平成27年10月


10月31日(土)

消費税は、再来年の4月から10%に引き上げられる。その際、軽減税率が適用されるのは飲食料品止まりなのか、新聞や書籍なども加えるのか。さらに飲食料品もすべてなのかどうか気になる▼税金の最大の関心事は、上がるか下がるか。消費税も上がる話が圧倒的に多いが、その陰で忘れてならないのが事業者の滞納。というのも、見過ごせないほどに多額。税別でみても滞納額が群を抜いて多い▼昨年度新規に発生した国税滞納額は5914億円あったそうだが、うち消費税は3294億円というから56%を占める。他の税が減少の動きにあるのに対し、消費税はここ数年3000億円前後を行き来している▼これでは税率を上げるにあたっての説得力にも影響しかねない。消費税は消費者にとっては預けたお金、事業者にとっては預かったお金。「預ける」「納める」。そこに互いの信頼があって初めて成り立つ税である▼その片方が崩れては、税の精神が根底から問われることになる。一般論だが、税率が高くなればなるほど事業者が「納める」金額も増える。くれぐれも増税に伴って滞納額も増えた、とならないように。再増税の前に滞納を減らす対策の強化が求められる。(A)


10月30日(金)

この秋はラグビー、野球、サッカーと続けて高校の全道大会に向かった。道内や全国の強豪が集まる大会で感心するのは、技術の高さと礼儀の良さだ。もちろん函館地区大会でも礼儀は良い。やはり、あいさつをしっかりするチームは強い▼記者が集まる場所を通る時、背番号のない選手まで立ち止まり、お辞儀をして「こんにちは」と言う。記者も言われた数だけ同じあいさつを返すが面倒ではない。ただ、「ちわっ」では返事が「ちわ」となってしまう▼やはり心に響くあいさつは難しい。コンビニに入ったら「いらっしゃいませ、ただ今のお薦め商品は…」と言われるのは当り前となった。何人も続けて客が入るとお薦め商品だけが聞こえてしまう。これではお迎えという印象にはならない▼旭川で老舗のラーメン店に行った時、女将の「いらっしゃい」が心に響いた。親身で待っていたような語り掛けだった。一杯を作った店主の「おまちどうさま」も温かい。このあいさつが秘伝の味を守っているのだろう▼若女将の「またどうぞ」の見送りにも和んだ。これぞ接客マニュアルではないホスピタリティ「おもてなし」と感じた。スープの油分が少しきつかったが「また食べに来よう」と決めた(R)。


10月29日(木)

わずか一本だが、森町固有種の桜「モリコマチ(森小町)」が、ゆかりの青葉ケ丘公園によみがえった。昨年6月に残っていた木が枯死し、悲嘆な思いが広がっていた。植栽した25日は町にとってうれしい一日となった▼その模様は本紙でも報じたので詳しい話は避けるとして、故田中淳さんが三十数年前、ホリイヒサクラとソメイヨシノの交配で誕生させた種。花が咲いた様子を見たことのない一人だが、花びらの色の濃さが微妙に異なるのが特徴だそう▼絶滅の危機から救ったのは、モリコマチを愛する町民の機転。茨城県の結城農場・桜見本園に託していた枝が、2本の苗木に育っていた。それを知った町の譲渡要請に同農場が快諾、1本が里帰りの運びに▼植栽式に集まった関係者の喜びはひとしお。来春に花を咲かせるかどうか定かでないとはいえ、将来的な地域財産の誕生に変わりはない。数がまとまった桜の光景も堪能させてくれるが、単独でため息を誘う木もある▼モリコマチなど希少品種も然り。一本が圧倒的な存在感を示す。道内で桜の名所が多い道南に、新たな話題が一つ。元気に育ち、花をいっぱい咲かせてほしい。咲き誇る様子を想像するだけで楽しみが広がる。(A)


10月28日(水)

近親者の様子がある日突然おかしくなったら…。直近の出来事を忘れたり、夜中に街をうろついたり。認知症の患者が出ると、周辺にいる人の生活は一変する。「介護疲れ」で不幸な結末を呼んだニュースを耳にするといたたまれなくなる▼人気アニメ「ドラえもん」の声で知られる声優・大山のぶ代さんの夫、砂川啓介さんが、認知症を患った妻の介護生活をつづった「娘になった妻、のぶ代へ~大山のぶ代『認知症』介護日記」(双葉社)を出版した。出版会見で「とても楽になった。覚悟ができた」と話した▼大山さんの闘病生活は壮絶そのもの。本では幻想や排せつ、徘徊(はいかい)の様子が生々しく描かれているという。果てしなく続く介護に、砂川さんは大山さんを道連れにして死ぬことも考えたというが、会見では吹っ切れた様子も▼現在82歳の大山さん。26年間続けたドラえもんの声を降りて早10年になる。時折テレビで元気な姿を見せていたが、病は知らず知らずのうちに進行していたようだ▼認知症を予防するには、とにもかくにも脳への刺激を与えることが肝心という。パズルや計算、読み書き、それに食べ物をよくかむこと。日常生活の中での意識付けが大切になる。(C)


