平成28年4月


4月30日(土)

臥牛子が全身麻酔で肝臓がん切除手術をした際、囲碁の夢を見ていた。そこに打つと大石が死んでしまう、包囲網からどう脱出するか…。6時間後、麻酔から覚めても碁の話をしていたという▼井山裕太さんが26歳の若さで棋聖、名人、本因坊など初の七冠に輝いた。幼少期にテレビゲームで囲碁を覚え、右利きだが、左手で打つ。アマ六段の祖父が直感や創造性と関係がある右脳を鍛えるため、左打ちを勧めた▼祖父に手を引かれ座布団を重ねて座り、目いっぱい手を伸ばす。碁盤の向こう側まで届かず、打つたびに立ち上がる。小5の時、史上最年少でのプロ入りを目前にしながら大一番で負け、対局室から出た瞬間にわっと泣き出した▼強さの秘訣(ひけつ)は独創性。頭には二つの碁盤があり、一つは普通の棋士が持っている碁盤。もう一つは独創的な手を編み出すという碁盤。脳科学者の茂木健一郎さんも「脳の新しい可能性を示した」という▼東大などで囲碁を授業科目に取り入れている。総合学習の時間などで囲碁を教える小学校もある。推定310万人といわれる囲碁人口の頂点に立った井山さん(それでも世界では6位)。次は人工知能の「アルファ碁」との対決に夢が膨らむ。そして世界制覇だ。(M)


4月29日(金)

北海道新幹線が開業して1カ月。すなわち、JRのダイヤ改正からも同様。利用者から好評と不満の声を聞くが、まだ新幹線の利用予定がないコラム子は、札幌へ向かう特急に両方を感じている▼朝に札幌から函館に向かう北斗号は、午前6~7時台に3本。うち最初の2本はスーパー北斗で、所要時間は3時間27分と3時間46分。函館発は同6~7時台に2本のみ。1本目のスーパー北斗はこれまでより札幌に10分早く着くのはありがたい▼しかし2本目は古い型式の車両で3時間59分かかる。先日乗ったが、新幹線なら4時間座っても苦にならないだろうが…。さらに同7時28分に出るので、札幌着の同11時27分は遅い。なぜ函館発も2本目をスーパー北斗として、所要時間を30分短くできなかったのか▼これまでの利用状況からの判断なのか。札幌発の方がビジネスにとって利便性が良いように感じる。所要時間も全体的に長くなっているようだ。この状態は新幹線の札幌延伸まで続くのか▼最終便はともに時間が遅くなり、札幌は約30分遅い午後8時に出る。現地で原稿を書く時間が増えたことはありがたい。揺れる車内では書けないから。ダイヤとともに乗り心地も改善されれば。(R)


4月28日(木)

「俯瞰(ふかん)で物事を見ろ」。若かりし頃、先輩からこんなアドバイスをよく頂戴した。目の前の事象だけを見るのではなく、全体像を頭に入れて見なさい―という趣旨だ。言葉の持つ本来の意味「高いところから見下ろす」ことで、さまざまな問題に気づく場合がある▼五稜郭公園のサクラが26日に満開を迎えた。タワーから眺めると、ピンク色に染まった花が等間隔で並ぶ光景に圧倒されるが、昨年までは一つ問題点があった▼ジンギスカンセットを貸し出す場所でブルーシートが敷かれており、昨年たまたま傍聴した市議会で「青さが目立つ」として改善を求める質問があった。市の答弁は木で鼻をくくったような内容だっただけに小欄でも取り上げたが、27日に公園を通りがかると、シートが緑色に変更されていた▼木々や地面の色とマッチし、タワーから見ても違和感がなかった。市民の声に耳を傾け、決して安くはないお金をかけてシートを整備した業者に、改めて敬意を表したい▼函館観光はよく「素材の磨き上げができていない」との指摘が目立つが、ちょっとした気づきをもとに工夫を施すことでイメージも質も上げられる。目の前の問題に行き詰まったら、俯瞰してみるのも悪くない。(C)


4月27日(水)

初任地は道東のあるまちだった。初めての土地で、社会人生活になかなか慣れなかった。平地はすっかり春の陽気に包まれているのに、遠くに見える日高山脈は雪に覆われ雄大で、眺めているだけで気分がすっとした▼この時期、思い出すことがもう一つ。初めて一人で取材を任されたころ、文化講座に出掛けた。突然、講師が声を詰まらせた。保坂清著「美術館を歩く 西日本編」(玉川大学出版部)のエピローグ、著者と神田日勝の絵との出合いの部分を読み上げている最中だった▼取り上げられていた日勝の「室内風景」が、大きな意味を持つ絵となり、当時、エピローグの部分を何度も読み返した。今月初旬、講師を務めた釧路市出身の彫刻家、米坂ヒデノリさんの訃報に触れ、あの時の場面が一気によみがえった▼米坂さんにお会いしたのは、その時が最初で最後。年上の人の感極まった姿と、一つの文章が心動かす力を持つということが、仕事を続けていく自分に大きな支えとなった▼函館に来た時「何かあったら函館山のふもとに行け」と言われた。海が見える景色は最高だった。今なら、各地にあるサクラの名所か。五稜郭公園を散歩したが、ピンクに染まる風景はやはりすべてを忘れさせる。(Z)


