平成26年10月


10月31日(金)

国内で初めてエボラ出血熱の感染が疑われた男性は、ウイルス検査の結果、陰性だったことが確認された。しかし、人々がグローバルに動く社会で、いつ日本で感染者が出ても不思議ではない状況に変わりはない▼今回は比較的設備が整った羽田空港での事例だったため、対処は円滑に進んだが、地方での対応が円滑に進むのか、不安は残る。函館空港でも入国者に対する確認体制を強化しているが、道内の指定医療機関は市立札幌病院のみだ▼エボラ出血熱は患者の血液や体液、吐しゃ物、排泄物に触れ、傷口のほか鼻や口の粘膜からウイルスが入ると感染する。空気感染はせず、インフルエンザのようにせきが出る症状もない。流行国以外では、対処を誤らなければ感染拡大は防げるという指摘もある▼一方で一部の国や地域では西アフリカ3カ国からの渡航禁止や、入国者の強制隔離をする動きがある。米国の看護士は症状もないのに犯罪者のような扱いを受けたと訴えていた▼医療従事者らが現地で対策に取り組まなければ、封じ込めは難しくなる。国内での水際対策、国際社会が協調した流行国への支援。感染者、死者ともに増え続ける中で、並行して取り組むことが求められる。(I)


10月30日(木)

世の中にはショッキングな話が多々ある。漠然と理解していることでも、改めてデータなどを突きつけられると、驚きに変わる。1週間ほど前、農林水産政策研究所が発表した調査報告もその一例▼報道されていたから記憶に新しい話だが、いわゆる“買い物難民”が増え続けている現実。全国で既に400万人ともいわれているが、10年後の2025年には600万人レベルになるというのだから▼買い物難民は500㍍以内に生鮮食料品を扱う店がなく、かつ車を持たない65歳以上の人たち。どこの地域にも1店や2店、近くで利用できる店があったのは昔の話。それが今では少しも珍しくない▼道南もそうであるように、一般的には農漁村地域で圧倒的に多いと思われがちだが、同報告は都市部で増える可能性を示唆している。例え片道500㍍余りを歩けても、帰りには荷物がある。かといって自転車も心配▼道内では「コープさっぽろ」の取り組みが知られるが、この現実に目を向け、歓迎されているのが宅配や移動販売車の運行。今後さらに需要が高まるビジネスともいえるが、それにしても…買い物難民が増え続けるという予測は、ショックというほかない。(A)


10月29日(水)

正しく、うそ偽り、誇張のない「表示」は商売の基本。販売者と消費者との信頼関係の鍵を握る術でもある。だが、残念なことにその基本を逸脱する商行為が一向に後を絶たない▼表示内容を信用して商品を買ったが、実際は違った、そんな経験をした人は結構いるのではないか。例えば、過剰に良く見せかける表現、過大な景品類での誘いなど。紛れも無く消費者に誤認させて買わせる行為である▼それを諌(いさ)める法律が景品表示法だが、抑止効果が十分でないと指摘されて久しい。昨年度、表に出ただけでも868件が調査対象とされ、前年度の2倍強の45件に措置命令が下されている▼もはや対策はペナルティーを強化するしかない…ようやくだが、政府は24日、課徴金制度を盛り込んだ法改正を閣議決定した。不当表示のあった商品などに最大3年間の売上金の3%を課すことなどが柱▼悪質か否かに関係なく、結果的に騙した責任は重い。改めて商道徳を持ち出すまでもないが、公正な競争を阻害する見過ごせない行為である。抑止効果として、改正内容で十分か、と問われると疑問を呈する向きもあるが、とりあえずは一歩前進。早めの施行が待たれる。(A)


10月28日(火)

ギャンブルに熱中するのは射幸心があるから。駆け出しのころ、仕事をサボってパチンコ店に入りびたり、月給の半分をつぎ込んだ日も▼今、わが国にはパチンコ・パチスロのほか、競馬、競輪、オートレースなど法で特別に認められている公営賭博が普及している。函館では市営競輪の今年度の売上げが前年度より7・5%も増え、市の財政を潤している▼折しも、今国会でカジノをメーンの総合型リゾート施設(IR)整備推進法案が議論されている。推進議員は海外から観光客を呼び込み、経済に活が入るという。カジノに前向きな安倍首相も「雇用創出にも効果が大きい」と意欲的▼道内では小樽、苫小牧、釧路の3市などが誘致に名乗りを上げている。しかし、カジノを合法化し、射幸心をあおれば地道に働き金銭を得るという健全な精神を害しかねず、賭博に対する深刻な依存症を招く▼カジノに経済成長を依存する発想には違和感さえ覚える。先日、函館で開催のフォーラムでもIRの可能性を探ったが、地域振興への期待とギャンブル依存症増加という懸念の声。カジノの収益は客の負け分。資金欲しさに犯罪に走ったり、家庭崩壊につながる危険性もある。(M)


