平成27年4月


4月30日(木)

今年2月のことだから、まだ記憶に新しい。札幌中心部の飲食店ビルに据え付けられていた看板の金属製部品が落下し、歩道を歩いていた女性が直撃されて大けがをした事故である▼函館市内だけでもかなりの数になるのだろうが、店名や商品名などビル外壁の広告看板は、都市規模に比例して多い。留め金などの劣化が、地上からの肉眼でなかなか見付けづらい。一見、大丈夫のようにも見える▼そこに落とし穴があるが、国土交通省はその実態調査を行っている。対象は都市部の災害避難路沿いの3階建て以上、築10年以上の建物。なお4割弱が残っている段階での中間報告が27日、公表された▼それによると、落下の恐れがあるとして是正勧告された建物は、全国で1516棟。冬の凍結もあって北海道は勧告数が多く、全国の1割弱の148棟(うち是正済みは17棟)を数え、最終的にはさらに増える見込み▼こうした外壁に設置の広告看板は、雨や雪、風にさらされているから年月を重ねるにつれ、サビや緩みが出てくる。ただ、防ぐことができない事故ではない。所有者や管理者が意識を持って定期的な点検や補修をしていればだが…札幌の事故の教訓もそこに尽きる。(A)


4月29日(水)

昭和の特撮テレビ番組「ジャイアントロボ」では、主人公の少年が腕時計に向かって指示を出し、巨大ロボットを操っていた。腕時計で通話というシーンも当時の漫画やテレビによく登場していたと思う。子ども心にそんな腕時計がほしいと思った▼それから50年近くたった現代は、腕時計で通話やメールができるようになった。米アップル社が「アップルウオッチ」を発売したことで、身に着ける情報機器「ウエアラブル端末」に注目が集まっている▼消費カロリーや心拍数の計測など健康管理も充実させている。話し掛けて操作や検索ができるものもあるそうだ。スマートフォンとつないでさまざまな機能を発揮する▼電池の持つ時間や、アプリの充実などが普及への課題とみられている。スマホを持たない自分は、技術の進歩をすごいと思っているだけだが▼ジャイアントロボは最終回で、少年の命令に背き、敵組織の首領とともに宇宙空間に飛び出し、隕石に激突して爆発してしまう。これは感動的なシーンだったが、現実の場面では歩きながらの操作などで危険な目に遭ったり、過度に依存したりしないよう気を付けてほしい。スマホすら持たない人間に言われたくないかもしれないが。(I)


4月28日(火)

地中海を渡る難民の少年は家から逃れる際、まず持ち出したのは学校の卒業証書だった。「教育こそ過去の悪夢ではなく未来を、憎しみではなく希望について考えさせてくれるから」という▼アフリカや中東から欧州を目指す難民や移民が急増しており、密航船が地中海で転覆、沈没する事故が続出。昨年の密航者は22万人近くに上り、今年もすでに3万人を超えた。昨年は3500人が渡航中に命を落としている▼先日、地中海のマルタ島付近で850人以上の難民を乗せた密航船が転覆、800人以上が犠牲となった。救助に向った貨物船と衝突、難民が船倉に閉じ込められたまま転覆。生存者はわずか28人。船長はマリファナを吸っていた▼難民を劣悪な条件で手引きする“密航ビジネス”も横行し、渡航は「板子一枚下は地獄」の死と背中合わせ。今回の密航船も老朽化しすし詰め状態。食べ物はなく、武装した男たちに見張られていたという▼40〜50人の子どもが乗っており、卒業証書を持ち出した少年も海に沈んだのだろうか。イスラム教徒がキリスト教徒12人を海に突き落とす惨事もあった。マルタ島の古代神殿から出土した土偶「マルタのビーナス」は悲劇の海を嘆いている。(M)


4月27日(月)

函館市長選は現職の工藤寿樹氏の圧勝で幕を閉じた。無風が予想された中で、道議選に立候補を予定していた広田知朗氏がくら替え出馬したものの、戦前の予想通り大差がついた▼選挙戦が盛り上がりを欠いた感は否めないが、決して無意味だったわけではない。市民にとって、工藤氏の政策を直接聞いたり、報道を通じて知ったりする機会にはなった。市議選も含めて、あらためて函館の未来を考えた人も少なくなかったと思う▼市政には課題が山積している。原発の再稼働差し止めを求めた住民訴訟に対し、福井地裁と鹿児島地裁が今月、正反対の判断を示した。工藤氏が高い支持を受けた背景にある大間原発建設差し止め訴訟についても、予断を許さない▼全国や全道の平均を上回るペースで人口減少や少子高齢化が進行する中、来年の北海道新幹線開業は地域再生の千載一遇のチャンスであり、逆にこの機会を逸してしまうと、地域の衰退は加速することになりかねない▼自ら「戦う市長」と称する工藤氏は、行動力や発信力に定評がある。圧倒的な支持を受けたとはいえ、2万を超えた〝批判票〟も受け止め、高転びしないよう、新幹線時代のまちづくりにまい進してもらいたい。(I)


