平成28年1月


1月31日(日)

 暗い話題が続くとき、ふと思い出す歌がある。「たのしみはまれに魚煮て児等(こら)皆がうましうましといひて食ふ時」。幕末に活躍した国学者で歌人、橘曙覧(たちばなのあけみ)の「独楽吟」の中の一首▼3歳の男の子が、母親の同居男性に「かかと落とし」などの暴行を受け、死亡した。幼児虐待事件の一方で、廃棄処分の食材が市場に出回る、食の安全を揺るがす事案が次々と明るみになる▼曙覧の生活は貧しさに包まれていたようだが、独楽吟では清貧の中での暮らしの楽しさが歌われている。「うましうまし」と魚を食べる子どもへの優しいまなざし。親の愛情、幸福感が伝わる▼「団らん」を辞書で調べると「家族など親しい者同士が集まり、なごやかに時を過ごすこと」とある(新明解国語辞典第七版)。勝手なイメージだが、「一家団らん」には丸いテーブルを囲んで、笑顔で話しながらはしを動かす親子の姿が思い浮かぶ▼6月、函館で初めて「日本さかな検定」が開かれる。「魚ほどいわれやうんちくを語る食材はない。魚食文化の魅力を検定で再発見してもらえば」と主催者。食事の話題の中心が父親のうんちく。遠い時代の話のようだが、食への関心と家族の絆の深さは結び付く。(Z)


1月30日(土)

東北新幹線に乗ると、新青森を出発して岩手県に入る際、車窓に広大な水田の風景が広がる。仙台まで来ればビルが乱立する都会の風景。栃木や埼玉に差し掛かれば関東平野の平坦さを感じとることができる。車窓から流れる風景が鉄道の旅の楽しみ▼28日、北海道新幹線の試乗会に参加してきた。H5系車両は快適の一言。新函館北斗駅を静かに発車し、降雪のため最高速度を210キロに落としながらも、木古内到着までわずか13分の速さ。車内は揺れもなく、東京までの約4時間も〝耐えられる〟長さと感じた▼北海道新幹線の見どころは雄大な自然。函館山、さらには津軽海峡も眺められるポイントがある。最短距離を走る必要上、トンネルの多さは仕方のない面もあるが、防音壁の高さにはさすがに閉口した▼地上を走行中も〝絶妙なあんばい〟で風景を遮ってしまうのだから。「ポイント」と前述したのは、一部個所でしか風景を眺めることができないためだ。スピードを手に入れた分、鉄道の旅の楽しさが半減したような印象▼それは単なるわがままと言われてはそれまでだが、せっかくの新幹線。もっと旅情を感じさせる工夫を随所にちりばめる努力があっても良かったのでは。(C)


1月29日(金)

富山から函館に移り13年目の冬。最初の年、雪の日に傘を差して歩いていると驚かれたことを覚えている。北海道の雪は振り払えば落ちるが、本州はそうはいかないのだ▼道東で大雪となった18~21日は、発達した低気圧と冬型の気圧配置の影響。函館は約20センチの積雪だったが、湿った重い雪となり、除雪は北陸並みの辛さ。昨年は暖冬で少雪だっただけに、一層大変さを感じる▼夏はほかの道内と違って湿気が多いことで「蝦夷梅雨」という言葉があるように、冬も東北並みの雪質に変わっているのだろうか。そう思うと今後の雪対策も考えなくてはいけないだろう▼と思っていた矢先、羽田から函館に向かう飛行機が、函館空港駐機場の除雪が間に合わず、青森上空で30分旋回後に着陸、さらに誘導路で1時間以上待機という事態に遭遇。国内外の3機が駐機場入りを待っていた▼函館で最も雪が多いのは中国の「春節祭」時期にあたる2月上~中旬。来年の今ごろは北海道新幹線で国内観光需要も増しているはず。作業スピードの早さから「ホワイトインパルス」といわれる空港除雪隊を持つ青森空港並みまでとは言わないが、函館空港も除雪態勢を強化していはいかがだろうか。(R)


1月28日(木)

函館市議会の政務活動費は議員1人につき月額4万5000円。収支報告書のみならず1円から領収書を添付し、インターネットでも開示するなど透明度は高いと言っても差し支えないだろう▼過去には不適切な支出がいくつもあり、市民オンブズマンの訴えが実って返還を命じられた例もあった。官民双方が改革への意識を高め、税金の無駄遣いの抑制につなげていったが、この御方は相変わらずであった▼政務活動費をだまし取ったとして詐欺罪に問われ、号泣会見で世間を騒がせた元兵庫県議・野々村竜太郎被告の初公判。被告人質問が具体的な行為の中身に及ぶと「記憶にございません」を連発したという▼初公判は昨年11月に予定されていたが、報道機関が殺到したという理由で〝ドタキャン〟。今回の裁判でも「収支報告書に虚偽の記載はしていない」と否定し、あいまいな答弁を繰り返した。揚げ句、裁判所に身柄を拘束された▼自分が過去に行った行為と向き合えず、聞かれても口をつぐみ、他者のせいにする。本人は記憶障害の可能性があると主張したが…。選挙で人を選ぶという行為の責任の重さが改めて身にしみる。函館・道南からこんな議員が出現しないことを祈る。(C)


