平成15年8月


8月31日(日)

●「不登校」。学校という教育現場に限らず、かねて社会に提起されている問題だが、そんな悩みを抱える小・中学生が後を絶っていない。2002年度の統計によると、函館市だけでも小・中学生合わせて205人。2%台の出現率が続いている▼「不登校」という言葉が抵抗なく使われ始めてどのぐらい経つのだろうか。登校の意志を持ちながら心理的理由などから登校出来ない場合を指すが、年間30日以上休むと、そう見なされる。文部科学省(旧文部省)は1991年から調査を行っているが、未だ改善の流れには…▼ちなみに2002年度の全国データは驚くなかれ、小学生で2万5869人、中学生で10万5342人。特に深刻なのは中学生で、37人に1人というから1学級にほぼ1人いる計算。どう考えても多い。函館・道南も全国に比べ多少いい程度に過ぎない▼確かに函館ではこの4年ほど極端な増加がみられない。むしろ2002年度は久々に前の年度を下回った現実がある。そこに関係者の懸命な努力があったことは否定しないが、それでも依然200人を上回るレベル。明るい兆しが灯り始めたと判断するにはまだ早い▼現代は子供から大人まで病んでいる時代だとしても、少なくとも学校は楽しいところで、通いたくなるところであって然るべき。なのに必ずしもそうなっていない。この現実の一つの要因がそこにあるとも言われるが、大事なのは解決の道を模索する取り組みであり、社会としてこの問題から目をそらしてはならない。(N)


8月30日(土)

●函館港にせり出すように浮かぶ埋立地・緑の島。10年余りを経た現在も一部未整備部分をさらしている。今日に至るまでの間、幾度も論議があり、アクア構想など具体的な計画も持たれたが、結局は実現に至らず、長期的な利用方法は宙に浮いたまま▼緑の島が造られたいきさつは、市民なら多くが知るところ。一言で言うと、函館港のしゅんせつなどで出た土砂の集積場として誕生した島である。港湾整備で出る土砂は津軽海峡の沖に投棄してきた時代があるが、海洋汚染として糾弾される時代を迎えると…▼新たな対応を考えなければならないことに。その後の中央ふ頭や万代ふ頭、北ふ頭などの造成に当たっては港内に確保するしかなかった。その結果として生まれたのが緑の島であり、面積は約8万平方メートル、土量は68万立方メートルといわれ、1981(昭和56)年から10年を要した▼函館市史によると、緑の島という名称がついたいわれは定かでないそう。だが、その名にあわせてか当面の構想として示されたのが緑地化。確かに憩いの場やイベントの場として最適。新しい利用の試みとしてドライブインシンポジウム&シアターが企画されている▼きょう30日の夜に上映される映画は一昨年秋に市民が協力して撮影された「パコダテ人」。この映画を取り上げたことにも拍手を送りたいが、それにしてもドライブインシアターとは、なかなかのアイデア。函館にはイルミナシオン映画祭もある。この経験が“映画のマチ”に厚みを加えてくれるに違いない。(H)


8月29日(金)

●大阪の池田小学校の児童殺傷事件から2年3カ月。刃物で腹や背中などを刺されながら、倒れても倒れても、教室から約50メートル離れた児童用玄関まで逃げ力尽きた女児ら1、2年生8人が亡くなった。その犯人、宅間守被告に死刑の判決が言い渡された▼離婚や失職で自暴自棄になり、人生を幕引きする道づれとして大量殺人。別れた妻に対する恨みが社会に対する恨みに広がり、社会に対する復しゅう心、エリートへの反発に…。どうせやるのなら名門校へと、23人を無差別に殺傷。幼稚園ならもっと殺せたとまで話している▼犯人は精神安定剤の常用者で当日も10回分を一気に飲み幻覚症状。精神鑑定によると、情性(こころ)のない人間で、愛や家庭といった目標をもつ基盤がグラグラの状態。「かたよった性格」が犯行に走らせ、責任能力はあったが、詳細な動機の供述を拒み、反省の気持ちは一切なかった▼判決公判でも紙を手でかざし「どうせ死刑になるんだから言いたいことを読ませてくれ」と勝手に発言しようとしたため、裁判長が退廷命令。遺族に対する謝罪の言葉は一切なく、それどころか遺族に向かって声をあらげて暴言をはいた。情操を忘れた人間、いや冷血動物だ▼裁判官の言う通り「残虐非道な行為」。「死刑は当然。死の恐怖を感じてほしい。謝罪の気持ちをもってほしい」(遺族)。しかし、死刑判決で子供たちは教室に帰って来ない、すべてが終わったわけでもない、憤りとむなしさだけが増すばかり。みんなで、第二、第三の池田小学校を防ぐしかない。(M)


8月28日(木)

●テレビ、新聞、雑誌に始まってチラシや街中の看板…。今の世の中、広告にあふれている。ある統計によると、その総額は経済の冷え込みでここ数年、落ち込んでいるとはいえ、昨年で年間5兆7000億円(電通消費者研究センター調べ)▼媒体別ではテレビが圧倒的なシェアを占めている。テレビ放送が始まったのは1953(昭和28)年というから、ちょうど50年前のこと。その年の2月にNHKが放送を開始したのに続き、8月28に民放が。その第一号である日本テレビが流したCMは服部時計店の時報スポット…▼白黒時代からカラー時代へ。画像が鮮明になるにしたがって広告業界に占める立場を強め、いまや完全に新聞を圧倒するレベルに。これでもか、これでもか、というほどに流されている。まさにテレビCM全盛時代の感。誰の目にもそう映っているに違いない▼昨年の実績をみると、新聞は1兆700億円だが、テレビはその新聞を8600億円上回る1兆9300億円。全体の広告費に占める割合も新聞が20%を割り18%台になっているのとは裏腹に34%。そのほかでは折込が8%、雑誌が7%、ラジオが3%といったところ▼広告業界におけるテレビの存在はしばらく揺るぎそうにないが、注目される新媒体がインターネット。845億円で、まだ広告費全体の1・5%の域でしかないが、見方によっては早くも1・5%…。ネット利用者の増加などを背景に今後の伸びが容易に想像される。(A)


