平成27年2月


2月28日(土)

1週間に2回、写真コンテストの審査員を務めた。寒さに負けず、早朝や夜にカメラを持って出掛け、応募した人のほとんどは60歳以上。熱意に頭が下がる▼一人が多数応募するのは良いが、いろんなパターンをそろえる人と、同じ構図で撮影のタイミングとタイトルを変えるだけの人がいる。後者はデジカメが普及し始めのころに多かった▼そのような人は減り、作品も多彩になってきたが、上位を選ぶ際の議論は白熱せず、決まってみれば常連者。ある審査員は「最近は撮影があっさりしすぎ。全国的なコンテストでも撮影者が訴えたいものを感じられない」と漏らす▼函館の豊かな風土や文化に触れ、人生経験も豊かな応募者が多いはず。目前に広がる情景や被写体に、これまでに積んできた経験から生まれた工夫を合わせて撮影すれば、コラム子のような若輩者を感服させる作品が生まれるはず…と思い、なじみあるシーンの落選作品を見つめる▼ほかの審査員は、作品のテーマが「自由」だったコンテストに対し「どんな写真を撮って応募すれば良いのだ」と言われ驚いたという。時間や場所に制約の多い立場からすれば、自由な発想で撮影できるのはうらやましい話と嘆いた。(R)


2月27日(金)

あの人は誰に愛されていたでしょうか、誰を愛していたでしょうか、どんなことをして感謝されていたでしょうか…。三つを問い掛けながら、主人公は今日も見知らぬ人への悼みの旅に出る▼直木賞受賞の天童荒太原作の映画「悼む人」を観た。事故死や病死、自殺、犯罪被害者、孤独死…供養する親族らのいない無縁仏も、等しく悼む旅。周囲の人々が織り成す死と生のドラマ▼「悼む」の原意は死を悲しみ、その悲しみに心が動くことだといい、中国では葬送で追悼の挽歌を歌う。見知らぬ死者を唯一の存在として記憶するために、いつも前述の「誰に愛され」など三つのことを尋ね、人生の本質に感銘する▼無差別テロや人質殺害事件が相次ぎ、おぞましい映像がネットで公開される。過激派の戦闘員に惨殺されたジャーナリストの後藤健二さんは、家族に愛され、子どもを愛し、紛争で苦しむ住民に寄り添って感謝された▼今月に入り、川崎市の中1男子(13)をはじめ、児童、生徒の悲しい事件が発生。石川県で小6男児(12)が5日から、長野県で小1男児(7)が18日から、愛知県では高1女子(16)が20日から行方不明に。どうか「悼む人」が尋ねないよう祈るばかり。(M)


2月26日(木)

「違法性はない」「法的に問題はない」。閣僚が政治資金問題を指摘されるたびに聞かされる言葉である。ならば堂々としていればいいはずなのに、何日か後に辞任することが少なくない▼このままだと傷が深くなる、そんな思いもあるのだろうと邪推したくもなるが、表向きの理由に、また共通点がある。「(辞任する必要はないが)国会審議に影響するから」。何とも都合のいい大義である▼西川農水相もその例に漏れなかった。違法性があるかどうか、それは自分で答えを出せることではない。どう正当性を主張しようとも説得力を持って伝わってこないのは、自分を擁護する姿勢とだぶるから▼もちろん首相だって判断はできない。閣僚は当然ながら、そもそも国会議員は疑惑を持たれること自体、特に金に関する疑惑は致命傷である。国民の代表として高度な道義感と倫理感が求められる立場だから▼昨年、表面化した小渕経産相(当時)の問題もうやむやのまま。真相は闇の中に消えるでは、政治献金を全面的に廃止すべきだという論議が繰り返されても仕方がない。そこに一石を投じたのが維新の党。来年から企業団体献金の受け取りを禁じる方針を打ち出した。(A)


2月25日(水)

