平成28年2月


2月29日(月)

北海道は押しも押されぬわが国の食料生産地。豆類やジャガイモ、小麦などの畑作物はもちろん、近年は米が勢いを増している。酪農や畜産も改めて言うまでもない。水産物もしかり▼その振興を支える術として「地産地消」が叫ばれ、米や牛乳などで消費拡大の運動が取り組まれている。“TPP時代”を頭に描くまでもなく、質のいい物を作る、啓蒙するの二つがかみ合った時は強い。それは米が教えてくれている▼品種改良や農業現場の栽培努力は、食味ランキングで「ゆめぴりか」や「ふっくりんこ」などを「特A」に導き、テレビCMなどの啓蒙が後押しした。その答えは、道民の消費が他県産米から道産米へと移り変わった現実(道民の道産米消費率)が物語る▼20年前は37%でしかなく、50%を超えたのは15年前だった。その後も比率を上げ、ここ4年ほどは道が目標に掲げた85%をクリアして90%水準に。2015米穀年度(14年産米)も暫定値で88%という▼他の主要産物もそうあってほしいが、残念ながら牛乳や肉類はまだまだ。牛乳はともかく、乳製品や肉類は外国産との競争激化が予想されるだけに、「地産地消」の火を燃やし続けなくてはならない。北海道のために。(A)


2月28日(日)

どうしてか、厳密に説明できないが、嫌いな言葉がある。「生きざま」「自分探し」「自己責任」などなど。ものを書くとき、極力避けるようにしてきた▼「弱者に責任をおしつける保身と欺瞞(ぎまん)の言語。それが『自己責任』」。精神科医の和田秀樹さんは「この国の冷たさの正体 一億総『自己責任』時代を生き抜く」(朝日新書)でこう言い切る▼生活保護受給者へのバッシング、ギャンブルや薬物などの依存症。そうした人たちが増えている現状を示しながら、現在の日本が他の国と比べ、経済的弱者や競争社会からの脱落者に対し、異常に冷たいことを指摘する▼ついこの間、函館で特殊詐欺まがいの窃盗事件が相次いだ。警察官を名乗る電話を受けた80代の高齢者が、事件捜査への協力と思い、現金をそれぞれ玄関に、郵便受けに置き、持ち去られた。公の言葉を素直に信じる、情報に疎い弱者を食いものにする事案があふれている▼自己責任とは言い切れない問題が現代社会によくある中で、和田さんは「情けは人のためならず」を提唱する。「人間は…『迷惑』の塊だと気づくことが大事」と。「迷惑をかけた」と鬼の首を取ったように誰かを糾弾することは避けようと思う。(Z) 


2月27日(土)

いよいよと言うべきか、ようやくと言うべきか。北海道新幹線開業まで1カ月を切った。本紙でも開業に向けた各種各層の取り組みが紙面をにぎわせている。開業日の上り一番列車の切符はわずか25秒で完売し、「その時」が近づいてきた実感がわく▼筆者は2010年12月、東北新幹線の新青森開業を取材した。肌に突き刺さるような冷たい風が、ホームを通り抜ける中で響き渡る津軽三味線の音色や、駅長が右腕をピーンと伸ばし、出発進行の合図を告げる姿が印象に残る▼新青森駅の中と外では県内の関係者がリンゴやパンフレットを配ったり、これでもかと言わんばかりのPR活動。まさに〝大盛り上がり〟の表現がぴったりだった▼1月末、新幹線試乗会に参加した際、札幌のあるテレビ局の知人にばったり会うと「盛り上がりがなぁ…」と不満げに声をかけられた。道南とそれ以外では温度差が感じられても仕方がないのかもしれないが▼「盛り上がっていない」と指摘するのは簡単だが、それは単に他人任せのスタンスでしかない。まだ1カ月あるととらえ、今からできることを地元に住む私たち一人一人が考えてみよう。誤解を恐れずに言えば、もっと「ばか」になっていい。(C)


2月26日(金)

