平成27年11月


11月30日(月)

函館から札幌への移動手段として思い浮かぶのは、自家用車、列車、飛行機だろう。早さの飛行機、手軽な車、安定した列車と、それぞれの特徴を単的に上げてみるが…▼度重なる事故や不祥事により、JR北海道の信頼度が揺らいでいるのは、ご承知の通り。ここで列車の代替手段として注目集めたのが高速バスだ。「料金が安いのは魅力だが、乗り心地が心配」と敬遠している人も多いだろう。実際に利用してみるとゆったりとしたシートの快適さに驚くはずだ▼道新幹線が札幌まで延伸すれば、函館—札幌間の移動手段をめぐる争いがさらに激化することは間違いない。時間的には新幹線と飛行機がほぼ対等になる。そうなると問題は料金だ▼先日、JR北が国に申請した新函館北斗—新青森間の特急料金は、高額なトンネルの維持費などのため予想以上に高額となった。新函館北斗—札幌間が全通した場合も、かなりの高額料金になることは避けられない▼ここで高速バスに頑張ってもらいたい。移動手段の強力なライバルとして立ちはだかれば、JRも値下げを考えざるを得なくなるに違いない。速さと安さ、15年後はいったいどちらの価値観が優勢を占めているのだろうか。(U)


11月29日(日)

「1億総活躍社会」など50の候補語が挙がった今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」が12月1日に決まる。「安心してください」など個人的には面白く思うものもあるが、ピンとくる言葉は少なかった▼「2016現代用語の基礎知識」の特集コーナーで「紋切型社会」の著者、武田砂鉄さんと対談した作家の重松清さんの指摘にうなずいた。「子どもからお年寄りまで使える流行語はなくなった。…最近は流行語というよりキーワードになっている」▼数日前、本紙の1ページを使って2015年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」の最優秀賞作品が紹介された。お札の楕円の中心に「使用期限をお金にも。」のコピー。「お金」をテーマに寄せられた1181作品の中から選ばれた▼「下流老人」が流行語大賞の候補に上るなど、格差が広がっているのが実感。「使用期限を」の言葉に、「余裕のある人の言。何を悠長な」と当初、引っ掛かりを覚えた▼先日、聞いた地域エコノミストの講演で考え方が少し変わった。「今だけ 金だけ 自分だけ」を否定。「お金を地域内で循環させることが、地域の雇用と若者人口を増やす」としていた。お金に対し、少し余裕を持つことにした。(Z)


11月28日(土)

函館は北海道における写真発祥の街だ。開港とともに領事館を設けたロシアの人々によって写真術が伝わり、木津幸吉や田本研造、横山松三郎らが競い合いながら函館の写真術向上に重要な役割を果たした▼最近、函館市が湯川海水浴場や恵山の風力発電といった不採算施設を、本年度限りで取りやめるニュースが相次いでいる中、旧北海道庁函館支庁庁舎(元町公園内)の写真歴史館を廃止する方針を示した。やはり入館者数の伸び悩みが原因▼館内には写真術伝来期に使われた道具のほか、田本が明治期に残した街並みの写真などが展示され、函館に伝わる写真文化を細かに伝えている。写真好きの一人として興味深く見入った▼ただ、筆者が館を訪れた時には悪天候だったせいもあってか、客は筆者1人。26日の本紙記事によると昨年度は約789万円の赤字というから懐事情もあるだろうが、建物も歴史があるだけに実に惜しく感じる▼本紙は毎年6月1日の「写真の日」にちなみ、読者に6月1日の日常を写真に収めてもらう取り組みを行っているが、毎回「珠玉の1枚」が寄せられ、投稿者の心意気が感じられる。優れた文化を後世に伝えるべく、官民で知恵を絞らなければ。(C)


11月27日(金)

どうしてここが50㌔規制なのか、どうしてここが取り締まり場所なのか。ハンドルを握っていて、そんな思いを抱いたことのある人は多いに違いない。もちろん事故防止の観点からとられている措置、対応であることは誰も否定はしない▼実際に抑制効果はあるのだから。ただ、込み上げるのは実態に照らしてどうなのかという思い。函館にも度々講演に訪れている著名な知識人が先日、自らの体験から覚えた違和感をある地域紙に寄稿していた▼50㌔制限の所を21㌔オーバーで反則切符を切られたが、郊外の危険な要素などまったくないと思える場所だった。なぜここで…どう考えても理解に苦しむ、と。道民でない自分があえて寄稿したという▼交通安全を語る時に、指導取り締まりという表現がある。指導と取り締まりは安全対策のいわば両輪。だとすると、悪質な場合は論外だが、指導(説示)の部分がもっとあっていいという論はうなずける▼「摘発が目的の取り締まりではいけない。速度規制と取り締まりの方法については再考が必要」。何代か前の大臣(国家公安委員長)がこういった趣旨の発言をしたと記憶しているが、少しは具体化したのだろうか、実感はないのだが。(A)


