平成27年7月


7月31日(金)

花茎から伸びた頭部から火を噴くといわれているアオノリュウゼツラン(青の龍舌蘭)。古代アステカの民は枯死しても腐りにくいことから、魔除けのお守りとして利用していたという▼リュウゼツランは中南米に自生する単子葉植物で、函館市熱帯植物園では開園時の45年前に植えた。今春から背の高い花茎が伸び出し、45年経って初めて開花した。日に日に成長、約8㍍の天井に届きそう▼葉は長く、分厚くて、先が尖っており、縁にはトゲがある。龍の舌にそっくりといわれ、日本や中国では「龍舌蘭」と呼ばれている。生命力があり、数十年(長くて60年、80年)に一度しか咲かないから万年蘭とも▼しかし、他の植物と同じように、株の中心から枝を伸ばし、3分咲きの熱帯植物園のリュウゼツランも次々と花を咲かせたら枯れてしまう。懸命に生きているが、開花に栄養分をとられ、茎や枝の一部が朽ちてきた▼開花は道内では初めて。すべての花が咲き終わるまで約1カ月。龍舌蘭の花は一生に一度しか観賞できない。夏休みの自由研究に「北限に咲くアオノリュウゼツラン」を子どもたちに薦めたい。メキシコの陽気で勇猛な心意気を生み出す「謎の液体・テキーラ」もとれる。(M)


7月30日(木)

普段思っていること、それを文書で…松前町の「夫婦の手紙」や静岡県袋井市の「愛の手紙」などが知られるが、今、奈良県御所市と日本郵便などが「一言(ひとこと)の願い」を募集している▼同市は我が国有数の曼珠沙華(彼岸花)の名所として知られる。同時に知る人ぞ知る神社がある。それが「一言主(ひとことぬし)神社」。地元では「いちごん(じ)さん」と呼ばれ、親しまれている▼「悪事(まがごと)、善事(よごと)も一言、言い離(はな)つ神」が奉られ、それにちなんで企画されたのが、このはがきの名文コンクール。先日の本紙に広告が掲載されていたが、応募に難しい制約はない▼自分の願い、家族のための願い、世界の人たちのための願い、未来への願い…などを、はがきに日本語で20字以上200字以内の文書にしたためるだけ。作家・吉本ばななさんらによる審査(大賞100万円など)もある▼願いを託す術は多々ある。神社参拝をはじめ七夕飾りなどはすぐ頭に浮かぶが、こうした募集イベントを利用して願いを字に残すのも意義ある行為。実行委員会は「願い事をはがきに書いてポストへ」と呼びかけている。急がなければ…。締め切りは8月10日に迫っている。(A)


7月29日(水)

参院は衆院の下請けと思いがちだが、辞典などに「衆議院の決めたことに行きすぎはないかをチェックし、足りない点を補う」とある。安全保障法案が参院でも審議入りした▼インターネット番組に出演した安倍首相は「けんかが強い友人のアソウさんに3人の不良がいきなり殴りかかった。3対1なのでアベさんも一緒に対応し、アソウさんを守ることだ」と、この法案の必要性を説明▼また「今は振り込め詐欺などがある。『町内会みんなで協力して戸締りしよう』という法案」であり、さらに「道路をはさんだ『米国の家』の火事は黙って見ておれない」と説明したが、衆院では世論の強い反発にあった▼参院審議初日でも、自衛隊の後方支援に「武器を使うのは自分たちの防衛のためやむを得ない場合のみで、戦闘行為になることはない」と答弁。戦場の後方支援で攻撃されても、反撃するなということか▼「憲法9条を壊すな」と学生たちがデモ行進。「誰の子どもも殺させない」と立ち上がった「全国ママの会」。国民は「アソウさんのけんか」や「米国の火事」では納得できない。「厳しい意見は承知」と言いながら、「60日ルール」ありきか。違憲か、合憲か—。「再考の府」の正念場だ。(M)


7月28日(火)

「お前はもう死んでいる」と告げられた敵の男は、「ひでぶ」などの奇声を発し、体が内部から爆発して倒される。漫画やアニメで1980年代に大人気を博した「北斗の拳」は、こうしたシーンが印象的だ▼主人公ケンシロウの宿敵ラオウの愛馬「黒王号」が26日、北斗市の夏まつりの山車行列に登場。「北斗の拳」を活用したまちおこしを目指す「黒王号を呼ぶ会」が、高さ約4㍍の実物大模型を東京から1日限定で借り受けた。同会はモニュメント製作なども検討している▼漫画やアニメを活用したまちおこしは全国各地で行われている。漫画家を多く輩出している高知県や新潟市、鳥取県の水木しげるロードなどが有名。近年ではアニメ「らき☆すた」に登場する埼玉県久喜市鷲宮の神社への「聖地巡礼」が注目された▼大きな経済効果や観光客増加をもたらすケースの一方、失敗に終わった取り組みも少なくない。集客不振で資金回収すらできなかったものもあるという▼キャラクターを飾っても、その場所に限った「物語」や、仕掛ける側に作品への愛情がないと、ファンを引き付けられないだろう。まちおこしが「もう死んでいる」と告げられないように、戦略を練ることが重要になる。(I)


