平成25年8月


8月31日(土)

●今夏は温暖化による異常気象の連続だった。南からの湿った空気が前線を刺激して豪雨。エルニーニョ現象で海水温が上昇し、被害は北海道沿岸の“海の幸”にも及んでいる▼本紙によると、8月の函館近海の海水の表面温度は26〜27度で平年より3度ほど高かった。イカは23度を超えると活(い)きられず、捕獲したスルメイカが漁船のいけすで死ぬケースが急増。このため「いけすイカ」の全国発送開始日を10月1日に延期した▼海水温が平年より2〜4度高い釧路沖ではサンマの南下が遅れ、代わりに価格の安いマイワシが獲れている。白糠沖ではトキシラズの定置網に暖水を好むクロマグロがかかる珍事も▼暖かい海水が流れ込んだペルー沿岸ではアンチョビが深海に潜った。これらの魚を餌にしていたペリカンなど5000羽以上の海鳥が死んだ。約900頭のイルカも死んでいるという▼網走湖のシジミから異臭が出たこともあった。気象庁は今後も日本近海の海面水温は平年より高くなると予想している。海水温の上昇は海洋生態系も狂わせる。海峡のイカ釣り船の漁り火は函館観光の一つ。人気が高く、値段も高い「いけすイカ」が従来通り出荷できるよう願いたい。(M)


8月30日(金)

●総務省が今年3月末の住民基本台帳に基づく日本の総人口を発表した。前年比26万6000人減の約1億2639万人。単純にみれば、この1年で函館市が消滅したにほぼ等しい。日本という国にとって、まさに深刻な事態だ▼減少幅は1968年の調査開始以降で最大という。北海道は前年比2万9900人減の約544万人。減少は15年連続。死亡から出生を引いた自然減が多い▼函館市は5万人以上の市で、3番目の27万4537人。ただ、減少数は2519人で最多。減少率(0・90%)では、小樽(1・75%)、室蘭(1・45%)、岩見沢(1・31%)、登別(1・14%)、釧路(0・99%)に次いで6番目▼道内の市で、人口が増えたのは札幌(6236人)、千歳(188人)、帯広(17人)の3市のみ。道全体で3万人近く減少した中、札幌が6000人以上増えたということは、他都市、あるいは町村部の流出が拡大したことを意味する▼全国的には15〜64歳の生産年齢人口が初めて8千万人を割った。2・56人で1人の高齢者を支える「超少子高齢化」の進行に歯止めがかからない。小手先の経済対策では逃れようのない没落がこの先に待っているのだろうか…。(T)


8月29日(木)

●完成したばかりの羽田空港で俳優がくわえたばこをするCMに「かっこいい」と吸い始めた。女性歌手が歌う「ベッドでたばこを吸わないで〜」に後ろめたさを感じながら…▼アニメ映画「風立ちぬ」で、教室や職場、ホテルのレストランなどで喫煙が登場する。過剰な喫煙シーンに日本喫煙学会は「健康に有害な喫煙を肯定的な行為として助長する恐れがある」とクレームをつけた▼軍の斬首や性的暴行シーンが発育段階にある子どもに不適当ではないかと、図書館などでの読書を封じた(後に撤回)映画「はだしのゲン」にも、闇市などで喫煙シーンが出てくる。いずれも戦争という時代背景上、止むを得ぬコマだったかも▼厚労省によると、喫煙の中高生は年々減っているが、半数は成人承認カード「タスポ」で購入している。70%超がタスポを「家族から借りた」「(友人など)家族以外から借りた」と答えている▼今は分煙や禁煙が広がり、学校でも啓発教育が行われているのに、家族がタスポを貸すなんて容赦できない。タスポの貸し借りは禁じられている。親や先生は子どもたちが「はだしのゲン」や「風立ちぬ」に接する際は、作品の時代背景などを説明してほしい。(M)


8月28日(水)

●歌謡界に足跡を残した作詞家、石坂まさをさんに15年ほど前、お会いした。石坂さんは当時、演歌も歌える道南出身のアイドル歌手を育てていた。「彼女には雪を跳ね返す真竹のようなしなやかさがある」。作詞家らしい繊細な言葉で、このアイドルを紹介してくれたのを覚えている▼石坂さんの名が広く知られるきっかけとなったのが、藤圭子さんの歌だ。旭川育ちの影のある美少女をプロデュースし、「新宿の女」「圭子の夢は夜ひらく」などがヒット。藤さんは昭和の歌姫となった▼先日に続き、藤圭子さんについて。今年3月に石坂さんが亡くなり、後を追うような人生の幕引きだった。石坂さんは、無頼な中に人を思慕するような雰囲気があった。引退後に海外生活を長く送った藤さんも、帰国後は知人に「話す人がいなくて寂しい」と語ったそうだ▼独特の情念のある、ハスキーな声。「私の人生暗かった」。過去は暗くても、よりよい未来を信じて、みんなが夢を見た。あの時代を象徴するような歌で、人生の応援歌だったのかもしれない▼オリコンのアルバムチャート41週連続首位、栄光と挫折、そして宇多田ヒカルさんという才能を残し、急ぎ足で世をかけた。(P)