10月27日(火)

高速道で逆走車による悲惨な交通事故が後を絶たない。函館でも函館新外環状道路が開通し、入口には逆走防止のため、進入禁止などの看板を設置し、注意を呼び掛けている。ただ、市内では一般道で逆走を見掛けることが多い▼ベイエリアの七財橋、一方通行や国道5号の副道でヒヤリとし、「ドライブレコーダーを買って良かった」と思ったことは幾度もある。駐車場で出口に向かう車も見られる。「少しくらいの距離なら」と考えるのは間違い▼片道1車線の道路を直進中に多く見るのは、逆走ではないが、センターラインを越えて走る車だ。交差点で右折を急ごうとするケースは、こちらに「どけ」と言わんばかりで、スピードを出して迫って来る「悪質」な運転を見た人も多いのでは▼はみ出しの場合、駐車中の車や、走行中の自転車などを避けようとする時はあるが、無理に追い越しをする必要はない。あらかじめ減速し、反対側車線に迷惑が掛からない走行が必要なはず▼もう一つ。はみ出しを余儀なくされる要因に、駐車して路上で立ち話する運転手が多いこと。観光地で行き先を確認したり、施設前で出て来る人を待つ人ら。これから雪の季節。特に注意が必要だ。(R)


10月26日(月)

ご都合主義とやゆされても仕方ない。国会の開催をめぐる政府の姿勢。先の通常国会は何としても安保関連法案を成立させるため95日間という異例の長さの会期延長をしたのに、臨時国会を開く考えはないというのだから▼内閣が改造され、TPP(環太平洋経済連携協定)が基本合意したことに加え、沖縄(辺野古)の問題も混迷を深くしている。特にTPPは北海道にとって無関心ではいられない。ベールに包まれていた内容が明らかにされ、農業現場には将来への不安が渦巻いている▼関係する農水相と経産省が交代したという事情もある。首相をはじめ新大臣の所信を聞きたいし、議論があって然るべき。業を煮やした民主など野党5党は行動を起こした▼憲法第53条の規定に基づく臨時国会召集の申し入れである。政府に招集義務は生じるが、開催期日の規定がない。それを逆手にとってか、首相の外交日程が過密なことを理由に応じようとはしていない▼短期間でも開けないとは考えにくい。このままでは、安保関連法案では日程のやり繰りでき、TPP関連などではできないのか、との批判を甘んじて受けるしかなくなる。召集へ、政府の速やかな対応が待たれる。(A)


10月25日(日)

「うそも方便」と言われるように、いつの時代も人間はうそをつくことがあり、うそつきがいるのは今に始まった話ではない▼それでも昨今、「うそのつきかた」に目立たないけれども変化が生じているという。「うそをつく人たちが『すぐばれる嘘(●うそ)』をつくようになったこと」と思想家の内田樹さんは「困難な成熟」(夜間飛行)で指摘する▼新しい傾向が出てきたのは、「ものごとの変化のスピードが速くなり過ぎて、『先のこと』を考える習慣がなくなったせい」とする。ゴーストライターに作曲させていた作曲家の話やSTAP細胞の件など、うそが話題になった昨年の事例を踏まえての話▼横浜市都筑区の大型分譲マンションに傾きが見つかった問題は4棟の建て替え、くい打ち工事を担当した旭化成建材が関わる全国3040件の調査と、大きな広がりを見せている。道が対策チームを設置、函館市も過去10年間に発注した工事を調べるなど対応に追われている▼建物を支えるくい70本の施工データの改ざんが明らかになった。故意なのかどうかまだはっきりしない部分も多いが、コストや納期を意識するあまり、「先のこと」を考えていなかったせいだと勘ぐってしまう。(Z)


10月24日(土)

