平成25年9月


9月30日(月)

●この夏、北方領土墓参で択捉島を訪れた函館市の駒井惇助さんは、前回の15年前と比べ、ロシア側の友好と誠意を強く感じたと語ってくれた。「ロシア人は慰霊祭を厳粛な態度で見守り、日本人に敬意を払っていた」という▼一方で、上陸地点となった内岡には韓国企業が建設した桟橋があった。このほど北方領土を訪問した山本一太北方担当相も、択捉島で進められている空港建設を見た▼北方領土を実効支配するロシアによる4島開発が進んでいる。6月にはロシア側が4島の共同開発を日本に提案した。しかし、共同開発に応じたら、ロシアの主権を認めることになる▼ロシアにとって、日本の技術力と資金力は大きな魅力。エネルギー問題などを抱える日本にとっても、両国の友好は当然大事。しかし、領土問題解決前の経済協力は、やはり慎重であるべきだろう▼函館市では28日、旧ロシア領事館の一般公開が行われ、大勢の市民らが帝政ロシア時代の文化遺産に触れた。ハリストス正教会があり、2都市と姉妹都市提携し、ロシアの大学で唯一の日本分校がある函館。心理的にはまだまだ遠い国だが、友好の歴史から両国の未来を開く懸け橋が築けないものか。(P)  


9月29日(日)

●「大丈夫です」という意味の『おがまいねぐ』。地味で目立たない主人公が156話で何度言ったことか。それに「じぇじぇじぇ」の感嘆詞。放送が終了したのに、こんなに惜しまれるドラマは少ない▼NHK朝ドラ「あまちゃん」。終盤は大震災から1年4カ月後の被災地。ラストは北三陸鉄道の一部が復旧し、主人公のアキと親友のユイがお座敷列車で拍手喝采を浴びる。復興進む被災地を背に…▼それなのに政府のキャリア官僚が匿名ブログに「もともと、ほぼ滅んでいたリアス式の過疎地。復興は不要だと正論を言わない政治家は死ねばいい」と暴言を書き込んだ。無神経な役人に怒り心頭▼JR北海道の「傷」は深まるばかり。28年間もレール幅に誤った整備基準値が適用されていた。旧国鉄時代にレール幅が変更されていることを忘れ、しかも若い社員に技術が引き継がれていなかった。復旧した北三陸鉄道を見習え▼都会で、被災地で助け合いながら成長したアキ。「今年はウニも帰ってきたし、いっぺえ潜って、いっぺぇ採って」。あまちゃん終了で喪失感に包まれる「あまロス」なる言葉も。仙台に本拠地を置く楽天も、野球の底力を見せてリーグ優勝、勇気を与えた。(M)  


9月28日(土)

●「人間はいつの時代も『速さ』に夢をみる」。確かに言えている。その結果として利便性が向上し、社会機能の活性化が促されているのは紛れもない現実。分かりやすい分野に交通がある▼空路、海路、陸路…その陸路には道路と鉄路がある。空路はプロペラからジェットになり、海路も高速船が台頭、陸路の道路は高速道が整備され、車の性能もアップ。そして鉄路は新幹線時代となって時速300キロ超の時代▼就航、運行数も増え、多様な利用を享受できる。本当に便利になったものだが、さらに「速さ」を追求する計画が現実へ踏み出す。リニア中央新幹線で、JR東海が明らかにした▼時速500キロ、東京(品川)と名古屋間286キロを最短40分で結ぶというから、確かに速い。新夢の超特急と呼ばれる所以もそこにある。ただ、全長の86%がトンネル区間となれば、あの富士山も見えなければ…▼陸路の楽しみでもある車窓からの眺めは多く望めない。鉄路の利用者には様々なニーズがあり、「速さ」もその一つだが、いくら忙しい時代とはいえ、今以上の「速さ」が必要か否か。ただ、一度は乗ってみたい、そこに理屈はない。2027年の開業が予定されている。(A)  


9月27日(金)

