平成26年11月


11月30日(日)

解散に伴う衆院選の公示日(12月2日)が刻々と近づいている。「アベノミクス」の是非がクローズアップされているが、この2年の間の国政で新たに判断を求められる争点はほかにも多々▼確かに経済の行方は最大の関心事。消費増税後の動向に陰りが出ており、この政策路線を継続すべきかどうか、判断が分かれている。故に「アベノミクス解散」という側面もあるが、あくまで政治課題の一つ▼解散は常に信任を求める手段であり、それは政策全般にわたる。現状では集団的自衛権の行使の問題、再消費増税の是非、沖縄の基地問題、中韓との関係、社会保障制度や福祉政策、選挙制度改革の対応などなど▼函館が直面している原発問題への対処方針も例外でない。さらに北海道にとってはTPPへの対応や農業政策も加わってくる。政党の間で大義論争があった、この時期に何故という声が残る中で本番を迎える▼ただ、見方を変えると、これら政治課題に民意を伝える機会が早めにやってきたという言い方もできる。そう考えると、解散大義はむしろ有権者側にあるとも思えてくる。各政党の公約も出そろった、まずは公示後交わされる論戦にじっくりと耳を傾けたい。(A)


11月29日(土)

1972年の札幌オリンピックで、スキージャンプ70㍍級で金メダルを獲得した笠谷幸生選手は、当時の小学生の憧れだった。「カサヤッ!」と叫んで、両足をピタリとくっつけ、前傾姿勢になるフォームをまねして遊んでいた▼「笠谷選手ごっこ」は自分の周りだけだったかもしれないが、メダルを独占した日の丸飛行隊をはじめ、札幌五輪の名場面の数々は多くの人々の記憶に残っているだろう。五輪を契機に地下鉄などインフラも整備され、札幌の街並みは大きく発展した▼札幌市の上田文雄市長が2026年の冬季五輪・パラリンピック招致を正式に表明した。市民や経済界、選手からはおおむね歓迎の声が上がっているようだ▼ただ、開催経費は4045億円で、このうち市負担は715億円だという。施設を整備すれば、五輪後の運営に維持費もかさむ。環境への影響を懸念する声もある▼そうした中で、コスト削減や他地域との連携などに知恵を絞り、将来に負担の残らない形での開催が望まれる。道内他地域に比べると、函館は冬季スポーツが盛んとはいえないが、競技に取り組む子どもたちの励みになるだろう。新たな感動を生む舞台の実現に夢が膨らむ。(I)


11月28日(金)

大沼牛、牛めし、王様しいたけなどずらり。百貨店の「七飯町うまいものフェア」は大賑わい。西洋リンゴ発祥の地からブランド化を目指す「ななみつき」を初めて食べてみた▼平安の頃に日本に伝わったリンゴは小さな野生種で観賞、お供え用だった。西洋リンゴが栽培されたのは明治に入ってから。七重村(現七飯町)に、ドイツの貿易商が欧州から苗木を取り寄せたのが始まり▼この西洋式農場が明治政府に引き継がれ「七重官園」となり、ここで青森の生産者らが栽培技術を学んでリンゴ栽培は全国に広がった。「津軽」「アルプスの乙女」など次々と新品種が登場▼七飯リンゴ「ななみつき」は7年前から栽培。黄色い皮に日が当たる部分が赤づく品種「ぐんま名月」を導入した。七飯の「なな」たっぷりの「みつ」名月の「つき」から命名。今月の初競りでは1箱7玉で5万円と過去最高の高値がついた▼裸のイブとアダムはリンゴを食べて羞恥心を覚えイチジクの葉を着け、喜怒哀楽の感情が芽生えた。リンゴの皮は整腸作用を促し大腸がんを予防するといわ、リンゴポリフェノールは老化現象を抑制する効果もあるという。「ななみつき」で健康長寿を目指そう。(M)


11月27日(木)

周囲の人たちがほとんどスマートフォンを所有する中、「電話とメールさえできれば問題ない」とガラケーを使い続けてきた筆者だったが、先日ついに買い換えた▼実はガラケーに対して特別なこだわりがあった訳ではない。スマホの機能を使いこなせるか不安だったのが真相で、いざ操作してみると想像以上にスムーズな使用感にほっと一安心▼ガラケーもインターネット端末として使用できたのだが、スマホのサクサク感を体験してしまうと後戻りできない。さらに思っていた以上に多彩な機能が詰まっているのに驚いた▼携帯電話が登場した当初は、電話機を自由に持ち運んで通話ができることだけでも画期的だった。その後メールやネット、カメラ、音楽プレーヤー、ワンセグTV、ゲームなどの機能が次々と追加され、いまや小型パソコンと言っても過言ではない▼一方、便利で楽しいことがたくさん詰まった魔法の箱は、生活の乱れや犯罪へのパスポートにもなりかねない。小中学校の現場がスマホの規制問題に頭を悩ませるも当然だ。道具に振り回されるのではなく、賢くコントロールする方法を、大人と子どもが一緒になって学ぶ必要があるのかもしれない。(U)