第3次内閣発足直後に安倍晋三首相は「1億総活躍社会」や「新三本の矢」といった目標を打ち出したが、スローガンばかり先行し、具体策はさっぱり見えない。追及を怖れているのか、秋の臨時国会も見送るようだ▼1億総活躍社会とは、どんな社会を目指すのか。広辞苑によると「活躍」は「めざましく活動する」こと。勇ましい語感から戦時中の「総動員」を連想させる。赤ちゃんも1億に数えてもらえるのか▼安倍首相は「家庭で、職場で、地域で、誰もがもっと活躍できる社会をつくる」と説明、月内に「国民会議」を創設し、年明け以降に具体的な政策パッケージをまとめるが、赤ちゃんはどう活躍したらよいのか▼「1億人が積極的な役割を果たす社会の担当大臣」まで任命。首相は地球の裏側まで活躍、多忙な外交を繰り広げているが、今回の国連総会の発言順は53番目。聴衆は少なく、一国の首相の活躍としては物足りない▼この1億総活動の実現に向けた新三本の矢(強い経済、子育て支援、社会保障)は既存の政策と何ら変わりない。「旧三本の矢」の検証もせず「GDP600兆円」と景気のよい目標も飛び出し、なんかタヌキに化かされているような気がする。(M)


10月23日(金)

「日本三景」はどこかと問われれば、一般的には天橋立(京都)、松島(宮城)、宮島(広島)の3カ所。中には独自の見解も含まれている場合があるが、「三大くくり」は象徴的な物事や場所を端的に伝える▼いわゆる「日本三大夜景」は函館、神戸、長崎とよく称されるが、一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューロー(東京)がこのほど発表した日本新三大夜景都市は長崎、札幌、神戸で、函館は4位だった▼全国約4500人の夜景鑑定士が1人5カ所ずつ選んだランキングの結果。函館は「函館山以外の視点場が少ない」というのが上位3位から外れた大きな理由。「函館山には何度も行った。新たな夜景を作って」との意見もあった▼誰が決めたかは知らないが、世界三大、日本三大、100万ドル―など数々の形容詞を持つ函館にとっては意外な結果と思う向きもあるかもしれないが、鑑定士の指摘もうなずける部分がある▼亀田中野町や石川町からの裏夜景や七飯町の城岱牧場、北斗市のきじひき高原など観賞スポットはあれど、世間一般にはまだ認知されていないと捉えるべきだろう。北海道新幹線開業を前に「磨けば光る」素材を掘り起こす余地はまだまだある。(C)


10月22日(木)

災害発生時にどう対応するか。持ち出すものを用意しておくことが備えと思っては不十分…ということが先日、居住する地域の防災講演会で教えられた。家が強固かどうか、鍵はそこにある、とも▼とりあえずの行き先は避難所と認識されている。それは間違っていない。だが、多くの人であふれると、トイレをはじめとして起きる問題は多々。それは阪神淡路大震災や東日本大震災の際に示されている▼その講師が語るには、水害は予測できるから早めにホテルなど高層の建物へ避難するがいい。予知が難しい地震は事前対策を考えるべき…その究極が家対策だと。家具の固定などもそうだが、根本的には家の耐震化という▼崩壊しては避難所に行くしかない。だが、耐震化されていて何とか過ごせる部屋が確保できていれば、簡易トイレ、非電気暖房、水などを用意しておくことで、対応が落ち着くまでは何とかなる。確かにそうだ▼家を直すのは大変だが、不安は和らぐ。それほど大事なのに、横浜市で大型分譲マンションの基礎工事施工不良が発覚した。ずさんというか、手抜きで購入者をだました詐欺事件と言っても過言でない。今、大地震が起きたら…考えただけでも恐ろしくなる。(A)


10月21日(水)

赤ちゃんからお年寄りまで住民に12桁の番号が割り当てられるマイナンバー制度。人間の悪知恵にはあきれるばかり。カードが送られてこない前に、ナンバーの流出を理由にした不審電話、詐欺事件が相次いでいる▼厚生労働省の情報技術のエキスパートがマイナンバーの関連事業をめぐって業者に便宜を図り現金を受け取っていた事件。制度が専門的な知識を持つ一部の役人に委ねられ、チェック機能が皆無だった▼70代の女性は 相談窓口を名乗る男からマイナンバーを伝えられ、その後「マイナンバーを貸してほしい」「マイナンバーを教えたことは犯罪になる」と数百万円をだまし取られた▼マイナンバー制度は税金の納付や年金の受け取りがスムーズになり、医療や介護などの公正で効率的な運用にも資するもので、導入の特需は2~3兆円ともみられる。赤ちゃんにまで背番号が付く制度の趣旨は、まだ理解されていない▼「マイナンバー ナンマイダーと聴き違い」。シルバー川柳の今年の入選作の一句。制度への戸惑いがにじみ出ており、不正が入り込んだとすればタメ息も出る。新たな制度は新たな悪徳を生む。老後の虎の子が奪われては、それこそ「ナンマイダー」だ。(M)


10月20日(火)