8月27日(水)

●春夏秋冬、それぞれの季節を感じさせてくれる気候。近年は地球の温暖化が「異常」を誘発しているが、今年もそれが現実になったか…。夏を味わう間すらなく、経済活動も悲喜こもごも。農作物に生育遅れが見られるなど影響はあちこちに▼人間の営みは気候に大きな影響を受ける。どの地域も1年の気象サイクルを持ち、それに合わせた営みを築いているからだが、冬が厳しい北海道といえども夏は暑くて当たり前。だが、今年も、と言うべきか、道外では梅雨が長いなど、全国的にも“おかしい”推移▼函館の7、8月もしかり。その“夏らしさ”がなかった現実は、データからも明らかに。8月は25日現在で最高気温が27度を超した日は4日だけ、最も気温が高かった日でも28度。真夏日がなかったばかりか、1日中晴れた日は2日だけ。逆に20度を割った日が2日も▼これでは土と天候が頼みの農作物も堪らない。育ちが遅れたり、育ち切れなかったり。野菜の高値現象が生まれているほか、東北などでは米も厳しい状況。道南でもほとんどの作物で生育遅れが報告されている。せめて…。そんな思いで期待するのは出来秋の天候▼先日発表された1カ月予報は、楽観を許されない内容。夏場の予報確率が悪く、例え読み取りが難しい年だとしても予報は予報。ただし、この時期に至ると、不謹慎ながら、この1、2カ月ばかりは予報が狂ってほしいな、と…。心底から“秋らしさ”を期待したい。(H)


8月26日(火)

●宇宙の始まりは時間の始まり。銀河系と同じ大きさのアンドロメダ座の光が地球に届くのは210万年。それよりもぐーんと近い火星が地球に大接近するのは、27日午後7時。6万年(正確には5万7540年)ぶりに5576万キロまで近づく▼探査機などから撮った火星の写真を見ると、夢とロマンが広がる。ひときわ目立つのは太陽系最大の山で、標高2万5000メートルを超すオリンポス山。高さ1万メートルの台地タルシス、長さ4000キロのマリネス峡谷。エルビス・プレスリーに似た顔面(奇妙な形の丘)。両極の氷も鮮明だ▼現在は乾燥した寒冷な惑星だが、最初は温暖だった。水が流れ出したような痕跡があり、地下水が存在する可能性があるという。地球に生命が誕生した同じ頃の環境に似ていたとすれば、原始生命もあったはずだし、堆積層に化石が残っているかも知れない▼夢をかりたてる火星はギリシャ語のマルス(戦いの神)で、戦いに絡む話が多い。SF作家のウェルズは「宇宙戦争」で、大量の火星人を地球に派遣、国連事務総長を降参させた。「憎しみあい、戦争を繰り返してきた人類の争乱は止めよう」と。火星人の説得で地球は救われた…▼超大接近の27日、火星は東南の夜空で一番輝く(2・9等星級)。次に大接近するのは284年後。「機器も技術も進んでいるから、とんでもない発見があるかも。火星人発見とか」(アマチュア天文家・田坂一郎さん)。一生に一度の天体ショー。戦争のない地球を願って「赤い星」を観測しませんか。(M)


8月25日(月)

●「仕方がない」。この言葉が今ほど当てはまる時代はない。子供から大人まで多くの人が抱いている“共通語”。景気が良くならないのも、仕事や勉強が面白くならないのも…。こんな時代だから、となり、その後にたどり着く言葉がこの「仕方がない」▼辞書をひもとくまでもないが、その意味は「不満ながら他に処置する方法がない」ことであり、突き詰めると、いわば諦めの言葉。「頑張ってもな」「やっても無駄だよ」。気持ちが前に向いていかない、現実は既にこうした無力感が充満する域に踏み込んでいる▼政治不信はその端的な例。永田町の論理に加え、伝わらない政党の考え、政治家の度重なる不祥事…。こみ上げてくるのは「期待しても(仕方がない)」という思い。それは世論調査の結果が物語っているが、具体的な行動として分かりいいのが最近の低投票率▼諦めるか、我慢するか、人それぞれ、そんな場面に出くわすことが少なくない。リストラ・失業者増、残業増・収入減…。「何とかしてくれよ」。怒りはこみ上げてくるが、こんな時代だから、となる。新入社員のアンケートで「定年まで働きたい」が増えているのもそれ故▼『あれもこれも「仕方がない」で納得する』。思わず駄作が頭に浮かんでくるが、最近、ドキッとさせられたのは今の日本人像を語った識者のこんな話。「日本人が怒る気力を失って、仕方がないと言って自分のことしか考えなくなってしまった」。確かに、そうかもしれない。(A)


8月24日(日)

●漁火通りを空港に向かって湯の川温泉の入り口近く、道路をはさんで海側と反対の左手に広がるクロマツの林。これほど多くの植生で、しかも街中に…。車で通るたびに北海道には珍しい、貴重な自然財産だと気に止めていたが、足を運んでみるや思っていた通りの素晴らしさ▼緑地として開放された「湯川黒松林」のことだが、ここのクロマツは歴史の語り部でもある。話は今から100年以上も前に遡る。当時のこの一帯は砂漠さながらの人も住まない地域だったが、砂が舞う強風対策として植栽されたのは1889(明治22)年から▼函館の歴史にその名を残す洋物商の渡辺熊四郎が、私財を投げ打って取り組んだと伝えられる。ほぼ10年の歳月をかけ、植えたのは静岡県から取り寄せた苗20万本。育てるのが大変だったのは想像に難くない。北北東に傾いている木が多いのは強い風に悩まされた証▼苦労が実って育ち始めた1925(大正14)年、市立函館病院の建設資金として寄贈。今日へと管理が受け継がれてきたが、本格的な保全対策がとられ始めたのは近年になってから。今年の工事では、傷んだ木の植え替えやウッドチップによる園路の整備などが行われた▼1・4ヘクタールに育っているクロマツは現在924本。これほどの黒松林を新たに造ろうとしたら、かなりの時間と労力を覚悟しなければなるまい。そう考えると、どれほどの価値があるものか分かりいいが、教えられるのは語り継ぎ、大事にすべきということ。道内最初の防風林ということも忘れてならない。(A)