10月27日(月)

40代後半の筆者だが、子供のころの娯楽の王様はテレビだった。前日のテレビ放送が学校での話題の中心となり、大きなスポーツイベントが放送されると、休み時間にその競技の真似事をして盛り上がるのがお約束だった▼家庭内でもテレビの存在は大きく、いまや死語となった「チャンネル争い」もし烈を極めた。居間に一台しかないテレビで当たり前のように野球放送(すべて巨人戦)を楽しんでいる父親に、「どうしても見たい裏番組がある」と訴える子供たちの姿が日常茶飯事だった▼有名映画の放映も大きな話題のひとつだった。封切りから数年たって、人気作品が初めて取り上げられる時は、わくわくしながら画面の前に座っていたことを思い出す▼今やテレビは個人が自由に好きな番組を楽しむ時代。録画機能やネット配信などによって、チャンネル争いはもちろん、居間で家族そろって同じ番組を見る機会も少なくなった▼映画に関しても、封切りから数ヶ月すればほとんどの作品がビデオで鑑賞できる夢のような状況。その一方、テレビ放映でなければ決して見ることなかったB級映画との出会いも、必然的に少なくなっていることは寂しい気がする。(U)


10月26日(日)

「函館は第二の拠点。乗客の利便性をさらに高めたい」。7月に函館新聞社を訪れた北海道エアシステム(HAC)の田村千裕社長はこう語っていた。HACは23日付で3年7カ月ぶりに日本航空の子会社となった▼HACは函館からの3路線を含め、離島路線も持つ道民にとって不可欠な航空網を持つ。日航が経営悪化により2011年3月にHAC株を売却した後は、道が筆頭株主となるなど、道内の自治体や企業が経営を支えてきた▼機材故障による欠航などにより、客離れから厳しい経営を余儀なくされていた。しかし、各種割引などの企画が奏功し、14年3月期決算では3期ぶりに黒字転換し、債務超過を解消。日航の傘下に再び入ることで、安定運航や営業網を生かした乗客増加が期待される▼ただ、13年度の函館—奥尻線の搭乗率は5割を切っており、離島路線の廃止への不安がつきまとう。道の出資が減って発言権が弱まれば、歯止めがきかなくなる可能性もある▼本社を訪れた際に田村社長は、北海道新幹線の開業に向け、HACによる観光ルート構築にも意欲を示していた。今後も道内を結ぶ翼として安定飛行していくためには、さらなる需要の掘り起こしが欠かせない。(I)


10月25日(土)

子どもからお年寄りまで幅広い年齢層で重宝される乗り物と言えば「自転車」。まま乗れない人もいるが、高校生らは通学、サラリーマンは出勤など、お年寄りはちょっとしたお出かけに▼この自転車は長年、歩行者とともに交通弱者と扱われてきている。対自動車の観点からいえばその通りだが、同時に逆の面も持ちあわせている乗り物でもある。対歩行者の事故などでは加害者になり得るから▼そう、そんな形態の事故が増加しつつある。2年前の統計で、全国の年間発生件数は2万件超。この中には自転車同士という事故もあるが、特に相手が歩行者となれば加害の立場となり、補償も避けられない▼実際に神戸地裁では9500万円、東京地裁では4700万円賠償の判決が下された事例がある。だが、保険加入の意識はまだまだ低い。現状を踏まえると「(保険への)加入を義務づけるべき」という考えにも頷くしかない▼兵庫県が加入義務を課す条例の制定に動いている。都道府県で初めて。安全不確認や一時不停止、信号無視、速度の出し過ぎなど、加害事故の原因は自動車も自転車も同じ。だとすると保険は必要。その前に…注意して乗る意識こそ求められるが。(A)


10月24日(金)

女性大臣が辞職するのではと言われていたころ、函館出身のノンフィクション作家、森本貞子さんは市内で講演を行い、函館の女性は力強く働き者で、地域の国際化にとって重要な存在と説き「心遣いがあればさらによい」と話した▼10月に入り、市内では小学生から高校生によるスポーツ大会、文化団体の発表会が盛んだ。会場では子どもの応援ばかりでなく、運営など裏方に汗を流す母親も多い。男性よりも動き回り、頼もしいという▼しかし指導者にも悩みはある。子供たちの食生活だ。「日ごろは朝ご飯を食べずに学校へ行き、大会(発表)日はパワーが必要だから朝ご飯を食べさせるが、食べ慣れないので肝心な時に体調を崩す子がいる」「日ごろから朝ご飯を食べれば、もっと力がつくのに」という▼良いパフォーマンスには、いつ、何を食べるかが大切だ。ある指導者はこのような講習会を開いたら「主婦としてまったく知らなかった。忙しくて対応できないと思う」との声があったという▼大会や発表に向け、何日も前から親子で気持ちを高めているだろうが、体を作るのは食。スポーツ、文化で世界に誇る強い函館を目指すのに、毎日の食事に心遣いをしていただければ。(R)