4月26日(火)

市町村には何らかのシンボルがある。多くは長い年月を重ねて培われたもので、住む人たちにとっては誇りだ。函館で言えば箱館奉行所が復元された五稜郭公園であり、歴史的建造物が残る元町地区だろうか▼全国的にみれば、最も分かりやすいシンボルは「城」。それも名将のゆかりとなれば訪ねてくる人も多い。昨年度の城入場者統計が教えているが、最高は平成の大修理を終えた世界遺産の姫路城で286万7000人だった▼大阪城(233万人)、首里城(187万人)が続き、4番目に多かったのが、大地震で未曾有の被害を受けた熊本城(177万人)。テレビに映し出される無残な姿に市民(県民)の落胆は大きく、胸が痛む▼発生から10日が経っている。なのに、余震は治まり切っていない。多数の死傷者を出し、住宅の倒壊も多く、被災者には不安と過酷な生活の日々が続いている。個々人の生活を、街をどう復興させていくか、課題は多い▼本格調査を待たなければならないが、熊本城も修復には20年はかかるとも言われている。たとえ、時間はかかろうとも…。「(熊本城は)市民の精神的支柱であり、復元は復興の証しとなる」。現地を視察した熊本市長の発言の意味は重い。(A)


4月25日(月)

3月26日に北海道・新函館北斗から九州・鹿児島中央までが新幹線で結ばれた。だが、1カ月も絶たないうちに熊本で地震の被害を受け、寸断された▼安全が確保されて減速、減便であるが、博多から熊本、新水俣から鹿児島中央までが運転を再開した。利用者の喜ぶ声からは新幹線が地元の交通手段として定着している様子が分かる。北海道新幹線も同様に道民の足になってほしい▼本州から熊本へ向かうアクセスが元に戻ったことで、春の大型連休は被災地支援へ向う人が多くなると予想される。だが、後片付けをしたくても建物の被害が大きく中に入れないなど、ボランティア活動の範囲が限られる▼東日本大震災の被災から間もない時、ボランティアセンターの受け付けで「何をすればいいですか」という質問に対応できないことが多かったという。被災地の要望に応えるのに適した人数を送り、効率よく活動してもらうためのセンターも混乱した▼「猫の手も借りたい」と言われるが、猫は気まぐれな動物とされる。役に立ちたいという気持ちで単独行動せず、ボランティア登録をし、被災地のニーズを理解しておくことなど、遵守すべきことを把握して現地に向かわうことが大切だ。(R)


4月24日(日)

衆院道5区の補欠選挙はきょう24日、投票日を迎える。自民党候補と、野党が歩調を合わせて擁立した候補が激しく争っており、今夏の参院選の行方を占う選挙として注目が集まっている▼5区の補選は対象にはなっていないが、今夏の参院選から選挙権が18歳以上に引き下げられる。将来を担う若い世代の声をこれまで以上に政治に取り入れるための取り組み。道南の高校でも選挙の仕組みについて学ぶ機会もあるのでは▼今回の選挙権引き下げで、18~19歳の有権者240万人が増える計算になる。とかく各政党が掲げる政策は年金や医療、介護など、投票率の高い高齢者を意識した内容に偏りがちな側面があった▼若年層の投票率の低さが高齢者偏重につながった面もある。政治を身近に感じられないという若者も多いだろう。ただ、自ら情報を取りに行くという主体性がなければ、ずっと分からないままで終わる▼そんな若者には新聞とともにスマートフォンの活用を薦めたい。紙面やニュースアプリを通じて興味・関心に沿った話題を見つけ、自分自身の考えを持った上で投票につなげてほしい。グルメや芸能もいいけれど、少しでも世の中の出来事へ視野を広げれば、目に映る光景は変わる。(C)


4月23日(土)