●層雲峡から石北峠を下った道路の真ん中に痩せこけたキタキツネ。同乗の九州の知人が「かわいそうに、餌がないのかな」とつぶやく。急停車したら、よたよたと林に消えた▼特に知床が世界遺産になってから、外国人も含め観光客が急増。レンタカーで巡ると、エゾシカやキタキツネ、ヒグマなどと衝突する交通事故も絶えない。どこから入ってくるのか、高速道にシカを見かけたこともある▼路上で発生する野生動物との交通死事故を「ロードキル」と呼んでいる。ヘッドライトに立ちすくみ、高速道だけでも年間のロードキル件数は全国で3万5000件超。一般道を含めるとかなりの数▼道内の道路にはキツネ、シカ、クマなど動物絵柄の標識が目だつ。野生動物は生存条件を満たした行動範囲で生きているが、道路によって生活圏が分断され、山の餌がなくなると、ロードキルの犠牲に▼厚沢部の国道で女性が運転する車がクマと衝突し、女性にはけがはなく、クマも逃げた。今年はドングリが不作で、トウモロコシ畑やゴミ箱がある市街地にも出没。知床では弁当箱など心ない投棄。動物保護も大事だが、人間の命はもっと大事。秋の交通安全運動の真っただ中、ご注意。(M)  


9月26日(木)

●5%から8%へ…来年4月からの消費増税が確定的になった。景気の動向を見ながら最終的な判断を、と期待を持たせたが、結局は規定方針通り。10月早々にも正式表明の見通し▼実施まで半年。政府の判断を見守ってきた事業者にとっては検討が急務。増税分を商品に転嫁するのか、逆に増税分だけ価格を値下げして対応するのか、その判断が売れ行きにも影響しかねないだけに頭が痛い▼一方、消費者は購入予定のある商品を今、買うか、見送るか、といった判断を迫られる。高額商品になればなるほど税額は高くなるのだから、検討の余地が出てきて当然。買い控えも考慮の一つとなる▼その消費動向の鍵を握るのは消費者心理。上乗せ3%は気持ちの上で重くのしかかる。事実、読売新聞が行った世論調査で、56%が「家計の支出を減らそうと思っている」と答え、生活必需品の軽減税率導入を求める声が74%▼8%時には見送られるが、せめて「その分を」ということだろう、代替えの経済対策として求めるトップが固定資産税の減税だったという。経済指標は概ね改善の動きを示しているが、中小企業や庶民の思いとなると、まだまだの域。なのに…自衛するしかない。(A)  


9月25日(水)

●JR北海道が国土交通省の特別保安査察を受けている。レールの異常を長期間放置した事態が発覚したからだ。相次ぐ出火事故に端を発し、従業員の不祥事や異常放置と問題がまさに噴出▼一連の問題を目にして、13年前に取材したある企業の事件を思い出す。それは当時「巨人」と称されていた乳業のトップ企業が起こした食中毒事件。関西で1万人を超す被害者をだした乳飲料の食中毒の原因が、道東の工場が製造した脱脂粉乳だった▼発覚後、工場は操業停止。保健所が原因を究明し、企業側が再発防止策をとった後に再開する流れだったが、大事な証拠品の報告を怠るなど調査への協力姿勢が疑われ、停止は1カ月に及んだ▼その間、関連企業の産地偽装も加わって、会社イメージは急落。結局、その企業グループは再編、解体に至った。食中毒の原因は、簡単に言えば食品を扱う基本をおろそかにしたこと。「巨人」の崩壊とは余りに釣り合わない単純な判断ミス▼話戻ってJR—。一連の問題はプロの鉄道マンにとって基本的な作業の中で起こっている。その解決は専門家にしか担えない。プロのプライドと責任で一刻も早く、安全運行の“出発駅”に立ち戻ってほしい。(T)  


9月24日(火)

●NHKドラマ「あまちゃん」が、いよいよ今週で最終回を迎える。午前8時からの放映を見るために早起きする人が増えたそうだが、何を隠そう筆者もその一人。興味本位で7月半ばから見始めたら、すっかりはまってしまった▼ストーリー展開は脚本家の宮藤官九郎節全開。コメディタッチで漫画チックな描写が満載で、NHKの朝ドラとしては異色な作品であることは間違いない▼でも中途半端にリアリティを追求しワクワク感が失われたドラマが多い中、登場人物のキャラクターを際立たせることにより、感情移入しやすくなっているのが、新鮮な印象を与える要因になっていたのでは▼驚かされたのは、日常の出来事を描くのと同じ視点で震災の事実を伝えていたこと。ブラウン管を通してどこか遠い国の出来事のように感じていた大惨事が、日々の生活のすぐ後ろで起きていた事実を再確認させてくれた▼先日、函館市内で行われたグルメイベントに、劇中ひんぱんに登場する岩手県久慈市の郷土料理「まめぶ汁」の屋台が登場。大勢の市民が行列を作っていたのは明らかにドラマの影響だ。震災への関心が薄れる中、この作品の持つ意義は小さくない。(U)  


9月23日(月)