1月27日(水)

東京など首都圏は、雪に弱い。当たり前と言えば当たり前。直面する頻度が頻度だし、備えがないのだから。故に6、7センチ程度の雪で、都市機能が麻痺状態に陥ってしまうのも仕方がない▼18日だった。道内も大変な暴風雪に見舞われたが、テレビに映った東京のある駅の光景は、尋常ではなかった。朝から電車が間引き運転となって、ホームばかりか駅舎にも入り切れず、並ぶ列は外にまでというのだから▼だが、その光景から垣間見えたのは、日本人の誇れる国民性だった。一つは勤勉さ。大幅に遅れて出勤し、果たして仕事になるのか、だったら休んだ方がいい…つい、そう思ってしまうのだが、簡単に割り切れない▼あれほど多くの人の職場に行こうとする姿が、物語っている。今も諸外国から、働き過ぎと指摘される日本だが、それはわが国の経済発展を支えてきた原点が、崩れていない証しにも映る。そして、もう一つが我慢強さだ▼映像になかっただけで、興奮した人がいたのかもしれない。だが、雪がちらつき寒い中、整然と並んで順番を待つ光景は、賞賛に値する。自然災害だからかもしれないが、あの映像は、日本人の誇れる一面を教えてくれたような気がする。


1月26日(火)

「記憶が曖昧で、定かではない」「専門家を交えて正確に検証し、誠実に説明したい」▼甘利明経済再生担当相がトラブル解決の謝礼に建設会社から現金計100万円を直接受け取り、資金提供や接待で1200万円受けたと報じられた問題。歯切れの悪い答弁に、新年度予算を審議する今国会に波紋を広げた▼「記憶にございません」。40年ほど前、ロッキード事件の証人喚問で国際興業社主が連発したフレーズを思い出した。「記憶が曖昧」と肯定も否定もしない表現は、「昨日の晩ご飯は食べましたか」と聞かれた認知症の人が黙り込むこととは違う▼「首相にご迷惑を掛けて、じくじたる思い」と低姿勢だが、忸怩(じくじ)の忸も怩も「すっごく恥ずかしい」こと。自分がした行いを振り返って恥じる姿勢で、申し訳なく感じていることだ。厚かましい顔にもなお恥じの色が出る「顔厚忸怩」になったら見苦しい▼もめ事の仲裁に入り、見返りに違法な金を受け取ったのなら、それも現職大臣なら悪代官のよう。告発した建設会社の担当者は、録音やメモなど証拠を用意しているといわれる。野党は独自に「疑惑追及チーム」を結成、調査を始めた。今週の調査説明でどう弁明するのか。(M)


1月25日(月)

胆振管内豊浦町で悲惨な事故が起きた。踏切内で立ち往生した軽乗用車に特急列車が衝突し、運転していた66歳の女性が死亡した▼詳しい事故原因は調査中だが、現場には遮断機と警報機があり、当時の路面がアイスバーン状態だったことから、車が止まり切れずに踏切内に進入したか、踏切内に入ってから脱出できなくなった可能性が考えられる▼筆者も冬場に踏切内でスリップした経験はあるが、幸いにも立ち往生したことはない。JRなどでは、万が一、踏切内で身動きが取れなくなった場合、すぐに車を降りて非常ボタンを押し、通過列車にいち早く知らせるように呼び掛けている▼今回の事故で悔やまれるのは、なぜ運転者が車外に脱出しなかったかということ。なんとか衝突を避けようと、最後まで運転席でハンドルと格闘し続けた結果だとしたら、胸が痛む▼果たして、自分も同じ状況に置かれたとして、素早く状況を見極めて車から降り、非常ボタンを押す緊急行動を起こせるだろうか。車内でパニック状態のまま、今回の事故と同じ結果になる可能性も否定できない。寒冷地のドライバーとして、トラブル対処法をしっかり頭の中に叩き込んでおく必要性を痛感している。(U)


1月24日(日)