今の時代、PRは欠かせない。存在を知ってもらうに欠かせない術だから。中でも鍵を握る一つがキャッチフレーズで、キャッチコピー。短い表現でどうアピールするか…知恵が絞られる▼近年は都道府県も例外ではない。北海道が1998(平成10)年から使っているのは、今やすっかり定着した感のある「試される大地」。さらなる可能性を示唆する点が評価され、応募6万点余りから選ばれたという▼他の都府県をみると、さまざま。多いのは県名をつけたもので、例えば「活彩あおもり」「美の国あきた」「水の王国とやま」など。さらに「いっきに南へ!ぐるっと鹿児島」や「あなたに会いたい兵庫がいます」といったものも▼いずれも関心を持ってもらい、観光や物産に理解を深めてほしいという願いがにじむ。北海道は「さらなるPRを」と、もう一つキャッチフレーズを生み出した。今月8日に発表された「その先の、道へ。北海道」がそれ▼難解な感じを抱く人がいるかもしれないが、新たな挑戦をしていくのだ、という思いは伝わってくる。英訳も作成し、国外にも発信していくという。「試される大地」に「その先の、道へ。北海道」…この2つを連ねて覚えておくのもいい。(A)


4月22日(金)

先日、南米エクアドルで発生した大地震で、刑務所から約100人の受刑者が脱走したという。一連の地震で被害を免れた熊本刑務所は、避難所として近隣住民を受け入れている▼刑務所が災害時に住民の避難場所になるのは、初めての試みという。刑務所は災害救助法の適用外で、日常から独自に非常食を蓄えており、福岡や広島など6刑務所が被災地に3万5000食を提供した▼熊本刑務所は職員用の武道場などを開放。井戸水を使っており、食料や水に困ることはなく、一時は約250人が身を寄せた。近くの少年鑑別所には臨床心理士の資格を持つ職員もおり、心理的ケアもできるという▼子どもがいれば迷惑をかけるとマイカーで寝る親子、高齢者夫婦。長時間、狭い空間で同じ姿勢を続けると、血栓が肺の静脈にたまり、呼吸困難になるエコノミークラス症候群(熊本の場合は車中泊症候群か)。ついに震災関連死が出た▼やまぬ大きな余震。不安、恐怖、疲労…。「みんなそばにおるたーい」。けがをした『くまモン』に動物たちが駆け寄って元気づける―漫画家のちばてつやさんが被災者を励まそうと描いたイラスト。関連死を防ぐためにも、広域避難など一歩踏み込んだ対策が急がれる。(M)


4月21日(木)

数年前、海外から帰国する深夜便で、冷房で寒かったが疲れで熟睡してしまい7時間。朝起きるとふくらはぎや膝が痛い。函館で医者に診てもらうと軽度なエコノミークラス症候群だった▼若いころ約10年間、三重県で自動車レース撮影のため、駐車場で車中泊を最高で5泊した。毎朝起きたら体が痛く、春と秋は寒く、夏は蚊が入るので窓は開けられないが、アイドリング禁止で冷暖房は使えない。風呂もない▼函館で生まれ育ち、ご主人の出身地熊本市南区に住む知人の30代女性は、14日の地震発生以来、自宅の集合住宅では怖くて、小学1年生の子どもと親子3人で車内泊を続けている。エコノミークラス症候群の怖さを語るも、16日には「食べ物がない」と訴えた▼個人宛てで支援物資の送付は可能で、乾麺を梱包したが、運送会社が熊本への宅配受け付けを一時中止したので送れなかった。19日に宅急便が再開し、送ったら「きょうから水道が止まった。次は水を」▼現地へ支援に向かいたい人も多いはず。熊本県内では支援ボランティアの受け入れ体制が整いつつあり、受け付けも始まる。支援物資の送り方も決まりごとがある。支援は急務だが被災地に負担が掛からないことが重要だ。(R)


4月20日(水)

今月14日以降、震度7や6強が頻発した熊本大地震。ニュース映像は被害の大きさに伴って刺激的な内容が多く、報道機関の人間が言うのもなんだが、直視できないほどショッキングな映像も多かった▼被災地の取材をしていた在阪テレビ局の中継車が、ガソリンスタンドで給油待ちをしていた車の列に割り込んで給油をしていた。新聞に比べて速報性が求められ、時間に追われていた理由こそあれどあってはならない▼マスコミの末席を汚す者として、伝えることの重要さを否定してはならないが、メディアは被災者に頼まれている訳ではなく、言わば勝手に取材に行っているだけでしかない。被災者をないがしろにしてまで行う報道に大義はない▼別の在阪局のアナウンサーが、東日本大震災の際にツイッターでこんなことをつぶやいていた。「しんどくなったらテレビを消してください。好きな音楽をかけてください。お風呂に入ってください。(中略)無事な人は心に余裕をもてるように」▼大災害が起こると、どうしてもインパクトの強い映像がちまたにあふれる。気がめいるという人も多いと思うが、伝えるという仕事を担う身として、相手に寄り添うという姿勢を忘れてはならない。自戒を込めて。(C)


