平成25年7月


7月31日(水)

●自民・公明がねじれを解消した参院選が終わって2週間。民主をはじめ複数の野党が、敗戦処理に揺れている。責任問題や政治路線を巡る対立がどう落ち着くのか、しばらく目を離せない▼衆院の小選挙区制は我が国にも政権交代を誘引する二大政党時代を可能にした。実際に自民から民主へ、そして再び自民へ、と交代が実現したが、その枠組みはわずか数年で崩れ、現出したのは野党の多党化時代▼みんなの党、日本維新の会、生活の党、みどりの風…新しい政党も次々と生まれた。だが、昨年暮れの衆院選、今回の参院選でも野党共闘は実現せず、突きつけられた答えは共産を除いて厳しい▼民主は幹事長の交代で表向きケリをつけた恰好だが、党内のくすぶりはなお。社民は辞任した党首の後任選びが難航の様子。みんなは代表と幹事長の対立が表面化、維新は不協和音を抱えたまま。混迷した印象は拭えない▼結果は結果。まず求められるのは速やかな総括であり反省だが、政党という組織はまず責任問題ありきのようで。問われるのは衆参で過半数を確保した与党にどう対処していくのか、その一点なのだが…。重要法案を抱える秋の国会が懸念される。(A)  


7月30日(火)

●山口県や島根県で豪雨被害が拡大している。気象庁が出した「これまでに経験したことのない大雨」という表現が尋常ではない気象状況を象徴している。ある研究者は「400〜650年に1度の雨」としている▼日本海上空に「寒冷渦」と呼ばれる低気圧が発生し、そこに暖かく湿った空気が流れ込んだのが要因。今月中旬に東北で発生した豪雨も似た現象らしい▼1時間当たりの雨量が10〜20㍉では「ザーザー」という音がする「やや強い雨」。30〜50㍉で「バケツをひっくり返したような雨」。50〜80㍉では「滝のように降る」。山口県萩市では28日、1時間に138・5㍉が降った。これは「息苦しくなるような圧迫感」がある降り方という。住民の恐怖は想像に余りある▼GLAYの凱旋ライブで函館を訪れた全国のファンも、大雨でJRが運休となり、多くが足止めされた。大雨が降ったのは函館ではなく、胆振地方。登別や白老の一部では300㍉を超える雨が1日で降った▼今夏は深刻な電力不足が予想されていないため、「節電」のムードは昨年よりは低調。だが、温暖化による地球の病は確実に進行している。時折の豪雨はその警告に思えてならない。(T)  


7月29日(月)

●函館が生んだ4人組ロックバンド「GLAY」による緑の島での野外ライブは、「凱旋(がいせん)」という言葉にふさわしい、華やかで堂々たるステージだった。マスコミへの取材要請にも快く応えてくれ、弊社も2日間にわたり、多くの紙面を使ってその熱気を伝えることができた▼このライブを成功に導いた要因のひとつに、市が多額のお金をかけて緑の島を整備したことがある。少なくとも2万5000人を収容できるイベント会場が函館に完成したわけだが、今後はこの場所の有効活用を真剣に考えていかなければならない▼今夏、全国各地で野外音楽フェスティバルが開催されている。毎年8月に石狩湾新港(石狩市)で行われる「ライジング・サン・ロック・フェスティバル」も2日間で約6万人が訪れる人気イベントだ▼緑の島はまさに野外フェスにぴったりの場所。しかも周辺に観光名所が多いという、他地域にない特長も兼ね備えている▼もちろん警備面や、周辺への騒音問題など課題も少なくないだろう。それらをクリアした上で、GLAY示してくれた函館の新たな可能性を形にすることができるかどうかは、地元の人たちの知恵にかかっている(U)  


7月28日(日)

●「生活保護費の方が最低賃金の収入より多い」。なんとも理解に苦しむ実態が北海道をはじめ11都道府県で起きているという。労働意欲を削ぎかねず、改めて最低賃金のあり方が問われている▼週40時間、1カ月働いた最低賃金収入と生活保護費(生活扶助と住宅扶助)を時給換算で比較した結果として、厚生労働省が明らかにした。北海道は生活保護費が最低賃金収入を22円上回り、東京が13円などだった▼最低賃金は使用者が労働者に最低限支払わなければならない賃金の下限額。分かりやすく言うと、最低の収入を保証する制度で、毎年見直されて現在、全国平均で時給749円。北海道は719円▼社会保険料の値上げや生活保護の住宅扶助の増額など理由はあるにせよ、この逆転現象を突きつけられると、最低賃金が妥当か否かの議論となって当然。経済情勢が鍵を握るが、だからと言って放ってはおけない▼最低賃金も生活保護も、所管は厚生労働省。同じ役所でなぜ、とも言いたくなるが、再び起こらないという保証はない。としたら、逆転現象が確認された段階で最低賃金を速やかに是正できるようにすべき。そのための必要な法改正が求められる。(A)  


