平成27年3月


3月31日(火)

球児たちが連日熱戦を繰り広げている春の選抜高校野球大会。今回は北海道代表の東海大四(札幌)がベスト4まで進む快進撃を続けており、道民の期待も大きく膨らんでいる▼かつては優勝争いと縁遠かった北海道勢だが、2004年夏の全国大会で駒大苫小牧が初優勝を飾ると、05年夏に連覇を達成。3連覇がかかった06年夏は、エース田中将大投手(現ヤンキース)と早稲田実業の斎藤佑樹投手(現日本ハム)との球史に残る決勝再試合の投げ合いの末、惜しくも準優勝に終わったが、北海道のレベル向上を証明する結果となった▼それでも北国チームには冬場の練習不足というハンディがつきまとう。あの最強期の駒大苫小牧でさえ、05年春は2回戦で姿を消している▼東海大四の4強進出は春の大会では道勢として22年振りの快挙。しかも主力メンバーのほとんどが道内出身者。まさに北の地で生まれ育ち北の地で切磋琢磨してきた子どもたちが、冬の厳しい環境を克服し、全国の精鋭としのぎを削っているのだ▼ところで函館地区のチームは、春夏含めてもう18年間も甲子園の土を踏んでいない。東海大四の活躍が道南球児の魂を燃え上がらせてくれることを期待したい。(U)


3月30日(月)

♪天に代わりて不義を…わが軍…わが兵〜。終戦前の小学高学年のころ、軍歌を歌いながら裏山で戦争ごっこ。兄たちに続いて軍隊に入ると張り切って…。国会の答弁を聞いて思い出した▼国会で安倍晋三首相が自衛隊を「わが軍」と呼び、三原じゅん子議員が「八紘一宇」を紹介。首相は他国の軍隊との共同訓練に触れて「わが軍の透明性を上げていくことに大きな成果」と「自衛隊=軍隊」論をぶった▼菅義偉官房長官も「国際法上では軍隊であり『わが軍』で間違いない」とフォロー。憲法上の厳しい制約から「自衛隊は通常の観念の軍隊とは異なる」というのが政府の見解だったはず▼「八紘一宇」は70年ぶりに聞いた。八紘は四方と四隅で全世界の意、一宇は一棟の家で世界を一つの家にする意。日本のアジア侵略を正当化するスローガンとして、子どもの体にもしみ込み、多くの悲劇が繰り返された▼三原議員は多国籍企業への課税問題を取り上げた際に「日本が建国以来、大切にしてきた価値観」と紹介したが、四文字の言い回しは必然性がない。新たな安全保障法制が整備されれば、自衛隊の活動は質量とも拡大される。地方選に「わが軍」の軍歌はふさわしくない。(M)


3月29日(日)

北国にも自転車の季節がやってきた。函館などは今冬、雪が少なかったことから、早めに季節入りした感があるが、街中を走る自転車の増加に比例して懸念されるのが転倒や衝突の事故▼子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層が利用する交通手段ということもあるが、現実問題として全国的に絡む事故が増えている。被害者となる自動車との接触などが圧倒的に多いのだが、その一方で…▼近年増えているのが歩行者を負傷させ、加害者の立場になる事故。昨年1年間の発生は全国で2551件。10年ほど前に比べて4割近く増えているという。当然ながら責任を問われ、補償が求められてくる▼だが、その意識は希薄なのが実情。それは低い損害賠償保険への加入率が物語っている。誰もが遭遇する可能性があるのだから、この現実を見過ごせない…兵庫県が打ち出したのが条例による加入の誘導▼先日の県議会で(賠償保険への)加入を義務付ける全国初の条例を可決した。骨子は店頭での加入有無の確認をはじめ、未成年者には保護者、社業使用では企業に加入を義務付けるなど。施行後の動向が注目されるが、条例の有無にかかわらず、「自分は大丈夫」には何の保証もない。(A)


3月28日(土)

統一地方選挙のトップを切って、北海道知事選挙が26日に告示された。4月3日には道議選が告示され、その後は市町村の首長と議員の選挙が控える。昨年末の衆院選に続き、4月のまちは選挙ムードに染まる▼道や道内市町村にとって、最大の課題は人口減少だろう。選挙人名簿登録者数でも渡島・桧山は38万5190人と、4年前から比べると1万4610人減っている▼知事選の第一声で、現職の高橋はるみ氏は「自治体消滅の危機から地域を守るのは自分に与えられた使命」とし、新人の佐藤のりゆき氏は「全市町村に研究所、工場をつくり若い人の働く場をつくる」と、それぞれ意欲を示した▼今回の統一選で、知事選が与野党対決となったのは北海道と大分だけ。対決の構図が分かりやすいだけに、人口問題にとどまらず、原発などのエネルギー問題や産業振興策なども、具体的なビジョンを示して戦ってほしい▼そして選挙のたびに気になるのが投票率。東京都議会のセクハラやじ、兵庫県議の号泣会見など、昨年は地方議員の資質を問われる問題が相次いだ。そうした議員を当選させるかどうかは有権者の責任でもある。厳しい目で候補を見つめ、投票所に向かいたい。(I)