4月26日(日)

長い年月を経て培われてきた歴史的、自然・文化的な遺産は、何ものにも替え難い。取り替えの効かない、二度と同じレベルに追い付けない性格を有するからだが、故に価値がある▼権威を伴い、広く知られるのがユネスコ(国連教育・科学・文化機関)の世界遺産である。我が国から登録されているのは文化で14件、自然で知床など4件。文化庁は毎年、登録に向けて推薦する遺産を絞っている▼2017年度の検討はこれから始まる。先日、審査対象として4件示されたが、道南が切望する「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」もその一つに。まさしく第一関門突破であり、期待が膨らむ▼その文化庁から24日、本年度から設けた日本遺産が発表された。地域やテーマごとにまとまった有形無形の文化財が認定の対象で、認定第一号は四国4県の「四国遍路」や滋賀の「琵琶湖とその水辺景観」など18件▼北海道から1件もなかったのは淋しいが、これからでも遅くはない。函館・道南にも…例えば函館山の自然と要塞群や五稜郭などは認定される資格十分。公的なお墨付きが地域にもたらす発信効果は大きい。日本遺産に世界遺産、道南にそんな日が来るのが待ち遠しい。(A)


4月25日(土)

例年より早くサクラが開花し、家庭では庭の手入れ…函館・道南地域はすっかり春の装い。今はサクラだが、テレビからも連日のように行楽の季節を迎えた道南情報が伝わってくる▼先日も函館山が紹介されていた。改めていうまでもなく植物や鳥などの聖地であり、適度な距離と勾配に恵まれた恰好のハイキングエリア。登山道もいくつかあり、歩いていると、花を付けた野草が出迎えてくれる▼ふれあいセンターによると、函館山には約600種の植物と150種ほどの鳥が生息しているという。ゆっくりペースでほぼ1時間、心地よい汗をかいた後、今度は飽きない景観が楽しませてくれる▼以前、転勤族の人がこう語っていた。「街からこんな近くにこんな素晴らしい所があるなんて、ぜいたくの極み。なのに地元の人は意外なほど親しんでいない」。そう言われてみれば、必ずしも外れていない▼木々に葉が少ない今の時期は鳥の観察もしやすく、野草も花を付けてくる。間もなくゴールデンウイークがやってくる。家族で函館山に登ってみてはどうか…新しい発見と感慨があるに違いない。でも函館山ではこの注意を忘れずに。「採らない、持ち込まない、踏み込まない」。(A)


4月24日(金)

「ブーン」と風を切って羽音を響かせて飛ぶ雄のミツバチを英語で「ドローン」と呼ぶ。遠隔操作やコンピューター制御で飛行する小型無人機。爆撃、偵察などの軍事や、災害時の空撮などに使用▼安倍首相が外遊していた首相官邸の屋上でドローンが見つかった。カメラや発炎筒を装備し、プラスチック製容器からガンマ線が測定され、微量の放射性セシウムが検出されたという▼1月下旬、米ホワイトハウスの敷地に、大統領を守る警備の網をすり抜けてドローンが侵入し墜落。シークレットエージェントが酒に酔って墜落させたもので、大統領夫妻は外遊中で無事だった。仏大統領府近辺にも出没している▼ドローンは〝空の産業革命〟とも呼ばれ、経済効果が期待されている。農作物の順調な生育や病気にかかった作物観測などにも活躍。高齢者の買い物手助け(配達)も可能に。報道ヘリやカメラマンもいらなくなる▼首相官邸への飛来は、心配されていたことが現実となった。搭乗者がいないドローンは人身の安全性が確保されたまま、テロ攻撃などの作戦が遂行できる。無断撮影やバッテリー不足による落下、衝突事故の危険性もある。飛行規制やドローンの番号登録なども必要だ。(M)


4月23日(木)