8月27日(火)

●いささか暴論だが、「悪ふざけ」は若者の特権だ。大人だと断罪されるが、若者だったら、きつい「お灸」をすえられる程度で許されることもある。だが、最近何かと話題になっている「悪ふざけ」は、ちょっと質が違う▼一連の騒動の発端は7月中旬、高知県内のコンビニで、男性アルバイト店員が、アイスクリームの陳列ケースに寝そべった写真をフェイスブックに投稿したこと。そのあと、“模倣犯”がでるわ、でるわ…▼群馬県前橋市では今月、地元の調理師専門学校の生徒が、スーパーのアイス用冷凍庫に入った様子をツイッターに投稿した。入った生徒と撮影した友人の2人は即刻退学処分。店側は警察に被害届を出し、損害賠償も検討中という▼こうした行為をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿するのは、当世的な特徴。SNSでは拡散してしまったら、その影響は誰にも止められない。そこには「教育的配慮」も「温情」もない▼「悪ふざけ」の気持ちでも、実際には「犯罪」スレスレの行為。ネット上のヴァーチャル社会ではそれが横行している側面もあるが、人間は現実世界を生きている。ネット上だけの「倫理」は到底通用しない。(T)


8月26日(月)

●「道南の農家人口は2025年には半減し、農家戸数は4割減る」。本紙の17日付1面で報じられていたので記憶に新しいが、軽く聞き流せない深刻な問題。農業というより食料産業の崩壊すら予期させる▼農業の危機が叫ばれて久しい。それは減反政策など場当たり農政のつけであり、農業離れ、後継者難は少しも改善されないまま。むしろ深刻度は増すばかりで、遂には冒頭の予測▼農林業センサスによる道内の販売農家数は、2010年に4万4千戸を数えたのが、1990年からの20年間でほぼ半減している。道南も例外ではないが、それにしても、この道総研中央農試の予測は衝撃的▼ちなみに12年後、道南の農家戸数は1914戸(2010年は3362戸)、1万2千人台の農家人口も6千人ほどになるというのだから。近年、企業の参入が見られ、法人化も進んではいるが、新規就農は横ばい▼こうした現状と重ね合わせて考えると、中央農試の予測は古くて新しい問題提起。農政への不信に加え、TPPへの不安も募る。将来に展望が開けないとしたら、減少の流れは止められない。「困った」。農業を支える大事な屋台骨が揺らぎ続けている。(A)


8月25日(日)

●「ひとりいる窓のガラスに息かけて小指でなぞる母の文字」—暴力を振るう彼氏を包丁で刺した16歳少女は藤圭子さんの「夢は夜ひらく」に感動して更生、母の字を…▼最近、補導されたり、逮捕される少年少女が多い。広島の殺人死体遺棄事件で逮捕された7人のうち6人が少年少女だった。スマホ向けラインでケンカしたのがきっかけ。「夢は夜ひらく」は流れていなかった…▼♪十五、十六、十七と私の人生暗かった〜。マンション13階から飛び降り自殺したとみられる藤圭子さん。浪曲歌手の父、三味線演奏の母のもと旭川市で育ったが、生活は苦しく、小さいころから地方巡業…▼67年に上京、錦糸町で目の不自由な母と流しで歌っていた。懸命に歌う姿が目にとまり「新宿の女」でデビューしてからは「圭子の夢は夜ひらく」などヒット曲を量産。高度成長期の影の部分を体現、宿命の女性像を演じて…▼♪馬鹿に未練はないけれど〜。レールから外れた少女、迷子になった少女たちが共感、勇気づけられた。施設などで歌い母を想ったという。宇多田ヒカルという偉大な歌手を産み、孫を抱くおばあちゃんが目前だったのに。天国でも「夢は夜ひらく」を熱唱して…。(M)


8月24日(土)