3月27日(金)

日々の生活にコンピューターが欠かせない時代になった。テクノロジーは驚異的な速さで進化を続け、やがては人間の能力を完全に上回る時代が来るのではとも言われる。古くから庶民に親しまれる将棋の世界もまた然りで、コンピューターが人間をしのぐ場面が珍しくなくなった▼プロの棋士と将棋ソフトが対決する「電王戦」が28日に函館で開かれる。5対5の団体戦で全国5カ所をサーキット。大政奉還が行われた二条城(京都)、坂本竜馬生誕の地高知を回り、3局目に戊辰戦争の舞台・五稜郭を選んだ▼過去3回の電王戦はいずれも将棋ソフトの勝ち。今回は「歴史の転換期」がテーマというだけあって、考え抜かれた会場選びといえるだろう▼主催者は本紙に「人間とコンピューターそれぞれの強みと弱みを楽しんで」と見どころを説明していたが、先週21日の対戦でそれがもろに表れた。プロ棋士が成れる角をあえて成らずに王手を掛けた「奇手」に対し、ソフトが対応できず王手を放置したため、反則負けを取られた▼ここまでの対戦は棋士2勝と、人間が意地を見せている。旧幕府軍と新政府軍が日本の未来をかけて戦った五稜郭での、白熱した対局に期待したい。(C)


3月26日(木)

サラリーマンの転勤シーズン。歓送迎で居酒屋やバーが賑わう。スナックのママから後輩の常連客にツケで飲んだ請求書が毎月届いている。その飲食代のツケの時効が5年に延びそうだ▼昭和¥30¥年代まで八百屋や魚屋、菓子店などに「大福帳」なるものがあった。ツケで買って大福帳に書き込み、年に一度、大みそかに支払う仕組み。今のカード払いのようなものだが、売り手と買い手の信頼があってこそ成立▼大福帳から始まった「ツケ文化」ともいわれる。法制審議会の仮案によると、飲食店や料理店、旅館などのツケの債権は1年から5年になる。ツケた客に請求しなければ5年たつと〝消滅時効〟になるという▼就職して「ツケておいて」で通じると、一人前の社会人になった気分がした。ハシゴしながら「月々にツケ見る月は多けれど、ツケ払う月は次の月」と戯(ざ)れ歌も出た。ツケは店と客の潤滑油でもあった▼ママが請求書を持ってきたら居留守を使ったり…。消滅時効が5年になるからといって、一時的に支払いから逃れてもツケは溜まって、ボーナスでも払いきれない。大福帳の時代、支払日になると、とんずらして夜逃げする客もいたという。やはりニコニコ現金払いが一番なのか。(M)


3月25日(水)

景気は回復の流れにある、と政府は胸を張る。確かに大企業はアベノミクスの恩恵を受け、今春闘でも早々と賃金を上げているが、国民の多くが見る目は依然として厳しいようで▼皮肉にも政府機関の内閣府が先日明らかにした社会意識に関する世論調査が、この認識のズレを教えている。「現在の日本で悪い方向に向かっているのは」との設問に対する答えは、上位三つに「景気」「物価」が入っている▼複数回答で最も多かったのは「国の財政」(39%)だが、続く「物価」が31%。そして「景気」は30%。1年前の調査に比べ「景気」は11%増え、期待感が大きく後退している姿が透けてくる▼それは政治に対する不満にも連動する。「国の政策に民意が反映されているか」に対する答えが物語っているが、「(反映)されている」の28%に対し、「されていない」は69%。かなり厳しい評価というほかない▼「経済的にゆとりと見通しが持てない」が46%もあるのは、その一つの裏付け。だが、それにも増して気にかかるのは、この認識が「景気」同様、10%も増えていること。「期待しているが」が「期待していたが」にならなければいいが…そんな思いが込み上げてくる。(A)


3月24日(火)

