平成27年8月


8月31日(月)

界陸上、世界柔道、ワールドカップバレーと、国際スポーツ大会が連日盛り上がりを見せている。来年のリオデジャネイロ五輪の出場予選を兼ねている大会もあり、五輪イヤーへのカウントダウンは始まっている▼リオ五輪の次はいよいよ東京五輪が開かれる。しかし、その中心的会場となる新国立競技場の建設計画は、ようやく総工費の上限が決まった段階。新国立建設を巡る紆余曲折を振り返るつもりはないが、徹底的な見直しが決まった以上、スピーディーに計画が進められることを見守るしかない▼しかし、私のような素人から見ても気になる点はいくつもある。総工費削減にこだわる余り、必要である機能までも犠牲にされているような気がしてならない▼目玉のひとつだった観客席の冷暖房設備も見送られた。約100億円の削減になるそうだが、真夏の暑さ対策への効果的な代替策はあるのだろうか▼今回、新国立建設に非難が集中した理由は、予算が膨らんだことそのものより、説明がないまま計画が進められようとしたことが大きい。節約はもちろん大事だが、必要な部分にはしっかりとお金をかけるという、公共施設に関する基本的な理念に立ち返って欲しい(U)


8月30日(日)

万葉人は一人寂しく、悲しく相手を想う恋を「孤悲」と詠んだ。還暦すぎて20年になり、傘寿の高校同期会を母校があった江差で開いた。250人のうち40人ほど駆けつけたが、3分の1は孤悲だった▼同期会は数年に一度は開いているが、年々参加者は減っている。夫や妻の看護・介護に追われて一泊旅行ができない、子どもたちから「その体では無理」と諭されたり、年金が減って旅費が工面できないなど、悲痛な理由▼傘寿を迎え最後の同期会とあって、3人が卒業以来、初めて顔を見せた。62年ぶりの再会だ。「同総会 顔より先に 頭見る」「久しぶり〜 名がでないまま じゃまたね〜」。サラリーマン川柳そのままの光景▼遠足を兼ねてアルミの弁当箱を持って山に登りヒバを植樹したこと、かもめ島での水泳大会、ノーモア・ヒロシマの仮装パレードなどで尽きぬ懐旧談。かもめ島入り口に新設の大きな海上鳥居や開陽丸も見学▼男性は平均寿命を超えた。「大介護時代」に入ったことを痛感。介護の苦労は、いつやってくるか分からない、いつ終わるのかも分からない。孤悲になるかも…。箱館戦争の舞台にもなった江差。♪蝦夷興亡の歴史秘む〜 校歌などを声高らかに歌って、帰路についた。(M)


8月29日(土)

連日熱戦が繰り広げられている世界陸上。日本女子短距離の第一人者で十勝管内幕別町出身の福島千里選手は100㍍では準決勝、200㍍では1次予選で敗退した。それでも、世界大会に出場するたびに福島選手の成長ぶりに感心している▼成績のことではなく、福島選手のコメントについてだ。2008年の北京五輪出場が決まった際、何度か直接取材する機会があったが、当時の彼女は典型的な〝記者泣かせ〟。質問に「はあ」とか生返事を返され、記事を仕上げるのに苦労した▼彗星のごとく日本のトップに立ち、殺到したマスコミに戸惑ってもいたのだろう。それからも第一線で活躍し、スポットを浴びるうちにコメントもどんどん成長した。今回も「走ったからこそ分かる課題も見えた」と来年のリオ五輪を見据えていた▼福島選手は高校卒業後、北海道ハイテクAC(恵庭市)に所属してから大きく飛躍した。そのハイテクACでは100㍍の中学女王となった町井愛海選手(北斗浜分中2年)も練習に励む▼5年後の東京五輪で福島選手は32歳、町井選手は19歳。そろって出場を期待するには気が早いが、北海道の女性スプリンターがさらに成長していく姿に期待したい。(I)


8月28日(金)

函館・道南でも海外からの観光客の姿が目立つ。特に中国や台湾などアジアからの人たちだが、政府観光局が発表した7月末現在の訪日外国人観光客数は、昨年同期比47%増の1105万人▼このまま阻害要因がなければ、昨年の1341万人を超えるのは時間の問題。定期便の増加で航空路線が充実、さらに中国に関しては日本政府が数次旅券の発給要件を緩和したことも追い風になっている▼振り返ると15年前は年間500万人にも満たなかった。それが2年前に1000万人台になって、政府が東京オリンピックの2020年に掲げている目標は2000万人。その達成も現実味を帯びてきている▼迎える環境は十分か、そんな指摘を受けて…先日の日本経済新聞にこんな記事が掲載されていた。経産省がホテルや飲食店などを対象に「訪日客にやさしい店」認証制度の来年度導入を検討している、と▼“おもてなし度”を図り、高めることが目的という。その判断項目は外国語の案内表記の有無やカード決済の可否など、いわば基本的なこと。難しいことではない、認証という名のお墨付きを受けるメリットは大きい。としたら、観光が産業の柱である函館・道南も無関心ではいられない。(A)