人は2人に1人はがんになり、その3人に1人は亡くなる。「がん治療の目安は5年」と言われているが、5~10年の生存率はどうなのか。全国がんセンター協議会(全がん協)がまとめた「10年生存率」を読み返した▼筆者が肝臓と胆のうにがんができ、肝臓の半分を切除して約3カ月。若い人は1カ月もあれば再生すると言われるが、まだ半分も再生していない。再発、転移などの疑いはないと言うが…▼全がん協が全国16施設の約3万5000人を対象に実施した初の10年生存率は58・2%。胃、大腸は生存率70%でほぼ変化はないが、乳や肝臓は下降線をたどり、再発リスクは部位によって異なるようだ▼肝臓は全体で15・3%と低く、筆者の2期でも16・9%で、5~10年の間で生存率が約3割から2割以下に低下している。10年以上前の患者のデータで「今は治療法の選択肢も増えている」というが、経過観察の重要性を痛感▼1月「全国がん登録」が始まった。9000近くの病院に、がんの種類、進行度、治療法、死亡日の情報報告を義務付けた。今回の10年生存率は平均値。実際の余命は患者ごとに異なるのは当然だが、特に「5大がん」は健診を受診、早期発見が大事。(M)


2月25日(木)

財政難などから先送りとなっていた道議会庁舎の改築が、現実段階に入ろうとしている。着工の予定は2年後で、2020年の完成、使用開始が見込まれているが、なお議論が残るのは110億円を超える事業費規模▼都道府県議会は地方政治を担う要の機関。それだけに威厳ある庁舎が多く、道議会の現庁舎も例外ではない。1951(昭和26)年2月に完成した議場から使い始め、既に歴史を刻んで65年になろうとしている▼老朽化はかねてから指摘され、96(平成8)年には改築に向け、設計コンペが実施された経緯がある。だが、財政難から翌年、計画は凍結され今日に。その後、耐震上の問題が浮上し、再び動き始めた▼改築に異論はない。多くの道民はそう思っているだろうが、思いが揺らぐのは設計や建設費、備品等を含め110億円余が見込まれている点。道が求めた意見の中に、豪華な建物が必要なのか、単独庁舎でなければだめなのか、などの声があったという▼なにせ人口数万人規模の自治体の一般会計予算に匹敵するほどの額。道の財政にゆとりができたというのならともかく、緊縮状態から抜け出してはいない。この事業費規模はどうなのか、改めて考えさせられる。(A)


2月24日(水)

 (8分音符)いか刺し、塩辛、いかソーメン、もひとつおまけにいかぽっぽ―。覚えやすい振り付けと歌詞に加え、ビートの効いた踊りやすい曲。誕生から36年目を迎える函館いか踊りは、今やすっかり市民に浸透した▼いか踊りを作曲した高橋徹(あきら)さんが15日に亡くなった。毎年の港まつりでパレードの最後を飾る自由参加の運行トラックからマイクを握り、踊り手を盛り上げた名物男だった▼そんな彼が30数年間、メディアの取材に応じなかったのには理由があった。いか踊りを始めた当初、当時の新聞に「いか踊りは港まつりにふさわしくない」との論調で記事を書かれ、人知れず悔しさを抱えていたという▼彼は昨年、初めて本紙の取材に応じた。曲の創作秘話とともに、祭りを学ぶため1年間青森に住んでねぶた作りに携わったり、気持ち良く踊ってもらうために曲の長さを調節していたことなど、影の努力も教えてくれた▼自由参加を続ける責任を感じていた高橋さん。「俺の後釜ができるまでは頑張っていきたい」と話していたが、後継者を作る前にこの世を去った。まだまだやりたかったはずだ。その思いに応えるためにも、今年のパレードは最高の盛り上がりで彼を送り出そう。合掌。(C)


2月23日(火)

子どものころ、蚊を媒介とする病気は日本脳炎かマラリアと聞かされた。蚊取り線香で退治したり、蚊帳の中で寝たものだ。70年ほど経って、恐ろしいジカウイルス感染症(ジカ熱)が広がっている▼このウイルスが最初に発見されたのは69年前、ウガンダの「ジカの森」。樹木が茂り、多種の鳥が生息し、米国やフランス、ドイツなどから学生たちが訪れている▼発熱や発疹などの症状は軽いといわれるが、妊婦が感染すると脳の発達が不十分な「小頭症」の新生児が産まれる可能性が高い。五輪を迎えるブラジルで発症して以来、34の国・地域に拡大、小頭症の新生児は約4000例に上る▼ブラジル大統領は「ジカ熱との戦い」を宣言、国軍22万人が防疫に当たっている。コロンビアでは女性が妊娠するのを6~8カ月遅らせるよう勧告。エルサルバドルは2年間、妊娠を避けるようアドバイス▼米国では性交渉によって感染した例も。決して“対岸の火事”ではない。ジカ熱を媒介するヒトスジシマカは日本列島にも生息。政府は検査試薬の配備を急いでいるが、決定的な治療薬はない。函館空港は啓発ポスターで予防策を訴える水際作戦を展開。まずは蚊の発生源を消滅することが大事。(M)


