平成27年1月


1月31日(土)

「ウエルカム・トゥ・クレイジー・ワールド(狂気の世界へようこそ)」。29日に本社を訪れた日本航空(JAL)の大西賢会長は、世界各国の航空提携グループにJALが加入した際、ブリティッシュエアの会長からこう迎えられたと話していた。業界の厳しさを表現した言葉だ▼国内航空3位のスカイマークが民事再生法を申請した。2000年前後に国の後押しを受けて誕生した新興の航空会社のうち、エア・ドゥを含めた3社はすでに大手の傘下に入っており、4社すべてが自主経営を断念したことになる▼4社は機内サービスの簡素化や機体整備の委託などを行い、低運賃での運航を実現したが、その後は大手も値下げし苦戦。スカイマークだけが独自の戦略で自主経営を貫いてきた▼ミニスカートの客室乗務員なども話題を集めたが、近年は大手に加え、格安航空会社との競争も激化。世界最大の旅客機を大量購入しようとしたことが致命傷となった▼ただ、新興航空会社が業界に風穴を開け、料金値下げという恩恵を利用者にもたらしたのは事実。スカイマークは「第三極」を維持する構えをみせているが、「狂気の世界」で再び浮上できるのだろうか。視界は不透明だ。(I)


1月30日(金)

札幌から函館に向かう特急列車の車内で、視覚に障害のある男性が2人座っていた。通路を挟んで、それぞれ付き添いの人もいる様子だった▼一人の方は、病院と打ち合わせをしているようで、何度も携帯電話を持ち一人でデッキに向かった。ドアに最も近い席だったので移動は容易だったかもしれないが、大変な苦労だと思う▼こちらも電話が入りデッキへ。男性は狭い通路で話し中で、車内販売のワゴンが通過する時、担当者は丁寧に言葉を掛けて横を通った。トイレなどに向かう人も同様。つえを突きながら歩く高齢者も、いっそう慎重に進んでいた▼もう一人の男性は付き添い者と談笑していたが、函館駅に近づくと男性同士が「それにしても、今日は列車が揺れたね。何回かびくっとしたよ」と話した。こちらも読書中にかなり体が揺れた瞬間はあった。普段から車内を歩く時はかなり慎重にならないと、席に体をぶつけてしまう▼駅通過時など、車両特有の揺れなどかもしれないが、激しい揺れがあると、仕事柄か、大沼駅で発生した貨物列車の脱線事故を思い出してしまう。乗客の安全、安心を確保することは第一。あらゆる乗客に配慮した車両、運転が望まれる。(R)


1月29日(木)

販売段階で食品に針などを混入させる事案が少なくない。ちょっと気づくのが遅れでもしたらケガを免れないのだから、意図的な行為だとすると紛れもない犯罪であり、糾弾されて当たり前▼それと比較はできないが、製造過程における異物の混入も許されるものでない。けがや病気に至らなくとも、強い不快感を覚える。食品衛生法が目を光らせている理由もそこにある▼だが、現実にビニール片や金属片、プラスチック片などの異物混入は起きている。消費者の関心が高いということで、国民生活センターは先日、全国の消費生活センターなどに持ち込まれた相談の件数を発表した▼いわば公になった件数で、2009年からの6年間で1万6094件。うち口の中を切ったなど危害を伴ったのは3191件あったという。毎年2000件ほどを数え、本年度も10日現在で1852件に上っている▼内訳として虫などの混入が345件、金属片の混入が253件。事業者は細心の注意を払っているはずだが、それでもこれほどに。理由に関係なく、消費者の信頼を損ねる問題である…そう考えると、この統計は事業者に向けた警告にも聞こえてくる。(A)


1月28日(水)

サッカーで「黄金の中盤」として有名なのは、1982年ワールドカップ(W杯)スペイン大会のブラジル代表チーム。ジーコ、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾ、ファルカンの4人による華麗なプレーは今も語り草だ▼ジーコが日本代表を率いた際、中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一の4人を指して「日本版黄金の中盤」という表現がよく使われた。4人とも10代から注目を集め、海外で活躍していた▼そのうち、小野と稲本がことし、コンサドーレ札幌でプレーする。札幌は昨季、昇格争いにもからめず10位に終わった。運営する北海道フットボールは来年が20周年で、節目の年をJ1で迎えるためにも期待が膨らむ▼黄金の中盤は必ずしも良い結果を残していない。ブラジルはW杯二次リーグで敗退。日本の4人もそろって出場したのは当初だけで、2006年のW杯ドイツ大会では1勝もできなかった。小野、稲本ともに35歳という年齢も気になる▼しかし、2人と同年代の中村や遠藤保仁が一昨年、昨年とJ1のMVPを獲得。選手の海外移籍が増え、近年のJリーグは若手とベテランが存在感を増している。今季の2人が黄金の輝きを放つことを願っている。(I)