●銀河鉄道に乗って一番遠い星に行って、宇宙人と話してみたい。大人になってもよく夢想した。宇宙の謎を解く日本の新型ロケット「イプシロン」が27日に打ち上げられる▼全長24メートルで従来のロケットより7メートルほど小さく、打ち上げ費用も20億円ほど少ない。惑星を観測する宇宙望遠鏡をつけた衛星を載せる。人手を掛けていた点検を自動化、パソコンを使うモバイル管制も導入し、遠隔観測する省エネ衛星▼「イプシロン」はギリシア文字の名称から付けられ、数学の記号で使われるときの「小さな存在感」とのニュァンスも含まれているという。広大な宇宙で存在感を示して、できれば知的生命体の発見も…▼米政府はネバタ州にある意味深な区域「エリア51」の存在を認めた。ステルス戦闘機などの開発拠点とされているが、墜落したUFOを隠したとか、宇宙人と共同生活しているとか、さまざまな風評が流れていた▼SF映画などの舞台となっていたが、秘密のベールが脱がされた。ファンは「次は宇宙人存在の証明だ」と期待。すばる望遠鏡が230万光年のアンドロメダ銀河の全体像を撮影した。子どもに夢を与え、大人を元気づける。イプシロンの成功を祈りたい。(M)


8月23日(金)

●あまりにもショッキングな研究報告が報じられた。自然災害を巡って…洪水や高潮などの被害は増えこそすれ、減らない。必要なのは避難や復旧について対策を検討することだというのだから▼研究成果を発表したのは世界銀行と欧州の研究者のチーム。世界の主要136都市を対象に人口増加や海面上昇、地盤沈下などのデータから導き出したということだが、その内容はまさしく人類への警告▼異常気象が言われて久しい。道南も直撃されたが、今夏は局地的豪雨が国内各地を襲って洪水被害をもたらしている。だが、将来的な不安はもっと大変なレベルのよう。何も対策をとらなければ、2050年には…▼世界の沿岸で起きる洪水や高潮などによる被害総額は現在の約170倍、金額にして1兆㌦(約98兆円)にもなるという。たとえ防波堤などのインフラを十分強化したにしても、約¥10¥倍は避けられない、と▼地球温暖化による海水温の上昇や地下水の汲み上げなどによる地盤沈下が進み、人口も増加する。自然災害による被害が広がっておかしくないし、世界的に現実問題となっている。そう考えていくと、この報告は机上の論理と聞き流すわけにはいかない。(A)  


8月22日(木)

●7月27日の隅田川花火大会は、突然の雷雨により開始30分で中止。中国地方は記録的な大雨に見舞われ、8月に入ると秋田県では集中豪雨による土砂崩れで7人が死亡した。高知県四万十市では41・0度の国内最高気温。日本列島がおかしい▼気象庁によると「バケツをひっくり返したような雨」とは1時間雨量で30〜50ミリを指す。50〜80ミリで「滝のような」、80ミリを超えると「圧迫感があり、恐怖を感じる」。18日の大雨は、厚沢部町や八雲町で100ミリ前後に達したというから、ただごとでない▼2週続けて線路の砂利が流された八雲町のJR函館線では、国道5号の下を通る河川の水路が大雨で氾濫した。3年前にも同様の氾濫を起こしており、抜本的な対策が求められる▼異常気象の原因はまだ特定されていないという。しかし、こうも観測史上初めての事態が続くと、環境破壊のせいではないかという疑念がわいてくる▼今回のJR事故は水路の増水が直接の原因だが、山全体の保水力が低下していることも一因ではないか。水を蓄える森林の減少だ。現に噴火湾は、多少の雨で汚れた水が一気に河口に吐きだされ、海が濁る。自然からのしっぺ返しは怖い。(P)  


8月21日(水)

●♪ジワジワッとふくらんで もう少しで出来上がる お米はおいしいな〜。全盲で脳性マヒの障害を抱えた新潟県の11歳少女が大震災の被害者のために作詞・作曲した「お米の歌」がCDになった▼少女は予定日より3カ月も早く生まれ、光を失った。盲学校に入ってピアノを習い、大震災の被害者が何日も食事が取れないことに心痛め「ご飯がたくさん食べられますように」と自ら弾き語り、勇気を与えている▼ミネラルやビタミンを豊富に含んだ米飯。お米の粘りは夏バテで傷ついた胃腸の粘膜を修復し保護する効用がある。消化がよく栄養バランスが取れた夏の食事。食パンなど米を使った食べ物が増えた▼久しぶりに上京、店先で「TKGあります」という張り紙を見た。T(たまご)K(かけ)G(ごはん)。手軽に作れて、ほかほかの卵掛けご飯。とにかくワンコインで満腹。昼食代が節約できる▼かつて食料節約のため週1度「節米デー」があった。大豆などで代用。マチの食堂から米が消えた。自給率40%の日本だが、米だけは自給自足。♪お米のハンバーク お米のケーキ お米はおいしいな〜。盲目少女の弾き語りを聴きながら、お米パワーで夏バテを吹っ飛ばそう。(M)  


8月20日(火)

