、企業努力の名の下に、下請けや納入業者が増税分を吸収せざるを得ない状況を防ぐのが法案の意図。特に中小企業への配慮が見える▼だが、総じて世間の反発は強い。大手スーパーからは「価格転嫁カルテル容認だ」といった手厳しい指摘。“安売り禁止”のイメージには消費者からも反対の声が上がった。相次ぐ批判に、政府も「禁止」のトーンを緩めざるを得なかった▼物価上昇はデフレ脱却の絶対条件と言われるが、消費税に限って言えば、転嫁されるのは税の上昇分であって、モノやサービスの価値が上がる訳ではない▼重要なのは、中味の価格が上がって経済が成長していくこと。そうすれば物価とともに、賃金がアップする可能性が見えてくる。「上がるのは物価だけ?」という庶民の疑いを払拭できないようなら本格回復はない。「物価」と「賃金」がともに上がってこそ本物だ。(T)  


5月5日(日)

●《君がいる ただそれだけで うれしいよ》—「こどもの日」から始まった児童福祉週間の標語。子どもの健やかな成長について国民全体で考えようと制定されてから65年…▼今年は活動の一つに「児童虐待への適切な対応」を挙げている。乳幼児を逆さづりにする、食事を食べさせない、学校に行かせない、意図的に病気にさせる…悲しい虐待が後を絶たない▼中国で女児2人が幼稚園の通学路に置かれたヨーグルトを飲んで死亡した。ヨーグルトには殺鼠(さっそ)剤が入っており、児童争奪を巡ったライバルの幼稚園の犯行らしい。北朝鮮では空腹でおかしくなった親が子を釜ゆでして食べたという▼アメリカではライフル銃で遊んでいた5歳の男児が誤って2歳の妹の胸を撃ち死なせた。子ども向けに売られている銃で、母親は実弾が入っていることに気づかなかったという。いずれも“究極の虐待”ではないか▼昨年度、函館市の子どもなんでも相談に寄せられた相談428件のうち、3分の1が児童虐待だった。このため「体の不自然な傷やあざ」など発見し「健康状態に注意」するよう防止パンフレットを改訂。標語のように「それだけで うれしいよ」の環境づくりが急務。(M)  


5月4日(土)

●始皇帝から不老長寿の薬を探すよう命じられ、東方の日本にやって来た徐福は富士山(不死山)で仙薬を探した。かぐや姫は不老長寿の薬と鏡を抱いて、月ではなく富士山に帰った…▼♪あたまを雲の上に出し〜 子供のころに歌った唱歌「ふじの山」は、昔から「どっこいしょ」と六根清浄の声がこだまする信仰の山であり、葛飾北斎の浮世絵「赤富士」が目に入る。富士の美を追求した画壇の巨匠は多い▼なだらかな稜線と頂上のギザギザを描けば幼児でも立派な富士の絵になる。その麗峰にして霊峰、信仰と芸術の「日本一の富士の山」が来月、世界文化遺産に登録される見通しとなった▼富士山本宮大社、人穴富士講遺跡、白糸ノ滝、富士五湖…。ユネスコに登録勧告した国際遺跡会議は「日本の国家的象徴で、その影響は日本をはるかに超えて及んでいる」と、信仰と芸術が融合した資産であることを評価▼富士山には40年前に一度登った。ごみが捨てられ、トイレに困ったことだけ覚えている。ご来光を仰ぐ登山者が押しかけていた。かぐや姫は不老長寿の薬を手に「ごみなんか捨てないで」と、マナーと環境整備を訴えている。唱歌を口ずさみながら登録の吉報を待とう。(M)  


5月3日(金)

●ゴールデンウイーク(GW)期間中に祝日が何日あるか。簡単な質問で、答えは「4日」。4月29日、5月3、4、5日である。ただ、それぞれの祝日名を聞かれると、戸惑うことも▼3日の「憲法記念日」と5日の「子どもの日」は、ほぼ正答率100%だろうが、29日と4日はそうとは言い切れまい。特に29日は二度も変わっている。昭和の時代は「天皇誕生日」だったが、平成と同時に「みどりの日」に▼ところが、4日を祝日にして三連休を創出することになって、「みどりの日」は29日から4日に衣替え。かと言って29日を祝日から外すのも…ということで「昭和の日」に変わった。2007(平成19)年からである▼昭和の時代を今に受け継ぐ、憲法を考える、自然や環境を考える、子どもの健やかな成長を願う。それぞれに意義ある祝日だが、とりわけ「みどりの日」は、今の時代の要請に応える祝日とも言える▼というのも「みどり」が象徴する自然環境の維持は、国際的に共通の課題だから。GWの過ごし方、楽しみ方は人さまざま。季節もいい。旅行に出かける人もいれば、自然に親しむ人もいようが、4日が何の日か、後世のために改めて頭に入れておきたい。(A)  


5月2日(木)

●富士山の世界文化遺産登録が決定的となった。一方、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」は、文化庁が国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦を「現時点ではかなり困難」とし、目標の2015年度登録は苦しい状況▼「北海道・北東北—」には、道南から大船と垣ノ島(ともに函館市)、鷲ノ木(森町)の3遺跡が含まれる。今後“難題”をクリアする必要がある▼逆に浮上したのが「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」。長崎県のホームページから説明サイトに入ってみると、日本語、英語、韓国語による紹介動画があり、7年に及ぶ詳細な活動記録も。行政を含めた地域の「気合」を感じる内容▼長崎では昨年「夜景サミット」が開かれ、長崎を「新世界三大夜景」に選んだ。函館では冷ややかに受け止められたが、それもそのはず。長崎は複数ある観賞地点生かした多彩な夜景を売りにしている。「オンリーワン」の素晴らしさで魅了する函館山とは性格が異なる▼全くの偶然だが、夜景と世界遺産で函館の前に立ちはだかった長崎。考えてみると、長崎も異国情緒を特徴とし、函館と似た性格の街。この機会に“ライバル”を徹底的に研究してみてはどうだろう。(T)  


5月1日(水)

●「過去最高」という表現を日常的によく目にし、耳にする。調査結果などで接することが多いが、必ずしも「大変なこと」を意味するとは限らない。時として色あせて使われることも▼先日、総務省は昨年の労働力調査(総務省)の結果を発表した。60歳以上の就業者数、つまり働いている人の数だが、昨年は前年に比べ17万人増え1192万人になったという。全就業者に占める割合は約5人に1人の19%▼10年前に比べて310万人の増加。さらに60歳前半の年齢層に絞ってみると、働いている人の割合は57・7%。つまり60歳から64歳までの半数以上が何らかの形で仕事を。ここまで来ると、もはや現役世代…▼今の60歳台は年老いた印象はないし、一方で年金だけで悠々自適には暮らせない。だとすると、再雇用などを断らず、元気なうちは働こうという気持ちになって当然であり、この調査結果は予測の範囲内▼だから直近の6年、増加し続けている実態も素直にうなずける。昨年の人数は「過去最高」だった…そう言われても「大変なこと」とも映らなければ、驚くにも値しない。今年の調査結果が出れば増えているはずだし、来年はさらに、となっているであろうから。(A)