10月23日(木)

鳴り物入りで登壇した女性閣僚2人が「政治とカネ」などを巡る疑惑からダブル辞任し「輝く女性」の座を降りた。露が冷気によって霜となって降る二十四節気の「霜降」(23日)を前に…▼霜降を境に冬支度が始まるが、道南の農家はブランド米「きたくりん」など秋の収穫に追い込み。農作物を育てるには「うちわはうちはではない」と訳の分からぬ答弁をした女性閣僚のように、作物の観測不足、手抜き、ごまかしは許されない▼日々の糧をもたらしてくれる自然に感謝するミレーの農民画「種をまく人」「落穂拾い」が印象深い。勢いよく種をまく男、一粒一粒に未来への希望を込めて。農夫だった父親の姿を思い出して描いたという▼それに大泉洋さん出演の映画「ぶどうのなみだ」の主人公もミレーの農民画と重なる。夢破れ故郷の空知に戻り、父親が残した土地で黒いダイヤと呼ばれるブドウで理想のワインづくりに打ち込む▼荒地のブドウも熟成すれば芳醇に変わる。人生もワインに似て、大地の優しさを知る…。ダブル辞任に追い込まれた女性議員に、政治資金の正しい用途を指南する先輩議員はいなかった。一票一票に願いが込められているのに。霜降過ぎて「成熟した風」が待ち遠しい。(M)


10月22日(水)

プロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズセカンドステージは、第6戦までもつれる白熱の展開となったが、惜しくも日本ハムは日本シリーズ行きの切符を手にすることはできなかった▼2004年からパ・リーグで、07年からは両リーグで取り入れられているプレーオフ制度も、すっかり定着した感がある。その一方で未だに賛否を問う声が少なくない▼10年にはシーズン3位のロッテが、2位の西武、1位のソフトバンクを下すと、勢いに乗って日本シリーズで中日を破り日本一の座に着いた。この時も「短期決戦のタイミングにチーム状態が良かっただけ。長丁場のシーズンを勝ち抜いてこそ真の王者」と、制度そのものに異議を唱える評論家がいた▼確かに144試合の積み重ねでたどり着いた順位が、わずか十数試合で覆されることは不条理かもしれない。その一方で、シーズン終盤に見られた消化試合的なゲームが明らかに減少したのも確か▼米大リーグではリーグ優勝や地区優勝は、ワールドシリーズへの通過点でしかない。日本でもレギュラーシーズンの順位に関係なく、ポストシーズンを勝ち抜いてこそ真の王者であると誰もが認めるときが来るのだろうか。(U)


10月21日(火)

親しい米国人男性と会った。いつもなら彼の方から右手を差し出して握手するが、いきなりペコリとお辞儀。「アメリカではやらないよ。郷に入っては郷に従え」の日本語に感心させられた▼数日後、JRの特急列車で、前の座席の若いカップルから「いす倒して良いですか」と尋ねられ、了解すると「ありがとうございます」とそろってペコリ。いすを倒したのは男性の方だけだったのに、また感心▼翌日、別の特急列車で、座席下に置いたバッグから荷物を取り出りだそうと下を向いていたら、頭にゴツンと衝撃。前の座席の女性が何も言わず、勢いよくいすを倒してきたのだ▼これを見ていた私の隣にいた男性が「あなた、後ろの人に迷惑掛けているよ」と大声。大柄な私は狭くなったスペースから顔を上げたら目が合い、女性は「え、うそ」と一言▼まずは謝るべきだと思いつつ、頭を押さえて「気をつけた方が良いですよ」と言えば女性はぶ然とした表情で振り返り、いすは戻さなかった▼前日のカップルを思い出した。飛行機でもあるトラブルだが、いすを倒す時は後部座席の方にご配慮を。頭が痛い思いをする人を増やしたくないので、したためることにした(R)


10月20日(月)