7月27日(土)

●23年前、高校を卒業したGLAYは「あうん堂」での『ふしだらな最後の子守唄』という卒業ライブで「俺たち、東京に出てバンドやるんだけど、成功したら函館で絶対にコンサートを開く」と上京▼函館で誕生したGLAYは日本を代表するロックバンド。14年前、幕張メッセでのコンサートでは20万人を動員、単独アーティストの世界記録。日中国交正常化30周年で北京ライブを決行、最高指導者の江沢民を表敬訪問▼ライブセットの模型、4人の衣装、4Dシアター、ライブのドキュメンタリーが流れるGLAY館はファンが押しかけた。毎日のようにライブした「あうん堂」や母校などを巡るツアーも人気▼卒業ライブで約束した「函館でコンサート」が27、28日に実現する。JR函館駅前から会場の緑の島までの街路灯にメンバーの写真入りフラッグを掲げ、市電の記念1日乗車券も発売、函館はGLAY一色▼TAKUROとJIROの母校の鍛神小学校の児童は「函館凱旋おめでとう」「2年前にいただいた鉛筆は大事に使っています」などの応援メッセージ集を手渡す。「GLAYが好きで函館に住んだ」という人もおり、ライブは5万人のファンで熱狂する。(M)  


7月26日(金)

●函館出身のロックバンドGLAYの野外公演がいよいよあすに迫った。宿泊施設や陸空の交通機関は、満室、満席が続出。この週末はGLAY一色になりそう▼雑誌やテレビのインタビューを見ると、メンバーが古里に寄せる熱い思いが伝わってくる。この“凱旋ライブ”は単なる音楽興行ではない。ぜひとも大成功させたい。そこで最も重要になるのが、観客の安全対策だ▼短時間に大勢が集まる群衆事故で、記憶に新しいのは、2001年に兵庫県明石市の花火大会で起こった惨事。観客が歩道橋上に滞留して、最大で1平方㍍に13人から15人とも言われる超過密状態となり、死者11人、重軽傷者247人という大惨事を招いた▼ライブ会場・緑の島は入り口が橋一本しかない。ここが最大の難所だ。橋を渡った先で人の流れが止まったら、橋の上に人がどんどん溜まる。2万5千人という観衆を終了後いかにスムーズに島から出すか—が何より肝要だ▼札幌ドームではゲーム終了後、警備員が群衆をロープで数百人単位に仕切り、歩くスピードをコントロールしている。あらゆる方策を駆使して、安全を確保してほしい。ライブの評価は地域の総合力にも左右される。(T)  


7月25日(木)

●食味の次に狙うは安心安全…評価を高める道産米の挑戦に新たな1ページが加わろうとしている。称して農薬節減米。その可能性を秘めた「きたくりん」が今年、道南の2市7町で70ヘクタール作付けされている▼1970年代、昭和40年代だが、北海道は米の最大生産地だった。長く、苦しい時代を乗り越え、これからという時に襲ってきたのが消費減少。米が余り、国が採ったのが生産調整という名の減反政策▼当時、質的に評価の低かった道産米はターゲットにされ、1969(昭和44)年から5年間で作付けはほぼ半減。再び試練を強いられ、それから40年…関係者の熱意と努力が再び結実した▼食味も飛躍的に向上。「ゆめぴりか」と「ななつぼし」は日本穀物検定協会の食味ランキングで、魚沼産コシヒカリと同等の特A。「きらら397」もAの評価を得るなど、今や押しも押されぬ存在。そしてさらなる挑戦である▼農薬使用を抑えた栽培管理は労力的に大変だが、JA新はこだてが乗り出した。設けた基準をクリアした米を独自に認証し「農薬節減米」として売り出す方針という。紛れもない安心安全への挑戦であり、その期待を担う「きたくりん」の出来秋が待たれる。(A)  


7月24日(水)

●「起きて半畳寝て一畳」—大きな家に住んでいても、人一人が占める広さは起きている時で半畳、寝ている時で一畳あれば十分、高望みしないことが大切という格言▼窓はなく昼も暗い、寝台は2部屋で上下を分け合い、部屋を仕切る薄い壁、寝返りの音さえ聞こえ、中央に立つと四方に手が届き、小さなテレビと机があるだけ、キッチン、トイレは共同、家賃は2、3万…▼貸事務所や倉庫と称して実際は人間が住む「脱法ハウス」。一室を2、3の部屋に仕切り、一畳半くらい。共同住宅の居室の最低面積は7平方㍍(約4・3畳)に決められており、火災時に逃げられるように「窓のない部屋」は認められていない▼狭い部屋が密集し劣悪で危険なシェアハウス(脱法ハウス)は年々増え、1700軒2万床ほど。うち「4割がグレー、2割がブラック」という。建物が住宅なのか、宿泊施設なのか、はっきりしない▼隣にどんな人が住んでいるかも分からない。追い出されると路上生活。首都圏のマンション販売が17%も伸びたというのに、アベノミクスの三本の矢が届かない“ハウス難民”。大事故が起きる前に、せめて「起きて四畳半」に改めたい。(M)  