仕事が忙しく最近はなかなか見る機会が少ないが、47都道府県の県民性を調査するテレビ番組が好きだ。その土地ならではの方言や風習が、住まう人々の気風に基づいていることがうかがえるから▼情報サイト「アットホームボックス」が全国各地の1410人に行った「謙虚・負けず嫌いなイメージの都道府県」に関するアンケート調査結果によると、謙虚な人が多そうな都道府県の1位が北海道(11・6%)だったとのこと▼「広い土地で心も広そう」「おおらかそうな人が多そう」などの回答が多かったとか。2位秋田、3位岩手、4位青森と北日本に集中した▼反対に「負けず嫌いが多そう」の1位が大阪で、42・8%とダントツの結果。調査結果では関西弁のマシンガントークなどから連想する人が多いようだとまとめている。東京や京都、愛知など大都市圏のランクインも目立つ▼あくまでイメージの結果でしかないが「謙虚な人々」と思われていることは道民として好意的に捉えていいのかもしれない。しかし、ただ単に「おおらか、のんびり」だけでは思い通りに物事は進まない。TPPや大間原発問題などに対する〝北海道の主張〟は、もっと前面に押し出してもいいはずだ。(C)


10月19日(月)

一冊の絵本が手元に届いた。題名は「おばあさんの しんぶん」(文・絵 松本春野、講談社)。7月の発行で、第4刷とあるから、すでに手にされた方もいると思う▼原作者は、元島根県出雲市長で衆院議員なども歴任した岩國哲人(てつんど)さん。昨年の「新聞配達に関するエッセーコンテスト」大学生・社会人部門の最優秀賞作品が絵本となった▼岩國さんは小学生の時、新聞配達をしていた。届けていた老夫婦のお宅で、おじいさんに次いでおばあさんも亡くなった。葬儀の日、おばあさんが字を読めなかったこと、それでも岩國少年に会うのが楽しみで新聞を取り続けていたことを、参列者から聞かされたエピソードをつづった▼日本新聞協会によると、全国で販売所スタッフは約35万人。全発行部数の95・2%が戸別配達されている。昨年、ある新聞社の販売所を訪れる機会があった。配達スタッフは若い人からお年寄りまでさまざま。手際よくチラシを折り込み「行って来ます」と元気よく出て行った。新聞というバトンを読者に渡す自負みたいなものを感じた▼岩國少年の時代と取り巻く環境は、大きく変わった。それでも新聞が情報とともに、配達員のぬくもりも伝わりますように。(Z)


10月18日(日)

一冊の絵本が手元に届いた。題名は「おばあさんの しんぶん」(文・絵 松本春野、講談社)。7月の発行で、第4刷とあるから、すでに手にされた方もいると思う▼原作者は、元島根県出雲市長で衆院議員なども歴任した岩國哲人(てつんど)さん。昨年の「新聞配達に関するエッセーコンテスト」大学生・社会人部門の最優秀賞作品が絵本となった▼岩國さんは小学生の時、新聞配達をしていた。届けていた老夫婦のお宅で、おじいさんに次いでおばあさんも亡くなった。葬儀の日、おばあさんが字を読めなかったこと、それでも岩國少年に会うのが楽しみで新聞を取り続けていたことを、参列者から聞かされたエピソードをつづった▼日本新聞協会によると、全国で販売所スタッフは約35万人。全発行部数の95・2%が戸別配達されている。昨年、ある新聞社の販売所を訪れる機会があった。配達スタッフは若い人からお年寄りまでさまざま。手際よくチラシを折り込み「行って来ます」と元気よく出て行った。新聞というバトンを読者に渡す自負みたいなものを感じた▼岩國少年の時代と取り巻く環境は、大きく変わった。それでも新聞が情報とともに、配達員のぬくもりも伝わりますように。(Z)


10月17日(土)

今年の新聞週間の代表標語は「ご近所も 世界も見える 紙面から」。作った主婦は「ネットなどに出ない地域の小さな話題から世界のニュースまで 読めるのが新聞の良さということを表現したかった」と話す▼この1年で「二つの動き」が新聞を取り巻く環境を大きく変えた。一つは「日本の存立が 脅かされ、国民の権利が根底から覆される危険がある」と政府が判断したら、自衛隊を世界の紛争地域(戦地)に派遣できること▼もう一つは安保政策の報道に「新聞を懲らしめるには広告収入がなくなることが一番」と、ある作家は沖縄の米軍基地問題にからみ「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と発言したこと▼マスコミ批判は言論弾圧だ。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、来夏の参院選から高校生ら約240万人が新有権者となる。若い世代が多様な情報に触れ、価値判断する材料は新聞にある▼新聞は坑道の危険なガスを感知するカナリアのように、国民の幸福を抹消する危険性を察知し、進む道を的確に報道する義務がある。18日は「新聞少年の日」。かつては貧しい家 庭の子どもたちが眠い目をこすりながら、温かいニュースを配達していた。(M)


10月16日(金)