7月27日(月)

判断に困ることは多々あるが、とりわけ難しいのが責任の取り方だろう。不祥事などを抱えた場合が分かりやすいが、判断如何によってはさらに傷口を広げ、取り返しがつかないことにもなりかねない▼特に責任が問われるのは、社会的影響の大きい立場の政治家や大企業経営者。判断の先送りは論外として、責任のとり方には大きく二つある。一つは即辞任(処分)で、もう一つは事後処理後の辞任(処分)▼今、不適切会計問題で社会を揺るがせている東芝では、現、前、元の歴代3社長、さらに4人の副社長らが即辞任した。信頼を裏切ったのだから当然の判断と受け止められている。その逆なのが…▼新国立競技場の建設計画を巡る対応。さまざまな経緯があった、事情もあった、だが結果として白紙に戻した。その判断は支持を得ているが、ここまで至った責任は重く、誰かが非を感じておかしくないのだが▼多額の契約料を払い済みなど公的な金を無駄にし、世界に恥ずかしい姿も晒(さら)したのだから。にもかかわらず、である。舛添東京都知事は処分に言及しているが、それは大方の思い。処分を含め責任の所在を早く、明確にすべき…即辞任、即処分の時期は刻々と過ぎようとしている。(A)


7月26日(日)

「柿(こけら)」は、材木を削った時に出る削りくずを指す。ゆえに新装、改築した工事の最後に屋根などの柿を払い落したことから、新築した劇場での初興行を「柿落とし」と称すようになった。そんな晴れの舞台には、やはり彼らがふさわしい▼函館出身の人気ロックバンド「GLAY」が、完成ほやほやの函館アリーナでトップを切って公演を務めた。大雨に見舞われた緑の島での野外ライブから丸2年。まちを再びGLAY一色に染め上げている▼全国から集まるファンにとっては物足りないのかもしれないが、メーンアリーナの収容人員5000人は30万に満たない人口規模の街としては過不足ないサイズだと言えよう▼さらに大規模コンベンションにも対応可能で、市民にとって楽しみの幅は確実に広がるはず。アリーナの〝こけら〟は郷土愛の強い4人がこれ以上ない形で落としてくれた。これからは地元がいかに有効活用できるかが浮沈を握る▼来年3月には北海道新幹線が開業し、新アリーナを軸とした交流人口の拡大が人口減少時代を乗り切るキーワード。今回集まった人々にまた来たいと思ってもらえるために、市民は今一度〝おもてなし〟の心を持とう。(C)


7月25日(土)

6月6日に飲酒運転のRV車に衝突されるなどし、軽ワゴン車の親子5人が死傷する事故が発生した砂川市。同じ国道12号の事故現場から約5㌔の場所で、飲酒運転の市議(64)が電柱にぶつかる事故を起こし、道交法違反の疑いで逮捕された▼市や住民が飲酒運転の根絶へ取り組んでいる中での逮捕。市議会は6月末に「飲酒運転等の交通死亡事故を撲滅する決議」を、逮捕された市議を含む14人全員が賛成して採択した矢先。言語道断だ▼2002年に厳罰化されて以降、全国的に飲酒運転の事故は減少傾向にある。道内では人身事故が01年の1004件から昨年は186件まで減少。しかし、昨年の死亡事故は3件増の17件で、全国ワースト1だ▼砂川の死傷事故以降、道警や自治体は取り締まりや啓発活動を強化しているが、函館方面本部管内でも電柱に衝突して付近が停電する事故など、6月に3件の飲酒運転による事故が発生している▼車への依存度が高い道内では、飲酒運転に寛容だという指摘もある。「少しだけなら」「警察に見つからなければ」と安易にハンドルを握っては、悲劇は繰り返される。使い古された言葉だが、「飲んだら乗るな」を全員が徹底するしかない。(I)


7月24日(金)