国語辞典は「議論」をこう定義している。「それぞれの考えを述べて論じ合うこと」。つまり論点がかみ合うことが前提で、かみ合って初めて「議論」の意義は達せられるということである▼それに照らして国会をみていると、どうも違う気がしてならない。質問と答えがかみ合わない場面が多々あるから。その結果として、感情論に陥ったり、一方通行の発言に終わったり、堂々巡りのやり取りとなったり▼その苛立ちは品性を欠く論外な野次を誘発する。国会の野次は何度も問題視されてきている。そもそも野次に品性を求めるべくもないが、実際に批判を受けて謝る姿は決して少なくない▼今国会でもあった。17日の衆院本会議で共産党委員長の代表質問の際に行い、名乗り出て陳謝した「さすがテロ政党」という野次。19日の衆院予算委では、政治と金の問題で質疑中の安倍首相が飛ばした野次も問題になった▼いうまでもなく、かみ合わない、堂々巡りのやりとりからは、政策の本質や問題点は伝わってこない。そればかりか政治不信を増幅させる要因ともなりかねない。求められていることは難しいことではない。「『議論』をしてほしい」ということだけだから。(A)


2月24日(火)

腕を伸ばして自分の姿をスマホでパチリと撮影する「自撮り」ブーム。入院している知り合いの50代の女性から「自撮り」が届いた。病床には血色がなく、青白い顔…▼心臓が思わしくなく不整脈、腎臓は一つしかなく、すい臓も機能低下、婦人病もいくつか。今回は閉塞性動脈硬化症になった。左右の足に分かれる分岐点付近の血管に血栓があるという診断。しかも小さなコブ状のものがくっついているという▼カテーテル治療をチョイスしたが、検査結果を説明する40代の医師は「風船を膨らませるような手術だが、血管の劣化もひどく、非常に困難な手術になり、動脈が破裂する可能性もある」▼さらに「万が一のため、心臓の専門医がいる病院に搬送するかも」と3度も「万が一」を強調したという。4日間入院した女性は「難しい手術なら最初から他の病院を紹介してくれるのが本筋ではないか」と怒り▼あのまま手術していたら…。セカンド・オピニオンで車で1時間ほど離れた今の病院に来た。他の病院に紹介状を書くのは、決して医師のこけんにかかわることではない。女性は大腸にポリープができた時も画面を送ってきた。近く元気で笑顔の「自撮り」を届けてくれるだろう。(M)


2月23日(月)

スウェーデンで行われているノルディックスキー世界選手権のジャンプ女子で、日本人が銀メダルを獲得した。歓喜の表彰台に上ったのは、昨年のW杯覇者の高梨沙羅選手(18)ではなく伊藤有希選手(20)だ。高梨選手の影に隠れる存在であった2歳年上の先輩が、ひときわ輝く笑顔を見せてくれた▼多くの名ジャンパーを生んだ下川町出身の伊藤選手は、4歳から少年団でジャンプを始め、小学6年の夏には、国内最年少で大倉山ジャンプ競技場のラージヒルを飛んで注目を集めた。その後も数多くの国際大会で上位入賞を果たし、日本のエースとして期待されてきた▼昨シーズンのW杯でも2位3回、3位2回と5度の表彰台に上る活躍だったが、高梨選手の全18戦中優勝15回という前人未踏の大記録の前に、クローズアップされる機会が少なかった▼今回の世界選手権も、昨年のソチ五輪で優勝を逃した高梨選手のリベンジが一番の関心事だったが、伊藤選手の活躍により日本人女子の層の厚さが世界にアピールされることになった▼もちろん高梨選手もこの悔しさをバネに巻き返しを図ってくるだろう。今後も2人の若きなでしこジャンパーのライバル争いから目が離せない(U)


2月22日(日)

生活協同組合コープさっぽろが宅配「トドック」で、古着と古布を通年回収する。23日から札幌で先行実施され、5月からは全道的に展開する計画で、新たな取り組みとして注目されている▼物を大事に、使える物は再び利用、さらには再生して利用を…環境問題なども背景に循環型社会の形成が叫ばれて久しい。それを推進する環境負荷低減活動に、同組合は率先して取り組んでいることで知られる▼廃食油(使用済み天ぷら油)や紙パック、発泡トレイ、アルミ缶、古新聞、ダンボール…店舗とは別に、トドックでは宅配の際にお客さんの要望に沿って回収して、次につなげているが、古着古布には新たな社会性が▼回収して集まった衣類などは専門業者によって選別され、再利用できる物はカンボジアに輸出して現地の相場よりも安い価格で販売。売り上げの一部を北海道ユニセフに寄付するという▼家庭にはもう着ないけど、まだ着られる状態の服が結構、眠っている。かといってごみとして捨てるのは忍びない。だが、これによって「再び目覚めることになるなら」という思いも喚起できる。まさに繊維リサイクル率の向上に投じた一石であり、今後の広がりが期待される。(A)