人によってスタンスの違いは重々承知しているが、筆者自身は乗り物にはあまりお金をかけたくはないと考える節がある。JR九州の「ななつ星」や、函館港にも頻繁に訪れる豪華客船での旅には確かに憧れる。ただ、移動手段よりかは移動先で過ごす時間を満喫したい▼来年3月26日に開業する北海道新幹線の料金が発表された。正式にはまだ国土交通省への申請段階だが、新函館北斗―東京間で2万2690円(通常期の普通車指定席と運賃の合計)。正直なところ割高感は否めない▼東京までは現行から2490円、新青森との間でも1770円上がる。JR北海道は「青函トンネルの維持費などを考慮した」と説明しているが、青森に行くだけなら片道約4時間のフェリーに客が流れる可能性もある▼ライバルとなる東京―羽田間の航空通常運賃は約3万5000円。しかし、よほどの急用でもなければ早割チケットなどを有効活用できる。ましてやスピード面では断然飛行機が有利▼北海道新幹線が活発に利用されるには、やはり旅行商品の中身が肝心と言えよう。JRは早期申し込みで4割引も検討しているようだが、大胆な発想も取り入れながら利用客確保につなげてほしい。(C)


10月15日(木)

「いったいあれは何だったのか」。消費税率10%時の飲食料品などへの軽減税率を巡る財務省の事後還元案、導入時期を巡る前自民税調会長の後ろ向き発言である。本欄でも異論を唱えてきたが、それが1カ月半ほどで…▼政府は13日、いずれも否定した。その上で還元案を撤回、時期も10%導入時(再来年4月)にする、と。英断でもない。誰もの共通認識だった原点に戻しただけの話だ。「選挙で国民への約束だ」。官房長官は理由をこう語った▼安倍首相も14日、新税調会長に新たな指示をした。今になって…。なぜ財務省案の公表を認めたのか、前税調会長発言を黙認したのか疑問がついて回る。国民の反応を確認しようとしたのなら、こざかしい▼もし受け入れられそうなら、それ(還元案)でやろう。時期も延ばせるならそれに越したことはない。だが、国民が発した答えはノーだった。この判断の裏に、来年の参院選を考慮しなければという事情も見え隠れする▼国の財政赤字は恒久的。少子高齢化の時代に入っている。消費増税が一定の理解を得られているのは財政への危機感から。ただ、それも生活視点という前提があっての話。導入準備に無駄な時間を費やしたというほかない。(A)


10月14日(水)

紅葉前線は山間部から平野部へ、道東北から道央南へ…主峰からは雪の便りが届く季節を迎えている。冬支度を迫るかのように最低気温は下がり、夜明けは遅くなって、日暮れはあっという間に早まっている▼この時期に気をつけなければならないのが交通事故。それは自動車も自転車も一緒で、路面状態が微妙になる朝夕は特に。道警がホームページにアップしている11月—3月のスリップ事故の分析も、そう教えている▼昨年度をみても、この5カ月間に発生した死亡事故の27%、死者の29%が該当するという。11月も大丈夫ではなく、過去5年間でも5件に1件起きており、時間的には朝夕の発生が多い▼さらに特徴的なのは非市街地での発生が78%を占め、しかも直線平坦な道路で56%、正面衝突が73%を数える。速度や路面感覚など、夏場の運転感覚が背景にあるとも推測されるが、この時期から注意が促されるのもそれ故▼道路情報などからも峠の路面注意が聞かれるようになってきた。積雪はまだ先として、濡れて路面が滑る状態になるのは、きょうあすの話。事故を起こして後悔をしないためにも、冬タイヤへの交換は早めに。峠や長距離を走る時は必ず…備えに過ぎたるはない。(A)


10月12日(月)

「物事が急に起こるさま」「一時的であるさま」−。辞書で「にわか」を調べると、このように出てきた。日常で聞きなじみのあるのは「にわか雨」。秋の天気の急変にはくれぐれもご注意を▼最近多いのが「にわかラグビーファン」。ただ、日本代表がW杯で南アフリカを破った試合が、安保法案が参院本会議で可決される前の日だったら…と首を傾げる。ある番組で、女性のプレーヤーやファンの「ラガール」も同意見だった▼ラガールは「ラグビーは試合を生で見て」と話す。今後、国内人気がどれほど沸くのか。女子サッカー「なでしこ」の人気がW杯で活躍しても盛り上がらないのは選手が肌で感じている▼函館ラ・サール高校ラグビー部が花園大会の出場を決めた試合、ハンドボールなどの指導者が傘を差して観戦。「なぜ、ラ・サールは強いのか」を分析後、「選手を連れてこれば良かった」と話していた▼市民の北海道新幹線開業への機運が気になる。イベント時だけでにわかを感じる。走行試験が深夜で、日中にほとんど見ることができないのも理由のひとつかもしれない。地域住民に「H5系」の走行シーンを生で見てもらえる機会を増やすのは必要ではないか。(R)


