平成15年5月


5月31日(土)

●地震は怖い。揺れ始めたら早く治まってほしいと願うか、せいぜい安全な所を探して身を守るしか手がないのだから。地震と向かい合った時の人間の無力さを痛感するが、26日午後6時24分、岩手・宮城を激しく襲った震度6弱の地震もそうだった▼亡くなった人がいなかったのは不幸中の幸い。それでも負傷した人は143人、家屋の損壊が453棟も。生産活動など統計に表れない被害も加えると…。神戸を襲ったあの阪神・淡路大震災、死者172人、行方不明26人を出した北海道南西沖地震が頭に蘇ってくる▼自らに置き換えて感じるのは「気の緩みがあったかな」という思い。確かに、危機管理という言葉に象徴されるが、役所や企業では10年ほどの間、地震対策が進んだ。新聞社も例外でない。今回、東北地方を襲った地震でも災害協定が生きた事例が▼輸送可能な範囲内の都市の新聞社同士が事態に応じ印刷し合う、それが協定の柱だが、動きが出たのは阪神・淡路大震災の後。道内も含めて全国的に進んでいる。実行例はないに越したことはないが、今回の地震では輪転機にズレが生じた「石巻日日新聞」が救われている▼この10年、多数の死者、けが人を出した地震は少なくない。阪神・淡路大震災(1995年)、北海道南西沖地震(1993年)のほか、三陸はるか沖地震(1994年)、鳥取県西部地震(2000年)、芸予地震(2001年)など。24日の地震は教えている。「『いざ』にどう対処するか考えておきなさい」と。(H)


5月30日(金)

●ハクビシン。頭から鼻にかけ白い筋が通っていることから白鼻心。タヌキに似ていて、どこか憎めない。中国や東南アジアに多く、日本には60年ほど前にお目見えした移入動物。北海道から九州まで分布。果実が好きで果樹園などに出没している▼そのハクビシンが世界に猛威をふるっている新型肺炎(SARS)の感染源の可能性が強いと、香港大が発表した。ハクビシンから検出したウイルスの遺伝子がSARSウイルス(新種のコロナウイルス)と酷似しているという。タヌキや中国イタチアナグマからも同一のウイルスが確認された▼中国の野生動物の売買に従事している人の血清を調べたら、13%の人からSARSウイルスに感染したことを示す抗体が検出され、数値は一般市民の倍。野生動物に接触する機会の多い人ほどSARSに感染しやすいという。初期に感染した人は20日以内にヘビなどを食べていた▼広東省の野生動物を扱うレストランではハクビシンが定番メニュー。肉を加熱すると危険性は低いが、分泌物などに触れると感染するようだ。この3種類を含め野生動物がウイルスを人にうつしたとの結論は出ていないが、広東省政府は条例で野生動物の食用を禁じた▼日本では狩猟獣に指定されているが、ペットとして飼っている人もいる。エキノコック症など動物から感染する病気は多い。カナダのトロントでは再び感染者が発生、3500人が隔離された。「感染国からの入国者は10日間は外出は避けて」を守り、SARSの日本上陸を阻止しよう。(M)


5月29日(木)

●消費者が巻き込まれるトラブルは、減る気配がない、というより増える一方。例え、実害がなかったにしても、何とか解決したにしても気分は滅入るものだが、いつ何時、遭いかねない、もはや他人事でない、と思った方がいい▼函館・道南も、全国的に同じだが、各地の消費生活センターなどに持ち込まれる苦情、相談件数の増え方が、それを裏付けている。実際に函館の統計をみても、5年前の1998年度には790件でしかなかったのが、翌年度に1000件を超えた後は1300件、1781件…▼そして2002年度は1990件という。1ヵ月の間に166件もあるのだから、多いという印象を免れない。函館・道南に限らず、増えた背景に泣き寝入りしなくなった消費者の姿も見て取れるが、それにしても苦情が圧倒的に多く、相談内容もより多岐にわたっている▼PL法をはじめ法の整備も進んでいるとはいえ、いわゆる悪徳業者の手口が巧妙化、悪質化しているのも現実。最近は身に覚えのないことで問題を抱えるケースも起きている。「だまされない」「巻き込まれない」ために大事なのは自衛の意識と行動…▼賢い消費者になるのは、ほかならぬ自分のため。相談センターなどでは「気軽に相談を」と呼びかけているが、理想は「被害に遭って」ではなく「被害に遭わないために」と利用する人が増えること。あまり知られていないのが残念だが、あす30日は「消費者の日」―。(N)


5月28日(水)

●「世界自然遺産」。世界に通じる自然の財産であることの証だが、その国内候補地の一つに知床が選ばれた。優劣つけがたい大雪山系や日高山脈などに先んじて、道内第一号の栄誉に浴したのは近年、保護活動で脚光を浴びている知床だった▼世界には後世に残すべき文化、自然財産が数多い。それを国際的に保護していかなければならないという考えから生まれたのが「―保護に関する条約」。ユネスコの総会で採択されたのが1972年。既に30年を過ぎたが、「守るべき地」の登録は着実に進んでいる▼世界で登録済みの自然遺産は約100カ所。そのうちわが国で登録を受けているのは、縄文杉で知られる屋久島 (鹿児島)とブナの白神山地(青森・秋田)。いずれも自然との触れ合いを求める人の憧れの地となり、この時期から季節を迎える白神山地を訪れる人は年間数十万人にも▼大勢の人が入ることで植生などに影響する、結果として保護と逆行するのではないか、そう懸念する向きもあるが、必要であれば入山を制限すればいい。大事なことは、自然を守る取り組みを通して、多くの人に価値認識を育んでもらうこと。登録を受ける意義はそこに▼政府は6月中にも推薦する候補地を絞る予定。知床にとって国内候補地としてリストアップされた小笠原諸島(東京)、琉球諸島(沖縄・鹿児島)との順番争いが第一の関門になるが、いずれにしても登録は時間の問題に。まずは北海道から候補地が出たことを歓迎したい。(A)