7月23日(火)

●参院選が終盤戦のさなかにあった先週末、大きな外電が飛び込んできた。米自動車大手ゼネラル・モーターズが本社を置くデトロイト市の財政破綻だ。負債は日本円で1兆8000億円に上り、米自治体では過去最大という▼デトロイトは米自動車産業の代名詞であり、アメリカの繁栄の象徴でもある。40年ほど前、ある日本人ミュージシャンは「キャデラックに乗ってたばこ屋に行くのが夢」と語った。“アメ車”が豊かさの象徴だったのだ▼その自動車産業が、燃費が良く高性能な日本車の攻勢で衰退。最盛期に180万人いた人口が、今や70万人ほどに。一方、税収が減る中、社会保障費などの歳出削減を図らず、市の退職職員の年金支払いなどで、借金に借金を重ねたという▼産業の衰退、人口減、社会保障費の増大…まさに日本が抱えている問題と同じだ。TPP交渉では今後、日本の自動車業界へ厳しい注文が付くかもしれない▼参院選は、積極的な財政出動や金融緩和を進める自民党が圧勝した。今後、経済の刺激策として財政投入がさらに進むとの観測がある。ただ、収入が乏しいのに借金をし続けたら…。デトロイトの破綻は、世界に警鐘を鳴らしている。(P)  


7月22日(月)

●北海道の高校球児の夏が終わった。唯一、この熱い季節が継続するのは準決勝で函大柏稜を破り、道大会を制した北照だけ。センバツ8強という成績以上の活躍を期待したい▼16年ぶりに2校が4強に残った道南地区が久々に健在ぶりを誇示した。過去甲子園に7度出場している古豪の函大有斗は、昨秋、今春と2季連続で地区敗退。春地区予選のラ・サール戦を見させてもらったが、伝統校の重圧に苦しんでいる様子だった▼夏は地区大会から秋と春の鬱憤(うっぷん)を晴らす試合内容。「どん底」からはい上がった精神力はすごい。南大会でも「さすが」と思わせる試合運びを随所に見せてくれた▼函大柏稜は4季連続の道大会。特に夏は札幌勢を2校破っての4強。準々決勝の東海大四戦の延長サヨナラ勝ちには、取材した記者も「目が潤みました」と話していた。北照戦でも一時逆転し、互角の戦いを演じた▼2回戦で有斗に敗れた函中部も忘れられない。文武両道の活躍は文句なく素晴らしい。夏は全道を逃したが、ラ・サールも道内有力校の一角を占めた。1997年の有斗以降途絶えている道南地区からの甲子園。その実現が近づいていることを感じさせる夏だった。(T)  


7月21日(日)

●参院選が投票日を迎えた。参議院議員の任期は6年。解散がないので、6年という長期間にわたって国政を託す人物を選択する大事な選挙だが…▼地元候補がいない道南では、巷(ちまた)の声を聞く限り、選挙ムードは盛り上がりに欠けるよう。だが、期日前投票は好調を維持している。当たり前だが、無関心層がすべてではない▼選挙熱が今ひとつ上昇しない理由のひとつに、今選挙の争点が挙げられる。良く言われるのが「衆参のねじれ解消」。先の衆院選で政権を奪還した自公が、参院でも過半数を取れるか—これが話題になる場面が多い▼しかし、これは争点なのか。大事なのは、解消する、しないではなく、「解消」の先にある日本の将来像ではないのか。今選挙で問われているのは、経済対策、消費増税、TPP(環太平洋連携協定)、原発施策など、極めて重いテーマばかり。改めて言うまでもなく、これらの方向性を決めるのは有権者の一票に他ならない。「何も変わらない」との諦めは禁物だ▼函館は「低投票率のマチ」という汚名が長く続いてきた。それは地域の停滞と無関係ではあるまい。こんな時だからこそ、選挙に望みを託し、しっかり意思表示したい。(T)  


7月20日(土)