統一地方選も終盤に入り、21日には町村長選、町村議選が告示された。道内では36町村長選のうち18町村、100町村議選のうち32町村が無投票。道南でも厚沢部と乙部の町長・町議選が無投票だった▼十勝管内浦幌町議選は道内唯一の定数割れ。今回から定数を2減の12としたが、立候補したのは11人。2人欠員となれば公選法の規定で再選挙となるところだったが、告示の2日前に関係者が何とか1人を〝擁立〟したという▼町村議会議員のなり手不足が深刻化していることが背景にある。議員報酬だけでは政治活動を含めて生活するには苦しいとされる。かつて有力な農家や漁師が務めていた地域では、本業が厳しく出馬を避ける傾向もあるという▼無投票や多選を一概に悪いことだと決めつけるつもりはない。町や村にはそれぞれ事情があるだろう。首長は多選で「実力」を付け、安定・継続した行政運営や、国や道へのパイプ強化などが期待できる面もある▼ただ、地方が疲弊する中でまちの将来への議論の機会が失われることも事実。いずれにしろ無投票を選択したのは住民の意思であり、その結果の行政運営に対しても責任があることを、住民は自覚しなければならない。(I)


4月22日(水)

俳優、タレント、声優などで活躍し「キンキン」の愛称で親しまれた愛川欽也さんが15日、肺がんのため亡くなった。番組冒頭のあいさつ「おまっとさんでした」など名ゼリフを残した▼愛川さんの番組は15年、20年続いた長寿番組が多い。視聴者目線で企画に参加し、出演者へ気遣いする。そうすることで脇を固め、親しみやすい語り口で面白さがあった。だから平均視聴率も高かった▼愛川さんは司会者要請を辞退したこともあった。落語バラエティー「笑点」で、1983年に三波伸介さんが急逝し、新春特番は担当したが、その後は辞退した。「そうそうたる落語家さんを相手にするのは無理」と決めたそうだ▼笑点も約50年の長寿番組。愛川さんの番組と共通するのは、マンネリを感じさせないことだ。マンネリは英語の「マンネリズム」で、文学や演技などの表現が型にはまることを言う。笑点は演芸と大喜利のみが20年続くが、その変わらないことが魅力だろう▼マンネリ、ワンパターン…。悪い印象で、これを打破すれば物事が上達し、新鮮な気持ちになる。果たして、すべてそうだろうか。キンキンの笑顔を思い浮かべると「職人気質」も決して「気難しい」ことにはならないと思う。(R)


4月21日(火)

本を読むことは「言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付ける」利点がある(子どもの読書活動推進法)▼ネットやスマホの影響もあり、子どもの本離れが叫ばれて久しい。道は図書整備など「北の読書プラン」を推進しているが、「朝の読書」や「読み聞かせ」など読書習慣はまだ定着していない▼今年は小学生の孫娘に真珠まりこ作の絵本シリーズ「もったいないばあさん」をプレゼント。『いただきます』は「いろんな食べ物の役割を教えてくれる。給食を残すなんてもったいない」と食べ物の大切さを訴える▼『まほうのくに』では「私たちの世界でもまだ生かせるものがある。ゴミとして捨てられるのはもったいない。分別マジックを教えてもらった」という。親自身が本を読む姿を見せることも必要。それが本好きへの一歩となり、一生の宝になる▼「本は キラキラ 万華鏡」は23日から始まる「子どもの読書週間」の標語。作者は「のぞくたびに変わった表情を見せてくれる万華鏡。本もまた開くたびに千差万別の世界を見せてくれる」と呼び掛ける。一冊の良書を手に、すてきな世界をのぞかせたい。(M)


4月20日(月)

全国的には東京の、道内では札幌の一極集中が続く。政府が掲げる地方創生の看板が光るか陰るか不透明だが、人口問題で地方は悩み多い。4期目初の記者会見で、高橋はるみ知事もこう語った▼「人口減少問題への対応などに取り組んでいく」。高齢化率が高まる一方で顕著なのが出生の減少。知事の発言も北海道が例外でないことを物語っているが、それはさまざまな分野に影響する▼総務省は17日、昨年10月1日現在の推計人口を発表した。4年連続の減少はともかく、見逃せないのが前年比で65歳以上の高齢者が110万人余り増え、人口比率は過去最高の26%に▼逆に14歳以下は16万人弱の減少。この流れは15歳から64歳までの生産年齢人口にも波及し、1年の減少は116万人。国立社会保障・人口問題研究所は「2060年には総人口が8千万人台になり、出生は約4割減って、高齢化率は4割に」と推定▼裏を返すと、国を支える生産年齢人口の増加は望めないということ。社会保障などの行く末が懸念されるばかりか、維持出来ない市町村も出かねない。函館も人口減少・少子高齢化が著しく、市長選、市議選でもテーマの一つ。実効性のある対策へ、論戦に期待したい。(A)


4月19日(日)