●同時に10人の話を聞いたとされる聖徳太子は「雪丸」というペットを飼っていた。雪のように白い犬で、太子の愛犬らしく、人の言葉を話し、お経も唱え、死後は太子ゆかりの寺に葬ってほしいと遺言したという▼この世にあまた存在する動物の中でも、犬は人類が最初に家畜化した動物。米国のアラスカでは約2万年前に人に飼われていた犬の骨と歯が発見され、横須賀市の縄文遺跡でも約9500年前の骨が出土している▼狩猟犬、番犬、軍用犬、競争犬、牧羊犬、盲導犬、麻薬探知犬など、働く場が年々増えている。大震災の被災地では災害救助犬が瓦礫の間をぬって活躍した。人間の数万倍とされる優れた臭覚を生かして▼生まれて初めて空をみたセラピー犬「ゆき」の本を読んだ。最近は人間の喜怒哀楽を共有する「アニマルセラピー」としても注目。患者の身体的、精神的、社会的機能の回復を目指す▼犬に触れて、話しかけ、共に歩く高齢者も増えてきた。犬にひかれての散歩はリハビリの効果もある。今や全国のペットは犬や猫だけでも2000万匹。一方で17万匹が飼育放棄などで殺処分されており、愛らしい瞳で「捨てないで」と訴えている。26日まで動物愛護週間。(M)  


9月22日(日)

●「あんなに混雑した駅を見たのは初めて」—。貨物列車が七飯町大沼駅で脱線した事故に関連して、函館駅を取材した記者が帰社後に漏らしたひとこと。見たこともない長い行列がロビーを横断していたという▼これだけ頻繁だと、ニュースではない—と皮肉すら言いたくなるJRのトラブル。道南では昨年以降に脱線事故が5回目。さらに今回はレールの異常を放置したのが原因の可能性がある▼札幌で高校ラグビーを取材していた記者が影響を受けた。帰りの経路が定まらず、結局1日延泊して、HACで帰函することに。ビジネスは日程を動かしづらい。急な運休で余計な出費がかさむ。観光だと、旅そのものをキャンセルされることも。どちらも経済損失は小さくない▼観光客のイメージも心配だ。移動のたびに長い行列があると、せっかくの旅は「疲れ」の思い出になる。駅で並び、バスと臨時特急を乗り継いで札幌まで行くのはつらい▼行列といえば、20日は全国各所で長い順番待ちが発生した。携帯電話「iPhone」の新機種発売。こちらは先週から並んでいた人もいたという過熱ぶり。望んで並ぶのは別として、事故による行列は金輪際にしてほしい。(T)  


9月21日(土)

●医療関係者でなければ病気の症状判断は難しい。だから、吐いた、高熱が出た、などの程度でも、心配になって助けを救急車に。その結果、出動は増え、本来業務に支障が出かねない▼高齢化の時代を迎えたこともあるだろうが、救急車の出動は増える傾向。悩みは軽易な状況での利用で、中には病院への足がない、どの病院に行けばいいのか解らない、などでの利用も。全国的に軽症病人の搬送率は高い▼消防庁のまとめによると、ほぼ半数が軽症という。足としての利用はもってのほかだが、病気の場合、一般の人は症状を重く受け止めがちで、一概に批判はできない。啓蒙にも限界がある▼こうした現実を踏まえ、札幌市は10月から「迷ったら『#7119』」を試みるという。新たに設置する相談窓口「救急安心センターさっぽろ」だが、困って電話をすると、常駐する看護師が話を聞いて緊急度を判断してくれる▼医師らが作成したマニュアルに沿って、必要なら救急搬送に引き継ぎ、そうでなければ別のアドバイスをする。あえて言うなら、消防との間の前さばき機関だが、住民にとっても、消防にとっても助かるシステム。一つの参考例として注目に値する。(A)  


9月20日(金)

●小用で江差へ行った。フロントガラスをたたくゲリラ豪雨。台風は爪痕を残し半日で列島を駆け抜けたが、特急列車からの出火、ATS誤作動などJR北海道のトラブルはいっこうに収まらない▼今度は寝台特急「北斗星」の32歳の男性運転士が札幌の運転所を出る前に、ATS(自動列車停止装置)が作動し出発が遅れるトラブルが発覚。しかも車両故障に見せかけようと“自作自演”だった▼運転士は「機関車に乗っていた後輩2人にミスを知られたくなかった」と、2個のATSのスイッチをハンマーで故意にたたき壊したという。駆けつけた整備士に事実を伝えず、本社は「原因不明」としていた▼先日も島松駅で停車を指示されていた特急列車が無断で発車、120㍍も走行するミス。19日は大沼駅で貨物列車が脱線した。原因解明はこれからだが、なぜこんなに脱線事故が相次ぐのか▼一連の「減速減便」が続く。問題行動を起こす人は「忍耐力が希薄になり、自己中心的で、もまれないまま“大人”になった」との声もあるが、その延長線で乗客の安全を守るATSを破壊するなんて信じられない。安全管理や事故発生時の対応などの見直しが急務。(M)  