●三重県伊勢市の伊勢神宮と島根県出雲市の出雲大社がことし、そろって遷宮を迎えた。本殿などを新しくし、神様を遷(うつ)す神事で、伊勢神宮は¥20¥年に一度、出雲大社はほぼ60年ごとに行われている▼学生時代、伊勢神宮を訪れた。門前町を通って緑あふれる森の中、いくつもの橋を渡り、石段を上がり、社殿を参拝した。参道には松下幸之助さんが寄進した鳥居があり、神宮全体が霊気と神々しさに満ちていた▼重厚感あふれる社殿をなぜ、¥20¥年ごとに建て替えるのか。諸説あるが、新しいお宮で若々しさや清浄さを保つことのほか、伝統技術を継承するという意味合いがあるようだ▼140年ぶりに復元された箱館奉行所も、幕末の北方警備と対外交渉の拠点となった役割を伝えるほか、失われつつある技術を伝える任を果たした。欄間や釘隠し、漆喰(しっくい)の土塀、畳や瓦…どの技術も日本の伝統建築を支えた職人技の結晶だ▼夏の五稜郭を歩き、奉行所を訪れ縁側で涼む。ガイドさんやDVDによる丁寧な説明を受けると、全国から材と技術の粋を集めて完成した様子がひしひしと伝わってくる。伊勢や出雲まで行かなくても、匠(たくみ)の技とその継承の大切さを学ぶことができる。(P)  


7月19日(金)

●広島で起きた16歳少女の死体遺棄事件は、最初に逮捕された16歳の無職少女に加え、さらに16歳から21歳までの男女6人が逮捕されるという異例の事態となった▼ただ、事件の中心人物が無職少女であることに変わりはない。そしてその原因を生み出したのが、スマートフォンの通話アプリ「LINE(ライン)」上での会話のトラブルであるという▼ラインとは、ネットを通じたコミュニケーションツールのひとつで、スマホなどの携帯端末があれば通話やメールが無料でできることから、若者を中心に爆発的に普及。無職少女は、被害者にライン上で激しく罵倒されたことから殺意を抱いたと供述。遊び友達である仲間6人に共謀を呼びかけ暴行したという▼驚くのは逮捕直前の無職少女が、別の友人にラインで「(少女を)ころしたよ」と告白していること。さらに「裏切ってごめん」などと共謀した仲間に対するメッセージのような書き込みも残されている▼このように、自分が心に抱える闇を直接的な会話ではなく、ネット上を通じて赤裸々に語るのことができるのが現代の若者の特徴なのだろうか。いや、もはや若い世代に限った現象ではないのかもしれない。(U)  


7月18日(木)

●スマートフォン(スマホ)の所有者が増え、6割以上が歩いている人とぶつかったり、ぶつかりそうになったり…。そんなスマホなど使った「ネット選挙」の参院選が21日の投票日に向けて追い込みに入った▼喫茶店で隣の若い女性3人の話を小耳にはさんだ。「選挙始まったね」「ネット選挙のことでしょう」「ネットで投票できるの。便利だね」「イケメンに入れようか」「違うよ。選挙運動のことでしょう」▼「インターネットを使った選挙運動」が参院選で初めて解禁された。政党や候補者が政策、主張などを交流サイト「フェスブック」や投稿サイト「ツイッター」を通じて発信。スマホをかざせば動画が表れるアプリ導入も▼ツイッターでつぶやかれている政策は「原発」をトップに「経済」「外交」など。これらを候補者がネットを通じて訴えることが可能になった。一方、有権者が重視しているのは「年金や医療」「景気や雇用」「消費税増税」という▼ネット選挙といえば「パソコンやスマホで投票できる」と誤解されがち。もし、そうなれば「なりすまし投票」も心配だ。スマホ人気にあやかり、ネット有権者を投票行動に走らせてほしい。(M)  


7月17日(水)

●神戸地裁明石支部が強制わいせつ未遂事件の裁判で、被害者を匿名にした起訴状に基づき、被告に有罪判決を言い渡した。これは異例の措置で、議論が湧き起っている▼面識のない女性を乱暴目的で襲おうとしたのがこの事件。神戸地検明石支部は、2次被害を防ぐ観点から、起訴状に被害者の実名を記載しなかった。被害者の素性を知らない被告に、わざわざ名前や住所を教えてやる必要性は感じられない▼起訴状には、犯罪の行われた日時や場所、方法などが明記される。被害者の氏名も通常は含まれる。それは起訴状に書かれた事実が正しいかどうか、被告が反論する権利を確保する意味も。身に覚えのない「冤罪(えんざい)」を防止するためでもある▼被害者を匿名にした起訴状は、特に性犯罪などで増えている。だが、裁判所が実名記載を命じたケースもあり、「被害者の2次被害防止」か「被告の反論権確保」かの判断は揺れている▼法の判断にぶれは許されないが、このケースに限っては事件ごとに対応が分かれてもやむを得ない。被害者と被告の関係性は犯罪ごとに違う。被害者を守り、被告の権利も確保する—これをひとつの原則で両立させることは難しい。(T)  


7月16日(火)