8月27日(木)

二十四節気の一つで、残暑が和らぐとされる処暑(23日)が過ぎ、クールビズを実施している会社のフロアでは、半袖と長袖の着用者が半数ずつになってきた。富山出身のコラム子は数日前から長袖。次の休みは半袖をしまうつもり▼気象庁の速報値によると、函館の平均気温は今夏、平年より1度ほど高い。30、60、90日平均は平年の0・8〜1・0度高だが、最近の5日間をみると0・8度低い。季節の変わり目で、体調管理にはご注意を▼一方で、最近の空は秋に出現する細長い筋状の雲「巻雲(けんうん)」よりも、灰色で厚い雲が多い。台風の接近で大雨がないのは幸いで、被害を受けられた地域に謹んでお見舞い申し上げたい▼台風15号も数日前には北海道に接近するかもしれない予想もあった。最近は5日後、72時間後の進路予想もあるほか、大雨についてもレーダーによる周辺地域の雨量情報をスマートフォンやパソコンで見ることができる▼これらを上手に利用し、屋外イベントでは参加者の安全に配慮してほしい。道南では“ゲリラ豪雨”と呼ばれる集中豪雨は少ないが、10〜11月の気温は平年並みか高いという予想。竜巻発生や大雨になる可能性は決してゼロではない。(R)


8月26日(水)

夜、自宅の窓際にいると「カタンカタン…」とレールの継ぎ目を走る夜汽車の音が聞こえてくる。乗客のさまざまな思いを乗せて走る姿に、哀愁を禁じ得ない▼JRの寝台特急「北斗星」がラストランを終えた。半世紀以上全国各地を駆け抜けた〝ブルートレイン〟も北斗星が最後。1988年、豪華列車の触れこみでさっそうと登場した北斗星も、時代の流れには抗えなかった▼海の向こうの青森以南は、かつてブルートレインが旅客輸送の中心を担った。東北本線を一直線にひた走る「はくつる」、常磐線経由の「ゆうづる」…。奥羽本線経由の「あけぼの」や急行「津軽」は、青森県民が東京で成功を収めて乗車したことから「出世列車」と称された▼かく言う筆者も、大学受験の際に北斗星を利用した。他の乗客と会話したり、窓を流れていく景色をぼんやりと眺めた記憶を思い出す。寝台列車の長い旅路の中で人生を深く考えたという人も多いのでは▼北斗星最後の日、くしくも新幹線の歴史を振り返る企画と、乗務員の訓練走行の記事が本紙1面を飾り、主役交代を印象付けた。スピードに乗った新幹線が青函トンネルを抜け、乗客の笑顔を運んでくる姿が待ち遠しい。(C)


8月25日(火)

山岳遭難が後を絶たない。中でも登山難度の高い山を抱える長野県は、遭難件数も死者・行方不明者も多い。対策としてさまざまな啓蒙活動に力を入れ、細かな情報提供にも務めている▼登山は危険を伴う。登山道が整備されている所はむしろ少ない。尾根などは足を滑らせやすく、天候の急変も日常的で、雨や霧に悩まされることも。事前に十分な状況把握を叫ばれるのもそれ故▼同時に、登山者に問われるのは自分の技量を知っておくこと。だが、必ずしも十分でない。その対策として長野県は昨年、登山ルートを技術面と体力面から難易度を分類した手引書を作成した▼今年はさらに一歩進め、ルート上における難易度情報をまとめ、来年には提供する考えという。先日の毎日新聞が報じていたが、それは整備済み、急斜面、滑落の危険大、ハシゴやクサリありなど、5つの表現で示すマップ▼入山の判断に役立ち、入山後の注意も喚起できる。まさに基本的な登山情報だが、わが国では初めての取り組み。北海道も大雪や日高の連山を抱え遭難が少なくないだけに、参考になる試み。最終的には登山者個々人の意識、認識に委ねられるが、こうした基本情報に過ぎたるはない。(A)


8月24日(月)