10月11日(日)

「一億総活躍」という社会は、どう理解すればいいのだろうか。先日も本欄で触れたが、言葉通り受け止めると、そんな社会は非現実と思えるのだが。それが政治の世界から飛び出したのだから、波紋が大きいのもうなずける▼あまりに観念的で、イメージが膨らまない。「若者や女性、高齢でも働き、社会に貢献できる、生き生きと過ごせる社会」ということだろうか。そうとも言えるし、そうでないのかもしれない▼担当大臣は認識しているはず。だが、口をついて出たのは…安倍内閣が放つ新三本の矢、つまり強い経済、子育て支援、安心につながる社会保障に絡めて説明したものの、明確に伝わってこない。戸惑いは国民ばかりでなく政界でも▼石破地方創生相は9日の記者会見で「突如、登場した。国民に戸惑いがないとは言えない」と語ったという。さらに、民主党は綱領にある「すべての人に居場所と出番のある社会をつくる」のパクリだとやゆした▼安倍首相は最初の首相就任にあたって「美しい日本」を掲げた。これこそ漠然の極み。それに比べればまだ分かりいいかもしれない。だが、あくまで二つを比較しての話。一億総活躍社会の姿は、いつ、どう見えてくるのだろうか。(A)


10月10日(土)

作家の故吉村昭さんが約50年前、まだ人種差別激しい南アフリカの病院での体験を「人生の観察」(河出書房新社)に書いている。若い外科医が内視鏡を指さし「このような医療具を開発した日本人は、偉大だ。全世界で、どれほど多くの生命が救われているか知れない」と厳粛な表情で言われたという▼今年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さん(80)は、寄生虫病患者の失明を防ぐ薬の開発につなげた業績が高く評価。物理学賞に決まった梶田隆章さん(56)の研究は、宇宙の成り立ちの解明へ道を開くとされた▼文学賞の発表では、熱心な村上春樹さんのファンからため息がもれた。ただ「現代の苦悩と勇気を多角的かつ記憶に残るように表現した」と評価されたベラルーシの女性作家(67)を知る機会になった▼ノーベルウイークが巡ってくるたびに正直、日本人の受賞が気になる。一方で、数年前の受賞者の業績を忘れている自分にもあきれ返っている。今回を機に、吉村さんが言われたように、日本人の地道な研究が確実に世界を変えていることに思いをはせていきたい▼とはいえ、世界の人の方が理解しているか、文学に限っては別。「来年こそは」との思いが強い。(Z)


10月9日(金)

郊外の大型ショッピングモールやネット通販などに押され、老舗のデパートや大型スーパーが軒並み苦戦している。この厳しい状況の中でも、確実に集客が期待できるのが地域の名産品を集めた「物産展」。首都圏では連日のように、全国各地の自慢の品を集めた物産展がにぎわっている▼その中でも、北海道のグルメを集めたイベントは圧倒的人気でリピーターも多いという。「おいしい食材の宝庫」というブランドイメージは、道民には想像できないほど大きいようだ▼前宮崎県知事として全国各地の物産展に自ら足を運び、県のイメージアップに奔走した東国原英夫さん。彼は他地域とケタ違いの売り上げの北海道物産展が、うらやましくてしょうがなかったとのこと▼ただし、物産展の目的は、期間中にどれだけ利益を上げるかだけではない。そこで出会ったお気に入りのグルメを、現地で味わってみたいと思わせてこそ意味がある▼北海道新幹線の開業により、物産展会場を飛び出し本物の北の大地に足を運ぼうと思う人が増えることに期待したい。その人たちには、現地でしか感じることのできない温かいおもてなしを提供し、ぜひとも「北海道」のリピーターになってもらおう。(U)


10月8日(木)

安倍改造内閣が7日、発足した。主要閣僚はほとんど留任だから際立った変化は求めるべくもない。強引とも受け取られかねない国会運営も含め、安倍イズムが当面続くと意思表示した改造とも言える▼予算成立後の通常国会は安保関連法案一色だった。結末はおなじみの国会劇場だったが、内政外交とも課題は山積したまま。内政面では経済対策をはじめTPP(環太平洋連携協定)の対応など▼安保関連法案に関しては、国民理解を得られてはいない。経済の再生も大企業を除いて、なお実感するに至っていない。TPP合意でも波風立たずに国会の承認に至るとは考えられない▼さらに…1年半後の消費税10%になる際の軽減税率適用に対する目は厳しい。原発事故の被害に悩み続ける福島をはじめ、東日本大震災の復興もまだまだ。沖縄の基地問題は暗礁に乗り上げ、年金や介護の不安は解消されていない▼外交面では中国や韓国との関係改善、ロシアとの関係も重くのしかかる。第2期安倍内閣は発足から2年9カ月余が経ち、長期政権の域に入ってきた。「地方創生」に続いて今改造では「一億総活躍」を打ち出したが、看板倒れにならないように…そう願わずにいられない。(A)