1月27日(火)

50年ほど前に国鉄「江差松前線」を取材した折り、上磯町(現北斗市)出身の歌手、三橋美智也さんは「三つのころから歌をおぼえた。浜の波の音に負けないよう江差追分や津軽民謡を歌ったものです」と話してくれた▼♪松風さわぐ丘の上 古城よ独り何偲ぶ〜 やさしく哀調を帯び、高く澄み切った歌声で次々とヒット曲。特に高橋掬太郎作詞の「古城」はレコード300万枚を売り上げ、土井晩翠作詞の「荒城の月」と並ぶ名曲とされた▼ファンでつくる「みちや会道南支部」が1億枚超のレコードを売り上げ、歌謡界に残した功績をたたえて「三橋美智也記念碑」の建立を計画。高さ約1㍍、幅約2㍍、採掘したままの自然石。新幹線駅前の公園に建立する▼三橋さんはトラピスト修道院付近の牧場でよく遊び「牛に手袋をとられて泣いた」という。母親と別離した三木露風が、その修道院で文学講師をしていた時、作ったのが童謡「赤トンボ」だった▼「三橋美智也生誕の地」など銘文を刻む記念碑は、三橋さんが亡くなって20年にあたる新幹線開業の日に除幕。トラピスト修道院と並んで北斗観光に加わる。新幹線の発車メロディーは「古城」と「赤トンボ」を流したい。(M)


1月26日(月)

トヨタが世界で初めて量産型の燃料電池車として発表した「ミライ」が、予想を上回る人気を集めている。現在は年間700台の生産能力だが、販売店が「納車は3年先」などと説明するほど注文が殺到。生産ラインを大幅に拡大し、2017年には年間3000台まで生産台数を増やすという▼水素を燃料に使う燃料電池車は、発電後に排出されるのが水だけで、有害な排出物がほとんど無いのが特徴。電気自動車のように充電時間を取られる必要もない▼その一方、1台の価格は700万円以上で、国からの202万円の補助金を利用しても購入者の負担額は520万円と高価なことが、普及の足かせになると見られていた▼しかしふたを開けてみるとこの人気ぶり。エコへの関心が想像以上に広がっているのに加え、景気が上向きの中で富裕層の購買意欲が高まっていることが反映していると思われる▼もちろん一般庶民にとってはまだまだ高根の花。トヨタは自身が保有する燃料電池関連の特許約5680件を競合他社に無償提供することで、燃料電池車の世界的普及に意欲を燃やして。果たして手の届くところまで低価格化するのは、何年後になるのだろうか(U)


1月25日(日)

スポーツ界には「不滅の記録」と呼ばれる偉業がいくつかある。大相撲でいえば、双葉山の69連勝と並んで、大鵬の優勝32回は長い間破られなかった。しかし、白鵬が33回目の優勝を決め、前人未到の領域に入った▼白鵬は横綱になった2007年以降、一度も休場していない。10年の野球賭博事件、11年の八百長問題で角界が揺れた時期も、一人横綱として土俵を守ってきた▼今場所は満員御礼が続き、テレビ中継も視聴率が好調だといい、相撲人気は確実に回復している。有望な若手が出てきたこともあるだろうが、白鵬の記録に注目が集まったことが、何より大きい▼今後、大相撲がさらに盛り上がるためには、白鵬を脅かす存在の出現が待たれる。44年の間で大鵬の記録に唯一肉薄した福島町出身の千代の富士は、当時若手の貴花田(後の貴乃花)に敗れ、土俵を去った▼大鵬も釧路管内弟子屈町出身で、北海道出身の横綱は過去8人と都道府県別では最多。ただ、92年の北勝海引退以降、横綱はおろか大関も生まれていない。かつて相撲王国といわれた北海道から、またいつか不滅の記録に挑むような力士が出てくることを期待したい。(I)


1月24日(土)

自転車の運転は常に危険と背中合わせ…だから法規を守って乗ろう、と呼びかけられる。本欄でも何度か取り上げられているが、それだけ社会的な問題となってきているから▼現実に自転車が絡む事故は全国的に増えている。警察庁の統計で、事故全体の約2割。うち自転車対歩行者の事故は10年前の1・5倍になって、しかも死亡に至る事故も少なくない。対策の強化は当然といえば当然▼先日、改正道路交通法の施行令(6月から施行)が閣議決定された。そこに明記された危険行為は14項目。参考までに幾つか挙げると、信号無視、一時停止違反、酒酔い運転、ブレーキのない自転車の運転…▼さらに通行区分違反、歩道での歩行者妨害、交差点での優先道路通行車妨害、携帯電話を使用しての事故といった安全義務違反など。そして3年間に2回以上摘発された人には、安全講習の受講が義務づけられる▼自転車は利用者の年齢幅が広い。それが対策を難しくしているが、最終的な決め手は安全に乗るという意識の醸成。実効が疑問視される中で、警察庁が敢えて安全講習を柱にした理由もそこにあるのだろう。自転車も自動車と同じ、事故を起こしてからでは遅い。(A)