函館で第3局が行われた将棋のプロ棋士とコンピューターソフトの対抗戦「電王戦」は、棋士側の3勝2敗で幕を閉じた。団体戦形式となった過去2年間に2勝しかできなかった人間側が雪辱を果たした▼今回は事前にソフトの貸し出しを受けた棋士側が、入念に対策を練って作戦勝ちしたようだ。特に最終局では、阿久津主税八段がソフトの欠陥を突く形に誘導し、短手数で勝利。普段とは違う手を指すことに「葛藤があった」という▼「勝ってこそプロ」「正々堂々と勝負してほしかった」と、この勝負には評価が分かれる。いずれにせよ入念な対策が必要なほど、ソフトが棋士に引けを取らないレベルにあることを印象付けた▼ネット中継は最大約80万人が視聴し、注目を集めた。一方で「これ以上負けるようなら、プロの存在意義が危うくなる」と不安の声もある。ただ、やはり将棋には人間ならではのドラマがある▼適切な例ではないかもしれないが、先日のテレビ棋戦で「二歩」の反則負けを喫した橋本崇載八段は、かえって注目を浴び、芸能事務所入りが決まったと報じられた。ソフトに敗れたとしても、選ばれた天才たちが繰り広げる戦いは、いろいろな意味で興味深い。(I)


4月18日(土)

鼻水やくしゃみ止まらず、目がかゆく、鼻粘膜が膨張し苦しくて眠れず、イライラして意識も集中できず、皮膚炎や喉頭炎になったり、喘息がひどくなり、呼吸困難になることも▼サクラ前線を追って北上する花粉症。スギ系とシラカバ系の道内の飛散日はサクラ開花予想の5日から1週間前。函館山のスギ花粉は大型連休まで飛散し、シラカバ花粉は5月いっぱい飛散する▼日本では4人に1人が花粉症とか。道立衛生研究所の花粉情報によると「函館はスギ花粉が飛散している。札幌ではイチイやハルニレ、旭川ではハンノキの花粉が飛散」(14日現在)という▼くしゃみ、鼻水などは風邪の初期症状と同じ。愛媛大の研究グループはミカンの皮とヨーグルトに含まれる成分を同時に摂取すると花粉症が和らぐという研究成果を発表。スギ花粉症対象の舌下免疫療法にも今年から保険が適用される▼優美などの花言葉をもち、啄木が愛したヤグルマは傷を癒やす薬草で、気管支炎、目の炎症などに効く。ツタンカーメンの墓からもヤグルマの化石(花粉)が見つかっており、エキスを飲んで「目ぱっちり、鼻すっきり」だったのだろうか。花見に出掛けても花粉飛散に十分ご注意を。(M)


4月17日(金)

「ポイ捨てはやめ、ごみは持ち帰えろう」。再三、啓蒙されているが、守られない姿は相変わらず。雪が消え、道路沿いに現れたペットボトルや食品ビニール類を見せつけられると、そんな思いが込み上げてくる▼数日前、山越えの一般道を走る機会があったが、運転しながらでも気付くほどあちこちに。道路管理のスタッフが拾い集めていた大きなビニール袋は、あふれんばかり▼危険回避の観点からだが、道交法では、道路で進行中の車両などから物件を投げてはならないとされている。大型ごみと違って罪悪感がないのかもしれないが、道路などに物を捨てる行為は紛れもない不法投棄▼道路に限らず、屋外にごみを捨てるのは、社会常識に反する行為。法もさることながら、問われるのはモラル。「誰も見ていないから」。その心理は散乱の光景を山間部の駐車エリアで多く見かけることが物語っている▼結果として美観は損なわれ、後始末に経費や労力を投じざるをえない。かつて問題になった街中でのたばこのポイ捨てや、山でのごみ持ち帰りは、確実に改善している。あとは道路施設や河川敷など。持ち帰りの輪をどう広げていくか…根気強く啓蒙し続けるしか道はない。(A)


4月16日(木)

「ゼロリスク症候群」という言葉がある。わずかなリスクの存在も許さない完全主義・完璧主義。日本人は何万分の一というリスクでも過剰に反応して不安に陥りがちだという指摘もある▼福井地裁が関西電力高浜原発第3、4号機(福井県)の再稼働を認めない仮処分決定を出した。原子力規制委員会の安全審査に合格した原発だったが、審査の基準そのものが甘いと厳しく指摘。実質的にゼロリスクを求めている▼原発再稼働を急ぐ国や電力会社に対し、司法が警告を発した形だ。大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟を起こしている函館市や市民団体の関係者は「訴訟への追い風になる」と評価する▼ただ、福島第一原発の事故後、原発再稼働について10件の判決や決定が出ているが、差し止めを認めたのは同じ裁判長による2件のみ。決定には賛否の声が上がり、裁判官の変わる高裁では覆るのではないかとの見方もある▼いかなる場合でもゼロリスクの実現は不可能だろう。しかし、ひとたび事故が起きれば取り返しのつかない事態となってしまうことを、私たちは福島で経験している。今回の決定を重く受け止め、原発のリスクは、限りなくゼロに近づけていくことが必要だ。(I)