静かな郊外のスーパーまでが24時間営業をうたってネオンをつけ、不夜城は当たり前の光景に。好奇心から中学生たちも出入りし、夜の怖さや不安を忘れさせた…▼大阪で中学1年の13歳の女子生徒と12歳の男子生徒が45歳の男に惨殺された。少女は行き先を告げずに午後6時ごろ外出。男子生徒は同9時ごろ「少女と遊びに行く」と家を出た。深夜から明け方まで商店街をうろうろ▼かつて守られていた「門限」は死語になったのか。ある調査では「特に門限はない」が7割を超えた。ネット社会と24時間社会が昼夜の感覚を狂わせ、携帯電話でつながっているから夜間の外出も安心だと錯覚させたのか▼中学生の門限は18時か19時が普通。部活や塾などがあれば22時。それも「GPS携帯を必ず持つ」が条件。大阪の女子生徒はラインで友だちと「野宿しようと思う」「京都に行く」などと交信しているが、親とのやりとりは切なかった▼夏休みの2人の冒険は悲劇に終わった。深夜の生活が子どもに必要だろうか。なぜ夜の外出を止めなかったのか。子どもが犠牲になるたびに突きつけられる課題。まず親子で話し合って門限を設け、スマホや携帯を過信しないようにしたい。(M)


8月23日(日)

♪ほう ほう ホタル来い こっちの水は甘いぞ〜 幼少時、よく歌った童謡。夏休みに故郷の能登半島に行って来た。朝の連続ドラマで有名になり、観光客もホタルに感動していた▼家の裏に小さな池があり、夏の夜には多くのホタルが飛び交う。捕まえて虫カゴに入れたり、蚊帳の中に放して遊んだりした。しかし、近年は幼虫が育つ田や池など環境破壊が進み、ホタルは減る一方という▼町のあちこちに「川をきれいに ホタルのすめる里に」など、ホタル保護と環境美化を呼び掛ける看板。ホタルの願いとして「わたしたちを捕まえないで 狭いカゴに入れられて死ぬのはごめんです」と訴える看板も▼本紙によると、上ノ国町の繁華街でホタルの乱舞が初めて確認された。ネオンに負けじと命の光を輝かせ、住民も驚いていた。水路に幼虫を放して「ホタル学習」で観察する小学校もある▼電灯で照らさない、さわらない、採らないの3原則を守り、保護しよう。淡い光は宙を舞う魂にも例えられ、刹那的な光は幻想の世界へ誘う。生息するには、いい水、いい空気、いい土が必要。甘い水は「清らかな水」で、人間も同じ。闇を舞う小さな光は「生きる命」の大切さを教えてくれる。(M)


8月22日(土)

農業への新規参入者が昨年、道内で久々に100人を超えたという。後継者難などから離農が続き、農家戸数、従事者とも大きく減少しているが、他の職から転じる新規参入の誘導は対策の柱の一つ▼農業王国・北海道を支えるのは誰でもない農業者。農地がいくらあろうと、携わる人がいなければ生産は確保されない。離農者が出ている分、経営規模は拡大されてきたが、将来を担う人材の確保が課題であることに変わりはない▼農林業センサスによると、1990年から20年の間に道内の農家戸数はほぼ半減し、今や約4万2000戸。この現実は渡島、檜山管内も例外でない。新規就農(学卒、Uターン、新規参入)が求められる理由もそこに▼ここ10年ほどは年間600人レベルで推移している。後継子弟が少なくなり、新規参入に期待がかかるが、簡単な話ではない。誘導策がとられてはいるものの、準備が大変なうえ経験が問われる仕事だから▼それでも決断し、踏み出した人たちが…昨年は125人。過去3年間では304人を数える。14年ぶりの100人超えは明るい動き。大事なのはこの人たちにずっと農業を続けてもらうことであり、行政や地域には改めてサポートが求められる。(A)


8月21日(金)

「月曜日が嫌いだから」。1979年にアメリカの小学校で発生した銃乱射事件で、犯人の16歳少女は動機をこう語った。後にアイルランドのロックバンド、ブームタウン・ラッツが事件をモチーフにした「哀愁のマンデイ」という曲を世界中でヒットさせたことも有名だ▼銃乱射は特異だが、休日明けの月曜日や長期休暇後の登校や出勤は、憂鬱(ゆううつ)な気分になりがちだ。長寿アニメ「サザエさん」が日曜日の夕方に放送されることから、「サザエさん症候群」という言葉もある▼一方、子どもたちには深刻な「新学期は嫌い」という傾向もあるようだ。内閣府の自殺対策白書によると、1972〜2013年の18歳以下の自殺人数の日付別統計で、9月1日が131人で最多だった。4月11日、4月8日、9月2日、8月31日が続く▼夏休みや春休みなど長期休業明け直後に子どもの自殺が多い。同白書では、この期間に学校・地域・家庭での見守り強化や、相談や講演などを集中的に行うことが効果的だと指摘する▼本州の9月1日に先立って、函館の大半の小・中学校は19日に新学期を迎えた。周囲の大人はこの時期の子どもたちをより注意深く見つめてほしい。「哀愁の新学期」とならないように。(I)


8月20日(木)