4月19日(火)

「日本で生きていることを、改めて考えさせられました」。政治学者、姜尚中(かんさんじゅん)さんの言葉だ。先日、北海道新聞の書評欄「訪問」で語っていた▼熊本市生まれの姜さんは地震の起きた14日、仕事の関係で郷里のホテルにいた。激しい揺れを感じ、非常階段を使って外に出たという▼地震の一報を聞いたとき、まず津波の恐れがあるかどうかが気になった。多くの人と同様、M6・5の14日が前震で、16日未明に1995年の阪神・淡路大震災規模(M7・3)の「本震」が起きるとは露ほどにも思わなかった▼災害が比較的少ないとされていた熊本。目に見えない地下では、複数の断層帯が大分県にかけて連なる。活断層が連動し、17日夜までに震度1以上の地震は500回近くに上った。「これほど広範囲に拡大するのは(観測史上)例がなく、経験をあてはめられない」と気象庁。いつまで続くのか。さらに大きな地震があるのか、専門家も「分からない」としている▼被災地では余震への恐怖が続き、物資不足に悩まされている。活断層が2000以上あるとされる日本で、被災地の現状は人ごとではない。被害がこれ以上広がることがないよう祈るとともに、何ができるか。胸に手を当てる日が続く。(Z)


4月18日(月)

“地震の巣”の上で暮らしている以上、いつ、どこで大地震に遇うか分からない。京を襲った慶長大地震では伏見城などが崩壊し、4万人を超える死者が出た。身一つで庭に逃げた豊臣秀吉を加藤清正が助けたという▼400年前、築城の名人の清正が築いた熊本城は反り返った石垣「武者返し」で知られ、三大名城の一つ。難攻不落で西南戦争にも耐えた。それが今回の熊本地震で天守閣や屋根瓦は飛び散り、石垣は崩れ…▼九州を太いタスキ状に走る活断層。伏見地震と同じく内陸の「横ずれ断層」型の地震とみられ、震度5以上の余震が続く。破壊力はすさまじく、倒壊家屋やブロック塀の下敷きになり、42人が死亡、熊本・大分県では一時19万人超が避難▼大惨事の中、母親が倒壊した家の隙間に手を入れて、名前を呼ぶと生後8カ月の女の赤ちゃんの泣き声。太いはりと屋根の間にできた、わずかなスペースで見つかり、無事母親の胸に戻った映像が救いだった▼道内には内陸の活断層は21、函館平野西縁断層はM6・6の直下型地震が予想される。熊本地震は対岸の火事ではない。清正は常に米3升と味噌など腰兵糧を肌身離さなかったという。日頃から助け合って、震度7への備えが大事だ。(M)


4月17日(日)

誰でも等しく教育を受ける権利は、憲法で保障されている。貧困家庭の学生は学費などを心配せずに大学へ行きたい。学ぶ機会と引き換えに、経済的に手助けするのが奨学金制度▼「親に言われて仕方なく進学しても、女の子はキャバクラ に行く」「できちゃった婚をして若くして一人親になり、貧困になる」。自民党の赤枝恒雄衆院議員が貧困対策を推進する超党派の議員連盟の会合で発言▼大学の年間授業料は私立が約86万円、国立は約54万円。母子家庭などは奨学金だけでは足りず、飲食店などで働かざるを得ないケースも。ある短大生は「高卒より上の学歴があれば大きな企業に就職でき、貧困から抜け出せる」と話す▼児童擁護施設出身の大学生らに対する奨学金拡充の要請にも「がっかりした。高校や大学は自分の責任で行くものだ」と主張。野党は「自民党は貧困家庭の女の子をどこまで侮辱するのか」「論議するに値しない暴論」と批判▼議員の暴言が目に付く。北海道を訪れた大西英男議員はみこさんに「自民党は好きじゃない」と言われ「みこのくせに何だ」と。とにかく、キャバクラ発言は撤回し、学びの門戸を閉めないように、返済不要の給付型奨学金の創設を早めよ。(M)


4月16日(土)