●夜勤の合間、一服するために社屋の外に出る。ほっと一息ついた瞬間に、五稜郭駅の方角から「ぴいっ」と夜汽車の甲高い汽笛が聞こえることがある。何とも言えない情緒に包まれる大好きな瞬間だ。ここ数日、途絶えていたその汽笛の音が戻ってきた▼八雲町内のJR函館線で起こった貨物列車の脱線事故に、大雨が追い打ちをかけ、特急は丸2日以上の不通。お盆のUターンを直撃し、函館競馬場でも初のGⅡ競走・札幌記念の客足が伸びなかった。影響はまさに甚大▼旅客の問題に目が行きがちだが、十勝地方の知人からは「農産物を本州に送れなくて困っている」との話を聞いた。スイートコーンや野菜は鮮度が要求されるので、輸送機関の変更は大変らしい▼地図を見るまでもなく、函館線の函館—長万部間に代替経路はない。海峡線もそうだ。この区間で大事故が起こると、全面運休はまぬがれない▼JR北海道は相次ぐ運休で窮地に立たされているが、批判が寄せられるのは仕事がそれほど重要だから。通常運行という「当たり前」は蓄積された知識と経験の上にのみ成り立つ。道民の「生命線」を長く維持してきたプロの鉄道マンの再生に向けた奮起に期待したい。(T)  


8月19日(月)

●先日、函館を訪れた友人を案内して、駅前の「函館朝市どんぶり横丁市場」を訪れた。函館に20年近く暮らす筆者だが、このような来客がなければ朝市に足を運ぶことはなく、なんだか浮き浮きした気持ちで横丁に入った▼夏休み期間ということもあり観光客の数も多く、店前の海鮮丼のサンプルを見比べて、どの店に入ろうか思案している人たちでごった返していた▼筆者が入ったのは、横丁で唯一利用しているお気に入りの店。以前、別の知り合いに「ここが一番おいしいよ」と勧められて以来、来客をもてなすのはここと決めている▼さて友人は「こんな甘いウニは食べたことがない」と驚きの様子。実は地元の人間でも、めったに高いお金を払って食べるものではないのだが、筆者は済まして「これが本当のウニの味なんだよ」と自慢げに返した。同時に、自分のお気に入りの店に満足してもらえたことにほっと胸をなでおろした▼ところで、店の外に出ると20人くらいの長い行列にびっくり。この店の評判はネットなどを通じて全国各地に広まっていたようだ。もしかしたら地元民が知らない情報も伝わっているのかもしれない。地元民として勉強不足を痛感した(U)  


8月18日(日)

●猛暑に局地的豪雨…今年の夏ほど気象現象がトップニュースに取り上げられた年はない。まだ継続中だが、高知・四万十の41度などでは40度を超え…その一方で列島を移動しながらの局地的豪雨である▼最高気温が35度以上記録した日を猛暑日というが、猛暑どころでない地域が多々。北国に住んでいると、高い湿度と気温、猛暑の中での生活は想像を絶するが、これでは体に変調を兆して当たり前▼水分の補給など「熱中症対策に気をつけていても」ということだろう。消防庁の速報で、5日から11日までの間に緊急搬送された人は全国で9815人。この猛暑、そろそろ収まってもいいと思いきや、まだ1週間ほどは▼気象庁によると、24日ごろまでは続くとのこと。地表に近い太平洋高気圧だけでなく、上空にあるチベット高気圧の勢力も強まって…。つまりこの2つの高気圧の相互作用によって猛暑になっているのだという▼それが直接的な原因と分かるとしても、知りたいのはそうなったメカニズム。今年の夏に限った現象ならいいのだが、そうでないとしたら。地球の温暖化と無縁でないのではないか、という思いも拭えない。海水温が総じて高くなっている現実が気にかかる。(A)  


8月17日(土)

●Eメールやゲームに夢中になる“インターネット依存”の強い中高生が全国に約52万人いる—。厚生労働省の研究班がこのほど、そうした推計値を発表した。これは軽視できる数ではない▼推計数は昨年10月〜今年3月、全国14万人に実施したアンケートから導き出された。「ネットを制限しイライラした」など依存度の強さを調べる8つの質問中、5つ以上に「はい」と答えたのは、中学生で6・0%、高校生で9・4%▼依存が強くなると、睡眠の質が低下したり、食事が不規則になって栄養状態も悪くなったりする。居眠りなどで授業をまともに受けられなくなるので、学力面での懸念も大きい▼街を歩いていると、スマートフォンをいじっている人が目につく。駅や空港だとその頻度がさらに高いし、若い人ほどその傾向は強いように見える▼随分前のことだが、筆者もゲームに熱中した経験がある。夜更かしが続き、一時的な依存状態にあったので、中高生の“ネット依存”を笑えない。経験上言えるのは、使用時間の制限など依存に至らないような対処が何より大切だということ。若いころの貴重な時間をネットのバーチャル体験で過ごすのはもったいない。(T)  