ネットに四万十川の稚魚を育てた「うな重」が1万円とあった。絶滅危惧種になったニホンウナギは値上がりするばかり。稚魚が激減したためで、今年の夏バテ防止も高くつきそう▼疲労回復のほか、視力低下、高血圧、脳卒中などの予防に効き、美容も保てるとして、ウナギは奈良時代から食べられている。庶民には高嶺とあって、最近はアナゴ、サンマなどのかば焼きが登場▼近畿大学が「ウナギ味のナマズ」を開発。餌や水質を工夫し、泥臭さがなく、身に脂が乗ったナマズを養殖。かば焼きにすると風味も見た目もウナギそっくりで、なかなかの評判。本格的に養殖するという▼ナマズは食感が似ている代替食として期待される。かつてはナマズを割醤油(わりした)で煮ながら食べたという。昨年は蒸して柔らかく焼き上げる東京湾のアナゴだったが、今年は北海道産のサンマのかば焼きがお目見え▼水産庁はウナギの養殖を許可制にし、稚魚を養殖池に放つ「池入れ」も規制。一方、ニホンウナギは自然の光を感知し、夜は深海の比較的浅い場所で泳ぎ、昼は深い場所に移動しており、産卵場への回遊ルートの把握が可能という。とにかく、脂の乗った天然のうな重が食べたい。24日は「土用の丑(うし)の日」。(M)


7月23日(木)

「チャレンジ」。挑戦を意味するのは言わずもがな。本紙の記事にも頻繁に出てくるし、総じて前向きな意味で使われる言葉であるはずだが、場合によっては重荷になる、ということか▼国内を代表する大手企業の東芝が揺れている。不適切会計問題の責任を取る形で、歴代3社長が21日付で辞任。取締役16人の半数にあたる8人が引責辞任した。その状況を呼び込んだのが、第三者委が調査報告書で記した「チャレンジ」と呼ばれる業績目標値▼辞任した社長は会見で「目標値にはきちんとした理由があり、各部門には実現可能なレベルで要請していた」と釈明したが、経営陣と現場で認識の違いは明白。社員らはノルマ達成のために不適切な会計処理に手を染めざるを得なかった▼問題は極めて〝日本的〟だ。現場の多くがおかしいと思っていても、経営トップへの進言はそうやすやすとはいかない。第三者委は「上司に逆らえない企業風土がある」と指摘したが、何も東芝に限ったことではないはず▼「止めるに止められない」類の話が目につく。函館に照らし合わせれば大間原発の建設も当てはまる。間違いを止めるために内部からチャレンジする勇気と、それを潔く認める環境が必要だ。(C)


7月22日(水)

安倍内閣の支持率が急落した。安全保障関連法案の衆院での強行とも言える採決後に。共同通信や毎日新聞の世論調査は支持率が30%台へ、逆に不支持が50%ラインを超えた▼国民の政治に対する直接的な意思表示の場は選挙だが、その思いを推し測る術として世論調査は大きな意味を持つ。確かに結果が絶対でないかもしれないが、複数の調査結果がほぼ同じ傾向を示すとなると、結果は重い▼近年は政治離れや政治不信が叫ばれる。選挙の投票率や政党支持率の無党派層の増加などから言われるが、だからといって政治に無関心なわけではない。政治家が調査結果に敏感な反応を示すのもそれ故▼今回も政府与党は(支持率が)ここまで下がるとは予想しなかったに違いない。安倍首相が「(参院では)分かりやすく説明する」と話したのはその証だが、世論調査にはそれほど大きな意義があるということだろう▼もし、の話は禁物だが、衆院で強行採決をしなかったら支持率はこうなっていなかったに違いない。このあとどう挽回するか、参院での対応が注視されるが、この直近の内閣支持率は…改めて「世論を甘く見てはいけない」と教えているようにも伝わってくる。(A)


7月21日(火)

40代以下の世代なら、小学生時代に一度はお世話になったであろう「ジャポニカ学習帳」。勉強用ノートという子どもたちには嫌われがちなアイテムの表紙にカラフルな動物や植物の写真を取り入れ、累計販売数12億冊以上という大ヒット商品となった▼中でも定番だったのが昆虫のシリーズだった。男の子には力強く輝くカブトムシやクワガタ、女の子にはきらびやかなチョウが特に人気が高かった▼その表紙から、昆虫が一斉に姿を消したのは2012年のこと。「(昆虫の写真は)気持ちが悪いから載せないで欲しい」というクレームが保護者や教師から多く寄せられるようになったことが理由という▼この事実が明らかになると、今度は「なぜ一部のクレームに応えてしまうのか」という批判が殺到。テレビや新聞などでも取り上げられ、企業対応の難しさが浮き彫りとなった▼そして今度は昆虫の表紙が限定発売ながら復活するというニュースが。歴代の表紙の人気投票上位を昆虫が占めたためだ。昆虫が苦手な人はもちろん存在するが、誰の目にも触れさせないのはやりすぎだ。むしろ、これをきっかけに昆虫に興味を持ってくれる子供が増えることに期待したい。(U)


7月20日(月)