11月26日(水)

「地震雷火事親父」。世の中でとりわけ怖い現象や存在を順に並べた、誰もが知る言葉だが、地震が頭に据えられているのは、昔から最も怖い現象と認識されていたということだろう▼確かに地震は防ぎようがない。前兆でもあれば別だが、突然で、しかもいつ治まるともしれないのだから怖い。被害を伴う地震が毎年のように起きているが、22日夜には長野県北部地域が襲われた▼多数がけがをし、家屋の倒壊などもあった。改めて地震国を実感させられるが、この20年ほどの間だけでも、阪神淡路大震災(1995年1月・死者行方不明6400人余)をはじめ、新潟中越地震(2004年10月・死者68人)などがあった▼そして2011年3月の東日本大震災(死者行方不明1万8400人余)…原発事故を誘発し、3年半を経た今も復旧復興が道半ば。被災者の心の傷も癒えていない。地震の経験では道南も例外でない▼忘れられぬ1993年7月、北海道南西沖地震がもたらした津波は奥尻島を襲い、200人を超える人が犠牲になった。こうした大地震の度に思いださせてくれることわざがある。「備えあれば憂いなし」。地震はいつ、どこで起きるか分からない。(A)


11月25日(火)

殴る、激しく揺さぶる、家に閉じ込める、食事を与えない、病気になっても病院に連れて行かない…。江差町役場に児童虐待防止のシンボル「オレンジリボン」を飾るXマスツリーがお目見えした▼大阪で筋肉の難病を患っていた3歳の長女を餓死させたとして、22歳の義父と19歳の母親が逮捕された。死因は栄養不足による衰弱。母親は「好き嫌いが激しかった」と供述▼しかし、胃は空っぽで、腸内には玉ねぎの皮、アルミ箔、ろうそくのろうが残っていた。長女の難病は国の特定疾患に指定されており、行政が育児支援していたというが虐待は把握されなかった▼新潟県では24歳の母親が「3歳の長女がいなくなった」と話していた直後、長女は川に浮いていた。橋の欄干から落として殺害したと供述。児童虐待は年々増加。今年上半期は317件で、前年よりも96件(43%)も増えている▼今月は児童虐待防止月間。オレンジリボン運動は「子供たちの明るい未来を示す色」として始まった。江差町役場1階ロビーのツリーは高さ2㍍。オレンジリボンは400個用意。来月25日まで来庁者に飾ってもらう。地域住民にも児童虐待への関心が高まり、幼い命を守らなければ。(M)


11月24日(月)

将棋の羽生善治名人がまた大記録を打ち立てた。史上4人目の公式戦通算1300勝を最年少・最速で達成。44歳1カ月という年齢なので、故・大山康晴十五世名人の1433勝の最多記録もいずれ更新するだろう▼羽生名人の師匠は函館出身の二上達也元日本将棋連盟会長。はこだて未来大学の松原仁教授の人工知能研究への協力でも知られている。2005年には名人戦の対局で、09年には同大での講演で来函している▼プロ棋士の世界では40代に入ると下り坂になるとされていたが、羽生名人はいまだ7大タイトルのうち4冠を保持している。現代の将棋はデータベース化が進み、「新手」が出てもその日のうちに情報が伝わる。ともすれば記憶力にすぐれた若手棋士の方が成績を残せそうな気もする▼現代の勝負の分かれ目について数年前、ある会合で同席した札幌出身の野月浩貴七段は「一局を通じて必ず未知の局面が現れるので、新たな可能性を見いだせる人が勝利を手にする」と説明してくれた▼野月七段は「大事なのは積み上げてきた人生観を対局の中で表現すること」とも。年齢を重ねても強さを保つ羽生名人の将棋は、今後も棋界の最前線で楽しめそうだ。(I)


11月23日(日)