4月15日(水)

全国の自治体、企業・団体から「プレス・リリース」が送られてくる。イベント開催や参加者募集、新製品情報などさまざまだが、最近、富山市の発信が増えている▼「二次交通利用促進事業の案内」を見れば、北陸新幹線開業を記念し、富山市内で宿泊する人に対し、期間限定で路面電車の無料乗車券を進呈するという。ただ、同市は外国人に対しては期間に関係なく無料乗車券を渡している▼「孫とおでかけ支援事業」は、動物園などの施設で祖父母が孫と訪れると入館料が無料となるという。高齢者の外出の機会を促進し、地域の文化や歴史などの関心を幅広い年齢層に広めるのが狙い▼コンベンションやスポーツの大会、合宿の実施に対する支援制度では、いろんな用途を想定して補助の条件や金額を紹介している。これは金沢も力を入れているようで、来年の北海道新幹線開業への対抗であろう▼富山と金沢在往の記者友人に「新幹線開業から1カ月だが、まちは盛り上がっているか」と聞けば、「これからでは」と答える。大型連休が近いというより、利用客誘致が本格化すると見込む。北海道新幹線開業まで待ってはいられない。あらゆる情報を発信し、関心を引き寄せなければ。(R)


4月14日(火)

統一地方選前半戦で次々と当選した知事、道議、政令市長の陣営はダルマに目を入れ、こも樽を割ってマス酒で乾杯。でも、基幹産業を大事にする北海道としては「牛乳でかんぱ〜い!」といきたい▼「牛乳で乾杯」の先鞭をつけたのは、乳牛飼育が人口より数倍多い中標津町。会食などの機会を捉えたら「1杯目の乾杯は地場産牛乳で」を合言葉に牛乳の飲用を広く浸透させようと昨年4月から条例を施行▼牛乳条例は珍しく「わがまちでも牛乳で乾杯」という運動が広がり、本州一の飼育数の那須塩原市でも今月から牛乳条例を施行。市の新規採用職員の入庁式は牛乳で乾杯、新職員は濃厚な牛乳をゴクリと飲み干したという▼米飯給食を実施している学校の保護者から「ご飯に合わない」と牛乳を外す動きがあるのが気になる。牛乳なしでは国の栄養基準を満たせないといわれているのに▼学校給食は日本人の味覚文化をも育てる。牛乳はカルシウム、タンパク質、ビタミンなど栄養価豊富。銭湯時代、湯上がりの1本の牛乳瓶が定番だった。酪農家の思いを感じ取って、ゆっくりと飲み干す「1日1本」が欠かせない。婚活や女子会などでも、まずは「牛乳でかんぱ〜い」だ。(M)


4月13日(月)

人口減少、産業振興、少子高齢化、そして大間原発の建設反対。知事選と道議選で各候補が掲げた取り組むべき道の課題は、政策の違いこそあれ、ほぼ一致していた。目的は同じなのだから、当選を果たした知事・道議は一丸となって道政に臨んでほしい▼道知事として初の4選を果たした高橋はるみ氏は、2、3選目ほどの圧勝とはならなかった。佐藤のりゆき氏に全道で約30万票差、道南では約2万3千票差。背景には、多選や停滞する本道経済への批判などもあっただろう▼高橋氏は4、5日に道南入りした際、胃がんで闘病の最中に新幹線の道南までの延伸着工に尽力したことを強調。大間原発の建設差し止め訴訟に関しては、函館市を全面的に支援することを約束した▼新幹線に関しては、道の取り組みが物足りないとの指摘も少なくない。延伸に向けて奔走したときのことを忘れず、しっかりとした対応を願いたい▼各種選挙で低下傾向が続いていた投票率は、4年前と比べて桧山と函館が上昇、北斗は微減となった。両市では依然として半数近い人が投票に行かなかったことは残念だが、なんとか歯止めが掛かったと思いたい。統一選は間もなく第2ラウンドが幕を開ける。(I)


4月12日(日)