10月7日(水)

プロ野球は、パ・リーグのクライマックスシリーズ進出チームが決まり、セ・リーグも広島の最終戦で3位が決まる。143試合もするのに、この1試合で最終順位が変わる。ファイターズが早く2位確定したのは、良かったのか、悪かったのか…▼1試合の勝敗は1球、1打で明暗を分ける。どのスポーツも同じで、選手は練習で「一つ」を大切に取り組み、積み上げていく。その努力はうそをつかず、怠ると可能なことも不可能になる▼ファイターズSCOの稲葉篤紀氏も少年野球教室で「キャッチボールはつまらないかもしれない。でも、暴投で負けたらとんでもなく悔しい思いをする」と話した。一流選手の一言は子供たちの胸に響いたはずだ▼北海道の大学ハンドボール男子の頂点に29年間立ってきた函館大が秋のリーグ戦、1試合を1点差で落とし、選手は大粒の涙を流した。シュートミス1つ、パスミス1つなかったら…。敗戦から1つの重みを知った彼らは今後、さらに強くなるだろう▼あと171日となった北海道新幹線の開業。本紙ではそのカウントを毎日掲載している。「まだ先の話」ではない。1日1日の準備を大切に歴史が変わる日を迎えなければ。(R)


10月6日(火)

政党が立ち上がるさまは、プロレス団体のそれとよく似ている。国会議員もプロレスラーも我の強過ぎる人々の集まり。ちょっと意見が違ったり金銭的に有利と見るや、今までの恩義を捨てて離合集散を繰り返す。国民やファンが不在なのも、また共通するところ▼12月で退任する橋下徹大阪市長ら、維新の党を離党した面々が新たな国政政党「おおさか維新の会」を結成した。元をたどると橋下氏らが2010年に立ち上げた「大阪維新の会」が源流だ▼そこを母体として12年に国政政党「日本維新の会」が生まれ、昨年石原慎太郎氏らが離党、さらに江田憲司氏らを加えて「維新の党」を設立。ここからさらに分裂して今に至る。この経緯をまとめるだけでも骨が折れる▼橋下氏は今年5月、大阪都構想をめぐる住民投票に敗れ、政界引退を表明していたはず。しかし新党の代表に就き、維新の党残留組を激しい言葉でこき下ろしている。とはいえ新党に合流する議員は少なく、縮小再生産が加速する▼プロレスに話を戻すと、2大団体から分裂してできた団体は大半が解散か尻すぼみ。自らも団体を2度つぶしたあるレスラーが「何がやりたいんだ!」と怒鳴っていたのを思い出す。(C)


10月5日(月)

「下剋上」「ジャイアント・キリング」—。スポーツの世界では、弱いチームが強者を倒す瞬間は何とも爽快だ。今年は特にそんな場面が多いように思える▼まずはプロ野球セ・リーグで2日に優勝を決めた東京ヤクルトスワローズ。2年連続最下位の弱小球団が、巨人、阪神に競り勝って14年ぶりの頂点に立った。就任1年目の真中監督は44歳と選手に近く、自主性を重んじた指導法が伸び盛りの打撃陣、投手陣の整備にもつながった▼現役時代は地味な存在ではあったが、真中監督は野村克也氏のID野球を学んだ一人。シーズン前にこれといった補強がなかったにもかかわらず、意識改革と丁寧な指導で優勝に導いたのはまさしく師匠譲りと言える▼ラグビーW杯では日本代表の奮闘が続いている。過去7大会でわずか1勝しか挙げていなかったが、今大会で強豪南アフリカを破り、3日も対戦成績の悪いサモアを圧倒する試合運びで2勝目。初のベスト8に望みをつないだ▼地元でもまた、函館ラ・サールラグビー部が大会15連覇中だった札幌山の手を撃破して花園行きを決めた。信ずれば花開く—。こんな前例にならい、ラ・サールには全国大会でひと泡もふた泡も吹かせてほしい。(C)


10月4日(日)