8月16日(金)

●子や孫と懐かしい家族団らんの3日間を過ごした先祖たちは送り火にのって帰って行く。「あの日」も向日葵は太陽に向かって咲き誇った。鳴きやまぬ蝉時雨も喜怒哀楽の盛夏を演出▼子供のころ、セミを捕っていると「お盆のセミは捕まえるな」と叱られた。盆に殺生は禁物だから。長く地中で過ごした後、地上で短い命を終える。それでも捕ったが、翌日あっけない死骸を見るだけだった▼飽食時代の今、好きなものだけ食べ、食べ残しもいっぱい。しかし、戦後は野草も見逃さず、雑草や桑の葉も。特にセミのフライや天ぷらの味が忘れられない。昆虫は栄養価が高いといわれ…▼中国の漢代に死者の口に玉製のセミを含ませて魂が抜けるのを防ぎ、羽化の姿に来世への祈りを託したという。一方、赤紙(召集令状)1枚で戦場に送られ飢えをしのぐ兵士にセミは“来世への命”を与えてくれなかった▼映画「八日目の蝉」を観た。セミは7日間しか生きられないというけれど、もし8日生きることができたら、どんな悲喜が見られるだろうか。「あの日」の8月15日が14日だったら何十万の命が救われたはず。「盆にセミを捕るな」は戦争(殺生)厳禁ということだ。(M)  


8月15日(木)

●食料自給率が改善される動きにない。農林水産省は8日、昨年度のデータを公表したが、3年連続して39%にとどまった。米と野菜を除いたほとんどの品目が50%を割った実態も変わっていない▼食料自給率とは国内消費に対する国内生産の割合。100%以上だと輸入に頼らず国内の生産量で賄っているということ。“食料安保”という言葉が示すように、自給率は高いに超したことはない▼オーストラリアやカナダ、フランス、アメリカなどは100%を超え、ドイツの80%、イギリスの65%などに比べても我が国の見劣りは顕著。先進国の中で最低レベルだが、その我が国もかつて70%時代があった▼50年ほど前に遡る。その後はパン食の浸透など食生活の欧米化というか変化によって…。自給出来ている米の消費は減り、生産量の少ない畜産物や大豆などの穀物の消費が増え、輸入への依存は拡大するばかり▼食生活は急速に変わるわけではない。農政が改善の方向にリードしていけるならまだしも、それも期待薄。TPP(環太平洋連携協定)も懸念材料として重くのしかかる。国が掲げる目標は「2020年度に50%」。だが、達成への展望は少しも見えてこない。(A)  


8月14日(水)

●北極海で海氷の減少が進んでいる。宇宙航空研究開発機構(JAXSA)の調査によると、海氷は昨年9月に過去最小の349万平方㌔を記録。1980年代の半分以下となり、5年間で日本列島2つ分がなくなったという▼地球温暖化が原因で、海氷減少が世界の気候変動に影響しているとの報告がある。近年、日本列島で続く記録的な猛暑や豪雨、大雪もその影響かも。一方、氷が解けると北極海の航路が開け、日本からヨーロッパまでの北極航路はアフリカ南端を通るルートの半分程度で済む▼心配なのは、生態系のバランスが崩れないかということ。もし、海水温の上昇からそれまでいなかった魚が入り込めば、回遊ルートや漁場の変動につながり、食物連鎖や水産資源に影響することが考えられる▼そうしたことを調査する北大水産学部の練習船おしょろ丸が、約1カ月半の航海を終えて函館に帰港した。海原を越え、厳寒の海で海洋観測を行い、魚やプランクトン、海氷などを採取した▼持ち帰ったサンプルが、北極海の変化を知り、未知を開く羅針盤となるかもしれない。地球全体で進む環境問題という荒海を乗り越える、大きな研究成果を期待したい。(P)  


8月13日(火)

●目連は餓鬼道に堕ちて苦しんでいる母を見た。釈迦の「1人の力ではどうにもならぬ。7月15日に十方の大徳衆僧に供養しなさい」という教導に従ったところ、母は救われた。お盆の始まり▼お盆は倒懸といい「倒さに懸かれる者」という意味。目連の母ばかりではない。まな板の上で切り刻まれたり、大きな臼ですりつぶされたり、口に溶けた銅を注ぎ込まれたり…罪人を責める鬼たち▼現世は気温が40度にもなる「灼熱地獄」。脳が熱せられて熱中症に。鬼の形相で落雷し大雨。列島は「豪雨地獄」に傷つけられ…。それに高齢者には養護者による「虐待地獄」もひしひし▼小紙によると、昨年度の函館の高齢者虐待は最多の48件。「叩く」「蹴る」の暴力や「死ね」「馬鹿」「出て行け」など暴言の心理的虐待、介護放棄…。中でも介護施設の従業員が入居者5人に行った虐待はむごかった▼後頭部を平手打ちし、部屋の入り口に自転車のチェーンロックをかけ、土下座を強要。目連は「倒さに懸かれる母」が救われた時、喜びのあまり踊ったのが盆踊りの始まりとか。先祖が帰って来る、子どもたちが帰省する。「餓鬼道や虐待道は飛んで行け」と、一緒に踊ろう。(M)  