11月26日(木)

道内を走行中の特急列車に乗車中、非常ブレーキによる緊急停車を6回経験している。まだ13年しか北海道にいないのに。ブレーキの作動ですぐに分かり、「大事故でなければ良いが」と不安がよぎる▼このうち2回は先週、札幌から函館に向かう時に起きた。最初は「小動物に衝突した模様」とアナウンス。以前、シカを跳ねた時に約40分停車。急いでいなかったが「何分遅れになるのだろう」と思った。27分遅れで列車は動いた▼次に止まった時は状況説明まで少し時間があった。不謹慎だがドイツの思想家カール・マルクスの「歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」を思い出した▼少し時間が経ち、「作業員が線路に入ったため」と放送があった。これは笑えない。約10分停車で計約40分遅れとなり、事態は深刻。一部の乗客は青森・東京方面の列車接続が合わなくなり、函館駅で切符を替えることに追われた▼北陸地方からの在来線特急列車で、上越新幹線への乗り換え時間は10分未満。在来線が遅れ、走って新幹線に向かったことは何度かあった。北海道新幹線の接続も同様になっては困る。安全運転と乗り換えに配慮したダイヤ編成を望む。(R)


11月25日(水)

人間、誰でも年を取れば一定の経験が身につく。その一方で肉体的にはどんどん衰えていく。特にスポーツの世界では引退間近の選手が脂の乗り切った選手と真っ向からぶつかり合うのは並大抵のことではない。経験だけでは補えない面もある▼〝ミスター・プロレス〟と称された天龍源一郎選手がついに引退した。65歳。13歳で大相撲の世界に飛び込み、前頭筆頭まで登り詰めた後にプロレスへ転向。格闘人生は実に半世紀以上。さまざまな壁を乗り越えてありとあらゆる選手と戦った▼そんな天龍が最後の対戦相手に選んだのが、最大手団体の現役チャンピオン。引退試合ともなるとゆかりのある選手と戦う場合が多いが、この相手が過去に活躍したレスラーを侮蔑するような発言をしたことに対して猛然とかみついた▼引退試合を見たが、予想以上に天龍は動けず、かつての技の切れはなくなっていた。試合には敗れたが、不格好ながらも今自らができる技を相手にかけていく姿に、彼の生きざまを見た思いがする▼試合後、独特のしゃがれた声で「負けたー!」と絶叫して悔しさをにじませた天龍。年老いてもなお、若い奴に負けてたまるかと意地を張る。こんな男の姿を見習いたい。(C)


11月24日(火)

「廻(まわ)れば大門の見返り柳いと長けれど…」。樋口一葉の「たけくらべ」冒頭。リズムがよく、一部分そらんじていたが、ちょっと前まで大門を「だいもん」と読んでいた▼「おおもん」と読み、『だいもん』と読んでは間違いです」とある本にあった。思い込みは強く、朗読音源でも確認し、始めて自分の間違いを認めた。どちらも大きな門だが、こう読むと「遊郭の入り口」との意味合いが出てきて、この小説の展開を象徴する導入部となる▼新参者として、人に会うと、まず函館のことを聞くようにしている。大門地区のにぎわいを懐かしみ、「そして今は…」と続ける人が多い。中心市街地として歩んできた地区への思い入れを感じる▼10周年を迎えた横丁の取り組み、2018年の開業目指した大型商業施設の建設計画、商店街の「歳末福引大売り出し」の3年ぶりの復活などなど、話題が続いている。北海道新幹線開業を見据え、駅前を盛り上げようとの動きだ▼一葉の時代の東京に「だいもん」は芝の増上寺の門を指し、「芝の大門」と固有名詞化していた。点ではなく面として連携し、新幹線時代の「函館の大門」が新たな固有の歴史をどう刻んでいくか、楽しみにしたい。(Z)


11月23日(月)