広島、長崎に原爆を投下させたトルーマン米大統領は罪の意識を持つことはなかったという。戦後70年、核のボタンを押すことなく、かろうじて人類は生き延びてきた…▼そんな折り、ロシアのプーチン大統領が1年前にクリミア半島を一方的に編入した際、軍幹部に核兵器使用の準備を指示していた。国営テレビで「核戦力を戦闘準備態勢に移行する用意があった」と言明した▼「クリミアは歴史的にわれわれの領土であり、そこに住むロシア人が危険にさらされているのは放置できない」と。ロシアの核兵器使用の基本方針は大量破壊兵器などの攻撃を受けた場合に限られている▼一連の脅し発言は領土編入に欧米などの干渉を排除する狙いがある。日本は数多くの領土問題を抱えており、周辺国といざこざが絶えない。「力による現状変更」がまかり通るのなら「核兵器使用する」と脅されかねない▼核兵器だけではない。サリンが使われたオウム事件でもまだ被害者が苦しんでいる。イスラム国は塩素ガスを使って子どもたちを殺傷。日本を含む非核保有12カ国は核保有国に核戦力の透明性、削減交渉の実施などを要望した。すべての核の死のボタンから手を離そう。(M)


3月23日(月)

ネット上で、警察の不審者対応についての議論が起こっている。東京の赤羽警察署が、公園で遊ぶ児童に「さようなら」と声を掛けた40代の男性の特徴を「不審者情報」としてホームページに掲載したのだ。「東京では普通にあいさつするだけでも不審者扱いされるのか」と驚きの声が上がった▼子どもを犯罪から守るための不審者情報のメール配信サービスは、全国各地で行われている。犯罪抑止につながっているという評価の一方で、日常のあいさつ程度でも不審者扱いされてしまうのも現実だ▼これについて「地域のコミニュティーがしっかりしている地方では、怪しい部外者が侵入してもすぐに分かる」という意見の一方、「子どもを狙った犯罪は地方でも起きている。子どもに警戒心を与えず優しく近づく人間ほど怪しいので、警察の対応は仕方がない」との声も▼皮肉なことに、今回問題となった赤羽警察署がある東京都北区は、地域環境浄化活動の一環として「あいさつ運動」を推進し、キャンペーン活動にも積極的だという▼ごくあたりまえの〝あいさつ〟が、住民に不安を与えるシグナルになりかねないこの時代。寂しい世の中になりつつあるのは間違いない。(U)


3月22日(日)

アメリカのハードロックバンド、KISSがデビュー40周年ツアーで来日した際の記事がきのうの本紙に掲載された。中学生のころに初めてちゃんと聴いたロックバンドだったので、興味深く読んだ▼KISSが昨年4月に「ロックの殿堂」入りを果たした際、米ロックバンドのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロは「キッスは評論家のためのバンドではなく、ファンのためのバンドだ」とスピーチした▼派手なメイクと衣装で繰り広げる豪華なステージ、シンプルなロックンロールの楽曲などは、デビュー当時から評論家の評価が低かった。斬新なサウンドや知的な歌詞とは無縁で、「KISSが好き」と言えば、ロックファンの中でも軽くみられた▼トム・モレロはハーバード大卒で政治家の秘書も経験した、いわばインテリのミュージシャン。スピーチは全世界のファンの思いを代弁した▼一時、KISSはメイクを落として活動したことがあったが、すぐにやめてしまった。メンバーのジーン・シモンズは65歳になった今も、ステージで火を吐き、宙吊りになって演奏することを続ける。「ファンのためのバンド」を40年以上貫く姿は、潔くかっこいい。(I)


3月21日(土)

いつの世も、悪いやからはいるものだが、お年寄りから多額の金をだまし取るやからはその筆頭。オレオレに始まって架空請求だの手を替え、品を替えて。もはや厳罰に法改正するしかない▼「そんな電話を受けたら、まず家族に相談するなり、本人に確認を」など、機会あるごとに自衛策が啓蒙されている。さらに対策電話の開発や金融機関の協力などもあるが、それでも被害が後を絶たない▼振り込みが難しくなったら、宅配・郵送させる手口が登場し、そして直接持ってこさせる手渡し型も。道警の統計によると、昨年、道内で発生した被害は259件を数え、その被害総額は12億5千万円▼さらなる啓蒙が求められるが、防止対策として注目される試みが道北の興部署と地元金融機関でされているという。北海道新聞が報じていたが、それは一定金額以下しか引き落としできない手続きを促す呼び掛け▼本人の申し出によって可能ということで、同署の啓蒙は「ATM一日5万円限度」。設定金額はともかく、多額の金を急ぎ用意できなくなるのに加え、本人確認などの時間稼ぎができる。この取り組みの期待感はそこにあるが、広がるかどうか…鍵はお年寄りが握っている。(A)


3月20日(金)