2月22日(月)

「ピロリ菌」が知られるようになってきた。学名は「ヘリコバクター・ピロリ」といい、胃の中に生息する細菌の一つ。慢性胃炎や胃潰瘍など胃がんを誘引する菌というから無視できない▼日本人の約3500万人が感染、50歳以上では約50%と高くなるという。しかも放っておくと胃がんへと結び付き、実際に胃がん患者の90%が「ピロリ菌」を保有しているとの説もある。漠然とした知識はあったが、まさか自分も抱えていたとは…▼別の診断で訪れた病院で検査をしてもらったところ、二人に一人の方に入っていた。現在、薬による除菌期間中だが、分かったのも検査を受けたおかげ。この「ピロリ菌」は大人もさることながら、青少年も埒(らち)外でない▼潜在的に病原を抱えている可能性は誰にもあるから。若い時期に検査をして除菌できれば、胃がんのリスクを軽減できる。その観点から近年、中学生(主に3年生)を対象に検査費用の補助制度を設ける自治体が出始めている▼病気を回避する道は、一に日ごろの食管理、二に受診などと言われるが、検診で問題がなければ、それに勝る安心はない。中学生に対する自治体の取り組みも受診への誘導策。同時に親の認識も求めている。(A)


2月21日(日)

役所や役場に設けられている「課」や「係」は仕事も名称もお堅いものだが、全国各地では土地柄が分かるユニークな部署も多い。例えばリンゴの生産振興を担う青森・弘前市の「りんご課」、日本一の山をPRする山梨・富士吉田市の「富士山課」など▼山形県南陽市が新年度から「ラーメン課」を新設すると、19日の毎日新聞が報じている。ご当地で人気の辛みそラーメンなどの情報を発信し、観光客誘致につなげたい考えだという▼ラーメン好きの職員に加えて市民10人程度を課員として募集し、市内の飲食店の実態調査やマップ作り、町のラーメンの特徴などをリサーチするのが主な業務。「われこそは」と思った市民も多いかもしれない▼南陽市は人口3万2000人。山形県南部にあり、市のホームページを見ると開湯920年の歴史を持つ温泉やサクラが売りのようだ。ただ、地縁のある人以外には道民にとってなじみの薄さは否めない▼函館は知名度もブランド力も高いゆえに、〝甘え〟も感じられる。民間が「未来ラーメン研究会」をつくるなど活発で、行政がラーメン課を作る必要性は薄いが、今ある観光資源に一層の価値をプラスするヒントが、南陽の取り組みにある。(C)


2月20日(土)

衆院議長は三権の長であり、絶大な権威を持つ。その議長による諮問機関の答申はおのずと重みを持つ。また、国会での発言、答弁は軽くない。それが忘れられたかと思っていたが、ここへきてようやく気がついたよう▼今月初めの本欄でも取り上げた衆院の制度改革問題に対する自民党の対応で。答申にある定数10の削減を4年後に先延ばしする方針を示していたが、それを軌道修正するというから。安倍首相が19日の予算委で前倒しする意向を示した▼答申があった後、首相が「尊重する」と発言する一方で、党は「4年後の国勢調査の結果を踏まえて」と。それが全面的な受け入れに消極的に映ると受け取られてもおかしくない。この姿勢には諮問機関の座長からも異議が唱えられた▼「(自民党案は)棚上げになりかねない…確実に実現を図るべき」。言うまでもなく答申内容は議長から託され、導き出した権威ある結論。世論が気になる。民主政権の最後、党首討論で安倍首相は野田元首相との間で早期削減を約束した経緯もある▼閣僚や所属議員による問題行動や発言が続いており、夏には参院選が控える。議長が求める22日にどう回答するのか、この問題からしばらく目が離せない。(A)


2月19日(金)