15日夜に熊本を襲った地震は、東日本大震災以来の「震度7」を記録した。津波の被害こそ免れたが断続的に余震が続き、テレビ画面から流れる多くの家屋が倒壊している惨状に身が震える思いだった▼東日本大震災の際、テレビのネット配信を巡り議論が起きたことを覚えているだろうか。地震発生からわずか17分後、広島の中学生がネット動画配信を通じてNHKのニュースを流した行為が、違法ということで問題になった。しかしこれが被災者の共感を得ると、NHKがこれを追認。数時間後にはNHK自体が動画配信をスタートさせた▼この時の教訓からか、今回は地震発生直後に、NHKをはじめ各民放がネット配信を開始。被災場所が停電していたとしても、電波と受信装置さえあれば情報を得られる状況となった▼一方SNS上では悪質なデマが流される問題が続出。「井戸に毒が入れられた」「動物園からライオンが逃げ出した」などの誤情報があっという間に拡散し、被災者の混乱を拡大させた▼ITの発達により情報伝達は飛躍的にスピードアップした。ただし、その使い方を誤れば、混乱を招くスピードも加速する。今回の震災後に、しっかりとした検証作業が必要となるだろう。(U)


4月15日(金)

賭博問題でシーズン前に揺れたプロ野球界。開幕後は各チームとも暗い雰囲気を振り払おうと全力プレーを繰り広げている。道民としては北海道日本ハムファイターズの調子が気がかりだが、今年は阪神タイガースが元気だ▼金本知憲新監督は「超変革」をスローガンに掲げ、実績のない若手選手を大胆に抜てきした。負けても常に温かい視線を送られる日ハムとは違い、阪神を取り巻く環境は厳しい。ファンは目が肥え、負ければ関西のマスコミに容赦なくたたかれる▼そんな伝統ゆえに思い切った改革もできず、昨シーズンまでは実績あるベテランの起用が目立っていたが、監督が変わって今までくすぶっていた選手たちが奮起。上位チームに食らいついている▼一般社会や企業でも同じことが言える。何でも変えればいいという訳ではないが、今まで作り上げたやり方に固執して目の前のチャンスに気づかなかったり、若者の力を伸ばす芽を摘んでしまうのではもったいない▼放っておいても勝手に出てくるたくましい芽もあれば、水をやり、肥料を与えて丁寧に手をかけることで育ってくる芽もある。何にせよ機会を与えることが肝要。金本監督の姿勢は企業や組織づくりのヒントになるはずだ。(C)


4月14日(木)

東京で新入社員80人という会社で、管理職4年目の知人が「そろそろ五月病が心配。特に今年は勘弁して」と嘆く。春に管理職昇進予定だった3人が次々に退職し、職場が大変という▼入社や人事異動で生活環境が変わったことに慣れはしたが、やはり理想と現実の食い違いに体調が悪くなる適応障害や気分障害の精神疾患が、五月病とされる。新社会人ばかりでなく、転勤や異動した人でも心配される▼春に辞めたのは40代前半の男女という。今後リスクと責任に向かうより、これまで通り現場に出る方が合っているからとみる。団塊世代が多く抜け、後継者を育てるため現場に残したいが、管理職として育てなければならない世代という▼また今年は「歓迎会や社員旅行などの行事には参加しません」と言った新人が2人いたという。「仕事3、プライベート7という人生が希望だって。管理職拒否も含め、これらを予防する会社をつくるしかないのかな」と知人▼この春に退職され、第2の人生が始まった方も要注意。義父は4年前、4月は元気だったが肩を落とし始めた夏に体の異変を訴え、病が進行してしまった。五月病の予防はさまざま言われるが、周りが変化に気付くことも大切だ。(R)


4月13日(水)

塩にはミネラルが含まれ、入浴後の体温を維持し、湯ざめもしにくく、代謝を活発にする。ひとつかみ浴槽に入れた塩湯は最高。かのクレオパトラや楊貴妃も塩湯を好み、美を保っていたという▼でも、塩分を摂り過ぎると血圧が高くなり、動脈硬化になり、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血など命に関わる病気が発症する。生命の維持に重要な役割を担っているのに、減塩、減塩と叫ばれがち▼その物価安定を支えてきた「食卓塩」が新年度のトップを切って値上げされた。24年ぶりとはいえ上げ幅が35%と聞くと、しょっぱ過ぎる。値上げは国民年金、トマト調味料、納豆、ウイスキーなども▼かつて津軽海峡を「しょっぱい川」と呼び、縄文人は丸木舟で、江戸時代は北前船で往来。北海道からはコンブなど魚介類、本州からは塩や米などを運んでいた。しょっぱい川は“北海道の生活”に欠かせなかった▼塩梅(あんばい)は塩と梅(酸味)のバランスをとって「物事をほどよく処理する」「体調がいい」こと。マイナス金利でタンス預金が増え、値上げの直撃で景気上向きの春にはほど遠い。北海道弁では「あんばいわるい」のだ。せめて、ちょっと塩っぱいフキノトウの天ぷらが食べたい。(M)


4月12日(火)