学生時代、京都の五山送り火で大文字の火床を目指し登った。亡き人の霊を見送る「送り火」はお盆最終日の16日だが、今夏は二十日盆(終い盆)まで家族に寄り添っていた霊が多かったのでは▼先の大戦の戦没者は約310万人。海外や沖縄などの激戦地では約240万人が亡くなり、このうち約113万柱の遺骨は収容されず、家族に戻っていない。戦後の旧ソ連などの抑留死亡者の約3万柱も帰らぬまま▼今年のお盆には異国の地で散った未収容の精霊も帰ってきたと信じたい。家族の幸せや健康を願ったが、送り火の日に足が止まった。安保法案を巡って、精霊を死に追いやった「戦争の足音」が聞こえてきたからだ▼侵略、植民地支配、おわび、痛切な反省—。安倍首相の70年談話は間接的に引用したにすぎず、首相自ら明確に発した言葉とは思えない。全国戦没者追悼式の天皇陛下の言葉「深い反省」「平和の存続を切望する国民の意識」が救いだった▼「日本が戦争に巻き込まれる」という心配が高まり、異国の精霊も惨禍が繰り返されぬことを切望し、二十日盆まで家族の傍に。二十日盆は、みんなの幸福と無病息災を願い、ご馳走を食べて、最後の盆踊りに興ずる。(M)


8月19日(水)

道内の今年の交通事故死者が15日で100人を超えた。年間で最も少なかった昨年より11日早く。一層の減少には危険信号が灯った状況で、改めて「安全運転」が叫ばれている▼北海道は交通事故多発地の汚名を背負ってきた過去がある。ワーストワンという言葉が物語っているが、この10年余りは減少に転じた。その裏には道路環境の改善に加え、関係者の地道な指導、啓発活動もあった▼2006年に300人、11年には200人を割って昨年は169人。発生件数も減少傾向にあり、今年も現時点で昨年より800件余り少ない。いい傾向だが、それでも7か月半で7600件余りも起きている▼高齢者が関わる事故の増加も重くのしかかっている。今年の事故死者100人のうち半数の50人が高齢者、引き起こした側の第一当事者も3人に1人の32人を数える。いずれも昨年同期に比べて10人以上増えているという▼高齢化時代の社会現象の一つだが、どう対応していくか。この実態は今後の大きな課題であることを物語る。大事なのは本人の注意意識だが、高齢者以外の世代にも一層の理解が求められる。「安全運転」は世代を問わない。言うまでもないが、ハンドルを握る責任は重い。(A)


8月18日(火)

函館・道南の理科教育に貢献した渡辺儀輝さん(現立命館宇治中学高校教諭)が、楽しみながら学べる理科本(「親子でハマる科学マジック86」・新書刊190㌻・税込み1080円)を出版した▼今から20年ほど前になる。渡辺さんが南茅部高の教諭当時は“理科嫌い”という言葉があるほどだった。「なんとか理科好きの生徒を増やしたい」。そのためなら…少しも労力を惜しまない先生だった▼もちろん市立函館高勤務時代も。今回、出版の情報に触れて、改めて本紙が創刊した当時が思い出される。「できたら紙面を使わせてもらいたい」。それに地元紙として逆にお願いした経緯があるから▼パソコンが今ほどの機能を備えていなかった時代。テーマも自分で考え、イラストも手書きでのスタートだった。現在も続く土曜日掲載の「理科実験」である。函館に対する愛着もあって京都に移ってからも▼多忙な中、テーマを考え書き続けて今月15日付で掲載は808回。今や地元人による超長寿連載の一つとして欠かせないコーナーになっている。本では86の実験が取り上げられているが、いずれも「家庭にある身近なものでできるマジックばかり」とか。渡辺さんの熱意には頭が下がる。(A)


8月16日(日)

誰しも、人生において一度や二度は「やってしまった」と思うような〝しくじった体験〟があるのではなかろうか。失敗を取り返す機会があるのであればまだいいが、一度きりの失敗がその先にしばらくついて回ることもまたあるケース▼芸能人や文化人が自らの失敗談を授業形式で赤裸々に語るテレビ番組「しくじり先生」(HTB、月曜夜)。今春に深夜からゴールデンタイムに昇格して人気を集めているようだ▼登場する〝先生〟たちはお笑い芸人や女優、IT企業経営者、野球選手ら多種多彩。失敗した過去を振り返り、人前にさらす作業は辛いはずだが、失敗談を上手に笑いに昇華させている点で番組制作者の腕が光る▼何もしくじった本人に限った話と思うなかれ。頭をひねらずとも、視聴者である我々もまた日常生活に生かすことのできるエピソードが多いと感じる▼「リズムネタ」で人気を集めたお笑いコンビは、テレビ局のディレクターから言われるがままにそのリズムネタを延々とやり、気がつけばレギュラー番組を失ったと説明、現状を変える勇気が必要だと切々と訴えた。まさに「失敗は成功のもと」だが、失敗する前に過ちに気付くことの大切さにも、改めて目を向けたい。(C)