8月23日(土)

●「人脈」。読んで字の如しで、人と人のつながりを意味し、同時に企業経営にとっても一つのキーワードとなる言葉。豊富な人脈は経営にプラスに作用する、とはよく耳にする話だが、この「人脈と経営」に視点を当てた調査の結果が興味深い▼行ったのは中小企業向けにITソリューションを提供している株式会社フォーバル。近年は特にビジネスライクが言われるが、社員が経営者から聴取した結果は、必ずしも…。約半数の49%が「人脈は仕事の上で最も重要」と答え、「重要度は高い」までを含めると90%▼その中で特徴的なのは、40歳以下の経営者ほど人脈を重要視していること。それは若いほど経営する会社の歴史が浅く、発展の過程にある故と推測される。つまり人脈は経営が磐石になる前こそ不可欠という見方も出来る。注目したいのは、そのためにしている努力…▼トップは「多くの人に会うこと」(46%)で、「礼儀・マナー」(45%)「情報のギブ&テイク」(35%)の順。さらに人脈を維持していくコツとして「直接会って話をすること」を挙げた経営者が70%と群を抜いて多く、「取引の継続」「飲む機会」などと続いている▼人脈は顔が広いことと同類ではない。そこに存在するのは役に立つか否かの視点だが、最も求められているのは異業種の経営者。ビジネスのヒントやアドバイスを得たい、それには同じ業種の人でない方がいい、という思いなのだろう。紹介したのは結果の極く一部でしかないが、経営者が背負っている厳しい一面が読み取れる。(A)


8月22日(金)

●高齢化の影響は地域の商店街の活動にも影…。少し時間が経ったが、そんな現実を知らせる記事を本紙で目にした。この商店街は町会とも連携をとって毎年夏に、フリーマーケットやカラオケ大会などを中心とした独自の“まつり”を開催、昨年も約1500人を集めてきた▼地域にも根付き、今年も年初の段階では開催の方針だったが、実行委員会を組織する時期に直面するや体制を組むのがどうにも難しい雲行きに。支えるスタッフが足りなければ運営は出来ないが、気になったのはその理由。組合員の高齢化や人出不足という▼「少子高齢化の時代」。かなり以前から聞かされてはいたが、既にそれは現実。さまざまな面で新たな問題が提起されている。早くは農業分野だった。北海道では就農者の3人に1人が65歳以上、逆に29歳以下は10人に1人にも満たないまでになっている▼こうした姿は身近な、例えば町会など地域活動でも。若い人で役員のなり手がいない、集まりなどにも参加しない、そればかりか入会しない、といった話をよく聞く。函館はまだいい方と言われるが、根底に抱えている悩みは他都市と同じ▼この商店街が直面したのも、容易に「次の世代へ」といかない現実。世の中には順送りに引き継ぐべきことは多々あるが、肝心なバトンを受ける人が少なくては…。ちょっとした扱いの記事だったのに「あぁ、そう」と読み流せなかったのはそんな思い故。このままでは…。(N)


8月21日(木)

●冷夏のまま、蒸暑のないまま処暑か。かっと照りつける日差しに向かって咲き乱れるヒマワリが恋しくなって、北竜町の「ひまわりの里」に行って来た。いくぶん色あせていたが、赤っぽい花、黒っぽい花、紫の花など、中学生が大事に育てた30種類の「世界のヒマワリ」に感激した▼ぐるぐる目が回りそうなゴッホの「ヒマワリ」。原産地は中央アフリカ。その花言葉は「愛慕」で、観る人を幸せにしてくれるというが…。初恋の思い出、かつての思い人からの突然の電話、謎をかける女、若すぎる不意の死…情緒不安な愛慕だった(00年、日本映画「ひまわり」)▼背景は第2次世界大戦前後。ウクライナの大地に果てしなく続くヒマワリ畑。哀愁ただよう音楽をバックに、ソフィア・ローレンが戦場が終わっても帰らない夫を求めてさまよい歩く。元気なヒマワリとは対照的な姿(70年、イタリア映画)。悲しい思いを強めた愛慕だった▼アフガニスタン、チェチェンなどで多くの兵士や民間人が亡くなった。イラクでは米兵たちが毎日のようにゲリラに殺されている。「世界のヒマワリ」を見ていると、戦争の悲惨さ、運命の不思議さを感じざるをえない。太陽を受けた無数のヒマワリの下には、やりきれない愛慕と悲劇が…▼北朝鮮に拉致された被害者が四半世紀ぶりに帰国してから1年になろうとしている。我が子を残したまま…愛別離苦。北朝鮮にも愛慕のヒマワリはあるはず。核問題と絡めないで、早く帰してほしい。そして、ヒマワリ畑を元気にかけまわる子供たちの姿が見たい。(M)


8月20日(水)