9月19日(木)

●3連休に列島を縦断した台風18号に伴い、初めて特別警報が発令された。「数十年に一度の危険な状況」という警報。運用は8月30日からで、こんなにすぐの発令に、まず驚いた。しかも、その場所が災害に強いはずの京都だったことに二重の驚き▼30年近く前になるが、学生時代を過ごした京都。妻の実家が西京区なので、今回はんらんした桂川沿いはなじみが深い。いつもはゆったりと川が流れ、広い河川敷には芝生やグラウンドが広がるのどかな光景が広がる。16日朝、ニュースで見た桂川の映像には背筋が凍りついた▼特別警報発令は京都、滋賀、福井の3府県。京都では一時、函館の全人口に匹敵する26万人余りに避難指示。住宅浸水が3400戸を超えるとみられ、被害は甚大▼気象庁によると、特別警報は、東日本大震災や1959年の「伊勢湾台風」などのクラスに発令するという。今回の死者・行方不明者は、先の2災害ほどではなかったが、逆にこの警報のおかげで被害を防げた可能性も▼地球全体の気象変動が指摘され久しい。日本でも豪雨や竜巻などが頻繁に起こっている。特別警報がでるような災害は、地球が発令している「警報」なのだと自覚したい。(T)  


9月18日(水)

●先進国では食べ物が捨てられ、後進国には満足に食べられない人たちがいる。何とも悩ましい話で、紛れもない現実だが、改めて実態を知らされると、自らを振り返って反省せずにはいられない▼戦後の食糧難の時代、食べ物を残したり、粗末に扱ったりした時に「バチが当たる」と言われたものだが、それも今や死語に近い。平気で残す、捨てる、がまかり通って、その量たるや年々増えて…▼我が国の食品ロス(食べられる状態なのに廃棄される量)は、年間500万トンとも800万トンとも言われる。見た目が不揃いだとか、消費期限ならともかく賞味期限を過ぎたから、などと食卓に上がらずに捨てられる量も半端でない▼それが先進国など世界全体となると…「世界で生産された食料の3分の1が食べられることなく廃棄されている」「その量は年13億トン、日本円にして約75兆円」。そんなにも…驚かずにいられない▼発表したのは国連食糧農業機関(FAO)。これだけ捨てられる一方で、世界で8億人以上の人が飢餓の状況に置かれているとも言われる。そこに思いを寄せると、持っていたいのは「もったいない」の気持ち。この報告は警告の響きを伴って聞こえてくる。(A)  


9月17日(火)

●大相撲の名門部屋がまたひとつ、消滅しそうだ。横綱北の湖、大関北天佑らを輩出した三保ケ関部屋が、11月に幕を閉じる。三保ケ関親方(元大関増位山)の定年で継承者がいないことが理由という▼増位山は大関としては短命だったが、キレある技で相手の体勢を崩し、スピードで寄っていく取り口が美しかった。美男、美声でレコードデビューするなど、タレントの横顔も見せた▼角界では部屋の消滅が続く。昨年4月には横綱旭富士を育てた大島部屋が、5月には初代横綱若乃花や横綱輪島を出した花篭部屋が、今年1月には横綱大鵬らが育った二所ノ関部屋がなくなった▼親方の独立や定年などで分家や統合を繰り返す相撲部屋だが、近年は経営難という壁もあるようだ。関取を目指す若い力士の衣食住の面倒を見て、部屋を維持していくにはお金がかかる。景気が良く、相撲人気も続いたころは、気前のいい後援者もいただろうが…▼相撲人気の回復なしには、部屋の再生も隆盛もない。強い力士なしに、土俵の魅力も生まれない。八百長や野球賭博問題など、角界は未曽有の荒波を受けたが、しっかり改革を成し遂げ、名力士とともに名親方を育ててほしい。(P)  


9月16日(月)