8月11日(日)

●麻生副総理は先月29日、憲法改正に関連、ドイツのナチス政権を引き合いにして、こう言った。「あの手口学んだらどうかね」。指摘を受けて撤回はしたが、その影響はなお尾を引いている▼続いてというか、この7日には就任したばかりの溝手自民参院議員会長が、新人議員向けの会合で、こう語った。「…大変勢いのよい首相の下だと、ばかでもチョンでも(選挙に)通る」。あわてて謝罪したが、すでに遅し▼チョンは韓国、朝鮮の人たちに対する差別表現とされる言葉。議員に対しても失礼で、有権者をも愚弄する。追い風の要素があったことを忘れずに、と言いたかったとしても軽率のそしりは免れない▼「言うべきでないことを、うっかり言ってしまうこと」。それを失言というが、立場が重い人ほど発言と責任と背中合わせ。その最たる立場は政治家であり、とりわけ問われるのは政党幹部や大臣ら▼それだけ影響力が強いということである。取り返しがつかず、その職を辞さなければならなくなった例も少なくない。言うまでもなく、失言は政治不信を増幅しかねず、単に撤回で幕引きとならない理由もそこにある。自覚と責任を願うだけなのがもどかしい。(A)  


8月10日(土)

●♪今は山中 今は浜 今は鉄橋渡るぞと〜 人里離れた辺地にあって、鉄道でしか行けない「秘境駅」。下車して、次の列車まで、自然の中で過ごす「秘境駅の旅」が人気とか…▼こちら来年5月に廃線となるJR江差線のモニュメントとして人気の「天ノ川駅」。ホームらしきものはあるが、駅舎などない幻の駅。「天の川」は上ノ国町の中心部を流れる二級河川▼「天の川」の由来は、江戸時代に上ノ国に上陸した宣教師が表記した蝦夷地図に上ノ国の古名「ツガ(チガ)」の「天河」からとったといわれている。アユ、ヤマメの釣りスポット。かつては列車通学で高校へ▼「天ノ川」は秘境駅どころか、永遠に走り続ける天の川鉄道の幻の駅。鉄道ファンが駅名標識ふうの看板を立てたのが始まりとか。天の川七福神の縁起切符に「『夢』天ノ川」もある▼今は立ち入り禁止だが、「天ノ川駅を通過して、幻の駅を列車が通過する景色を見よう」という無料シャトルバスが9日から18日まで運行(江差駅|湯の岱駅)。天ノ川第2鉄橋など、江差線の廃止を受けて駆けつけている鉄道ファンにはたまらない企画。「エゾ地の火まつり」も。♪変わる景色のおもしろさ〜(M)  


8月9日(金)

●中央最低賃金審議会は6日、新たな地域別最低賃金(時給)の目安を決めた。7月末の本欄でも触れたように、時給換算で11都道府県が生活保護費を下回る状況になり、その解消が求められていた▼誰もが知るように、法に基づく最低賃金は使用者が労働者に支払う賃金の下限額。つまり、これ以上支払うことを強要する基準額であり、議論はあっても一定の賃金水準を保つ役割を果たしている▼現在は全国平均で一時間749円。ただ経済環境や賃金レベルの違いなどから都道府県で差があって、北海道は平均より30円低い719円。それが妥当か否かはともかく、生活保護費を下回るとなると改定は当然▼安倍首相の見直し表明を受け、同審議会が出した答えは、全国平均で14円アップの763円。1日5時間、月20日間働いたとして月額1400円の収入増となる。これで10都府県は生活保護費との逆転現象が解消される▼ただ、北海道は11円から22円と幅を持たせ、最大でも741円。時給換算で22円差があったから、最も上がったとしても生活保護費と同額になるだけ。あと数円が企業経営の負担になるとの判断なのだろうか。なぜ北海道だけ…理解に苦しむ。(A)  


8月8日(木)