5月27日(火)

●「取り巻く環境は厳しい」。枕詞のように農業はこう言われ続けているが、その意味合いは微妙に変化して「作る」に「売る」の視点が求められる時代。確かに、国の農政に支えられ、作るだけに専念すれば、という時代があったが、今は…▼すべてでないまでも「作る」だけでは通用しない。「考え方を変えなければ…」と言われるのもそれ故だが、農業に限らず過去の経験は頭から離れないもの。若い農業者に期待する背景がそこにあるが、道南でも次代を担う人材が芽を出し始めている。そう実感したのは大野町で▼先日、1時間余りの駆け足ながら数戸を訪ねる機会を得た。そこで見聞きしたのは、新しい作物や飼育に挑戦し、独自の経営を目指す若い人たちの姿。農業の奥は深く、軌道に乗るまでには時間がかかる。その中で、そろって表情が輝いて見えたのが印象的だった▼昨日の臥牛子は統計から見た新規就農の少ない実態を取り上げていたが、別な一面を垣間見た思い。企業から委託を受け9種類の野菜栽培に取り組むUターンの元技術者、農試で研修を重ねてイチゴのハウス栽培に挑む後継者、さらには就農意欲を持つ夫婦に栽培技術を教える花卉農家…▼「どう見守っていくか」。まさに将来に向けたキーワードだが、技術的な支援に加え、後継者ならさしずめ「任せるよ」という親の理解、新規参入者なら経営への配慮…。要は頑張る人を後押しすべく柔軟な政策だが、そう考えていくと、農政にこそ、さらなる発想の転換が求められていると思えてくる。(H)


5月26日(月)

●渡島管内で新しく農業に就いた人は、昨年1年間で19人。農業を取り巻く環境を考えたにしても、この人数は少なく映る。「えっ、わずか19人」というのが率直な感想。しかも農家の子弟以外のいわゆる新規参入者はいなかったという▼農家人口の減少と高齢化が統計に表れて久しい。経営的に厳しい、労働がきつい等々、その裏には農政を含め農業を取り巻く環境、個々の事情をはじめ様々な問題が隠されているが、実際、全道的な傾向にもれず、渡島管内もこの40年ほど農家戸数が減り続けている▼1965(昭和40)年に1万8000戸だったのが、1980(昭和55)年に1万戸を、7年前には5000戸を割って、いまや4000戸ぎりぎり。この動向と無縁でないのが学卒就農者やUターン就農者など後継者の不足。将来へ最大の課題と言われている▼昨年の統計によると、渡島管内で同居後継者がいない農家は約6割の1800戸。新たな就農者は一昨年こそ31人だったが、昨年は19人と再び20人割れ。全道的な対策として近年、別の世界からの新規参入者の受け入れに力が注がれているが、昨年は…▼全道で86人を数えたものの、渡島管内はゼロ。残念だが、大事なのは道を開き続けておくこと。十勝管内では「就農支援を広域的に」をうたい文句に、関係団体が手助けをするためのゼミナールを企画し、注目されている。「3年後を目標に…」。この言葉が道南にも一つのヒントを与えている。(A)


5月25日(日)

●どうも解せない。予定価格7000万円がわずか21円で落札されるとは。確かに、公的な事業であるなしにかかわらず、安く済むに越したことはないが、それにしても予定価格の330万分の1というのは…。各紙が取り上げたのも頷ける▼問題となった一般競争入札は、札幌医大付属病院が新たに導入する情報ネットワークシステムの詳細設計。参加した3社の入札価格は最高が1300万円、もう1社が150万円。これでも極端な開きだが、受け止め方によっては積算した担当課の誤りと思えてくる▼だが、必ずしもそうでないよう。仕事は外来受け付けや電子カルテ、診療報酬などの情報管理を一元化するシステムの設計である。けっして簡単でない。素人でも150万円で出来るかどうかぐらいの判断はつく。ましてや21円となると、穿った見方を拭えない▼しかも、このケースでは来年度、設計に基づくプログラム策定という大入札が待っているというのだから…。「ここで身銭を切っても来年度の仕事がとれれば」ということか。この業界は過当競争の渦中にあるだけに「損して得を取る」という道を選んだに他ならない▼確かに、情報システム、ソフト開発は定価があってなしがごとく、と言われるが、例えそうだとしても…。ここまで極端では、自ら信頼性を揺るがす行為に等しい。とうに忘れていたが、15年ほど前にあった図書館のシステム開発での「1円入札」が頭に蘇ってくる。(N)


5月24日(土)

●「ドはどくろのド、レは霊柩車のレ、ミはミイラのミ、ファはふぁかば(墓場)のファ、ソは葬式のソ…さぁ死にましょう」。校長先生が授業中に歌ったのは「ドレミの歌」の替え歌。「生命の神秘」をどう考えているのか、どう教えているのだろうか▼さいたま市の小学校での話。4年生に図工を教えていた時、児童がざわついていたため気分転換させようと歌った。「さぁ死にましょう」の前に「この先は問題があるので歌ってはいけない。私が歌ったことはほかの人には言わないように」と断って続けた。替え歌は20年前に覚えたという▼ご存知「サウンド・オブ・ミュージック」の歌。トラップ家の家庭教師になったマリアが歌を歌ったことのない子どもたちに「ドレミの歌」を通して生きる喜びを教えた。子どもたちも7人、音階も7つ。日本語作詞のペキー葉山はドーナツやレモンなど食べ物におき換えた▼子どもの時、覚えた歌は大人になっても忘れない。先ほど、小学校の同期会で恩師に会った。先生は55年ぶりに「いろ(色=物質)はにほへどちり(散)ぬるを、わがよ(世)たれぞ、つね(常)ならむ…」の「いろはの歌」を歌ってくれた。世の中は無常だから命を大事にしろ、と▼児童が大人になっても「さぁ死にましょう」と歌ってもらいたくない。校長は「判断力に欠けていた。申し訳ない」と陳謝したようだが、「生命・人権尊重を推進する立場の校長が、こんな替え歌を聞かせたのは不適切だった」(市教委)のは当然だ。(M)