1月23日(金)

「十字軍」は、中世に西ヨーロッパのキリスト教諸国が、聖地エルサレムをイスラム教諸国から奪還することを目的に派遣した遠征軍のこと。イスラム過激派がキリスト教徒中心の欧米諸国を批判する際にも使われる▼過激派組織「イスラム国」によるとみられる日本人2人の殺害予告映像では、「日本は進んで十字軍に参加した」と指摘していた。中東を歴訪した首相がイスラム国対応で2億㌦の資金援助を表明したことを指したとみられる▼しかし、日本の資金援助はイラクやシリアの人道支援が目的で、「十字軍」として戦闘に参加するためのものではない。的外れな要求であり、そもそも人命を盾に取った卑劣な脅迫を、断じて許すことはできない▼身代金の対応は国によって異なる。アメリカやイギリスは断固拒否し、少なくとも5人が殺された。一方でフランスやドイツなどは政府が支払ったとされる▼十字軍の時代から根深い対立を抱えるイスラム圏と西欧社会の関係とは一線を画し、日本は中東の石油に依存してきたため、アラブ諸国と平和外交を続けてきた。培ってきた関係から交渉の模索が続く中で、殺害予告の72時間というタイムリミットが、刻一刻と迫っている。(I)


1月22日(木)

昨年8月、湯川遙菜さん(42)がシリアの内戦に巻き込まれ「イスラム国」に拘束された時、小欄で「空爆を巡って日本の言動を“敵”とみなしたらと思うと背筋が寒くなる」と書いたが、その恐れが現実となった▼インターネット上の映像では、湯川さんと10月に拘束されたフリージャーナリストの後藤健二さん(47)に向けて黒覆面の戦闘員がナイフを振りかざし、日本政府に身代金2億㌦を要求し「72時間以内に払わなければ殺害する」と警告▼中東歴訪中の安倍首相がイスラム国対策として拠出を表明した2億㌦を「私たちの女性や子どもを殺すために1億㌦」「イスラム聖戦士と戦う背教者の訓練に1億㌦」と反発している▼10月下旬、イスラム国から後藤さんの家族に約10億円の身代金を要求するメールも届いている。外国人を拉致して空爆停止や身代金を要求。この1年で5人の欧米人を殺害、20億円の身代金を入手している▼2人はオレンジ色の服を着せられてひざまつき、黒覆面の男がわめきたてるおぞましい光景。拠出は人道支援だと言っても、理性の言葉など全く通じない過激派集団。72時間。砂漠の砂時計は非情に落ちていく。今はひたすら無事救出を祈るばかり。(M)


1月21日(水)

「なぜ銃を渡すことは簡単なのに、本を与えることは難しいのでしょう」—ノーベル平和賞のマララさんの嘆きは深まるばかり。ナイジェリアで過激派が少女たちを「人間爆弾」に仕立てている▼10日、ナイジェリア北東部の市場で10歳前後の少女に装着された爆弾が爆発し住民ら19人が死亡。翌日も爆発が2回あり3人が犠牲に。自爆した最初の少女を見たもう1人の少女が逃げ出した瞬間に遠隔操作で爆発したという▼人間爆弾に少女を使うのは、イスラム教徒の女性は警戒されにくく、全身をゆったり覆う服装が爆弾を隠しやすいからか。イスラム過激派「ボコ・ハラム」の関与が疑われている。昨年、多くの女子生徒を誘拐した組織▼少女たちは「天国に行きたければ自爆テロをしなくてはならない。逃げたら殺す」と脅され、命令に逆らったものは生き埋めにされるという。安全な場所から少女の起爆装置を作動させるなんて…▼いま、18歳未満の子ども兵士は19カ国で25万人に上るという。紛争で駆り出されて多くが死亡、逃げ出せたとしてもトラウマ(心の傷)が消えず、苦しみ続ける。「銃を渡さず、本を与えて」と叫ぶマララさんの受賞演説をあざ笑うかのような蛮行に怒り心頭。(M)


1月20日(火)