鉄道に興味を持ち始めたころ、分厚い時刻表を眺めていると、子どもながらある法則に気づいた。表の一番上の列車番号に「D」の文字があるとディーゼルカーで、「M」が電車。函館近郊は青函トンネルの開業によって津軽海峡線が電化され、「M」の表記に一種の誇らしさを感じた▼函館駅に乗り入れた最初の電車特急が、盛岡と結ぶ「はつかり」。当時は朱色とクリーム色の国鉄カラーの車両を間近に見られて、鉄道ファンの一人として興奮していた。その電車こそが「485系」。高度成長期に製造され、日本各地を走った名車だ▼485系は現在も、函館―新青森間を2往復する「白鳥」で使用されている。乗り心地は2002年に登場した789系「スーパー白鳥」に及ぶべくもないが、古い列車ならではの旅情を感じさせてくれた▼しかし、3月26日の北海道新幹線開業に伴い、485系は789系とともに道南路から姿を消す。1988年3月の青函連絡船廃止、トンネル開業から28年。「お疲れさま」と言いたい▼先日の出張時、悪天候を考慮して東京まで新幹線に乗車したが、揺れの少なさに改めて感銘。道南における「鉄道新時代」の到来は、すぐそこまで迫っている。(C)


1月23日(土)

ネット社会の一面は、報道記事の閲覧増からもうかがえる。本紙もホームページに主要ニュースを掲載し、さらに道内の地域紙と連携した「北海道ニュースリンク」にも参加して、函館・道南を発信している▼このウェブサイトを運営しているのは、本紙のほか十勝毎日新聞、室蘭民報、苫小牧民報、釧路新聞、日高報知新聞、留萌新聞、根室新聞、名寄新聞、北海民友新聞の10社。2009年4月にスタートし、毎日、各社が当日紙面に掲載の記事をアップしている▼目的は各社の発行エリア情報を全国に届けること。多くの人に読んでもらうことが願いだが、最近のページビュー(閲覧された回数)はおおむね月10万件。気になるのは函館・道南の記事がどれだけ閲読されているか…▼胸をなで下ろしていいよう。毎月、出される記事別アクセス数が教えてくれている。上位10に3、4本入っているから。道内他地域に比べ、それだけ函館・道南への関心度が高いことの証しともいえる▼もともと観光面での知名度が高く、この1年ほどは北海道新幹線の開業絡みの注目も加わっている。だが、アクセス上位にランクされている記事を見る限り…単にそればかりでないようなのがうれしい。(A)


1月22日(金)

羽月ちゃんは下を向き、両手をそろえ、正座する狭山市の女の子。正座すると母親に怒られないと思ったのか。3歳になると、遊んで、食べて、はしゃいで楽しいはずなのに、22歳の母親と同居する24歳の男性から虐待を受けて…▼やせ細った体に複数のあざ、胃には食べ物はなく、死亡する2日以前から食事を与えてもらえなかった。母親らは羽月ちゃんを一人で残したまま外出、LINEで「帰ったら(虐待を)やろう」とやり取り▼顔には熱湯をかけられたとみられるやけど痕。犬のリードのようなもので縛られ、閉じ込めるためか首にロープをくくりつけるような金具も付いていた▼昨秋から凄惨(せいさん)な虐待が日常化。布団に巻かれて玄関前に放り出されたことも。近所の住民は「ドンドンという音が毎日のように聞こえ、開けて、開けて」と泣け叫ぶ声を聞いている。接触した警官は羽月ちゃんのけがを確認できず、児童相談所にも通告しなかった▼救えなかった幼い命。熱湯をかけられ、さぞ熱かっただろう。屋外に放置され、さぞ寒かっただろう。祖父母はいなかったのか。かわいい盛りの孫の顔を見てほしかった。羽月ちゃんの「痛々しい正座」のSOSは届かなかった。(M)


1月21日(木)

「今年も暖冬か?」と思っていた12月。だが、今週の大雪で函館はすっかり白一色。朝のごみ出し時、雪化粧した函館山を見ると、詩情豊かな一日の始まりを感じる▼そんな気分もつかの間。白い塊の中でやたらと目につく犬の「マーキング」にあ然とする。電柱、標識などあちこちに。雪解けが進むと、ふんまで現れるような気がする▼そろばんのようにわだちができ、道幅も狭くなった道路で、違法駐車があるとさらに通行しにくくなる。慎重に車間距離を取っているのに割り込んでくる車も▼青森県の冬季観光の活性化を考える「あおもり冬活(ふゆかつ)会議」が函館で開かれ「マイナスになっている雪をプラスに変える」との意見が出された。関東などの知人に「北海道の冬景色はいいよ」と薦めても「寒いより、雪があるから嫌だ」と言う。「雪=滑る=危険」というイメージがあるようだ▼雪を好きになって北国に来てほしいと願う一方で、雪のおかげでマナーの悪さが目立ち、まちのイメージダウンになるのは大いに困る。北海道新幹線開業で函館は大いに注目されている。観光に関係する場所だけでなく、どこでもマナーに気を配ることが、おもてなし向上につながる。(R)


1月20日(水)