来年4月の消費税率10%への引き上げが、ここへきて揺らぎ始めている。というより、見送りに傾いているという見方が多数派なよう。その裏に、消費者のマインドが冷えた状態が続く現実が重くのしかかる▼10%への引き上げは当初、昨年10月だったが、取り巻く経済状況などから1年半、延期して今に。そして、議論を呼んだ食料品など10%時の軽減税率適用を決め、実施準備が具体的に進められている。だが、景気がどうも芳しくない▼政府、日銀は強気の読みを崩していないが、各種経済指標が教える実態は微妙なところ。消費者の景気認識も厳しいままで、変わってはいない。読売新聞が今月初めに行った世論調査も、そう物語っている▼「景気の回復を実感していない」人は、ほぼ4人のうち3人の77%。この認識は財布のひもが依然としてきついことを示唆していると言っても過言ではない。連動するかのように10%への引き上げについても「(再)延期すべき」が65%を占めている▼世界経済も変動が激しく、不透明感が増している。混沌(●こんとん)としてきた政局に消費増税問題も絡まろうともしている。どう政治判断が下されるのか、生活に直結する問題だけに、しばらく国会の動きから目が離せない。(A)


4月10日(日)

誰かにひどいことを言われたりショックな出来事があったりして、学校や会社に行きたくないと感じる瞬間は誰にでもある。大半の人はそれでも気力を振り絞って外に出ていくが、受けた傷の深さゆえに家に引きこもってしまうと、元に戻すのは大変な苦しみを伴う▼先日「大人の引きこもり」を取り上げたテレビ番組で、自宅で暴力を振るう息子の部屋のドアを突き破って怒鳴ったり、連れ出すシーンが流れたことに対し、引きこもり経験者や医師らが「問題あり」として会見した▼引きこもりの経験者らが会見を開くケースはあまり例がない。自室にこもっていると孤独。パソコンなどを介して他人とのやりとりはあっても、家族以外の生身の人間と接する機会は限られるであろう▼特に中高年の場合だと、長年の人生で積み重ねてきたプライドやメンツが邪魔をし、なかなか素直にはなれない。よしんば暴力的な手法で外に引きずり出されたとしても、元の木阿弥に戻る可能性が高い▼家庭訪問という手法の難しさを指摘する意見もあるだけに困難を伴うが、当事者の居場所をつくり、そこで信頼できる人に出会えるかどうかが重要になる。暴力では何も解決しないというのは、万事に共通する。(C)


4月9日(土)

またスポーツ界の不祥事が起きた。バドミントンでリオ五輪男子シングルスに出場がほぼ決まっていた桃田賢斗選手が、違法賭博行為をしていたことが判明。ロンドン五輪同種目出場の田児賢一選手とともに▼昨年12月にドバイであった大会で優勝した桃田選手は、賞金8万ドルを手に「自分が派手な生活をして、子どもたちが憧れてくれればいい」と語った。日本でバドミントンをメジャーにする意志だった▼田児選手は2008年、全日本総合選手権を史上最年少で優勝し、その後6連覇。将来が有望視されたが、14年に左足首をけがし、自ら日本代表から離れ、所属実業団の自費派遣で世界を転戦していた。そのチームに迷惑を掛けた▼日本バドミントン協会の強化合宿に参加しないことや、海外遠征先での過ごし方など、2人に対する素行を危惧する意見もあった。同協会は桃田選手をリオ五輪に出場させない方針とした。先の言葉が悲しく響く▼北斗市出身の佐々木翔選手は現在世界ランク26位だが、リオ出場の可能性はまだある。ただ関係者は「今回の件で男女すべてが五輪出場の道を絶たれるかもしれない」と話す。スポーツ選手のみならず、あらためて違法行為の重さを誰もが感じてほしい。(R)


4月8日(金)

今春入学の新1年生に就きたい職業を聞いたところ、男の子は「スポーツ選手」、女の子は「ケーキ屋・パン屋」が18年連続1位で、2位は男の子が「警察官」、女の子が「芸能人・歌手・モデル」だった(クラレ調査)▼街に目立つスーツ姿の新入社員は全国で30万人を超す。このうち、子どものころに夢見た職業に就いたのは何人いただろう。厳しい就活を経て入社。売り手市場の中、入社式に父母を招待した会社も▼日本生産性本部によると、今年の新入社員のタイプは「ドローン型」。採用日程変更やオワハラの風にあおられながらも、目的地点に着地した学生が多いかららしい。地上から誤差なく操る技術も求められる▼昨年は「消せるボールペン型」、その前は「自動ブレーキ型」。東日本大震災では「奇跡の一本松型」。津波に耐えて1本だけ残った松。自然災害をはじめ「想定外」の事態に遭遇しても、その困難を乗り越えていくことが期待された▼ドローンは災害時の状況判断や高齢者宅への食料配送などにも期待される。新社会人も慣れない環境で悩みや戸惑いも多いだろうが、30万のドローン型が横風や向かい風に負けず、空高く飛び、目まぐるしく変化する列島を見渡してほしい。(M)