ジョン・レノンの名曲「イマジン」をBGMに、長髪で眼鏡をかけたレノン風の男が「想像してごらん…辛くもなく、茶色くもなく、白いカレーを」とつぶやく。相方が「シチューです」と突っ込む。お笑いコンビ「ピース」がテレビに出始めたころのネタだ▼文学性が感じられなくもないネタだったが、このコンビでボケを担当している又吉直樹さんが、後に芥川賞作家になるとは、当時は誰も想像していなかっただろう。お笑い芸人としては初めての快挙だ▼お笑い好きの間で、かねてから又吉さんの読書好きは有名だった。近年はバラエティー番組に「読書芸人」として登場、読書の楽しさを伝え、豊富な読書量や文学に対する深い知識を披露している▼受賞作「火花」は、若手芸人と天才肌の先輩芸人の2人が、お笑いの世界でもがく姿を描いており、又吉さんにしか書けない小説。累計発行部数は100万部を超えるという▼今後の活動について又吉さんは「今まで通り芸人100」と発言しており、お笑い好きとしては頼もしい。芸人より小説家が偉いわけではないし、影響力は芸人の方が上な場合もある。想像してごらん…芥川賞作家がボケを貫く姿を。痛快だと思う。(I)


7月19日(日)

関西圏に続き北海道と首都圏を結ぶ寝台特急が早晩、姿を消そうとしている。北海道新幹線の開業と引き換えとばかり…車両の老朽化や青函トンネルの走行問題などを理由として▼誰しも新幹線を優先することに異論はない。何といっても北海道にとって待望久しい開業である。ただ、貨物はダイヤを調整しながら走らせるという。だとしたら寝台特急は何故?という思いが頭をもたげてくる▼少々乱暴な表現だが、要は客車を更新してまで、ということだろう。その一方で、JR西日本、東日本は競い合うかのように庶民の手が届かない自社管内周遊型の超豪華クルーズトレイン計画を打ち出している▼通常の寝台特急に需要がないわけではない。実際に個室などはなかなか確保できないといわれてきた。のんびり、ゆったりと旅を楽しみたいというファンがいるからだが、示されているのは廃止の考え▼道と青森、岩手県は先日、JR北海道に「観光面からも寝台特急は必要であり、首都圏と結ぶ本数を維持するよう」に要請した。もっと早くから強烈な維持運動すべきだったが、今からでも…時間はある。東日本へも強く。観光都市である函館からも声が上がっていい。(A)


7月18日(土)

子どもは勉強や進路、性格、友達、クラスなどをめぐる悩みを持っている。毎日のように「生活記録ノート」などに書き込んで担任の先生に提出、常にアドバイスを受けている▼「ずっと暴力、ずっと悪口。氏(死)にたい」。翌日は「唯一人いない世界に一人ぼっちになったような感じ」。4週間後には「生きているのにつかれてきた。市(死)んでいいですか」、翌日も「もう市ぬ場所は決まっているんです」▼これに対し担任は「いろいろ言われたのですね」「どうしたの?それは大変、解決したの?」「明日からの研修楽しみましょうね」と他人事のような対応。岩手県の中2男子生徒が鉄道で自ら命を絶った事件▼この記録ノートには1カ月前から「SOS」を発信。自殺直前にはネットの掲示板に「これが最後の投稿」と書き込んでいた。学校が全校生徒を対象にしたアンケートでも50人超が「いじめを見聞きした」と答えた▼13歳の孤立無縁の絶望感から出たSOSは担任の机に放置されたまま。いじめ防止対策推進法にはスクールカウンセラーなど専門家による対策組織の設置を義務づけている。救いを求める子どもたちに耳を傾け、学校全体で情報を共有、早期に命を守ろう。(M)


7月17日(金)

受験生のころ、とある大学を受けるため飛行機で大阪に行った。伊丹空港周辺には上空からでも形がはっきりと分かる古墳が点在し、歴史好きの筆者はいたく興奮した記憶があるが、首都にできる〝大古墳〟はどうなのか▼2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場をめぐるドタバタが続いている。2本の巨大なアーチ構造がネックとなって2520億円まで総工費が膨らみ、安倍首相は世論の批判を受けて建設計画の見直しを指示。なんともお粗末▼コンペの委員長を務めた安藤忠雄氏は16日の会見で、コストの議論にはなっていないことを認めたが、五輪前年に開かれるラグビーW杯に間に合わせるため、現行方針で押し切ろうという意見もある▼ネット上には日本ラグビー協会前会長で、東京オリ・パラ組織委員長の森喜朗元首相の名をもじり、新競技場を古墳に例えてやゆする声が出てきた。「しんきろう」とも読めるネーミングセンスにはただただ脱帽だが、笑うに笑えない▼古墳はそもそも、時の権力者の権威を示すもの。緑と水に囲まれただけならまだいいが、膨大な維持費を後世に残していかれたのでは、彼を崇める国民は誰もいまい。(C)