8月15日(土)

本紙社会面の四コマ漫画で「なんか線香くさい」「お盆近いからだべか」—スズメ一家が線香ゆらぐ終戦の日を感じている。セミは「戦争は嫌い」と反戦歌を歌っている▼ベトナム戦争の頃から歌われた反戦歌。歌謡界の女王、美空ひばりが三つの反戦歌を熱唱している。『一本の鉛筆』は34年前の広島平和音楽祭で発表されて以来、心打つ歌詞に感動。♪一本の鉛筆があれば戦争は嫌だと私は書く〜▼『8月5日の夜だった』は原爆投下前夜の話。♪女心は綾結び ホタル一匹闇をさく あなたはどこに〜 翌日に悲惨な地獄が訪れようとは。橋のたもとで交わした指きり、お嫁さんになる約束…▼もう一曲は『白い勲章』で♪俺が死んだらくちなしの花を飾ってくれるやつが一人〜と反戦の愛を歌う。ひばりが亡くなる前年に楽屋に運び込んだベッドで点滴をうちながら絶唱した『一本の鉛筆』▼♪一本の鉛筆があればあなたへの愛を書く〜 「いばらの道が続こうとも平和のため我歌う」が最後の言葉。イスラム過激派から銃撃され、ノーベル平和賞をもらったマララさんも「一本のペンで世界が変わる」と叫ぶ。15日の終戦の日は「♪一本の鉛筆があれば人間の命と書く〜」を歌おう。(M)


8月14日(金)

国内では1年11カ月ぶりに、今日から原子力発電所でつくられた電気が送電網を流れることになる。11日に再稼働した九州電力川内原発は作業が順調に進み、発送電を開始する▼原発ゼロの期間を振り返ると、懸念された電力不足や大規模停電はなかった。一方で北海道電力は発電コストの上昇から2度の電気料金値上げに踏み切り、道民や企業の負担は重くなった▼政府は2030年時点の電源構成目標で原発の比率を20〜22%としている。新たに原発をつくるか、相当数の老朽原発を延命しないと達成できない。原発は低コストといわれるが、新基準での安全対策、自治体への交付金などを含めても安価といえるのか。廃棄物処理も見通しが立たない▼厳しくなったとされる新規制基準での審査だが、原子力規制委員会も「安全を保証するものではない」と繰り返す。福島では今も11万人が避難を余儀なくされている。各種世論調査では国民の半数以上が原発再稼働に反対する▼リスクを覚悟の上で原発回帰を進めるのか、負担を受け入れて再生エネルギー拡大の道を歩むのか。二者択一ではなくバランスを取ることも必要だろう。国民の思いを反映したエネルギー政策が望まれる。(I)


8月13日(木)

わが国の食料自給率が一向に改善されない。農水省が先日、発表した昨年のカロリーベース自給率は39%。これで40%ライン割れは5年連続というから、下方修正した目標からもかけ離れたまま▼自国で消費する食料は、自国で賄うに越したことはない。輸入が止まったら食料不足に直面するからで、食料安保という認識があるのもそれ故。世界ではオーストラリアなど100%を超えている国が複数ある▼それに照らしても40%レベルはあまりに低い。そんなわが国だが、実は80%時代があった。1960(昭和35)年がピークの当時だが、その頃からパン食など食事の欧米化が浸透し始める▼結果として自給率を上げていた主食の米の消費が減少に転じ、自給率は下降の一途に。この10年は最高で41%。これでは海外に足元を握られている現実は否めない。何とか向上を、と政府は対策を打ち出してはいるが…▼達成が難しいと判断して今年3月、50%に設定した10年後の目標を45%へ下げた。農政が揺れ動き続ける中では達成を危ぶむ声もあり、農水省の自給率(昨年)分析も虚しく響いてくるだけ。加えてTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の動向が重くのしかかってきている。(A)


8月12日(水)

北方領土解決促進法により誰でも4島に転籍できる。多くの島民や子孫が移籍している。作家の故上坂冬子さんも「一人でもできる簡単な行動で返還運動を盛り上げたい」と国後島泊村に本籍を移した▼戦後、不法占拠し、実効支配しているロシアは1300億円を投じてインフラ整備を進めるクリール諸島発展計画を発案。ロシア人の極東への移住を促進、来年1月から希望者に1㌶ずつ分与する▼もちろん北方領土も含まれ、4島の人口を¥25¥%増の2万4000人とすることが盛り込まれた。「日本が4島での共同事業に関心を持たないなら、各国その他の参画を検討する」との高官発言も▼分与されるのは極東の遊休地としているが、上坂さんや島民らが移籍した北方領土も対象であることは確か。実効支配を強化し、インフラ事業に第三国の資本が大規模に流入したら、領土返還交渉がさらに複雑化する▼メドベージエフ首相は3度目の視察を予定、他の閣僚も同行するようだ。日本の領土分与は受け入れ難い。安倍首相も「わが国の領土だ」と胸張って国後島に上陸してほしい。8月は北方領土返還全国強調月間。期成同盟渡島の著名運動や返還キャラバン隊を盛り上げよう。(M)