今年も残すところ1カ月余り。毎年恒例の「新語・流行語大賞」のノミネート作品の中から、ちょっと早いが2015年を振り返ってみたい▼政治で最大の出来事となったのが安保関連法案の成立。野党議員や支持者が「アベ政治を許さない」「自民党、感じ悪いよね」と攻撃すれば、与党側は「戦争法案」だと「レッテル貼り」を嫌がった。安倍首相が「早く質問しろよ」とやじを飛ばした場面も▼日本経済の1年は中国人観光客ら「インバウンド」の「爆買い」に支えられた。「北陸新幹線」が3月に開業。来年は北海道にやってくる。ただ「1億総活躍社会」の実現はまだまだ先か▼そういえば友人から「まいにち、修造」の日めくり名言集を勧められた。買わなかったけど。職場でいじめや無視をされる「モラハラ」に悩まされた社会人もいれば、独身アーティストが結婚し「福山ロス(ましゃロス)」になった女性も多かったそうだ。お笑い芸人の芥川賞作品「火花」を読んだという人もこれまた多かったかも▼年の始めに流行した「ラッスンゴレライ」「あったかいんだからぁ」の彼らは、今年は懐具合が少しあったかいんだろうか。言葉の旬はあっという間だ。(C)


11月22日(日)

地域における人間関係の希薄化が叫ばれて久しい。時代の移り変わりに伴う社会構造の変化がもたらした現象だが、象徴的なのが地域活動の原点でもある町内会(町会)活動。都市部では特に加入世帯の減少という悩みを抱えている▼地域の人たちはみんな顔見知りで、困ったことがあれば相談に乗り助け合う。今の時代、その任を担っているのが町内会で、函館はかつてモデル都市と言われた。それぞれの町会が独自の会館を持ち、加入率も高く、活動も活発だとして▼その函館も減少の例外でなくなり、隣人と付き合いがないのは珍しくない。地域の交流は煩わしい、ここに永住するわけでないし、といった理由の無関心層の増加がうかがえる▼町会の加入率は10年前の69%が、5年前には63%に、今年度は60%を割って58%まで落ちている。このままだと地域の親睦はもとより、防犯やごみ問題などの環境活動にさらなる影響が出てきかねない▼「なんとか加入率を上げたい」。先日の本紙が報じていたが、道宅建協会函館支部が物件契約者に加入を勧めることを確認。12月1日に市と市町会連合会と協定を結ぶという。減少傾向に歯止めが掛かれば…取り組みの広がりが期待される。(A)


11月21日(土)

東京から札幌に赴任している知人から「来函ってどう読むの?」と聞かれた。函館に来ることを意味するのに、文字数を少なくするため省略して記しているが「ライカン」「ライハコ」どっちが多く読まれるだろう▼「来札」(札幌)「来根」(根室)など、都市名の一文字に「来」や「帰」を付けることは道内では珍しくない。全国では「来鳥」(鳥取)「来阪」(大阪)もあるが、京都は「上洛」。関東では珍しいようで「上京(東京)しか使わない」と知人▼その知人が電話で部下を叱る時「今すぐガンダで行け」と聞こえた。「神田に行かせるの」と聞くと大笑い。「ガンダは大急ぎのこと。ガンガンダッシュして走れ」と教えられた▼若い人を相手にすることも多いので、略語も少し勉強しよう。しかも「なうしか」で。これは「今しかない、NOW(ナウ)」と同じ意味とか。「(いつやるの)いまでしょ」はすでに古いようだ▼ただ、「来函」など意味が通じることは良いと思うが、全く分からない略語は覚えてもすぐ死語になる。丁寧に、気持ちを伝えるために使う言葉は不偏できれいだ。「そうか、気持ちの通じ合いが希薄だから略語がはやるのか」と知人と納得。(R)


11月20日(金)

来年3月26日の北海道新幹線の開業によって、函館から青森までの移動時間が約1時間に短縮される。思いついたら気軽に観光やショッピングに出かけられそうな感じだが、そこには大きな壁が立ちはだかっている▼先日、JR北海道が国土交通省に申請した内容によると、新函館北斗―新青森間の特急料金を含む運賃は7260円で、往復だと1万4520円。実際には割引キップの設定が見込まれていて、これが実現すると片道4350円で利用可能に。それでも気軽に足を運ぶにはちゅうちょしてしまう金額▼筆者は青森に年に数回遊びに行くが、利用頻度が高いのがフェリー。運行会社や季節によって変動はあるが、往復料金は4000円程度と格安。片道4時間という長旅だが、船内でくつろげるので苦にならない▼道新幹線開業は、時間短縮こそ利点のように騒がれているが、青函両地域の人々がもっと気軽に利用できるようなアイデアがなければ、一時的な盛り上がりで終わってしまう危険性も▼例えば青函を4回往復したら1回無料になるなど、思い切ったアイデアが必要かもしれない。地元の住民に末永く愛され続けるローカル路線を目指し、JRには頑張ってもらいたい。(U)