入社式、入学式で新入社員、新入生に贈られる、はなむけの言葉…毎年、新聞などで主要企業のトップや大学の学長のあいさつが紹介されるが、今年もつい目が止まった話があった▼「スマホをやめますか、それとも信大生をやめますか」。どこかで聞いたことのあるフレーズだが、それはそれとして、話したのは信州大学(長野)の学長である。その背景にあるのは、若者のスマートフォン依存が増加している現実▼街角で歩きながら手にしている光景は珍しくない。情報セキュリティーメーカーのデジタルアーツが2月に発表した18歳未満の使用実態の調査結果が、依存状態を裏付けている▼その使用時間は、高校生の平均で男子は約4時間。これでも長いと思っていたら、なんと女子は7時間だという。ここまでくると、依存症というより中毒症状ともいえるが、大学でも問題にせざるを得ない状況なのだろう▼学長は冒頭のフレーズの後に、こう言葉を続けたという。「スイッチを切って、本を読み、友だちと話し、自分で考える習慣を付け…物事を根本から考えて行動することが独創的な学生を育てる」。この話を新大学生はどう受け止めたのか、聞いてみたいものである。(A)


4月11日(土)

「鞭声粛々 夜河を過る〜」。戦後、娯楽の乏しかった子どものころ、意味が分からないまま、よく浪花節を聴かされた。今思えば川中島の合戦を詠んだ頼山陽の漢詩だった▼広辞苑によると、「粛粛」とは「つつましいさま」「静かにひっそりとしたさま」「おごそかなさま」とある。川中島の合戦では奇襲をかける場面の詩。ここから「集団が秩序を保って遂行」の意味にとられた▼中国最古の詩集では鳥の羽音の擬音語だ。菅義偉官房長官が沖縄の米軍基地について「粛々と進める」と言ったことに、県知事が「上から目線」と批判。慇懃(いんぎん)無礼に「聞く耳持たぬ」と言っているようだと猛反発▼菅官房長官は「粛々と」を「適切に対応」に変えた。中谷元防衛相も粛々を自粛し「堅実に進める」と表現。安倍晋三首相も「既にある法令にのっとって粛々に進めている」と述べたが、翌日撤回▼民意を無視し、厳しく取り締まって異分子を排除する「粛清」の浪花節は聞きたくない。「適切に」や「堅実に」に変換しても、沖縄県民の心は離れ、怒りのマグマは増すばかり。基地負担に苦しむ沖縄の人たちと、敬う、慎む、正す、清らかな「粛々」の態度で向き合ってほしいものだ。(M)


4月10日(金)

函館出身のロックバンド「GLAY」が函館アリーナで行う「こけら落とし」ライブの日程が7月25、26日と決まった。2年前に緑の島で開かれた凱旋(がいせん)ライブと同じ、7月最終の週末だ▼「こけら落とし」の「こけら」は、木材を削ったときに出る切りくずのことで、建物の新築や改装工事の最後に、屋根のこけらを落としたことから、完成後に行う最初の興行を意味するようなった。「こけら」の漢字は「柿(かき)」と異なる▼最近は函館アリーナなど運動施設のオープン行事にも「こけら落とし」を使うが、本来は劇場で初めて行う催しのことだそうだ。同じく2年前に新開場した東京の歌舞伎座では、最初の1年間をこけら落とし興行とした▼「プレ・オープン」という言葉が聞かれる。大勢が集まる本オープン前に、大きな公演に対する準備や確認事項を見つけるために行う。複数回実施後、大物による「こけら落とし」を開く▼GLAYライブには一日4千人が来場予定。緑の島から混乱なく2万5千人を移動させた実績があり、「プレ|」がなくても関係者は十分な対策を用意し、市民も協力するだろう。アリーナ利用のあり方の手本として、見事な運営が期待される。(R)


4月9日(木)

3月で社会人の現役を退いた人も多かろう。寂しい思いを覚える一方で、今後に楽しみが膨らむ。個々人によって温度差はあるが、自分の好きに過ごせる「自由」を得た点は共通している▼長い人生…親の擁護のもとで生活する時代から、家族の扶養や仕事の責任に縛られる時代を経て、あらゆる束縛から解放され「自由」が手にできるリタイヤ後の時代に。最後は誰もが夢を広げてきた時代である▼あれもしたい、これもしたい。幾ばくかの蓄えと年金で暮らせれば申し分ないが、夜の付き合いもなくなり、早起きもしなくていい。何たって時間はある。あえて懸念材料があるとすれば「自由」の処し方…▼「自由」には「何もしなくてもいい自由」もあれば「したいことをする自由」もある。多くの人が第二の人生に描く姿は、おそらく後者だろうが、現実に目を向けると多いのは前者。もちろん他人が口を挟むことではない▼識者は言う。前者はそのうち「きょうはどう過ごそうか」となって“何をしていいやら症候群”になりかねない…後者との違いはそこにある、と。言うまでもない、余生をどう過ごすかは人生の大きなテーマ。考えておこう、自分の番は早かれ遅かれやってくる。(A)