デビッド・ボウイの訃報に続き、またしても悲しいニュースが。アメリカのロック歌手グレン・フライが18日に67歳で亡くなった。「ホテル・カリフォルニア」などの大ヒットで知られる「イーグルス」のギタリストで、ソロ歌手としても活躍した偉大なミュージシャンだ▼イーグルスは1970年代に世界的人気を誇ったスーパーグループ。「テイク・イット・イージー」や「呪われた夜」「ならず者」などヒット曲を量産した。アルバムのトータルセールスは1億2000万枚を超える▼創設メンバーでもあるフライは、ドン・ヘンリーとともにメーン・ボーカルを担当。80年の解散後もソロシンガーとして「ヒート・イズ・オン」(映画ビバリーヒルズ・コップの挿入歌)が全米2位を記録している▼熱烈なファンの声を受け、イーグルスは94年に再結成。その後も定期的に世界ツアーを行い、2011年の来日公演では札幌ドームを含む5大ドームツアーを成功させている▼筆者は「どうせ近いうちにまた来日するだろう」と、ツアーに足を運ばなかった。訃報を受け、後悔の念に駆られたのは言うまでもない。アルバム「ロング・ラン」に耳を傾けながら、思いをはせよう。(U)


1月19日(火)

世相を、自分の思いを表現する術は多々あるが、近年よく聞くようになったのが漢字一文字。先日も取材に応じたプロ野球日本ハムの大谷選手は「超」、スキー女子ジャンプの高梨選手は「収」と答えている▼その火付け役は、他でもない日本漢字能力検定協会。漢字に関心をもってもらいたいと、全国から応募してもらう形で行っている「今年の漢字」だが、毎年12月に京都・清水寺で発表される光景でも知られる▼1995年に始まり、昨年は「安」だったが、20年間をさかのぼると明暗それぞれ。初年は「震」…阪神淡路大震災に見舞われた年である。さらに「倒」(97年)「毒」(98年)「災」(2004年)もあれば…▼逆に「愛」(05年)「新」(09年)「絆」(11年)のように明るいイメージの字の年も。実は二度選ばれた字が一つだけある。それは「金」。両年ともオリンピックが開かれた2000年と12年のこと▼明るい字が選ばれる年が続いてほしい、そう願う気持ちはみな一緒。同協会が20年を記念して行った小学生が選ぶ未来の漢字も、上から順に「楽」「明」「夢」「優」「幸」「光」だったそう。実現できるかどうか、その鍵は大人に託されている。(A) 


1月18日(月)

年明けからさまざまな事件・事故の報道が相次いでいる中、エンターテイメントの世界で起きた〝事件〟の今後が気になって仕方ないという人は多いのでは。ファンの多い女性にとどまらず、今や国民的な関心事の一つだ▼アイドルグループ・SMAPの分裂・解散騒動が世間をにぎわせている。個性と才能豊かな5人が歌やドラマ、バラエティーとアイドルの枠を超えて活躍している中で突如持ち上がった問題に、ファンならずとも困惑の度が深まる▼日本を代表するグループへと育て上げたマネジャーが所属事務所を退社し、追随するメンバーと事務所に残るメンバーとが分かれる瀬戸際に立たされている。騒動の最中でも彼らは仕事をこなし、テレビの中で笑顔を振りまく。その心中は複雑そのもののはずだ▼ファンの間では彼らの代表曲「世界に一つだけの花」のCDを買うことで、グループの存続を願う動きが始まっている。CDの売り上げ順位も急上昇しているという▼着地点は現段階で見えていない。彼らが最終的にどんな判断を下すかは分からないが、特別な「オンリーワン」の存在として、これからも5人一緒に活動を―というのが、大方のファンの願いであろう。(C)


1月17日(日)

年が明け、「あれもしなければ」「今年はこうしよう」と、いろいろ思いめぐらせていた。全国紙に載った見開き2ページ広告に、一気に冷水を浴びせかけられたような気がした▼ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」をモチーフにした宝島社の企業広告。オフィーリアに扮(ふん)した女優の樹木希林さんが印象的だった。右手に花を持ち、水の中で仰向けになっている。目を見開いたその表情は、とても穏やかだ▼「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」がメーンコピー。「死について考えることで、どう生きるかを考える。若い世代も含めた多くの人々の、きっかけになれば…」。ホームページで企業広告の意図がこう説明されている▼このサプリメントがいいと聞けば試してみる。幾分言葉に抵抗感を感じる「終活」に、「エンディングノートは、このように書くんだ」と興味を持ったりもする。何かとせわしない▼「ひとつひとつの欲を手放して、身じまいをしていきたい」。コピーにはこうも書かれていたが、なかなかここまでの心境に至るには、遠いところにいる自分に苦笑いする。考えるきっかけになる題材を伝える。今年の目標をこう設定することにした。(Z)