●仕事がない、仕事があっても安定はない、収入も見合わない…生活不安にかられ、消費も伸びない、社会も落ち着きを失って…昔の話でもなければ、架空の話でもない。現実の話である▼それは具体的データからもうかがえる。いわゆる規制緩和の流れの中で、嘱託や契約、派遣などの形態が裾野を広げてきた。その結果、安定している常用雇用(正規労働者)が減り、待遇面で劣る非正規労働者が増加の傾向に▼そんな現実を漠然とながらも実感しているが、それにしても総務省が発表した就業構造基本調査(2012年)の結果は衝撃的。非正規労働者の割合が就労者全体の4割レベルに達しているというのだから▼厳密には38・2%。男性は22・1%で5人に1人、女性は57・5%と半数以上。正規労働者から非正規労働者に移った割合も、この5年間で3・7%増えているという。景気回復の胎動は認めるにしても…▼雇用回復はまだまだ。失業者を減らすのは当たり前である。雇用の安定はいわば生活の安定。だとすると、この調査結果は「これでいいのか」という訴えのようにも聞こえてくる。21日投開票の参院選は最終盤。実感できる雇用対策は伝わってきていない。(A)  


7月15日(月)

●大人になったら何になりたい…子どもに問いかけることがある。プロスポーツ選手や保育園・幼稚園の先生はいつの時代も根強いが、微妙に時代背景も映し出される。警察官への憧れもその一例▼第一生命が「大人になったらなりたいもの」調査を行っている。幼児と小学生を対象に20余年。調査開始当初の一位は、男子は野球選手、女子は保育園・幼稚園の先生で、この二つの職業の人気は今も高い▼それが直近の調査では男子はスポーツでも1位は野球でなくサッカー、女子は食べ物屋さん。そのほか人気上位には学者・博士(男子)、看護師や医者(女子)など。かつて上位だったタレントや歌手は後退し、女子でもベストテン圏外▼その逆に、ここ数年、クローズアップされているのが警察官・刑事。男子は21年ぶりの2位にランクされ、女子も8位。同社では「東日本大震災の後、人助け意識が高まっているのではないか」と分析▼確かに意外な感じもするが、人の命を守り、社会の安全を守る仕事がいい、という思いの表われだとすると、うれしくなる。だとすると政治家も上位に選ばれていいはずだが、残念ながら。なぜ? その答えは子どもたちに聞くまでもない。(A)  


7月14日(日)

●北海道南西沖地震から5年後の1998年、奥尻町は復興を宣言した。その様子を伝えようと、島を訪れた。津波で流された青苗地区には立派な新築住宅が立ち並び、漁協も義援金を活用して漁船を購入。島の経済を支える観光は客足が戻り、島民も笑顔で頑張っていた▼島の東側には防潮堤が張り巡らされ、漁港や避難路も整備された。何もかも新しくなったが、残されたのは膨大な借金。当時の町関係者は「今後は島民の自立が必要だが…」と不安を口にした▼震災から20年を迎え、新村卓実町長は「何げない日常を送れることこそが復興だと思う」と語った。震災前に4500人ほどだった人口も、現在は3000人を割った。高齢化や漁業の衰退などの現状を考えると、町長の言葉通りだろう▼あの日、老いも若きも200人近い島民が命を失った。20周年追悼式で新村町長は「犠牲を無にしないよう、震災から得た体験と教訓を後世に伝える」と決意を述べた▼東日本大震災後、島には防災や復興関連で2000人ほどが視察に訪れたという。悲しみを乗り越え、教訓を伝えるのが島の責務だ。国も東北の復興に何が必要なのか、奥尻の事例を参考にしてほしい。(P)  


7月13日(土)

●ジャングルなど熱帯地方に住んでいる先住民は、植物性オイルや白粘土の粉などを塗って強い日差しや紫外線から肌を守ることを自然に体得している。猛暑による熱中症対策でもある▼このところ、北海道も最高気温が昨年に比べ2度ほど高く、熱中症で搬送される患者数も昨年の2倍超。脱水症状や体内の塩分が不足し、体温が上昇しているのに調整機能が低下し、最悪の場合は死に至る▼日焼け止めクリームを塗らないと、紫外線は肌老化を倍加させる。シミやシワも増える。美白や健康をうたうアイテムも出ているが、配合成分によってはアレルギーを発症する例も▼先ほど、化粧品メーカーが「肌がまだらに白くなる」という健康被害がでた54商品を自主回収。2年前から苦情があったのに「(化粧品が原因ではなく)利用者の病気と判断した」という説明にはあきれる。薬用化粧品だったのに…▼目に紫外線を浴びると、目も日焼けし視力が低下、失明の危険性も。紫外線をシャットアウトすることは熱中症や肌老化、目の病気の予防に不可欠。先住民を見習って、日焼け止めを塗り、サングラスをかけ、水分補給を忘れないことだ。猛暑はこれからだ。(M)  