5月23日(金)

●「加州白山の峯つづき医王山の山合に湯湧という温泉場あり」。竹久夢二が愛人と訪れた温泉。泉鏡花の「滝の白糸」の舞台となった浅野川(金沢)の上流。栗津温泉が加賀藩の「おもて湯」だったのに対し、湯湧温泉は「かくし湯」だった。その湯湧温泉に行って来た▼約1300年前、白サギが飛び立ったあとの田んぼに、傷を癒やす熱い湯が湧いた。薬草が多く採れる医王山の麓。ハンセン病の娘が体を洗ったところ治ったという話もあり、加賀藩主の湯治場。関ケ原の戦いなどで負傷した武士も湯治したという。どこか湯の川温泉と似ている▼湯の川温泉は約350年前、松前藩主の子の千勝丸が医者も見放す重い病気にかかった時、家来に探させたところ湧いた温泉。千勝丸が全快したことから、病弱な人たちに重宝された。榎本武揚や土方歳三らもつかり、箱館戦争では傷病の兵士の療養にも使われたという▼湯川にある市営熱帯植物園のニホンザル約50匹が繁殖の実験用サルとして、サルの研究で世界的に知られる京都大霊長類研究所に譲渡されることになった。いつも、リューマチなどに効果がある温泉に入っている「健康なサル」が遺伝子などの研究に役立つのだろう▼猛威をふるっている新型肺炎SARSに温泉は効かないのだろうか。昔から不治の病は温泉に入って治してきた。今も多くの人が湯治に通っている。高温透明な泉脈の湯の川温泉、鉄分を含んだ茶褐色の谷地頭温泉に、ゆったりとつかろう。(M)


5月22日(木)

●「全国149港のうち103位」。まさか、と思う人がいるかと思うが、これが貿易額から見た函館港の現在の実力。立派な港、自慢の港と胸を張ったところで、実績として突きつけられたら認めざるを得ない。それは課題の提起とも言える▼誰しもが分かっているように「巴の港」と愛される函館港には、下田と並ぶ歴史がある。「箱館湊は世界一立派な港の一つ」。1850年に来航したペリーがこう絶賛したと言われる。実際に港町として栄え、30万都市に発展したのも港のおかげという説に異議はない▼そして近年は…。懐かしい青函連絡船が大きな役割を担った。その存在は言葉を換えると、頼り切った、ということにもなるが、次の時代に向けた整備遅れの要因の一つにポスト連絡船対策の甘さが挙げられるのもそれ故。水深14メートル岸壁が完成したのは昨年だった▼コンテナヤードもまだ機能していない。それでなくても後背地に大都市がないというハンディを抱えている。今後、計画通り整備が進むことで自ずと道が開けると考えては甘い。札幌・道央に位置する苫小牧や石狩と肩を並べるまでになるには、何倍もの努力が求められる▼港町にとっては「港の活気こそ繁栄の証」。単ににぎわいが生まれるだけでなく、荷役、運輸などで雇用の場が広がる。多額の金を投じた港をどう生かすか、それが地域の将来を占うと言って過言でない。努力の積み重ねの結果はこの貿易実績が毎年、教えてくれる。(A)


5月21日(水)

●北海道国際航空(エア・ドゥ)が7月18日、旭川―東京線に参入する。既存他社(日本エアシステム)より5500円安い運賃を設定して。「競争なきところに進歩、改善はない」。エア・ドゥ第二の路線開設は道民にそう語りかけているようにも映る▼どんな業種にも言えるが、棲み分けが出来上がっている業種ほど、新規参入側に対し露骨な行動が見られがち。航空業界もその例外ではない。確かに計画通り事が運ぶ事業は珍しいが、エア・ドゥが“道民の翼”の名をいただいて格安運賃(片道1万6000円)を掲げて札幌―東京線に就航して5年▼道民の理解、道の支援を仰ぎながら果敢に飛ばし続けたが、既存大手の力の前に経営が行き詰ったのは記憶に新しいところ。民事再生法の適用、全日空の資本参加を受けて再出発。具体策の一つが全日空が現在1往復しか飛ばしていない旭川―東京線への参入…▼思い起こすと、華々しく登場した際、函館・道南は冷ややかだった。「札幌(新千歳)しか恩恵を受けないじゃないか」。そんな中で「(札幌線を)成功させることで、旭川や函館に道も開ける」といった趣旨の発言をした識者がいたが、今、旭川が現実に▼じゃ、次は函館か、と言うと、そう容易でない。旭川の1往復と違って、函館には全日空が5往復も飛ばしているという事情がある。でも…。気持ちだけでも応援を続けたい。理由は簡単。東京―旭川線の運賃設定にも「独占」「横並び」に異議を唱える心意気がうかがえるから。(A)


5月20日(火)