2月21日(土)

道南生まれ、道南育ちのブランド米「ふっくりんこ」が日本穀物検定協会の食味ランキングで、最高評価の「特A」を初めて獲得した。「函館育ちふっくりんこ蔵部(くらぶ)」を中心とした生産者の努力のたまものだ▼道総研道南農試(北斗市)が開発したふっくりんこは2003年から本格栽培。厳しい生産基準を設け、「産地サミット」などにも取り組みながら、ブランドに磨きをかけてきた。作付面積も広がり、昨年は道南で約1万1000㌧を出荷した▼ふっくらとした食感と心地よい甘さが特徴で、和食との相性が良い。日本航空の国内線ファーストクラスの機内食や、大手回転ずしチェーンのすし米にも採用されている▼道産米が「やっかいどう米」と揶揄(やゆ)されたのも今は昔。「ゆめぴりか」「ななつぼし」は今回で5年連続で特Aを獲得。マツコ・デラックスさんのCM効果もあり、首都圏などで知名度も上がっている▼農協改革などにより、今後は産地間の競争激化が予想される。そうした中で食味の「お墨付き」を得たことは好材料。新幹線開業を控えた道南の観光振興にも弾みが付く。地元の人間としては、生産者に感謝しながらおいしいお米を味わいたい。(I)


2月20日(金)

JR北海道が新函館北斗—函館間のアクセス列車の愛称を「はこだてライナー」と発表した12日、道内の一部特急列車で客室乗務員による車内サービスを見直すという発表もあった。3月31日をもって車内販売などを終了する▼札幌から網走、稚内を結ぶ列車はすべて。札幌|釧路間は利用の少ない朝や夜に発車する列車が対象。函館発札幌行きは北斗15号、同17号。札幌発函館行きは北斗16号、スーパー北斗18号の計4本▼車内販売は以前「にっしょく北海道」が行い、1997年からJR北が引き継いだ。ワゴンに搭載できる商品が限られ、駅周辺にコンビニエンスストアが進出していることで、全国的に縮小傾向だ▼グリーン車でおしぼりや無料ドリンク、毛布の貸し出しサービスもなくなる。JR北は車両の修繕、更新などの安全対策に巨大な費用がかかるり、コスト削減の一環ということもある▼SL観光列車の休止など、あらゆる見直しが続く。そんな中、JR西日本は19日、2017年春に運行開始する周遊型寝台列車の名称を「トワイライトエクスプレス瑞風(●みずかぜ)」と発表。北海道新幹線で旅行客の争奪戦に対抗するためにも、安全確保と同時に明るい話題が続いてほしい。(R)


2月19日(木)

1カ月ほど前に運転免許の更新問題で取り上げたが、認知症の話。というのも自分も直面する問題でもあり、社会的な課題だから。現状でさえ500万人、10年後には730万人と推測されている▼誰にも言えることだが「自分は大丈夫」はない。それを分かっているから、ならないために大事とされることを実践しようともする。仕事に関わり続ける、手先や頭を使うことを心掛けることなど▼日常生活の中での予防策もいろいろいわれる。分からないことは辞書で調べろ、買い物リストは暗記を心掛けろ…加えて忘れてならないポイントが「人との交わり」「社会とのつながり」という。それは、ある調査結果にもある▼認知症になった人の約7割が、友人・知人と会うことや、買い物に出かけるのをやめたか、回数を減らしていたそう。確かにうなずける。体を動かす、会話することが心身ともに重要な意味を持つことだと思うから▼特に男性は現役を退いた後の行動が二極化するという話を聞いたことがある。過去の人間関係や新たな付き合いを大事にするタイプと逆のタイプ。この調査結果からは…認知症に要注意なのは後者といえる。自分はどっちだろうか、考えさせられる。(A)


2月18日(水)