森林の保全は、温暖化の問題や災害防止などの観点から重要視しなければならない、環境対策の大きな柱といわれる。だが、現実に目を向けると、毎年のように土砂崩れや河川の氾濫による洪水が発生し、さらに海岸汚濁などにも影響を及ぼしている▼その原因として挙げられるのが森林の荒廃であり、対応が遅れているのは事実。森林の整備は災害対策でもあるとする説は定着しており、対策を講じるための森林環境税の導入が進んでいる理由の一つ▼2003年の高知県を皮切りに、既に30を超える県に広がり、さらに検討、議論中というところも。ほとんどの都道府県に広がるのは時間の問題とみられるが、直近では京都府が来年度導入する方針を打ち出した▼桂川の氾濫など3年続けて水害に見舞われたのは、森林の現状に原因があるとして。5年間、府民税に上乗せする形で想定額は年600円という。税の名称や額はそれぞれだが、趣旨と目的は同じ▼間伐や植林をはじめ森林の整備や将来を見据えた担い手の育成に充てられる。森林を守る、育てることは次世代への責務であり、趣旨に沿った成果を挙げるならば、この程度の負担額は…大きな議論にならないのもうなずける。(A)


10月3日(土)

芥川賞を受賞した又吉直樹さんの「火花」は200万部を超す大ベストセラーとなった。その又吉さんが敬愛する太宰治が、芥川賞選考委員の佐藤八郎に送った受賞を熱望する手紙が発見された。今年は例年以上に芥川賞の話題が豊富だ▼そうした中、5回も芥川賞候補になった函館出身の作家、佐藤泰志の資料展が函館市文学館で開かれている。独特の角ばった文字で書かれた「きみの鳥はうたえる」などの自筆原稿をはじめ、創作ノートや映画関係の資料も並ぶ▼芥川賞に限らず、文学賞が作家の評価のすべてを決めるわけではない。ノーベル文学賞候補に名前の挙がる村上春樹さんだって芥川賞を取っていないし、受賞後にさしたる作品を残していない作家も思い浮かぶ▼とはいえ、若くして自ら命を絶った太宰治や佐藤泰志は、芥川賞を受賞していれば、その後の人生は変わっていたに違いない。優れた作品をもっと残していたかもしれない▼佐藤泰志の再評価には、函館市民が主体となって作品を映画化したことが大きく影響している。現代の閉塞感に作品の世界観がマッチしているとの解説もある。佐藤文学は文壇の権威ではなく、市民の力で没後25年たっても光り輝いている。(I)


10月2日(金)

普段親しみを持つ人やモノが目の前から姿を消すと寂しさが募る。友人、知人はもちろん、人間は物体に対しても「思い出」という感情を抱く。それが街になじんでいたシンボリックなものならばなおさら▼駅前のデパートやどつくのクレーン…函館はこれまでも多くの構造物を生み出し、そして失ってきた中、大門商店街のアーケードも先月きれいに取り払われた。1970年代後半に設置され、雨をしのぐ役割も果たしていたが、何よりも古くささは否めなかった▼撤去で道路幅が広くなった印象を与えているが、アーケードには夜間照明も付けられていたため、撤去直後は通りが暗くなったとの評価も。さすがに手をこまねくはずはないと思っていたが、9月30日付の本紙で新たな計画が明らかに▼中心市街地トータルデザインの担当業者が高さ10メートルのシンボル照明柱2基や、集魚灯をモチーフとした街路灯の設置を検討しているという。大門はかつて北洋漁業のヤン衆でにぎわった繁華街。まちの歴史に文字通り光を当てた内容▼去りゆく景色に一抹の寂しさを覚えど、新たなまちの姿はやがてスタンダードになる。移り変わりを受け入れながらも、過去は丁寧に語り継ぎたい。温故知新―。(C)


10月1日(木)

「そんな時代になればいい」。願いたい気持ちはやまやまだが、実感として伝わってこない。安倍首相が国会閉会後の記者会見で華々しく掲げた「一億総活躍社会」である。7日に予定の内閣改造で兼務ながら担当大臣を置くという▼少子高齢化という言葉が違和感なく伝わってくる時代。既に人口減少期に入り、さらに高齢化率が高まる50年後には、総人口が1億人になるとの推定も。そうなったときの社会をどう築き、維持していくか▼政治的にも社会的にも多くの課題を抱えることになる。過疎化をはじめ年金などの社会保障、雇用を含めた経済労働、子育て、教育、医療、介護…。省庁間にまたがる対策となるから、プランづくりには調整役が必要になる▼だから担当大臣を配置する、のだと。地方創生、経済再生や五輪担当などは別格だが、安倍内閣では大臣の担当が結構多い。例えば少子化、女性活躍、クールジャパン戦略、IT政策、消費者及び食品衛生など▼次期内閣では一億総活躍担当が加わることになる。将来を見据えた課題の検討や対策は大事で、それを否定するものではないが、鍵を握るのは必要な体制づくり。担当大臣を発令して…どう進めていくのかまでの説明はまだない。(A)