●職業柄、何度か弁論大会の審査を依頼されたことがある。感動する話、頑張る姿、社会に対する思い等々。話は様々だが、子ども、大人を問わず、いつも爽やかな気持ちを抱かせてくれる。数日前に同僚から見せられた一つの発表原稿もそうだった▼その主は大野消防署の消防士・小林香織さん。憧れだったという消防の仕事に就いて3年。男女雇用機会均等法が施行された後も男女の壁は厚いが、体力的にも大変な消防の世界はとりわけ男の社会。しかも厳しい訓練があり、勤務は変則、当然ながら夜勤も▼その中で…。小林さんは仕事の幅を広げるために、救急救命士や大型免許の資格を取得した頑張り屋さん。このほど札幌で開かれた全道消防職員意見発表大会で最優秀に輝いた。6月には全国大会へ臨むが、読ませていただいたのは「女性消防士の将来を考えて…」と題したその原稿▼辞める方向に気持ちが傾いていた時、とどめてくれたのは救急で搬送した少女の言葉だった。「私も将来、小林さんみたいな救急救命士になりたいな」。実感したのは、女性が必要とされているとの思い。男性職員の励ましもあり、頑張る力が沸いてきたと…▼そして、こう締めくくっている。「消防も女性を活かせる職場になってほしい。(中略)。そのために、私たちともっと向き合って見てください。女性だって色々な可能性を秘めているのですから…」。正面から仕事と向き合っている人の話には説得力があるが、素晴らしいの一言に尽きる。(H)


5月19日(月)

●雇用情勢を語る時、「最悪」の2字がついて回る。毎月発表される厚生労働省の統計がその現実を物語っているが、使われるようになって何年になるだろうか。経済基盤の弱い道内は全国的にも悪く、1―3月の完全失業率は8・1%。人数にして23万人と推定されている▼その道内で函館・道南は、というと、さらに厳しい環境。影響は新卒者の就職状況にも表れ、新規高卒者の3月末内定率は道内で78・1%、道南は74・7%。ほぼ4人に1人。道南では298人が晴れ晴れとした気持ちで社会人のスタートを切れなかった▼その背景にあるのはマインドの冷え込み。収入減や厚生年金問題など将来に不安を感じるから、気持ちは自衛に。よって消費につながらず、企業の生産活動が落ち、雇用を抑制する流れに。実際、欠員不補充という考えをとっている企業は少なくなく、新規の採用となると…▼函館市が昨年度行った調査でも77%が充足済み、48%が雇用の必要なしと答えている。言うまでもなく経済対策と雇用対策は連動したものであり、国の経済対策が実を上げていない今、雇用だけ回生策があるわけでない。でも「地域でも出来うる最大限の取り組みはしなければ」▼函館・道南では近く、渡島支庁など関係官庁、諸団体が対策組織を立ち上げる。3500社への雇用要請を行う一方、公共事業の前倒し発注もうながす方針。確かに採用を抑制したい企業の壁は厚いが、大事なのは地道な取り組み。そこから地域の共通認識も生まれてくる。(N)


5月18日(日)

●「スローライフ」。最近、よく耳にする。さらに「スロー」がつく言葉も幾つか…。そこに今の時代背景を垣間見ることが出来るが、「世の中の動きが速くなった」のは誰もが実感するところ。結果として子どもから大人まで“ゆとり”を欲している▼確かに、この10数年は「スピード」を追い求める時代だった。パソコンの台頭によって社会の仕組みが変革し、より激しくなった競争の流れは社会全般で今も続く。「時代に乗り遅れてならない」。そんな思いが頭から離れず、溜まるのはストレスばかり。このままでは…▼「スローライフ」の考え方もそこに。「いいものを」とか「ゆっくりと」「心穏やかに」などの意味合いが馴染むが、いわば「豊かな人生を送ろうよ」というライフスタイル。イタリアの地方都市で始まったと言われ、国内ではいち早く宣言を出した掛川市(静岡)が知られる▼ちなみに同市の提唱内容は、スローペース(歩行文化)、スローフード(和食など)、スローインダストリー(季節感ある生活)など。この「スロー」をまちづくりに掲げる自治体の組織化を提唱するシンクタンクもあって、今や「スローシティ」とか「スロータウン」という言葉も▼「函館は海に囲まれ、空気もよく、食べ物にも恵まれていて、まさに癒しの街であり、それを売りにしない手はない」。1ヵ月ほど前になろうか、函館を訪れた著名人からこんな話を聞いた。その時は互いに笑って済ませたが、今、改めて考えてみると、確かに…。外からはよく見える。(A)


5月17日(土)

●ニシンは養殖できないのだろうか。白髪の翁が姥に「この瓶中に水あり、之を海中にてんずれば鯡群来するに至るべし、島人の衣食住の資とすべし」と告げた。瓶子の水を注ぐと、神島(鴎島)から虹のような光がさし、群来した鯡が人々を飢えから救った(姥神神宮の由来)▼「江差の五月は江戸にもない」。江戸時代の江差はニシン漁とヒノキアスナロ(町の木)交易で繁栄した。中歌、姥神町の「いにしえ街道」には回船問屋、蔵、商家、町屋、社寺などが数多く残っている。特に北前船の運航が始まってから、ニシンは保存食として本州に運ばれたという▼例えば、会津藩へは江差のニシンが北前船で新潟から阿賀野川をのぼって会津に入り、山椒や山菜と漬け込まれた。京都名物の「ニシンそば」も江差のニシンが使われていた。箱館戦争で順正寺(東別院)に本陣をおいた土方軍も新鮮なニシンを食していただろう▼その「江戸にもない五月」を呼び寄せようというのが17日から繰り広げられる「にしんルネサンスin江差」。初日はニシンの群来を呼び込んだ姥に祈りをささげ、23日には日本海側の首長らが集まって「にしんサミット」。ニシンの日の24日はニシンの食文化などに関するフォーラム▼稚内水産試験場が留萌海域などでニシンの卵を人工的に孵化させる種苗放流、産卵する海藻類を増やす藻場造成など、ニシンが増える漁場を目指しているが、ニシンが捕れなければルネサンスにつながらない。元山のウインドパワーも結構だが、江差町の活性化にニシンの養殖事業を提案したい。(M)