「ゆめぴりか」「ななつぼし」に続け! そう期待されているのが販売2年目の農薬節約米「きたくりん」。JA新はこだては、新米5㌔を5・3㌔に増量し、消費者へアピールしている▼米の消費落ち込みで北海道、とりわけ道南が減反の嵐を受けてほぼ40年。作付面積は大幅に減ったが、試験研究機関の努力、米作農家の熱意に、気候の変動も追い風となって、今や量もさることながら、食味でも全国区▼「ゆめぴりか」「ななつぼし」が、日本穀物検定協会から特Aのお墨付きをもらっているが、「きたくりん」も引けをとらないそう。さらに特筆されるのが農薬節約米…安心安全に合致する米であること▼水稲の病気(いもち病)への抵抗性が強く、防除が省略、軽減できるそう。「きた」は北海道、「くりん」はクリーンをもじって…ネーミングにも反映されている。道南は今年度、全道の47%の作付けをした主産地でもある▼だから、まずは地元で食べてもらいたい。それは地産地消の問いかけでもあるが、かと言って妥当な価格を崩しては自ら評価を下げるに等しい。でも何か…。導き出された答えが0・3㌔の増量。そこには生産者の熱い思いが凝縮されている。(A)


10月19日(日)

ことしの新聞週間(15〜21日)の代表標語は「ふるさとが元気と知った今日の記事」。道南の地域紙である函館新聞としても、こうした思いに応えるべく毎日の紙面をつくっている。ちなみに編集局では「一丸で目指せ地域の応援紙」とのスローガンを掲げている▼新聞週間は報道の使命と責任を自省・自戒する機会とするほか、一般に報道の機能と役割を再確認してもらうのが目的。1948年に創設され、ことしで67回目を迎える▼期間中に毎年、本社を含めた全国紙や地方紙が加盟する日本新聞協会主催の新聞大会が開かれている。ことしは新潟市で15日に開かれ、パネルディスカッションの冒頭、朝日新聞社長が新聞業界全体の信頼を損なわせたとして陳謝した▼世論調査などで情報源としての新聞の信頼度は高いが、朝日新聞が過去の従軍慰安婦報道、福島第1原発事故の「吉田調書」の記事の誤りを認めて取り消したことは、新聞の信頼性が問われる事態となった▼本紙でも注意して記事を書き、チェックしているものの、「訂正」が後を絶たない。新聞大会では「正確で公正な報道に全力を尽くす」との決議が採択された。地域で信頼される新聞であるために、あらためて肝に銘じたい。(I)


10月18日(土)

「女性が輝く社会」は安倍内閣の最重要課題の一つ。その内閣に5人の女性議員を登用したが、周辺に「政治とカネ」をめぐる、きな臭い秋風が吹いてきた▼女性閣僚のホープとして登場した小渕優子経済通産相は、親族が経営する雑貨店にネクタイなどの「代品」として政治資金から支出。事務所費でベビー用品や化粧品など購入、組織活動費に下仁田ネギの送料や品代など計上していた▼後援会員らが明治座で観劇した際、関係政治団体が支払った費用が参加費を大幅に上回っているとして、政治資金の使途にも疑惑がもたれている。政治団体側が実費を超える負担をしていれば支持者への利益供与になる▼松島みどり法相は赤いストールを着用して登院。「猪木氏のマフラーは駄目で法相のストールはいいのか」と物議を醸した。選挙区で配った「うちわ」が公選法違反という野党の追及を「雑音」呼ばわりし、結局陳謝した▼両大臣は「女性が輝く社会」に水をさした。母親だからベビー用品も必要、女性だから化粧品も必要…。だからといって国費の使用はいかがなものか。徹底的に調査し、説明責任を果たしてほしい。会社の金で化粧品を買う女性社員はいない。(M)


10月17日(金)

日本人研究者3人が今年のノーベル物理学賞を受賞した青色発光ダイオード(LED)の開発と実用化。照明はもちろん、信号機や液晶画面などに幅広く使われており、生活の中で発明の恩恵を実感できる。函館のイカ漁の漁火にも一部で導入されている▼受賞した3人の中で、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授(60)のコメントが印象に残る。「怒りが私の研究の原動力だ」とし、発明の対価、研究環境などについて日本の現状を批判した▼中村教授は徳島県の日亜化学に勤務していた当時、LED量産化技術を開発したが、報奨金は2万円だった。退社後に発明への対価を求めて提訴、同社が8億円余りを支払うことで和解している▼一方で政府は社員が職務上の研究で取得した特許を「社員のもの」とする現行制度について、報酬を与える社内ルールを定めることを条件に「企業のもの」に変更する方針を固めた。訴訟リスクを減らすのが狙いだが、ルール次第で研究者の意欲をそぎかねない▼研究者不足や競争力低下への懸念もある。日本がものづくり分野で存在感を発揮していくためには、ノーベル賞を喜ぶだけではなく、研究現場の足元を見つめなおすことが必要だ。(I)


10月16日(木)