●「推計1620万人」。どこかで目にした数字とおぼろげながら覚えている人もいようが、この大変な人数、実は糖尿病の疑いが強い人と可能性を否定できない人の合計…。厚生労働省が発表した数字だから信頼するとして、何と多いことか、というのが実感▼「体内のブドウ糖をエネルギーに変えるインスリンが不足するか、働きが弱くなることによって血糖が異常に高くなる病気」。医学的に糖尿病はこう説明されるが、放っておくと、さまざまな合併症を引き起こす病気として知られ、日常的に注意が叫ばれている▼だが、“黄信号”の人は減るどころか、増える一途。この厚労省の調査でも疑いが強い人だけで約740万人、それに可能性を否定できない予備軍に数えられる人が約880万人。5年前に比べ、合わせて250万人も増え、成人の6・3人に1人が問題ありという現実に▼その大きな要因として、真っ先に挙げられるのが、豊かになった食生活。栄養価の高い食事となっている一方で、それに見合った運動量が足りない。「言われてみれば」と自覚はするが、予防のための行動となると、なかなか。しかも診断や治療は後回しにしがち▼啓蒙活動の成果は上がって、確かに知識は浸透している。今後の鍵は個々人がどう自覚し、どう予防策をとっていくかということ。このままいくと…。厚労省は、7年後には疑いが強い人だけで1080万人に達すると試算している。少なくても中高年になったら「自分は大丈夫」は通用しない、と思った方がいい。(A)


8月19日(火)

●道南四季の杜公園が、間もなく開園1カ月になる。先日、と言っても日曜日の午後だったが、訪れてみると、広い駐車場は7割ほど埋まり、正直に言って思い描いていた以上の人出。花に誘われて散策する家族連れ、歓声を上げて芝生を走り回る子供たち…▼この道立公園が造成された場所は、住所で説明すると函館市亀田中野町であり、分かりやすく言うと、公立はこだて未来大学の奥側隣接地。65・5ヘクタールの丘陵地に広がるように造成された“自然とふれあう憩いの公園”。今年7月20日に第一期造成分がオープンした▼園内は大きく「花の丘」「野原の丘」(すでにオープン)「里の森」「小川の里」(2005年の予定)で構成され、函館港、函館山を望む展望たるや、まさに絶景。今の時期は特色の一つに掲げているヒースガーデン(北欧などに自生するツツジ科の低木種)が魅きつける▼大野町の「匠の森」と共通する部分もあるが、また一味違った雰囲気。植栽した木々、アスファルトの通路…。より人工的という印象は免れないが、論評はもっと後でいい。ともかく弁当持参で家族連れが一日楽しめ、遠足などにも利用できる格好の場所が誕生した▼長い目でみて問われるのは、函館地域の人がどれだけ身近に感じ、自分たちの財産として受け止めるかということ。公園などの都市財産は造って終わりでない。今後、大変になる整備や管理に一段と住民参加の道を模索すべきだし、“利用お礼募金”なども考えられていい。(A)


8月18日(月)

●冷夏のせいか、もうキノコ採りなど収穫のシーズン。本州では天然のマツタケが採れはじめている。スズメバチも新女王バチなどを守るため、9月にかけて最も攻撃的な時季。駒ケ岳登山道付近でキノコ採りの60歳の男性がハチに刺されて死亡した▼スズメバチの営巣は1―2メートルの高さのところが一番多い。山菜採りなど人が活動する範囲で、下を見ているとハチを知らぬ間に払いのけている。恐ろしいのは刺された人がアナフィラキーショック(アレルギー反応)を起こして死亡すること。たった1匹に刺されても命を落とす▼大勢の遠足の児童たちがスズメバチに気がつかず、ドタバタと巣の近くを歩くとハチはその振動を感じて、巣が攻撃されると思って集団で反撃してくる。いったん攻撃フェロモンが撒き散らされると狂ったように襲う。特にオオスズメバチは“最も危険な野生生物”だ▼男性は2人で二手に分かれてキノコを採っていた。もう1人と合流してから「後頭部をハチに刺された」と言って倒れ、意識不明のまま病院に運ばれたが、2時間後に死亡。国道から約2メートル入った山林で、二手に別れないで一緒に採っていたら、もっと早く治療できたのではないか▼刺されたら速やかに毒液を取り除くことが重要。道内では今月に入って初山別村の山林で男性がスズメバチに刺されて死亡している。ハチよりもっと怖いヒグマの姿も各地で目撃されている。ハチやクマに遭ったとき、いたずらに刺激しないのが鉄則。キノコ採り、遠足、森林散策など十分注意しよう。(M)


8月17日(日)

●来年のNHK大河ドラマは「新撰組!」。土方歳三ら箱館新撰組ゆかりの地である函館・道南にとって期待が膨らむ。脚本は人気の三谷幸喜で、近藤勇に香取慎吾、土方歳三に山本耕史、沖田総司に藤原竜也など、注目のキャスティングも既に明らかに▼大河ドラマはいわずと知れた国民的な番組。1963(昭和38)年の「花の生涯」が最初。昨年の「利家とまつ」に続いて今年は「武蔵」が放送されており、「新撰組!」は43作目。そうそうたる役者に支えられ、根強いファン層を抱えている。当然ながら視聴率も高く…▼その波及効果は、歴史舞台になった地やロケ地にも。多くの観光客が押し寄せ、生まれたお菓子などの土産品も少なくない。「地域おこしに」と、ドラマ誘致の要請が多いとも聞くが、それも頷ける。例え函館・道南が直接的な舞台でないにしても恩恵はゼロでない▼新撰組に関しては、映画にも数多く取り上げられているばかりか著書も多い。それはファンが多いことの証。函館はその人たちを魅き付ける地となっている。五稜郭跡や土方歳三最期之地碑などのほか、「土方歳三記念館」もある。実際に、その気配が早くも…▼本紙が伝えている。例えば、駒ケ岳を目印に土方歳三や榎本武揚ら旧幕府軍が上陸した森町の鷲ノ木。関心のある人が知る程度の所だったが、このところ訪れる人が結構…。「ブームになれば」。それをどう誘発させるか、地域としての行動が求められてきている。(H)