先日発表された米グラミー賞で、ベックというアーティストが最優秀アルバム賞を獲得した。90年代以降のロックシーンで存在感を発揮、脊髄の病気を乗り越えて6年ぶりに発表したアルバムでの受賞。個人的にも愛聴した作品で、うれしく思った▼グラミー賞は日本でも受賞式をWOWOWが生中継したり、一般紙でも報道があったりして、それなりの注目度はあるのだろう。しかし、日本の音楽市場で洋楽の占める割合はどんどん下がっている▼日本レコード協会のまとめによると、2013年のCD生産額に占める洋楽の割合は15%と、10年間でシェアはほぼ半減。CD全体の売り上げが減っている中、生産額に至っては10年前の3分の1以下だ▼グラミーで最優秀新人賞など4冠を獲得したサム・スミスのアルバムの日本盤発売は欧米から半年遅れの今年1月。洋楽マーケット縮小の影響は、こうした形でも現れている▼熱心なファンならば、ダウンロードや輸入盤で既に音源を手に入れていると思われる。売り上げが伸びなければ、より日本盤のリリースが困難になるという悪循環。昔に比べて通販などで輸入盤は入手しやすくなったとはいえ、洋楽ファンには寂しい状況だ。(I)


2月17日(火)

書籍の売り上げの減少が続いている。出版科学研究所が発表した昨年の推定販売額は、前年比4・5%減の1兆6065億円。前年割れは10年連続、落ち込み幅は1950年の統計開始以来で最大だったという▼特に雑誌の落ち込みが顕著で、ピークの97年と比べると、45・5%の減少。コミックなどの週刊誌は前年比8・9%減少し、かつてブームを起こした「ギャル系」雑誌が相次いで休刊した女性誌の落ち込みが目立った▼一方、書店調査会社アルメディアによると、全国の書店の数は開店・閉店の差し引きで439店減少した。総店舗数は1万3498店で、99年と比較すると37・5%減少した▼ただ、この販売額には電子書籍や一部のネット直販の数字が含まれていない。コミックなどは電子書籍の割合が増えているため、逆に市場は拡大しているとの見方もある。書店も大型化が進んでいる。単に「活字文化の衰退」だけとはいえないビジネスモデルの変化が背景にある▼わが新聞業界も日刊紙発行部数は10年連続で減っており、約4536万部(昨年10月現在、日本新聞協会調べ)で、10年前より1割余り減少。こちらもビジネスモデルの変更が迫られているが…。(I)


2月16日(月)

「わがまちを知って、分かってもらいたい」。それは、いずれの市町村にも共通した思い。かつての時代の一村一品運動も一つの方策だったが、知恵を絞り合う姿は昔も今も同じ▼今は、というと「ふるさと納税」が頭に浮かんでくる。寄付の見返りに地域の特産物を贈る…賛否もあるが、過度に陥らなければ有効な策であることは確か。というのも「地域の産物を使う」ことが前提だから▼それは地域外に広く知らしめる手段であり、地域の産業振興策ともなろう。ただ、願わくはその人たちが実際に足を運んできてくれることだが、そこに一歩踏み込んだのが十勝の鹿追町(観光協会)の取り組み▼誕生日に来町した人に、物産店や宿泊施設、飲食店で使用できる3千円分のチケットをプレゼントする、というもの。対象月を変えて4年になるそうだが、過去3年で2千人弱が訪れ、使っていってくれたという▼その根底にある思いは「ふるさと納税」と同じ。プレゼント分の金は町内の業者に落とされ、産業振興策の意味合いも持つという点で。知ってもらうのが先か、足を運んでもらうのが先か、が違うだけ。国の地方創生策はこうした取り組みにも気配りがあっていい。(A)


2月15日(日)