5月16日(金)

●かつてコンピューターの誤作動など「2000年問題」というのがあったが、最近、よく聞き、目にするのが「2003年問題」。超高層の建設ラッシュによるオフィスビル供給過剰の話だから、地方では実感を覚えないが、東京では深刻な社会、経済問題▼端を発したのは旧国鉄清算事業団が山手線など沿線の汐留地区、品川地区の用地を放出したこと。都心に残された数少ないまとまった土地として脚光を集め、3、4年ほど前から競い合うかのように再開発へ。その超高層ビルが今年に入って続々と完成、供用を始めている▼加えて六本木ヒルズも…。こうした超近代的なオフィスビルの完成によって生まれたのが、機能の劣る古いビルの空き室。入居企業に新ビルへ転居された後、入り手がなく、空き室率が上がり、賃料が下がる。当然の帰結としてビルの価値、周辺地価も下落と▼こうした現実が回りまわって銀行の不良債権処理にも影響しかねない。そう考えると、これらも経済を支える貴重なプロジェクト。「2003年問題」の根の深さを思い知らされる。先日、足を運ぶ機会があったが、その機能たるや、ただただ感嘆するのみ▼汐留と品川はオフィスタウン、それに対して六本木ヒルズは、恵比寿ガーデンヒルズや横浜のみなとみらいに代表されてきた人工街区の決定版。これからの時代のモデルとも言えるが、少なくとも今は…。経営にあえぎ、雇用不安が広がる現実とのギャップだけが伝わってくる。(N)


5月15日(木)

●「つつじ山」。函館山にある幾つかの山の一つで、ロープウエイ山頂駅がある御殿山の下、8合目付近の駐車場に近い山。そう言えば分かると思うが、そこにツツジ(エゾヤマツツジ)を植えること1万本。ボランティアの函館山つつじ会(室田晴康会長)が成し遂げた▼この11日に最後の500本を植え込んだが、要した年月は実に17年。まずは続けたことに拍手を送りたい。今月始めの本紙で詳しく報じていたが、動かしたのは「山をツツジで真っ赤に染めたい」という室田会長の父で、展望台の管理人をしていた松造さんの熱い思い▼賛同する人の輪は確実に広がり、現在の会員は400人。5年前からは大阪周辺在住の函館出身者で組織する「函館をおもう会」も参加している。“民の力”を教えられるが、ここまで来ると、会員が引き継いだ松造さんの思いは結実したと言って過言でない▼木が一人前になるには時間がかかる。このツツジも古い木から順次、花を開かせているが、さらに10年後、20年後に思いをはせると、一層、夢が広がる。そこで大事なのは育てた後の管理。近年、枝払いなどを行う育樹祭が増えているのもそれ故だが、植えっ放しでは…▼代表的な例が帯広市の“帯広の森”。「木が育つ環境づくりを」と毎年秋に数千人が作業を行って、成果を上げている。その考えは同会も同じ。1万本の植樹を終えたことから、来年以降は育樹に当たる方針という。「素晴らしいツツジの山を」。同会の地道な取り組みはこれからも続く。(A)


5月14日(水)

●情報化社会、高齢化社会など現代を表現する言葉は多々ある。その中で、とりわけ重くのしかかっているのがストレス社会。世の中の動きが速い、人間関係が希薄になっている、などが理由として挙げられているが、大人ばかりか子どもまでも…▼講談社の日本語大事典は「ストレス」をこう定義している。「苦しみ・恐れなどの精神的な刺激や物理・化学的刺激などが原因となって生体内に生じる生理的なひずみと、それに対する体内の反応」。ちょっと学術的だが、精神的な過度の緊張、とも表現できる▼その度合いが強まると、大なり小なり症状が表に。疲れる、に始まって不眠、内臓疾患…。そう訴える人が多い現実は専門的な診療科の増え方に表れている。もちろん、個人差があって一概に言えないが、気分転換の時間を持つように、とか様々な対処法が言われている▼運動で汗を流す人、買い物をする人、旅行する人、そしてお酒を飲む人…。ビジネスマンに多いのは間違いなく酒。仕事帰りに同僚と声を張り上げて酌み交わす、という光景はあまりに日常的。それは宝酒造が週1回以上飲酒する人を対象に行った調査結果にも…▼56%が飲み過ぎを気にしながらも「酒が一番」と答えている。医学的見地からは運動などの方がお勧めに決まっているが、溜めに溜めておくよりはまし。大変と言ったところで、忙しく効率を追い求める時代の流れは容易に変わりそうにない。何でもいい、自分の解消法を見つけなければ。(Y)


5月13日(火)

●あふれる「外来語」。そう言われて違和感がない。官公庁の白書、政府広報などで使い過ぎを指摘されたことがあるが、新聞も含めて現実にカタカナ表現、英字表現が増えている。背景に国際化という時代の流れを見て取れるが、それにしても…▼日本語に置き換えると意味や余韻が伝わりづらい、確かにそれもある。だが、「認識度が低い言葉も簡単に使われるのはどうか」。疑問を投げかけたのが国立国語研究所。馴染みの薄い外来語の日本語表現について、昨年から検討してきた結果を4月末に公表した▼さらに検討を続けているが、とりあえず62語。例えば、比較的認識度が高い「バリアフリー」「ガイドライン」「コンセンサス」「ライフライン」などは、それぞれ「障壁なし」「指針」「合意」「生活線」といった具合だが、どちらかと言うと、これらは外来語の方がしっくりくる▼もちろん、その逆も…。「インキュベーション」(起業支援)「タイムラグ」(時間差)「プレゼンテーション」(発表)「アジェンダ」(検討課題)「アウトソーシング」(外部委託)「スキーム」(計画)などだが、教えられるのは「伝える上でどちらが馴染むか」という視点▼とりわけ新聞には…。実際に8割が「意味が分かりづらい外来語が多く使われていると答えた」という調査結果もある。国語研にしても、この調査結果にしても、突き詰めれば「どう使い分けるか」の問題提起。そこにより慎重な判断を求めているということの示唆にほかならない。(H)