4月7日(木)

「ふるさと納税」という名の自治体への寄付が広がっている。過疎などで税収減に悩む地方の自治体に対する格差是正策として生まれた制度だが、残念ながら見返りの特典狙いの“納税”の色彩が一部で▼創設されたのは2008年。地方自治体に2000円以上寄付すると住民税の還付や控除が受けられる。自治体には特典を贈ってもメリットがあり、寄付者には特典が贈られてくる楽しみが。中には10億円を超す自治体もある▼その一つ、全国上位の寄付を得ている十勝の上士幌町ではその恩恵を受け、子ども園の保育料を無料にした。自治体のメリットは財源確保だけではない。同町では特産品を使っているが、わが町、村を知ってもらえ、特産品も宣伝できる▼さらに増えるほど地域の生産者や製造業者は潤うのだからまさに一石二鳥の制度。だが、その特典が変にエスカレートし、制度の趣旨、精神を逸脱し、疑問が持たれるケースが出始めている。例えば商品券や家電製品など▼ここまできたら打算の色が濃くにじんでくる。総務省も問題ありとして1日、全国の自治体に自粛を要請した。商品券など金銭類似の物、電気・電子機器などの資産価値のある物は慎むように、と。当然である。(A)


4月6日(水)

今や老いも若きもコンピューターやスマホでゲームを楽しむ時代。ゲームの中で珍しいキャラクター、いわゆる「レアキャラ」が出てくると胸躍るという人は多いのではないか。お菓子の景品でも、レアキャラのグッズが欲しくて、子どもたちはこぞって集めたりする▼週末、私用で北海道新幹線に乗車する機会があった。行きはJR東日本のE5系、帰りはJR北海道が開発したH5系だった。このH5系に「当たる」のが、現状ではなかなか難しい▼H5系は4編成。このうち2編成が平常の運行に使用され、残りの2編成は非常時や点検用。E5系は31編成と圧倒的に多いから、H5系はまさに「狙って乗る」必要がある▼ラインの色が紫とピンクで違うだけで、外観のデザインはほぼ一緒だが、H5系はすべての座席にAC電源が備え付けられているのがうれしい。E5系だと窓側の座席のみ。スマホの充電やパソコンで仕事をするには、H5系は非常にいい車両だと感じた▼残念ながら「レアキャラ」となっているH5系に乗れるのは、現状だと上り始発のはやぶさ10号と新函館北斗午後0時44分発の22号、下りははやぶさ95号と29号。時間帯を合わせ、快適な乗り心地を体感してみては。(C)


4月5日(火)

西部地区からともえ大橋を通って港町に通勤する。朝は、函館朝市を訪れる団体客の観光バス駐車場が混んでいるかを確認。今は横津岳周辺や駒ケ岳の雪が少しずつなくなり、春の到来を感じながら出勤する▼帰りは、函館駅周辺からベイエリア方面でホテルの宿泊状況を見る。冬は真っ暗な建物を多く感じていたが、近年は冬花火などイベントの充実や外国人観光客が多いためか、部屋の電気が多くついている。その輝きがうれしく見える▼最近、帰る時に寂しく感じる時間がある。8番ホームで寝台列車が見られなくなったからだ。何度か乗車した「北斗星」を「もう1回乗る」と思いながら見ていたのは、すでに半年以上前のこと。憧れだった「カシオペア」も、もう見られない▼さらに先日午前0時半ごろ、ホームの明かりが消えていて不気味に感じた。「はまなす」が走っていた時はついていたが、もうブルートレインは来ないから。知人は「時代だから仕方ないね」とつぶやく▼北海道新幹線が開業し1週間が過ぎた。夏は夜景を見終わった観光客が深夜でもまちを歩き、楽しむことを求める。市内では、くれぐれも防犯の目は光らせてほしい。暗くなった駅を見てあらためて感じた。(R)


4月4日(月)

