「新幹線開業に備える(7)東北新幹線・青森」
 平成22年度末の完成(平成16年12月16日政府与党新幹線整備検討委員会)を目指している東北新幹線八戸駅〜新青森駅間82kmは、県都青森市と八戸市、盛岡市、仙台市、そして東京との都市間縦貫幹線として開業準備が急ピッチに実施されている。

 新青森駅開業後は、青森市内と東京間の所要時間は約3時間と今までより1時間強短縮されることになり、交流人口の拡大などから経済活動の活発化が期待されている。また、八戸駅〜新青森駅間は現行の最短54分から22分に大幅に短縮されるなど、県内都市間交流の活発化も期待される。

 新青森駅舎周辺は現在土地区画整理事業が実施されており、その中でバスプール等の交通広場、商業エリア、約1千台分の立体駐車場や駅前広場・公園を整備する計画である。一方、現青森駅周辺についても駅前広場やバスプールの整備等が予定されており、来年度から詳細な検討が行われることになっている。

 駅舎等の施設整備の検討が進む中で、最大の問題となっているのが、新青森駅と青森市中心部とのアクセスの問題である。東北における県庁所在地の中心駅は、今まで全て新幹線と直結し、乗換えがないという利点があった。

 しかし、新青森駅は青森駅から4キロ西方にあることから、青森市に所用のある利用客や、青森駅を主に使っている住民は、鉄道を利用する場合、乗換えを余儀なくされることになる。

 これは高齢者のみならず、大きな荷物を背負った客や長旅で疲れている人にとって大きな負担となることも予想されることから、いかにスムーズな乗換えを可能にできるか、青森駅までのアクセスに要する時間(待ち時間を含む)をいかに短縮化できるかが大きなポイントになろう。

 弘前方面についても同様である。新青森駅開業後、既存のJR東北本線(八戸駅〜青森駅間)は第3セクターの青い森鉄道(株)が運営する予定であるが、この並行在来線については、JR奥羽線との相互乗り入れや、新青森駅での新幹線との接続も視野に入れた検討が必要になると思われる。

 ハードの整備とセットとなるソフト面では、県と経済界でつくる「新幹線効果活用プロモーション協議会」が7つの分野で検討部会を設置している。

 中でも「物産販売検討部会」において、八戸駅開業を機に首都圏で県産品PRの活動をした結果、年代・地域によって食べ物の味付けや好みが異なるという実体験を基にした県産品のPRと売れる商品づくりや、温泉などの観光資源との連携などの取組を平成19年の夏までにまとめるべく議論を重ねている。

 また、青森市と青森商工会議所等で構成する「新幹線新青森駅開業対策推進会議」は、昨年9月に「新青森駅開業対策アクションプラン」をまとめ、先導的に取り組む30事業を抽出した。

 中でも観光に重きを置いた基本方向で、市の施策でもある「コンパクトシティ」に沿った形での「まちなか観光資源の整備充実」や、食の戦略化として「七子八珍(注)」などのPRを中心に据えている。

 新青森開業までに取り組むべきことはハード・ソフトとも山積しているが、その5年後には函館まで北海道新幹線(149キロ)が開業し、新青森駅はターミナル駅から途中駅に変わることが宿命となっている。

 その間に青森市の観光拠点化や青函交流を含めた面的連携を推進する一方、いい意味での青森県内の観光地域や隣接道県との地域間競争に優位に立って、新青森開業のプラス効果を最大限享受できるよう取り組む必要がある。

(注)七子八珍(ななこはっちん)〜青森近海でとれ、青森の旬に家庭料理となる魚卵、珍味等。七子〜このこ、たらのこ、ほたてのこ、すじこ、ましらこ、ぶりこ、たらこ。八珍〜くりがに、がさえび、なまこ、うに、ふじつぼ、白魚、さめ、ほや。

(協力:日本政策投資銀行)
(執筆:青森事務所調査役 村上靖徳)

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