7月12日(金)

●JR北海道の特急北斗14号の出火事故で、函館—札幌間の特急が大幅に減便されている。夏の観光シーズン本番を迎えつつある道南にも不安の声。出火原因の一刻も早い究明と、運転再開が強く望まれる▼6日の事故は、八雲町内で北斗のエンジンから出火し緊急停車。一報を受け、すぐに記者を走らせた。現場からの写真に、衝撃を受けた。出火した車両は窓の辺りまで、後続の車両にも塗装が焼け焦げた跡。消火があと少し遅ければ、内部に燃え移っていた可能性も▼頭をよぎったのは2011年に石勝線で起こった特急スーパーおおぞらの脱線炎上事故。トンネル内で車両が全焼し、鉄道事故の恐ろしさを見せつけた▼北斗は今年4月にも同じような火災事故を起こし、破損部品は交換したばかり。走行中の出火やエンジンの破損は重大なトラブル。乗用車だったら、メーカーも自主的に原因究明に動くケースだ▼広大な北海道では列車の走行距離がかさむ。夏冬の寒暖差や急峻(きゅうしゅん)な地形など他府県にはない特殊事情もあろう。車両への負荷は本州より多いはずだ。JRだけでなく、あらゆる専門家の知恵を結集して原因を特定し、事故防止の対策を確立してほしい。(T)  


7月11日(木)

●地域おこしの一つとして「ご当地グルメ」が、全国的なブームを呼んでいる。イベントも多く、北海道でも「新・ご当地グルメグランプリ北海道」が開かれ、その人気は訪れる人の数が教えている▼「食べたあなたが審査員」をうたい文句に始まったのは4年前。美瑛町から北見市、別海町と毎年継続開催され「別海ジャンボホタテバーガー」が3年連続で総合グランプリに輝くなど話題も多い▼今年は6、7日の両日、十勝の芽室町で開催された。「羽幌えびしおラーメン」「十勝芽室コーン炒飯」「寿都ホッケめし」など、地域が生み出した15の新グルメが競った結果「十勝清水牛玉ステーキ丼」が総合グランプリに▼夏の暑い、熱い戦いだったが、特筆されるのは来場者の数。道内各地から2日間で3万600人が訪れたというのだから。提供されたグルメは全部で3万4534食。ここまでくると一大イベントである▼来年は再び、美瑛町で開かれるそうだが、函館はこうしたイベントが似合う街。開催準備は大変だが、緑の島という恰好の場所もある。港を過る爽やかな潮風を受けながら、各地のグルメを楽しんでもらう。函館グランプリ…そう考えるだけで楽しくなってくる。(A)  


7月10日(水)

●スマートフォンやタブレットで読む電子書籍に関する世界最大の専門展「第17回国際電子出版EXPO」が3〜5日、東京ビッグサイトで開かれた。会場で電子出版に関する最新事情に触れる機会を得た▼電子出版に加え、制作・配信、ライセンス取得に関する専門展も併催。広大なスペースは出展社のブースで埋め尽くされ、来場者ですごい熱気▼多くのブースで痛感したのは、基本技術の変化。電子書籍だから当然コンピューターを使う。以前だと制作に必要なアプリケーションやサーバーは自前で購入、あるいはレンタルするのが普通。その初期投資は大きい。パソコンの基本ソフトが変わるたびに全更新のリスクも抱える▼だが、今回提案されていたのは、大半が「クラウド」と呼ばれる技術をベースにしていた。ネットワークを介してサービスを受けるので、必要なのはパソコンだけ。少ない初期投資で、利用料を支払うパターンだ▼新聞の世界でも、アメリカでは有力紙が電子の部数を急激に伸ばしている。日本でもいずれそうなることを肌で感じた。中味の充実が基本なのは変わらないが、新聞や本を読者に届ける方法に多数の選択肢を用意する時代が始まった。(T)  


7月9日(火)

●ハスはきれいな水では小さな花しか咲かせないが、泥水が濃ければ濃いほど美しい大輪の花を咲かせる。軍が介入した今のエジプトは、まさに“泥水のナイル川”が氾濫したよう…▼エジプト軍は、軍需産業をはじめ建設業や食品加工業などあらゆる分野の企業を経営し、国内総生産に占める割合は10%から15%といわれ、30%という説も。国営企業に多くの退役軍人を送り込む▼まさに「軍は国家なり」の様相だが、観光業や農業などが頼りの経済基盤は弱く、食べるものにも事欠くようになった下層の不満の矛先が前大統領に向かった。軍の支持派と前大統領派がにらみ合い「流血の対立」▼ムバラク政権を崩壊に追い込んだ「アラブの春」から2年半。公正な選挙で選ばれたトップが引きずり下ろされた。曲がりなりにも育ってきた民主主義が元も子もなくなってしまう。「砂上の民主化」だった…▼大相撲名古屋場所でエジプト出身の新十両、大砂嵐が「ラマダンでも頑張る」と初日に白星。美声で会話術に長けたクレオパトラは長老を説き伏せた。「アラブの春」以来、周辺国の混乱は続く。エジプトは政治、文化などアラブの牽引車。融和で「泥沼のハス」を咲かせよう。(M)  