長い人生の中で、人間誰しも否応無しに選択を迫られるときがある。迷わず判断でき、行動に移せる場合は積極的選択と言えるが、その逆に仕方なくという思いの末となると、それは消極的選択▼例えば、大学進学のとき「理系の科目が得意なので理系大学、学部に」は積極的選択であり、「理系は苦手だが、将来を考えると理系の方がいいか」は消極的選択。就職で業種を選ぶ際にも同じようなことがいえる▼さらに分かりやすいのが政治の分野。内閣や政党支持率の世論調査にうかがえる。「支持する」「支持しない」は積極的だが、「どちらかというと…」という前置きがつくと消極的。同じことは投票行動にも言える▼政党の有無や候補者の人柄などが判断材料となるが、この候補に、と決め切れず、消去法で絞っていくことになると消極的選択。それでも判断がつかない場合をいうなら、さしずめ放棄的選択▼無党派が第一党と邪揄(やゆ)されて久しく、投票率の低下…放棄的選択の多い現実に歯止めがかかっていない。衆院が解散し、総選挙へと動き出した。各政党のマニフェストが注目されるが、望まれるのは積極的選択を誘導する中身ある論戦の選挙戦。政治課題それぞれに。(A)


11月22日(土)

衆議院が解散し、12月2日公示、14日投開票で総選挙が行われる。「大義なき戦い」という批判の声が高まる中で、2年前に続き2回連続の師走選挙に事実上突入した▼師走選挙は投票率の低下を招くといわれる。2年前、道8区の投票率は前回(2009年8月)から約10ポイント下がった。12月だからという理由だけではないだろうが、気になる数字だ▼さらに今回は大義よりも党利党略が優先されたようにみえるだけに、有権者の視線は厳しい。本日15面の記事でも多くの市民が解散に疑問を呈している。だからといって、無関心でいられない問題は数多い。問われるのは安倍政権の2年間だ▼まず函館市民にとって気になるのは大間原子力発電所の建設問題。電源開発が年内にも適合審査を申請する意向を示す中で、どう対応するのか。なし崩し的に進められている原発回帰は、今後どうなるのか▼経済政策「アベノミクス」の是非は。駆け足で関連法案が可決された地方創生の実効性は。道内の議員が軒並み反対していたTPP(環太平洋連携協定)の行方は。少子高齢化、社会福祉、集団自衛権、財政再建は。野党は具体的な政策ビジョンを示すことができるのか。一票を投じるべき課題は、山積している。(I)


11月21日(金)

♪親の意見を承知ですねて/つもり重ねた不幸のかずを/なんと詫びようか/おふくろに〜 「不器用ですから」のせりふが代名詞の名優、高倉健さんが旅立った。寡黙な愛を育んだ2人の女性の傍(かたわら)へ▼筑豊の炭鉱町に生まれた健さんは病弱で小学校に入って肺浸潤(はいしんじゅん)に侵され、母親は1年間1日も欠かさずウナギを食べさせた。映画「八甲田山」では「雪の中、這い回って、お母さんは切ない」と凍傷などを心配▼私事で撮影を妨げたくないと、母親の葬儀には参列せず、後日、泣きながら骨壷から母親の骨を取り出し、ばりばりかじったという。映画人生に最も影響を受けた母親の「辛抱ばい」の言葉が好きだった▼歌手で女優の江利チエミさんと結婚したが、12年後に離婚。「チエミが悪いんじゃない。自分の責任」と再会を望んでいた。命日には毎年墓参り、生まれてくることのなかった子の水子地蔵も建てた▼映画「鉄道員」のテーマ曲にチエミさんの代表曲「テネシー・ワルツ」が使われている。遺作「あなたへ」の警務官の役で刑務所を訪れ、服役者に「大切な人のところへ早く帰って下さい」と呼び掛けた。気配り、寡黙で不器用に、試練に耐える日本男子の美学を演じ続けた。(M)


11月20日(木)

秋には経済は上向くと予想されていたが、景気の落ち込みが大きく、国内総生産は大幅なマイナス成長。安倍首相は来年の10%の消費増税を先送りし、解散・衆院選挙に踏み切った▼再増税の見送りは解散の理由にはならない。消費税増税法の景気条項に経済状況を総合的に勘案して決めるとあり、マイナス成長では先送りは当然。3党合意で増税を決めた民主党は凍結へ方針転換した▼金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢で経済の好循環を取り戻すアベノミクスもほころび始めた。1分間に6000万円の債務が膨らむ借金大国。借金を解消する秘策の消費増税見送りで、財政健全化が遠のく▼いまさら国民に何を判断しろというのか。師走の衆院選に、ちまたでは「身勝手な解散」「いきなり解散」「理由なき解散」「不意打ち解散」「どさくさ解散」などと冷ややかな声…▼電気料金など次々と値上がりし家計節約の折り、消費増税の見送りとアベノミクス推進を争点に国民の信を問うとしている。選挙費用に600億円もかかり、税金の無駄遣いだ。衆院選は来月2日に公示、投開票は赤穂浪士が吉良屋敷に討ち入りした14日。仇を討つような大義はないが、とりあえず投票に行こう。(M)