過去最高水準の賃金ベースアップ。大都市圏で上昇に転じた地価。景気のいい話が相次いで報じられる中で、何か別世界の出来事のように感じている地方の人間は少なくないと思う▼自動車、電機の大手メーカーは昨年を上回るベアを回答。円安を背景に各社の業績は好調だった。デフレ脱却のために安倍政権が要請していたことも影響しているだろう▼一方の地価。東京、大阪、名古屋の三大都市圏や札幌市は商業地、住宅地とも2年連続で上昇。海外マネーを含めた不動産投資が活発になっているという。新幹線が開業した金沢駅前の商業地の地価上昇率は17・1%と全国一だった▼道南、函館はどうか。賃上げ交渉はまだ先だが、輸出産業が少なく中小企業が多い道南では、円安は原材料費の値上がりなどマイナス要因ともなり、大幅なベアは望めないのが実情だろう。地価も一部で下げ止まり傾向が出たとはいえ、渡島管内は24年連続、桧山管内は15年連続で下落した▼今後も大企業と中小企業、大都市圏と地方の格差がさらに拡大するのではないかという懸念はぬぐえない。道南にとっては来年3月の新幹線開業が、地域経済再生の最後のチャンスになるもしれない。(I)


3月19日(木)

わが国は、消費する食料を自国生産で賄えない現状が続いている。それも半端なレベルではない。生産調達ができているのは消費される量の半分以下で、完全自給など夢のまた夢▼“食料安保”という言葉を聞いたことはあろうが、それほどに食料の確保は、どの国にとっても最重要な政策課題。今、食料の輸入が止まったらどうなるか、「仮に」の話だが、国内がパニックに陥ることは想像に難くない▼だから、自給率を上げなければ…政府は2020年度までに自給率(カロリー計算)50%を目指すとしてきたが、少しも上向く兆しはなく、現実は4年連続して39%にとどまったまま。そこにTPP問題が影を落としている▼「もはや50%は無理」。そんな指摘に政府も白旗を上げた恰好で…「2025年度までに45%」。農水省は17日に明らかにした農業政策に関する基本計画の原案の中で、目標を下方修正する考えを示した▼50%でも45%でも、導く鍵が具体的な政策にある、という点では同じ。同省が言う農地の集積などによる生産コストの軽減で生産力を高め、売れる農産物づくりを進めて輸出の拡大を図る、などは間違っていないが、言うは易く行うは難し、に変わりはない。(A)


3月18日(水)

1970年代や80年代の学園ドラマでは、ラグビー部が舞台という設定が多かった。当時、メジャーとはいえなかったラグビーを題材にしたのは、ボールと選手の顔が近く、タックルなど「絵になる」要素が強いからだったという▼2019年のラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が札幌でも開催されることが決まった。オリンピック、サッカーW杯に次ぐスポーツ大会で、前回大会は全世界で40億人が視聴した▼一方、ラグビーの競技人口は減っている。「花園」で行われる全国高校大会の参加チーム数は91年度の約1500がピークで、本年度は半分近くにまで減少している。中には予選参加が2チームという県もあった▼こうした中で、W杯開催が本当に盛り上がるのかと不安視する声もある。国内のトップリーグの観客動員は伸び悩み、日本代表は過去7回のW杯で1勝しかできていない▼道南はラグビーが盛んな方で、高校予選には8校が出場。「間近で見る好機」と関係者は競技普及を期待する。「絵になる」スポーツなのだから、世界の一流選手の戦いは楽しみだ。札幌ドームを満員にして、ラグビーを盛り上げる道民の姿を世界に発信できればいいのだが。(I)


3月17日(火)

自分が18歳だったとき、政治のことを考えたことなど、ほとんどなかった。30年以上前の話だが、周囲もほぼ同様だったし、今の18歳にしても、あまり変わらないだろうと思う。選挙権があっても、投票していただろうか…▼与野党6党が選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案を衆院に提出し、今国会中にも成立する見通しとなった。早ければ来年夏の参院選から適用されるという▼世界の9割以上の国や地域が18歳から選挙権を認めており、ようやく世界標準に達するとの声も。若年層が政治に関心を持つための契機になるとの期待もある▼一方で課題も。民法や少年法での成人は20歳以上で、整合性をどうするのか。今でも20代や30代の投票率が全国的に低い中で、若い世代を投票所に向かわせるためには、どうすれば良いのか▼函館市は1月の成人祭で「函館に欲しいもの選挙」を実施、今回の統一地方選で函館大学に期日前投票所を設ける。北斗市では2011年から高校生の事務員を採用。いずれも若者に選挙への関心を高めてもらうためだ。せっかくの選挙権を無駄にしないため、教育とともに、こうした取り組みも加速させていく必要がある。(I)


3月16日(月)