7月16日(木)

「アベ政治を許さない」「強行採決反対」などのプラカードを掲げた野党議員が委員長席を囲み、怒号が飛び交う大混乱の中、安全保障関連法案が衆院特別委員会できのう可決された▼法案に対して多くの憲法学者が「違憲」と指摘し、各種世論調査では国民の8割が説明不足を感じている。国会での審議時間が100時間を超えたとはいえ、時間が経過するにしたがって批判の声は高まるばかりだ▼ついにはこの日の委員会で、安倍首相自身も「残念ながら、国民の理解はまだ進んでいる状況ではない」と認める始末。それでも与党は採決を急ぎ、単独で強行採決に踏み切った▼内閣支持率は低下傾向にあり、衆院再可決の「60日ルール」も念頭に、これ以上反対論が広まらないうちに採決に持ち込んだということだろうか。そこには自らの正当性だけを主張し、反対意見に耳を貸さないという、このところの安倍政権の姿勢がうかがえる▼与党は16日にも衆院本会議で法案を可決、参院に送付する方針。全国と同様に函館でも16日以降、抗議集会が予定されている。安保政策の大転換が、国民を置き去りにしたまま決まっていくとすれば、政権への不信は募るばかりだ。(I)


7月15日(水)

「ニンテンドーDS」は携帯ゲーム機として画期的だった。2つの画面があり、タッチプレイが可能で、通信機能も備えた。自分も「脳トレ」のゲームで、計算や漢字の問題の答えを直接書き込むという、新たな楽しみ方にはまった▼コントローラーを片手で持ち、振るなどして遊ぶ据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」とともに、ゲームの可能性を広げ、ユーザーを拡大した。この2機種を開発した任天堂の岩田聡社長が先日、亡くなった▼岩田氏は札幌の高校在学時代から「天才プログラマー」と呼ばれ、ゲーム制作会社の社長などを経て、任天堂に請われて入社。2年後に社長に就任してからも「心はゲーマー」と話し、常にゲーム人口の拡大を目指してきたという▼DSとWiiの世界累計販売台数はともに1億台を超える。しかし、近年はスマートフォンの普及でゲーム専用機は苦戦し、任天堂も業績は悪化。そうした中でスマホゲームへの参入や新型機開発に取り組んでいた矢先だった▼日本のゲームは、ハードもソフトでも世界に誇れる産業だ。久しぶりにDSで遊びながら、岩田氏の遺志を継いだ革新的で魅力あふれるゲームが、今後も生まれてくることに期待している。(I)


7月14日(火)

もうすぐ夏休み。天気のよい日は外で遊び、悪い日は読書三昧。夏休みに160冊の本を読んだ小学1年生がいたというが、子どもたちに読み聞かせたくない本がベストセラーになった▼18年前、神戸市で起きた連続児童殺傷事件の加害者少年(32)が刊行した手記「絶歌」。10歳女児と11歳男児を殺害し、頭部を学校の正門前に放置。「酒鬼薔薇聖斗」なる名前で犯行声明▼性的衝動やネコの殺害シーンなどを記し、遺体放棄の具体的な行動にも触れて「自分は何者で何をしてきた人間なのかを思い出すと…崖から突き落とされたような気持ち」と記述。匿名で被害者遺族に知らせぬまま発売▼事件の真相や背景を知り、教訓を得たいという思いからか出版は15万部を数え、被害者遺族は出版社に本の回収を申し入れた。本を買わないよう、売らないよう市民や書店に呼びかけた市や置くのを見合わせた図書館も▼被害者遺族の胸中を思えばやむを得ないと受け止めるか、難題だ。21日から「夏休み子ども読書週間」。孫娘には、鬼にされてしまう「なきむしおにごっこ」、不思議なお客さんが増える「クリーニングやさん…」などを買い与えたが、殺伐とした「絶歌」なんてとんでもない。(M)


7月12日(日)

国会議決のキーポイントは「数」と「時間」。議席数と審議時間を指すが、過半数を占め、一定の時間を費やせば…今、開会中の国会はまさにその姿を絵に描いたように動いている▼集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案審議で。国民の81%が説明不十分、今国会で成立させることに61%が反対(毎日新聞世論調査)と民意が示されているが、政府与党は来週中の衆院通過方針を変えていない▼その背景にあるのは絶対的な議席を持っている数の力であり、審議に時間を費やせば手続き終了という思い。(目安とされる)審議時間は十分確保した、という発言がそれを物語っている▼改めて言うまでもなく、憲法にかかわるこの法案は「最」の冠がつく重要法案である。国民の理解が大前提といわれるのもそれ故。大事なのは法案の中身であり、時間の制約なしに扱って少しもおかしくない▼政府のこれまでの説明に対し、国民の半数以上が「理解できた」「成立させていい」と受け止めていないのは、他の世論調査からも明らか。なのに…伝わってくるのは政府与党の急ぐ姿。あくまでも今会期にこだわり「数」と「時間」で押し通すのか…国会から目を離せない。(A)