「うちわとして解釈されるなら、うちわ」「うちわに見えるもの」。呆れるしかない、こんな人を小馬鹿にした、とぼけた大臣答弁が国会議論で繰り返された。今月7日の参院予算委員会でのこと▼現物を突きつけられて、公選法に触れるのではないか、と追及されてのことで、当事者は法務大臣。選挙区で名前入りのうちわを配ったという。同法では選挙区で有価物を寄付してはならないと規定されている▼確かに、うちわは企業などが無料で配るケースが多い。だが、一方で店頭での販売物でもある。そこに議員としての活動報告や政策を記したにしても、一般的には有価物と扱われておかしくない▼素人目にも法に触れる可能性を抱かせる。だとしたら少なくとも陳謝するなり、謙虚であっていいはず。追及側もちょっと嫌みをという程度の話なのに、何を勘違いしたか、とったのは冒頭のごとく、人を食ったような姿勢▼せめて笑みを浮かべながらする答弁は避けてほしかった。いやしくも国会審議の場であり、法を司る立場の法務大臣なのだから。今、政治に問われているのは信頼の回復で、その鍵を握るのは政治家の姿勢。なのに…こうした光景はもう見せてほしくない。(A)


10月15日(水)

「夢の超特急」が国内で初めて運行されてから半世紀、いよいよ新幹線が北海道に上陸した。緑と白の車体に紫色のラインが目を引く「H5系」の車両が13日、函館港に到着。実物を目にすると、開業への期待感が一層膨らむ▼11、12日には新函館北斗駅の一般公開や地産地食フェア、函館での開業記念キックオフイベントも行われ、大勢の人たちでにぎわった。今後は11月に木古内駅で新幹線レールの締結式が行われ、12月からは走行試験が始まる。今後も「歴史的な節目」が続く▼開業に向けた機運が高まる一方で、課題も残る。新函館北斗駅の周辺はレンタカー業者の出店以外に動きがない。函館駅周辺もホテルや菓子工場の計画が白紙となって以降、再開発のめどは立っていない▼来年3月に北陸新幹線開業を控えた金沢駅周辺は、ことしの地価上昇率が全国一の15・8%だった。ホテルなどの建設が相次いでいるという。立地条件が違うため単純な比較はできないが、函館との違いに驚く▼日本政策投資銀行北海道支店の試算によると、道内の新幹線開業効果は年間136億円。同支店は「入込数と消費単価を増やせばさらに膨らむ」と指摘する。さらなる魅力向上へ、1年半という時間は長くない。(I)


10月13日(月)

秋は日一日と深まり、冬支度の時期を迎えている。そこに重くのしかかっているのが光熱費。電気料金は11月から15・33%(年度内は12・43%)の再値上げが決まり、暖房に欠かせない灯油などの燃料は高値のまま▼政府は「適切な対応をとっていく」と言いながら、具体的な手だては未だ…。敢えて言うなら為替相場任せ。高騰の直撃を受けているトラック協会など運輸業者などの悲鳴は、もはや頂点に達している▼流通経費は物価にはね返る。消費税も上がった。そうした影響をどう認識しているのか、政府・日銀は、景気は回復基調との判断を変えていない。確かにベースアップなど賃金の改善は言われている▼ただ、多少の賃上げも電気や暖房費の高騰の前に消えるばかりか、逆に足が出かねない。ましてや契約や派遣などの非正規社員、賃上げもままならなかった中小零細の社員、年金生活者は…さらなる自衛しか道はない▼北国にとって電気と灯油は、食料とともに生きるための生活必需品。多くの家庭で使用する暖房は、灯油と電気を必要とするから。それが再値上げや高値の中で冬を迎える。政府の言う適切な対策を待っているのだが、その期待感もそろそろ色あせてくる(A)


10月12日(日)

パキスタンの山岳地帯で生まれたマララ・ユスフザイさんは17歳のイスラム教徒。国連で「1人の子供、1人の先生、1冊の本、1本のペンで世界を変えられる。教育こそ唯一の解決策」と訴えた▼マララさんはイスラム過激派「タリバン運動」が女性の教育や就労を認めず、人権弾圧や残虐行為を繰り返しているとブログで告発。2年前、タリバンに銃撃され、生死をさまよった▼英国の病院に移送され奇跡的に回復したが、15歳の女子学生を狙ったテロ事件は世界を震撼させた。マララさんはひるまず「テロリストは私の志を阻止しようとした。でも、すべての人に教育を求める旅は続けます」▼マララさんは、児童労働問題に取り組んでいるインドのカイラシュ・サティヤルティさん(60)と共に、今年のノーベル平和賞に決まった。カイラシュさんは劣悪な労働環境から8万人を超す子供たちを救い出している▼再び襲われたらどうするか、の質問にマララさんは「教育の大切さについて話し、タリバンの子供たちにも教育を与えたいと話します。それから、好きなようにしなさいと言います」と答えた。不屈の覚悟と強い意志は、貧困や差別に苦しむ人々を勇気づけることだろう。(M)