相手に向かって下まぶたを下げ、赤い部分を出し、舌を出すアッカンベー。アインシュタインといえば相対性理論よりも、72歳の誕生日に撮ったアッカンベーの写真が強烈に残っている▼ベロ出しのポーズをとる偉い学者は珍しく、本人もお気に入りで9枚も焼き増しした。ユーモアたっぷり、人間的余裕を持った学者だからこそ、難しい理論の発想が生まれた。100年前に予言した重力波の観測に初めて成功したという▼物体が動くと周りの時空がゆがみ、光の速さでさざ波のように伝わっていくのが重力波。米大学などのチームが観測したのは、13億光年も向こうで 2つのブラックホールがお互いの周りを回りながら合体した時の波だとか▼宇宙を伝わるさざ波は「天才が残した最後の宿題」とされてきた。日本でも、飛騨市の地下に重力波をとらえる観測装置を建設中。遠方の天体からの重力波をとらえれば、宇宙の初期の姿など天空の秘密が解けるという▼重力波は、人が動いても発生するようだ。軽はずみな行動が周囲の人の心にさざ波を立てる。妻の監視を逃がれ、さざ波は立たないと思っていたイクメン国会議員が“不倫のさざ波”で辞職。携帯にもアッカンベーの絵文字がある。(M)


2月18日(木)

「函館は企業城下町であった」。数年前に聞いた、ある高等教育機関准教授の解説を思い出す。青函連絡船、北洋漁業、造船。海にかかわる巨大な産業が市民生活を支え、まちの活気を維持してきたが、現在は造船のみになった▼16日に発表された2015年国勢調査の速報値で、函館市の人口は10年比1万3010人減の26万6117人になった。道内で最も多く人が減り、周辺の渡島桧山もつられて人口が減少。地域の衰退が進んでいる▼端的に言えば死亡数が出生数を上回る「自然減」の激しさゆえだが、少子高齢化はどこの地方も同じ。ここで問題に挙げたいのは転出人数が転入人数を上回る「社会減」で、いい職がない、給料が安い、じゃあ函館を出よう―の負の連鎖に陥っている▼連絡船、北洋が健在だった1960~70年代に、この2業種に続く産業を見つけられなかったことが現在の人口減を招いている。当時の行政も経済界も探したであろうが結果は伴わなかった▼市は定住人口の減少を新幹線開業による交流人口増加で補う考えだが、産業を支える人が少ない街に、観光客が来る量には限界がある。新たな企業を呼び、新たな城下町を作るしか方策はないのかもしれない。(C)


2月17日(水)

元プロ野球選手の清原和博容疑者(48)が覚せい剤所持の現行犯で逮捕された衝撃のニュースから2週間。捜査が進むにつれ、かなり以前から常習的に覚せい剤を使用していた疑いが強くなり、国民的スーパースターの末路に胸が痛む▼清原容疑者ほどの名声を得ながら転落していった元プロ野球選手と言えば、投手の江夏豊氏(67)が浮かぶ。野球をほとんど知らない人でも、彼の名前には聞き覚えがあるだろう▼阪神、南海(現ソフトバンク)、広島、日ハム、西武を渡り歩き、最後はメジャーに挑戦。シーズン401奪三振の日本記録はいまだに破られていない▼その江夏氏は現役引退から9年後の1993年に、清原容疑者同様に覚せい剤所持の現行犯で逮捕された。所持量が多かったため、初犯にも関わらず2年4カ月の実刑判決を受けたが、出所後は完全に覚せい剤を断ち切り、解説者などで活躍。昨年からは阪神のキャンプで臨時コーチも務めるまでに▼まだ起訴されるかどうかも分からない清原容疑者だが、自身の信頼を地に落としたのは事実。ファンとしていつかは球界復帰してほしいが、まずは完全に薬から足を洗い、人間として真っすぐな道を歩いてほしい。(U)


2月16日(火)

近年、大臣の存在感が薄くなったのではないか、という話を耳にする。かつては大臣の名前は結構、覚えられていた。それが…何々大臣は誰々とほぼ言える人は、よほどの政治通の人を除いてはいまい▼甘利経済再生担当相(TPP政府代表)は辞任したが、在任中の内閣は3A1S内閣(Aは安倍、麻生、甘利氏、Sは菅氏)とやゆされた。この4人で内閣を動かしているという意味合い。裏を返すと他の大臣の陰が薄いともとれる▼理由は多々ある。就任期間が短くなってきたこと、当選回数など順送りも否定できない。だが、それにしても、である。東京五輪担当相も政治と金の問題を、東日本大震災後の復興相は私的な問題を指摘され、さらに…▼数日前に本欄でも取り上げられた島尻北方担当相。肝心な島の名前「歯舞」が読めなかった。知らなかったのか、論外というほかない。そして法務相は、衆院予算委で答弁に窮し再三、審議を止める失態だ▼大臣ならば懸案問題について、せめて自分の言葉で語るぐらいでなければ。記者会見でも、後から問題にならないように官僚が書いたメモを読む姿が多いのも気にかかる。二階自民党総務会長があえて苦言を呈したのもうなずける。(A)