そこまで行こう、成し遂げよう、として設けた目当て…これを一言で表した言葉が「目標」。その設定が大事であり、難しいといわれるのは達成を前提とする思いが同居するから▼言葉を代えると、最初から到達が困難と思われる「目標」なら意味がない、とも言える。政治の分野では特に慎重であるべきだが、そうでもないようで。政府が掲げる女性の活躍促進の「目標」に、その一例を見ることができる▼官公庁、民間を問わず指導的立場(管理職)の女性比率は、欧米諸国に比べ極端に低い。政府は大企業に行動計画の公表を求めることなどを検討しているが、皮肉にも官公庁はその民間よりも遅れている▼先日、内閣府が公表した都道府県職員の女性管理職比率は、全国平均で7・2%(北海道は3・5%)。10%を超えているのは東京と鳥取だけで、国家公務員(本省課室長相当職以上)はわずか3・3%という▼これを改善するのは容易でなく時間もかかる。そう考えると、政府が掲げる「目標」…「2020年までに(女性比率を)3割以上にする」はどうなのか。5年余でそこまで…疑問視されても仕方がない。大きな社会的課題だけに「目標」が重くのしかかる。(A)


1月19日(月)

1994年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から20年を迎えた。死者数6434人は、東日本大震災の1万5889人に比較すると少なく見えるが、神戸を中心とした非常に狭い範囲に甚大な被害が及んだことには驚かされる▼巨大津波で被害が拡大した東日本大震災に対し、阪神・淡路大震災では、大都市での直下型地震により多くの建造物が倒壊。高速道路が無惨に崩れ落ちている映像は衝撃的だった▼さらに震災直後から発生した火災で被害は拡大。消火の手が足りず、炎に包まれる家屋をぼうぜんと見守る市民の姿は痛々しかった▼壊滅的な打撃を受けた神戸の街だったが、一歩ずつ着実に復興の道を歩んできた。一時は10万人近く減少した人口もほぼ震災前の水準に戻り、大阪、京都と並ぶ関西の三大都市としての機能と風格を取り戻したように見える▼しかし、現在でも震災時に受けた精神的苦痛に悩まされる人が少なくないなど、目に見えない部分での傷は癒えていない。まだ4年しか経っていない東日本大震災ではなおさらだ。同じ日本人でありながら運良く災害を免れた私たちには、被災者が本当に笑顔を取り戻すことをサポートし続ける責任がある(U)


1月18日(日)

年齢だけをもって人を判断したり、決めつけたりはできない。とはいえ、行動力学から言って、おおよそ、というくくりの中で年齢が語りかけることは多々ある。車の運転もその一例▼道路環境の整備が進んだことなどもあって、死亡交通事故は減っているが、一方で浮かび上がっている課題が高齢者の絡む事故の増加。高齢者といえども多くが免許証を所持し、ハンドルを握っている時代である▼特に懸念されるのが反応、判断能力が劣る認知症。現状でも予備軍を含めると500万人、10年後には730万人になるとも推定されている。その対策として免許証の更新時に認知機能検査が行われているが、十分とは言い難い▼道交法は認知症の人に免許を認めていない。だが、難しいのはその判定で、多くは本人に自覚がない。だから免許証の返納などしないばかりか、家族の説得もなかなか難しい。だとすると法的に踏み込まざるを得ない▼警察庁が法改正へと動いた。75歳以上の人には更新時のほか信号無視など一定の違反をした際にも認知機能検査を実施することが柱。「高齢になって事故を起こし、苦しんでもらいたくない」。この対策強化にはそんな思いも込められている。(A)


1月17日(土)

病院の待合室は児童や高齢者でいっぱい。街を歩くとマスクをつけた人でいっぱい。インフルエンザの全国流行が昨シーズンより3週間も早く始まり、猛威を振るっている。警戒が必要▼激しい咳が出るインフルエンザらしき病気の記録は平安時代からあったと聞く。そういえば子どものころ、水洟(みずばな)を長く垂らして遊んでいたのがインフルエンザだったのか。母親が子の水洟を吸い込む光景は見られなくなった▼今の風邪は母親が吸い込むだけでは治らない。入院患者や職員ら93人がインフルエンザに集団感染し、81歳の女性患者が死亡した。最初に感染した患者が院内を歩き回ったため広まった(広島県)▼感染は予想外に早く、2月半ばまで続く。北海道の発症は今月初めに定点把握基準をはるかに超えており、17保健所管内に警報レベル、10保健所管内に注意報レベルと、感染が拡大している。熱を出して苦しみ、咳き込む子どもの姿は痛々しい▼予防接種の備えをかいくぐり流行の波に乗るやっかいなウイルス。特に発症しているのに無理して出社する大人は感心しない。電車や会社で接触した誰かに移している。手洗いとうがい励行、栄養と睡眠をよくとってブロックし、受験生も大学入試へ頑張ろう。(M)は見えなくなる。国でも家計でも、使ったお金の効果は、きちんとチェックていかなくてはならない。(I)