●夏の観光本番を迎え、駅や空港の混雑が本格化している。なかでもこの夏は、JRが出火事故を受けて札幌間の特急を減便したため、指定席が取りづらい。本紙も4日付で「自由席争奪戦」を報じた▼自由席乗り場に行列ができる光景は、以前ならニュースにならないほど日常的。特に、青函連絡船が運航していたころは、船と駅とを結ぶ通路は大きな荷物を持った旅行者たちでごった返し、自由席目指してダッシュするのは珍しくなかった▼筆者も大学生のころ、京都から帰省するために、JRの北海道ワイド周遊券をよく使わせていただいた。大阪発青森行きの「特急白鳥」に乗り、13時間かけて青森に着き、連絡船に乗った。函館では例外なく「特急北海」に向かう争奪戦に巻き込まれたが、ほとんどは敗退してデッキで立つはめに▼函館市史によると、以前の函館駅からは、網走行きの「おおとり」、釧路行きの「おおぞら」などの長距離特急や札幌行きの「ニセコ」など鉄道ファンならずとも懐かしい列車が出発していた▼函館駅の混雑は、北海道の入口としての忘れ難い風景。だが、時代が変わった今の混雑はちょっといただけない。争奪戦の解消はできるだけ早期に—。(T)  


8月7日(水)

●国交省は3日、いわゆる車の「ご当地ナンバー」として、新たに平泉や奄美など10カ所の申請を認める決定をした。これで既に交付済みの富士山、仙台、金沢などと合わせ29カ所となる▼帯広ナンバーの十勝地方で一時「とかち」の申請を目指す動きがあったが、北海道での交付例はまだない。そもそも車のナンバープレートに表記される地名は通常、管轄する運輸支局などの所在地となっている▼ただ、地域振興などの観点から特例的に採用する道を拓(ひら)いたのが通称「ご当地ナンバー」。その申請、決定を巡って賛否の激しい論争が起きたという話は聞いていないが、今回、決定された世田谷(東京)では…▼反対する住民が法廷に持ち込んだ。区側は「住みたい街」の知名度を高めると申請理由を説明する一方、反対住民側は車所有者の所在地を知らせ、プライバシーや平穏な生活を奪われる可能性がある」と▼冷静に考えて「ご当地ナンバー」によって、都市や地域の知名度が高まり、愛着心が強まるわけでもない。逆にプライバシーを持ち出すのも説得力に欠ける。たかが車のナンバープレートと言えば語弊があるが、このような論争、今の時代なら起きておかしくない。(A)  


8月6日(火)

●被災地の子どもたちが今年も函館などの大自然の中で伸び伸びと夏休みを過ごしているが、一方で被災地での児童虐待相談は急増しており、全国平均の倍近くというから心痛む▼横浜市で30歳の母親と元同居の男性が6歳の女児に暴力を加えたのを始め、昨年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待は6万件を超え、この10年で2・5倍。児童虐待への住民の関心が高まり通報も増えたが…▼とりわけ東日本大震災の被災地での児童虐待が目立つ。増加率は福島県で前年の20%、仙台を除く宮城県が28%など。特に原発事故の被災地は過去最多を記録し「震災と原発避難の影響が数字に表れた」という▼県外に母親と幼い4人姉妹で避難した5歳女児は警察に「言うことをきかないからママに出ていけといわれた」と話し、首に絞められた跡。4姉妹は紙パンツだけの姿。震災後の深い喪失感から精神的に追い込まれた母親が育児放棄…▼「虐」は中学で習う漢字。虎が爪をあらわしている形で、爪で人をひっかく危険な様子。「虐」を「躾」と勘違いしている親も少なくない。思いやりが大事。被災地で児童虐待を受けた子どもたちこそ、北海道の大自然に招きたい。(M)  


8月5日(月)

●先日、函館市内の幹線道路沿いに、新しい回転寿司店舗の工事が行われているのを目にした。「どんな店ができるのだろう」と建物に貼られた店名を見て、大手全国チェーンであることに驚いた▼函館にはすでに10数店舗の回転寿司店が存在するが、いずれも地元企業が経営していて、全国チェーンはおそらく初めてのケース。海産物に舌の肥えた地元住民のいる場所に堂々と乗り込むのだから、充分な勝算があっての進出なのだろう▼函館に暮らして15年以上になるが当初驚いたのは、全国展開のファミリーレストランや牛丼チェーンが無いこと。小売業やパチンコ店などの大部分も地元の企業が経営していて、函館という街の独立意識の高さを感じた▼しかし、ここ数年の間にすっかり様変わり。地元資本の老舗が次々と撤退し、テレビのCMなどでもおなじみの全国ブランドの看板が町中にあふれている▼回転寿司業界も同じ道をたどるのだろうか。大量仕入れなどによって安くてうまいを実現した大手チェーンの恩恵を受けるのも消費者の権利。でも地元ならではの独自のノウハウを積み重ねてきた既存店も、函館ならではの個性的なスタイルを守ってほしい(U)  


8月4日(日)