11月19日(木)

「卵が先か鶏が先か」。簡単なようで、簡単に答えが見つからない。こんなジレンマを解く試みが数多くあるようだが、結局は人それぞれの考え方によって答えは異なる。これに似た問題が行きつくところまで行った▼米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画を巡り、国は17日、沖縄県の翁長雄志知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分を撤回する代執行に向けた行政訴訟を、福岡高裁那覇支部に起こした。国と沖縄県の対立が法廷に持ち込まれた▼菅官房長官は「普天間基地の危険除去を考えるとやむを得ない措置」と述べたのに対し、翁長知事は強く非難。沖縄県側も国に行政訴訟を起こす方向で、まさしく異常事態▼在日米軍専用施設の約7割は沖縄にある。なぜ沖縄が負担を強いられなければいけないのか—。知事の主張は明快だが、世界一危険といわれる普天間の移設は日米間の合意であり、南シナ海の緊張も増している。たやすく本土へ移せるはずもない▼国が先か、地方が先か。基地や原発は東京から離れた地方に経済効果をもたらす一方で大きな負担を強いる。国民一人一人がこのままでいいのか、考える時期に来ている。(C)


11月18日(水)

適用を広げるべきと主張する公明、極力抑えたい自民…2017年4月の消費税10%引き上げ時に導入の軽減税率を巡る与党協議が難航している。なんとか生鮮食品への適用は確認したようだが、そこで止まったまま▼自民はもともと消極的だった。目減り分の財源が確保できず、そうなれば社会保障費に影響する、という理由で。渋々腰を上げ協議に入ったものの、その姿勢は基本路線として変えていない▼確かに消費税は2%と言えど大きな財源だが、見直すことで捻出できる財源は本当にないのか。例えば、法人税の税率軽減。企業が応えてくれる保証はないのに、浮いた分を設備投資や所得に回してもらえるとして▼行財政改革も行き着いてはいない。先日、公表された会計検査院の報告が物語る。無駄遣いや不正などが指摘された昨年度の国の事業は570件、1568億6700万円に上るという。すべてが検査されたわけではないのにこの金額▼国会議員定数の抜本的な削減も掛け声だけ。毎年、指摘される消費税の未納も依然として多い。それでも軽減税率の適用範囲を広げる余地はないのか。最終的に政府の政治判断に委ねられるが、議論の行方に無関心ではいられない。(A)


11月17日(火)

「よっ、労働者諸君!」。柴又に帰ってきた寅さんが、団子屋の裏にある印刷工場の人たちに呼び掛ける。「景気はどうだい」「相変わらずひでえもんよ」と「タコ社長」との会話が始まる。映画「男はつらいよ」のおなじみの場面だ▼いつも金策に走り回っている。社長の報酬より、給料の高いサラリーマンはいっぱいいたことだろう。たぶん工場の人たちも会社勤めに比べ低い。なにかあれば、長時間労働も強いられたこともうかがえるが、悲壮感はない▼ブラック。企業、バイトと労働にまつわる事柄につくと「ひどさ」が浮かび上がる。学生アルバイト1000人を対象にした厚生労働省の初調査では、6割が賃金などの労働条件で、トラブルになった経験を持っていることが分かった▼厚労省は学生に対する労働法セミナーや出張相談などの対策に乗り出す。専門家は若者への「雇用ルールの教育」とともに、使用者側に対する「法律順守」の指導の必要性を指摘する▼グローバル化の波が強くなり、もうけ主義だけが前面に出て、働く側の立場が極端に弱くなりすぎていないか。今の時代、タコ社長の工場が生き残っていくのは並大抵ではないが「ひでえもんだ」で済ますわけにはいかない。(Z)


11月16日(月)