1月16日(土)

深夜の長野県軽井沢のバイパスでスキー客を乗せたバスが崖下に転落し、14人が死亡、27人が重軽傷を負う大惨事が起きた。昨年末から各地で観光バスなどの火災が相次いでいる折…▼東京・池袋の路上で激しく炎上したバスが、骨組みだけを残して焼け落ちた。運転手2人が亡くなったが、高速道を使わずに当初の行程表と異なるルートを走っていた▼バスの運行会社は運転手に健康診断を受けさせていなかったとして、事故2日前に国土交通省から行政処分を受けたばかり。業務の適正や知識を確認する「適正診断」も運転手に受けさせていなかったという▼観光バスなど事故の背景には車両の老朽化もある。外国人観光客も増え業界の競争は激化、更新が滞り、点検や整備がおろそかになっているようだ。運転手は2人乗務になったといえ、過重労働で100メートルも暴走したのに「事故の記憶はない」という運転手も(東京・小金井の事故)▼軽井沢のスキーツアーは20代前半の若者ばかり。深夜出発し寝入っていた。雪は降っておらず、道路も凍結していなかった。崖下に転落、投げ出された。楽しい会話と笑顔が待っていた冬のレジャーだったのに。業界は安全運転第一を徹底せよ。(M)


1月15日(金)

函館市の成人祭は今年から函館アリーナが会場になった。真新しい施設で式に臨み、気が引き締まったという新成人も多いだろう。派手な格好が話題の北九州市、東京ディズニーランドで華やかに迎える千葉県浦安市など、全国各地の表情はさまざまだ▼その浦安市長が祝辞で「人口減少のままで今の日本の社会は成り立たない。若い皆さんに大いに期待をしたい」などと発言。複数の全国紙が取り上げた▼急速に進んでいる少子高齢化を憂いてこんな言動に至ったようだが、ある記事では同市が少子化対策の一環として、本年度から健康な女性の卵子凍結保存を支援する事業をスタートさせたことに触れ「晩産化を助長させることを懸念する声も」と結んでいる▼この市長は式辞で18~26歳が出産適齢期だとも述べた。早期出産を望む一方では、女性が出産を希望する時期を見越した事業の両面に対応する必要もあるから、一概に懸念とも言えまい▼言うまでもなく子どもを産めるのは女性だけで、男性がいくら子どもを欲しくても、パートナーがいなければかなわない。行政がよく言う「子どもを産み育てやすい環境づくり」に向けて、国全体で抜本的な対策に取り組まなければ。(C)


1月14日(木)

ヤンゴンを走るミャンマー初の路面電車の映像を見た。昭和30年代に製造され、被爆の広島市内を走っていた電車で、日本が寄贈。車内には「原爆ドーム前」など停留所名の掲示をそのまま残して▼「前の人たち座ってください。後ろの人のことを考えて。これも民主主義のレッスンです。この国の問題の多くは、他人に譲ろうとする気持ちに欠けているところにあります」。総選挙で勝利したアウン・サン・スー・チーさんの言葉▼ミャンマー(旧ビルマ)は57年前にネ・ウィン将軍が実権をにぎってから軍事政権(本格的なクーデターは4年後)が続いた。当時、ビルマの大学に留学する予定だった筆者は、この政変で1年も待たされたあげく、留学中止に追い込まれた苦い経験がある▼女性たちは花が大好き。市場には色鮮やかな花がズラリ。花の髪飾りで、おしゃれを楽しむ。スー・チーさんは自宅軟禁中も常に花の髪飾りを離さなかった。まるで民主化のシンボルのように▼2月に民主化の花が一斉に開花する。市内6キロを走る被爆地の電車は異国の地で核廃絶を訴える。長い忍従の歳月に耐え、血のにじむ努力で手にした花電車として「民主主義は素晴らしい」と、ほほ笑むだろう。(M)


1月13日(水)

10日に飛び込んできたデビッド・ボウイの訃報は大きな衝撃だった。8日が69歳の誕生日で、同じ日に新アルバムを発表したばかりだったので、いまだに信じられない▼筆者とボウイとの出会いは中学生時代で、クイーンとのコラボレーション「アンダー・プレッシャー」が初めて聞いた曲だった。名前は知っていたが歌声を聞いたことはなく、「なんだかしゃがれて、もそもそしたボーカルだな」と、失礼な第一印象を持った▼しかし冷静に聞き直してみると、フレディ・マーキュリーのパワフルな歌声にまったく引けを取らない存在感があることに気付き「この圧倒的なカリスマ性はどこから生まれてくるのだろう」と不思議だった▼その後、1970年代の名作「ジギー・スターダスト」「アラジン・セイン」を聞き込み、彼が単に音楽だけではなく文学や演劇、ファッションなどを取り込んだ総合的なエンターテインメントを目指していることに驚かされた▼近年は激しいスタイル変化に批判を浴びることもあったが、遺作となった最後のアルバムは、原点に戻り音楽と向き合った素晴らしい作品。これが集大成になることを分かっていたと思うと胸が熱くなる。心から冥福を祈りたい。(U)