4月8日(水)

1988年の開業以来初めて、乗客の避難を伴う事態となった青函トンネルの特急白鳥の発煙事故。来年3月の北海道新幹線開業に向けて、大きな課題を残した▼朝の点検で問題がなかったとされる列車で、なぜコードが焦げることになったのか。30分前に車掌が異臭を感じていたのならば、そのまま運行を続けた判断は適切だったのか。検証が必要だ▼避難に要した時間も気になる。124人の乗客全員が地上に避難できたのは発生から5時間以上も後。新幹線の定員は731人で、満員の状態で列車にトラブルが生じたら、相当の時間が掛かるだろう▼2011年5月、上川管内占冠村の石勝線で特急が脱線炎上して以降、列車の発煙や出火が後を絶たない。この数日でも江差線の停電、津軽今別駅での〝乗客閉じ込め〟というトラブルが相次いだ。JR北海道は安全・安心な公共交通機関と胸を張れない状況が続く▼日本の新幹線ではこれまで、死亡事故は起きていない。しかし、北海道新幹線は53・85㌔の海底トンネルをくぐり抜け、冬場の気象条件は本州より格段に厳しい。いつ、何があっても迅速に対応できるよう、JR北海道には徹底した対策が求められる。(I)


4月7日(火)

ミズバショウやクロッカスも咲きすっかり春。うきうきの気分だが、高校に入った子どもの母親は毎日の弁当作りに悩まされている。そんな折り、書店で目にとまったのが奇抜な「今日も嫌がらせ弁当」▼作ったのは東京都の40代のシングルマザー。高校生になり反抗期を迎えた娘への「逆襲」の表現で、怒った顔に細工したウインナー、焼きのりを切り抜いた字で「早く起きろ」や「べんきょうしている?」との小言も▼誕生日や文化祭、テストの前には激励の思いも。3年間、飯上で闘い続けた。高校最後の弁当は、「嫌がらせにめげなかった娘へ 忍耐をたたえ表彰します 母」という賞状だった。書名はけんか腰だが、ほほえましい記録▼4月から弁当の生活を始める人も多いはず。少し前から、握らないけどおにぎり…「おにぎらず」という簡単クッキングがはやり始めたとか。四角いのりに具を載せ四方からギュッとたたむだけ▼寝坊したクッキングパパが遠足に行く子どものため、5分で作る方法を考案したという。おにぎりは縄文時代からあった。地方選挙真っただ中、選挙事務所にはおにぎりが定番。嫌みが詰まった弁当でも交し合える相手がいて美味しいのだ。(M)


4月5日(日)

札幌のホテルのロビーで、男性が「どこの会社だ。文句言ってやる」と怒りの表情。玄関前では新入社員らしき若者が15人ぐらい並んで通りにくくなり、何人かはたばこを吸っていた▼新年度となり、企業などでは新人研修を行っていて、このグループはホテルの会議室で研修を受けているようだった。「通路では人通りを妨げない」「たばこは喫煙場所で」は、新人研修で教わることではない▼この話を知人としたら「わが社では、入社式の式典会場に来て『私、入社辞めます』と言って帰った学生がいた。当然、引き留めなかったよ」と嘆く。「誰がこんなことをしても良いと教えたのかな」と二人で苦笑い▼もちろん、これらのことは一部の人である。誰が、いつ、「社会人になる時」の心構えを教えれば良いのか、というより、自ら学ぶという意識を持たせるにはどうすれば良いのか。知人と話すと会話が止まった▼日本ハムファイターズの稲葉篤紀SCOは「自分は試合を楽しんでいた。少年時代からプロになっても、練習量は誰にも負けなかったから」と胸を張る。学生生活を終え、楽しく人生を送るなら、誰にも負けないぐらい社会人になることについて勉強してほしい(R)


4月4日(土)