●初めてインターネットの通信販売を利用したのは、今から10年以上前になるだろうか。地元の店舗には置いていない輸入CDを手に入れるために、ドキドキしながらモニター上で手続きしたのを覚えている▼今や数万円する電化製品さえ、ちゅうちょすることなく注文できる状況。幸いなことに金銭詐欺的行為や、発送に関するトラブルとは無縁で、ますます快適なネット通販ライフにはまりつつある▼現実社会はこの流れを的確に反映している。顕著なのが、書店やレコード店が次々と姿を消していくこと。学生時代から行きつけだった老舗が店じまいする度に、残念な思いと同時に一抹の罪悪感を抱いてしまう▼先日、弘前市に遊びに行く機会があったのだが、人口規模では函館の半分強の都市に、専門書がずらりと並んだ大型書店が複数存在しているのに驚いた。これは総合大学が存在していることが大きな要因だと思うが、ネット上では味わえない、直接手に取って品定めをする充実感を存分に楽しませてもらった▼うれしいことに函館にも今年の冬、全国チェーンの大型書店がオープンするとのこと。今からどんな出会いがそこで待っているのか楽しみである(U)  


9月15日(日)

●米航空宇宙局(NASA)は12日、36年前に打ち上げた無人探査機「ボイジャー1号」が太陽系を離脱し、恒星間空間を飛行していると発表した。人工物がこの空間に出たのは初めて。宇宙開発史に新たなページが刻まれた▼ボイジャー1号は1977年9月に惑星探査用として発射され、当初の目的を果たした後、系外を目指して、時速約6万㌔という途方もない速度で飛行。ついに太陽から約190億㌔の彼方に到達した▼NASAは昨年6月ごろ、「太陽系の境界付近にいる模様」と発表したが、恒星間空間への突入には慎重な見方。だが、今回磁場の変化などを分析し、太陽系離脱と断定した▼ボイジャーで思い出すのは、SF映画「スタートレック」。このシリーズは現在公開中の「イン・トゥ・ダークネス」を含めて12作あるが、最初の作品にボイジャーが登場した。今から260年後、この探査機が地球に大きな危機をもたらすという設定▼スタートレックでは、有名なセリフがある。「宇宙は最後のフロンティア」。ボイジャーは長い年月をかけて、やっと一歩を踏み出した。2020年ごろまではデータを地球に送信し続けるという。ロマンは広がる。(T)  


9月14日(土)

●記者になっての初取材は市青少年事務室次長の関輝夫さんだった。児童館などなかった時代、自宅の三畳の玄関に本棚を設け図書室として開放、毎日、50人ほどの子供たちが利用した▼読書を通じて子供たちを危ない遊びや非行化から守ろうというのが狙い。石川啄木の義弟からも「私も幼いころ貧乏で本は読めませんでした」と辞典や参考書、児童小説など160冊が届いた▼当時の非行少年の温床は映画館で、映画を見ながら喫煙、飲酒。関さんや児童相談所の係員が廊下に呼び出して補導した。後日も「勉強しているかい」などと話しかけ、相談相手をしていた。青少年の兄や姉となって更生させる函館BBS運動の始まりだ▼本紙創刊のころ、コラムに上磯町(北斗市)庁舎の書額「和願愛語」の真髄について書いてくれた。職員は常に笑顔を絶やさず、優しい言葉かけで住民に接しようというもの。「明るく楽しい社会づくりにも役立つ」と強調▼市民会館長のとき、市民歌舞伎「初春巴港賑(はつはるともえのにぎわい)」を立ち上げるなど、地域文化の創造と継承に尽力したが、病魔には克(か)てず、帰らぬ人となった。彼岸でも子供たちに「和願愛語」を呼び掛けていることだろう。(M)  


9月13日(金)

●人間、幸せを感じるのは、精神的にも物質的にも満たされている時だろう。それが欠けた時にはストレスを覚え、精神的に悩みを抱えてしまう。悲しいが、誰しも味わう現実である▼1億総ストレス社会とも言われるが、世の中の動きが早く、すべてに競争の激しい現代は、紛れもないストレス時代。多いのは働き世代だが、全世代平均で57%の人がストレスを訴えているという調査データもある▼一昨年の厚労省資料によると、精神疾患で医療機関にかかった患者数は、うつ病の96万人など320万人。近年、大幅に増えているという。今や社会問題とも言われるのはそれ故だが、世界的にも大きな懸案▼最近、こんな報告があった。アメリカのコロンビア大学地球研究所が発表した「幸せな国」番付。不幸を感じる要因としての貧困や失業、家庭崩壊、身体疾患などのデータに基づいた評価で、我が国は156カ国中43位▼この報告には大きな意味が込められている。それは、結果に最も影響を与えた要因が慢性的精神疾患の実態というのだから。人間関係も難しい時代、せめて「生活の安定があれば」となるのだが。現実に目を向けると、この順位は甘んじて受けるしかない。(A)  