秋から冬にかけての激しい「江差のタバ風」には泣かされる。箱館戦争で江差に向かっていた最新鋭の軍艦「開陽丸」がタバ風に遇い、かもめ島沖で沈没したほど▼特に江戸時代、タバ風を受けて、蝦夷地のコンブ、塩魚、魚肥などを本州に運び、本州から砂糖、反物、畳などを運ぶ交易船「北前船」の遭難が相次いだ。航海の安全を祈る船仏壇を積んでいたが、波に呑み込まれたという▼北前船は近江商人の船に代わって進出した交易船だが、海上安全を願って400年前に回船問屋らが、かもめ島に建立したのが弁財天社。明治に入って商家の信仰を集め、厳島神社と改称された▼「先人の苦労や功績を讃えよう」と漁業関係者らがかもめ島入り口の瓶子岩の海上に大きな鳥居を建立することになった。かつて観光整備する際「厳島神社の鳥居を遊歩道に並べてほしい」という要望も出ていた▼鳥居は高さ約5㍍、横幅は最大約6㍍、ケーソンの砂浜から約10㍍の海上。海上に浮かぶ鳥居は宮島の厳島神社が有名。道内初とみられ、建立400周年に合わせ、4月21日には披露する。境内の碑には松尾芭蕉の句「いかめしき音やあられの檜笠」と、タバ風の暴風ぶりがしるされている。(M)


2月14日(土)

先週末は東京に行き、移動のほとんどは地下鉄。車内でおしゃべりするのは外国人観光客がほとんど。座っている乗客の全員といってよいほどスマホを手にしている。情報入手に忙しいのだろう▼外国人でもスマホ依存症は多いようだ。ホテルで朝食中、隣の席にアジア系の母と娘が座った。娘はずっとスマホを持ったままで、母は食事を始めても娘は操作を続ける。そのうち母が何事か注意をする▼「あんた、いい加減にしなさいよ」と言っているのだろうか。しばらくするとようやく娘は食事を開始、かと思ったらスマホで撮影し、再び操作に夢中。「赤坂で朝食なう」と発信しているのだろうか▼8日付本紙、荒井三津子さんのコラムで、荒井さんの家族が知人と旅行中、一人がスマホ操作に夢中で、楽しいはずの旅行が台無しになったという。カップルの旅行で男性が最も嫌われるのは「スマホに夢中」というアンケート結果も理解できる▼大勢がさまざまな方向に向かって歩く地下鉄の駅構内。「ながらスマホ」の人を見掛けると、ぶつからないように避けるのが大変。便利ではあるが、使いようによってはさまざまな意味で危険が伴うのがスマホ、とつくづく分かった旅だった。(R)


2月13日(金)

いまさらの感がないわけではないが、ああそうか、と軽んじてもいられない。一向に減らず、逆に増え続ける国の借金である。本欄でも毎年のように触れてきたが、それも問題が多いから▼国の借金で最も知られるのは国債だが、ほかに政府短期証券など幾つかある。その合計が借金残高で、財務省が10日に発表した昨年末現在の額は1029兆9200億円。実感が湧かないほどの金額というほかない▼何せ赤ちゃんから高齢者まで含め、国民一人当たりに換算すると810万円。庶民の個人的借金なら、返済に絶望する人も少なくないだろう。それほどの金額であり、例え国だとしても尋常な姿ではない▼しかも急激に増え続けている。それは本年度末、そして来年度末の予測でも。今なお尾を引いているが、景気の低迷時代は長きに及んだ。税収が落ち込む一方で、社会保障費は増え続ける。その対応のため致し方なかった点はあろう▼だが、15年ほど前は500兆円だったのが10年ほど前には800兆円台に膨れ、そして今や。来年度の国債発行は37兆円に抑えられたとはいえ、借金残高が増えることに変わりはない。この借金は紛れもない次世代へのつけ…それが辛い。(A)


2月12日(木)

「身が透き通って、コリコリした食感の函館のイカ刺しが一番」—観光客らに人気の道南のスルメイカの3年連続不漁が濃厚となった。群れの回遊経路が沖寄りになり、海水温が影響しているようだ▼海水温の変化によって浮上したダイオウイカをスルメにしたという記事を読んだ。深海に棲むダイオウイカは快適な海水温の水域上昇に伴って、富山湾や佐渡沖に相次いで浮上、捕獲されている▼初めて巨大スルメに生まれ変わったのは長さ約7㍍、重さ約130㌔で富山湾で水揚げされたもの。水分がマイカより2割ほど多いため3層の皮をはがし、通常のイカ約5000匹を一度に加工できる乾燥室に入れ、10日かけて水分を飛ばした▼体内に含まれる浮力に必要な苦い塩化アンモニウムが、乾燥させたことによって抜けた可能性があり、マイカと同じ風味が期待されるという。近く試食会を開き、巨大イカの生態も説明する▼先月、円山動物園でダイオウイカの冷凍標本を見た。異常気象の近年は、海水温の影響で新潟以北まで出現するようになった。さらに北上し、津軽海峡にも姿を見せるかもしれない。港まつりでダイオウイカとイカール星人の「イカ踊り」を見るのも夢ではない。(M)