1月12日(火)

「ものづくり日本」と言ってはばからないほど、わが国の産業技術は世界に誇って余りある。それだけ各分野に優れた人材がいるということだが、卓越した人は「現代の名工」としてたたえられている▼記録が残る1987年度以降、その称号が捧げられた人は約3900人。ただ、ほとんどが男性であり、女性は216人と一割にも満たない。女性の活躍が顕著になった昨今も、格差は続いたまま▼本当に女性の対象者は少ないのか…誰しも抱く思いだが、厚労省は女性名工の発掘のため、新たに女性推薦枠を設けることを検討しているという。だが、それは趣旨に照らしてどうなのか。あえて女性推薦枠を設けること自体、差別とも受け取られかねない▼確かに、今でも技能者人口は男性が多い。それと女性に別枠を設けるのとは別の話。あくまで技能で判断すべきで、女性推薦枠をもって女性の名工が増えたとしても、つじつま合わせでしかない▼それより推薦方法の見直しが有効のような気がするのだが。都道府県や業界団体からの推薦にとらわれず、例えば幅広く推薦してもらえるような道を開くとか。大事なのは技能本意という視点。この「現代の名工」は来年度、50回を迎える。(A)


1月11日(月)

「定刻になっても出発しないと思ったら、続々と20人ぐらい乗り込んできた。どうにかならないかな」とこぼす友人。出張に向かう際、ある空港で、30分遅れで飛行機が出発したそうだ▼飛行機で手荷物を預ける時は検査を受ける。この日、団体観光客がチェックイン終了時間直前で空港に着き、バッグとお土産の検査を受けるに時間が掛かった、と友人は考える▼部下も先日、余裕を持って函館空港に行ったはずが、一つ後に出る便に乗る団体が荷物検査に並び、時間が迫ってあせったという。函館のみならず、空港ではよくある話だ▼函館空港ビルディングは3月、国際線ターミナルの改修に着手する。海外便の利用増を受けての工事だが、「東日本ゴールデンルート」の観光を作ることが必要とされる中、関東や東北から函館に入る旅行者も増える。北海道新幹線と航空機を組み合わせた旅行商品も考えられる▼「函館空港は土産店の数が多いけど、保安検査場前で休む場所は少ない」と話す旅行者や、「フリーwi-fiのエリアが分かりにくい」と職員に問い合わせるビジネスマンも見た。現状の国内線ターミナルもフロアや検査機器の改善も一考ではないだろうか。(R)


1月10日(日)

松の内も明けて完全に日常を取り戻した中、お正月に福袋を買ったという家庭も多いだろう。是が非でもと買い求め、生活や家計の足しにしている人が大半。かくいう筆者も、とあるコーヒー店の福袋を購入して早速アロマの香りを楽しんでいる▼ところが、人気コーヒー店の福袋をめぐってひと騒動が起きた。東京都内のスターバックスの店で、先頭に並んだ客が約100袋用意された福袋をすべて買い占め、2番目以降の客が誰も買えなかったという▼買い占めた客はネットオークションに出品して転売する目的だったとみられ、ネット上はこの話題でもちきりとなった。店は個数制限をしていなかったといい、買い占めた客のモラルはもとより、配慮を欠いた店の対応を批判する声もあった▼福袋は言わば〝早い者勝ち〟の争奪戦だ。早朝から寒さに耐えて並んだ人が恩恵に預かれる。ただ、自己中心的に過ぎるこんな客の暴挙を防ぐためにも、事前予約のような方式ももっと浸透していいはずだ。もちろん、一定の競争は伴うけれど▼函館では昨年、プレミアム商品券が販売開始日に売り切れ、苦情が相次いだ。買いたいけれどその日は無理、という人にも平等なチャンスがあっていい。(C)


1月9日(土)

新しい年を迎えて願うことは多々ある。罪のない人が命を落とし、難民を生み出す国家間、民族間紛争が無くなり、大災害に見舞われない年に。さらに凶悪な事件は起きず、事故も減ってほしい▼国際、国内の政治問題はさておき、身近で願う一つに、高齢者を狙う振り込めなどの特殊詐欺の掃滅がある。というのも、被害額が依然として多額なこともさることながら、弱者を標的にした、人間として許せない卑劣な犯罪だから▼道内だけで昨年の被害額は、前年に比べ3億円ほど少なかったとはいえ9億円超。被害に遭った高齢者は200人を超える。生活を切り詰め、何年もかけ、こつこつ貯めた老後の安心資金を失った落胆は想像に難くない▼だから許せなく、社会の協力があるのもそれ故。さまざまな啓蒙活動や金融機関、宅配業者の対応など防止の輪は広がっている。実際に被害を未然に防いだ件数は増加、逮捕者も増えている▼だが、問題の根は深い。被害の報道に接する度に胸が痛み、犯人には怒りが込み上げる。その思いを共有することこそ防止対策であり、掃滅への原点。高齢者に辛く悲しい思いをさせたくない…社会のさらなる目配りが求められている。(A)