10月11日(土)

休学中の北大の男子学生(26)が「イスラム国」に戦闘要員として渡航しようとし、警視庁から事情聴取されたのに続いて、元自衛隊員(26)がシリアで戦闘員として加わっていたという記事にショックを受けた▼イスラム国は改宗などの背教行為の罪で女性弁護士を処刑、欧米のジャーナリストの首を斬る映像を誇示するイスラム過激派集団。世界中から戦闘員として若者を募集、欧米などから数千人が参加している▼イスラムの組織などに縁がなくても“就職感覚”で身を投じる例も少なくない。北大生や20歳代のアルバイト男性も古書店の「勤務地・シリア」という求人の張り紙を見て仲介者と接触。就職活動の失敗を理由に挙げていた▼元自衛官の男性は昨年4月から約2カ月、イスラム国とは別の過激派組織に加わり、戦闘に参加。イスラム教に改宗しないと戦えないと言われ、コーランなどを学んだ。アジアなどから約2500人が参加したという▼イラクやシリアの過激派組織に参加した戦闘員が軍事技術と過激な思想を身につけて帰国し、テロ活動に走る危険性が怖い。流血に身を投じる若者の動きを止めよう。8月にイスラム国に拘束された湯川遥菜さんが消息不明のままだ。(M)


10月10日(金)

戦後間もない1948年、少壮の東大教授がスケールの大きい学説を発表した。「古墳時代に大陸から渡ってきた騎馬民族が大和朝廷を立てた」と。文化勲章受章者で、2002年に亡くなった江上波夫さんの「騎馬民族征服王朝説」だ▼日本史の大きな仮説の一つだが、発表当時は破天荒な学説だった。それはなぜか。戦前まで、天皇家の起源は神話の中にあったからだ。皇国史観に束縛されない学説として、騎馬民族説はセンセーショナルに取り上げられた▼学生時代、江上さんの「騎馬民族国家」を読んだ。ユーラシアを俯瞰(ふかん)しながら考古学や民族学などを駆使して自説を展開していた。学者としての真実の追究である▼学問や言論の自由は、長い闘いの末に勝ち得たものだ。神が人間を創ったというキリスト教圏では進化論を教えない学校があった。民主的な選挙を求めて若者がデモを起こした香港では、中国が出版や言論の統制をしている▼韓国ではコラムで大統領を中傷したとして、産経新聞前ソウル支局長が名誉毀損罪で在宅起訴された。北朝鮮では、国を批判すれば強制労働や銃殺が待っている。自由にものが言える国であることは誇り。その自由が侵されてはならない。(P)


10月9日(木)

「日本語は素晴らしい。言葉を大切に歌います」。女優で歌手でもある倍賞千恵子さんは先日、道東の都市で収録されたテレビの公開ステージでこう語り、歌詞を噛み締めながら歌って客席を魅了した▼よく言われるが、言葉は文化。日本語は意味するところの奥が深い言語。倍賞さんは「なのに今は…」と言いたかったに違いないが、現実に目を向けると、憂いや嘆きが聞こえておかしくない▼事実、日本語の、言葉の乱れが指摘されて久しい。いわゆる短縮言葉は増え続け、そして近年は…名詞などの末尾に「る」や「する」をつけて動詞のように使われるように。それは文化庁の調査も指摘している▼「パニクる」(パニックになる)、「チンする」(電子レンジで温める)などは分かるが、「きょどる」(挙動不審な態度をとる)や「ディスる」(けなす・否定的な意味を持つ英語のdisに「る」を)となるとどうか▼若者の間で通じても年配者にはチンプンカンプン。実際に「きょどる」にしても、若者の68%が使っていると答えているのに対し、50歳代では5%未満。まさに世代間に言葉のギャップが生まれているということである。倍賞さんの思い、話が頭から離れない。(A)


10月8日(水)

観光客を乗せた青函連絡船が函館桟橋に着岸するたびに、市長ら市の幹部、観光協会の幹部が観光客を出迎え、女性職員(ミス函館はまだいなかった)が花束を贈った。昭和30年代の函館観光を売り出す光景▼当時の観光といえば函館山、立待岬、トラピスチヌ修道院、五稜郭公園、湯の川温泉、それに歴史的なレトロ感が加わったくらい。何といっても世界三大夜景の一つ、函館山からの百万ドルの夜景が魅力だった▼その函館が民間シンクタンクの魅力度ランキングで今年の全国一に選ばれた。観光に行きたいか、地元産品を購入したいか—など74問をインターネツトで聞いた結果、札幌、京都を抑えて2回目のトップ▼同研究所は「来年度末の北海道新幹線開業が近づき、メディアに情報を発信する機会が増えたため」と分析。市の幹部も「新幹線の開業は函館の魅力をさらにアップさせる」と期待。その新函館北斗駅が設置される北斗市は564位▼朝市やベイエリアの充実、石川啄木や与謝野晶子らの文学散歩なども魅力度アップに一役。それに市長自らが観光客を出迎えた地道な取り組みが函館観光の活性化につながっている。都道府県では北海道が6年連続で魅力度1位だった。(M)