道南が激しい雨と風に見舞われる中、道議選がきのう告示された。先月26日に告示された知事選と同じく、道政の課題について、12日の投開票日まで候補の舌戦が続く▼ただ、今回の道議選では渡島振興局区を含め、道内47選挙区のうち、過去最多の19選挙区が無投票となった。無投票当選者の数は前回2011年の31人に次いで多い28人となっている▼無投票選挙区のうち、2人区のうち6選挙区は自民党と民主党で議席を分け合い、1人区のうち9選挙区は自民党の現職だった。民主が候補を擁立できない選挙区も目立ち、いまだに党勢回復の厳しさがうかがえる▼道議に関しては、国政への代表である衆議院議員や住民に身近な市町村議会議員と比べて、「活動が分かりづらい」という声も聞こえる。無投票となれば、選挙戦で候補者の訴えを聞く機会もなくなってしまう▼それでも、人口減少対策や産業振興など、道政の課題はたくさんある。新幹線開業に向けた取り組みをみても、積極的な石川県に比べ、道の対応が物足りないという不満も耳にする。今回の選挙戦を道が担うべき役割や、道議の仕事ぶりについて、改めて考える機会にしてみてはどうだろう。(I)


4月3日(金)

新年度を迎え、我々の生活にかかわる情報が幾つか飛び込んできている。賃上げの動きも物価の上昇で相殺され、年金保険料、介護保険料は上がるなど、暗い話の多いことが気に掛かる▼日本商工会議所は3月に行った調査の結果として、賃上げを予定している中小企業は43・8%(予定なし19・5%)あったことを公表した。この半数未満をどう読むか、判断は難しいが、明るいとは言い切れない▼それでなくとも昨年4月の消費増税(5%から8%へ)は消費者のマインドを冷え込ませている。加えて、極端な円安基調が物価の上昇を誘導しているときては、消費税の再増税(10%へ)など無理な話▼今月からは原材料を輸入に頼る食品などの値上げが発表されている。強気の政府も「個人消費の回復が遅れている」ことを認めざるを得ず、今年10月の再増税計画を「2017年4月」へ1年半延期することに▼当然といえば当然の帰結。というのも国民側に立った大事なポイントは生活実感だから。単に賃金が上がったかどうかではなく、日々の生活が楽になったかどうかだが、現状はそう思われていない。再増税までの猶予は2年。改めてアベノミクスが問われている。(A)


4月2日(木)

「おお赤い月よ/こよなく愛する人に/この調べを運んでおくれ」。60年ほど前に「ルナロッサ(赤い月)」というカンツォーネがヒットし、赤い月はキューピットだった▼皆既月食で代表的な現象、神秘的でミステリアスな赤い月。月は地球の影に全て入ると赤銅色に変化。太陽光のうち、地球の大気を屈折しながら通り抜ける波長の長い赤い光だけが月に届くから赤っぽくなる▼皆既月食は昨年は2回、今年も今月と9月の2回。4日の午後7時15分から満月が欠け、同8時54分から同9時6分にかけて皆既月食に。月が地球の端を通るため皆既月食は12分間ほど▼隕石の衝突、噴火、地震、津波、火災…昔の人は赤い月の光は不吉な兆候とみていた。昨年は大規模な自然災害が続発。長崎に投下された原爆の恐ろしさを描く映画「赤い月」のように、罪なき子らの命を奪う「悲惨な兆候」はご免だ▼カンツォーネのルナロッサには「月への祈り」というサブタイトルが付く。宝塚ルナロッサで演じられる月下美人の祈りのシーンは感動的だった。赤い月は照れているかぐや姫の頬かも。4日の満月の皆既月食を見逃すと、日本で次は18年1月31日になる。本州なら月食と夜桜が重なる「月食花見」だ。(M)


4月1日(水)

「朝型勤務、定時退庁を今夏、霞ヶ関で」。安倍首相は3月27日の閣僚懇談会で7、8月の2カ月間、全府省庁で始業時間を1、2時間早め、夕方には終業させる考えを打ち出した▼実質的なサマータイム。職員は夕方からの時間を日常生活などに充てられ、庁舎は電気の使用を抑制できるなど効用は多々。ただ、欧米と違って我が国でなかなか定着していない。理由は簡単、官民の足並みがそろわないから▼一方で、働き過ぎの見直し機運が高まっているのも確か。近年は「仕事と生活の調和を図ろう」という趣旨のワークライフバランスが奨励されている。今年は初めて推進強調月間(7、8月)が設けられる動き▼朝型勤務と残業の抑制はその趣旨と合致する。そうは言っても、はいそうですか、と頷けるほど霞ヶ関での履行は簡単でない。時期、セクションにもよるが、残業が恒常化していると言われる故。国会の影響も受ける▼毎週水曜日の午後8時での庁舎消灯ができるかどうか。強制ではなく、奨励のレベルとあっては、掛け声倒れに終わりかねないが、それにしても…キャッチフレーズの「夏の生活スタイル改革」はいかがか。「夏の業務スタイル改革」なら分かるのだが。(A)