2月14日(日)

今夏の参院選を前に、投票率アップを目指す動きが進んでいる。政府は12日、同じ自治体なら誰でも投票できる「共通投票所」を駅構内やショッピングセンターに設置可能とする公職選挙法改正案を閣議決定した▼長らく全道の市で投票率ワーストワンの汚名を着せられた函館市は、ショッピングセンターに期日前投票所を設置している。一定の効果を挙げ、ワーストワンを脱却して久しい。利便性を高めて結果を出した好例の一つ▼ただ、投票に行きやすくする仕組みをつくるだけで投票率が上がるはずもない。やはり候補者が何を訴え、何を約束し、何を実行するかが肝要。有権者に注目される訴えも必要だが、行動が伴わねば逆に作用する▼自民党の宮崎謙介衆院議員(京都3区選出)は妻の金子恵美衆院議員(新潟4区選出)の出産に合わせ、今国会中に育児休暇を取る考えを示していたが、出産直前に他の女性と不適切な関係を持ち、議員辞職に追い込まれた▼「イクメン」議員の主張は議論を呼んだが、その裏で抱えていた大いなる矛盾。こんな議員を見ると投票に行こうとは思えなくなる。衆参ダブル選もささやかれる中、日頃の議員の活動を注視し、確かな一票を投じたい。(C)


2月13日(土)

先日、千島歯舞諸島居住者連盟が取り組む「北方領土ネット検定」について触れたが、歯舞を「はぼまい」と読めない大臣がいた。しかも島尻安伊子沖縄北方担当相だ▼島尻氏は「ネット検定」の活動を紹介する際に「はぼ、えー、何だったけ」と一瞬考え込み、秘書官から「はぼまい」と助け舟が出された。ネット検定初級の点数は「恥ずかしくて言えない」▼道内の中学3年生ならすらすらと答える。2年前から公立高校入試で必ず出題されるから。沖縄県選出のセンセイで担当相就任後、沖縄には何回も出掛けているが、根室管内の視察は1回だけ▼高橋はるみ知事は「担当大臣が歯舞という言葉をおっしゃることができなかったのは大変残念」と苦言。根室訪問に触れて「その段階では記憶にあったはず。何回も何回も頭の中で言って、もう一度覚えていただきたい」▼担当相の職務は、北方地域を生活の本拠とする人への援護措置などがあるのに「国民の世論喚起に尽きる」と答弁。安倍首相は「北方4島の帰属問題を解決する」と決意を新たにしたが、島名も読めぬ担当相には帰郷もかなわず亡くなる島民の無念さは分かるまい。今月は「北方領土返還全国強調月間」なのに。(M)


2月12日(金)

今年の函館は積雪が多く、ホームセンターの入り口前には除雪用品がずらりと並ぶ。あと1カ月すれば、売り場には自転車が並び、親子連れが訪れてにぎやかになるだろう。春到来を感じさせる▼自転車の安全利用促進委員会(東京)が全国の中学・高校生の自転車通学をする子供を持つ主婦を対象に行ったアンケートでは、自転車を買う時に気を配るのは、子どもは「デザイン」、親は「安全性」という意見が多かった▼一般社団法人自転車協会が制定する安全基準に適合したマーク有無の関心については、母は16%だが、子どもは8%。親子とも関心が薄いような気がするが、特に高校生になると安全性の優先度は低くなるという▼同委員会は、子どもたちにとって自転車は、大事故につながる恐れのある車両ではなく、ファッションとしての認識が強いことがうかがえるということで、安全を考えて機能のしっかりした自転車を選んでほしいとする▼購入の決定権は、母の21%に比べ、子どもは73%。欲しいものを買ってもらい宝物のように扱うことで愛着がわき、整備を怠らない気持ちが安全につながることは期待される。いずれにせよ、安全運転への意識付けは親子で徹底してほしい。(R)


2月11日(木)