11月19日(水)

函館はメディアによく取り上げられる。北海道では札幌は別として小樽や富良野とともに。それは観光を含め都市財産に恵まれているという証であり、他都市から羨まれるのも当然▼日本自動車連盟(JAF)が発行する会員向け機関誌「ジャフメイト12月号」でも紹介されている。表題は「本物のモミの木で…夢と活気が灯る函館の冬」。取り上げられているのは、そう「はこだてクリスマスファンタジー」▼当初の苦労など佐藤賢治さん(実行委運営副本部長)への取材を通して。函館がよく語られるのは歴史財産だが、自慢ができ、忘れてならないのは今を生きる市民が産み出し、続いている観光文化財産があること▼その双璧が夏の市民創作・函館野外劇であり冬のクリスマスファンタジー。野外劇は異彩を放つ取り組みで、初演の年から既に27年。資金面をはじめ悩みを抱える中で市民有志の熱意が支えている▼それはクリスマスファンタジーも同じ。函館青年会議所が発案し、手がけて17年。野外劇ともども年々、知名度を高めている。新幹線開業が1年余り後に迫っている今、寄せられる期待はさらに。そのクリスマスファンタジーは今年、今月29日に幕を開ける。(A)  


11月18日(火)

フィギュアスケートの羽生結弦選手が先日の大会で、負傷を押して演技を続けたことが波紋を広げている。必死に演技する姿は感動を呼んだが、強行出場させず、周囲が止めるべきではなかったかとの指摘が出ている▼日本人(だけではないかもしれないが)は、けがやハンディを抱えながら勝負に挑むといった「美談」をたたえる。背景に「スポーツ根性ドラマ」を好むメンタリティーがあるように思う▼昭和の2大マンガが象徴的だ。「巨人の星」の星飛雄馬は大リーグボールの投げ過ぎで左腕を壊し、「あしたのジョー」の矢吹丈はパンチドランカーの症状を抱えながら世界戦に臨み、真っ白に燃え尽きた▼現実の世界でも2001年5月場所で横綱貴乃花が足の負傷をこらえて優勝決定戦に臨み、賜杯を手にして「感動した」と当時の小泉純一郎首相に称賛された。その後、一度も優勝できずに引退した▼当然ながら、試合出場について一番悩むのは選手本人であり、観戦しているだけの凡人が口を出せることではない。ただ、目先の勝負を優先して選手生命を縮めてしまうのは悲しい。その後の選手生活にさらなる感動のドラマが待っているのかもしれないのだから。(I)


11月17日(月)

宇宙開発を巡って、うれしいニュースと残念なニュースが相次いだ。欧洲宇宙機関の探査機「ロゼッタ」が人類史上初めて彗星への着陸に成功したが、内蔵電池切れのために休眠状態となり期待された探索活動ができなくなってしまった▼地球外天体への到達といえば、2005年に初めて小惑星に着陸した日本の探査機「はやぶさ」が記憶に新しい。この時も着陸後にトラブルが発生。一時は地球への帰還が絶望しされながらも奇跡的に〝生還〟を果たした。その感動的なドラマは映画化にまでつながった▼ロゼッタもはやぶさ同様に今後の復活が待ち望まれるところ。それにしても、科学の進歩が進んだ世の中においても、宇宙探索には想定外の障壁が存在していることに驚きを禁じ得ない▼10月末には民間の宇宙旅客機が試験飛行中に墜落し、1人が死亡する痛ましい事故が起きた。来年にも実現が予定されていた一般人による宇宙旅行計画に大きな打撃を与えた▼1968年の映画「2001年宇宙の旅」では、すでに木星への有人飛行の様子が描かれていた。現実にはまだ人類は月より遠くの天体に自らたどりついたことはない。宇宙開発への果てしない挑戦は続く(U)


11月16日(日)