1月8日(金)

安倍晋三首相は年頭会見で「本年は挑戦、挑戦、そして挑戦あるのみ」「国づくりにも新しい挑戦を始める」、幕の内国会を「未来へ挑戦する国会」と威勢よく「挑戦」を連呼した▼「桃栗三年柿八年。桃と栗は収穫できたと思う」と長期政権に意欲。「ユズは九年の花盛り、梅はスイスイ十三年、梨はユウユウ十五年、リンゴはニコニコ二十五年…」と続け「夏の参院選で勝ち抜く」とも▼地方創生、女性活躍、1億総活躍、GDP600兆円など次々新しいスローガンを打ち出し、最終目的の憲法改正にギアを入れた。「在任中に九条を改正できるとは考えていない」「自衛隊は戦争をしない」というが…▼安全保障法にしても、マイナンバー制にしても国民の理解が得られなかったら、安倍政権の自滅につながる。福袋に詰め込んだ中身を政治の舞台で見せなければ「浅はかな猿知恵」といわれかねない▼折しも北朝鮮が水素爆弾の核実験に成功したと発表。安倍首相は「わが国の安全に対する重大な脅威、強く非難する」ときっぱり。でも、日本人の拉致被害者調査はどうなったのか。「リンゴ二十五年」なんて言っている場合ではない。新しい挑戦では「早急な拉致被害者救済」を優先させよ。(M)


1月7日(木)

子どもたちにとって、正月の最大のイベントが「お年玉」であることは昔も今も変わりはない。筆者がもらう立場だった時代は、せっかく財布が潤っても、少なくとも三が日の間はデパートも商店もシャッターが下りたままのため、目当ての品を手に入れることができずにうずうずした日を過ごしたものだった▼ところが最近では、1、2日に初売りを行う店舗も珍しくない。元日から営業していた筆者の実家近くの大型ショッピングモールでは、早速大きなおもちゃの箱を抱え笑顔の子どもたちの姿が▼それまで暗黙の了解だった三が日間の休業は、バブル崩壊後の1990年代半ばから崩れ始めた。実際、正月で暇を持て余していた人々で盛況となったことから、多くの店が追随することに▼これに逆行するかのように、伊勢丹新宿店では例年2日だった初売りを、今年から3日に繰り下げた。「従業員にも日本人らしく正月休みを味わってもらいたい」と同店。この英断には一般の人々からも支持の声が▼24時間365日、好きなものが簡単に手に入る時代。せめて正月の数日間だけでも不便な思いを味わうことが、満ち足りた生活を過ごせる幸せの再確認につながるのかもしれない。(U)


1月6日(水)

ガソリンスタンドの前を通りかかると、近年の状況からすれば目を疑うような安さが続いている。セルフスタンドでレギュラー1リットルで110円台を切り、灯油に至っては1リットル50円以下という店も▼冬の北海道を過ごす上で家計に優しい値段なのはありがたいが、こればかりはいつまで続くか分からない。産油国が多い中東情勢がさらに不安定になりつつある。サウジアラビアが3日、イランとの外交関係を断絶すると明らかにした▼イスラム教スンニ派の大国・サウジがシーア派の法学者を処刑したことに、シーア派のイランにあるサウジ大使館が暴徒に襲われたことの意趣返しとみられる。スンニ派のバーレーンもサウジに追随し、イランとの断交を発表した▼日本からはなかなか実情をうかがい知る余地もないが、両国の関係悪化がイスラム過激派組織「イスラム国」を利するとの指摘もある。そして両国ともOPEC(石油輸出国機構)の加盟国。先物相場は不安に対してとかく敏感なもの。原油価格の上昇につながりかねない▼遠い中東での出来事とはいえ、中国の経済状況も絡んで市民生活に直結する。しばらくは原油安が続きそうではあるが、敏感であるに越したことはない。(C)


1月5日(火)