●東日本大震災の復旧工事のうち、落札業者が決まらない「入札不調」が2割に達していたことが、会計検査院の調査でわかった。岩手、宮城、福島で行われた土木工事が調査対象で、応札業者ゼロのケースが大半という。人手不足や資材高騰が原因とみられる▼人手不足感は函館にもあるようだ。市内のある建設業者は「春は型枠工や鉄筋工、仕上げの秋には内装関係の職人が不足する」と話していた。賃金の高い被災地へ技術者が流れていることが背景にあるという▼さらに、復興需要に円安が加わって、資材が高騰している。資材単価と労務単価の上昇は、予定価格の上昇をもたらす。函館市では函館アリーナの総事業費が当初予定より1割ほど上がり、70億円超となる見通しという▼名寄市では、市民ホール建設の入札が、応募者なしなどから不調に終わった。地域経済を下支えする公共工事、しかも10億円単位の大型工事が応札なしとは、以前は考えられなかったことだ▼景気回復の実感は乏しいが、全国的に求人倍率が上がり、就職戦線でも学生の売り手市場が伝えられている。仕事はあるが人がいないという建設業界のような姿が、他業種にも広まるのだろうか。(P)  


8月3日(土)

●熱い8月は第2次世界大戦をめぐる追悼の月。ナチス政権の台頭が人類を計り知れない恐怖の深淵へと追い込み、広島、長崎に原爆が落とされた。世界は今でもナチス政権に拒絶反応▼米国のユダヤ系人権団体は「どんなナチスの統治が学ぶに値するのか。人目を盗んで民主主義を駄目にすることか。学ぶべき教訓は権力の座にある者はナチスのように振る舞うべきではないということだけ」と強く抗議▼麻生太郎副総理が憲法改正をめぐって「ドイツのワイマール憲法はいつの間にかナチス憲法に変わった。誰も気づかなかった。あの手口に学んだらどうか」と発言したからだ。国内はもちろん、国際的に批判を浴びた▼「私の真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾」と撤回したが、「ブラックユーモアだった」と擁護した橋下徹大阪市長にも批判の矢。安倍政権は火消しに躍起だが、後手の感は否めない▼国際経験も政治の経験も豊富なのに失言が人一倍多い麻生氏。海外では「ブラックジョーク」とは受け止めない。長崎で被爆した永井隆医師は巡回診療を続けながら、著書で「如己愛人」の精神で平和を訴えた。ナチス政権から学び、憲法9条を変えてはいけない。(M)  


8月2日(金)

●弊社はここ数日、創刊以来経験したことのない“大波”の中にあった。約50人の社員が朝から晩まで電話にかじりつき、数千件に上る新聞の郵送依頼に対応。直接来社された方も大勢いた。買い求めていただいたのは、7月28、29日付の弊紙。GLAY凱旋(がいせん)ライブを伝えた紙面だ▼野外ライブは多額の経費がかかるので、興行的には難しい。GLAYの強い思い入れがなければ、大都市圏から離れた函館での開催はなかったと断言できる▼函館市も緑の島の改修で後押し。民間団体なども陰に日向に準備段階から支えた。大勢の思いが結集したビッグイベントを、地元紙として中途半端に報道する訳にはいかないと考えた▼取材する上で最大の課題は会場内での写真撮影。その意味で、今回主催者側が認めてくれたのは紙面づくりの上で大きかった。だが、これは音楽の世界では異例の対応と認識している。古里凱旋に懸けるGLAYの特別な思いがあったからこそと勝手に想像している▼そして、当日の紙面。できる限りのスペースを割いて、公演の模様を伝えたつもりだ。一日中取材に駆け回った記者をはじめ、我々地元紙の思いが読者やファンに伝わったのなら、こんなに幸せなことはない。(T)  


8月1日(木)

●現代生活に欠かせないものは多々あるが、必需品中の必需品は電気と水。どちらも手に届かなくなったら一気に生活が混乱する。ただ、電気は凌(しの)ぎようがあるが、水はそうもいかない▼生命に関わるからで、故に水の大切さが叫ばれる。幸い我が国は恵まれている。飲み水として世界的評価の高い上水道を享受し、下水道も普及して…しかも雨不足や災害で施設の破損を起こさない限り断水も少ない▼「あって当然」という感覚にマヒしてか、潤沢に使える水への感謝は希薄。だが、水も無限ではない。雨不足が続いたり、使用量が増えると影響が出てくる。節水が呼びかけられるのも絶対量の懸念から▼1年を通して最も使用量の多いのは8月という。この月に水の大切さを考えてほしい、ということで「水の日」が設けられている。あまり知られていないのが残念だが、その日は8月1日。7日までは「水の週間」でもある▼水の記念日は、ほかにもいくつか。我が国では「地球と水を考える日」としている「国連水の日」(3月22日・国連デー)もその一つ。世界には水に苦労している国が少なくない。そこに思いを寄せると…水を大切に使う運動がもっと広がっていい。(A)