7月7日(日)

●訴訟が増え、内容も多様化している。昨年一年間に提訴された新受件数は全国で約406万件。民事・行政訴訟がほぼ半数を占め、その中には珍しさで注目される訴訟も▼6月末にもあった。ニュースで外国語の使い過ぎにより精神的苦痛を受けたとしてNHKに慰謝料を求めた訴訟である。昨今、外国語や短縮語が氾濫し、その是非を巡っては議論のあるところだが、訴訟は稀(まれ)▼提訴者は「外国語を使わなくても表現出来る」と主張。例としてリスク(危険性・不確実性)やケア(介護・世話)などを挙げている。どちらの表現がいいのか、一般的なのか、と問われると、答えに窮してしまう▼視聴者や読者の年齢幅は広く、表現の仕方で受け止められ方もさまざま。その中で、報道機関の判断基準は、どう表現したら理解してもらいやすいかであり、奇をてらったり、意識して使っているわけでない▼ただ、NHKの松本会長も認めるように外国語が増えているのも事実。さらにTPPやスマホ、ネットなど最近はローマ字表記や短縮表現も指摘される。いずれも言葉の問題だが、日本語を大事にすべきという趣旨なら、この訴訟も一つの問題提起と言えなくもない。(A)  


7月6日(土)

●安易な行動で集団社会に不利益を及ぼす「自分ひとりぐらい」という心理。吸い殻や空き缶を捨てれは街の美化を破壊し、小さな一言でも、いじめにつながる▼4日公示の参院選で道選管渡島支所の中西猛雄支所長は、管内で国政選挙の投票率が低いことに「『自分の一票くらい』と考えず、積極的に足を運んでほしい」と談話を発表。期日前投票も利用し“ワースト”争いから脱出したい▼最も悪影響が出る「自分ひとりぐらい」は違法駐車だ。14日は函館港花火大会、17日は千代台町でプロ野球公式戦がある。周辺道路や施設で迷惑駐車禁止を訴える関係者は、公共交通機関の利用を呼び掛ける▼さらに27〜28日には、緑の島でGLAYのライブがある。終演後、約2万5000人の観客が函館駅やツアーバス発着場へスムーズに歩いて向かうのに、通路の橋やその付近が人で詰まると危険だ▼その原因につながりかねないのは車の渋滞。駐車場が少ない西部地区に多数の車が押し寄せれば迷惑駐車、渋滞につながる。飛び出しによる事故発生の危険も高い。メンバーが函館のために開くライブを市民一丸で盛り上げるなら「自分ひとりぐらい」を抑えるべきだ。(R)  


7月5日(金)

●子供の頃、特撮ヒーローのウルトラマンやウルトラセブンに熱中した。科学特捜隊(科特隊)やウルトラ警備隊に入って、ビートルやウルトラホークを操縦したいと真剣に思っていた。劇中では、ウルトラホークが宇宙に行く場面が何度かあった▼実際に航空機が宇宙(大気圏外)に行くのは、容易ではない。まず、地表に落ちないための「第1宇宙速度」を獲得する必要がある。それは秒速7・9㌔、時速約2万8400㌔という途方もない速さ。今は巨大な推力を持つロケットで到達するしかない▼九州工業大学の宇宙システム研究室が先月、「スペースプレーン」と呼ばれる再利用型の有翼ロケットの飛行実験を実施した。簡単に言えば、「自分のエンジンで宇宙に何度も行ける飛行機」のことだ▼実験機は全長1・7㍍、重さ50㌔というミニサイズだが、発射14秒後に高度1000㍍に達する能力を有する。残念ながら、実験では高度700〜800㍍までしか上がらなかった▼実現までの課題は山ほどあるが、研究の価値は大きい。どんなスペースプレーンが出来上がるか、今から楽しみ。ぜひ乗ってみたいものだが、チケット代はかなり高そうだ。(T)  


7月4日(木)