3月も中旬を迎え、植物は息づき始め、すっかり春めいてきた。まさに躍動感を覚える季節だが、そんな思いを後押しするかのようにサクラの開花、予報情報が飛び込んできている▼サクラは見る人を感動の世界に誘う。その咲き乱れる様は圧巻というほかない。松前が教えるようにソメイヨシノをはじめ種類が多々あり、南から北へと開花時期が北上していくから、観光資源としての価値も▼開花の皮切りは…梅や桃のような赤っぽい色をつける沖縄のヒカンザクラ(緋寒桜)と、ピンク色で長期間咲き続けるのが特徴の伊豆半島のカワズザクラ(河津桜)。いずれも2月中旬ごろから花をつける▼そして登場するのが最も多いソメイヨシノ。日本気象協会などがその開花予報を発表しているが、福岡や熊本などは今月22日で、大阪や京都、東京は26日。あと2週間もすると南から北へと列島を駆け巡る▼気になる函館・道南だが、7日の同協会の発表によると松前は4月の29日、函館が30日。開花から満開までほぼ1週間といわれ、満開のピークがゴールデンウイーク期間中にかかるかどうかは、今後の気象次第。「なんとか間に合って!」。そう祈るしかない。(A)


3月15日(日)

クリミア半島に日本の「宇宙人」が現れた。ロシアが編入の根拠とした住民投票について、鳩山由紀夫元首相は「平和的かつ民主的に行われた。軍事的な影響はなかった」と発言、波紋を広げている▼ロシアはクリミアの住民投票前に軍を投入して実効支配を固めた。日本政府は「クリミア編入は断じて認めることはできない。首相まで経験した政治家として、あまりにも軽率で極めて遺憾」とする▼民主党も「日本政府の考え方とは全く違うし、あってはならないこと」(岡田克也代表)、「コメントに値もしないような国益を損なう行為で、激しく怒っている」(枝野幸男幹事長)と強く批判した▼「住民投票での領土問題解決は世界史上、画期的」と称賛。「沖縄にこれ以上米軍基地を造らせないよう協力してほしい」とクリミア住民に呼び掛けた。「辺野古工事に着手すれば流血の騒ぎになる可能性がある」とも▼クリミア住民が協力してくれるとでも思っているのか。政府にも民主党にも迷惑な話。宇宙人だから何を言っても受け入れられるとは限らない。北海道選出の政治家。もし政界への未練があるのなら、北方領土返還で、合法的な「日本への編入」を呼び掛けるべきだ。(M)


3月14日(土)

「検査で(認知症の)恐れがあると判断された場合には、医師の診断書の提出を求める」。この10日、75歳以上の人に対する認知症検査を強化する道交法改正案が閣議決定された▼運動神経、反射神経、注意力、観察力など、人間の能力は高齢になるにしたがい衰えていく。それは状況認識やとっさの判断が鈍くなることも意味しているが、高齢者の交通事故が問題になるのもそれ故▼一昨年のデータだが、75歳以上の人が起こした死亡事故は全国で458件。そう多くないように映るが、見逃せないのはその3割に認知能力の低下がみられたこと。対策として最も望まれるのは免許証の返納だが…▼一昨年は8万7千人にとどまっている。長年、車の利便性を享受してくると、そう簡単に手放せない。特に地方では買い物や病院通いなど生活の足になっている現実がある。かと言って、事故の現実も看過できない▼事故は悲惨で、起こしてからでは遅いから。2カ月ほど前の本欄でも取り上げたが、認知症検査の強化理由もそこに。その一方で忘れてならないのが、返納しやすい環境づくり。コミバス運行の充実など交通難民対策をどう考えていくか、その課題もまた重い。(A)


3月13日(金)

あるスポーツ競技の北海道と札幌市の協会トップから、全道、全国大会を北海きたえーるで開催することが年々難しくなっていると聞いた。理由は経費面と予約が困難なこと▼アマチュアがメーンアリーナ全面を一日使う場合(入場料なし)、使用料は約23万、土・日・祝日は約34万。ちなみに今夏オープンの函館アリーナは平日の同条件で5万円▼小学生チームは、子どもを大会場でプレーさせたいという親の気持ちが強く、大会運営にも協力的だが、中学生からは他の教育面も重要で、スポーツ活動にお金が回らないことも実情のようだ。協会にとって高額な使用料確保は頭が痛い▼プロバスケットのレバンガ北海道も使用確保が課題だ。日本協会の新リーグ参加条件に、5千人規模のホームアリーナを確保して年8割の主催試合を行うとある。リーグ戦日程が決まる1年以上前に予約が必要で、安定確保は難しい▼イベントも多く、さらにレバンガを優先させれば一般の利用は難しくなる。函館アリーナもこれまで市民体育館で汗を流してきた団体や個人の使用が難しくなれば、市民活動の後退につながりかねない。老若男女が集まり、活気に満ちた使用スケジュールであってほしい。(R)