1月16日(金)

収入(税収)は24年ぶりの水準の545万円に上がったけれど、医療費と親の世話(社会保障費)に315万円、仕送り(地方交付税)に155万円、借金返済(国債費)に234万円など、支出がかさみ、さらに借金(国債発行)を368万円しなければやりくりできない▼きのう閣議決定された2015年度の国の予算を1000万分の1にして、家計に例えれば、このようになる。首相は予算編成に当たり、経済再生と財政健全化の両立を強調したが、借金の残高は年収の15年分にも及ぶ▼昨年末の衆院選で与党が訴えていたように、地方創生が予算の目玉になった。雇用確保など補助金や交付金による192事業で計7225億円を計上。自治体の事業に備える「まち・ひと・しごと創生事業費」に1兆円の枠を設けた▼整備新幹線の開業前倒しも地方への配慮だろう。自民党は昨年末から知事選で3連敗しており、春の統一地方選をにらんだ予算との見方もある。ただ、単なるばらまきで終わって、実効性がなければ意味がない▼その年の収入が増えたからといって、その分だけ使ってしまえば、借金返済の道筋は見えなくなる。国でも家計でも、使ったお金の効果は、きちんとチェックていかなくてはならない。(I)


1月15日(木)

風水研究家が、今年のラッキーカラーを「黄」「金」「緑」、幸運を呼ぶ食べ物はイモ類と牛肉と紹介した。これらを函館に結び付けて、観光客を呼び込む手はないものか▼市内の消火栓は黄色であることが有名。カトリック元町教会、ハリストス正教会、市地域交流まちづくりセンターの建物に緑色がある。西部地区でこれだけそろう▼金色は五稜郭にある武田斐三郎の顕彰碑。博学で知られる斐三郎の頭をなでてから自分の頭をなでると頭が良くなるという言い伝えがあり、多くの人がなでている顔の部分だけが金色に光っている。修学旅行をさらに呼び込めれば▼イモ類は裏鬼門のパワーが宿り、食べると根性がつき、努力が苦にならなくなるという。困難を乗り越えたい人や、受験合格を目指す人は、函館名物・イカの塩辛とジャガイモの組み合わせが最高だ▼牛肉は表鬼門のパワーが宿る開運食で、ここ一番の勝負に勝てるパワーをもたらすという。はこだて和牛(木古内)、大沼牛の名産があり、足を伸ばしてもらえる▼道内は阿寒湖、知床、洞爺湖、ニセコなどが豊かな大自然に囲まれた「パワースポット」として知られる。函館にも元気の出る場所や食があることを訴えたい。(R)


1月14日(水)

緊急通報用電話といえば、事件事故の110番(警察)、火災救急の119番(消防)が思い浮かぶ。いずれも設けられて日時が経っているから社会に浸透し、子どもから大人まで知らない人はいない▼だが、もう一つ忘れてならない番号がある。函館・道南など海沿いの地域に住む人にとって特に求められるそれは…「海のもしもの時は」が教える海難関係の118番(海上保安庁・部)▼近年、沿岸では釣りなどレジャーの船が増加、事故などの懸念が広がっている。こうした現状を踏まえ、いち早く緊急時に対応できるよう2000年5月から運用されて15年になるが、未だ悩みが多いまま▼間違い、いたずら、情報の照会などなど。警察や消防にもいえることで、110番も年間37万件ほどのうち3割強あるそうだが、118番はその域ではない。通報のほとんどが緊急を要しない内容だというのだから▼昨年あった約944万件の通報のうち、船舶海難関係と人身事故が各0・2%、海難関係以外の緊急事案が0・4%。残る99・2%は遺憾ながら。とはいえ必要な電話…だから覚えておこう、そして正しく使おう…今年も「118番の日」(18日)がやってくる。(A)


1月13日(火)

高齢者クラブの新年を祝う会でオードブルを取った。食品への異物混入などが相次いでいる折り、会長があいさつで「鉄片などが入っていないか」と呼びかけ、40人が一斉に点検してから箸をつけた▼カップ焼きそばへのゴキブリ混入が発覚してから1カ月。食べ物に昆虫が入っていたなんて、子も親もびっくり。虫ばかりではない。“国民食”のハンバーガやフライドポテトにビニール片、プラスチック片、毛髪、義歯…▼先日は牛丼チェーン店のタコライスにミミズの死骸。材料のレタスに付着し、洗浄や検査でも取り除けなかったという。チキンナゲットには約5㍉の従業員が使うゴム手袋の一部が入っていた▼また、青森県ではブリの冷凍食品が高濃度のヒスタミンによる食中毒を引き起こしたとして、ブリ煮付など、1万7千個を回収。ヒスタミンが基準以上含まれると、じんましんや頭痛などの症状が出るという▼混入とは「混じり合って、けじめがつかないこと」。かつての中国製冷凍ギョーザの中毒事件では、同じ工場で製造されたギョーザから殺虫剤が検出された。一連の異物混入では、どうしてゴキブリや義歯が混じったのか、原因究明を徹底しけじめをつけてほしい。(M)