5月12日(月)

●日銀函館支店で開業110周年を記念した特別展が開かれている。「日銀」。市役所の並びの厳かな建物と分かっていても、一般的にはお堅い、近寄り難いところ、といったイメージ…。一度も訪れたことのない人が多いかもしれない▼日銀支店の存在は有数の地方都市であることの証し。道内では小樽が閉鎖され、現在3市だけ。全国でも32都市しかないが、その中で函館は大阪に次いで古い歴史を持つ支店。実務のほか、経済情勢判断など様々なリポートで地域に貢献している▼最近も独自に「函館に関するアンケート」を行って、結果を問題提起の形で公表したが、これもその一例。ちなみに、その結果は「夜景などの景色や新鮮な海産物が市民の誇り」「車の運転、接客などマナーが課題」と…。さらに「はこだて物語」も発行した▼職員がチームを組んで、独自の調査、視点から函館の特徴、魅力を掘り下げた労作。本紙の取材に市原好二支店長は「函館のことをもっと知ってもらうきっかけになれば」と話しているが、市民一人当たりの年間消費額など、各種のデータから市民像を描写していて興味深い▼この特別展は6月13日まで。開拓使時代の兌換証券など貴重な展示品が並べられているほか、一万円札での一億円パッケージ、裁断した一億円分の札で作ったイスなど子供たちが楽しめるコーナーも。またとない社会勉強の場であると同時に、「日銀」を身近に感じる格好の機会が提供されている。(H)


5月11日(日)

●具体的な事業内容は正式決定後でなければ分からない。それどころか計画を進めていることすら分からないことも。公共事業の話だが、その結果、住民の求めるものとのズレが生まれたりして、いざ着手の段階になって反対運動が起きる…▼それが決定的な理由とばかり言い切れないが、住民と行政の対立で混乱した事業例は少なくない。自民党が一昨年公表した、調査後10年経っても計画決定されない、計画決定後5年経っても着工しない、着工して20年経っても完成しない事業180の中にも幾つか▼その背景に見え隠れするのは行政の論理。例えば、道路や河川の整備、公園の造成にしても、計画を詰める段階までの課程に介在出来るのは、せいぜい識者や関係者。住民は蚊帳の外に置かれがち。すべてでないまでも、そこに問題の根があるとしたら、改善策を考えなけば▼事前に公表して幅広く議論の場を持つことはその基本。近年、その認識が広がりつつある。「構想段階から、実施の是非を含め、住民の参加を可能にする」。遅ればせながら国土交通省も腰を上げた。6月から実施に移す方針で、現在、そのガイドラインについて広く意見を募集中▼その中で特記されるのが「事業の実施見送り」も含め複数案を提示し、メリット、デメリットを説明するとしていること。さらに必要に応じて住民の代表らも交えた協議会や識者による助言組織を設ける考え方も…。ようやくここまできた。それが理想的な姿になるまでには時間がかかるのだろうが…。(N)


5月10日(土)

●「母に会ったら『生きていてくれてありがとう』と、強く抱き合いながら涙がかれるまで泣きたい」―自分と一緒にいなくなった母親の生死を心配する拉致被害者の曽我ひとみさん。地村富貴恵さん、蓮池祐木子さんも「北朝鮮にいる子供を早く手元に」と母の思い切々▼10代後半の娘に肝臓を提供した40代の母親が亡くなった。10年前に父親から肝臓をもらったが、よくならず母親から生体肝移植。肝臓は3分の1を残せば大丈夫といわれるが、今回は4分1しか残さなかったという。母親は「子どもを守ろう」の一心だったのだろう▼まさに慈母観音。中国遼南にある「望児山」は山頂の古い塔が慈母のように見えることから、母の愛情をテーマにした観光地。8年前に「望児山母の日」を設定。「博愛慈輝、光天裕地」などと詠まれ、観光客らが母親への愛情と敬意をあらわしている。ちなみに中国では「母親節」が母の日▼カーネーションは母性愛の象徴。十字架にかけられたキリストを見て、聖母マリアが落とした涙の跡に生えた花といわれ、日本では戦後「胸にさすことによって母の偉大さを考える日」と迎えられた。今年は開花して2週間は楽しめる「鉢植えカーネーション」が喜ばれそう▼我が子を虐待する母親にも慈母の心があるはず。育ててくれた母親の慈しみを受けたはず。母親はどんな時でも、家族の大切さを考え、家族を守る勇気を持っている。墓に布団は着せられぬ…母親が元気なうちに、敬って感謝する機会をつくろう。一本のカーネーションでいい。あすは「母の日」。(M)


5月9日(金)

●「若者のマナーは悪い」「自分はもう一度マナーを学びたい」。大学生になった自覚が言わせるのか、東洋大の新学生が同世代の若者に向ける目はシビアだった。と言ったら、彼らに失礼になるが、こんな“学生像”が同大学の調査で浮き彫りにされている▼おおらかさというか、常識の欠如というか、中高年者には理解できない若者の行動が多々ある。床への座り込みなどは典型的な例だが、それらを10代の新学生がどう思っているのか…。興味深いところだが、社会学部の600人の回答は耳を傾けるに値する▼単なる同世代批判だとは思えないから。6割が「マナーの悪い世代は10代」と回答、とりわけ女子と指摘している。その一方で、寛容な面も。日常の流出現象と称される人前での化粧なども別に迷惑をかけているわけでないとして…。どうやら「他人に対して」が一つの線引きになっていると思われる▼そして、よく話題になるそのマナーだが、52%が学んだのは家庭と答え、84%が改めてマナーの再教育を望む、と。そこは大学生。同じ10代でも違うよ、という気持ちを伝え、マナーに自信のない自分を正直に認めてもいる▼さらに驚くのは、80%が既成のマナーを後世に伝えたいと答えていること。時代、社会の変化は世代間の隔絶感を生み出しているが、少なくともこの調査全般から、そんな思いはわいてこない。だからだろう、「年少者に臆することなく思いやり、社会のルール、マナーを教えていくべき」。調査報告がこう結んでいるのは…。(A)