机の奥に1月1日に運用を開始した12桁のマイナンバーの通知カードが入っている。国から通知された12桁の番号は、すんなりと覚えられない。身分証明くらいにしか使えないと思っている人もいるのでは▼市の回覧では「社会保障、税、災害対策の分野で複数の行政機関が利用し、事務の効率化や利便性を向上させることが目的」。金融資産が一括管理となり、健康保険証代わり、コンビニでも利用できるようだ▼通知カードが「受取人不在」などの理由で郵便局から市町村へ届く数が思いのほか多い。住民票を移さず転居した人、医療機関や特養老人ホームなどに入居の高齢者や障害者ら。函館でも予想の5倍が受取人不在だ▼「不正利用により被害に遭う」「プライバシーが侵害される」「監視・監督される」など不安が募るばかり。児童手当や失業手当、生活保護の受給に番号を提示しなければならず、受け取っていない人は不利益を被る▼最大の狙いは脱税や年金不正受給の防止にあるというが、共通番号制が進む米国では年金不正受給などが多発。日本でも通知カードより先に、制度悪用の詐欺が発生した。国は無用な混乱を避けるためにもっと丁寧な説明が必要。新年から後味が悪い。(M)


1月4日(月)

昨年末に大阪へ行った。行きは函館空港の積雪状況などにより、伊丹空港からの飛行機が新千歳に向かい、乗る予定だった伊丹行きは欠航。帰りも新千歳へ向かう可能性があった。心から「早く北海道新幹線が開業してほしい」と感じた▼その数日前は東京にいた。北海道新幹線開業をPRするラッピング車両の電車に乗った。新幹線車両が並んでいる写真で、JR北海道の「H5系」よりJR東日本の「E5系」が目立って見えたのはコラム子だけだろうか▼大阪のホテル。おしゃれな作りだが、約200の客室に対してフロントの窓口は3つ。チェックイン時、海外からのグループも含めて大混雑。手続き完了まで20分掛かった▼朝食会場に「ぜひ、感想を」と書かれた紙があった。旅行に関する口コミサイトの案内だ。「朝食のおいしいホテルランキング」の上位を狙うのか。昨年、ベスト5に函館の2店があった。大阪の朝食は素材が今一つ。やはり野菜など道産品はおいしい▼東京、大阪へ行き、新幹線時代を迎える函館で、必要なもの、磨きあげるべきもの、誘客への考え、本当のおもてなしとは…、いろんなことを感じた。正月気分は昨日まで。まずはやるべきことを見直そう。(R)


1月3日(日)

年末年始は毎年、飲酒運転が原因による事故が多く発生する。ここ数年で厳罰化が進んでいるにもかかわらず、過ちを繰り返す人が後を絶たないのはなぜなのか▼筆者が首都圏で暮らしていた時は、日常の移動手段はほぼ100%公共交通機関で用が足りたたため、リスクを犯して飲酒運転する人の考えが理解できなかった▼しかし、函館のような地方都市では、日常生活に車は必要不可欠。「ほろ酔い程度だし、自宅までのわずかな距離なら大丈夫だろう」と、ついハンドルを握りたくなる誘惑が待ち受ける▼ある運転代行の広告に「あなたは数千円の料金を惜しんで、一生を台無しにしますか?」という言葉が並んでいた。この強烈なアピールも、酔って判断能力が欠けると「何を大げさに。自分は絶対に捕まるはずがない」という気持ちに打ち負かされることがあるのだから恐ろしい▼北海道新幹線開業が迫り、高規格道路など、都市間の交通網整備は着々と進んでいるが、市内の公共交通機関にはまだ見直しの余地がある。例えば、繁華街と住宅街を結ぶ深夜帯の路線を充実させることで、飲酒運転を撲滅し、飲食店にも活気をもたらす。一石二鳥の効果を生み出せないのだろうか。(U)


1月1日(金)

師走の小雪がちらつく中、新函館北斗駅前を歩いた。誰かの足跡を雪の下にうっすらと確認できたが、静寂に包まれ、開業後のにぎわいを思い描こうとしたものの、うまくいかなかった▼JR函館駅は外国人観光客とともに、Uターン客や出迎えの家族らで混雑。中国語などが飛び交うとともに、地元のイントネーションが心地よく響き、いつも以上に異国の雰囲気を感じた▼函館のブランド力は高い。人口は減り続けているが、民間シンクタンクの調査で魅力度は2年連続トップとなった。今年度上半期の観光客は増加、外国人宿泊者数も年間40万人台が現実的になっている▼シンボルの函館山一つとっても山岳信仰、高田屋嘉兵衛らの植林、要塞としての役割などの物語を持つ。さまざまな史跡があり、教会群があり、見る人に歴史を感じさせる。おまけに植物園には今年の干支(●えと)のサルが温泉につかっている▼北海道新幹線開業で、恵まれた環境に大きな好条件が加わる。首都圏や東北と鉄路で速くつながるチャンスをどう生かし、広げていけるか。函館をはじめとした道南全体が地域の宝を見詰め直し、一体となってどうアピールしていくのか。新時代の変化を実感する1年でありたい。(Z)