3月12日(木)

プロ野球のオープン戦と大相撲春場所が開幕。マナーよく気持ちよく投げた広島・黒田投手の凱旋登板に感動した。初場所で史上最多33度目の優勝を果たした横綱・白鵬の審判批判がまだ心底に残っている▼テレビにアップされるプロ野球選手がツバを吐いたり、ガムをかんだりする姿に不快感をもつファンは少なくない。球場は選手たちが働く場所で、その聖地にツバを吐く行為は言語道断。甲子園では球児が土を持って帰るのだ▼福岡ソフトバンクの工藤監督の「試合中のツバ吐きダメ、ガムかみダメ、茶髪ダメ」のチーム方針は大歓迎。ツバを吐いたグラウンドに滑り込んだり、クチャクチャとガムをかむ悪いマナーは子どもに見せたくない▼白鵬は取り直しの一番に「勝っている相撲だった。子どもが見ても分かる」と審判の軍配にケチをつけた。相撲道は勝者をたたえ敗者を敬い、礼節と格式を重んじる日本の伝統文化であり、格闘技とは違う▼スポーツをしている子どもたちが「何をしてもいいんだ」と捉える懸念が残る。今年はファンに不快感を抱かせないプロ野球が見たい。すべてのスポーツには審判の判定が存在する。競技者も審判も心技体のプレーを見せるべきだ。(M)


3月11日(水)

北陸新幹線開業が迫り、テレビや雑誌で登場が多い北陸地方。数日前、函館市内の喫茶店で高齢の女性が「来年の今ごろは函館が話題になるんだね」と期待していた▼コラム子の父は富山市役所に勤務していて、約40年前は北陸新幹線に関する仕事をしていた。政府が整備計画を決定するも、計画の凍結と解除があったころだ▼小学3年の保護者参観で、父から見せてもらったパンフレットを基に資料を作り「北陸新幹線について」を発表した。教室はしらけムードで、同級生から「どうせ富山に新幹線は来ない、だら(ばか)か」と言われた▼84歳になった父に電話で「いよいよ開業だね。今の気分は」と聞くと「そりゃうれしいさ。そっちが乗って帰ってこい」だった。「来年、北海道新幹線とつながったら乗っていくよ」と答えると「それまで健康でいなさい」と言われた▼喫茶店にいた女性に「新幹線に乗ってどこに行きたい?」と聞くと「木古内でいい」と即答。「世界一の青函トンネルを新幹線が走るのだよ」と言うと「八戸に行って魚食べて来るかな」と変わり、「その前にあの世に行かないようにしないと」と大笑い。一年後の目標に向け、お互いの健康第一を話した。(R)


3月10日(火)

その気がなくても、いつの間にか頭に刻み込まれている…そんな新聞広告、テレビCMがある。身近な例として、マツコ・デラックスさんが登場する道産米のCMシリーズはその一つ▼いま放映されているのは複雑編。コメントを聞いてすぐ思い浮かぶ人も多いだろお。「『ゆめぴりか』『ななつぼし』のほかに『ふっくりんこ』『きたくりん』もあるの?複雑…」。道南の住民にとってはうれしいフレーズである▼というのも「ふっくりんこ」「きたくりん」とも、道南ゆかりの品種だから。先日の本欄でも触れられたが、「ふっくりんこ」は日本穀物検定協会の食味ランキング(昨年産米)で最高評価の特Aにランクされたばかり▼そして「きたくりん」はというと、減農薬栽培が可能で、食味も良く、今後が期待される品種。特A3品種に追いつくのは時間の問題といわれ、だから同列に扱われたと解釈ができる▼少し前までのCMは…。「『ゆめぴりか』って確かにおいしいけど、私は『ななつぼし』が好き!」。「すみません。『ゆめぴりか』って何ですか」を皮切りに4年。その効果もあって知名度は確実に上がった。改めて広告、CMの力を思い知らされる。(A)


3月8日(日)

「3・11」の東日本大震災から4年。死者1万5890人、行方不明2590人、避難者22万9897人に上る(2月末現在)。復興は生活再建や地域経済の復活を目指す〝再生期〟に入った▼しかし、東北の主力産業の漁業は復興が遅れている。魚が獲れても水産加工場が稼動できない。元従業員らが給料のいい建設業に取られているから。津波に呑み込まれた娘の手掛かりを求めて潜水捜索を続ける父親もいる▼震災の惨状を見つめてきたのが陸前高田の「奇跡の一本松」。江戸中期に約7万本が植えられた松原。大津波で壊滅したものの、樹齢173年の1本だけが残り、復興への「希望の松」とも呼ばれた▼根が腐って枯死したが、幹を防腐処理し心棒を入れて補強、枝葉を複製し、3年前にモニュメントとして復活。市は使わなかった枝などの有効活用をモンブランに依頼▼モンブランは枝をドイツに運び、万年筆に製品化。木材は胴体とキャップに。キャップリングには「Rikuzentakata/11/03…」の刻印。1本48万1千円(113本限定)で11日に発売。売り上げの2割は復興支援に充てられる。「希望や奇跡の言葉を伝えるのは一本松だけだった」と書き込もう。(M)