先日行われた「ゆるキャラグランプリ2014」で、初出場した北斗市の公式キャラクター「ずーしーほっきー」は324位だった。参加総数1699体の中での順位なので、健闘したといえるだろう▼ゆるキャラについては近年、経済効果が注目されている。同グランプリを2011年に制した熊本県の「くまもん」は、日本銀行熊本支店の試算によると、11年11月から13年10月の経済効果は1244億円だった▼グッズの売り上げだけで億単位の金額を稼ぎ出すキャラもいくつかある。毎日のようにテレビで見かける千葉県船橋市の非公式キャラクター「ふなっしー」に至っては、“中の人”の年収が話題になっている▼見た目のかわいらしさやインパクトだけでは、全国に数千体あるといわれるゆるキャラの中で目立つことは難しい。自治体の支援体制や活用の仕方、パフォーマンスや物語など「個性」をより強く打ち出していくことが差別化のポイントになる▼中にはつくっただけであまり利用されず、ひっそりと姿を消していくというケースもある。そうなれば自治体でつくったキャラなどは「税金の無駄」との批判は免れない。ゆるキャラが生き残っていくのも、ゆるくない。(I)


11月15日(土)

昨年夏、福島第一原発の周辺自治体を訪ねた。現地に至る途中から、人影のない荒涼とした風景に衝撃を受けた。以前、ある閣僚が原発周辺を「死の街」だと発言して後に撤回したが、表現はどうあれ印象に大きな差異はない▼青森県大間町で建設中の大間原発に関し、電源開発は2021年度にも稼働させる考えを表明した。係争中の函館市にも担当者が訪れたが、一方的な説明に市や市民が烈火のごとく怒りを表したのも無理はない▼同社は市が提訴した建設差し止め訴訟に対し「現時点では機が熟していない」と門前払いを求めながら、年内にも原子力規制委に適合性審査を申請し、稼働への準備を着々と進めている▼批判を一切認めないかのような姿勢に、原告弁護団の兼平史弁護士は「二枚舌で、反論が的を得ていないことを認めるような発表」と本紙の取材に指摘した。百歩、いや千歩譲って安全な発電所を造ると言うのなら、市や住民の不安に対して説明を尽くすのが筋ではないか▼説明はわずか15分。避難計画を作らねばなるまい自治体に対する十分な説明だったとは到底いえない。電源開発は「建設ありき」ではなく、改めて福島から何をすべきか学んでほしい。(C)


11月14日(金)

「永田町から突如、発生した解散風は次第に勢力を強め、速度を増しながら日本列島を混乱に巻き込もうとしています」。気象予報的に表現するとこうなるが、衆院の解散総選挙が現実味を増している▼政界は一寸先が闇と言われる。大義があるなしにかかわらず、例え疑問の声があっても、数の論理を優先した判断がまかり通る。さしずめ、今、解散となると、この指摘の範ちゅうを外れてはいない▼とはいえ、解散には何らかの大義が必要である。現内閣が力を入れる女性活躍推進法案は衆院で審議中。参院に送られているまち・ひと・しごと創生法案などは、急ぎ成立させようとしてまでだから▼経済政策など政治課題は山積し、さらに一票の格差是正など衆院の選挙制度改革や定数の削減も約束を果たしていない。消費税の2%増税を先送りする判断への信を問う、というのもピント外れでしかない▼それはむしろ歓迎される話で、敢えて聞くまでもないから。あれこれ考えてくると「選挙に勝てるタイミングが今」というのが大義と邪推されても仕方がない。それも多忙な年末に、600億円余りかかるといわれる選挙事務経費を使って。どう考えても説得力に欠ける。(A)


11月13日(木)

2831億円…大変な金だが、これでも氷山の一角なのだろう。というのも、単に調べがついただけの実態だから。それにしても多過ぎるこの額は、無駄遣いと指摘された税金の金額である▼会計検査院が先日、安倍首相に提出した、官庁や政府出資法人などの昨年度決算の検査報告で明らかにされた。その中で本来の目的に合致した使い方がされていない事業などが595件あったという▼このうち法令違反に当たる「不当事項」とされたのが約7割の424件。目立つのが、河川からの流入土砂で本来の機能をしない砂防ダムなど防災施設の保守管理不備や、有効に活用されていない補助金や交付金など▼その合計金額は、前年度検査より2000億円少なかったそうだが、だからと言って、聞き流せる話でもない。一般、特別、企業会計を合わせた函館市の年間予算に匹敵するほどの額なのだから▼財政が厳しい、年金や福祉財源が足りないと説明され、消費増税を強いられている一方で、これほどの不適切が表に出ては厳しい目が向けられて当然。本当に約束した使い方をしてくれるのか、再消費増税の判断が大詰めを迎える中、そんな思いが頭をよぎる。(A)


11月12日(水)