「またか」…。一報を耳にし、そんな思いにかられた。北海道新幹線開業まで残すところ約1カ月半。今のうちに〝生みの苦しみ〟を味わっておいた方がいいということなのかもしれない▼JR北海道などが9日未明、青函トンネルで初めて実施した避難訓練。竜飛定点での訓練後、青森方向から到着した救援列車が新青森駅へと向かう際に突然停電し、約20分間トンネル内で立ち往生した。定点での訓練を無事に終えた後に、また新たな課題が見つかった格好だ▼鉄道も自動車と同様に左側を走行するが、救援列車は右側、いわゆる逆走する形だった。この際、変電所からの送電を手動で切り替える必要があったが、操作がうまくいかなかったのが原因という▼訓練車両に乗っていた同社の島田修社長にとっては痛恨の極みであっただろう。「不慣れだった」との言葉を何度も繰り返したが、青函トンネルを無事に通り抜けるという他の新幹線にないハンディを乗り越えずして安全運行は成し得ない▼ただ、今回起きた事態が3月26日の開業前だったのは〝不幸中の幸い〟という以外にない。残された時間は短いが、起こりうるトラブルを一つ一つクリアし、万全の状態で開業を迎えてほしい。(C)


2月10日(水)

北海道は厳寒期でまだ実感が湧かないが、南の沖縄からはサクラの開花情報が伝わってきた。それと連動するかのように、気象情報会社は西日本と東京、名古屋の開花予想時期を発表した▼総体的な見方は「平年並みかやや遅め」。1月末に大寒波が押し寄せたものの、昨年11月から記録的な暖冬となり、花芽が休眠から目覚めにくくなっているからという。ちなみに福岡が3月23日、東京と名古屋が3月26日と予想されている▼沖縄の桜は濃いピンク色の寒緋桜(カンヒザクラ・緋寒桜ともいう)で、開花は平年より3日、昨年より6日遅い1月21日。桜まつりも早速開幕したようだが、伊豆半島東部の河津桜(カワズザクラ)がこの沖縄に続く▼日本人にとってサクラほどなじみ深い植物はない。満開期間が短いこともあるが、ソメイヨシノをはじめ樹種は多く、いずれも咲き乱れる光景は圧巻。春観光の幕開けを告げる役割も担ってくれている▼旅行代理店は名所巡りの旅行商品の募集を始めた。本格的な列島北上は3月になってからだが、気になるのが道南の開花時期。ゴールデンウイークに満開となれば…北海道新幹線の開業直後だけに、今年は特にサクラ情報に無関心でいられない。(A)


2月9日(火)

子どもはよく泣く。お菓子が欲しい、おもちゃが欲しい時や、自分の思うようにいかない時に駄々をこねて、泣く行為で大人の気を引こうとするが「いつまで泣いてんの」と父母に怒られるのが落ちだ▼北朝鮮が7日、「人工衛星」と称する事実上の長距離弾道ミサイルを発射、ミサイルは沖縄上空を通過した。先月の核実験に続く暴挙で、日本をはじめ米国、韓国など周辺国や国連安保理が一斉に北朝鮮を非難、経済制裁へ動く流れとなっている▼それでもかの国は〝挑発〟をやめることはないであろう。独裁体制を維持するためにはそれが最善の策と信じ切っているから。貧困にあえぐ国民の暮らしぶりを見ることもなく、軍事開発に一直線▼発射実験成功を満面の笑みで伝えるアナウンサー。国民がどう感じているか知らないが、これで食料が、金銭が得られる、わが国に全世界が目を向ける…などと思っていたら大間違いだと言ってやりたい▼こと、かの国に関しては軍事費に金をかけるよりも田畑を耕し、国民生活を豊かにしていくことが最優先なのだが…。精神が子どもな国には当たり前の常識が通用しない。恐怖や泣き落としで支配しようとすればするほど、人心は離れていく。(C)


2月8日(月)

衆議院の選挙制度改革はまたまた看板倒れに終わりそうだ。衆院議長の諮問機関(衆院選挙制度に関する調査会)から答申された「定数10の削減」を、最大政党の自民党が先送りする動きだから▼そもそも定数の削減は、消費税の増税に伴い自民、公明、民主が「国会議員も身を切る覚悟が必要」と合意したこと。にもかかわらず3党協議は一向に進まず、議長が第三者機関に判断を仰ぐということに▼昨年末には最高裁が一票の格差で違憲状態の判断を下したこともあり、調査会の議論の行方が注目されていた。そして1月中旬に出された答申は「選挙区を7増13減し、比例代表を4減する」と。この受け入れに自民党は…▼「当面、定数削減は行わず、選挙区の区割り変更で一票の格差を2倍以内に抑える」考えという。当面とは次の国勢調査(2020年)の結果が出るまでとか。なぜ4年後か、削減に消極的という姿勢しか伝わってこない▼諮問した議長は元副総裁で、党として答申を尊重する姿勢を見せていたはず。これでは議長の権威をないがしろにし、調査会に対しても極めて失礼。あの3党合意は何だったのか、一時しのぎの方便でしかなかったのか…そう思われても仕方ない。(A)