使っている写真機材の傷隠しにシールを貼っている。すべてアメリカの漫画「スヌーピー」のキャラクターで、取材現場では子供から好評だが、巨体の男が愛用していることで冷たい視線も感じる▼そのスヌーピーがビーグル犬として初の快挙。ロサンゼルス・ハリウッドの殿堂入りを果たした。俳優や有名人らの名前が歩道にある星形の敷石に刻まれている「ウオーク・オブ・フェーム」に、名前が追加された。犬の先輩には「名犬ラッシー」などが▼ウオーク・オブ・フェームは「名声の歩道」と呼ばれ、映画などで活躍した人物など名前が彫られた2000以上の星型のプレートが並ぶ。コラム子も2回訪れ「ゴジラ」を探した▼通りの長さは約5キロ。アカデミー賞の授賞式が行われるシアターや、有名人の手形や足型が玄関前にあるグローマンズ・チャイニーズ・シアターが建ち並ぶ観光名所にあり、世界中からセレブが集まる▼「映画の街はこだて」も多くの映画が撮影され、世界的な賞の受賞作品もある。ロケ地マップはあるが、俳優、歌手、文化人、歴史的著名人で函館ゆかりの人の名前が並ぶ通りがあるのも、ファンを集める観光名所の一つになるのではと思う。(R)


11月15日(日)

出版不況が言われて久しい。それは数字にも表れていて、ピーク時の1996年から本の売れ行きが3割ほど落ち込んでいるという。ネット社会の到来といった時代背景もあるが、図書館との関係も取り沙汰されている▼全国的に公立図書館の新設が続き、この10年で400館増えているそう。景気低迷による生活防衛という思いもあれば、家で蔵書することに執着しない傾向も。何より図書館は居心地がよく、借りることで足りるとしたら…▼特に文芸本だが、購入せず図書館で借りる人が増える動きは容易に想像できる。それが新刊の売れ行きに影響している一つの要因、だから貸し出しに配慮を。出版社側はこう望む▼「著者と出版社の合意がある新刊に限り、図書館での貸し出しを1年猶予してほしい」。この10日、図書館総合展で新潮社社長が言及。年内にも申し入れる考えを示した▼出版社側の苦しい事情は事情として、図書館側は戸惑いを隠せない。というのも利用者のニーズに応えなければならない立場であり、本が読まれなくなったと言われる現実に対処する使命を担っているから。「読んでもらいたい」。その思いは一緒なのだが、何とも悩ましく、答えが難しい。(A)


11月14日(土)

池井戸潤の直木賞受賞作「下町ロケット」のテレビドラマが人気を集めている。小さな町工場が国産ロケット開発の夢を追う姿に、あの飛行機を重ねた人も多いかもしれない▼国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」が11日、ついに初飛行に成功した。度重なる試験延期を経て、スマートな機体が名古屋の空を華麗に飛び立つ様子に、画面を見ていただけの筆者も一種の誇らしさを覚えた▼国産飛行機と言えば、1965年就航のプロペラ機「YS-11」が思い出される。地方空港同士を結ぶ翼として重宝され、函館でもかつてはよく見かけた。改修経費の関係で2006年には使命を終えたが、国内輸送の使命を十分に担った▼YS-11の就航から約半世紀、ジェットで地方と地方を結ぶ時代がやってきた。むろん函館とも無縁ではないはず。MRJは70~90人乗りで、同形機よりも低燃費。廃止路線の復活や、少人数のチャーター便などにも有効活用が可能であろう▼函館市や経済界は外国人観光客の誘致に知恵を絞っているが、その元となっている円安がいつまで続くとも限らない。国内需要の再開拓もインバウンド取り込みの裏で考えていい時期に来ている。(C)


11月13日(金)

「はるばるきたぜ函館へ(8分音符)」は、函館出身の歌手北島三郎さんが14枚目のシングルとして発売した「函館の女(ひと)」。1965年11月10日が発売日だった▼140万枚という大ヒットとなり、函館市史によると翌年7月、函館観光協会が宣伝効果に感謝し、北島さんと作詞家、作曲家に感謝状と記念品を贈るため、東京日比谷公会堂で開かれたリサイタルを訪れたという▼コラム子にとって生前の曲だが、永谷園のお茶漬けCMソングで71〜2003年に使われ、聞きなじみはあった。中学時代は「青函連絡船に乗って函館に着いたら歌いたい」と思っていたが、連絡船は乗れなかった▼先日、関東から来函した女子学生が口ずさんでいた。「よく知っているね」と聞けば「菊花賞でキタサンブラック(北島さん所有馬)が優勝したニュースで、サブちゃんが函館出身と知った。ちょうど函館に行くので曲を覚えた」と話す▼キタサンブラックの次走は有馬記念(12月27日)が有力視。再び勝って替え歌でもいいので「函館の女」を中山競馬場で歌ってくれたらと思う。「そういえばサブちゃんの出身地は来年、新幹線が開業するんだな」と感じる人がたくさん出てくれれば。(R)


11月12日(木)