多臓器の機能低下に苦しむ知り合いの40代女性がはさみで手首を切り自殺を図った。薄れる意識の中に、わが子の笑顔が浮かび、東京の姉妹に「子供を頼みます」とメールを送ったことで助かった▼先日に続き「安楽死」について。末期がんで余命半年を告げられた米国の29歳女性の死が波紋を広げている。女性は法律で安楽死が認められている州に転居し、「11月1日に安楽死」と予告▼ネットの動画で「1日に2回激しい発作が起き、夫の顔を見ても名前が出てこなかった。もうすぐ死ぬのなら、自分の思い通りに死にたい…」と涙ながらに訴え、まだ残された時間があった砂時計を壊し死期を早めた▼欧米で「死ぬ権利」を認める動きが広がっている。スイスでは「その時」が来たら専門医が処方した注射を自宅で自ら打つことが許され、それを手助けする団体もあるという。「自殺ほう助」にあたるとの指摘もある▼日本では延命措置を受けずに最期を迎える「尊厳死」を法制化する動きが出てきた。冒頭の病弱な女性も「生と死の間で苦しく、最期は自分で選び、許されるなら安楽死したかった」と話す。でも、耐え難い苦痛を乗り越えてこそ、子供の笑顔に感動するのではないか。(M)


11月11日(火)

サッカーJ2リーグでは、J1昇格へのプレーオフ出場権を目指す戦いが激しさを増している。現在8位のコンサドーレ札幌も、6位以内に入れば参戦することができる▼今シーズンのコンサドーレは、思うように勝ち点が伸びず、財前恵一監督が解任されるなど厳しい状況が続いた。それでも、イヴィッツァ・バルバリッチ新監督の下で、プレーオフ出場に手が届くところまではい上がってきた▼もちろんJ1昇格は、チームにとってもサポーターにとっても大きな目標だ。ただJ1から降格し今年のJ2を独走で制した湘南ベルマーレと、J1に初昇格しながら再びJ2に戻る徳島ヴォルティスの姿からは、複雑な思いもよぎる▼対照的な両チームの成績が、J1とJ2との大きなレベルの差を端的に象徴しているのは明らか。コンサドーレもこれまで3度のJ1昇格を果たしているが、いずれも2年以内にJ2に逆戻りしている▼現場の選手が目の前のJ1昇格に向けて突き進むのは当然のこと。その一方で、J1定着という最終目標のためにはフロントとサポーターが一丸となって、長期的な展望に立ってチームを支え続けていく覚悟が必要ではないのだろうか。(U)


11月9日(日)

九州電力川内(せんだい)原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働について、伊藤祐一郎鹿児島県知事が7日に同意し、川内原発が年明けにも再稼働する見通しとなった。昨年9月以来国内では全て停止していた原発が、再び動き出すことになる▼気になるのは「地元同意」の進め方だ。県議会と立地自治体である薩摩川内市の市長、市議会の意見を踏まえて知事が判断したという。知事はかねてから「同意が必要なのは県と薩摩川内市だけ」と言明していた▼大間原発(青森県大間町)について、事業主体の電源開発が原子力規制委員会へ安全審査の申請に向け、最終調整を進めている中での出来事だ。建設差し止め訴訟を起こしている函館市には同社からの連絡はなく、かやの外に置かれている▼仮に地元同意が「県と立地自治体」だけという川内のケースがモデルとなれば、避難計画の策定を求められる半径30㌔圏内の周辺自治体は、意思を届けることができずに義務だけを背負うことになる▼原発の再稼働自体には賛否が分かれる。ただし、福島原発の過酷事故によって提起された数多くの問題を置き去りにしたままで、拙速な議論の中で進める再稼働であれば、許されない。(I)


11月8日(土)

照明は今や「LED」の時代。その最終的な礎を築いたのが日本人であることも知られる。赤石勇さん(名城大教授)、天野浩さん(名古屋大教授)と中村修二さん(米カルフォルニア大教授)の科学者3人▼長年、難しいとされてきた青色を産み出した。これによってLEDの光の三原色が揃い、実用化を一気に加速させたのだから、まさに世紀の発明。その功績は高く評価され、今年のノーベル物理学賞に輝いた▼「20世紀は白色電球、この発明によって21世紀はLEDによって照らされる」とまで言わしめ、急速に普及しているのは誰もが知る通り。事実、家庭の照明をはじめ身近な日常生活の中にも浸透している▼交通信号機、駅の電光表示、イルミネーション…そして産業分野では漁火などにも。10月末にはバチカンからニュースが飛び込んできた。システィーナ礼拝堂の照明7千個がLEDに変えられたという▼そこに浮かび上がっている絵画は、あのミケランジェロの傑作「最後の審判」である。LEDの明かりの下で観賞してみたい、そんな思いにかられる一人だが、これも照明新時代を語るにふさわしい一例。改めて3人の科学者の功績を讃えずにいられない。(A)