2月7日(日)

初級は「北方4島で最大の島は」「ビザなし交流で使用される船の名前は」など。上級は「終戦時にあった択捉島の村長の名前は」など難問ずらり。今年の北方領土ネット検定の設問▼北方4島は一度も外国の領土になったことがない「日本固有の領土」。戦後、旧ソ連・ロシアが不法占拠し実効支配。多額な資金を投じ、飛行場建設やインフラ整備を進め、日本にも共同事業の参画を求めている▼安倍首相は北方領土問題を前進させるため、プーチン大統領の訪日を実現させたい意向で、その前に首相が訪問することを検討。しかし、ラブロフ外相は「平和条約の締結は領土問題の解決と同意語ではない」とクギを刺した▼「歯舞・色丹の2島引き渡し」は「返還」ではなく、島の主権は譲らないとも。北方返還運動も世代交代。中高生らが討論会を開き、検定に挑戦、七飯中の生徒は返還祈念コンサートで「銀河鉄道の夜」を熱唱した▼13、14日には復帰既成同盟が「北方領土おしま祭」を開く。和太鼓演奏、アイドルグループ、ご当地キャラら総動員、署名活動も。不法占拠70年。政府は今年を「返還の年」と位置付け、首相らが北方領土に乗り込み、返還をかち取りたい。7日は「北方領土の日」。(M)


2月6日(土)

炊飯機、水筒、美顔器、温水洗浄便座、鼻毛カッター。中国や台湾からの観光客に人気の電化製品だ。今年も春節祭で大勢が来函し、一人で幾つも同じ品を抱えて出国する▼日本製は高品質で好まれる。また、日本では普及していても、これを持っていると「裕福」とされるステータスな品も。その一つが温水洗浄便座らしい。朝からトイレの話題で申し訳ない▼日本で売り始めたのは1980年代、バブル景気の時代で売れ行きが進んだ。きれいな水道水が必要なことで、海外では石灰分が含むことや、水資源が豊富でないこと、トイレに対する文化の違いで定着するのは難しい▼ファイターズの中田翔選手が今年から始まった米アリゾナ州ピオリアのキャンプ地で不満を記者に漏らした。まず温水洗浄便座がないこと。現地は野球に関する施設は充実しているが、そこまで日本人選手に気を配ることはない▼栗山英樹監督は海外キャンプの不慣れな環境について、タフさ、がむしゃらを求める例になり、練習に集中する環境であるとした。「まくらが変わると寝付けない」というが、温水洗浄便座の有無は健康にも関わる可能性もある。主砲の一言はわがままや贅沢ではないかもしれない。(R)


2月5日(金)

老いたら福祉施設に入る足しにでもなればと、投資信託(元金保障型)に預けて10年。満期になったので解約したところ、利子が付かず元金だけ戻った。年明け後の株価急落などが影響したためか▼1月は「行く」2月は「逃げる」3月は「去る」と、行事が多く日が早く過ぎるといわれ、特に2月は「ニッパチの枯れ月」。商売が低調な時期に2月中旬から、日銀が金融機関に「マイナス金利」を初導入する▼日銀に預ける資金の金利をマイナスにする方法で、銀行が日銀に余剰資金を預けると残高に応じて日銀が手数料を取る。日銀にたまる資金を、市中に回して設備投資や消費を活発化させるのが狙いか▼マイナス金利は欧州中央銀行が導入しているが、預金金利の基本原則を逆転させる奇手の政策。さっそく金融機関は預金金利を引き下げたり、一部金融商品の販売を停止するなど対応策に出た▼日銀への手数料の穴埋めに、銀行の貸出金利が上がる心配もある。マイナスの言葉からは、よいイメージはわかない。アベノミクスが目指すデフレ脱却の最後のカンフル剤になるのだろうか。預けた金に利子が付かなくなると、リスクを考えて“タンス預金”に回る。異例の一手に不安がよぎるばかり。(M)


2月4日(木)