学生生活とアルバイトは切っても切り離せない関係と言っても過言ではない。学生にとってはアルバイトを通して社会の仕組みを学び、労働の対価としての賃金のありがたみも知ることができる。ただ、現場に出たら社員と変わらぬ労働者としてトラブルに巻き込まれることも▼学生がアルバイト先で不当に働かされる「ブラックバイト」の問題が広がっている。厚生労働省が初実施したアンケート調査では、労働条件を巡って6割の大学生らがトラブルの経験を持っていることが明らかになった▼具体的には労働条件が書面で交付されなかった、準備や片づけの時間帯に賃金が支払われなかった―など。法令違反には当たらないが、一方的に急な勤務変更を命じられた―などの回答もあった▼学生アルバイトは正社員を補助する労働形態ではあるが、正社員の採用は特に中小企業だと抑えられる傾向にある。ましてや、人件費=コストとして捉えられがちな昨今、アルバイトにかかる負担はむしろ増えているとみるべきであろう▼言うまでもなく学生の本分は勉強だが、経済的理由で働いている場合が大半。労働力としては貴重な存在でもあるだけに、企業側には節度を保った対応を求めたい。(C)


11月11日(水)

以前は「きょうは外国人観光客が多いけど、客船が入港しているの」と質問を受けた。最近は豪華客船の入港が増え、それ以外でも外国人観光客が多くなったためか、聞かれなくなった▼先週末「五稜郭で運動服を着た背の高い若者を見たが、何の選手」と尋ねられた。6日から函館アリーナで全日本学生ハンドボール選手権が開かれていると教えたら「そういえば新聞に載っていた」と返事。試合の合間に観光する選手はベイエリアでも見掛けた▼試合会場である町会長が「新聞を見て来た。ようやくアリーナを見ることができた」と話した。開会式では函館のピアニスト伊藤亜希子さんの演奏や、ダンススタジオのパフォーマンスを目当てに、一般に用意された200席は立ち見も出た▼全国から来た2200人の学生と、あらためて市民に新しいアリーナを披露できた大会。そんな中、関係者から「会場前を走る市電が大会の看板を付けてくれたら、選手は喜んでくれたな」と聞かれた▼市からの大会への補助金支給だけでなく、こんな「おもてなし」もほかのコンベンション誘致につながるかも知れないアイデアと思う。熱戦の決勝は11日午前10時から。ぜひ地元選手に関係なく応援を。(R)


11月10日(火)

「110」「119」は誰でも分かる。警察、消防への緊急通報番号である、と。海難通報(海上保安庁)の「118」も認識されてきている。それでは「188」はどうか。残念ながら、浸透はまだの域▼7月から運用されたばかりだから、仕方ないとは言える。「188」は「いやや」の語呂合わせで、答えは消費者ホットライン。「(いやや)泣き寝入り」と覚えてもらえれば、と採用された▼音声案内に従って居住地の郵便番号を入力すると、近くの消費生活センターなどにつながる。高齢者を狙ったオレオレ詐欺などの被害は依然として多い。従来の製品事故などに加え、特殊詐欺に目を向けた取り組みでもある▼警察などが事例を挙げて対処法を啓蒙(●けいもう)しているが、相談窓口電話の開設も防止対策の一つ。急ぐ時、個々のセンターの番号を調べるのは煩わしい、高齢者はなおさらで、3桁ならば…▼番号を覚えてもらわなければ意味がない。内閣府の消費者行政の推進に関する世論調査によると、現在の認知度は34%というから3人に1人。さらに存在も番号も知っていた人は6%台だったという。大事な通報番号として…特に高齢者に「188」を覚えてもらう方策が求められる。(A)


11月8日(日)

老いをいつ意識したか。初めは目だった。新聞や本を見ても、文字が見えにくい。何のことはない。周りに指摘されて、老眼鏡に変えたら、ちゃんと読めるようになった▼母がよく口にする「どっこいしょ」はないが、次に何をしようとしていたか、思い出すまで間が空くことが多くなった▼このところ、高齢者の重大交通事故が続いている。宮崎市では73歳の男性が歩道上を暴走、2人死亡、4人が重軽傷を負った。愛知県では76歳の男性が店に突っ込み、12人がけがをした。「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と供述しているという▼高齢者の運転への対応について、いろいろ議論が起こっているが、人によって老い方はさまざま。特に地方の人にとって、通院など、生活していく上で車が欠かせない実態がある。一方で、福岡県の93歳の女性がミニバイクの高校生をはね、ひき逃げなどの疑いで逮捕された事案には「90を越えて」と複雑な気持ちになる▼「誰もが『自分の老い』に関してはアマチュア」。ある作家の本で見つけたが、頭の中は若いつもりでも、反射神経は確実に鈍くなっている自分を感じる。「老いの発見」を楽しむことが、的確な判断につながると思っている。(Z)