11月7日(金)

天才外科医を主人公にした手塚治虫の名作「ブラック・ジャック」には、安楽死を請け負うドクター・キリコというモグリの医者がたびたび登場する。患者の命を救おうとするブラック・ジャックの対立軸として描かれている▼脳腫瘍で余命半年と宣告され、「安楽死する」と宣言していた米国の29歳の女性が、先日亡くなった。安楽死が認められているオレゴン州に夫とともに移住し、最期は医師から処方された薬を飲んだという▼一方、同じく米国で脳腫瘍のため余命数カ月と告げられた大学生の女子バスケットボール選手が、公式戦デビューを飾ったというニュースが全米で大きく報じられた。彼女は「何が起こってもチームを支える」とコメントしていた▼この女性2人を比較して安楽死の是非を論じることは難しい。肉体や精神の苦痛、取り巻く環境などは人によって異なる。ただ、誰もがやがて直面する「死」について考える契機となった▼患者に向き合う姿勢を問われたキリコは「いのちが助かるにこしたことはないさ…」と答える。それでもキリコは安楽死を生業とする。単純に善悪二文法では割り切れない生死の問題を、40年ほど前のマンガが取り上げていたことを思い出した。(I)


11月6日(木)

以前は脱法ドラッグ、合法ドラッグと呼ばれた。そして警察庁は今年7月から「危険ドラッグ」に統一した。体にも危険ならば、使用によって社会問題を引き起こす危険があるから▼「危険ドラッグ」は、覚せい剤や大麻など違法薬物と良く似た成分を含む薬物。だが、薬事法の規制外にあるため店頭やネットなどで売られ、容易に手に入る。使用することによって平常心が阻害され、さまざまな問題が▼車を運転しての交通事故などは、分かりやすい具体例。今年2月に福岡市で発生した事故は記憶に新しい。停車中の車10台に接触し、歩行者ら12人にけがをさせている。一方、検挙者も増えている▼今年上半期だけで昨年1年間の人数に近い。こうした現実があるのに、販売や所持、使用に対する法律の規制は弱い。そう指摘されながら国の対応は遅れたまま。条例で規制を強化しているのも東京都など一部▼都道府県で扱いが違うとなれば、極端な言い方をするなら、野放し状態ということ。事の性格を踏まえると、危険対策の効果は全国的に一律でなければ求めづらい。これ以上、危険が広がらないように…国による法律での規制が必要な段階。そこに猶予はない。(A)


11月5日(水)

小学生のころ、エンピツ削りに使っていた小さな刀を振り回してケンカした。高学年のガキ大将が「そこまで」と止めに入り、人を傷付けてはいけないことを知った▼お寺のさい銭箱から硬貨を取り出そうとして見つかり、近所のおじさんに「警察に連れて行ってもらうぞ」と叱られた。間違ったことや危険なことをすれば、親や見知らぬ大人が大声で叱ってくれた。学校で道徳を学ぶことはなかった▼文部科学相の諮問機関が小中学校の「道徳」を「教科外の活動」から「特別の教科」に格上げするよう答申した。しかし、“心の教育”の道徳は文章や数値で記述する形で評価できるのだろうか▼道徳の導入は「発端はいじめの問題への対応」と答申に明記してあるように、深刻化するいじめへの対策だった。「多様な価値観の存在を認識しつつ、自ら感じ、考え、他者と対話し協働しながら…」とある。子供には分かりにくい▼改築している近くの小学校は校庭の二宮金次郎の銅像をそのまま保存。親孝行で隣人を愛し、いじめから友を守ることを教えたいという。道徳の数値評価は「心の格差」にもつながる。うちわ、観劇会、SMバー…国会にも「道徳の時間」がほしい。(M)


11月4日(火)