1月12日(月)

11日に札幌で行われたノルディックスキーの女子ジャンプW杯個人第3戦で、高梨沙羅選手が今季2勝目を挙げた。これで通算26勝。昨シーズンだけで15勝を挙げている女王が、今シーズンもどれだけ勝利を重ねてくれるのか期待は高まる▼国内外で無敵ともいえる強さを誇る高梨選手だが、昨年2月のソチ五輪ではまさかの4位に。金メダルを確実視されていただけに、当時17歳の少女にとって精神的ショックは図りしれないものだったろう▼それでも五輪後には再び調子を取り戻し、残る5試合すべてを優勝するというけなげな戦いぶりには、感動すら覚えた▼今や高梨選手が優勝することは、ごく当たり前のよう見えるかもしれない。しかしそれは想像を絶する練習の積み重ねと、日々の体調管理が徹底されているからに他ならない。もちろん好不調の波によっては、ソチ五輪のような結果になることもあるのが厳しい勝負の世界だ▼彼女が優勝記録を伸ばしてくれるのはうれしいし、五輪でのリベンジにも期待したい。しかしそれ以上に、レジェンド葛西紀明選手のように、長期にわたり世界のトップクラスで戦い続け、その活躍ぶりでファンを楽しませてほしい(U)


1月11日(日)

年明けから道南の各町では成人式が行われており、華やかな振り袖や真新しいスーツに身を包んだ新成人の姿が本紙の紙面を飾っている。渡島・桧山の成人式のピークはきょうの6市町で、函館市はあす行われる▼成人式は奈良時代に始まった元服が由来の風習で、現在のような形態は1946年に埼玉県の現・蕨市で行われた「成人祭」がルーツだという。日本のように成人年齢に達した人を一斉に祝うような催しは、よその国にはない▼一方で毎年のように「荒れる成人式」が話題になる。昨年、自分が住んでいた帯広市では、新成人の男十数人が壇上に上がり、市長の目の前で大声を上げるなどして式典を妨害。後に3人が帯広署に逮捕された▼帯広市はことしの式典で、飲酒者の入場を禁じ、必要に応じてアルコールの呼気検査も行うことにした。運営にあたる職員も昨年の倍以上の56人に増やす▼厳戒態勢にすることで、式典はスムーズになるかもしれないが、参加者も運営側も、気分のいいものではないだろう。新成人の多くは、友人との再会や着飾って出掛けることを楽しみにして、式典に臨むと思う。せめて他人に不快な思いをさせない「大人の自覚」くらいは持ち合わせてほしい。(I)


1月10日(土)

経済の回復は、賃金に反映されるから、生活を潤す道につながる。だから、経済対策こそ最優先、という考え方は少しも間違っていない。そして、国民はそうなってほしいと願っている▼部分的な陰りはあるものの、経済はその基調に。その結果として昨年は賃金改善の動きがあった。ただ、陽が当たったのは自動車などの大企業止まり。地方の企業や零細企業は未だ実感するに至っていない▼確かに、経済対策の象徴的表現のアベノミクスは道半ばだが、生活が楽になったか、と聞かれたら…先日、発表された日銀の生活意識に関する調査の答えはノー。なんと51%が「ゆとりがなくなってきた」と答えている▼そして、景気感覚についても、1年前に比べ「良くなった」から「悪くなった」を引いた景況感はマイナス33%。多くの人が景気は良くなった実感がないということであり、同様な思いは暮らし向き感覚にも▼例えば物価だが、80%というから5人に4人までが「少し」も含め「上がった」と認識している。その行き着く先は生活防衛となって、消費が抑制されかねない。アベノミクスへの期待の一方で広がる生活不安…この調査結果が教える現実に楽観はない。 (A)


1月9日(金)