10月7日(火)

道内主要都市で「イオン」の店舗がないのは函館だけ。逆に「ダイエー」は函館と札幌以外、滝川と岩見沢にしかない。イオンがダイエーを完全子会社にすることで、道南でなじみの深いダイエーの看板は、数年のうちにイオンへと替わることになりそうだ▼総合スーパー業態の先駆者として、小売業で初めて年商1兆円を達成、長く流通業界のトップを走っていたダイエーは、80年代後半から凋落。2004年に産業再生機構の支援を受け、13年にはイオンの傘下に入った▼全盛期には各地にあったダイエーの店舗も、道内では道南の2店を含む8店のみ。食品スーパー「グルメシティ」などを含めても道内は17店で、うち渡島管内が7店を占める▼流通業界では吸収合併や系列化が進み、収益の構造も変化している。百貨店業界は4大グループにほぼ集約。セブン&アイ・ホールディングスのもうけの8割はコンビニエンスストアによる。イオンのダイエー子会社化も、収益の低迷が背景にある▼イオンと函館市は6日に包括協定を締結。店舗の再編により、かつて地元の反対などで白紙となっていた「イオン」の店舗が思わぬ形で函館に出店する。流通業界の栄枯盛衰を感じる。(I)


10月6日(月)

手前みそだが、新聞に携わる人間として文部科学省の調査から、うれしい話が飛び込んできた。「学力・学習調査の結果、新聞を毎日読む児童生徒ほど正答率が高かった」というのだ▼読書の効用はよく語られる。文字や言葉を覚え、読解力や洞察力が養われるとして。同じことは新聞にも通じ、業界が「教育に新聞を」(NIE)と、運動を展開しているのもそれ故。この調査ではそれが多少なりとも証明されたよう▼新聞を毎日読んでいる小学生の国語Bの平均正答率が62%だったのに対し、まったく、ほとんど読まない児童の平均は52%。中学生の国語Bでもほぼ同じ傾向がみられたという。さらに特筆されるのが…▼それは正答率の差が国語ばかりか算数・数学でも表れたこと。このデータをもって、すべて論じるのは早計だが、この差は、重い。ただ、残念なのが新聞を閲読している児童生徒はまだまだ少ないこと▼この調査でも、中学生でほぼ毎日読んでいるは8%、週に1—3回読むが13%。逆にほとんど・まったく読まないが59%と半数を超える。閲読率の実態と調査・分析結果をどう受け止め、今後にどう生かしていくか。新聞を身近に…15日から新聞週間が始まる。(A)


10月5日(日)

「バナちゃんの因縁聞かそうか/生まれは台湾台中でまだ青かった/黄色いお色気ついた頃/裏も表もキンキラキンのツルツルテン〜」—門司港で聞いたバナナのたたき売りの口上▼いつバナナの皮のギャグが生まれたのか。喜劇王のチャップリンが100年前の無声映画でバナナに滑って転ぶシーンを撮り、笑いを誘った。狩りに出かけ「バナナの皮で虎を滑らせよう」と真剣に考えた人も▼北里大の馬渕清資教授は、バナナの「ツルツルテン、スッテンコロリン」現象を皮の摩擦係数を測定して実際に滑りやすいことを証明し「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られる今年のイグ・ノーベル賞を受賞した▼専門は人工関節の研究で、痛みの原因となる摩擦を減らすためバナナの滑りやすさに着目、摩擦減少の仕組みはバナナの滑りやすさと同じだという。教授たちは研究中に何回転んだかな…▼最近の研究ではバナナ1本を常食すると、がん予防につながるという。仏典にもバナナの果汁が薬用として記載されている。でも、かつて小5男子が教室の清掃中にバナナの皮で滑って、机やイスに激突、頭部骨折、脳内出血という事故があった。ユーモアだけではすまされない。(M)


10月4日(土)