2月11日(水)

農協制度が約60年ぶりに変わる。全国農業協同組合中央会(JA全中)の地域農協への監査権廃止や一般社団法人化などを柱とした農協改革を、政府・自民党が正式決定した▼全中の「足かせ」を外すことにより、地域農協の自由度を高め、「強い農業」を実現するのが狙いという。組織改革が農業活性化につながるのかどうかは意見が分かれるだろう▼数年前にJA北海道中央会の幹部と話した際、「全中での議論は46対1になってしまう」と嘆いていた。中小農家の保護に目が行きがちな都府県と、日本の食料基地を自負する北海道では、目指す方向が違うという指摘だ▼一方、昨年から今年にかけて十勝や根室管内の酪農家がホクレンの生乳集荷から離脱している。「一元集荷・多元販売」に疑問を抱き、「やりがいのある酪農」を目指したという。飲用向けとして関東のメーカーに直接出荷している▼意欲ある農家を中心に、農協系統からの離脱の動きはすでに出ている。一方で農協に頼らなくては続けていけない農家もいる。競争だけでなく、農村の維持という視点も必要だ。さまざまな課題を抱える中、自由になった農協は「強い農業」実現のために、創意工夫が求められる。(I)


2月10日(火)

「リビング・レジェンド(=生ける伝説)」。この称号を得るスポーツ選手が少なからずいる。最近ではスキージャンプの葛西紀明選手が代表的だが、プロレス界ではこの人もそう呼ばれるにふさわしい▼プロレスラーの天龍源一郎選手が現役引退を表明したとのニュースが入ってきた。大相撲で西前頭筆頭まで登り詰め、後に廃業してジャイアント馬場さん率いる全日本プロレスに入団。65歳の今に至るまで、格闘技生活は半世紀を超えるというから、「お疲れさま」以外に掛ける言葉が見つからない▼全日本を振り出しにさまざまな団体を渡り歩き、ファンから猛烈な批判を浴びたこともある。それでも変化を恐れず、常に全力のファイトでありとあらゆる一流選手と戦い、馬場さん、アントニオ猪木さんの2人に勝った唯一の日本人レスラーでもあった▼プロレスに対して「八百長」や「ショー」とやゆする声もある。しかし、彼が続けた「痛みの伝わるプロレス」が多くの人々の胸を打ち、勇気と感動を与えてきたこともまた事実▼引退理由は妻の病気といい、今度は自らが支えていく番だという。たとえリングは降りても、最後まで全力ファイトの人生を貫くのだろう。(C)


2月8日(日)

自覚症状がないからと放っておくと、じわじわ忍び寄る病魔…それは生活習慣病。高齢者に多かったことから成人病と呼ばれた時代が長かったが、今は年齢も低下してきているようで▼その代表格が糖尿病であり高血圧、高脂血症などだが、問題にされる理由は二つ。一つは食生活の変化などを背景に患者が増える傾向をたどっていること。成人糖尿病人口だけでも720万人といわれている▼もう一つは他の病気の併発を誘引しかねず、逆に心掛け次第で予防ができるからということ。頭にインプットされている人も多かろうが、適度の「運動」と、バランスのとれた「食事」。それにプラス体と心の「休養」▼最近はこんな〝心がけ表現〟も。「一無、二少、三多(いちむ・にしょう・さんた)」。一無は煙草なし、二少は食べ過ぎ飲み過ぎなし、三多は多動(運動)多休(休養)多接(人や事、物への接触)をする▼それは健康寿命を保つ近道。加えて定期的に健診を受けて健康状態を把握し、その上で心掛けを…頭では分かっても現実には難しいのだけれど、決め言葉は「自分のため」。2月は全国生活習慣病予防月間…今年の月間テーマは「多休」。そしてスローガンは「休養で 病気予防し 健康長寿」。(A)


2月7日(土)