5月8日(木)

●散策などで函館山を訪れて感じるのは、歴史を伝える貴重な財産が残されていること。幾つかある要塞跡に加え、石積みアーチ橋など…。これらは紛れもない“歴史の証言者”だが、後世に伝えるために問われているのが保存の取り組み▼歓迎されることに、その機運が熟しつつある。先導役として貢献している組織が函館産業遺産研究会だが、つい最近、地道に続けてきた取り組みを結実させた。それは要塞の残存施設の一つで、道内最古の鉄筋コンクリート建造物とされる津軽要塞司令部の弾丸庫(谷地頭町2)の整備保存。ついに行政を動かした▼同地に平屋瓦ぶきの弾丸本庫が建てられたのは1905(明治38)年。その周囲に5棟ほど弾丸庫があったとされているが、今回、整備保存の光が当てられたのは「当時の最新技術が用いられた価値ある軍事遺産」(同研究会)と言われる一棟▼函館山は今でこそ行楽地の色彩が強い。散策に適度な標高、価値ある植物の数々。自然の宝庫と称される一方、観光スポットとしても地域に貢献している。だが、かつては…。歴史をひも解くと、軍事施設として一般の人の立ち入りを禁止していた時代が長かった▼それを今に伝えているのが要塞跡など。生きた社会勉強の場ともなり得るが、現状は荒れた姿をさらけ出したまま。「保存の手がほしい」。そんな叫びが聞こえてきそうな跡が多々あるが、この弾丸庫の整備保存は将来につながる第一歩。今後に期待が広がる。(A)


5月7日(水)

●大型連休で紙面やテレビをにぎわしたのは、猛威の新型肺炎、列島を北上する白装束集団、目の上に釣り針が刺さったタマちゃんの姿。特に電磁波を吸収して身を守ってくれるという「渦巻きステッカー」を車に張り付けた白装束の集団は異様だ▼77年ころに設立の千乃正法と関連組織のパナウェーブ研究所。代表は千乃裕子(教団名はレイナ・エル)。自身を「地球の女王」と宣言する霊能者。「ソ連や惑星がスカラー電磁波で攻めてくる」といい、それを撃退するのはコイル、ダイオードなどの渦巻きステッカーと白い布という▼オウム真理教の「ポアしろ」を連想させる「消滅する」という言葉をよく使う。天使界、如来界から永久追放までの8段階があり、神の使者として派遣された天使、人間の煩悩を悟った如来(釈迦)など、キリスト教と仏教の教理をつまみ食いしている。他の新興宗教と同じように▼2年前から鳥取、兵庫、京都、滋賀などに姿を見せ、今年は岐阜から長野へ。最終的にはマグニチュード15の地震にも耐えられる山梨のドーム型施設に落ち着くようだが、行く先々の市町村や警察は「得体が知れず不気味だ」とシャットアウト。まさに迷走。週末思想的なものがあるのか心配▼「未知の惑星の影響で5月15日に大災害が発生する」と予言しているが、千乃代表はマルタ(過激派)にやられて末期がん。「貝をやっているが、えさがないタマちゃんが心配だ」と、訳けの分からないことを言わないで、如来のように「真如」を見つめて、自分を救うのが先決だ。(M)


5月6日(火)

●休 刊


5月5日(月)

●「過剰包装」が指摘されて久しい。函館でも簡易包装を推奨する取り組みが行われているが、まだまだ。他の都市でも大きな変わりはない。例えばお土産を買った時など。包装紙できれいに包んである上に、紙かビニールの袋が使われる▼それも立派な袋で。幾つかの店で買うと袋の数が品物に正比例する、そんな経験があろう。確かに、その時は便利。だが、持ち帰った後、袋は…。再出番を待って、どんどんたまっていく。紙はまだ始末しやすいが、あとあと面倒なのはクリーニングの針金式のハンガー▼どこの家庭でもかなりの数があるはず。それを再利用している賢い主婦もいるが、ごみとして処分されがち。ただ、針金に白や青色のビニールでコーティングしているため焼却が難しいという悩みを抱えている。ハンガーはあくまでサービス。本当に必要か、という議論があるのも現実▼「環境への配慮」は現代が抱える課題であり、リサイクルは突きつけられている取り組み。「だからといって(ハンガーを)なくすことは出来ないが、今のものは…」。旭川クリーニング組合がその考えに立って、4月から新しい取り組みを始め、注目を集めている▼それはプラスチック製に切り替え、客が次に訪れる際に返却する、という店と客の間を循環させる方式。一時的にコスト高になるとのことだが、長い目で見れば持て余される量は確実に減る。お土産の紙袋もそうだが、さらに後押しする力は客の「ハンガーはいりません」が握っている。(H)


5月4日(日)