8月11日(火)

♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ—。植木等さんが無責任男のキャラクターで人気を集めたクレージー・キャッツの「ドント節」。この歌詞に気を悪くした当時のサラリーマンも多かろうが、責任のなすりあいが政治の場で行われていてはたまらない▼新国立競技場の予算規模膨張に関する衆院予算委でのやりとりに唖然とした。質問に立った民主党議員は新国立問題を「政治利用している」と安倍首相に食ってかかり、首相もまた「今までの競技場を壊して新しくつくると決めたのは民主党だ」と批判合戦。〝どっちもどっち〟とはこのこと▼整備計画を検証する第三者委では、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が設計側と施工側で総工費が900億円異なる2つの見積もりを文部科学省に報告していたと判明した▼そもそも東京五輪は招致活動の際、「低コストでコンパクト」を売りにした大会ではなかったか。知らぬ間に事業費は膨張し、責任の所在も内閣だ組織委だとたらい回し▼党利党略が前面に出る与野党の質疑は「議論」とはとても言えない。国会議員は自分たちの姿をテレビで見てどう感じるのだろう。政治家が「気楽な稼業」であってはいけない。(C)


8月10日(月)

新たな観光策として森町と室蘭市をクルーザーで結んではどうか。そんな構想が一歩進み、7月末に試験運航が行われた。その概要については本紙も報じたが、実現が期待される▼渡島から日高胆振へは陸路と鉄路がある。陸路も高速道路が延びて便利になったとはいえ、天気が良く、視界の開けている日は…渡島の海岸線から室蘭などが容易に望めるだけに、よけい距離感を感じてしまう▼かなり前だが、ある会合の雑談で「森と室蘭の間に甲板に車を積む簡易フェリーを走らせてほしいよ」と言った人がいたのが思い出される。もちろん、それが容易でないことが分かっていての話なのだが▼車こそ積めないものの、この観光クルーザー構想は、いわば広域観光策。「新幹線開業後の観光客を日胆に」と日高と胆振地域からの提案だ。噴火湾の養殖場を避けながらイルカウオッチングも兼ねて所要時間は約1時間半▼森側はありがたい話と歓迎し、日胆戦略会議の事務局も「なんとか具体化させたい」としている。採算面はどうか、どこが運航を担うか、などクリアしなければならない問題は多々あるが、とりあえず「来年の夏場」に試みるのも一考。将来的な方策は来年の結果を踏まえて考えればいい。(A)


8月9日(日)

函館アリーナ横にある銅像に対して「あれは誰」と尋ねられて驚いた。「以前から像はあった」と答えたが、正体は日魯漁業の創業者の一人、平塚常次郎氏である▼メーンアリーナは湯川公園だった場所に建てられたが、平塚氏の像は同公園内の噴水の近くに1968年に建立された。工事中は一時撤去し、元の場所に戻ったわけだ▼そう説明すると納得の様子。ところが「トイレはもうないの」と聞かれた時、7月のこけら落としで来場者が困っていたことを思い出した。実はこの時、コラム子も困っていた▼公園内には夏期だけ利用できる屋外トイレがあったが、現在はない。こけら落としの時、開門前にメーンアリーナ1階のトイレを開放する案はあったそうだが、セキュリティーの都合上実施されなかったという▼本来は市民会館事務所棟のトイレが利用できるが、この日は同会館で吹奏楽の大会があり、警備の都合でアリーナから会館側に向かえなかったこともあった。このため近隣商業施設のトイレに列ができたそうだ▼千代台公園はテニスコート横にトイレがある。数千人が短い時間に建物周辺に滞留するコンサートを誘致するなら、仮設でも屋外トイレの設置は一考ではないか。(R)


8月8日(土)