北海道新幹線の開業は秒読み段階。本紙も開業にまつわる情報や話題を連日報じているが、道東北地域の町村会が壮大な構想を打ち出し、注目されている。周遊型の寝台列車の運行…▼九州の「ななつ星」などJR各社は超豪華なクルーズトレインを導入し、人気を集めている。超豪華かどうかはともかく、想定しているのは個室型寝台列車で、新幹線の恩恵を道東北地域にも、との思いが強い▼構想を打ち出したのは釧路、上川、十勝、オホーツク、宗谷の5地域の町村会。富良野―帯広―釧路(根室線)、釧路―網走(釧網線)、網走―旭川(石北線)、旭川―富良野(富良野線)をつなぐと、道東北を一周できる。それに旭川―稚内も加え▼各地で温泉や食などの観光を組み込み、数日かけて。ツアー需要を見越してのことだが、問題は数十億円かかると見込まれる費用負担。昨年末に行ったJRへの申し入れに続いて、3日には…▼支援を要請した高橋知事から、本年度の補正か新年度予算で調査費計上する考えを引き出したという。実現までの道のりは大変だが、渡島としても無関心ではいられない。新函館北斗駅を起点としても考えられる。どう対応するか、検討に値する。(A)


2月3日(水)

千葉県のローカル鉄道・銚子電鉄はユニークな経営で知られる。銚子市内にわずか10駅、6・4キロ。乗客数の落ち込みで厳しい状況に陥った中、「電車の修理代を稼がなくちゃ」と、名産のしょうゆを使い苦肉の策で取り組んだ副業の「ぬれ煎餅(せんべい)」が大ヒットした▼近年は黒字を計上する年もあったが東日本大震災で観光客が減り、2013年には自主再建を断念。電車の修理費などで国や県の支援を仰ぐことになった▼そんな苦境下でもイルミネーション電車やミニSL運行などイベントは多彩。駅のネーミングライツ(命名権)も売りに出し、1日までに販売対象の9駅すべてが売れた▼その終点・外川(とかわ)駅の愛称を聞いて驚いた。名付けて「ありがとう」。新聞報道によると、命名権を得た住宅会社の社長が好きな言葉だといい「ありがとうと言ってもらえる会社になりたい」という銚子電鉄の考えとも一致した▼銚子電鉄によると、駅名アナウンスの際には「ありがとう・とかわ」と案内される。温かみがあり、アイデアも面白い。そして苦境に負けず住民の足を守るという意志が感じ取れる。経営難にあえぐJR北海道や道南いさりび鉄道でも取り入れてはどうか。(C)


2月2日(火)

サッカーの明治安田生命J2リーグの日程が発表され、函館では7月3日、5年ぶりにコンサドーレ戦の開催が決まった。相手は横浜FC。九州・四国のチームでなく、北海道新幹線を利用して訪れるファンが見込まれるカードで良かった▼今年は5月26日にプロ野球の日本ハム戦があり、相手は千葉ロッテ。6月26日は函館フルマラソン、7月はサッカーに女子プロゴルフツアー(8~10日)、8月に函館アリーナで大相撲の地方巡業などイベントが目白押し▼スポーツは「見る」「する」「支える」の観点から地域活性化につながる“観光資源”だ。観戦者や出場者も周辺観光に呼び込むことができ、誘致やサポートによる交流人口の拡大につながる▼函館のスポーツイベントはすべて日中開催。そうなると朝市と夜景、グルメしか人が流れない…。そんなことはない。新幹線開業効果で前泊・後泊して観光する人も多いはずだ▼交通機関や運動施設への集客だけがスポーツ観光だと考えてはいけない。全市的なサポートがあれば来函者は喜び、観光リピーターにつながる。「GLAYライブ」の盛り上がりが良い例。観光関係者がスポーツイベントに大いに関心を持つことが望まれる。(R)


2月1日(月)

冬でも雪が少なければ自転車に乗る人が少なくない。凍った路面などで転ばないかと心配になるが、それほどに生活の足となっているということだろう。そして春になると…通勤・通学で急激に増える▼その自転車の危険性が大きな問題になって久しい。事故が増えており、被害者とは限らず、加害者となるケースも増加の傾向。認識は今一つだが、対策として昨年6月に法規制(道交法)が強化されている▼警察庁によると、以来、半年間に信号無視(2790件)、イヤホンの装着や傘使用の安全運転義務違反(715件)、一時不停止(536件)、ブレーキ不良(312件)など6521件が、危険行為として摘発されている▼これでも多いが、氷山の一角でしかない。というのも、春から秋にかけては函館・道南などでも日常的に見かける違反だから。危険と背中合わせであり、特に指摘されるのが未成年の人▼自転車が絡む事故の負傷者のうち、3割が未成年という統計が浮き彫りにしている。大事なのは自分の身を守るという安全意識。スピードは出さない、信号は守る、イヤホンはつけず携帯を操作しない…当たり前のことだが、冬の今からそれを肝に銘じておきたい。(A)