11月7日(土)

千葉県警が一昨年まで10年間の交通事故死者数を過少計上していたことが表面化した。この間に本来、交通事故死として扱うべき165件が病死などとして処理されていたという。「何で」。考えなければならないのはその背景▼同県がここ数年、都道府県別で事故死者数が多い方にランク(一昨年はワースト3)されている現実と無縁ではない。競うことによって成果が上がる、競わせることで成果を上げる…それはあくまで同じ土俵にあっての話▼道路延長や道路環境などの交通事情は、すべての都道府県が同一ではない。そもそも事故の発生件数や死傷者数を単純に競い合うことは不合理なのである。とはいえ、数字が一人歩きする現実の前に担当者、責任者が受けるプレッシャーは大きいということだろう▼でなければ、操作する必要はないのだから。交通事故統計の改ざんは過去に佐賀県警や愛知県警でもあった。幸い交通事故は、関係者の努力が実を結んで減少に転じている▼要は国内全体で減少すればいいこと。例え特定の都道府県が減っても全体で増えれば意味はない。多角的な統計は対策を講じる上で必要である。ただ、それが改ざんを生む足かせとなってはならない。(A)


11月6日(金)

リデュース(ごみそのものを減らす)、リユース(何回も繰り返し使う)、リサイクル(分別して再び資源として利用する)。いわゆる「3R」はごみを減らすためのスローガンとして使われる機会が多い▼一般的なごみならば心掛け一つで多少の排出は抑えられるが、「核のごみ」ともなれば簡単にはいくまい。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)に関し、原子力規制委員会は同機構に代わる運営主体を半年以内に探すよう、所管の文部科学省に勧告する▼ウランを燃やしながらプルトニウムを増やす「夢の原子炉」とうたわれたもんじゅ。しかし1994年の初臨界から4カ月後に火災事故を起こし、稼働したのはわずか200日余り。2012年には約1万点の機器で点検漏れが見つかった▼函館市が差し止めを求めている青森の大間原発も、まして六ヶ所村の再処理工場も稼働の見通しが立たない中、プルトニウムを増やす必要性は希薄で、組織運営も不手際続き。規制委は「漫然と待つ選択肢はあり得ない」と三くだり半▼核燃料サイクルを推進する政府の姿勢にも疑問が突き付けられている。夢は夢として、原子力を取り巻く現実を見据えた対応が必要では。(C)


11月5日(木)

江差町が「日本で最も美しい村」連合から加盟承認を受けた。聞きなれない組織だが、「失ったら二度と取り返せない農山漁村の景観や文化を守りたい」という趣旨で誕生し10年になる▼自分たちが住む地域は美しいままであってほしいし、誇りを持ちたい。それは誰しもが共通して抱く思いだが、守るためには何かしなければ…範となったのが1982年に生まれた「フランスで最も美しい村」運動だ▼ちょうど市町村合併に揺れていた時期。美しい景観を持つ町や村の存続が難しくなる、そんな危機感を持つ地域が上げた声をきっかけに生まれた。人口が概ね一万人以下、地域の資源が二つ以上あることなどを加盟条件に▼現在までの加盟は約60カ所。道内は会長町の美瑛をはじめ、赤井川、鶴居、標津、京極、黒松内に、今年の江差と江部乙(滝川市)を加えた8カ所。江差町は歴史を感じさせる街並みを再現した「いにしえ街道」などが、価値ある景観として評価を得た▼大事なのは美しさを守り続けることだが、その景観や文化は地域財産であり、観光資源でもある。多くの人が町や村を知り、訪れるならば加盟の恩恵は大。それにしても…最も美しい村運動とは何とも響きがいい。(A)


11月4日(水)