旅芸人の男女を乗せたオート三輪が荒涼たる北イタリアの果てしない道を進む。聖なる心を持つ女と獣のごとき男の行方に待ち受けているのはいばらの道…(58年前の映画「道」)▼道にもいろいろ。生きることは自分の道探しの旅なのかもしれないが、なぜ漢字の「道」に「首」が付いているのか。調べると「異族の首を携えて除道を行う意で、導く意」と解されている(白川静さんの「字通」)▼中国の古代王朝期、地面には魑魅魍魎(ちみもうりょう)が住み、往来の人に害を及ぼすと信じられていた。そこで地底の悪鬼や邪鬼を封じるために捕虜の首を点々と土に埋めたという。除道は道を修め災厄を祓(はら)う意味▼首が埋められたところが無害となり、安全安心な道は多くの「首」で作られたという故事に驚く。「この道しかない」と舞台に上がった政治家も「いつか来た道」と都合のいい政道を歩めば地底の悪鬼が怒り出す▼先日、道内の「道」は雪が舞い上がり一寸先が見えないホワイトアウトに見舞われた。爆弾低気圧で地底に住む「白魔」が起こされ、天地の識別をまひさせた。新潟県のスノーボードの3人も雪が首の高さまで積もり、反対側の斜面に迷い道。悲劇を招かぬ「除道」はないものか。(M)


1月8日(木)

勝負の世界では現実でもフィクションでも、ライバルの存在が物語を盛り上げる。野球の「伝統の一戦」やサッカーの「ダービー」などスポーツをはじめ、古今東西、ライバル同士の名勝負は数多く思い浮かぶ▼昨年末の衆院選が、盛り上がりを欠き低投票率に終わったのは、自民党に対するライバルが不在だったからだろう。自民党の政策に全面的に賛成できなくても、他党が有力な選択肢を示せなかったために、一強多弱の情勢は変わらなかった▼自民党のライバルとなるべき、民主党の代表選がきのう告示された。長妻昭元厚生労働相、細野豪志元幹事長、岡田克也代表代行の3氏が届け出。記者会見ではそれぞれが党の再建策を訴えた▼政権の混迷を目の当たりにした有権者の多くは、昨年末の衆院選で民主党に投票しなかった。次の代表は党の抜本的な再建をはじめ、アベノミクスに変わる経済政策、公約に掲げた2030年代の原発ゼロなど、どう取り組むのかを明確に示さなければならない▼ライバルには単純な敵対関係というだけでなく、互いを高め合って相手の成長を促すという側面もあるはず。政治の世界でもライバルによる名勝負が展開されることを期待したい。(I)


1月7日(水)

科学技術の進歩は驚くほどに早い。そんなこと無理、できるはずがない、あり得ないと思われていたことが次々と現実になっていく。情報通信の世界は身近で最も分かりやすいが、交通分野も例外でない▼青函トンネルやリニアにしても夢物語の時代が長かったが、今や…。そして自動車はハイブリッドから電気時代へと歩みを加速させている。飛行機にも動きが出てきておかしくはない▼本紙も報じたように電気飛行機の研究開発が進んでいる。欧米が先行しているようだが、我が国でも宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって10年ほど前から手掛けられ、有人飛行試験を始める段階にきたという▼採用された動力源はリチウムイオン電池と電動モーター。2月から航空自衛隊岐阜基地で予定している試験では、上空300㍍を5分間、最高時速150㌔での飛行が想定されている。まぎれもない実用化に向けての第一歩▼電気飛行機は音も静かで、環境に優しいなど利点が多々。国際間で開発競争が激化することが予想され、その結果として意外と早く現実になるのでは、という見方もある。それにしても年明け早々、このような話題に出会えるとは…夢が広がる。(A)


1月6日(火)

「毛は長くして三寸ばかり、色は灰白にして細く柔らかく、年中二度毛を替える由にして、その毛をもって織るものを真の羅紗(らしゃ)という」(箱館夷人談)—函館に入港したアメリカ船に羊が飼われていた▼開港時、羊をラシャとも呼び、緬羊とも呼び、綿羊と書いたといわれる。今年の年賀はがきの切手部分には、羊が編み棒を持って、首にマフラーを巻いている。かわいらしく、心温まる今年の主役▼年末年始で守れないのが予定通りの賀状書き。魔よけの黒豆、子孫繁栄のカズノコ、多幸の意味を持つタコ、めでたい紅白のカマボコにナマス…。残り物のおせちをつつき、遅まきながら賀状を書いている▼自民1強体制の中で、国論が分かれる集団的自衛権に関する安全保障や拉致被害者の調査、原発再稼動など、暴風雪の予感。函館は大間原発の建設差し止め訴訟が正念場を迎える。『建設中止』が正夢になるよう市民挙げて勝ち取ろう▼「混雑する駅構内。保護者らしき女性が大泣きする小さな子どもを怒鳴りつけ、蹴り倒した。ゴツンという鈍い音が響いた」—フェイスブックに投稿された児童虐待。今年は羊毛の編み物のように住民のネットワークを編んで、虐待も根絶したい。(M)


1月5日(月)