●「当面する最大の政治課題」と位置づけられて何年経つだろうか。説明するまでもない経済対策だが、消費は冷え込みのトンネルに入ったまま。企業にとって苦しい経営環境が続いている。それが雇用に跳ね返り、漂っているのは閉塞感…▼「八方手を尽くしたが、こう以上持ちこたえられない」。倒産が多い。会社更生法、民事再生法を申請して経営を継続出来ている企業もあるが、それはごく一部。金融機関から債務の免除を受けたいと言っても、中小企業には望むすべもない。実際に放棄を受けた144社は大企業ばかり▼倒産統計に数えられるのは負債額1000万円以上。民間信用調査機関の発表によると、14年度に数えられたのは全国で1万8900件余り。13年度に比べ5%ほど減ったとはいえ、戦後4番目の高水準。1カ月平均で1575件、1日では52件になる▼この多い件数もさることながら、倒産原因が今の時代を如実に物語っている。統計上、放漫経営、売り上げ不振、連鎖など幾つかに分けられるが、ここ数年、際立って増えているのが売り上げ不振や売掛金未回収などのいわゆる不況型。14年度も実に7割以上を占めている▼「引き続き予断を許さない状況が続く」。函館・道南も同じだが、景気の先行きに明かりが差し込む兆しがないのだから、厳しいのは誰の目にも明らか。それは各種出される経済見通しからも伝わってくる。いったいどこに「何とかして」と頼めばいいのか、気が滅入ってくる。(A)


5月3日(土)

●「休みにはゆっくりとテレビ・ビデオを」。学校週5日制になって1年。子どもたちになお多い休日の過ごし方だが、その一方で親が見せたい番組と子どもが見たい番組にはおのずと差が…。2つの調査結果からこんな現実が浮かび上がっている▼一つは文部科学省が行った子どもの“土日調査”。そしてもう一つがPTA全国協議会の見せたい・見せたくない“テレビ番組調査”。そこで、まず注目されるのが土日の過ごし方だが、屋内がまだまだ多く、小中学生の6割が「家でテレビやビデオを見る」と▼大人の感覚で子どもに充実した過ごし方を求めても無理というものだが、親の心情はまた別。「テレビを見るのが悪くはない。ただ…」の後に続くのが「ためになる番組を」という思い。それは上位にランクされた「見せたい番組」がはっきりと物語っている▼対象となったのは小学5年生と中学2年生だが、見せたいと思われているトップは、いずれも「プロジェクトX」。苦難に挑んだ人たちの姿を伝える構成で高い評価を得ている番組だが、そこににじんで映るのは「生き方を学んでほしい」といった親の思い。これに続いては…▼5年生では「どうぶつ奇想天外!」「伊東家の食卓」「週間こどもニュース」。中学2年生では「その時歴史が動いた」「ニュース」などの順。だが、大事なのは見る環境を作っているかということ。「低学年のうちから一緒に見る機会を作ろう」。そこには親に対するこんなメッセージが隠されている。(H)


5月2日(金)

●「自由にイエス、圧政にノー」「サダムの終わりは自由の始まり」―。頭部と右腕が持ち去られたイラク最大の大統領像の台座に書かれた落書。チグリスとユーフラチスの川が流れている。古代バビロニヤ王が世界最初の憲法「ハムラビ法典」を書いた場所▼196条の「他人の目をそこなったら、その人の目をそこなわなければならない」(いわゆる『目には目を、歯には歯を』)は有名。徹底的な復讐と誤解されがちたが、正しくは「目を潰されたたら、悔しくても、相手の目を潰すくらいで許してやろう(殺してはいけない)」の意味▼人の復讐心に一定の歯止めをかけ、無制限の復讐を防いだ。湾岸戦争で海外に逃れたイラクの知識人たちが考えた憲章によると「政権分離」と「非軍事化」が柱。「国際紛争の解決手段としての武力の威嚇や行使は永久に放棄する。軍は国内の抑圧には使わない」とうたっている▼「平和憲法があったからこそ、平和と繁栄を続けてきた」日本国憲法9条の「戦争放棄」を模倣したという。イラクとの戦闘作戦終結を宣言する米大統領らは「戦後の復興は日本がモデル」と言っているようだが、多くの民族、部族、宗派が入り乱れているイラクでは疑問符が付く▼先ほど、札幌の憲法フェスで「武力で何が生まれたか」をテーマに戦争と憲法が熱心に議論された。かたや、現在の法律では取り締まれないとしていた岐阜県の林道占拠の白装束集団にも、やっと7日目で警察の手が入った。改憲、護憲、法律、よく考えよう。あす3日は憲法記念日。(M)


5月1日(木)

●議会議員は何人が適正なのだろうか。そんな疑問に合理的に答えを出せる人はいない。考え方によって異なり、まだ多いという説を唱える人もいれば、むしろ増やすべきと主張する人もいよう。だが、今回の統一地方選挙をみると、多いのかと思えてくる▼特に、町村でだが。定数を“なり手”がいないという側面から考えるべきではないが、無投票、定数割れがこうも多い現実は一つの問題提起。道内で行われた132町村のうち31町村(道南3町村)が無投票で決まり、羽幌町、西興部村では欠員に。また、中札内村では…▼定数12に対して告示数日前まで立候補予定者は8人という異常事態。窮状を見かねた勇退予定の議員が再出馬、さらに前村長が決断して員数あわせ。今回の選挙に限っては合併問題が影を落としたと見る向きがあるが、必ずしもそうとばかりは。名誉職としての魅力も薄れた、制約が多い割に報われない…▼確かに報酬は安い。町村の規模にもよるが、月額20万円前後。他に手当てがつくとはいえ、これでは仕事を投げ打って、とは難しい。「最も忙しい3月、9月に定例会があるから」。農業者からはこうした声も聞かれる。としたら、より“専門職”と位置づけるのも一考▼当然、ある程度、生活を保証できる報酬にしなければならない。その分、定数を大幅に減らすのである。「これまでも削減している」。民意反映の視点から反対論を持つ人も少なくないだろうが、時あたかも行財政改革や合併論議が行われている時期。議論する町村が出てきていい。(N)


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