8月16日(土)

●「企業経営は苦労ばかり、それだったら管理職程度で息長く勤めた方がいい」。サラリーマンとして目標? と聞かれて、昔は社長だったが、今の時代は一歩引いた思いの人が多いよう。実際に新任取締役の3人に1人が、それ以上の昇進を望んでいない▼冷え込んだままの経済情勢を映し出すかのように、雇用環境は最悪。その中でも何故?に、離職者の65%が個人的理由を挙げているが、サラリーマンの意識が微妙に変化しているのも事実。若い人の間で終身雇用を望む人の割合が伸びているのが、一つの証…▼少し時間が経ったが、同じ日の新聞に二つの調査結果が載っていた。一つは産業能率大の新入社員アンケートで、もう一つが日本能率協会の新任取締役に対する意識調査。そこから共通して浮かび上がってきたのは「無理をせず、息長く、そこそこ出世出来れば」という思い▼例えば、新入社員…。意外なことに「年俸制を望まず、年功序列制度を望む」や「終身雇用を望む」とする回答が増えている。出世の目標を社長と答えた人も16%でしかなく、しかも減少気味なのに対し、部長など管理職ぐらいで、という人が増えている▼時代が言わせるのか、人生観なのか、そこに見え隠れするのは安定志向。同じような思いは新任の取締役からも伝わってくる。ほぼ半数が「相当な苦難を覚悟している」と答えているのは頷けるが、この地位まで昇り詰めて社長を目指すと言い切った人は11%。今日の情勢では…。分かる気がする。(H)


8月15日(金)

●昔も今も戦争は悲惨。ハイテク兵器といえども、子供や一般住民を巻き込む。日本人が撮ったカラー映画としては現存する最古の劇映画「千人針」を観た。1937年の製作でモスクワで発見され、NHKが特集番組「昭和の戦争と平和」の中で放映した▼布に千人の女性が赤糸で一針ずつ縫って千個の縫玉を作り、出征将兵に贈るもの、初めは「虎は千里走って千里を戻る」の言い伝えから寅年生まれの女千人が縫った(広辞苑)。映画は出征する息子のために千人針を作る母親の物語で、白い布に赤い糸を縫いつける様子などが色鮮やかに撮られている▼「爆心地の近くにあった家は赤い炎を残して燻っていた。ろうあ者は情報から遠ざけられ孤立していた。私は原爆をずっと大きな爆弾と思っていました。この命が続く限り戦争の悲惨さを語り続けたい」。長崎原爆忌で聞こえずとも伝えねばと、初めて手話で訴えた被爆者代表に感動した▼イラクの元大統領に忠誠を誓うグループは、子供たちに「占領軍に対する闘争はイスラム教の『聖戦』だ。米兵を殺して殉職すれば天国に行ける」と反対闘争を教えている。このような子供たちが大人になると武器をとるようになる…。戦前の旧日本軍の教育にそっくり▼こんな教育を受ける子供たちがかわいそう。歴史は良いことも悪いことも謙虚に学ぶことに意義があるはず。戦場での我が子の無事を祈る母親の姿が切々と伝わる66年前の映像。こんなフィルムも撮らずに越したことはない。「核の時計」よ、止まれ。15日は終戦記念日。(M)


8月14日(木)

●漁火は海峡の風物詩。湯の川温泉で出るイカ刺しは今年も好評だ。温泉いさり火まつりでは12年かけて開発した花火「函館のイカ」が初めて打ち上げられる。「耳の角ばったところや10本の足などくっきりとしたデザインで、ぜひ見てほしい」という▼本紙によると、そのマイカが不漁のようだ。渡島管内に続いて桧山管内でも昨年の半分くらいしか捕れず、水揚げが落ち込んでいる。6、7月の2カ月の江差の水揚げは約364トンで昨年の同じ時期に比べ62%減。水揚げの最も多い大成でも1051トンで昨年より49%減ったという▼函館漁港の初水揚げは、やや小ぶりだったが、身が引き締まり昨年より300円高い1650円で取引された。昨秋の幼生数が73年に調査を始めて以来、最も多く確認され、今年6月の解禁時には大漁が期待されていた。やはり冷夏による海水温の低下や海流の変化が影響しているのか▼漁獲量が多く資源が心配されている兵庫県の赤い巨大ソデイカ(体長約1メートル、重さ約20キロ)の場合、標識を付けて生態調査を実施しているが、この方法はマイカには適用されない。資源管理には昨年から始まったヤリイカ産卵礁の新設事業くらい(桧山は瀬棚、熊石、奥尻、江差など9カ所)▼朝市では活イカの釣り堀が始まった。毎日100杯のマイカを放して短ざおで釣る。釣り上げて触った時に瞬時に赤くなるのは新鮮な証拠で、観光客や子供たちが歓声を上げている。16、17日は海峡と温泉の夜空に「イカ踊り」を堪能しよう。マイカ漁の回復を願って。(M)


8月13日(水)

●今年も「夜景の日」がやってきた。8月13日。函館市民で忘れた人がいるかもしれないが、そのいわれは「8は夜景の『や』、13はトランプの『K』で夜景」ということ。夏休み中で、観光客の多い時期だけに、この日が夜景をさらにアピールしている▼函館にとって観光は欠かせない産業、その観光を支える柱が夜景。函館を宿泊型の観光地にしている“功労者”と讃えて誰しも異論があるまい。「ともかく綺麗の一言。感動しました」。観光客を魅了している現実は、インターネットの書き込みからもうかがえる▼夜景といえば函館山から、が定番。この時期、夕闇が迫り始める頃からロープウエーには、乗車を待つ長蛇の列が出来る。だが、口コミで広がったのか、最近は逆に函館山側を眺める裏夜景が観光客の間にも静かな人気とか。その展望スポットが何カ所か取りざたされている▼「函館に行ったからには夜景をみなければ」。〈表〉にせよ、〈裏〉にせよ、函館はそう言わせている。としたら、イベントの有無にかかわらず、市民意識として「夜景の日」を大事に考えていい。この日を「函館市の祝日に」という発想もそこから生まれている▼夏至の6月22日。電気を消して蝋燭の明かりを楽しもうというイベントが全国的に展開され、函館でも賛同の輪が広がった。それは現代社会への素晴らしいメッセージだったが、13日に限っては…。「明かりを増やして函館の夜景を際立たせる日」に。それだけでも「夜景の日」の意味がある。(H)