今季は雪解けが早く、農作業も早まった。農業に欠かせないのは肥料。中学生のころ、裏山の畑に排せつ物の肥料(し尿)をてんびん棒の肥桶で運ぶ時、木の根につまづき、し尿を流してしまい、ひどく叱られた▼火星にただ一人取り残された宇宙飛行士が必死に生きる映画「オデッセイ」を見た。火星のサンプルを採集中、嵐が接近し、クルーは火星から脱出。行方不明となったワトニーは意識を取り戻し、火星での生活が始まった▼どうやって生き延びるか。まず食料。植物学者でもあるワトニーは水素と窒素を使って「水」を作った。次にトイレの排泄物を肥料にすることをひらめいた。「死ぬもんか」と救援隊が来るまで、懸命に野菜づくり▼昭和の半ばまで田畑の肥料は「し尿」だった。排せつ物に落葉などを混ぜ、発酵させて水のようになった「し尿」には水に溶ける有機物が多量に含まれており、農作物に吸収されやすい貴重な肥料▼厳しい環境の火星で生きていけるだろうか。ワトニーは火星の土とクルーの排せつ物でジャガイモ栽培に成功。嫌われものの3Kの一つが、生命体の生存に欠かせないことが立証された。欧露も先月、火星探査機を打ち上げた。火星のぬくもりが伝わってくる。(M)


4月3日(日)

競馬、競輪というと、どことなく男性が好む公営競技というイメージがある。地元の競馬場、競輪場をのぞくと女性の姿が増えたとはいえ、新聞と赤ペンを手に持った男性の姿が目立つ▼競技としても、「やる」女性は少なかったが、日本中央競馬会(JRA)で16年ぶりの女性ジョッキーとなった藤田菜七子さんが話題をさらっている。愛くるしいルックスと高い技術ですでに初勝利を挙げている▼道内唯一の競輪場を持つ函館で、地元からガールズケイリン選手を生み出そうというプロジェクトがスタートした。スポーツ歴豊富な3人が半年間みっちりとトレーニングを積んで、秋に控える日本競輪学校入学試験の合格を目指している▼まったく畑は違うが、この春から道警函館方面本部の本部長に女性が就任した。女性の活躍がニュースになるにつけ、今までがいかに「男社会」であったかがよく分かる。政府が女性が活躍する社会の実現をうたう中、小欄で触れたどの女性も自らの力で地位をつかみ、そしてつかもうとしている▼あと何年かすれば「女性初」といったニュースは価値がなくなるのではないだろうか。何せ人工知能が小説を書く世の中だ。男だ女だと言っていられない。(C)


4月2日(土)

2年間、行方が分からなくなっていた埼玉県朝霞市の15歳の女子中学生が保護された事件。東京・中野駅の公衆電話でSOSを伝えた場面を目撃した人が、「かっこうも含め、今どき、あまり公衆電話を利用した人を見かけたことがなかったので、変に思った」とテレビで話していたのを見て、改めて時代の遠さを感じた▼「お金を送ってほしい」。今なら、詐欺事件と思われかねないが、学生時代、親に連絡するのは、下宿の公衆電話だった。親しい友人と連絡を取る際もボックスに入ったとき、何か自分の空間を持てた気がした▼電気通信事業法の施行規則で、ある程度の設置基準が決められている。それでも、携帯電話の普及などに伴って、設置件数は年々減少。2014年度末で、約18万3700台と、10年前と比べて26万台近く減っている▼11年の東日本大震災の際、他の情報インフラが途絶した状況の中、公衆電話のありがたさがクローズアップされた。今回の事件を機に、ネット上では「使い方が分からない子どもが増えたので、親子で一緒に確認した」などの声も上げられている▼新生活が始まるこの時期、緊急時や災害時のために、ちょっと忘れられた存在を確認するのもいい。(Z)


4月1日(金)

北海道新幹線が開業し、道南、北海道を訪れる人たちを増やそうと、魅力発信にさまざまな策が講じられている。その一つ、3月29日に北海道と吉本興業が包括連携協定を結び、道庁で調印式を行った▼吉本興業といえば「お笑い」。昔は学業成績の悪い子供に親や先生が「吉本に行きな」と言ったこともあったそうだが、人を笑わせて喜ばせる仕事は人気の的。タレントの養成事務所もある▼吉本興業が都道府県と包括連携協定を結ぶのは初めてという。北海道を盛り上げ、国内外に魅力を発信するイベントを行ったり、テレビ番組でタレントが道各地をPRする。道出身のお笑いコンビ「タカアンドトシ」が道観光大使に就任した▼西日本や九州では毎週「新喜劇」のテレビ番組放送もある。この新喜劇では時々、全国の自治体をPRすることもあり、昨年は市政施行100年を迎えた愛知県岡崎市とタッグを組んだ「岡崎版ご当地新喜劇」が大阪のなんばグランド花月であり盛況だった▼北海道出身の吉本芸人は数多い。コンビ「すずらん」の山本も函館出身。彼らのネットワークで北海道を明るく宣伝してくれれば、低迷する新幹線乗車率アップにつながる。函館観光大使の活躍にも期待したい(R)