「お疲れ様」。日常生活の中で何気なく交わしている言葉。数年前の栄養ドリンクのCMでは「その人の疲れに、『お』をつけて、『様』までつけて…」とナレーション。日本人が互いをいたわり合うフレーズとして称賛し、商品PRにつなげていた▼そんな「お疲れ様」に関し、タレントのタモリさんはあるテレビ番組で子役からの挨拶を引き合いに出しながら「『お疲れ様』というのは、元来目上の者が目下の者にいう言葉。これをわかっていない」と問題提起▼似たような言葉では「ご苦労様」がある。どちらも労をねぎらう意味だが、一般的には目上から目下に対して使われるものとされ、ビジネスマナーとしても目下からの使用はマナー違反との指摘がある▼では、目下から目上の人にはどう言葉をかけるのが適切か。自分の使い方を振り返れば明らかにマナー違反とおぼしき使い方もあり、改めて冷や汗をかく。とはいえ、「お疲れ様」に代わる適当な挨拶がない…とも感じる▼日本語はその意味するところがいつしか変質し、当初と違う使われ方をする例がしばしばある。ゆえに難しいが、「お疲れ様」も「ご苦労様」も、使う場合は心から相手をねぎらう気持ちを持ちたい。(C)


8月7日(金)

社会的立場のある人の「発言」は重い。とりわけ問われるのは政治家であり、重要ポストに就いている人ほど重さが増す。それだけ内外への影響力が大きいからだが、国会は今まさに「発言」で揺れている▼渦中の主は首相補佐官。国論を二分している安全保障関連法案を巡って、こう「発言」したという。「法的安定性(法の規定や解釈がみだりに変わらないこと)は関係ない」。大変な見解である▼この法案の是非論は別として、法の権威や意義などを根底から否定しかねない。政府のこれまでの説明からも逸脱するのだから問題とされて当然。現職の参院議員で、しかも補佐官となればなおさら▼首相と同じ認識を持っていなければならないはずで、「舌足らず」は通らない。参院特別委の参考人質疑に応じて陳謝したのも、それだけの立場故だが…「国際情勢の変化を強調したかったから」という釈明もしっくりしない▼例えそれが真意だったとしても。法的安定性はこの法案も含めあまねく法に当てはまる大原則であり、波紋が大きく広がった理由もそこに。安倍首相は野党が求める更迭を拒否しているが、責任論の追求は止みそうにない。改めて「発言」と「責任」の重みを考えさせられる。(A)


8月6日(木)

夏の高校野球が1915(大正4)年に始まって今年で100年ということで、テレビや新聞などではさまざまな特集が組まれている。「神様がいる」「魔物がすむ」としかいいようのない過去の名場面は、何度見ても興奮する▼逆転劇や延長戦の息詰まる戦い、明暗を分けた一球、「怪物」と呼ばれた選手たち…。夏の戦いは3年生にとって「負ければ終わり」。それだけに、選手たちの懸命な姿が多くのファンを魅了し続ける▼北海道代表の名場面といえば、やはり駒大苫小牧高校の2004、05年の連覇、そして06年の早稲田実業との決勝が多くの人の印象に残っているだろう。道南からの甲子園出場が1997年の函大有斗以降途絶えているのは少し寂しいが▼一方で、炎天下に連戦を行うために、選手の健康管理への問題もかねてから指摘されている。春の大会では延長戦のタイブレーク制度が導入されたが、慎重論もあって夏は行われていない。日程や球数制限など広く検討し、早急な対策が必要だ▼今年は、歴代最多の36回目の出場を誇る南北海道代表の北海と鹿児島実業との対戦で今日開幕する。100年目の舞台で、神様や魔物はどのようなドラマを演出するのだろうか。(I)


8月5日(水)

8月は第2次世界大戦をめぐる追悼の月。米軍が原爆投下の弾道特性を得るため、舞鶴など日本の30都市に原爆を模した約5㌧の大型爆弾を投下した。日本軍によって長く伏せられていた▼札幌にも「原爆ドーム」がある。広島の本物に残る屋根の鉄骨を模し、帽子のように据えた3階建ての北海道ノーモア・ヒバクシャ会館。広島、長崎の地獄絵を見た元兵士を中心に、25年前に白石区平和通に建設された▼原爆関連の資料や写真パネルなど約150点を展示。真っ黒に炭化した子どもの写真、変形した瓦や瓶など、目を覆いたくなるものばかり。図書コーナーでは子どもたちが「はだしのゲン」を読んでいた▼このような被爆者会館は広島、長崎のほかに日本では札幌だけ。被爆地から遠く離れた子どもたちが学べる貴重な場。総合学習などで訪れ、戦争の恐ろしさを実感▼追悼の月に、安保法案をめぐり首相補佐官の「法的安定性は関係ない」発言に続き、若手の衆院議員が大学生の抗議デモを「『戦争に行きたくない』は自分中心、極端な利己的な考え」と非難した。戦争を知らない議員の暴言ではないか。6日は広島で、9日は長崎で70回目の「平和の鐘」を鳴らそう。(M)


8月4日(火)