8月12日(火)

●「もう老後は自分で考えますよ」。そんなメッセージとも思える実態の国民年金の保険料未納。2002年度の納付率は、落ち込むに落ち込んで62・8%。未納者は何と三人に一人強。不況による収入減という要因もあろうが、背景はもっと複雑…▼年金制度を支える鍵は国民の理解と信頼。自分も納め、さらに次世代の人の手も借りて豊かな老後を、ということであり、その前提が崩れては機能しなくなる。今、まさにその状況だが、すべてとは言わないまでも、年金財政をここまでした責任は少なくとも国民にない▼なのに、付けだけは…。保険料はアップし、受給条件は悪くなるばかり。「大丈夫と信頼できる確証がない中で、保険料だけが上がる。これでは…」。当然の心理。この不信が払拭されない限り、いくら自主納付を勧めたところで、単なる役所の気休めとしか映らない▼そんなことで改善されるなら、事態はここまで至っていない。分かっていない。コンビニで取り扱えるようにします、悪質な未納者には資産の差し押さえもします、などが少しも説得力がないことを。さらに呆れるのは「4年後に納付率を80%に」を目標に掲げたこと▼制度の趣旨から言って100%を譲ってはならないはず。目標80%は「納付しなくてもいい」と公言しているに等しい。ここまできては小手先の解決策はない。唯一考えるべき手立ては信頼の回復。国民は様々な形で政治に意思表示をするが、この未納実態もそれにほかならない。(A)


8月11日(月)

●休 刊 日


8月10日(日)

●民間ならとっくに辞職に追い込まれているか、更迭されている。都合の悪いことは隠し、都合が悪くなるや言い訳と開き直り、挙句の果てには報復人事…。官の組織なのに、私物化しているとしか思えない人が、トップに君臨し続けているのだから堪らない▼ここまで言えば誰かと分かる日本道路公団の総裁。例にもれず建設省(現国土交通省)からの天下り。道路族に顔の効く官僚だったということだが、何を守ろうとしているのか、見事なまでの守旧派。民営化されると、よほど都合の悪いことがあるらしい▼民営化推進委では仮病とも思える態度、国会の答弁は辻褄合わせ…。公にした職員を左遷し、法的に訴えてまで否定してきた「財務諸表」も、実は存在していた。8日になって明らかにしたが、否定し切れない、この際、存在だけは認めた方がいいと判断したのだろう▼記者会見も弁明に終始し、この期に及んで職員が個人的に作成したものと繰り返すばかり。そこからは巨大公団を預かる責任感など少しも伝わってこない。民営化議論は正確な現状把握から始まるのに、あまりにお粗末な対応では公団に対する不信は増す一途…▼民営化推進委の委員が更迭を叫びたくなるのも当然。このままでは公団にとってもマイナス。そのつけを回され、渦中に置かれる職員はさぞ辛い気持ちに違いない。内部に責任論がないとは思えないが、業を煮やしOBも辞任を求める行動に。前代未聞。あとは任命権者の判断に委ねられている。(N)


8月9日(土)

●あす10日は建設省(現国土交通省)が定めた「道の日」。今もその過程にあるが、わが国の道路整備は戦後、見違えるほど進んだ。その原点ともなる近代的な道路整備計画が決定したのが、80年ほど前に遡る1920(大正9)年のこの日だった▼我々の日常生活はもちろん、産業の振興に果たす道路の役割は、いまさら語るまでもない。高速道路に象徴されるが、近年はさらなる利便性を要求されている。その一方で、長年にわたり役割を果たしてきた古き幹線には、歴史財産的な意味合いが付加されている▼「日本の道100選」に選ばれている七飯町の赤松街道も然り。実は1990(平成2)年の「道の日」に行った愛称募集で名づけられたのだが、その後、「歴史国道」にも…。今や唯一の大動脈という使命から解放され、大野新道や函館新道へと、その役割を譲ってきる▼今の時代が道路に求めているのは、災害に強く、安心、安全な道路。残念ながら道南は満たされる域に達してはいない。札幌などを結ぶ道央道も、この5年ほどの間に国縫まで延びたが、「何とか早く」と声を上げている段階。なのに、採算話が持ち出されては…▼そろばん勘定だけで判断するなら政治はいらない。大事な視点はネットワークを築くこと。それが国土の均衡ある発展を導く道だからであり、この大前提を崩しては、過去の投資効果も半減する。それでいいのか、よしとしないなら声を上げなければ…。「道の日」は道路を考える日としたい。(H)


8月8日(金)