晩秋を迎え、オーシャンスタジアムや復活チンチン電車・箱館ハイカラ號といった「夏期」の営業を終えたものが聞かれるようになった。間もなくすればスケート場など「冬期営業」のスタートを迎える▼食べ物も、この時期の「旬」のほか、鍋物の具やスープがスーパーなどで多くなった。今冬の鍋は肉や魚をたっぷり入れた「ガッツリ食べる」「濃い味」が流行るという。市販スープにひと手間掛けて挑戦してみたい▼コンビニエンスストアでは、少し前からおでんが並ぶ。富山出身のコラム子は、おでんにつけるのはからしで、函館ではみそをつけることもあると聞いて驚いた。まだトライしていない▼9月末、本紙は別刷「青森観光特集」で、青森市の「青森生姜味噌(しょうがみそ)おでん」を取り上げた。寒さ厳しい中で青函連絡船の出航を待つ人たちの体を温めようと、みそにすりおろしたショウガを入れて出したのが始まりという▼青森の食材文化を全国に広めようと「青森おでんの会」は「全国おでんサミット」への出展。兵庫県姫路市で開かれた際は、最も売り上げが多かったという。北海道新幹線が開通すれば気軽に出掛けて味わえる。その日が待ちきれない。(R)


11月3日(月)

まさか、そんなことが…あり得ない。東日本大震災が発生してほぼ一カ月後…被災現場が混乱を極めている中、東北農政局で永年勤続職員表彰の副賞銀杯を大量に発注していたという話▼地元・宮城県の河北新報が報じ、農水省も否定していない。敢えて言うまでもないが、東北農政局は一次産業の復旧復興事業を担う出先機関。一般感情に照らすと、事態認識があれば自粛か先送りして当たり前▼でも役所の感覚はそうでなかった。経費の問題もあるが、何より現地であり、より被災者の思いをくむ姿勢があって然るべき立場なのに。それ以前の問題として、まだ行われていたことに疑問を呈する向きもある▼実際に地方自治体では、副賞を伴う永年勤続表彰を廃止する動きが広がっている。長く務めたことが評価の対象となる制度が、今の時代にそぐわず、住民の理解を得られないとの判断に加え、財政難という事情もあって▼農水省がそれはそれ、復旧復興には懸命に対応している、と説明したところで説得力に欠ける。というのも姿勢の問題だから。多々指摘される役所の論理も変わってきたと見る向きもあるが、こうしたことがあっては…それも否定されかねない。(A)


11月2日(日)

野球は終わったが、道内のプロスポーツはサッカー、バスケットボール、フットサルが盛ん。バレーボールは函館出身の古田史郎選手が出場するV・プレミアリーグが15日に開幕する▼函館は今季、アリーナ建設中でバスケットとバレーボールの試合はない。フットサルは市民体育館の客席数がFリーグの規定数より少なく開催不可能。アリーナ完成が待ち遠しい▼来年以降も問題はサッカーのコンサドーレ札幌だ。今季のホーム開催21試合のうち“聖地”札幌厚別公園競技場は3試合。Jリーグのクラブライセンスには、ホームスタジアムに規定があり、厚別はスタンドの屋根面積が基準に達しておらず、札幌ドームが使えない日に開催した▼コンサドーレは来年のJ1クラブライセンスを取得したが、札幌ドームのみホームスタジアムとした。今季のようにJリーグの承認があればほかでも可能であれば、東北、北関東のチームとの試合を函館市千代台公園陸上競技場で開催できるはず▼同競技場は客席数の問題で12年から試合はない。16年以降は北海道新幹線で仙台、栃木などからファンが多く来函できる。スタジアム規定は他チームも大きな課題。何とかならないものか。(R)


11月1日(土)

錦秋の霜の月に入って、ひと葉散り、二葉散り、ナナカマドの実は赤い宝石珊瑚(さんご)のように鮮やか。妙薬として不老長寿をもたらす、その美しい珊瑚の密猟が南の諸島で横行している▼珊瑚は約30年かけて直径1㌢の太さに成長する。その神秘的な美しさは悠久の時間をかけて海底で磨かれる。ベニサンゴやモモイロサンゴなど宝石珊瑚は人を魅了。紀元前から宝石珊瑚漁が行われたのは地中海だけという▼ところが19世紀に入って日本が一大産地として注目され始めた。明治期に高知沖などで操業され、「あどけない」「美しい娘」といわれた日本産が世界の宝石珊瑚界をリード。黄金の国は珊瑚の国だった▼その一大産地の小笠原諸島沖で、中国船とみられる不審船が珊瑚礁を荒らしている。100㌧級の大型船が日に最大212隻確認され、密漁容疑で船長5人を逮捕。日本産の珊瑚は品質が良く、中国で高値で取り引きされている▼成長が遅い珊瑚を乱獲すれば絶滅しかねない。国際的にも保護の動きが広がり、中国も自国の珊瑚を守るため禁漁としている。自国では守っているのに、他国での密猟に目をつぶっていいのだろうか。赤い実をつけたナナカマドの枝は生花に差すと風情たっぷりだが…。(M)