「健康で長生きしたい」。誰もが抱く究極の思いだが、現実はそう易々とかなえてはくれない。だからこそ大事に考えたいことであり、食事や運動など日常的な健康管理が求められるのはそれ故▼では、いったい介護などに頼らずに自活できる年齢は、平均で何歳ぐらいなのだろうか。近年、統計がとられるようになった健康寿命が、それを教えてくれている。その2013年度版が先日、厚労省から発表された▼それによると、男性は71・19歳、女性は74・21歳という。3年前に比べて男性で0・77歳、女性で0・59歳伸びているが、それでも平均寿命との差の期間が結構、長いという現実は変わりない▼ちなみに「何らかの形で日常生活に支障がある」となる期間は、男性で9・02年、女性で12・40年。この間をどれだけ短くするか、それは個人が問われる問題と同時に、国家的、社会的な大きな課題でもある▼老後を楽しく…あれもしたい、これもしたい…それには経済的な問題もさることながら、まずは健康でないことには。男性の71歳は現役を退いて、そう時間が経っていない年齢である。「何をするにも体が第一」。この健康寿命は改めてそう教えてくれている。(A)


10月3日(金)

学生の頃、京都や梅田のジャズ喫茶で一杯50円のコーヒーで2時間も3時間もねばった。コーヒーの銘柄などどうでもよく、ジャズの生バンドを聴きながら。歌声喫茶では「一杯のコーヒーから」の大合唱▼この秋は、コーヒーやワイン、チーズなどの乳製品、魚介類の缶詰など値上げが続く。また、即席麺の大手メーカーがカップ麺や袋麺を来年1月出荷分から値上げする▼食品値上げの背景には円安や新興国の需要増による原材料の高騰、物流費増などがある。さらに4月の消費増税に加え、消費者が財布の紐を締めて支出削減していることだ。ガソリンも高止まりしたままだ▼スターバックスコーヒーは先月から全国48店で最高級コーヒー「パナマ アウロマール ゲイシャ」を期間・数量限定で発売。エチオピア原産のゲイシャ種は貴重だけど値段は一杯1998円(税込み)。豆は250㌘入り1万800円▼こんな高いコーヒーを誰が飲むのだろう。ここにも金持ちと貧乏人の「格差」が…。ブラジルの干ばつなどで家庭用コーヒーを平均25%も値上げするメーカーもある。一杯240円で頑張っている喫茶店を見つけた。先日も2時間ねばって小さな「幸せ」を満喫してきた。(M)


10月2日(木)

手と腕の動きや形で伝える言語と言えば、今の時代に生きる人なら誰でも解る。「手話」だが、言語として公的に位置付け、その理解の輪を広げるため、条例を制定する自治体が出始めている▼「手話」の歴史は戦前に遡る。具体的にサークルなどが出来たのは50年ほど前とも言われるが、現在は手話通訳士という資格も設けられている。その有無はともかく、会話できる人が増えていることは確か▼会議や講演会などでも手話通訳は一般化している。ただし、社会の中でどうかとなると、まだまだの域。特に地方ではできる人が少なく、もっと普及を、と条例制定の先陣を切ったのが鳥取県。昨年10月だった▼「手話を母語とする人が安心して暮らせる社会に」。根底にある思いだが、この条例化は今年の4月以降、道内の石狩市、新得町(十勝)、松坂市(三重県)、嬉野市(佐賀県)と続き、今月は鹿追町(十勝)で▼住民ばかりか、訪れる人の中に手話を必要とする人もいよう。その時、対応できない、では悲しい。せめて、あいさつや簡単な会話だけでも…それは観光地を抱える自治体ほど問われる課題。どう普及させるか、条例制定の動きはその問いかけに聞こえてくる。(A)


10月1日(水)

「やるっきゃない」「ダメなものはダメ」|。女性初の衆院議長を務め、旧社会党委員長や社民党党首を歴任した土井たか子さんが亡くなった。戦争体験に基づく護憲、反戦の信念を貫いた、85年の生涯だった▼政界引退後の2006年、函館で行われた土井さんの講演を聞いた。演題は「改憲を撃つ!」。東アジア情勢の緊張が高まり、有事の際の米軍への後方支援が強化され、集団的自衛権の行使論が高まったころだ▼土井さんは「同盟国が外敵から脅威を受ける恐れがある際、武力行使をする集団的自衛権を認めんがために憲法9条を変えようとしている」「9条があったからこそ、私たちの生活や社会保障が高められた。戦争になれば、憲法が保障している人権や自由が瓦解(がかい)する」と語った▼社会党委員長時代は消費税導入に真っ向から反対。1989年の参院選では「マドンナ旋風」で与野党逆転を果たした。改憲問題では憲法学者としての信念を貫いた▼ただ、かたくなな姿勢があだとなって、のちに社民党の退潮を招いた面もある。函館の講演から8年…。集団的自衛権の行使は改憲なしに解釈変更の閣議決定で道が開かれたが、土井さんはどんな思いで見つめていただろうか。(P)