7月11日(土)

終戦の日から100日目の秋にプロ野球(当時は職業野球)が復活した。崩壊状態だったチームから選手が神宮球場に駆け付け、東西対抗戦。左打者の大下弘選手の〝青バット〟に勇気をもらった▼原爆投下で敗戦となった当時の子どもたちの遊びは野球。古着などを何枚も重ねて縫ったグローブ、小石に綿糸をぐるぐる巻いた球を使い、校庭や道路で夢中になったものだ▼「原爆の日」を知っている人はいかほどか。5年前の調査では、被爆地の広島の小学生で3割台、中学生で5割台だった。まして全国の子どもたちは…。そこで被爆の記録を受け継いでいこうと、プロ野球の広島カープが立ち上がった▼8月6日の対タイガース戦で「ひと味違う」試合を見せてくれる。70年後のその日に監督、コーチ、全選手が同じ背番号「86」に統一したユニホームを着て臨む。胸には赤文字で「PEACE(平和)」と入れて▼憧れの選手が揃って「86」でプレーすれば子どもたちも、その日付を深く胸に刻むだろう。エース前田健太投手は「野球を通じて『忘れてはいけない』という思いを全国に伝えたい」と話す。被爆者は高齢化し語り部は減ったけど、スタジアムから「戦争はいけない」と叫ぼう。(M)


7月10日(金)

ダイエット目的で、休日に五稜郭公園を何週かウオーキングするのが筆者の最近の日課だ。1周1・8㌔の外周をもっぱら歩いているが、一の橋あたりで中国語を耳にする機会が以前から各段に増えた▼函館に限らず日本各地に押し寄せる中国人観光客の〝爆買い〟が各地の経済を支えている中、ここにきて中国株式市場の急落が進んでいる。8日には日本株も連鎖的に売られ、2万円台を保っていた日経平均株価の終値は1万9737円と、今年最大の下げ幅▼言わずもがな中国経済の先行き不安が要因だが、こうなると函館にも影響が及んでくるのは想像に難くない。今年に入って3月に天津、今月3日には北京との直行便が就航したばかりだ▼中国をはじめ外国人観光客が来ているうちはまだいいが、その旺盛な観光意欲を下支えする円安がいつ落ち着くとも限らない。13日からは市の官民トップが現地の航空会社を回ってセールスに歩くが、皮算用通りに事が進むかどうか、一転して不透明になってきた▼行政や経済界は〝ポスト・外国人観光客〟対策を、北海道新幹線開業効果が見込める今後数年のうちに考えておく必要があるだろう。ブームは何にせよ、やがて終わりがやって来る。(C)


7月9日(木)

生活にゆとりを感じる要素は幾つかあるが、誰にも共通しているのは家計の余裕。だが、現実に目を向けると、そのやり繰りの苦労を実感している家庭が6割を超しているという▼厚労省の国民生活基礎調査が明らかにしている。政府は大手企業の賃上げ実績や雇用環境が改善されつつあると強調して、景気の回復に胸を張るが、この調査結果は皮肉というほかない。生活実感はむしろ逆という答えなのだから▼「生活が大変苦しい」と答えた世帯主は29・7%、「…やや苦しい」が32・7%を数え、合わせると3世帯のうち2世帯に当たる62・4%。1986年に調査が始まって以来、最も高い率となっている▼生活のゆとりは、支出が収入で十分に賄えて生まれる。賃上げなどで収入が増えたところで、物価の上昇や増税などで支出がそれを上回ると「収入は増えれども生活は楽にならず」ということになる▼ちなみに、日本経済がまだ低迷期を抜け出せずにいた10年前(2004年)でも「苦しい層」は55・9%、5年前でも59・4%だった。景気が回復基調にあると言われるに生活の“ゆとり感”は広がっていない。何か変…政府は示されたこの姿をどう受け止めているだろうか。(A)


7月8日(水)