「何日か通っているけど、まったく取れないね」。3月のダイヤ改正で廃止される札幌|大阪間の寝台特急トワイライトエクスプレスのチケットを買おうと、札幌の友人はみどりの窓口に通っている▼トワイライト|は、1989年7月に運転開始。函館や五稜郭からは乗降できず、本欄でも函館駅発着を願っていたが、車両老朽化を理由に運行を終了する▼大阪では運転最終日の3月12日に“厳戒態勢”が敷かれる。ラストランを見届けようとするファンが駅ホームに集まるのはいつものことだが、トワイライトは大荒れが予想されているからだ▼トワイライトと、同じく運転を終了する北斗星(札幌|上野間)は、函館近郊を早朝か夜に走行するため、最終列車を追う“葬式鉄”の暴走はないと思われるが、運転士にストロボ光を当てるのも危険で、やってはいけない▼ネットオークションではトワイライトのチケットが500枚以上出品されている。転売目的で買い、出品していれば各都道府県の迷惑防止条例に違反する。都内では5日、臨時列車の指定席を転売目的で購入したとして男女が都迷惑防止条例違反(常習ダフ屋行為)容疑で逮捕された。最後は静かに見送りたいものだ。(R)


2月6日(金)

世界最古のハンムラビ法典にある「目には目を、歯には歯を」は「やられたらやり返せ」の復讐の場面で出てくるが、右の頬を打たれたら左の頬も向けなさいということではないはず…▼過激派組織「イスラム国」が、ヨルダン軍パイロットのカサスベ中尉を焼殺する映像を流した。おりの中で天を仰ぐ中尉にガソリンをかけ、火を放つ。この2週間で湯川遙菜さん、後藤健二さんに続く3人目の映像▼中尉は約1カ月前にすでに殺害されていたが、中尉の生存を装い、死刑囚らの交換を要求していた。これに対しヨルダン政府は、直ちにイスラム国メンバーのリシャウィ死刑囚ら2人を処刑した▼生きた人間に火を放つ。人間の残酷さが信じられない。鬼が罪人をかまどの火中に放り込む地獄絵を思い出す。湯川さん、後藤さんらの解放を祈り、その死を悼んでくれたヨルダンの人々にむごい仕打ち。過激派どころか狂気派だ▼ハンムラビ法典の本質は厳罰主義ではなく、刑罰の上限を定めて倍返しのような過剰な復讐や報復合戦を防ぐことにある。報復の代わりに対価で賠償する規定もあったという。難民が多い中東諸国に対しては日本は人道的な支援にとどめておきたい。(M)


2月5日(木)

「79—0」「67—0」。サッカーでは信じられない点差だが、2年前のナイジェリアリーグで2試合続けて実際に現れたスコアだ。八百長としてチームや関係者に厳しい処分が下された▼ナイジェリアの例は極端すぎるが、ヨーロッパ各国のリーグでも八百長疑惑は後を絶たない。近年では2006年にイタリアの名門ユベントスが優勝取り消しと2部降格の処分を受けている▼日本代表のアギーレ監督がスペインのクラブを率いていた11年当時の八百長疑惑により、解任された。スペイン検察当局による訴追が裁判所に受理されたため、日本サッカー協会は代表の活動に影響が出ることを避けるために決断した▼日本代表の監督が成績不振などではなく、八百長疑惑で解任というのは前代未聞。優秀な人材を欧州リーグなどに求めると、八百長関与のリスクがある人物もいるという苦い教訓を残した▼今後の監督選考は手腕に加え「身体検査」も不可欠になる。同時に協会の任命責任も問われる。アジアカップで準々決勝で敗退した代表は立て直しが急務。6月にはワールドカップ予選が始まる。60点とか70点でなくても、アジアレベルでは大量得点で圧勝する日本代表が見たい。(I)


2月4日(水)