霜月に入るも冬の寝具を出していない。就寝時は夏の掛け布団と薄い毛布を夫婦で引っ張り合い。しかし、勝者はその上で寝ている犬。重くて動かないので、冬は名前を「文鎮」と呼ぶ▼昼は日差しの多い日が続いている。札幌管区気象台によると、道内は11月は中旬まで気温が高い日が続く見込み。函館の初雪の平年は11月3日だが、今年は気配はない。初氷もまだで、ナナカマドの紅葉は見ごろが続く▼とは言うものの気温は下がってきている。今月1日、あるホールで開かれた講演会に出掛けたところ、座席でコートを着てマフラーをしている人が多く「寒い」「暖房入れてほしい」と訴えるように体が小刻みに動く仕草が目立った▼主催者は施設に暖房を要求していたが、外気温がさほど低くないので、暖房運転をしていても効果が低いと説明。ただ、集まっている人のほとんどは高齢者。結局、後半に咳込む人も出てきた▼道内で暖房費は大きく、経営、管理者は少しでも抑えたいところ。過度に暖房に頼らずに暮らす「ウオーム・ビズ」も浸透してきている。ただ、季節の変わり目は体調管理が難しい。貸し出し用の膝掛けを用意するなど、温かい気配りが必要と思う。(R)


11月3日(火)

「トリック・オア・トリート」。米国でのハロウィーンで、家を訪れた子どもが玄関先で言う決まり文句。直訳すると「いたずらされるかおもてなしするか」となるが、主に子どもが使うため「お菓子をくれないといたずらするぞ」と訳される▼近年は日本でも定着著しいハロウィーン。本紙でも商店街での仮装コンテストや街なかを練り歩くイベントの開催を報じている。ただ、地方での盛り上がりはまだ大人しいほう。東京・渋谷へ行くと一変する▼10月31日、渋谷のスクランブル交差点に仮装した若者が集まり、目的もなく深夜まで大騒ぎする様子が盛んに紹介されていた。最近は外国人観光客も集団に混じって楽しんでいる。お祭り感たっぷりの様子に、外国人の反応も良いようだ▼ハロウィーンの由来をたどると、ヨーロッパに広く存在した古代ケルト人が秋の収穫を祝い悪霊を退治する行事を行っていた中、キリスト教の「諸聖人の日」が重なったという▼もともとキリスト教の祭りではないようで、日本でもクリスマスと同様に「無宗教」のイベントとして定着した。ただ、渋谷の騒ぎを見るにつけ、単なる日常の憂さ晴らしにしか感じられないのは気のせいだろうか。(C)


11月2日(月)

6年前、新書版で読んだときは、頭の中に何も残らず流していた。今年6月の文庫化の際、新聞に紹介された書評に引かれて再読、本棚の前列に陣取る一冊になった▼作家の橋本治さんの「大不況には本を読む」(河出文庫)。大上段すぎるタイトルと思ったが、ずっとわだかまっていた「行間」についての説明に、1つの解を得た気がした。「書かれていない自分のあり方を探す『読者のいる場所』」と位置付けていた▼学生時代、よく「行間を読めないから、理解できないんだ」と言われた。「行間を読む」が分かるようで分からず、「どういうことだろう」とふに落ちなかった。再読で、書かれていることをそのまま受け入れるのではなく「書かれていないこと」を考えるように意識するようになった▼10月27日に「読書週間」が始まり、各地で本にまつわるイベントが開かれている。著名人がお勧めの一冊や本の魅力を紹介する機会も多く目にする▼本の読み方は、人さまざま、年代によっても違ってくる。1回読んでピンとこなかったことが、時間が経つにつれて言葉が働き掛けてくることもある。「週間」が「自分の居場所」を見つけるきっかけになればいい。(Z)


11月1日(日)

プロ野球日本シリーズは福岡ソフトバンクの圧勝で幕を閉じた。東京ヤクルトを相手に4勝1敗と下馬評通りの強さ。フロントと現場が一体となったチームづくりに隙はなく、しばらく黄金時代が続きそう▼シリーズ進出チームを尻目に、他球団はストーブリーグが本格化。巨人は原辰徳氏に代わり高橋由伸新監督が就任。ライバル阪神も金本知憲新監督となり、監督世代の年齢が一気に若返った▼両球団に共通しているのが、監督が現役時代の背番号をそのまま着ける点。高橋監督は「24」、金本監督は「6」。たいていは監督・コーチになると重たい数字をつけるが、中日の谷繁元信監督も選手との兼任で「27」だった。最近のトレンドと言うべきか▼こと阪神に至っては、2軍監督に就任した掛布雅之氏も「31」を背負った。〝ミスター・タイガース〟として親しまれた栄光の背番号の復活を喜ぶオールドファンは少なくないはずだ▼例えばサッカーだとチームのエースナンバーは「10」。日本代表で活躍した五郎丸歩選手が注目を集めるラグビーは、フルバックのポジションが「15」。たかが数字、されど数字。スポーツに限らず、人が背負う数字が持つ意味合いは、実に深い。(C)