1万円で1万2000円の買い物ができるプレミアム付き商品券が続々と発売されている。円安で生活必需品が値上がり、年金も目減りするとあって、ちょっとお得な金券の発売日には行列ができるほど▼国の緊急経済対策の目玉として補正予算に盛り込まれた交付金。地域消費喚起や生活支援型という名目で総額約2500億円。自治体の判断で使い道を決める。全国の97%がプレミアム商品券に充てているという▼函館市はプレミアム付き商品券と子育てサポート商品券の2種類を発行。商品券は1000円券12枚つづりを1セットとし、1万円で販売、1人10セットまで。販売所は市内15カ所に設けて、今月25日に一斉に発売▼子育てサポート商品券は児童1人当たり1万円分の商品券。申請書の締め切りは来月末まで。北斗市でも1セット(500円券25枚)1万2500円分の商品券を1万円で発売中▼かつての地域振興券では60%超が貯蓄に回り、消費拡大につながらなかった。今度は旅行や宿泊の需要を創出する「ふるさと割」や「プレミアム宿泊券」も登場。高齢者や障害者、低所得者などのために別枠を設けた自治体もあるという。新しい需要や消費の創出につなげたい。(M)


7月7日(火)

サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」が6日、女子ワールドカップ(W杯)決勝で、米国に2—5で敗れ、日本列島が願った連覇は成らなかった。道南でも朝からテレビ観戦で応援し、ねぎらいの声を送った人は多いだろう▼決勝前日、宮間あや主将は「(優勝することで)女子サッカーをブームではなく、文化にする」と決意を示していた。4年前のW杯初優勝で国内の女子サッカーは盛り上がったが、それが一過性のものとなりつつあることを危惧している▼この結果で「ブーム再来」にもならないのか…。そんなことはないはずだ。彼女たちはW杯準優勝という素晴らしい金字塔を打ち立てたのだから。なでしこの活躍で覚えた感動を忘れず、声援が結集していけばリオ五輪で女王奪還につながる。観戦後「頑張った」「ありがとう」と言った人たちがその気持ちを持ち続けてほしい限りだ▼「ブームで終わらせないために」の活動はさまざまだ。かつてはJリーグもそうであったが、創立から地域密着を図ったことで成功したといえる。周囲を動かすのはリーダーの強い意志と行動力。そして組織力。そういえば政府が声高く掲げる「地方創生」もブームであってはいけないのだ。(R)


7月6日(月)

プロ野球も折り返し地点を過ぎ、道民の多くにとっては日本ハムの順位争いが気になるところ。個人記録としても打撃陣では中田、投手陣では大谷のタイトル争いに期待が高まる▼ところで今、セントラル・リーグが非常に興味ことになっている。今月3日の試合終了時に、首位のヤクルトが37勝38敗で借金1という前代未聞の状態となったのだ。1〜5位までのゲーム差もわずか0・5と大混戦だ▼首位なのに貯金がない理由は、セリーグとパリーグのチームによる交流戦にある。今年はセリーグがパリーグに対し44勝61敗3分と大きく負け越し、史上最低の勝率を記録した▼2004年に起きたプロ野球再編問題をきっかけに05年から始まった交流戦だが、セリーグが勝ち越したのは09年の1回だけ。通算成績でも865勝774敗53分とパリーグが圧倒している▼まさしく「人気のセ、実力のパ」を証明しているが、地方球団を中心にパリーグ人気が高まっている中、このままでは「人気もパ、実力もパ」という日が来てもおかしくない。セリーグとしては名誉挽回のために、オールスターゲームで一矢を報いたいところ。今年は例年にない本気モードの戦いが繰り広げられるかもしれない。(U)


7月5日(日)

「1984」という米アップル社のCMは世界的に有名だ。全体主義の近未来社会を描いたジョージ・オーウェルの同名小説をモチーフとし、巨大企業・IBMへ挑むアップルという構図を表現、同年に放映された▼そのアップルが今月から始めたストリーミング(逐次再生)音楽配信サービス「アップル・ミュージック」に対し、「1989」というアルバムを世界中で大ヒットさせている米女性アーティストのテイラー・スウィフトがかみつき、話題になった▼3カ月無料のお試し期間はアーティスト側に楽曲使用料を支払わない方針だったため、テイラーは「進歩的で寛大な企業らしくない」と批判。アップル側はすぐに使用料を支払うよう方針転換し、テイラーも楽曲提供を決めた▼84年当時の音楽ソフト市場はレコードが主流で、89年ごろにはCDの時代に。国際レコード産業連盟のまとめによると、昨年はダウンロードや定額配信などネット販売がCDを上回るようになった▼「1984」から30年余りでアップルは巨大化、89年生まれのテイラーは世界の歌姫になっって大企業に影響を与える。ITが普及し音楽産業が様変わりする中、80年代には想像もできなかった現実がある。(I)


7月4日(土)