3月7日(土)

「はやぶさ」(北海道新幹線)が北の大地をさっそうと走るまで、あと1年。間もなく開業する北陸新幹線のスポットの当てられ方を見るにつけ「函館・道南でも」と、否応無しに期待が高まる▼大げさにいえば、今世紀中でも数えるほどしかない地域売り込みのチャンス。全国区の夜景に加え、歴史的観光資源に新鮮で豊富な食…観光地としての顔は知られているが、現状で十分かといえば、そうではない▼だから残る1年の種まきが大事であり、鍵を握る。当然ながら、その任を「官」ばかりに委ねては限界がある。自分たちも業界や企業も、できることで何かを。幸い、その熱意の行動が広がってきた▼函館中央三菱自動車販売が魚長食品などの協力を得て、ターゲットの東京(三菱本社ショールーム)で行ったミニ物産展などはその事例。2日間で訪れた1300人に〝食〟を売り込み、新幹線の開業をPRしたという▼今、連日のようにテレビのワイドショーなどで金沢が取り上げられている。来年の今ごろは…函館・道南も同様に扱われるであろうことは容易に想像できる。それもうれしい後押しだが、まずは自分たちで。もはや、まったなし。その時間は刻々と過ぎていく。(A)


3月6日(金)

「ラッスンゴレライ」をテンポよく繰り返す「8・6秒バズーカー」、風貌に似合わぬ美声で「あったかいんだからぁー」と歌う「クマムシ」が人気だ。「リズムネタ」「歌ネタ」と呼ばれる芸風だ▼リズムや音楽をお笑いに取り入れるのはかなり昔からある。クレイジーキャッツやドリフターズはもともとバンドであり、コミックバンドとしてのネタも披露していた▼近年でも「何でだろう」(テツandトモ)、「そんなの関係ねえ」(小島よしお)、「武勇伝」(オリエンタルラジオ)、「あるある探検隊」(レギュラー)、「ラララライ体操」(藤崎マーケット)、「もしかしてだけど」(どぶろっく)などが思い浮かぶ▼こうしたネタは一気にブレークし、近年は動画投稿サイトなどの影響で流行の波に乗るスピードも加速している。ただ、拡散が早い分だけ、賞味期限は短くなる傾向もある▼先に挙げた芸人のうち、今も頻繁にテレビに登場しているのはごく一部。「芸人は2回売れないといけない」という説もある。あまたいる芸人の中で、ブレークするのも大変だが、売れ続けることはもっと難しい。どんな世界でも生き残るためには、次の一手が必要になる。(I)


3月5日(木)

6日は子どもたちも巣立つ「啓蟄(けいちつ)」。大学の進学が決まった孫娘に入学式に着る洋服を買ってやり、学生の心構えなど話したが、孫娘はほとんどスマートフォンをいじっていた▼スマホやパソコンだけではなく、携帯プレーヤー、ゲーム機など子どものインターネットデビューは小学高学年からといわれる。それに比例してネット依存による生活習慣の乱れ、いじめの書き込みも増える▼なんと女子高生がスマホを利用する時間は1日平均7時間で、4人に1人が深夜に集中している。スマホの利用率は小学生が39・3%、中学生59・1%だが、高校生になると96・1%で、女子に限ると98・1%(情報セキュリティー調査)▼学習への影響が心配されるが、ある中学校の生徒会は、第三者への悪口を発信しない、個人情報を許可なく漏らさない、知らない人と関わらない、午後9時以降は利用しない—など6項目のルールを決めた▼道教委は子どものネット依存を減らそうと毎月第1、第3日曜日を「ノーゲームデー」にした。世界保健機構はスマホなどで音楽を鑑賞する場合は「1日1時間以内」に控える指針を出した。長時間のスマホは身体をも蝕む。卒業しても6つのルールを守ってね。(M)


3月4日(水)