●国民の多くが抱く重税感。年金など社会保障も負担増を強いられている。政府税調は今年6月、「少子・高齢社会における税制のあり方」について中期答申を行った。その骨子は、租税と社会保障負担増、消費税の段階的税率アップ、徹底した歳出削減の3点▼これまでと同じ考え方で、これからの時代を論議しても無意味。頭では誰しも分かることだが、現実に向き合うと、そうそう素直になれない。税収不足・財政赤字の現実はあるにせよ、歳出に不信があるから。先日、函館で開かれた「意見を聞く会」でも、声はそこに▼「国民が納める税金がまっとうに使われていない」に始まって「行政改革の具体的メッセージがない中で、課税ベースの拡大を押し付けても理解は得られない」「余った予算を繰り延べするシステムなど歳出構造の見直しを」等々。つまり増税の前にすべきことがある、と▼いくら収入を増やす道を考えたところで、使う方が変わらなければ元の木阿弥。水槽を例にとると分かりいい。上から必死になって水を溜めても、下でどんどん垂れ流しては、何時まで経っても溜りはしない。まず無駄という垂れ流しを止めなければ…▼今、求められているのは、目に見える行財政改革の実績。歳出は国民サービスを犠牲にしない範囲でこれだけ抑制する、だから税率をこれだけ上げることで歳入・歳出が確実に改善される、と。少なくともこのセット提案でなければ…。そのためにも国民の厳しい監視の目が求められている。(A)


8月7日(木)

●男性も育児休業がとれることを知っている人は、少なくないはずだが、実際にどうかというと、なかなか…。厚生労働省の調査(2002年度雇用管理基本調査)によると、行使している割合は0・3%。「制度ができてはいるが」の域にとどまっている▼育児にかかわる休みを制度化すべき、と生まれた育児休業法。その後、介護休業と一体化して、正式に言うと「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」だが、育児休業給付の引き上げ、子供の病気のための看護休暇も加えて今日に▼今の時代である。当然ながら男性にも適用され、「少子化対策プラスワン」などの中で、国は女性80%、男性10%の取得を目標に掲げているが、この調査によると、女性でも3年前に比べ7%ほど伸びてはいるが、それでも64%。3人に2人のレベルでしかない▼制度もある、行使したい、例えそう思ったにしても現実の経済、雇用・労働環境の中では…。確かに、企業には解雇など休業の行使を理由にした不利益な措置を禁じている。ただし、余裕のある職場ばかりでない。むしろ、ぎりぎりの体制という職場の方が多い▼「男までか…」という風潮も根強い。そこで頭をもたげてくるのは「職場に迷惑をかけるという思い」であり、同僚に対する気兼ね。「社会が考え方を変えなければ」。そう言うのは簡単だが、この現実の前には説得力に欠ける。経済環境がその足かせになっているのだから…。(H)


8月6日(水)

●冷夏のせいか、蝉や蛍の姿が見えない。ミンミンゼミは「実いり、実入り」と鳴くそうだ。稲の葉が繁茂する月だという考えから葉月(はづき)といわれる8月は、きょう6日の平和記念日に続いて、長崎原爆の日(9日)、終戦記念日(15日)と「追悼の月」でもある▼45年8月6日の原爆投下の直前と直後に米軍が空撮した広島市街地の写真を見た。原爆ドームなどの建物や道路が細かく識別でき、原爆による建物の損壊状況や被爆者が浴びた放射線量の調査に貴重な資料で、投下直後の惨状が伝わってくる。そして多くの人が原爆症で苦しんでいる▼「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さん(12歳で白血病で死亡)の父、繁夫さんが今年2月に87歳で亡くなった。4年前に初めて被爆体験を語り、学校や平和の集いで禎子さんや千羽鶴のこと、平和の尊さを語り続けた。その千羽鶴を大学生が放火して焼失するなんて許せない▼函館空襲は7月14、15日。青函連絡船や大門、西部地区が悲惨な被害を受けた。函館空襲を記録する会によると、成田山の境内や防空壕には多数の遺体が並んでいた。当時、高砂町に造船所をやっていた祖父はリヤカーに家財道具を積んで逃げるのがやっとだった▼今年の市内の平和大使の6中学生は長崎に派遣され、原爆の恐ろしさを学んでくる。「もうやめて武器をもつより手をつなごう」(小4)「核の道踏ませてならぬ世界の子」(一般女子)―木古内町の平和へのメッセージは訴える。原爆症と闘って折り続けた少女の心を伝えよう。(M)


8月5日(火)

●夏休みに入って十日ほど、午前6時半になると、あちこちの公園や広場からラジオ体操の放送が聞こえてくる。夏休みを最も象徴する光景。休み中の規則正しい生活は早起きから、という目的も、会場の様子も、不思議なほど昔と変わらない▼そのラジオ体操の歴史だが、75年前に遡る。1928(昭和3)年に逓信省簡易保険局(現日本郵政公社)が「国民保険体操」として制定したのが始まり。「国民の体力向上と健康の保持・増進に寄与するため」。いかにも硬い表現だが、制定の目的にはこう記されている▼その後、変遷があって現在の第一体操が誕生したのは戦後の51(昭和26)年。翌年には第二体操が生まれ、さらにその翌年から夏季巡回ラジオ体操会が始まっている。受け継がれること既に50年。4年前には「みんなの体操」も登場したが、その使命と役割を担ってきたのは第一と第二▼私的になるが、ちょうどウォーキング時間と重なり、子供たちと出会う。自分の時代を振り返ると、ラジオ体操の思い出は、起きるのが辛かったこと。早寝早起の世代でもそうだったのだから、遅寝の親に育てられて遅寝遅起と言われる今の子にとってはさぞかし…▼それは行き交う子供たちの表情が物語っている。向かう時は眠そうな目をこすり、あくびをしながら。逆に体操を終えての帰りは友だちと楽しそうに。休み中でも友だちと会えるし、夏の朝の清々しい空気を肌で感じることも出来る。夏休みのラジオ体操の意義は大きい。(H)


8月4日(月)