列車など公共交通機関を利用した際、大声での会話や携帯電話の通話といったマナーの悪い同乗者に対し不快な思いをすることは少なくない。しかし、居合わせた1人の乗客の悪意により、命まで奪われる惨劇が起こるとは▼神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線で71歳の男が焼身自殺し、乗客の女性1人が死亡した。1964年の新幹線開業後、事故で乗客が死傷したのは初めてで、国土交通省は最初の列車火災事故と認定。来年3月の北海道新幹線開業に水を差しかねない事件だ▼今回は放火という犯罪であり、未然防止は難しい。車両の老朽化や整備不良、人為的ミスといった列車運行の根幹にかかわる問題ともいえない。それでも安全対策に改善の余地がないか、十分に検証していく必要がある▼空港並みに手荷物検査を強化するのは、場所やコスト、乗客の利便性を考えると非現実的。駅や車内で不審な人やものへの警戒を強化していくしかないだろう▼北海道新幹線の場合、気になるのは青函トンネルの安全対策だ。4月には特急の発煙事故があったばかりで、排煙や避難対策が課題。JR北海道はじめ関係機関が可能な限りの対策を講じ、開業の日を迎えてほしい。(I)


7月3日(金)

小樽市議会はおたるドリームビーチを、市が暫定的に管理するための予算案を否決した。海の家が建築基準法に反し、今夏は営業できないことへの対応だったが、市長選挙のしこりもあってか…▼それにしても否決理由が説得力に欠ける。「市民はあまり利用していない」。だから税金を使うのはなじまないということだが、穿(うが)った見方をするなら「よそからは来てくれなくていい」というようにも聞こえる▼一方で多額の税金を使ってでも、多くの人に訪れてもらうために知恵を絞る市町村が少なくない。知名度の高い海水浴場はうらやましい都市財産であり、限度はあるにせよ、市町村が担って少しもおかしくない▼だが、札幌市に近く、黙っていても観光客が訪れる小樽市の議会が下した判断は、そこまでする必要はない、と。そうは言っても海水浴を楽しむ人はやってくる。「海の家はありません」と言ったところで▼多くの人が入れば、環境や保安の問題などがついて回る。ごみは散乱し、保安の問題も生じたら、予算の可否に関係なく、市としても無関心ではいられない。早急に次善の策を講じられるのだろうが、だとしたら否決の判断はどうなのか。一つの問題提起かもしれない。(A)


7月2日(木)

先月26日、所用で千代台公園に出かけたところ、オーシャンスタジアムの周りにはすでにプロ野球日本ハムの試合を見ようと並んでいる人を見かけた。しかし30日の試合は雨天中止。その心情は察して余りある▼日本ハムの公式戦は年1回、しかも平日開催。昨年の観衆はわずか1万1000人だった。球団側にとっては移動の大変さもあるだろうが、球場施設そのものにもう少し魅力があれば—と思わずにいられない▼同スタジアムは約2万人収容ではあるが、ネット裏に比べて1、3塁側スタンドの傾斜が緩く、座席によっては非常に見にくい。加えてナイター設備もない。旭川でナイター開催が可能になった点と、函館での公式戦減少はあながち無関係ではないのでは▼隣の陸上競技場もまた収容人員約1万5000人とJリーグ基準を満たしておらず、コンサドーレ札幌戦は数年来開かれていない。ぜい弱な市の財政上、改修も難しい▼そんな中で函館アリーナは旧市民体育館を生かす当初の方針から一転し、完全に生まれ変わって来月オープン。膨大な維持費への懸念は数多くの大会やイベントを呼び込む以外に払しょくする道はない。市民に愛され、利用者に喜ばれる施設になってほしい。(C)


7月1日(水)

100㍍など陸上の短距離種目では1秒で大差がつく。株式市場や為替相場は1秒ごとに動く。「1秒たりとも無駄にできない」という表現もよく使われる。とはいえ、日常生活で1秒を意識することはあまりない▼今日7月1日は、ふだんの日より1秒長い1日となる。午前8時59分59秒のあとに、「59分60秒」が挿入される。3年ぶり26回目の「うるう秒」の日だ▼かつて使われていた地球の公転・自転に基づく「天文時」では、1秒の長さが変化する。現在は原子が出す周波数に基づく「原子時」が世界基準となっており、1秒の長さは不変。この2つの時刻には「ずれ」が生じるため、数年に1度のうるう秒が設けられる。1972年から25回実施されている▼たかが1秒とあなどるなかれ。前回の12年のうるう秒の際には、インターネット交流サイト「ミクシィ」でシステム障害が発生した。海外の航空会社では400便以上に遅れが出るなどのトラブルがあったという▼情報通信技術、コンピューターが広がる社会では、1秒の違いが混乱を招く危険性をはらむ。国際的に存廃の議論もあるようだ。ふだんより1秒長い今日の1日は、どんな日になるのだろうか。(I)