9月12日(木)

●登山者の約8割の人が理解を示した。富士山の入山料(保全協力金)の本格導入について。本来なら10割レベルであってほしかったが、無料できた経緯を考えると、予想の範囲内なのかもしれない▼今夏の試行前にも触れたが、欧米などでは入山料を徴収する例は珍しくない。そこにあるのは「環境を守るため」に要する経費は、その環境や景観などを堪能する人が負担するのは当たり前という考え方▼富士山に限らず、人気のある主要な山への登山者は年々増えている。事故防止のため登山道の整備も必要ならば、トイレやごみ処理なども大きな課題。それに要する経費の一部を受益者に担ってもらって、少しもおかしくない▼自然に負荷をかけ、楽しみを享受する見返りとして。その背景にあるのは、広義に解釈した受益者負担や公用負担の考え方であり、登山ブームが続くことを想定すると、対策は公費とばかりはいかなくなる▼もちろん、その対象はいわゆる人気の山。国内でもすでに導入例があるが、富士山が遅まきながら議論を提起したということ。確かに、この約8割が理解という調査結果は富士山に限った回答だが、登山者からのメッセージとして持つ意味は大きい。(A)  


9月11日(水)

●今年の流行語は朝ドラの「じぇじぇじぇ」だけではない。「キスフレ」や「アベノミクス」、ドラマ「半沢直樹」の「倍返し」。7年後の東京五輪を勝ち取った「おもてなし」も加わった▼「もてなし」は「モノを持って成し遂げる」という意味。モノとは核になるアイテムと接客力。広辞苑には「とりなし」「ふるまい」「取扱い」「馳走」とある。ふれあいとコミュニケーションが大事▼IOC総会の最終プレゼンテーションでニュースキャスターの滝川クリステルさんはフランス語のスピーチに日本語の「おもてなし」を織り込んだ。委員らの心を動かし、東京勝利の要因となった▼「もてなし」には「そぶりをする」「見せかける」という意味もある。安倍晋三首相はプレゼンで福島原発の汚染水問題を巡って「完全にブロックされている」「コントロール下にある」と言明した。井戸の地下水汚染が拡大しているというのに…▼被災地の子どもや五輪アスリートたちに「安全と責任を持っている」とも約束。「汚染水解決」という国際公約に「そぶりをしない」よう重い宿題を残した。「もったいない」と同じように「おもてなし」を世界に広げ、誇れる東京五輪を期待したい。(M)  


9月10日(火)

●2020年の夏季オリンピックの開催地が東京に決まった。招致合戦の最終段階で浮上した福島第1原発の汚染水問題をめぐる関係者の発言には違和感を覚えたし、東京への一極集中が今後さらに加速するのかと思うと、素直に喜べない半面、やはり日本で開催される五輪は楽しみだし、ぜひ成功して欲しいと思う▼安倍首相は首相官邸LINEで、「この勝利は、国民が一つになった結果」と発信した。言葉通りに受け取るなら、今回は名称こそ「東京」だが、「日本」の五輪だととらえられる▼今後、競技場や交通インフラ整備などが東京に“傾斜配分”されるだろう。決まった以上やむを得ないことだが、地方にそのしわ寄せがあってはならない▼地方側も無策ではいられない。すぐに思いつくのは直前キャンプの誘致。2002年のサッカー日韓ワールドカップでは、26カ国が日本国内で直前合宿を実施し、話題を提供した。五輪は競技・種目が数多いので、チャンスも広がるはず▼函館をみると、屋内体育館(アリーナ)が完成している予定。施設の質や東京からの距離・時間を考慮すれば有力な合宿地となり得る。本気で誘致を進めてはどうだろうか。その価値はある。(T)  


9月8日(日)

●明治以来100年以上続いた「差別」が、撤廃されそうだ。結婚していない男女の子(婚外子)の遺産相続分を、結婚した夫婦の子(婚内子)の半分とした民法の規定を、最高裁は違憲と判断した▼欧米諸国では同様の規定が撤廃され、日本は国連から是正を求められていた。多様な家族観や婚姻関係、子どもの尊厳を認めていくことが必要で、判決は時代の要請に合ったものだろう▼ただ、日本の婚外子の割合は極めて低い。スウェーデンやフランスは5割を超え、イギリスやアメリカも4割ほどだが、日本は2%台。事実婚の子どもも法律婚の子どもと同じ扱いをする外国と、そうでない日本とでは受け止め方が違う。婚姻制度崩壊への危惧もそこから生まれる▼「未婚の母」という言葉から知れるように、わが国では婚姻関係のない親に冷めた視線が向けられてきた。しかし婚姻という形にとらわれない時代の波は着実に到来している。事実婚の社会的認知も進みつつある▼今回の判決が相続の部分を抜き出しただけの平等で終わらせないようにするためには、諸制度とともに社会の目も変わらなければならないのではないか。もちろん、議論は欠かせない。(P)  