アベノミクスの当面の焦点は、締まったマインドを緩め、消費を促す賃上げの行方。政府が再三、経済団体にベア実施を働きかける中、2月に入って春闘が本番を迎えようとしている▼ただし、それは利益を上げ、法人税減税の恩恵をより受ける大企業の話。経団連が早くから賃上げに前向きな姿勢を示し、一方の連合は2%以上のベアを求めている。アップの認識で一致しているのだから後は落としどころの模索▼問題は対応できる企業が限られているということ。景気が持ち直していると言われる関東でさえ、実際に賃上げの実施意欲を明確に持っている主要企業、金融機関は3割ほどといった調査結果もある▼そうだとしたら、まだまだ景気回復を実感できないでいる地方や中小零細の企業は推して知るべし。「大企業の賃上げ情報が一人歩きされるのは迷惑」。ある経営者の言葉だが、その持つ意味は大きい▼消費税の税率はアップし、極端な円安も加わって、値上がり話も次々と。消費を伸ばすためには、それに見合うだけの賃上げが必要だが、応えられる企業はどれだけあるのだろうか。政府は大企業に牽引役を委ねているようだが、それだけでは…期待する答えは難しい。(A)


2月3日(火)

先日、青森の新聞社が取り上げたニュースが話題を呼んでいる。各地で導入が進んでいる発光ダイオード(LED)型の信号機が、従来のように発熱しないため、雪が付着しやすく、判別しにくい状況になる事例が頻発しているという。人海戦術による除雪だけでは対応が間に合わず、冬場の交通障害の要因のひとつになっている▼「えっ、なにをいまさら」というのが率直な感想。函館市内でも4、5年前から同じような状況に遭遇する。特に交通量の多い交差点では、周りの車の様子をうかがいながら恐る恐る車を前進させなければいけないことも少なくない▼すでに、表明に特殊な凹凸をつけたり、信号機に傾斜を付けることで雪を落ちやすくする新型も開発されていて、一定の効果は証明されている▼しかし、環境に優しく長期的な経済性が期待されて導入されたLED信号機だけに、従来型をそのまま使用しているところが大部分。だからといって大きな事故を引き起こしてしまえば本末転倒だ▼今回の記事によれば、青森県内に昨年ワーキンググループが発足し、知恵を絞っているとのこと。少ない費用で、LED信号機の安全性を高める方法を一日も早く打ち出してほしい。(U)


2月2日(月)

「安倍(首相)、勝つことのできない戦争に参加するという、不用意な決定のために、このナイフは健二を殺さなければならないばかりでなく、今後、どこでも日本人を見つければ殺害し続けることになる」▼日本時間1日早朝、過激派組織「イスラム国」が、フリージャーナリスト、後藤健二さん(47)とみられる男性を殺害する動画がネット上に流された。ひざまづく男性にナイフを振りかざして黒づくめの戦闘員が発した日本政府へのメッセージ▼後藤さんは昨年10月下旬、知人の湯川遙菜さん(42、後に殺害される)を救おうとシリア入り、2人とも拘束され、先月29日には過激派の女性死刑囚との交換解放の期限が24時間と宣告されていた▼後藤さんは紛争地域で傷つく市民や子どもたちに寄り添い苦しむ姿を発信。妻には「2人の娘に会いたいよ。私も(湯川さんと)同じことが起きないように」と訴えていた▼刻々と落ちる砂漠の砂時計は非情だった。殺害の理由に、日本がイスラム国と戦う連合に参加したことを挙げている。恐怖の情報ばかり流れ怒りと不安と憎悪の1週間。安倍首相は「非道で卑劣きわまりないテロ行為」と怒り心頭だが冷静に対処しなければ…。(M)


2月1日(日)

衆参両院が積み残している課題に選挙制度改革がある。裁判所が違憲判断を下している一票の格差問題に加え、多過ぎとされる定数問題が叫ばれて久しい▼ところが、院としての改革議論は党利党略の域を出ず、結局、委ねたのが有識者会議。議長の下に設けられた衆院選挙制度に関する調査会で、制度そのものの見直しも含め、これから議論が本格化する▼ただし、これでも危惧がないわけでない。調査会の報告を各党が無条件に受け入れるかどうかが定かでないから。この前提が崩れるなら調査会の存在自体が意味を失うことになるが、その懸念は消えていない▼政治不信とも重なり合うが、自民党総裁の安倍首相はそんな見方を払拭した。30日の衆院予算委で「(報告には)責任を持って自民党として賛成する」と明言、さらに「他党にもそういう方向を示してもらいたい」と▼この発言で調査会の存在感は保たれた形だが、ただ結論が出るのは2016年度というから、2年ほど先になる。この間に解散総選挙がないとは限らない。なお違憲状態での選挙という可能性があるということで、改めて調査会の精力的な議論が望まれる。(A)