「知らなかった」。だから「違法性はない」という論理をどう解釈すればいいのだろうか。またまた政治献金を巡る話だが、疑惑を持たれた閣僚や首相が示した認識には首を傾げざるを得ない▼辞任した農水相に続いて環境相、法相が国の補助金などを受けた企業から違法な期間、献金を受けていたことが明らかになった。「(補助金を受けていたことを)知らなかった」。そろって釈明した答弁がこれ▼さらに安倍首相は先月27日の衆院予算委でこう語った。「知らなければ違法行為でないということは法律に明記されており、違法行為でないということは明らかだ」。何と思い切った発言だろうか▼本当に「知らなかった」のかどうか。事の真実は当人だけしか分からないことだし、その証明は誰もできないはず。なのに「知らなかった」と言えば免じられる、そんな法律なら“ざる法”ということになる▼だとしたら、法改正をすべきでないか、という議論が出てきておかしくない。先日、取り上げた違法性に対する認識問題も、この「知らなかった」問題も、根っこにある病巣は同じ。政治と金…この言葉はいつになったら無くなるのか、そんな思いがむなしく込み上げてくる。(A)


3月3日(火)

家具販売の「大塚家具」で、創業者で会長の父と、社長を務める娘の対立が耳目を集めている。会員制の高級路線を守り続けたい父と、低価格で入りやすい店に改革したい娘との経営を巡る争いは、泥沼の様相を呈している▼一方、世間一般の父と娘の関係は、周囲が想像するより良好なようだ。飲料メーカー「カルピス」がひな祭りにちなんで行った20歳代の独身OLを対象としたアンケートによると、父親との関係は「良い」「どちらかといえば良い」が全体の74・6%を占めた▼「父親が好き」は7割強。採点は70点以上が67%。2人だけでの外食には4割強が出掛ける。理想の父親、理想の結婚相手のいずれも「自分の父」とする回答がトップ。ひな祭りのお祝いにも5割以上の父親が参加する▼20歳代の娘がいる父親は50歳前後の年代が多いと思われる。昭和の頑固おやじとは違って、「若いころにバブル景気を経験した世代であり、女性の扱いがうまい」といった指摘もある▼家族の団らんを演出するのが家具の役目だ。父と娘が家族や社員を巻き込んで骨肉の争いをしている店で、家具を買いたいとは思えない。ひな祭りの今日、父と娘は何を思うのだろう。(I)


3月2日(月)

国際映画祭の中でも、もっと影響力が高いと言われる米国のアカデミー賞。今年はその最高峰の舞台で、日本の作品が最高の栄誉を得られる大きなチャンスだったが、長編アニメーション部門にノミネートされた「かぐや姫の物語」は惜しくも受賞を逃した▼スタジオジブリ制作の同作品は、「火垂るの墓」などで知られる高畑勲氏による14年ぶりの監督作品として話題を呼んだ。しかし約51億円の制作費に対し興行収入約25億円と、商業的には成功とはいえない状況だった▼スタジオジブリといえば、宮崎駿監督(引退を表明)による大ヒット作が名前を連ねているだけに、自信を持ってこの作品を送り出した高畑監督にとっては悔しい思いもあっただろう▼ただ、アカデミー賞ノミネートを通じて海外における高い評価が明らかになったことで、国内での作品への再評価が加速しているという▼そういえば北野武監督が「日本で(自分の作品が)公開された時はぼろくそにけなしていた批評家が、海外で受賞したら突然褒めだした」と愚痴っていた。世界最先端のクオリティと言われる日本のアニメ作品の価値を、多くの日本人が見抜けなかったとしたらいささか寂しい気がする(U)


3月1日(日)

戦後の子どものころ、食糧難からガキ大将に食べ物や賽銭(さいせん)を盗んで来るよう脅されたが、どこの寺も賽銭箱は空っぽだった。ガキ大将は小刀で手に傷を付けただけで、それ以上はしなかった▼川崎市の河川敷で殺害された中1男子(13)は、年上男子グループに呼び出され、全裸にされて鋭利な刃物で首を何度も切られた。抵抗した痕はなく、結束バンドで手足を縛られ、激しい暴行を受けたとみられる▼男子生徒は2年前に島根の西ノ島町から転校、好きなバスケットをするために訪れていた公園で、年上の非行少年らと知り合ったようだ。リーダー格の18歳の少年ら3人が殺人の疑いで逮捕された▼1月には左目から下の顔半分が青黒く腫らした姿を友人に目撃され、年上のグループからの暴力を打ち明け「殺されるかもしれない」と漏らしていた。「(万引きを)やめると言ったら暴力が激しくなった」とも▼先月からの「不登校」が「暴力」や「死」につながった。悲痛なSOSを発信していた男子生徒のサインを学校、家庭、警察、地域住民がなぜ受信できなかったのだろうか。「情報把握」の体制を確立しなければ。殺害現場には手を合わせる同級生らの姿が後を絶たない。(M)