「住民投票」が行われたというニュースは珍しくなくなった。2日には茨城県つくば市で305億円(10年計画)を投じる運動公園建設計画を巡って。47%の投票率で80%が反対だったという▼我が国は間接民主主義の国。住民が選んだ代表者(議員)を通して行政にかかわる形だが、住民投票はいわばその補完策。重要政策などについて議会を介さず、住民の意思、判断を直接確認する制度だ▼条例に基づき法的な拘束力はないが、結果は尊重される。その前提があるから事実上、拘束されるに等しく、重いものがある。個別理由で過去に最も多かったのは、平成の大合併を巡る是非判断だった▼今年5月に大阪で都構想に関して行われたのが記憶に新しい。これまでの事例では産業廃棄物処理施設の立地問題や文化センターなど公共施設の建設問題が多いよう。つくば市の問題は後者の範ちゅうに入る▼学園都市として勢いがある市だが、年平均30億円はかなりの重圧。多額を投じてそこまで整備する必要があるのか、住民がそんな疑問を抱いたことが出発点だったよう。重大な行政課題に直面した時、駆け引きなく答えが出る…そこに住民投票の意味があり、持つ意義は大きい。(A)


8月3日(月)

世間的には設計の見直しで総工費を抑制することが決まり、一件落着したかのように思われている新国立競技場問題。しかし、計画のずさんさが次々と明るみになるとともに、新たな建築方針が当初の予定とはかけ離れた方向に進み、収拾が付かない状況に陥りつつある▼そもそも東京のど真ん中という超一等地に建てられるこの競技場。地の利を生かして、五輪終了後はスポーツ競技のみならず、コンサートなどの大規模イベントにも使用し、膨大な建設費の回収に当てるはずだった▼ところが4日に行われる新たな整備計画案を話合う関係閣僚会議では、使用目的をスポーツ競技に限定するという、大きな方針転換が打ち出される見通しという▼もちろん、一時的な工費削減は期待できるかもしれない。しかし五輪終了後にこの競技場が必要とされる大規模なスポーツイベントが、年に何回も行われるだろうか。このままでは維持費のみがかさむ無用の長物にもなりかねない▼石原慎太郎元都知事が打ち出した東京五輪構想は、日本の経済を活性化させることが目的だったはず。逆に景気回復に水を差しかねないとなれば、新しい競技場の必然性をどこに見いだせばいいのだろう(U)


8月2日(日)

世界的なロックバンド「レッド・ツェッペリン」の1971年の来日公演は、日本刀で部屋を壊したり、演奏中にメンバーがけんかをしたり、夜通しで乱痴気騒ぎをしたりといった伝説が、真偽はともかくロックファンの間で語られている▼一方でこの日本ツアーでは、広島でチャリティー公演を行い、収益金約700万円を被爆者に寄付していた。行動の振れ幅の大きさに驚く▼バンドのリーダーのジミー・ペイジさんが7月30日、44年ぶりに広島を訪れ、平和記念公園の原爆慰霊碑に献花した。再発売されたアルバムのプロモーションのための来日で、被爆70年の節目に再訪を望んだという▼71年には「戦争を知らない私たちの心にも、人類が原爆を落としたことへの恥ずかしさがある」とコメント。今回も松井一実市長の「慰霊碑の『安らかに眠ってください。過ちは繰返しませぬから』という碑文を世界に広めてほしい」呼び掛けに賛同していた▼長い黒髪を振り乱してギターを弾いていたペイジさんも71歳で、髪は真っ白。破天荒なエピソードは遠い過去だが、被爆者への思いは続いていた。再訪には「ヒロシマを忘れてはならない」というメッセージが込められている。(I)


8月1日(土)

お金のなかった学生時代、盆や正月に実家のある函館に帰るのに一苦労したが、JRの普通・快速列車が乗り放題になる「青春18きっぷ」に毎度助けられていた。時間はかかるが、安く往来できたのはありがたかった▼その「18きっぷ」が曲がり角を迎えている。来年3月の北海道新幹線開業に伴い、18きっぷだけで青函トンネルの特急に乗れる特例がなくなる可能性が高まっているからだ▼トンネルを走る列車は特急のみで普通・快速列車は走っていないため、木古内—蟹田(青森県)間に限って特急に乗れる特例がある。それが新幹線となれば特例が認められるかは現段階では定かでない。「JRは認めない可能性が高い」との一部報道もあった▼東北から北海道に入っても、JRから経営分離される道南いさりび鉄道が18きっぷの対象となる可能性も低そう。18きっぷ以外では連続で7日間利用できる「北海道&東日本パス」があり、東北の第三セクター鉄道は利用可能だが、これも青函間の新幹線や三セクがどうなるかは不透明▼新幹線で時間的な距離が縮まるにこしたことはないが、安価でゆっくりと旅をするのも悪くない。気軽に鉄道を楽しむ方策を残してもらえないものか。(C)