9月7日(土)

●秋風に揺れる稲穂、コスモス。7日は二十四節気の一つ「白露」。野草に露が宿って白くみえ、冷風を感じ始める候。原発事故による放射能汚染の東日本にも咲き競う秋の草花が見たい▼原発事故を巡る最近のカタカナ語にトレンチ(地下道)やドレン(排水口)デブリ(残骸)がある。それにリプレース(交換)やリソース(資源)なども加わって、かっこ書きがなければ理解できない横文字がずらり…▼その高濃度汚染水がたまったトレンチから水を抜き取り、海への流出を防ぐ作業。加えて、350基ある地上タンクの汚染水まで漏れ出し、海に流出している可能性があり、全基に水位計を付けるというが…▼そこで国費470億円を投じ、国が面前に出る汚染水対策の方針を出した。まず300億円かけ大手ゼネコンが提案した「凍土遮水壁」を設置する。地下水を止めるため周りの地中を凍らせる壁▼4基の原発を囲む大きな壁だが、効果は未知数とか。事故収束は遠のくばかり。東京五輪招致で汚染水の影響を受けない“安全な五輪”をPRする思惑もあるのか…。シーベルトやセシウム、高数値が出るごと恐怖感が募る。避難住民が早く秋の七草を摘むようにしてほしい。(M)  


9月6日(金)

●2020年の夏季オリンピック開催地が日本時間の9日午前5時発表される。現在、アルゼンチンで開かれている国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、招致合戦は最終段階を迎えている▼立候補しているのは、東京、マドリード、イスタンブールの3都市。それぞれに長所と短所がある。この局面にきて、各都市は特に短所の打ち消しに躍起。マドリードは経済危機、イスタンブールは治安面が“アキレスけん”。そして、東京は福島第1原発の汚染水漏れ問題が“標的”になっている▼東日本大震災から2年半を経て、原発事故は収束の道筋がはっきりと見えない。それどころか、国際評価基準で「レベル3」(重大な異常事象)に位置付けられる汚染水漏れが発覚。世界が不安に思うのは当然だ▼そこで気になるのは、「東京は安全です」の言葉。関係者が必死なのは十分に理解できるが、相次ぐ安全発言は原発の現状と余りに乖離している。「臭いものにふた」と感じたのは自分だけだろうか▼東京五輪の招致は震災からの復興を旗印に進めてきたはず。今、問われているのは東京の放射線レベルではない。事故収束に向かう国の姿勢にこそ本質が隠されている。(T)  


9月5日(木)

●車で一般道を走っていると、市街地を通過するたび、街路花壇の花が目を楽しませてくれる。市町村別のコンテストも一考かと思ったりするが、それほどに素晴らしい植え込みが少なくない▼高速道ばかりでは景色も単調で、運転に緊張もする。その点、国道などは変化を感じさせ、気持ちを和ませてくれる。その一つに街路花壇があるのだが、毎月同じ道を走っていると、その移り変わりも楽しみ▼一方で実感するのが、どこも除草など管理が行き届いていること。市街地の国道両側はかなりの範囲であり、花も結構な数。担っているのは町内会とか老人クラブとか、地域の人たちなのだろう▼自分たちが関わることで身近に感じ、だから植え込みに工夫もするし、その後も草を取り、水を与え、大事に見守っていく。環境美化で住民が果たす役割は大きいが、その取り組みは紛れもない地域活動の原点▼そう考えると、街路花壇は住民と行政の協働として分かりやすい一つの事例。取り組みを通して地域の結束を確認し合える点でも意味がある。そんな街路花壇が街に彩りを与えるのも、あと1カ月ほどだろうか。市街地を離れると野生の草花が秋の到来を告げている。(A)  


9月4日(水)