●イヌ、ネコ、ハムスターなどペットは飼い主にとって家族と同じ。子供たちが大事に育てることで、生命の大切さを知る。そのペットなどへの動物虐待が残念なことに後を絶たない。函館でも先日、首や足を何重にもロープで巻かれた犬が見つかった▼本紙によると、堅いロープの跡は深くえぐられ、首の肉が大きく裂けてウジがわき、うずくまった犬は原野でおびえていたという。関係者は「ロープは間違いなく人間が巻きつけたもの。明らかに動物虐待」と怒り心頭。2年前はボーガン(洋弓銃)などに狙われる虐待が続出した▼乾めんにかけられた粉をなめた犬や殺虫剤入りのちくわを食べた犬が死んだり、エアガンで目を撃たれて失明したり…。札幌では下腹部や首に針金を巻きつけられた野良猫が相次いでいる。保護された後、治療ができずに安楽死に至った猫も。警察は動物愛護法違反の疑いで捜査開始▼恐ろしいのは、標的が人間へとエスカレートする可能性があることだ。凶悪犯は事件を起こす前に、犬や猫の足や首を切断して虐待行為に快楽を求めるケースが多い。専門家は「犯行前には動物の虐殺があり、性的興奮や高揚感がある」という。そして幼児らが狙われる…▼環境省はペット飼育基準に野良猫繁殖を防ぐため「ネコは室内で飼育」を明記。猫の室内飼育を求める条例は北海道だけ。ドイツでは憲法に「動物の保護は国家の義務」を盛り込んだ。動物虐待は小動物を育てる子供たちの心を傷つける。(M)


8月3日(日)

●「忘れてならぬ災害への備え」。この2週間ほどの間に、改めて恐ろしさを実感させる災害が発生した。一つは大雨により家屋ごと流された熊本県水俣市の土石流、もう一つは南郷町、矢本町などを直撃し400人を超す重軽傷者を出した宮城北部地震▼わが国は災害要注意国。内陸にも活断層が走り、地震が起きる可能性を秘めているほか、台風など局地的な豪雨も多い。その一方で、傾斜地など地形的に危険とされる住宅地区は全国で18万個所とも…。函館・道南にも危険個所があるのだから、けっして他人事でない▼奥尻を恐怖に陥れた北海道南西沖地震を経験したのは10年前。阪神淡路大震災なども記憶に新しい。今回の宮城北部にしても震度6が続いて、3日間で余震が何と340回。雨と違って地震が怖いのは、突然発生して、状況を判断する猶予を与えてくれないこと▼震源地や発生のメカニズムは違うようだが、宮城県では5月にほぼ同規模の地震があったばかり。自民党も警戒の要ありと判断したのだろう、次の国会に「北海道・東北地方で想定される大地震への防災対策を充実させるための特別措置法」を提出する方針という▼そこには紛れもなく「北海道」の文字が。大丈夫と高をくくってはいられない。「あすはわが身」といった気持ちで心構えをしておくべきだし、行政に求められるのは、地盤の様子など危険な所の再点検であり、万一の際の体制確認。念には念を。災害対策のキーワードはそこにある。(A)


8月2日(土)

●低温・日照不足の気象とは対照的に、永田町は熱い日々。求めてもいないのに連日、うんざりするほどの情報が流されてくる。総理が、抵抗勢力が、民主の代表がこう言った、ああ言ったなどと。そこは政治家、いずれも計算しながらの発言である▼そうと分かっていながら踊らされるのは、自民の総裁選が迫り、その後の解散総選挙が確実視されているから。統一補選の先か後か、その日程はともかく、例え総裁が代わろうと、既に現実は総選挙本番モード。もちろん顔ぶれが出揃った渡島・桧山の北海道8区も▼政治には建前と本音があり、原則と例外があると言われる。自民の総裁選は小泉首相が建前と原則を貫き、先制しているところ。公約を掲げて総裁選をする以上、選ばれることは公約信任を意味し、総選挙の党の公約になる。当たり前のことで、そこに少しも矛盾はない▼一方、比例単独を認めず、の民主の方針も建前と原則の域。北海道8区も、鉢呂吉雄氏の比例単独によって金田誠一氏の選挙に厚みが増す、という見方は誰の目にも共通していたが、あくまで選挙区事情などは考慮せず、と。そこにあるのも建前と原則…▼だが、政治の世界である。いつ本音や例外が飛び出しても不思議でない。その点で当面、注目されるのが自民の総裁選であり、自由を抱き込んだ民主の選挙区調整。勢いに乗っている小泉首相、菅代表がこの建前と原則を守り通せるかどうか、その答えはそう遠くない時期に出てくる。(N)


8月1日(金)

●ベッドでたばこを吸わないで〜 沢たまきが、けだるくささやくように歌う。この歌を聞いて禁煙したこともあった。今はベッドどころか、吸える場所が激減。5月の受動喫煙防止を定めた健康増進法の施行、7月の値上げが追い討ちをかけた▼一番心配なのは子供への影響。家庭で起きる乳幼児の誤飲事故の原因は、たばこが半数を占め、うち7割は生後6―11カ月の乳児に集中(厚労省調べ)。年齢が低いほど短期間でニコチン依存症になりやすく、15歳以下を対象にした卒煙外来を開設、子供たちの相談に応じている病院もある▼16歳の長男が喫煙していることを知りながら黙認、放置していた両親が未成年者喫煙禁止法違反(親権者の不制止)で書類送検された(石川県)。富山県では父親が17歳の二女の機嫌をとるため自販機から買って渡し、吸うのを止めなかった。よくないと分かっていながら…▼WHOによると、世界で年間490万人が喫煙が原因で死亡。1時間に560人、1日で1万3400人が肺がんなどで死んでいる。北原白秋は「煙草のめのめ、あの世も煙れ、どうせ亡くなりゃ野の煙、煙よ、煙よ、ただ煙、一切合切みな煙」の詞でそれとなく煙草の害を伝えていた▼函館市内の公共施設の全面禁煙は22・8%。もっと増やしてほしい。禁煙を勧める人はいても、愛煙を勧める人はいない。し好品といえども、要は煙で他人に迷惑をかけないことだ。きょう8月1日は「観光の日」。観光客が散策するレトロの石畳での「歩きたばこ」は、やめましょう。(M)


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