●登山者の多い、人気の山では入山料が当然の時代を迎えている。後世に環境を保全していくためだが、入山者の抑制は不可欠で、その象徴的存在こそ、世界文化遺産に登録が決まった富士山▼この1日、テレビで放送された山開きは人、人、人の異常な光景。環境庁によると、昨年7、8月の入山者は31万9千人。1日平均で5千人超。今年は3割増が予想され、素人目にも限界に来ている現状が分かる▼ゴミやし尿など、人が入れば入るだけ山の環境は損なわれる。その処理経費も入山する人の数に比例する。それをどう賄うかは大きな課題で、楽しみを享受する人が負担すべきという論は外れていない▼山梨、静岡両県は今月下旬から8月上旬の10日間、千円を求める。協力金としての試行だが、来年の夏は入山料を制度化する考え。その場合、徴収の方法に加え、難しいのが千円でいいのかどうかの判断▼「少なくても3千円にして、登山口で服装や装備などをチェックし、不備な人は入れないぐらいにすべき」という見解も頷ける。山の環境を維持するのは生やさしいことでない。対策として何が必要か、その視点に立てば、入山料の答えなどはおのずと見えてくる。(A)  


7月3日(水)

●天照大御神の孫の瓊瓊杵命(ニニギノミコト)を主神とする群神は、八重に輝く雲をかき分け威風堂々と進み「三種の神器」を携えて高天原から高千穂に降臨。そのニニギノミコトが札幌のホテルにお目見え▼江差の姥神大神祭で巡行する13基のうち、豊川町の山車「豊榮山」に乗っている人形。「ニニギ」の意は「稲穂のにぎにぎしく実る」をとったと言われ、神代から収穫祭の原点があった。天照大御神から受け継いだ鏡・環・剣を持つ雄姿▼江差の渡御祭は京都祇園祭の流れをくむ絢爛(けんらん)豪華な山車が練り歩く。京都で作って北前船で運んだものが多い。江差と京都でしかないと言われる船形山車。江差の松寶丸は168年前の作。帆には松前藩船と同じ三階松▼幕末に焼失した祇園祭の「大船鉾」が150年ぶりに復活。囃子方が乗る「甲板」や音頭とりが握る力綱、鉾の曳き綱などを取り付けた。今年の祇園祭では唐櫃を担いで参加するが…▼豊榮山の山車人形は40周年を迎えたホテルが特別展示。軍艦「開陽丸」の大砲や刀、ピストルなど遺物もずらり。土方歳三や新島八重らが激闘した戊辰戦争の中でも巡行した渡御祭。今夏は「江差の八月は江戸でもない」お祭りになりそう。(M)  


7月2日(火)

●いろは歌に登場する「有為(うい)の奥山 今日(けふ)越えて」はどのような意味か、学生時代に考えた。仏教学の先生からは、有為を越えた無為、つまり、無我の境地や空(くう)の世界にいたることを意味する、というようなことを聞いた▼無我といっても我がないわけではない。空と言っても空っぽになるという意味ではない。なにか禅問答みたいだが、要は、欲望が渦まく現世の深い山を越えるという、非常に哲学的な意味があるようだ▼平安京で過ごした貴族の少年も、人生の厳しい山道を乗り越えただろうか。京都の遺跡から、いろは歌が書かれた12〜13世紀の土器が見つかった。筆跡などから、和歌を習い始めた貴族の子弟が手習いで記したものとみられる。国内で確認された最古の「いろは歌」全文という▼最後の行の「ゑひもせす」が書ききれず、書き出しの「いろはにほへと」の前に記されている。誤記もあり、少年も勉強よりも心が浮き立つことがあったかもしれない▼その時代の一級史料となる貴族の日記は、後世に読まれることや、書写されることを想定して書かれている。遺跡からの出土品は、作為なく作られ、捨てられている。有為を越えた無為の大きな史料である。(P)  


7月1日(月)

●衆参のいわゆる“ねじれ”が続くのか、または解消されるのか、を最大の焦点とした参院選の公示(4日)が迫っている。選挙日程が正式決定して、そう日が経たずしての選挙本番という短期決戦▼各政党の公約発表も通常国会の閉幕後、慌ただしく行われた。そこには法人税や所得税などの減税、国会議員の大幅削減、年4%の経済成長、所得のアップなどが打ち出されているが、具体性に欠ける感が無きにしも非ず▼公約でも、マニフェストでもいい。本来的に持つ意味は違うが、政策実行に向けた裏付けが伴っているなら、それに拘る必要はない。国政に求められているのは政策の掲げ方ではなく、掲げた政策の実行だから▼それでなくとも政治課題が山積している時である。経済政策に始まってTPP問題への対処、東日本大震災の復興、原発に対する姿勢…さらには支給年齢の繰り下げが取りざたされる年金政策…。外交でも課題を抱えている▼その中で迎える参院選であり、無関心ではいられない。だが、支持政党なしの無党派が多い現実と重なるかのように、選挙ムードは乏しいまま。ネット運動の解禁がどう作用するかにも関心が集まるが、気にかかるのは投票率。投開票日は21日。(A)