●子ども、女性、高齢者など“犯罪弱者”の被害が続出。「母さん助けて詐欺」や認知症の高齢者を狙った詐欺などが跡を絶たない。現金の「受け子」役に女子中学生が加担するケースまで出てきた▼71歳の女性宅に若い女から「おばあちゃん、私、妊娠中絶費用がいるからお金を振り込んで」と電話。孫と信じた女性は指定の口座に37万円を振り込んだ。近所で同じ日に同じ手口で3件の詐欺事件(岐阜県)▼先日、男装して現金をだまし取ろうとした15歳の中3女子が逮捕された。オレオレ詐欺の仲間に入り、現金を受け取る「受け子」役で、黒いスーツ姿に短髪をオールバックにし、胸にサラシを巻いていたという(東京)▼認知症とみられる80歳と78歳の姉妹が複数の訪問業者に勧められるまま、3年間で住宅のリフォームを繰り返して、14社に貯蓄の全財産4000万円を詐取された(埼玉県)▼子故(ゆえ)の闇。母親がわが子を思うばかりに理性的な判断を失ってしまうこと。特に「妊娠させてしまった。親にも言えない。おばあちゃんだけが頼り」と泣きつかれれば。家族の絆を逆手にとった詐欺事件に関わる少女が増えている。電話がかかってきたら、まず疑うことが肝心。(M)  


9月3日(火)

●消費者物価が上昇している。総務省の指数(2010年=100)によると、7月は100・1で前年同期を0・7%上回った。上げ幅は08年11月の1・0%増に匹敵する高水準らしい。政財界からは「デフレ脱却につながる」と好反応が多いが…▼7月の家計調査速報でも、2人以上の1世帯当たりの消費支出は28万6098円で、前年同月より実質0・1%の増加。プラスは3カ月ぶり。消費者マインドが改善したとみる向きも▼物価上昇の要因として挙げられるのはエネルギー価格。比較対象の08年は、7月にニューヨークや東京で原油先物が史上最高値。製品への価格転嫁はおよそ3カ月後なので、同年11月に物価が大きく上昇した▼今年も8月下旬に東京商品取引所で原油先物が08年9月以来の高値。このほか円安による輸入製品の価格上昇もじわじわ—▼そこで疑問—。石油や為替の相場による物価上昇がデフレ脱却を牽引するのか、ということ。実際、物価の上がった08年が好景気との記憶はない。これから大事なのは、安倍首相が掲げる「成長戦略」。モノやサービスの価値が増し、それを所得増につなげなければ、庶民のマインドは早晩先折れしてしまう。(T)  


9月2日(月)

●先日、NHKの「MEGAQUAKEⅢ」をみた。1923(大正12)年の関東大震災を詳細に検証した内容で、見応えのある番組だった。同時に「今起こったら…」と考え、背筋が凍りつく場面もたびたび▼言うまでもなく、関東大震災は日本で最大級の災害。死者10万5千人。失われた家屋が37万棟余り。90年前ということを考慮しても、その被害の大きさには改めて恐怖を感じた▼番組によると、大震災は直下のプレート境界地震。震度7という想像もできないような揺れがあちこちで起こった。「地震の巣」とも言われるプレート境界が、大都市圏のすぐ下にあるのは世界的にも例がないという▼さらに怖いのは火災。強風にあおられて、発生から数時間で東京は火の海。炎で暖められた空気が巻き起こす「火災旋風」のすさまじさも紹介された。埋立地、高層ビル、高速道路—現代都市のインフラは果たして耐えられるのか…▼東日本大震災では大津波の警告を真摯に受け止めなかったことが事後に指摘された。関東でその轍を踏んではならない。番組をみて、強くそう思った。まずは首都圏の機能と人口を早急に分散すること。今の超過密状態ではとれる対策は限られる。(T)  


9月1日(日)

●来年4月の消費増税に対する政府の判断は最終段階。有識者からの意見聴取を行うなど手順を踏んでいるが、据え置きに期待を抱くのは早計。覚悟しておくに越したことはない▼国の財政はひっ迫状態。このままでは社会保障が賄い切れなず、もはや消費税に手をつけるしかない。民主政権時の昨年8月、その税率アップを柱とする社会保障と税の一体改革関連法が成立した▼現行5%を来年4月から3%上げて8%へ、再来年10月にさらに2%上げ10%にする内容。だが、増税は国民の生活を直撃する大きな問題であり、ぎりぎりまで経済情勢や税収見通しの見極めを求められて当然▼今まさに判断の環境づくりをしているところだが、実施すれば経済への影響が懸念され、延期すれば市場の信頼を損ねかねないなど痛し痒(かゆ)し。ただ、ここへ来て…主要閣僚や自民党幹部から聞こえてくるのは実施論▼その拠りどころは経済指標。改善の動きを示した7月の消費者物価指数、完全失業率を受け、麻生財務相が「消費税を上げるに当たって影響する数字」と語ったのは最たる例。安倍首相の断を待つとして、実施への条件がそろってきていることだけは間違いない。(A)