子どもたちにとって正月の一番の楽しみがお年玉であることは、今も昔も変わりはない。景気に左右されその総額に多少の上下はあるようだが、年に一度まとまった金額を手にすることができる、子どもにとってのボーナス支給日であることは間違いない▼しかし、せっかく懐がうるおっても、ほとんどの商店は正月休み中。三が日の間は「あれが欲しい、これを買いたい」と頭の中でお目当てのおもちゃを思い描いては、じっと我慢しなければならないのがつらかった記憶がよみがえる▼一方、今年の元日の新聞の折り込みちらしを見ると、多くのデパートやスーパー、大型店などが1日に初売りを行い、それ以外の店でも2日にはオープンしている。今や年末年始も通常通りに店が開いていることはごくごく当たり前なのだ▼筆者も、正月のテレビ番組を見飽きて、1日の午後から買い物に出かけたが、どの店の駐車場も満杯状態。その中にはお年玉で買い求めたおもちゃを大事に抱える子どもの姿も▼40年前の幼年期の筆者には実にうらやましい風景なのだが、あの当時の正月独自ののんびりゆったりした雰囲気は失われてしまったような気がして、複雑な思いだった。(U)


1月4日(日)

飲酒運転の防止に学生が立ち上がった。北大の学生団体(アルコール問題対策研究会)が、飲酒運転の再犯者に依存症の診断を義務づける、罰則付きの条例制定に向けて署名を集めている▼どれほど啓蒙されているか、でも飲酒運転は後を絶たない。昨年7月の小樽市で発生した海水帰りの女性4人死傷の事故は記憶に新しい。昨年は12月25日現在、道内で起きた飲酒運転による死亡事故は17件▼これは全国最多だそう。速度超過や追越違反による死亡事故も多いが、最も悪質なのは酒を飲んだ上でハンドルを握ること。罰則が強化され、関係機関の啓蒙活動によって減ってきてはいるが、それでもまだまだ▼「飲酒運転の背景にはアルコール依存症の問題があるのでは」。学生が飲酒後に死亡した事故をきっかけに、飲酒問題を考える動きが生まれたという。それに追い打ちを欠けたのが小樽市の事故…▼年末に本紙も報じていたが、具体的な行動として1万人を目標に条例の制定を求める街頭署名活動を始めた。少ししか飲んでいない、自分は大丈夫、は通用しないと分かっているはずなのに残念ながら…今年もこの社会的課題を引き継がなければならない。(A)


1月3日(土)

あと2カ月余りで、あの悪夢の東日本大震災から4年を迎える。復旧復興はなお道半ば。被災地の爪痕、被災者の心の傷跡は癒えない中で…時間の経過は風化の懸念を増幅させ始めている▼「災害から教えられた教訓を後世に伝え、防災対策への関心を高めなければ」。そのためにも、と自民党の有志議員が3月11日を「東日本大震災の日」と定める法案の、通常国会での成立を提起している▼東日本大震災の発生を受けて、その3カ月後には「津波防災の日」が制定されている。ただし、指定された日は3月11日ではなく、1954年に太平洋沿岸で大規模な津波被害があった日の11月5日▼「3月11日を忘れない」。そのためにも、新たな制定に異論はない。阪神淡路大震災が起きた日が「防災とボランティアの日」(1月17日)と位置づけられたように、発生日に名目がついた方がいいから▼「手伝うことがないか」。全国から多くの人が駆けつけ、神戸などで見た光景は、東日本大震災の被災地でも広がった。その阪神淡路大震災から20年、今年も間もなくその日がやってくる。そして、東日本大震災はなお課題を抱えたまま、3月で4年が過ぎようとしている。(A)


1月1日(木)

未(ひつじ)年の2015年が幕を開けた。十二支は植物の成長過程を12段階で表すともいわれ、「未」はまだ実が成長しきっていない「未熟」の意味で、滋味を持ち始めた状態とされる。北海道新幹線開業という「実」が熟すのを1年3か月後に控えた函館に当てはまる年とはいえまいか▼昨年は新幹線が函館港に上陸し、試験走行で年末には最高速度の時速260㌔を出した。開業へのカウントダウンイベントも始まった。ことしも試験走行は継続し、新函館北斗や木古内の駅舎が完成、各種イベントも目白押しだ▼開業に浮かれてばかりではいられない。新幹線で訪れる人たちを受け入れる態勢は整っているだろうか。新函館北斗駅周辺や函館駅前の開発も先が見えないままだ▼さらに、政府・与党は札幌延伸を5年間前倒しする方針を固めた。函館が終着駅となる期間が20年から15年に短縮されるならば、その間に函館の魅力を高め、札幌までつながることもさらにチャンスにできるように、準備を進めることが必要だ▼ちなみに来年の申(さる)年は「身」が元字で、植物では「実」がなる年という。開業という果実が、大きく甘く実るかどうかは、将来を見据えた未年の取り組みが重要になってくる。(I)